特許第5948211号(P5948211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948211
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】浚渫方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20160623BHJP
   E02F 3/92 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   E02F3/88 E
   E02F3/88 A
   E02F3/92 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-229558(P2012-229558)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-80797(P2014-80797A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】泉 信也
(72)【発明者】
【氏名】松島 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】久木田 隆徳
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−203147(JP,A)
【文献】 特公昭51−025645(JP,B2)
【文献】 特開2006−207372(JP,A)
【文献】 特開平05−311696(JP,A)
【文献】 特開2008−223465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/627−3/815,3/88−3/96
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引体として、多孔状の吸引口が平面状の底面の中央部に設けられたケーシングと、平面視で前記吸引口を中心にして湾曲して放射状に前記底面に突設される複数の板状のガイド板とを備えた吸引ヘッドを複数連結して構成したヘッド連結体を使用し、ベース船体の上下に貫通する投入部から吊具を介して前記吸引体を吊下げて、所定位置において前記吸引体を下方移動させて水底地盤に載置した状態にして、水底地盤上に堆積した汚泥を吸引ポンプに連通する前記吸引口から吸引して圧送管を通じて水上に圧送し、所定位置で汚泥の水上への圧送が終了した後は、前記吸引体を前記吊具を介して上方移動させ、水底地盤上に堆積した汚泥に接触させずに別の所定位置に移動させて、その別の所定位置において同じ手順で水底地盤上に堆積した汚泥を水上に圧送することを特徴とする浚渫方法。
【請求項2】
前記ベース船体の上に前記投入部の延設方向に沿ってスライド部を延設し、前記吊具を支持する吊具支持部を前記スライド部に沿ってスライドさせることにより、前記吸引体を別の所定位置に移動させる請求項1に記載の浚渫方法。
【請求項3】
それぞれの前記ケーシングの底面に複数のジェットノズルを設置し、このジェットノズルの噴出方向を、平面視で前記ガイド板の湾曲面に対する外接線方向で前記吸引口に向かう側に設定し、これらジェットノズルから高圧水を噴出しながら汚泥を吸引する請求項1または2に記載の浚渫方法。
【請求項4】
それぞれの前記ケーシングの底面の外縁部を正面視で円弧状に形成し、この外縁部に前記ジェットノズルを設置し、その噴出方向を正面視で前記外縁部の円弧の外接線方向に設定する請求項3に記載の浚渫方法。
【請求項5】
前記吸引体の下部の外周部分に可撓性のスカート部を垂下して設置する請求項1〜4のいずれかに記載の浚渫方法。
【請求項6】
それぞれの前記ケーシングの底面に着脱自在で高さの異なる複数種類のガイド板のセットを用意し、これらセットの内から、吸引する汚泥の層厚に応じて最適な高さの一種類のセットを選択し、この選択した一種類のセットのガイド板をそれぞれのケーシングの底面に突設する請求項1〜5のいずれかに記載の浚渫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫方法に関し、さらに詳しくは、水底地盤上に広範囲に堆積した汚泥をより効率的に水上に圧送できる浚渫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼や海などの水底地盤上には有害成分を含んだ汚泥が堆積していることがある。例えば、放射能汚染された汚泥が水底地盤上に堆積している場合は、水上に引き上げて適切な浄化処理をする必要がある。水底の汚泥を水上に引き上げる方法は種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、フード部の内周に沿って多数のジェットノズルを配置して、吸引ポンプに向かって水流を生じさせて汚泥を水上に圧送する水底有害物除去装置が提案されている。具体的には、フード部にリング状のジェットノズル用パイプが内設されて、このリング状パイプの内側の範囲にある汚泥がジェットノズルからの高圧水によって吸引ポンプの吸込み口に向かって巻き上げられる。巻き上げられた汚泥は吸引ポンプによる吸引によって水上に圧送される。この装置では、リング状パイプのリング外径が大きくなると対象となる汚泥の範囲が過大になり、ジェットノズルの高圧水による巻上げ水流が設定どおりに発生せずに、汚泥を十分に巻き上げることが困難になるという問題がある。
【0004】
広い範囲を浚渫する場合には、フード部を頻繁に移動させて作業をする必要があるため、作業時間が増大するという問題がある。また、フード部の移動に伴って汚泥が巻き上げられて拡散し易くなるという問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−92410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水底地盤上に広範囲に堆積した汚泥をより効率的に水上に圧送できる浚渫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の浚渫方法は、吸引体として、多孔状の吸引口が平面状の底面の中央部に設けられたケーシングと、平面視で前記吸引口を中心にして湾曲して放射状に前記底面に突設される複数の板状のガイド板とを備えた吸引ヘッドを複数連結して構成したヘッド連結体を使用し、ベース船体の上下に貫通する投入部から吊具を介して前記吸引体を吊下げて、所定位置において前記吸引体を下方移動させて水底地盤に載置した状態にして、水底地盤上に堆積した汚泥を吸引ポンプに連通する前記吸引口から吸引して圧送管を通じて水上に圧送し、所定位置で汚泥の水上への圧送が終了した後は、前記吸引体を前記吊具を介して上方移動させ、水底地盤上に堆積した汚泥に接触させずに別の所定位置に移動させて、その別の所定位置において同じ手順で水底地盤上に堆積した汚泥を水上に圧送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸引体として、多孔状の吸引口が平面状の底面の中央部に設けられたケーシングと、平面視で吸引口を中心にして湾曲して放射状に前記底面に突設される複数の板状のガイド板とを備えた吸引ヘッドを複数連結して構成したヘッド連結体を使用するので、一度に広い範囲の汚泥を吸引して水上に圧送することができる。これにより、吸引体の移動回数を低減できるので、吸引体の移動に伴う汚泥の拡散を防止するには有利になる。
【0009】
吸引体を水底地盤上に載置した際には、ケーシングの底面に突設されたガイド板により堆積した汚泥には切込みが入って細分化されるので、汚泥は流動し易くなる。また、ガイド板に沿った安定した水流が発生するので汚泥を吸引し易くなる。さらには、ガイド板に沿った湾曲した流路が形成されるので、湾曲していない場合に比して汚泥の流路が長くなる。流路が長くなることにより、汚泥が吸引される過程において重たい砂分等は沈み、吸引すべき汚泥のみを吸引し易くなる。加えて、ガイド板がケーシングの底面と水底地盤との間のスペーサとして機能するので、必要な層厚の汚泥を効率的に吸引するには有利になる。
【0010】
ベース船体の上下に貫通する投入部から吊具を介して前記吸引体を吊下げて、吸引体の上下移動や所定位置から別の所定位置への水平移動を行なうので、吸引体を安定して移動させることができる。そして、吸引体を水底地盤上に堆積した汚泥に接触させずに別の所定位置に移動させるので、汚泥の拡散防止には益々有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の浚渫方法を実施している状態を側面視で例示する説明図である。
図2】本発明の浚渫方法を実施している状態を平面視で例示する説明図である。
図3図1の吸引体を例示する側面図である
図4図1の吸引体を例示する平面図である。
図5】吸引体を構成する吸引ヘッドの内部を縦断面で例示する説明図である。
図6図5の吸引ヘッドの底面図である。
図7】汚泥を吸引している図5の吸引ヘッドを底面視で例示する説明図である。
図8】吸引体を別の所定位置に移動させている状態を側面視で例示する説明図である。
図9】吸引体の別の実施形態を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の浚渫方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図4に例示するように本発明に用いる吸引体1は、複数の吸引ヘッド2を連結して構成されたヘッド連結体である。吸引ヘッド2は基本的にすべて同じ仕様であり、
吸引ヘッド2どうしは連結部材10により連結されている。この実施形態では、4個の吸引ヘッド2を外嵌するように設けられた帯状の鋼板が連結部材10として用いられている。連結部材10はその他の部材、手段を用いることができ、特に限定されない。連結部材10と吸引ヘッド2とは、例えば、溶接やボルト固定等により固定される。
【0014】
連結する吸引ヘッド2は複数であり、必要に応じて連結する数が決定される。例えば、2個から10個程度の吸引ヘッド2が連結される。連結する際の吸引ヘッド2の配置も適宜決定される。この実施形態では、2行2列(2×2)で配置されているが、1行4列(1×4)、4行1列(4×1)の配置にすることもできる。6個の吸引ヘッド2を連結する場合は、1行6列(1×6)2行3列(2×3)、3行2列(3×2)、6行1列(6×1)のいずれかの配置にする。
【0015】
それぞれの吸引ヘッド2は、図5図6に例示する構造であり、上部ケーシング3Aと下部ケーシング3Bとを組付けた中空のケーシング3を有している。ケーシング3は平面視で円形であるが四角形やその他の形状を採用することもできる。ケーシング3の外径は、例えば1.5m程度を中心にして1m〜4m程度であるが、この範囲に限定されるものではない。
【0016】
ケーシング3の底面3aは平面状である。底面3aの全範囲を平面状にすることもできるが、この実施形態のように底面3aの外縁部が正面視で円弧状に形成されていることが好ましい。底面3aの中央部には吸引ポンプ9に連通する多数の貫通孔4aで構成された吸引口4が設けられている。ケーシング3に内設された吸引ポンプ9の吸引側には吸引口4に接続され、吸引ポンプ9の吐出側には水上に延びる圧送管8が接続されている。
【0017】
尚、底面3aの中央部とは、底面3aの中心から所定長さまでの範囲であり、この所定長さとは、ケーシング3(底面3a)の外径の10%〜30%程度である。また、底面3aの外縁部とは、底面3aの中心から所定長さ以上外周側の範囲であり、この所定長さとは、ケーシング3(底面3a)の外径の80%程度である。
【0018】
吸引ポンプ9としては、サンドポンプやウォータジェットポンプを用いることができる。この実施形態では、吸引ポンプ9をケーシング3に内設しているが、設置位置はこれに限定されず、ケーシング3の外部、例えばベース船体11の上や陸上に設置して圧送管8に取付けるようにしてもよい。
【0019】
貫通孔4aの大きさは、例えば直径相当で10mm〜50mm程度である。すべての貫通孔4aは同じ大きさにすることもできるが、異なる大きさの貫通孔4aを混在させることもできる。貫通孔4aの数は、適宜決定されるが、例えば5〜100個程度である。
【0020】
吸引ヘッド2にはさらに、平面視で吸引口4を中心にして湾曲して放射状に底面3aに突設される複数の板状のガイド板5と、底面3aに設置される複数のジェットノズル6とが設けられている。
【0021】
ガイド板5は基本的にすべて同じ仕様であり、底面3aの中央部(中央部の外縁)から外縁部にまで延びている。この実施形態ではガイド板5の枚数が12枚であるが、枚数はこれに限らず、例えば、4枚〜16枚程度にする。ガイド板5は周方向に等間隔で配置することが好ましいが、不等間隔で配置することも可能である。
【0022】
ガイド板5の高さ(底面3aからの突出高さ)は、吸引する汚泥Gの層厚に応じて決定されるが、例えば、5cmm〜20cm程度、或いは、5cm〜10cm程度である。そして、少なくとも底面3aの平面に対応する位置では、ガイド板5の高さは一定になっている。ガイド板5の高さを長手方向全長において一定にすることもできる。
【0023】
ジェットノズル6は基本的にすべて同じ仕様になっている。この実施形態では、ジェットノズル6の個数が6個であり、周方向に隣り合うガイド板5の間に1つおきに配置されている。ジェットノズル6の個数はこれに限らず、例えば、ガイド板5の枚数に応じて2個〜16個設置する。周方向に隣り合うガイド板5の間に2つおきに配置することも、隣り合うガイド板5の間のすべてに配置することもできる。ジェットノズル6は周方向に等間隔で配置することが好ましいが、不等間隔で配置することも可能である。
【0024】
ジェットノズル6からは高圧水供給源から供給される高圧水が噴出されるが、この噴出方向は平面視でガイド板5の湾曲面に対する外接線方向であり、その外接線方向のうちの吸引口4に向かう側に設定されている。
【0025】
ジェットノズル6は、底面3aのなるべく外周側に設置されるのが好ましい。この実施形態では、ジェットノズル6が底面3aの外縁部に設置され、その噴出方向が正面視で外縁部の円弧の外接線方向に設定されている。即ち、正面視では、ジェットノズル6の噴出方向は、水平よりも下側に傾斜した向きにするのが好ましい。
【0026】
吸引体1は、連結部材10やケーシング3に設けられた吊部17aに係止したワイヤ等の吊具14を介して水上のベース船体11から吊下げられる。ベース船体11は、例えば、複数の台船11aを連結することにより形成される。この実施形態では、8艘の台船11aが連結されているが、連結する台船11aの数は適宜決定される。台船11aは、ベース船体11が上下に貫通する投入部13を具備するように配置されて連結される。或いは、複数の台船11aを連結することなく、上下に貫通する投入部13を有する単独のベース船体11を用いることもできる。
【0027】
ベース船体11の上には、吊具14を支持する櫓状の吊具支持部17が設けられている。この吊具支持部17に設置されたウインチ15による吊具14の繰出しおよび巻取りによって吸引体1は上下移動される。複数本の吊具14により吸引体1を吊下げることにより、吸引体1の姿勢制御をし易くなる。吊具支持部17には、それぞれの吊具14の繰出し量および巻取り量を検知する線長計(ロータリーエンコーダ)16が設けられている。
【0028】
ベース船体11の上には、投入部13の延設方向に沿ってスライド部12が延設されている。吊具支持部17は、溝やレール等からなるスライド部12にガイドされて、スライド部12(投入部13)に沿ってスライド移動できる構成になっている。
【0029】
この吸引体1を用いた本発明の浚渫方法は以下のとおりである。
【0030】
図1図3に例示するように、吸引体1を吊具14を介してベース船体11の投入部13から吊下げて、所定位置において吸引体1を下方移動させて水底地盤Bに載置する。即ち、吊具14には吸引体1による荷重を負担させることなく、吸引体1を水底地盤Bの上に置いた状態にする。この工程中、ベース船体11はアンカー等によって一定位置に固定させておく。
【0031】
この状態で、図5図6に例示するように、ジェットノズル6から高圧水を噴出するとともに、吸引ポンプ9の吸引により、水底地盤B上に堆積している放射能等によって汚染された汚泥Gを吸引口4から吸引する。吸引体1を水底地盤B上に載置した際に、ケーシング3の底面3aから突出するガイド板5によって、堆積した汚泥Gには切込みが入って細分化される。この汚泥Gの細分化と、形成された切り込みが水の流路になることにより、ジェットノズル6から高圧水を噴出すると汚泥Gは流動し易くなり、吸引口4を中心にした渦巻き状の流れになって汚泥Gが吸引される。
【0032】
高圧水は正面視では底面3aに沿って流れ、平面視ではガイド板5の湾曲に沿って流れる。これにより図7に例示するように、汚泥Gは高圧水と混合してガイド板5に沿って吸引口4(貫通孔4a)に向かって吸引される。ガイド板5に沿って安定した水流が発生するので汚泥Gを吸引し易くなる。
【0033】
また、ガイド板5に沿った湾曲した汚泥Gの流路が形成されるので、湾曲していない場合に比して汚泥Gの流路が長くなる。流路が長くなることにより、汚泥Gが吸引される過程において重たい砂分等は沈み、吸引すべき汚泥Gのみを吸引し易くなる。
【0034】
ガイド板5は、ケーシング3の底面3aと水底地盤Bとの間のスペーサとして機能するので、必要な層厚の汚泥Gを効率的に吸引するには有利になる。そのため、ガイド板5の高さは、吸引する汚泥Gの層厚と同等にするとよい。
【0035】
そこで、それぞれのケーシング3の底面3aに着脱自在で高さの異なる複数種類のガイド板5のセットを用意しておくとよい。これらセットの内から、吸引する汚泥Gの層厚に応じて最適な高さ(吸引する汚泥Gの層厚に一番近い高さ)の一種類のセットを選択する。そして、選択した一種類のセットのガイド板5をそれぞれのケーシング3の底面3aに突設する。
【0036】
吸引された汚泥Gは、ケーシング3から水上に延設された圧送管8を通じて水上に圧送される。その所定位置の汚泥Gの水上への移送が終了した後は、図8に例示するように、吸引体1を吊具14を介して水底地盤B上に堆積した汚泥Gに接触しない位置まで上方移動させ、次いで、吸引体1を別の所定位置に移動させる。この実施形態では、吊具支持体17をスライド部12に沿ってスライドさせるだけで、吸引体1を別の所定位置に円滑に安定して移動させることができる。吸引体1を移動させた別の所定位置においては、上述した同じ手順で水底地盤B上に堆積した汚泥Gを水上に圧送する。この工程を繰り返し行なって汚泥Gを浚渫する。
【0037】
吸引体1を投入部13の延設方向に順次移動させて、ベース船体11を固定した位置での所定領域の浚渫が完了した後は、ベース船体11を次の場所に移動させる。ベース船体11の移動には例えば、曳き船を用いる。或いは、陸上に設置したウインチに巻かれたワイヤをベース船体11に取付けて、陸上のウインチを巻き取ることによりベース船体11を移動させる。ベース船体11を次の場所に移動させた後、その場所にベース船体11を固定する。そして、その場所において、上述したように吸引体1を投入部13の延設方向に順次移動させて汚泥Gを浚渫する。
【0038】
本発明によれば、吸引ヘッド2を複数連結して構成したヘッド連結体を吸引体1として使用するので、一度に広い範囲の汚泥Gを吸引して水上に圧送することができる。それ故、1つの吸引ヘッド2を用いて浚渫する場合に比して、吸引体1の移動回数を低減できるので、吸引体1の移動に伴う汚泥Gの拡散防止には有利になる。また、吸引ヘッド2が上述した特別な構造をしているので、汚泥Gを吸引し易くなるとともに、必要な層厚の汚泥Gを効率的に吸引するには有利になる。
【0039】
また、ベース船体11の投入部13から吊具14を介して吸引体1を吊下げて、吸引体1の上下移動や所定位置から別の所定位置への水平移動を行なうので、吸引体1を安定して移動させることができる。そして、吸引体1を水底地盤B上に堆積した汚泥Gに接触させずに別の所定位置に移動させるので、汚泥Gの拡散防止には益々有利になる。
【0040】
図9に例示するように、吸引体1の下部の外周部分にゴム等で形成された可撓性のスカート部7を垂下して設置することもできる。このスカート部7により、高圧水と混合して吸引される汚泥Gがスカート部7の外側に拡散することを防止できる。また、スカート部7で囲まれた内側領域が閉じた領域となるので、汚泥Gを効率的に吸引し易くなる。
【0041】
スカート部7の下端位置は、ガイド板5の下端位置を同じに設定するとよい、この実施形態では、多数の四角形状のゴム板を吸引体1の外周面に周方向にすき間なく環状に並べてスカート部7を形成しているが、1枚の長尺状のゴム板を周方向に巻き付けてスカート部7を形成することもできる。
【0042】
本発明においては、既述したジェットノズル6を設けない仕様の吸引ヘッド2を用いることもできる。その他の構成は先の実施形態に使用した吸引ヘッド2と同じにする。この仕様の吸引ヘッド2を用いて浚渫する場合は、ジェットノズル6から高圧水を噴出することを除いて先の実施形態と同様である。汚泥Gが柔らかい場合(ふわふわした汚泥G)には、この仕様の吸引ヘッド2を用いるとよい。
【符号の説明】
【0043】
1 吸引体(ヘッド連結体)
2 吸引ヘッド
3 ケーシング
3A 上部ケーシング
3B 下部ケーシング
3a 底面
4 吸引口
4a 貫通孔
5 ガイド板
6 ジェットノズル
7 スカート部
8 圧送管
9 吸引ポンプ
10 連結部材
11 ベース船体
11a 台船
12 スライド部
13 投入部
14 吊具
15 ウインチ
16 線長計
17 吊具支持部
17a 吊部
B 水底地盤
G 汚泥
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9