特許第5948217号(P5948217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5948217集合住宅における燃料電池の稼動制御方法および稼動制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948217
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】集合住宅における燃料電池の稼動制御方法および稼動制御システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20160623BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20160623BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20160623BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20160623BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20160623BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20160623BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H02J3/46 E
   H02J3/00 A
   H02J3/38 G
   H02J3/00 G
   H01M8/00 Z
   H01M8/04 P
   F24H1/00 631A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-236352(P2012-236352)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-86367(P2014-86367A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(74)【復代理人】
【識別番号】100156410
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 輝和
(72)【発明者】
【氏名】矢作 正博
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−102364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
F24H 1/00
H02J 3/00
H02J 3/38
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の燃料電池と、
前記燃料電池の廃熱を利用して生成されたお湯を貯留する複数台の貯湯槽と、
前記燃料電池の運転を制御する制御部と、
を具備し、
集合住宅において、前記貯湯槽は、複数戸の小グループに1台割り当てられ、
前記制御部は、
前記小グループごとの熱利用予測から、それぞれの前記小グループごとの複数台の前記燃料電池の初期稼動計画を立て、この際における前記集合住宅の全体の受電コスト、燃料コストおよび燃料電池の稼動コストから初期コストを算出し、
前記集合住宅の全体の所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が最大かつ所定量以上の対象時間に対し、前記対象時間に最も近い時間に稼動開始または停止予定の前記燃料電池の稼動計画を変更し、前記対象時間に稼動する前記燃料電池の台数を増加するように前記燃料電池の稼働計画を補正し、補正後の稼働計画における前記集合住宅の全体の受電コスト、燃料コストおよび燃料電池の稼動コストから補正コストを算出し、
前記初期コストおよび前記補正コストを比較して、コストの低い稼動計画で前記燃料電池の稼働を制御することを特徴とする集合住宅における燃料電池の稼動制御方法。
【請求項2】
全ての時間において、所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が所定量以下となるまで上記補正を繰り返し、前記初期コストおよび補正後のそれぞれの稼動計画におけるそれぞれの前記補正コストを比較して、最もコストの低い稼動計画で前記燃料電池の稼働を制御することを特徴とする請求項1記載の集合住宅における燃料電池の稼動制御方法。
【請求項3】
前記燃料電池の稼働計画を補正する際に、
前記燃料電池が一日の間に一度の連続運転を行う第1条件と、
前記対象時間に前記燃料電池の稼働数を増加するに当たって、他の時間における前記燃料電池の稼働数を減じ、この際の前記他の時間における予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が前記所定量を超えない第2条件と、をいずれも満たすように、稼働計画を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の集合住宅における燃料電池の稼動制御方法。
【請求項4】
前記初期稼動計画を立てた後、所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の過剰分が生じないように、さらに、発電量が過剰となる時間の前記燃料電池の稼働数を減じ、前記対象時間に対する稼働計画の補正を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の集合住宅における燃料電池の稼動制御方法。
【請求項5】
さらに蓄電池を具備し、
前記対象時間に対し、前記蓄電池による放電によって予想購入電力量を低減する場合における補正コストと、前記燃料電池の稼働計画を補正することによる補正コストとを比較して、コストの低い方法を選択することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の集合住宅における燃料電池の稼動制御方法。
【請求項6】
複数台の燃料電池と、
前記燃料電池の廃熱を利用して生成されたお湯を貯留する複数台の貯湯槽と、
前記燃料電池の運転を制御する制御部と、
を具備し、
1台の前記貯湯槽が複数台の前記燃料電池と接続され、
集合住宅において、前記貯湯槽は、複数戸の小グループに1台割り当てられ、
前記制御部は、
前記小グループごとの熱利用予測から、それぞれの前記小グループごとの前記燃料電池の初期稼動計画を立てる初期稼働計画立案手段と、
前記初期稼働計画における前記集合住宅の全体の受電コスト、燃料コストおよび燃料電池の稼動コストから初期コストを算出する初期コスト算出手段と、
前記集合住宅の全体の所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が最大かつ所定量以上の対象時間に対し、前記対象時間に最も近い時間に稼動または停止予定の前記燃料電池の稼動計画を変更し、前記対象時間に稼動する燃料電池を増加するように前記燃料電池の稼働計画を補正する稼働計画補正手段と、
補正後の稼働計画における前記集合住宅の全体の受電コスト、燃料コストおよび燃料電池の稼動コストから補正コストを算出する補正コスト算出手段と、
所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が所定量以下となるまで上記補正を繰り返し、初期コストおよび補正後のそれぞれの稼動計画におけるそれぞれの前記補正コストを比較して、最もコストの低い稼動計画を決定する稼働計画決定手段と、
前記稼働計画決定手段で決定された稼働計画で前記燃料電池の稼働を制御する燃料電池稼働制御手段と、
を具備することを特徴とする集合住宅における燃料電池の稼動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーコストを最小とするように、複数台の燃料電池の稼働を制御することが可能な集合住宅における燃料電池の稼動制御方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの意識が高まっており、家庭用の燃料電池が注目されている。特に、集合住宅においては、集合住宅全体に複数台の燃料電池を設置する方法がある。
【0003】
例えば、集合住宅の3戸に対して1台の熱電気併給装置(燃料電池と貯湯槽とが1対1で構成される装置)が設けられるコジェネレーションシステムがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−199254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の特許文献1には、電力消費状態および温水消費状態に基づいて熱電気併給装置の運転台数を決定する旨の記載はあるが、具体的な制御フローや判断基準等は不明である。また、燃料電池は、発電を行うとともに、熱を利用してお湯を生成して、貯湯槽に熱を貯めることができる。しかし、熱需要のタイミングと電気需要のタイミングとは必ずしも一致せず、単に熱のみ、または電気のみの需要に応じて燃料電池等の運転を制御したのでは、かえってトータルエネルギーコストが増大する恐れもある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、トータルエネルギーコストを最小化することが可能な燃料電池の稼動制御方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達するために第1の発明は、複数台の燃料電池と、前記燃料電池の廃熱を利用して生成されたお湯を貯留する複数台の貯湯槽と、前記燃料電池の運転を制御する制御部と、を具備し、集合住宅において、前記貯湯槽は、複数戸の小グループに1台割り当てられ、前記制御部は、前記小グループごとの熱利用予測から、それぞれの前記小グループごとの複数台の前記燃料電池の初期稼動計画を立て、この際における前記集合住宅の全体の受電コスト、燃料コストおよび燃料電池の稼動コストから初期コストを算出し、前記集合住宅の全体の所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が最大かつ所定量以上の対象時間に対し、前記対象時間に最も近い時間に稼動開始または停止予定の前記燃料電池の稼動計画を変更し、前記対象時間に稼動する前記燃料電池の台数を増加するように前記燃料電池の稼働計画を補正し、補正後の稼働計画における前記集合住宅の全体の受電コスト、燃料コストおよび燃料電池の稼動コストから補正コストを算出し、前記初期コストおよび前記補正コストを比較して、最もコストの低い稼動計画で前記燃料電池の稼働を制御することを特徴とする集合住宅における燃料電池の稼動制御方法である。
【0008】
このようにすることで、まず、小グループ毎の必要な熱需要に基づいて、複数台の燃料電池の運転計画を作成するため、必要な熱量を必要なタイミングで確保することができる。また、全体の予想電気使用量に対して、全体の発電予定量が所定量以上不足する時間(すなわち、電力会社から電気を購入する電力量が所定量以上の時間帯)に対して、燃料電池の稼働数を増やすように、燃料電池の稼働数を制御するため、電気料金を削減することができる。この際、対象時間に最も近い時間に稼動開始または停止予定の燃料電池の稼動計画を変更するため、熱需要に対する影響を最小限に抑えることができる。
【0009】
また、貯湯槽を集合住宅の小グループに対して1台配置することで、個々の住戸毎に貯湯槽を配置する場合と比較して、熱需要のばらつきの影響を小さくすることができる。また、集合住宅全体に対して大きな貯湯槽を設置する場合と比較して、配管長を短くすることができるため、配管ロスを小さくすることができる。
【0010】
また、集合住宅全体で一括受電契約を行っている場合、その契約電力を抑えることは電気料金を抑える上で重要である。この時、住戸ごとにその使用電力に応じて燃料電池を発電する方法と比較して、集合住宅全体に複数台の発電電力を供給できる方法の方が、電力需要のばらつきの影響が小さく、燃料電池の稼働率を向上させることが出来る。
【0011】
また、本発明では、全ての時間において、所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が所定量以下となるまで上記補正を繰り返し、前記初期コストおよび補正後のそれぞれの稼動計画におけるそれぞれの前記補正コストを比較して、最もコストの低い稼動計画で前記燃料電池の稼働を制御することが望ましい。
【0012】
このようにすることで、例えば契約電力(基本料金)を超えないように、燃料電池の稼働を制御することができ、トータルエネルギーコストを最小化することができる。
【0013】
また、本発明では、前記燃料電池の稼働計画を補正する際に、前記燃料電池が一日の間に一度の連続運転を行う第1条件と、前記対象時間に前記燃料電池の稼働数を増加するに当たって、他の時間における前記燃料電池の稼働数を減じ、この際の前記他の時間における予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が前記所定量を超えない第2条件と、をいずれも満たすように、稼働計画を補正することが望ましい。
【0014】
このようにすることで、燃料電池の耐久性を確保し、効率良く燃料電池を稼働させることができる。また、燃料電池の稼働条件を変更する際に、契約電力(基本料金)を超えないように、燃料電池の稼働を制御することができる。
【0015】
また、本発明では、前記初期稼動計画を立てた後、所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の過剰分が生じないように、さらに、発電量が過剰となる時間の前記燃料電池の稼働数を減じ、前記対象時間に対する稼働計画の補正を行うことが望ましい。
【0016】
このようにすることで、発電した電力の逆潮流を防止することができる。
【0017】
また、本発明では、さらに蓄電池を具備し、前記対象時間に対し、前記蓄電池による放電によって予想購入電力量を低減する場合における補正コストと、前記燃料電池の稼働計画を補正することによる補正コストとを比較して、コストの低い方法を選択することが望ましい。
【0018】
このようにすることで、例えば夜間の電力を蓄電して、昼間の電気需要の多い時間帯に活用することができる。
【0019】
第2の発明は、複数台の燃料電池と、前記燃料電池の廃熱を利用して生成されたお湯を貯留する複数台の貯湯槽と、前記燃料電池の運転を制御する制御部と、を具備し、1台の前記貯湯槽が複数台の前記燃料電池と接続され、集合住宅において、前記貯湯槽は、複数戸の小グループに1台割り当てられ、前記制御部は、前記小グループごとの熱利用予測から、それぞれの前記小グループごとの前記燃料電池の初期稼動計画を立てる初期稼働計画立案手段と、前記初期稼働計画における前記集合住宅の全体の受電コスト、燃料コストおよび燃料電池の稼動コストから初期コストを算出する初期コスト算出手段と、前記集合住宅の全体の所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が最大かつ所定量以上の対象時間に対し、前記対象時間に最も近い時間に稼動または停止予定の前記燃料電池の稼動計画を変更し、前記対象時間に稼動する燃料電池を増加するように前記燃料電池の稼働計画を補正する稼働計画補正手段と、補正後の稼働計画における前記集合住宅の全体の受電コスト、燃料コストおよび燃料電池の稼動コストから補正コストを算出する補正コスト算出手段と、所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が所定量以下となるまで上記補正を繰り返し、初期コストおよび補正後のそれぞれの稼動計画におけるそれぞれの前記補正コストを比較して、最もコストの低い稼動計画を決定する稼働計画決定手段と、前記稼働計画決定手段で決定された稼働計画で前記燃料電池の稼働を制御する燃料電池稼働制御手段と、を具備することを特徴とする集合住宅における燃料電池の稼動制御システムである。
【0020】
このようにすることで、熱需要と電気需要とを考慮して、最もコストの低い稼働条件によって、燃料電池を制御することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トータルエネルギーコストを最小化することが可能な燃料電池の稼動制御方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】燃料電池の稼働制御システム1の構成を示す図。
図2】燃料電池の稼働制御システム1の制御方法を示すフローチャート。
図3】小グループ11a〜11eの熱需要の一例を示す図。
図4】小グループ11a〜11eの燃料電池の発電予定の一例を示す図。
図5】(a)は集合住宅全体の発電予定量と予想電気使用量の一例を示す図、(b)は予想電気使用量と発電予定量との差である予想購入電力量を示す図。
図6】(a)は補正後の集合住宅全体の発電予定量と予想電気使用量の一例を示す図、(b)は補正後の予想電気使用量と発電予定量との差である予想購入電力量を示す図。
図7】補正後の小グループ11a〜11eの燃料電池の発電予定の一例を示す図。
図8】(a)は最終的な集合住宅全体の発電予定量と予想電気使用量の一例を示す図、(b)は最終的な予想電気使用量と発電予定量との差である予想購入電力量を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、燃料電池の稼働制御システム1の構成を示す図である。燃料電池の稼働制御システム1は、集合住宅9に適用されるものであり、制御部3、燃料電池5、貯湯槽7等から構成される。
【0024】
集合住宅9には、複数台の燃料電池5が接続される。燃料電池5は、例えばガス燃料によって発電可能である。発電された電力は、集合住宅9に使用される。制御部3は、それぞれの燃料電池5の稼働を制御する。制御部3は、例えばコンピュータであって、各種データを保存する記憶部と、演算を行うCPU等の演算部を有する。また、制御部3は、各家庭における各種データ等を取得するデータ入力部と、燃料電池5に対して制御信号を出力する信号出力部を有する。
【0025】
複数台の燃料電池5に対して、1台の貯湯槽7が接続される。燃料電池5で回収された熱は、お湯となって貯湯槽7に貯められる。このようにして貯められたお湯は、各需要者(各家庭)で使用することができる。
【0026】
集合住宅9は、例えば同一階などの比較的近い複数の住戸によって、小グループ11a〜11eに区分される。図に示した例では、同一階の4つの住戸によって、小グループ11a〜11eが区分される。小グループ11a〜11eには、それぞれ、貯湯槽7が1台ずつ接続される。貯湯槽7には、お湯が貯められる。すなわち、1台の貯湯槽7は、複数の住戸の熱需要に対応する。
【0027】
なお、集合住宅9における電気需要が燃料電池5による発電量を超えると、集合住宅9には電力会社からの交流配電線13から電力が供給される。また、燃料電池5の稼働に必要な電力なども、交流配電線13から電力が供給される。
【0028】
ここで、本発明のように、集合住宅9において一括受電する場合には、契約電力を抑えることが電気料金(基本料金)を抑えるための重要な手段である。すなわち、30分最大電気使用量を所定量以下に抑制することが望ましい。したがって、複数台の燃料電池は、各家庭の電力需要の多い時間帯に発電させ、逆に発電需要の少ない時間帯では停止させることがコスト上有利となる。
【0029】
一方、貯湯槽7に貯められたお湯は、時間とともに温度が低下する。また、貯湯槽7が満タンの状態では、それ以上お湯を作ることができない場合がある。この状態では、発電を行っても、その際の熱を有効に利用することができない。
【0030】
また、貯湯槽7に十分にお湯が貯められていない状態で、熱需要がある場合には、不足する熱量に対し、バックアップ用の給湯器等によってお湯を作る必要がある。したがって、エネルギー消費量が増大し、発電時に生成される熱が有効に利用されない。したがって、貯湯槽7には、各家庭(各小グループ)でのお湯の需要(本発明では熱需要とする)に合わせてお湯を貯めることが望ましい。
【0031】
なお、燃料電池5を稼働させて、貯湯槽7にその廃熱を必要十分に蓄熱させるためには、燃料電池5の起動後数時間〜十数時間を要する。したがって、熱需要と電気需要の双方を考慮して、トータルエネルギーコストが最小となるように、燃料電池5の稼働を制御する必要がある。
【0032】
次に、燃料電池の稼働制御システム1の機能について説明する。図2は、燃料電池の稼働制御システム1により、燃料電池5の稼働を制御する工程を示す図である。まず、制御部3は、小グループ11a〜11eそれぞれの熱利用予測から、小グループ11a〜11eごとの燃料電池の初期稼働計画を立てる(ステップ101)。小グループ11a〜11eそれぞれの熱利用予測は、記憶部に記憶されており、例えば、過去の所定期間、所定条件(気温や季節、曜日など)に基づいて予測される。
【0033】
図3は、小グループ11a〜11eそれぞれの熱利用予測の一例を示す図である。縦軸は、熱需要量であり、横軸は時刻である。通常、熱需要は、お風呂の時間が最も大きくなる。そこで、本発明では、小グループ11a〜11eにおいて、最初に熱需要の所定量以上のピークが来る時間(すなわち、小グループを構成する住戸の内、最も早い時間にお風呂を使用すると予測される時間)に対して、小グループ全体に対する一日の総熱需要があるとして、小グループ11a〜11eそれぞれの熱利用を予測する。例えば、小グループ11eでは、小グループ11eの一日の全体の熱需要が17時にあるとする。
【0034】
前述したように、熱利用予測に対して、必要な熱量(湯量)を貯めるためには、その数時間から十数時間前に燃料電池5を起動する必要がある。図に示すように、小グループ11a〜11eそれぞれの熱利用予測に対応するためには、それぞれ時刻A〜Eに燃料電池を起動する必要がある。
【0035】
図4は、このようにして設定された、燃料電池5の稼働状態、すなわち発電予定量を示す図である。なお、各小グループ11a〜11eにおいて、2段に記載されているのは、本実施形態において、それぞれの貯湯槽7には、2台の燃料電池5が接続されているためである(図1)。なお、燃料電池5は、常に最大出力(定格出力)で稼働するため、発電量は、燃料電池5の稼働数に比例する。
【0036】
次に、制御部3は、発電予定量と予想電気使用量とを算出する。図5(a)は、時間毎における燃料電池5による発電予定量(ハッチング部)と、予想電気使用量(図中F線)を示す図である。発電予定量は、図4に示す各小グループ11a〜11eの発電予定量を時間毎に加算したものであり、図中11a〜11eは、小グループ11a〜11eそれぞれの発電量に対応する。予想電気使用量は、記憶部に記憶されており、例えば、過去の所定期間、所定条件(気温や季節、曜日など)に基づいて予測される。
【0037】
次に、制御部3は、予想電気使用量から発電予定量を減じる。すなわち、集合住宅9全体において、時間毎の電力会社から購入する電力量を算出する。例えば、21時においては、図中Gが、電力会社から電力を購入する予想購入電力量となる。
【0038】
図5(b)は、時間毎における予想購入電力量を示す図である。制御部3は、この状態における、受電コスト、燃料コスト、燃料電池の稼働コストから、初期コストを算出する(ステップ102)。すなわち、制御部3は、燃料電池5の稼働条件および予想購入電力量等からトータルエネルギーコストを算出する。
【0039】
ここで、受電コストには、時間毎の電気料金や、契約電力などが考慮される。契約電力は、通常、30分毎の電力消費量(1時間換算)が、契約電力を超えると、より高い電力料金を支払う必要がある。したがって、30分毎の電力消費量(1時間換算)が契約電力を超えるか否かによって、受電コストは大きく変化する。なお、燃料コストは、燃料電池を稼働するために必要な燃料や、バックアップ用の給湯器等によって消費される燃料のコストである。また、燃料電池の稼働コストは、燃料電池に稼働に必要な電力等のコストである。
【0040】
次に、制御部3は、予想電気使用量と初期稼働計画による燃料電池5の発電予定量とを時間毎に比較する。また、制御部3は、所定時間ごとの予想電気使用量に対する発電予定量の不足分が最大かつ所定量以上の対象時間に特定する。さらに制御部3は、当該対象時間に最も近い時間に稼動開始または停止予定の燃料電池5の稼動計画を変更し、対象時間に稼動する燃料電池の台数を増加するように前記燃料電池の稼働計画を補正する(ステップ103)。
【0041】
図5(b)に示す例では、例えば契約電力がHである場合に、契約電力を超え、かつ電力使用量と発電予定量との差(予想購入電力量)が最大となるのは、21時である。ここで、図4に示すように、21時に最も近い時間に稼働を開始または停止予定の燃料電池は、小グループ11cの燃料電池である。図示した例では、小グループ11cの燃料電池5は、20時で稼働停止予定である。
【0042】
そこで、制御部3は、小グループ11cの燃料電池5の稼働予定を補正する。本実施例では、図6(a)に示すように、20時に稼働停止する予定の1台分の燃料電池5を21時まで延長する。すなわち、21時に稼働する燃料電池5が1台増加する。この際、当該燃料電池5の起動を1時間遅らせる。したがって、当該燃料電池5は、15時〜20時までの稼働予定であったものが、16時〜21時に補正される。すなわち、当該燃料電池5の15時の稼働分を21時に移動させることとなる(図中矢印I)。
【0043】
このように、燃料電池5の稼働時間を変えずに、稼動開始のタイミングのみを変更することで、燃料電池5から発生する総熱量は変化することがない。したがって、熱需要に対して、ターゲットとなる熱量を貯湯槽7に貯めるタイミングが少しずれるものの、熱需要に対しても適用することができる。
【0044】
図6(b)は、上述のような補正後の、予想購入電力量を示す図である。図に示すように、21時における不足分が若干低下するとともに、15時における不足分が増加する(図中矢印J方向)。
【0045】
次に、制御部3は、補正後の燃料電池5の稼働に対して、受電コスト、燃料コスト、燃料電池の稼働コストから、補正コストを算出する(ステップ104)。制御部3は、この状態の稼働計画と、補正コストとを合わせて記憶部に記憶する。
【0046】
制御部3は、契約電力を超える予想購入電力量がなくなるまで、上記の補正を繰り返す(ステップ105)。図7は、それぞれの燃料電池5の稼働の補正を繰り返した状態を示す図である。また、図8(a)は、このような補正後の時間毎の発電予定量および予想電気使用量を示す図、図8(b)は、予想購入電力量を示す図である。
【0047】
このように、全ての時間に対して契約電力を下回ると、制御部3は、補正条件毎の補正コストの算出を終了する。また、制御部3は、初期コストおよび各補正コストを比較して、最もコストの低い稼働計画を抽出し、燃料電池5を制御する(ステップ106)。なお、通常は契約電力を超えない条件が最もコストが低いため、最終的なコストが最も低くなる。しかし、本発明では、必ずしも全ての予想購入電力量が契約電力を下回るまで計算を繰り返す必要はなく、また、契約電力を下回った後にも、上記補正を繰り返しても良い。
【0048】
また、本発明では、補正において、以下の点を考慮することが望ましい。まず、予想購入電力量が最も大きな対象時刻に対して、燃料電池5の稼働数を増加させる際(例えば図6(a)の21時)、燃料電池5の稼働数が減る時刻(例えば図6(a)の15時)の予想購入電力量が、契約電力を超える場合には、他の燃料電池5の稼働を変更する。すなわち、対象時間に最も近い時間に稼動開始または停止予定の燃料電池5に代えて、2番目、3番目、・・・に近い燃料電池の稼動計画を変更す。このように、ある時刻の燃料電池5の稼働数を減らすことで、当該時刻の予想購入電力量が契約電力を超える場合には、当該時刻からは、燃料電池5の稼働数を減らさず、他の時刻に稼働を開始または停止する燃料電池5の稼働時間を変更する。
【0049】
また、燃料電池5は、一日に一度のみの稼働とする。燃料電池5は、起動直後は発電することができず、安定して発電するまでには時間を要する。したがって、一日に複数回の起動および停止を繰り返すことは効率が悪い。また、燃料電池5の耐久性の観点からも、短時間での起動と停止とを繰り返すことは望ましくない。したがって、各燃料電池5は、一日に一度だけ、起動から停止まで連続して稼働させる物とする。
【0050】
また、当該システムにおいて、逆潮流を防止する必要がある場合には、予想購入電力量がマイナス(すなわち、購入する電力量よりも発電量が大きい状態)にならないように、燃料電池5の稼働を補正する必要がある。すなわち、予想購入電力量がマイナスとなる対象時刻における燃料電池5の稼働数を減じる。なお、燃料電池の稼働時間を減じた分は、より予想購入電力量の大きな時間に稼働時間を移動する。
【0051】
なお、本発明は、蓄電池と組み合わせることもできる。蓄電池と組み合わせるためには、例えば、夜間に蓄電池に安価な電力を蓄電し、昼間の最も予想購入電力量の大きな時間に放電すればよい。この場合には、この蓄電池への蓄電および放電によるコストも加味し、トータルエネルギーコストが算出される。さらに、太陽光発電と組み合わせることもできる。この場合には、翌日の天候を考慮した上で、太陽光発電による発電量を予測し、これを考慮した上で、燃料電池5の稼働を計画すればよい。
【0052】
以上、本発明によれば、熱需要と電気需要の両方を考慮し、最もトータルエネルギーコストが小さくなるように、燃料電池5の稼働を計画するため、最適な燃料電池の稼働計画を得ることができる。特に、小グループにおける熱需要を、ある時刻に設定し、この時刻に向けて貯湯槽7に熱を貯めるため、熱不足によるエネルギーコストの増大や、貯湯槽7による温度低下の影響を小さくすることができる。
【0053】
また、1台の貯湯槽7により、小グループ化された複数の住戸を賄うため、住戸ごとのばらつきを平均化することができる。したがって、熱需要のばらつきの影響を抑制することができる。これに対し、燃料電池5による発電は、集合住宅9全体の電気需要に対応する。したがって、集合住宅9全体の発電量に対して、適切に燃料電池5の稼働計画を立案することができる。
【0054】
また、熱需要のみによって立案された燃料電池5の初期稼働計画に対し、予想購入電力量が所定電力(契約電力)を超えないように、補正を繰り返すことで、電気料金(基本料金)を抑えることができる。また、補正を繰り返し、補正条件ごとの補正コストを比較することで、トータルエネルギーコストが最も低い稼働計画を得ることができる。
【0055】
また、補正において、燃料電池の稼働条件として、一日に一度の稼働とすることで、燃料電池の発電効率に優れ、燃料電池の耐久性にも悪影響がない。また、燃料電池5の稼働数を減じる場合に、稼働を減じる時刻の予想購入電力量が所定電力(契約電力)以上の場合には、当該時刻における燃料電池の稼働数を減じないようにすることで、トータルエネルギーコストが最も低い稼働計画を確実に得ることができる。
【0056】
また、所定時間ごとの予想購入電力量に対する発電予定量の過剰分が生じないように、燃料電池5の稼働計画を立案することで、電力の逆潮流を防止することができる。また、蓄電池と組み合わせることで、夜間の安い電力を昼間に使用することもできる。
【0057】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、小グループ11a〜11eを構成する戸数は、前述した例には限られない。また、1台の貯湯槽7に接続される燃料電池5の台数や、燃料電池5の総台数も、前述した例には限られない。
【符号の説明】
【0059】
1………燃料電池の稼働制御システム
3………制御部
5………燃料電池
7………貯湯槽
9………集合住宅
11a〜11e………小グループ
13………交流配電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8