特許第5948169号(P5948169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948169
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】針保持用治具
(51)【国際特許分類】
   B25B 5/02 20060101AFI20160623BHJP
   B25B 5/14 20060101ALI20160623BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20160623BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   B25B5/02
   B25B5/14
   A61M5/32 520
   A61M5/158 500D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-153148(P2012-153148)
(22)【出願日】2012年7月7日
(65)【公開番号】特開2014-14893(P2014-14893A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511118090
【氏名又は名称】エヌ・エム・ピイビジネスサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(74)【代理人】
【識別番号】100125933
【弁理士】
【氏名又は名称】野上 晃
(72)【発明者】
【氏名】平野 圭市
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−520818(JP,A)
【文献】 特開2006−056792(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1606204(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 1/00 −11/02
A61M 5/158
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空針(12)を歯間(56a,56b,57a,57b)に受け入れ可能なフォーク状頭部(5)と、中空針(12)の側面を前記歯間(56a,56b,57a,57b)にて前記フォーク状頭部(5)の基端部(51)に押圧して、中空針(12)を自身と前記基端部(51)との間に挟持する押圧片(6)とを備えてなる針保持用治具。
【請求項2】
中空針(12)を前記押圧片(6)と前記基端部(51)との間に挟持した状態で前記押圧片(6)を固定するストッパー(71)を備えている、請求項1に記載の針保持用治具。
【請求項3】
前記押圧片(6)は、前記基端部(51)に対向する凹部(64)を備えた基部(60)と、前記凹部(64)内に揺動可能に取り付けられた押圧部(62)とを備え、前記基部(60)は、前記フォーク状頭部(5)に回転可能に取り付けられている、請求項2に記載の針保持用治具。
【請求項4】
前記フォーク状頭部(5)は、平行して配置された一対の歯部を備え、前記押圧片(6)は前記一対の歯部の間に配置されている、請求項3に記載の針保持用治具。
【請求項5】
前記フォーク状頭部(5)は2以上の歯間(56a,57a)を備えて、2本以上の中空針(12)を保持できるようにされた、請求項1乃至4の何れか1項に記載の針保持用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動合成装置、自動分析装置等の機器において薬剤の注入又は吸引用に用いられる中空針を着脱自在に保持する治具に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性医薬品の製造は、作業者の放射線被曝を防止しながら、異物の混入を防止しつつ、短時間で行う必要があるので、通常、自動合成装置を用いて遠隔的に行われている。かかる自動合成装置では、反応器に直接に薬剤を注入するために中空針が使用され、例えば、特許文献1には、駆動装置によって駆動される保持部に複数の中空針を保持させて、これら中空針の移動を自動制御できるようにした構成が開示されている。
【0003】
従来、中空針の保持部を構成する治具としては、例えば、図4に示されるように、板材21の横断方向に形成された溝22a,22bに中空針11をその先端から挿通させて該溝22a,22bに沿って配置させた後、ねじ23を締めることで該板材21に対向して配置された別の板材24a,24bを中空針11に押圧することで、板材21及び板材24a又は24bの間に中空針11を挟持するようにした、万力あるいはクランプタイプの治具が用いられている。そして、この治具を駆動装置で動かすことにより、治具に固定された中空針11を反応容器のゴム栓に突き刺して貫通させることで、反応容器に薬剤を注入又は吸引できるようにしている。図4の治具の場合、板材21の両側に溝22a,22bが形成されており、両溝22a,22bのそれぞれに対向する板材24a,24bが設けられているので、2本の中空針11を互いに間隔をおいて一緒にゴム栓に突き刺すことができる。
【0004】
一方、中空針は、医療行為で用いられる注射針と同様に、金属のストレート管の先端部を斜めに切断して研磨することにより作成されている。この中空針をゴム栓に突き刺し貫通させるとき、中空針のヒール部でゴム栓の一部が切り取られる現象、すなわち、所謂コアリングと呼ばれる現象が発生することが知られている。そこで、近年、このコアリングを防止するために、先端が曲がったノンコアリングニードル(所謂ヒューバー針)が考案され広く使用されるようになってきた。しかし、図4の治具の場合、従来のストレート針用に狭い溝22a,22bが作られているので、先端が曲がったノンコアリングニードルを挿入することができない。
【0005】
一方、図5の治具のように、溝22a,22bの幅を広くすれば、中空針12がノンコアリングニードルであっても挿入できるが、溝22a,22bの幅が広いため中空針12を治具に対して正確な角度で配置させるには、ねじ23の締め付け時に中空針12を何らかの手段で保持しておく必要があり、作業が煩雑化する。治具に2本の中空針を装着する場合には、一層の困難を伴う。こうした問題を解決するため、例えば特許文献2のように、溝22a,22b内に各種アクセサリを供することで、ノンコアリングニードルを含む様々な形態の中空針の固定に対応することが検討されているが、これらアクセサリは単一の中空針をそれぞれの溝内において固定するためのものであり、上記に述べた問題を十分に解決することはできない。
【0006】
また、図4及び図5のような治具の場合、溝22a,22bを掃除しておかないと、中空針11,12を溝22a,22bに挿通させる際に、中空針11,12の外側を汚染し、反応容器内の薬剤にコンタミネーションを生じさせる危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−56792号公報
【特許文献2】特表2010−520818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、中空針を着脱可能に保持する治具であって、簡単な操作で着脱が行え、かつ、中空針を取り付ける際に針の外側を汚染させる危険性を低減した治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、治具の頭部の構成及び中空針の保持手段の構成を工夫することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、中空針を歯間に受け入れ可能なフォーク状頭部と、中空針の側面を前記歯間にて前記フォーク状頭部の基端部に押圧して、中空針を自身と前記基端部との間に挟持する押圧片とを備えてなる針保持用治具を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、本発明の治具は、中空針を自身と前記基端部との間に挟持した状態で前記押圧片を固定するストッパーを備える。また、本発明の他の実施形態によれば、前記押圧片は、前記基端部に対向する凹部を備えた基部と、前記凹部内に揺動可能に取り付けられた押圧部とを備え、前記基部は、前記フォーク状頭部に回転可能に取り付けられる。また、本発明の更に他の実施形態によれば、前記フォーク状頭部は平行して配置された一対の歯部を備え、前記押圧片は前記一対の歯部の間に配置される。また、本発明の更に他の実施形態によれば、前記フォーク状頭部は2以上の歯間を備えて、2本以上の中空針を保持できるようにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、針保持用治具の頭部をフォーク状にして、その歯間に受け入れられた中空針の側面を押圧片を用いてフォーク状頭部の基端部に押圧して挟持するようにしたので、中空針を上下移動させることなく側方に移動させるだけで歯間に配置することができ、中空針の側面を汚染させる危険性が低減し、針先端の汚染が回避される。また、中空針を前記基端部と押圧片との間に挟持する際にも、押圧片を前記基端部に向けて移動させるだけで、中空針は歯間に案内されて基端部に当接し押圧されるので、簡単な操作で中空針を治具に対して適正な角度で配置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の針保持用治具の一実施形態を、中空針を歯間に挿入しようとする状態で示す概略斜視図である。
図2図1の針保持用治具の一実施形態を、中空針を保持した状態で示す概略斜視図である。
図3図1の押圧片の一実施形態を示す断面図である。
図4】従来の針保持用治具を示す概略斜視図である。
図5図4の針保持用治具を改変した針保持用治具の概略斜視図であり、図4と同様の要素は同様の符号で示してある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の針保持用治具の実施形態について説明するが、本発明は当該実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の針保持用治具の一実施形態を示す概略斜視図であり、図1において、符号12で示されるのはノンコアリングニードルに代表される中空針であり、符号5で全体的に示されるのは針保持用治具のフォーク状頭部である。図1の例では、フォーク状頭部5は、その基端部51の上下から同方向に突出し互いに平行して配置する1対の同形状の歯部を備え、両歯部の間の空間に、符号6で全体的に示す押圧片が軸61を中心に回転可能に取り付けられている。
【0016】
上記1対の歯部は何れも、図の右側に示された幅広の歯53a,53bと、図の左側に示された幅広の歯54a,54bと、これらの幅広の歯の間に配置された幅狭の歯55a,55bを備えている。そして、歯55a,55bと歯53a,53bとの間の歯間56a,56bに一本の中空針12を収容し、歯55a,55bと歯54a,54bとの間の歯間57a,57bにもう一本の中空針12を収容できるように構成されている。なお、各歯間56a,56b,57a,57bの幅は、中空針12を受け入れるに十分な大きさであればよく、例えば、中空針12の中央部の外径よりもわずかに大きな寸法であればよい。
【0017】
押圧片6は、フォーク状頭部5の基端部51に対向する側面の中央に押圧部62を備え、押圧片6を上記1対の歯部の間に収容した時(図2参照)、この押圧部62で中空針12の側面を押圧する。したがって、この押圧部62は、中空針12の側面を損傷しないように、樹脂やゴムなどの比較的軟質な材料で形成してもよい。
【0018】
図3は、押圧片6の一実施形態を示す断面図である。図3において、押圧片6は、基端部51に対向する直方体状の凹部64を備えた基部60と、凹部64内に揺動可能に取り付けられた押圧部62とを備えてなる。押圧部62は凹部64に揺動可能に収容される形状と寸法を備えていればよく、図示の例では、凹部64に相補的な直方体の外形状を備えるが、凹部64よりもわずかに小さい寸法に形成されている。凹部64の基端部51に対向する面にはねじ67が螺合されている。押圧部62のねじ67に対向する面には、ねじ67の頭部を収容する空洞65が設けられている。空洞65の入口は、内方に僅かに張り出した鍔66を備えて狭窄されており、ねじ67の頭部を空洞65内にスナップ式に嵌合できるようにされている。
【0019】
かくして、図3の押圧片6は、押圧部62の空洞65内にねじ67の頭部をスナップ式に嵌合することにより組み立てられるが、図示のように、ねじ67の軸と鍔66との間、空洞65とねじ67の頭部との間、および押圧部62と凹部64との間にそれぞれ遊びを有するため、押圧部62は基部60に対し、水平方向および垂直方向に僅かに揺動可能である。この揺動を許容する条件を満たす限り、空洞65の形状は特に制限されず、押圧部62の外形状も直方体以外のものであってもよい。図3の例では鍔66は空洞65の内周壁から内方に向けて環状に連続的に張り出すように形状してもよいが、ねじ67の頭部が空洞65から容易に離脱しない限り、例えば、鍔66を断続的な複数の弧状の張出部として形成してもよい。ねじ67の頭部は、丸皿、トラス、バインドなど、軸部よりも外方に張り出した形状を有するものであればよい。
【0020】
図1からよく理解できるように、歯53a及び歯53bの間には、これらの歯に平行して、ねじ切りされた軸72が延在しており、該軸72にストッパー71が螺合されている。一方、押圧片6の軸61から最も遠い側面には、押圧片6を上記1対の歯部の間に収容した時に(図2参照)軸72を収容するスロット63が設けられている。かくして、押圧片6を上記1対の歯部の間に収容した時(図2参照)、軸72に邪魔されることなく、押圧部62が基端部51に対向して、押圧片6と基端部51との間に中空針12を挟持できるようにしている。
【0021】
かくして、本発明の針保持用治具は、次のようにして使用することができる。まず、図1に示すように、中空針12を立てた状態で側方に移動させることによりフォーク状頭部5の先端から歯間56a,56bに挿通させ、必要に応じて、もう一本の中空針12を同様に歯間57a,57bに挿通させる。そして、押圧片6を軸61回りに回転させて、上下1対の歯部の間に進入させると、中空針12は押圧部62を介して押圧片6に押されて、歯間56a,56b又は歯間57a,57bに案内されながら基端部51の方向に移動する。そして、図2に示されるように、中空針12が基端部51に当接したところで押圧片6を基端部51の方向に押圧して、中空針12を基端部51と押圧片6との間に押圧部62を介して挟持する。この時、押圧部62は押圧片6に対して揺動可能であるため、押圧片6はどちらか一方の中空針に偏重して圧力をかけることなく、二本の中空針に均等に圧力を加えることができる。そして、ストッパー71を回転させて押圧片6に当接させることにより、押圧部62の揺動と基部60の回転を防止し、圧力を均等に加えた状態で、中空針12を治具に保持させた状態に保つことができる。そして、中空針12を取り外す際には、ストッパー71を逆回転させて軸72の先端部に移動させた後、押圧片6を図1に示す位置まで回転させた後、中空針12を側方に移動させて歯間56a,56bの開放先端部から取り出せばよい。
【0022】
このように、本発明の針保持用治具では、中空針12を歯間56a,56bに沿って側方に移動させるだけでよいので、中空針12の脱着が容易に行え、また、中空針12の先端部は治具と接触しないので、中空針12を反応容器のゴム栓に突き刺して貫通させた場合でも、反応容器の薬剤にコンタミネーションを生じさせる危険性がほとんど無い。
【0023】
図1及び図2に図示した実施形態では、フォーク状頭部5は上下1対の歯部を備えているが、本発明の治具においては、何れか1つの歯部のみを備えるものであってもよく、または、同様の歯部が3段以上平行して配置されたものであってもよい。また、当該実施形態では、各歯部は3つの歯53a,54a,55a又は53b,54b,55bを備えているが、本発明の治具においては、各歯部は2つの歯を備えて1つの歯間が形成されたものであってもよく、または、4つ以上の歯を備えて3つ以上の歯間が形成されたものであってもよい。さらに、フォーク状頭部5と押圧片6の連結方法は、上記軸61によるものに限定されるものではなく、フォーク状頭部5の形状に応じて適宜変更することができる。また、ストッパー71も、図示のものに限定されず、例えば、スロット63が軸72にスナップ式に嵌合するものや、図示のストッパー71と軸72の代わりに押圧片6がフォーク状頭部5とスナップ式に嵌合する形状に形成されたものであってもよい。さらに、ストッパー71と軸72の構成を押圧片6に設け、スロット63の構成をフォーク状頭部5に設けて、中空針12を自身と基端部51との間に挟持した状態で押圧片6を固定できるようにしてもよい。
【0024】
本発明の針保持用治具においては、フォーク状頭部5及び押圧片6の何れも金属、プラスチック等の適当な材料で作成することができる。なお、本発明の針保持用治具は図示及び上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者であればその各要素を均等物に置き換えることで上記以外の種々の変形を行うことが可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の針保持用治具は、放射線医薬品をはじめその他各種の化合物の合成に用いられる自動合成装置や自動分析装置等の機器等で広く利用できる。
【符号の説明】
【0026】
11,12 中空針
21 板材
22a,22b 溝
23 ねじ
24a,24b 板材
5 フォーク状頭部
51 基端部
53a,53b 歯
54a,54b 歯
55a,55b 歯
56a,56b 歯間
57a,57b 歯間
6 押圧片
60 基部
61 軸
62 押圧部
63 スロット
64 凹部
65 空洞
66 鍔
67 ねじ
71 ストッパー
72 軸
図1
図2
図3
図4
図5