(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
密閉ケース内に、回転軸を介して連結される圧縮機構部と電動機部が収納され、前記密閉ケース内空間の圧力が前記圧縮機構部への吸込み圧と同じに設定され、前記圧縮機構部で圧縮されたガス冷媒を冷媒管に吐出し、前記冷媒管に油分離器を設けて前記ガス冷媒に含まれる潤滑油分を分離し、分離された潤滑油分を前記圧縮機構部へ戻す油戻し通路を備えた密閉型圧縮機において、
前記圧縮機構部は、仕切り板を介して2つのシリンダ室が設けられ、それぞれのシリンダ室には偏心運動自在に収容されるローラと、前記ローラに当接して往復動しシリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画するブレードと、前記ブレードの後端側に設けられる密閉されたブレード背室とを備え、
前記油戻し通路を介して圧縮機構部に戻された潤滑油を、前記仕切り板の前記回転軸が貫通する貫通孔に導き、さらに前記貫通孔から前記ブレードを介して前記ブレード背室に導入する給油導通路が設けられる
ことを特徴とする密閉型圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1の実施形態を、
図1〜
図6にもとづいて説明する。
図1は、冷凍サイクル装置としての空気調和機1の冷凍サイクル構成図である。
空気調和機1は、密閉型圧縮機2と、油分離器3と、四方弁4と、熱源側熱交換器である室外熱交換器5と、膨張装置6と、利用側熱交換器である室内熱交換器7とを、冷媒管Pを介してサイクル状に連通して冷凍サイクルが構成される。
【0012】
この空気調和機1では、冷房運転時に、密閉型圧縮機2で圧縮され冷媒管Pに吐出される高圧のガス冷媒が実線矢印に示すように導かれる。すなわち、冷媒は油分離器3と四方弁4を経由して室外熱交換器5に導かれ、外気と熱交換して凝縮し液冷媒に変る。液冷媒は膨張装置6で断熱膨張し、室内熱交換器7に導かれて室内空気と熱交換し蒸発する。
【0013】
室内熱交換器7において液冷媒が蒸発しガス冷媒に変ることで、室内空気から熱を奪って冷気とし、よって室内の冷房作用がなされる。蒸発したガス冷媒は、四方弁4を介して密閉型圧縮機2に吸込まれ、さらに上述した経路を冷媒が循環し冷房運転を継続する。
【0014】
一方、暖房運転時には、密閉型圧縮機2で圧縮され、冷媒管Pに吐出される高圧のガス冷媒が破線矢印に示すように導かれる。すなわち、冷媒は油分離器3と四方弁4を経由して室内熱交換器7に導かれ室内空気と熱交換して凝縮し液冷媒に変る。このとき、室内空気は凝縮熱を吸収して温度上昇し、暖気に変る。よって、室内の暖房作用がなされる。
【0015】
液冷媒は膨張装置6に導かれて断熱膨張し、室外熱交換器5に導かれて蒸発し、ガス冷媒に変る。ここで蒸発したガス冷媒は、四方弁4を介して密閉型圧縮機2に吸込まれ、さらに上述した経路を冷媒が循環して暖房運転を継続する。
【0016】
図2は、密閉型圧縮機2の縦断面図である。
密閉型圧縮機2は、密閉ケース10を有し、この密閉ケース10内に圧縮機構部11および電動機部12が収納される。圧縮機構部11は下側に配置され、電動機部12は上側に配置されていて、上下方向の軸芯を有する回転軸13を介して連結される。電動機部12が回転軸13を回転駆動することで、圧縮機構部11がガス冷媒を圧縮する。
【0017】
圧縮機構部11で圧縮されたガス冷媒は、密閉ケース10外に接続される冷媒管Pに吐出される。この冷媒管Pには、上記した油分離器3が設けられていて、油分離器3は圧縮機構部11から吐出されるガス冷媒から、ガス冷媒中に含まれる潤滑油を分離する。
【0018】
油分離器3で分離された潤滑油は、油戻し管(油戻し通路)15を介して圧縮機構部11へ戻されるようになっている。圧縮機構部11には、後述するように油導入路16が設けられていて、油戻し管15から潤滑油を圧縮機構11の各摺接部へ導く。
【0019】
電動機部12は、回転子18と固定子19とからなり、固定子19が密閉ケース10内周部に固定され、回転子18が固定子19の内側に回転可能に配置される。回転子18の軸芯に沿って回転軸13が嵌着されていて、回転軸13は圧縮機構部11を構成する主軸受20と副軸受21によって回転可能に枢支される。回転軸13には、軸芯方向に所定の間隔を存し、径方向に180°対向して一対の偏心部a,bが形成される。
【0020】
圧縮機構部11は、上部仕切り板22aと下部仕切り板22bとが相接して構成される仕切り板22と、この仕切り板22を挟んで上下両面に位置する第1のシリンダ23Aおよび第2のシリンダ23Bと、上、下部仕切り板22a,22bそれぞれに形成された吐出室24と、吐出室24に取付けられる吐出弁25を備えている。
【0021】
図3は、第1のシリンダ23Aの平面図である。
図2および
図3に示すように、第1のシリンダ23Aの内径部に、上面を主軸受20に閉塞され、下面を上部仕切り板22aに閉塞される第1のシリンダ室27aが形成される。第1のシリンダ室27a内に回転軸13の偏心部aが配置され、この偏心部aに第1のローラ28aが嵌合される。
【0022】
図2に示す第2のシリンダ23Bの内径部に、上面を下部仕切り板22bに閉塞され、下面を副軸受21に閉塞される第2のシリンダ室27bが形成される。第2のシリンダ室27b内に回転軸13の偏心部bが配置され、この偏心部bに第2のローラ28bが嵌合される。
【0023】
回転軸13が回転すると、第1、第2のシリンダ室27a,27bにおいて、偏心部a,bおよび第1、第2のローラ28a,28bが180°の角度を存して偏心運動する。このとき、第1、第2のローラ28a,28bの外周壁一部は、第1、第2のシリンダ室27a,27bの内周壁一部に線接触しながら移動するようになっている。
【0024】
図3に示すように、第1のシリンダ23Aには、一端部が第1のシリンダ室27aに開口するブレード溝30が設けられる。ブレード溝30の他端部は、ブレード溝30の幅寸法よりも大なる径寸法に形成された孔部である第1のブレード背室31aに連通する。
【0025】
ブレード溝30には第1のブレード32が摺動自在に嵌め込まれる。第1のブレード32の先端部は後述するように第1のローラ28aの外周壁に掛合し、後端部は第1のブレード背室31aに突没自在である。そして、第1のブレード32の軸方向長さは、第1のシリンダ23Aの軸方向長さである板厚と一致する。
【0026】
第1のシリンダ室27aと同様、ブレード溝30および第1のブレード背室31aは、上面を主軸受20、下面を上部仕切り板22aで閉塞され、密閉構造をなす。そして、第1のブレード背室31aには、後述するように高圧の潤滑油が導かれ、第1のブレード32の後端部に高圧をかけ、先端部を第1のローラ28a方向へ付勢する。
【0027】
第1のシリンダ23Aの外径面から第1のシリンダ室27aに連通する吸込み口34が設けられる。吸込み口34とは互いに異なる位置で、外径面から第1のシリンダ室27aとは間隙を存して吐出口35と油導入口36が設けられる。吐出口35と油導入口36の末端部には、第1のシリンダ23Aの上下両面に貫通する孔部d,eが設けられる。
【0028】
図2に示すように、密閉ケース10の上端面には冷凍サイクルを循環してきた冷媒を導入する冷媒管Pが接続されている。そして、密閉ケース10の上端部には、密閉ケース10内に充満する冷媒を、一旦、密閉ケース10外部に導出する第1の冷媒案内管Paと第2の冷媒案内管Pbの一端部が接続される。
【0029】
第1の冷媒案内管Paは密閉ケース10の下部方向に沿って曲成され、さらに密閉ケース10を貫通して第1のシリンダ23Aに設けられる吸込み口34に挿嵌される。すなわち、第1のシリンダ室27aは、密閉ケース10内に充満する低圧のガス冷媒を第1の冷媒案内管Paを介して吸込むようになっている。
【0030】
先に説明したように、圧縮機構部11において圧縮された高圧のガス冷媒は、冷媒管Pへ吐出されるようになっているが、この冷媒管P端部は
図3に示す第1のシリンダ23Aに設けられる吐出口35に接続される。また、油分離器3で分離された潤滑油を導く油戻り管15の一端部は、油導入口36に接続される。
【0031】
一方、図示を省略するが、第2のシリンダ23Bにブレード溝30が設けられ、ブレード32が摺動自在に嵌め込まれる。ブレードの先端部は後述するように第2のローラ28bの外周壁に掛合し、後端部はブレード溝の他端部に連通する第2のブレード背室31bに突没自在である。
【0032】
高圧の潤滑油が第2のブレード背室に導かれ、ブレードの先端部を第2のローラ28b方向へ付勢することも変りがない。第2の冷媒案内管Pbの一端部が密閉ケース10を貫通して第2のシリンダ23Bに設けられる吸込み口34に接続される。したがって、密閉ケース10空間の圧力と、圧縮機構部11への吸込み圧力が同一に設定されている。
【0033】
なお、第1のシリンダ23Aに設けられる吐出口35と油導入口36は、第2のシリンダ23Bには設けられていない。第2のシリンダ室27bで圧縮されたガス冷媒は、後述するように仕切り板22を介して第1のシリンダ23Aの吐出口35へ導かれる。
【0034】
また、油分離器3から油戻し管15を介して第1のシリンダ23Aの油導入口36に導かれた潤滑油は、後述するように仕切り板22を介して第2のシリンダ23Bへも導かれる。そのため、第2のシリンダ23Bには、第1のシリンダ23Aのような吐出口35と油導入口36は不要である。
【0035】
図4(A)は上部仕切り板22aの平面図であり、
図4(B)は下部仕切り板22bの平面図である。
上述したように仕切り板22は、外径寸法が互いに同一の上部仕切り板22aと下部仕切り板22bとを接合させることにより形成される。
【0036】
上部仕切り板22aには、軸芯部に回転軸13が貫通する貫通孔38が設けられていて、この貫通孔38の周囲には凹部39aが設けられている。下部仕切り板22bの軸芯部にも回転軸13が貫通する貫通孔38が設けられ、この貫通孔38の周囲にも凹部39aが設けられている。
【0037】
上部仕切り板22aの貫通孔38と、下部仕切り板22bの貫通孔38の直径は、互いに同一である。第1、第2のシリンダ室27a,27bにおいて第1、第2のローラ28a,28bを偏心運動させた状態で、貫通孔38相互は第1、第2のローラ28a,28bの外周壁からはみ出る直径には設定していない。
【0038】
すなわち、第1、第2のローラ28a,28bがどの位置にあっても、貫通孔38が第1、第2のシリンダ室27a,27bに連通することはなく、常に第1、第2のローラ28a,28bもしくは偏心部a,bと対向する。
【0039】
上部仕切り板22aと下部仕切り板22bの凹部39a,39bは互いに同一形状をなしていて、上、下部仕切り板22a,22bを対向させ、かつ接合することで、上述した吐出室24が形成される。それぞれの凹部39a,39bの一部に、上述した吐出弁25,25を備えている。
【0040】
上部仕切り板22aの凹部39aに位置する吐出弁25は第1のシリンダ室27aに対向して設けられ、下部仕切り板22bの凹部39bに位置する吐出弁25は第2のシリンダ室27bに対向して設けられる。
【0041】
このことから、第1のシリンダ室27a内が所定の高圧状態に達したとき、上部仕切り板22aに設けられる吐出弁25が開放して高圧ガスを吐出室24に導く。第2のシリンダ室27b内が所定の高圧状態に達したときは、下部仕切り板22bに設けられる吐出弁25が開放して高圧ガスを同じ吐出室24に導くようになっている。
【0042】
なお、上、下部仕切り板22a,22bの凹部39a,39bの一部に吐出案内口40が、上、下部仕切り板22a,22bの上下面に貫通して設けられる。圧縮機構部11として組立てた状態で、上部仕切り板22aの吐出案内口40は第1のシリンダ23Aに設けられる上述した吐出口35の孔部dと連通する位置にある。
【0043】
すなわち、第1、第2のシリンダ室27a,27bで圧縮され、吐出弁25を介して上、下部仕切り板22a,22bの吐出室24に吐出された高圧のガス冷媒を、吐出案内口40から孔部dを介して吐出口35へ導き、さらにここに接続される冷媒管Pへ案内できるようになっている。
【0044】
上部仕切り板22aと下部仕切り板22bの接合面には、互いに同一位置で、かつ一端部が貫通孔38と連通する給油溝41a,41bが設けられ、上、下部仕切り板22a,22bを合せた状態で給油孔41となる。それぞれ給油溝41a,41bの他端部には孔部f,gが設けられ、第1のシリンダ23Aの油導入口36と連通する。
【0045】
油分離器3で分離された潤滑油は、油戻し管15から圧縮機構部11に導かれ、さらに第1のシリンダ23Aの油導入口36と、上、下部仕切り板22a,22bの給油孔41を介して貫通孔38と回転軸13周壁との間に導かれ、ここで充満することになる。
【0046】
つぎに、第1のローラ28aと第1のブレード32について詳述するが、第2のローラ28bと図示しない第2のブレード32についても全く同様の構成となっていて、これらについての図示と説明は省略する。
【0047】
図5(A)は第1のローラ28aの縦断面図であり、
図5(B)は第1のローラ28aの平面図である。
図6(A)は第1のブレード32の平面図であり、
図6(B)は第1のブレード32の縦断面図である。
【0048】
第1のローラ28aと第1のブレード32は、互いの軸方向長さが互いに一致するよう設定される。第1のローラ28aの内径面に、軸方向に沿って凹部からなる油溜り溝43が設けられる。油溜り溝43の両端部である第1のローラ28aの上下両端面に油溝44が設けられ、さらに外径面には軸方向に沿って断面円弧状の掛合溝45が設けられる。
【0049】
第1のブレード32の一端部は、第1のローラ28aの掛合溝45に嵌り合う断面円弧状の先端部Kとなっていて、この端部を除いて平板状をなしている。先端部Kを含む第1のブレード32の上下両端面には、掛合溝45と第1のブレード背室31aを連通する油導入溝46が設けられる。
【0050】
第1のローラ28aが第1のシリンダ室27aで偏心運動を行うにともなって、第1のローラ28aの掛合溝45に先端部Kが掛合する第1のブレード32が追従する。ただし、第1のブレード32はブレード溝30に嵌め込まれているので動きを規制され、ブレード溝30に沿うよう往復運動をなす。
【0051】
第1のローラ28aの内径面に設けられる油溜り溝43から、この上下両端面に設けられる油溝44および第1のブレード32の上下端面に設けられる油導入溝46とで、給油導通路47が形成される。
【0052】
先に述べたように、第1のローラ28aと第1のブレード32は、上面を主軸受20と摺接し、下面を上部仕切り板22aと摺接する。また、第1のローラ28aの内径面は回転軸13の偏心部aと摺接するので、油溜り溝43は、第1のローラ28aの偏心部aとの摺接面に設けられることになる。
【0053】
そして、第1のローラ28a上下両端面の油溝44と、第1のブレード32上下両端面の油導入溝46は、第1のローラ28aおよび第1のブレード32と、主軸受20および上部仕切り板22aとの摺接面に設けられることになる。
【0054】
なお、第2のローラ28bおよび第2のブレードは、第1のローラ28aおよび第1のブレード32と全く同一の構造をなしているので、ここでは第1のローラ28aと第1のブレード32の構造説明を適応して、新たな説明は省略する。
【0055】
このような構成において、空気調和機1の運転時には、電動機部12が回転軸13を回転駆動し、偏心部a,bに嵌合された第1、第2のローラ28a,28bが、第1、第2のシリンダ室27a,27b内に転動する。これにともなって、第1、第2のブレード32が往復動し、第1、第2のシリンダ室27a,27bを圧縮側と吸込み側に二分する。
【0056】
低圧のガス冷媒が密閉ケース10内に導かれて充満し、さらに密閉ケース10内から第1の冷媒案内管Paと第2の冷媒案内管Pbを介して、それぞれ第1のシリンダ室27aと第2のシリンダ室27bに吸込まれ、圧縮される。
【0057】
第1、第2のシリンダ室27a,27bで圧縮されたガス冷媒は、仕切り板22に設けられる吐出弁25を開放させ吐出室24へ吐出される。さらに、吐出室24から第1のシリンダ23Aに設けられる吐出口35に導かれ、ここに接続する冷媒管Pから油分離器3に導かれる。
【0058】
密閉型圧縮機2から冷媒管Pへ吐出されるガス冷媒には潤滑油分が含まれており、油分離器3ではガス冷媒と潤滑油分が分離される。ガス冷媒は四方弁4を経由して、室外熱交換器5または室内熱交換器7に導かれたあと再び密閉型圧縮機2に吸込まれ、上述の経路を循環する。
【0059】
油分離器3で分離した潤滑油分は油戻し管15を介して密閉型圧縮機2に戻され、圧縮機構部11に設けられる油導入路16に導かれる。さらに、第1のシリンダ23Aに設けられる油導入口36から仕切り板22に設けられる給油孔41を介して貫通孔38と回転軸13周壁との間に充満する。
【0060】
貫通孔38は、第1、第2のシリンダ室27a,27b内の第1、第2のローラ28a,28bと偏心部a,bとの摺接面に対向しているので、これらの摺接面に給油される。さらに貫通孔38内の潤滑油は、第1、第2のローラ28a,28bの掛合溝45と、第1、第2のブレード32の先端部Kとの掛合部分にも給油される。
【0061】
貫通孔38内の潤滑油は、第1、第2のローラ28a,28bの内径面に設けられる油溜り溝43にも供給される。油溜り溝43には、第1、第2のローラ28a,28b両端面の油溝44と、第1、第2のブレード32両端面の油導入溝46とが連通し、油導入溝46は第1、第2のブレード背室31a,31bに開放している。
【0062】
したがって、油溜り溝43内の高圧の潤滑油は、油溝44と油導入溝46からなる給油導通路47に沿って導かれ、第1、第2のブレード背室31a,31bに充満する。ここに充満した高圧の潤滑油は、第1、第2のブレード32に対して、第1、第2のローラ28a,28b方向に圧力をかけ、これらの円滑な往復動作を確保する。
【0063】
このように、仕切り板22の貫通孔38に導かれた潤滑油を、直接、第1、第2のローラ28a,28bと第1、第2のブレード32を介して第1、第2のブレード背室31a,31bに導く給油導通路47を設けた。
【0064】
これに対して従来は、上、下部仕切り板22a,22bの合せ面に設けた給油溝から、凹部39a,39bを迂回して第1、第2のブレード背室31a,31bまでの給油通路を設けていたが、本実施形態では、この給油通路を不要とした。
【0065】
油分離器3で分離され圧縮機構部11に戻る潤滑油は高圧であり、上、下部仕切り板の合せ面に設けた給油通路に高圧の潤滑油を導通する従来構造では、給油通路から低圧の密閉ケース内に潤滑油が漏れ易かった。また、これらブレード背室にはブレードを付勢するための弾性体が必要であった。
【0066】
上述の構成にすることにより、高圧の潤滑油は貫通孔38からブレード32を介して直接、第1、第2のブレード背室31a,31bに導かれる。したがって、高圧の潤滑油が低圧の密閉ケース10内に漏れるのを防止できる。
【0067】
また、第1、第2のローラ28a,28bの外径面に軸方向に沿って断面円弧状の掛合溝45を設け、第1、第2のブレード32は、掛合溝45に嵌り合う断面円弧状の先端部Kとしたので、第1、第2のブレード32は、弾性体がなくとも第1、第2のローラ28a,28bの動きに円滑に追従して動く。したがって、従来用いられていた弾性体が不要となる。
【0068】
つぎに、給油導通路に係る第2の実施形態について説明する。
図7(A)は第1のローラ28aの縦断面図であり、
図7(B)は第1のローラ28aの平面図である。
図8(A)は第1のブレード32の平面図であり、
図8(B)は第1のブレード32の縦断面図である。
【0069】
第1のローラ28aの内径面に軸方向に沿って油溜り溝43が設けられる。この油溜り溝43と対向する第1のローラ28aの外径面に沿って、断面円弧状の掛合溝45が設けられる。油溜り溝43と掛合溝45に亘る第1のローラ28aの径方向に、ここでは2個の油孔48が所定の間隔を存して設けられる。
【0070】
第1のブレード32の一端部は断面円弧状の先端部Kに形成されていて、第1のローラ28aの掛合溝45に掛合する。第1のブレード32の先端部K端面から対向する他端面に亘って貫通し、掛合溝45と第1のブレード背室31aを連通する2個の油導入孔49が所定間隔を存して設けられる。
【0071】
第1のブレード32の先端部Kが第1のローラ28aの掛合溝45に掛合した状態で、第1のローラ28aに設けられる2個の油孔48と、第1のブレード32に設けられる2個の油導入孔49は互いに連通する。
【0072】
したがって、油溜り溝43から第1のローラ28aに設けられる油孔48と、第1のブレード32に設けられる油導入孔49とで、給油導通路50が形成されることになる。
第2のローラ28bと第2のブレード32も全く同様な構造になっており、第1のローラ28aと第1のブレード32の構造を適用して新たな説明は省略する。
【0073】
仕切り板22の貫通孔38から油溜り溝43に溜った高圧の潤滑油は、第1、第2のローラ28a,28bの油孔48と、第1、第2のブレード32の油導入孔49からなる給油導通路50を介して、第1、第2のブレード背室31a,31bに導かれる。
【0074】
第1、第2のブレード背室31a,31bに高圧の潤滑油が充満して第1、第2のブレード32に第1、第2のローラ28a,28b方向への圧力をかける。潤滑油が貫通孔38から給油導通路50を介して第1、第2のブレード背室31a,31bに導かれる途中で漏れることがなく、充分な効果が得られることは変りがない。
【0075】
以上、本実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、実施形態の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。