(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮ばねの付勢力によって付勢される第1ピストンが収容された一次側チャンバーを構成する片側有底筒状の第1ケースと、圧縮空気の供給によって移動される第2ピストンが収容された二次側チャンバーを構成する円筒状の第2ケースと、両ケースを連結する連結ケースと、を備え、
前記第1ピストンに設けられたプッシュロッドが前記一次側チャンバーと前記二次側チャンバーとの連結部に形成された連通孔に挿通され、前記圧縮ばねによって付勢された際に前記第2ピストンを保持するスプリングブレーキチャンバーにおいて、
前記第1ケースを鍛造によって形成し、
前記第1ケースの底部には、前記プッシュロッドが通常操作で移動できなくなった際に前記プッシュロッドを機械的にブレーキ非作動位置まで移動させるリリースボルトを巻き上げる螺子部を一体形成した
ことを特徴とするスプリングブレーキチャンバー。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック、トレーラ等の大型車両の制動装置には、駆動装置としてスプリングブレーキチャンバーが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
スプリングブレーキチャンバーは、有底円筒状の一次側チャンバーと、一次側チャンバーに連結された片側有底円筒状の二次側チャンバーとを備えている。二次側チャンバーの一次側チャンバーが連結される面と反対側には、第2プッシュロッドが挿通される円筒状のロッド挿通部が設けられている。
【0003】
スプリングブレーキチャンバーは、一次側チャンバーを構成する片側有底円筒状の第1ケースと、一次側チャンバーを構成するとともに、二次側チャンバーを構成する連結ケースと、二次側チャンバーを構成する円筒状の第2ケースとを備えている。連結ケースは、断面I字状であって、第1ケースを閉蓋することで一次側チャンバーを構成するとともに、第2ケースを閉蓋することで二次側チャンバーを構成する。第1ケースと連結ケースとはクランプリングによって締付固定、もしくは第1ケースの開口端部をかしめることにより固定されている。また、第2ケースと連結ケースとはクランプリングによって締付固定、もしくは第1ケースの開口端部をかしめることにより固定されている。
【0004】
一次側チャンバー内には、片側有底円筒状の第1ピストンが軸方向に摺動可能に収容されている。一次側チャンバー内には、第1ピストンを二次側チャンバー側に付勢する圧縮ばねが設置されている。一次側チャンバーは、第1ピストンによって圧縮ばねが収納されたばね室と連結ケース側の第1制御室との二室に区画されている。第1ピストンには、一次側チャンバーと二次側チャンバーとの連結部を貫通して、第1ピストンと一体に軸方向に進退可能な第1プッシュロッドが固定されている。二次側チャンバー内には、二次側チャンバー内を連結ケース側の第2制御室と第2ピストンロッドが配置されているピストン室との二室に区画するダイヤフラムが設置されている。ダイヤフラムの縁部全周は二次側チャンバーの内壁に固定されている。二次側チャンバー内のロッド挿通部側には、ダイヤフラムの移動に伴って一体にロッド挿通部を摺動する第2ピストンが配置されている。第2ピストンは、ダイヤフラムに取り付けられた円板部と、ロッド挿通部を摺動する棒状部とからなる。棒状部の端部の円筒状の溝穴部には、第2プッシュロッドが挿入されている。
【0005】
第2プッシュロッドの先端の溝には、ブレーキドラムのブレーキシューを拡張させるウェッジが接続されている。よって、スプリングブレーキチャンバーは、一次側チャンバーの第1制御室及び二次側チャンバーの第1制御室の少なくとも一方に圧縮空気を供給してウェッジを駆動することでブレーキを作動させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載のスプリングブレーキチャンバーの第1ケースは、鋳造成形によって形成されている。第1ケースの底面には、第1プッシュロッドの移動ができなくなった際に、例えばシステム失陥時に通常操作で移動させられなくなった際に第1プッシュロッドを非作動位置まで移動させるリリースボルトを巻き上げるための雌螺子部品が固定されている。また、第1ケースの内底面には圧縮ばねが設置されるために、強度を持たせる必要があり、圧縮ばねを設置するスプリングシートが別途設置されていた。そこで、部品点数を削減できるスプリングブレーキチャンバーが求められている。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を削減できるスプリングブレーキチャンバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決するスプリングブレーキチャンバーは、圧縮ばねの付勢力によって付勢される第1ピストンが収容された一次側チャンバーを構成する片側有底筒状の第1ケースと、圧縮空気の供給によって移動される第2ピストンが収容された二次側チャンバーを構成する円筒状の第2ケースと、両ケースを連結する連結ケースと、を備え、前記第1ピストンに設けられたプッシュロッドが前記一次側チャンバーと前記二次側チャンバーとの連結部に形成された連通孔に挿通され、前記圧縮ばねによって付勢された際に前記第2ピストンを保持するスプリングブレーキチャンバーであって、前記第1ケースを鍛造によって形成し、前記第1ケースの底部には、前記プッシュロッドが通常操作で移動できなくなった際に前記プッシュロッドを機械的にブレーキ非作動位置まで移動させるリリースボルトを巻き上げる螺子部を一体形成したことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、第1ケースの底部に鍛造によって螺子部を一体形成した。なお、螺子部の螺子溝は鍛造後に切削加工で形成する。このため、リリースボルトを巻き上げるための雌螺子部品が別途必要ないので、部品点数を削減できる。また、第1ケースにナットを溶接等により取り付ける必要がなく、鍛造によって形成された第1ケースの底部に螺子溝を形成するのみで螺子部を形成でき、組立作業が容易である。さらに、接合部がないので、螺子部の強度を向上できる。なお、第1ケースの材質としては成形性の良い鍛造材料が適している。特に非鉄金属の鍛造材料、例えばアルミ合金のような成形性に優れた材料、真鋳等の銅合金、鉄鋼材料を用いることができる。
【0011】
上記スプリングブレーキチャンバーについて、前記第1ケースの内底面には、前記圧縮ばねを取り付けるばね取付部を一体形成することが好ましい。
同構成によれば、第1ケースの内底面に鍛造によってばね取付部を一体形成した。このため、圧縮ばねを設置するスプリングシートが別途必要ないので、部品点数を削減できる。また、第1ケースにスプリングシートを溶接等により取り付ける必要がなく、鍛造によって形成するのみでよい。さらに、接合部がないので、ばね取付部の強度を向上できる。
【0012】
上記スプリングブレーキチャンバーについて、前記螺子部を前記ばね取付部に形成することが好ましい。
同構成によれば、螺子部をばね取付部に形成したので、第1ケースに螺子部とばね取付部とを別々に設けるよりも軽量化することができる。
【0013】
上記スプリングブレーキチャンバーについて、前記第1ケースの内側面には、前記第1ピストンが圧縮空気によって前記圧縮ばねの付勢力に抗して付勢された際に、前記第1ピストンの移動量を制限するピストン受部を一体形成することが好ましい。
【0014】
同構成によれば、第1ケースの内側面に鍛造によってピストン受部を一体形成した。このため、第1ピストンが圧縮空気によって付勢された際に、第1ピストンの移動範囲を規定することができ、第1ピストンが必要以上に移動することを防止して、圧縮ばねを必要以上に圧縮することを防止できる。また、部品点数を増加させることなく、第1ピストンの移動範囲を規制することができる。
【0015】
上記スプリングブレーキチャンバーについて、前記ピストン受部は、前記第1ケースの内側面の全周に亘って形成することが好ましい。
同構成によれば、ピストン受部を第1ケースの内側面の全周に亘って形成したので、第1ピストンを確実に受け止め、第1ピストンの移動を規制することができる。また、圧縮ばねの巻回によって発生する付勢力が軸方向に対して傾いたとしても第1ピストンが傾くことを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品点数を削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜
図3を参照して、スプリングブレーキチャンバーの一実施形態を説明する。
図1〜
図3に示されるように、スプリングブレーキチャンバー1は、有底円筒状の一次側チャンバー2(ピギーバック)と、一次側チャンバー2に連結された片側有底円筒状の二次側チャンバー3(サービスチャンバー)とを備えている。一次側チャンバー2及び二次側チャンバー3は、それぞれ密閉されている。二次側チャンバー3の一次側チャンバー2が連結される面と反対側には、第2プッシュロッド33が挿通される円筒状のロッド挿通部7が設けられている。
【0019】
スプリングブレーキチャンバー1は、一次側チャンバー2を構成する片側有底円筒状の第1ケース4と、一次側チャンバー2を構成するとともに、二次側チャンバー3を構成する連結ケース6と、二次側チャンバー3を構成する円筒状の第2ケース5と、を備えている。連結ケース6は、断面I字形状であって、第1ケース4を閉蓋することで一次側チャンバー2を構成するとともに、第2ケース5を閉蓋することで二次側チャンバー3を構成する。第2ケース5は、二次側チャンバー3を構成する大径部5aとロッド挿通部7を構成する小径部5bとを備えている。
【0020】
連結ケース6の第1ケース4側の開口端部の外面には、シール部材としての断面O形状のOリング8を設置する凹部6aが形成されている。この凹部6aは、2つの凸条部6b,6cによって形成される保持部であって、連結ケース6の外面全周に亘って形成されている。第1ケース4の開口端部4a内に連結ケース6の一端部が当接した状態で、第1ケース4の開口端部4aがかしめられて、第1ケース4と連結ケース6とが接続されている。
【0021】
第2ケース5の連結ケース6側の端部にはリブ5cが形成され、連結ケース6の第2ケース5側の端部にはリブ6dが形成されている。第2ケース5のリブ5cと連結ケース6のリブ6dとはクランプリング9によって締付固定されている。
【0022】
一次側チャンバー2には、圧縮空気を出し入れする一次側流出入孔11が連結ケース6に形成されている。この一次側流出入孔11には、圧縮空気の流出流入を制御する図示しない一次側流出入弁が接続されている。一次側チャンバー2には、一次側流出入弁によって圧縮空気が一次側流出入孔11から供給され、一次側流出入弁によって空気が一次側流出入孔11から排出される。
【0023】
二次側チャンバー3には、圧縮空気を出し入れする二次側流出入孔12が連結ケース6に形成されている。この二次側流出入孔12には、圧縮空気の流出流入を制御する図示しない二次側流出入弁が接続されている。二次側チャンバー3には、二次側流出入弁によって圧縮空気が二次側流出入孔12から供給され、二次側流出入弁によって空気が二次側流出入孔12から排出される。
【0024】
一次側チャンバー2内には、片側有底円筒状の第1ピストン21が軸方向に摺動可能に収容されている。一次側チャンバー2は、第1ピストン21によって圧縮ばね23が収納されたばね室15と連結ケース6側の第1制御室13との二室に区画されている。第1ピストン21には、第1ピストン21と一体に軸方向に進退可能な円筒状の第1プッシュロッド22が固定されている。第1プッシュロッド22は、連結ケース6の連通孔41に挿通されている。一次側チャンバー2内には、第1ピストン21を二次側チャンバー3側に付勢する圧縮ばね23が設置されている。第1プッシュロッド22は、内部が空洞であって、一次側チャンバー2内の圧縮ばね23が収納されたばね室15の空気を二次側チャンバー3内の第2制御室14に循環させる循環機構50が設けられている。
【0025】
第1ケース4の内底部の中央には、圧縮ばね23を第1ケース4の内底面に取り付けるばね取付部61が一体に形成されている。ばね取付部61は、第1ケース4の内底面から軸方向に突出した凸部であって、圧縮ばね23の基端側の内径とほぼ一致する大きさとなっている。
【0026】
一次側チャンバー2内には、第1ピストン21及び第1プッシュロッド22を強制的に二次側チャンバー3から離間する側へ移動させるリリースボルト60が設置されている。リリースボルト60の基端には、六角状の頭部が形成されている。リリースボルト60は、第1ケース4の底部に設けられた螺子部62に挿通されている。リリースボルト60の先端は、第1プッシュロッド22内に挿通され、リリースボルト60の先端に設けられた係合部60aが第1プッシュロッド22に係合する。第1ケース4の底部の中央には、螺子溝62aが形成された螺子部62が一体に形成されている。螺子部62は、ばね取付部61の内部に設けられている。
【0027】
また、第1ケース4の内側面4bの底部側には、第1ピストン21の底部側への移動を規制するピストン受部63が形成されている。ピストン受部63は、第1ケース4の内側に突出し、第1ケース4の内側面の全周に亘って形成されている。第1ピストン21は、第1ピストン21の開口端部の先端がピストン受部63に当接することで移動が規制される。
【0028】
この第1ケース4は、ばね取付部61、螺子部62、及びピストン受部63を含めて鍛造によって一体に形成されている。なお、螺子部62の螺子溝62aは、鍛造後に形成されている。
【0029】
二次側チャンバー3内には、二次側チャンバー3内を連結ケース6側の第2制御室14と第2ピストン32が配置されているピストン室16との二室に区画するダイヤフラム31が設置されている。ダイヤフラム31の縁部全周は、第2ケース5のリブ5cと連結ケース6のリブ6dとに挟まれて二次側チャンバー3の内壁に固定されている。ダイヤフラム31は、弾性材料で形成された膜であって、二次側チャンバー3内に供給された圧縮空気によって変形を伴い二次側チャンバー3内を移動する。二次側チャンバー3内のロッド挿通部7側には、ダイヤフラム31の移動に伴って一体にロッド挿通部7を移動する第2ピストン32が配置されている。第2ピストン32は、ダイヤフラム31に取り付けられた円板部32aと、ロッド挿通部7を移動する棒状部32bとからなる。棒状部32bの端部には、円筒状の溝穴部が形成されている。溝穴部には、棒状の第2プッシュロッド33が挿入されている。第2ピストン32の先端部には、ロッド挿通部7内を摺動させる円筒状のロッドガイド34が装着されている。第2ピストン32と第2ケース5とには、円筒状のダストカバー35が取り付けられている。第2ピストン32の一方の端部が第2プッシュロッド33の側面に固定されるとともに、ダストカバー35の他方の端部が第2ケース5の内壁に固定されている。
【0030】
第2プッシュロッド33の先端の溝部には、ブレーキドラムのブレーキシューを拡張させるウェッジ10が接続されている。よって、スプリングブレーキチャンバー1は、一次側チャンバー2の第1制御室13及び二次側チャンバー3の第2制御室14の少なくとも一方に圧縮空気を供給してウェッジ10を駆動することでブレーキを作動させる。
【0031】
連結ケース6の連通孔41の内壁には、一次側チャンバー2側から順に、第1プッシュロッド22の摺動をガイドする樹脂製の第1ガイド部材45と、連通孔41と第1プッシュロッド22とを密閉するゴム製のDリング46と、二次側チャンバー3の第2制御室14から一次側チャンバー2の第1制御室13への空気の流れを封止するゴム製の第1Cリング47とが装着されている。第1Cリング47は、断面C字形状の開口部が二次側チャンバー3に向かって開口する。
【0032】
第1ガイド部材45は、第1Cリング47よりも一次側チャンバー2側に設けられている。このため、第1プッシュロッド22が連結ケース6の連通孔41の内壁を摺動する際に、第1プッシュロッド22の外壁に塗布されたグリスを連結ケース6の連通孔41の内壁端部で拭き取られることを極力抑制できる。さらに、第1ガイド部材45と第1Cリング47の間にはグリスを溜めるための空間があり、摺動する際に溜まったグリスを壁面に満遍なくグリスが再塗布される。
【0033】
第1ガイド部材45の断面は、第1プッシュロッド22の側面に沿って延びる直方体と、直方体の連通孔41の内壁側に凸部45aとを加えた形状である。この凸部45aが取付部材である連通孔41の内壁に係合する係合凸部として機能する。Dリング46は、断面がD形状である。Dリング46は、Dの字の凸部が第1プッシュロッド22に当接することで、一次側チャンバー2を密閉する。Dリング46は、Oリングとは異なり、ねじれを発見することができるので、組み付け時にねじれを防止できる。第1Cリング47は、断面が二次側チャンバー3側へ向かって二股に分岐した形状である。第1Cリング47は、一次側チャンバー2のばね室15から二次側チャンバー3の第2制御室14への空気を流し、二次側チャンバー3の第2制御室14から一次側チャンバー2のばね室15への空気の流れを封止する。なお、第1ガイド部材45は、第1Cリング47よりも硬い材質で形成されている。
【0034】
第1ピストン21の外周面には、二次側チャンバー3側から順に、第1ピストン21の摺動をガイドする樹脂製の第2ガイド部材26と、二次側チャンバー3側から一次側チャンバー2内の圧縮ばね23が収容されたばね室15側への空気の流れを封止する断面C字形状のゴム製の第2Cリング27とが装着されている。第2Cリング27は、断面C字形状の開口部が二次側チャンバー3に向かって開口する。
【0035】
第2ガイド部材26は、第2Cリング27よりも二次側チャンバー3側に設けられている。このため、第1ピストン21が第1ケース4の内壁を摺動する際に、第1ケース4の内壁に塗布されたグリスを第2Cリング27により拭き取られることを極力抑制できる。さらに、第2ガイド部材26と第2Cリング27の間にはグリスを溜めるための空間があり、摺動する際に溜まったグリスを壁面に満遍なくグリスが再塗布される。
【0036】
第2ガイド部材26の断面は、第1ピストン21の側面に沿って延びる直方体と、直方体の第1ピストン21の外周側に凸部26aとを備えた形状である。この凸部26aが取付部材である第1ピストン21の外周に係合する係合凸部として機能する。第2Cリング27は、断面が二次側チャンバー3側へ向かって二股に分岐した形状である。第2Cリング27は、一次側チャンバー2内の圧縮ばね23が収容されたばね室15から一次側チャンバー2内の第1制御室13への空気を流し、一次側チャンバー2内の第2制御室から圧縮ばね23が収容されたばね室15への空気の流れを封止する。なお、第2ガイド部材26は、第2Cリング27よりも硬い材質で形成されている。
【0037】
次に、前述のように構成されたスプリングブレーキチャンバー1の動作について説明する。
図1に示されるように、パーキングブレーキの作動操作が行われた際には、スプリングブレーキチャンバー1は、一次側の圧縮空気が流出するように一次側流出入弁を開くことで、一次側チャンバー2内の第1制御室13に供給された圧縮空気を排出する。また、パーキングブレーキの作動操作が行われた際には、スプリングブレーキチャンバー1は、二次側の圧縮空気を流出するように二次側流出入弁を開くことで、二次側チャンバー3内の第2制御室14の圧縮空気を排出させる。すると、スプリングブレーキチャンバー1は、圧縮ばね23の付勢力によって第1ピストン21を二次側チャンバー3側に移動させて、パーキングブレーキ作動位置に固定する。そして、スプリングブレーキチャンバー1は、第1ピストン21に固定された第1プッシュロッド22が二次側チャンバー3内のダイヤフラム31をロッド挿通部7側へ押圧した状態となるので、第2ピストン32がロッド挿通部7側に移動した状態で維持される。よって、スプリングブレーキチャンバー1は、第2ピストン32を介してウェッジ10をブレーキロック位置にて固定することで、パーキングブレーキの作動状態を維持する。
【0038】
図2に示されるように、パーキングブレーキの作動操作が解除された際には、スプリングブレーキチャンバー1は、第1制御室13に圧縮空気が流入するように一次側流出入弁を開くことで、一次側チャンバー2内の第1制御室13に圧縮空気を供給する。すると、スプリングブレーキチャンバー1は、供給された圧縮空気によって第1ピストン21を二次側チャンバー3から離間する側へ移動させて、パーキングブレーキ非作動位置に移動させる。このとき、第1ピストン21は、第1ピストン21の開口端部の先端がピストン受部63に当接することで、移動が規制される。よって、ダイヤフラム31及び第2ピストン32の固定が解除される。
【0039】
ここで、圧縮空気が一次側チャンバー2の二次側チャンバー3側に供給されず、第1ピストン21と第1プッシュロッド22とがブレーキ非作動位置に移動できなくなった際には、リリースボルト60を巻き上げることでリリースボルト60の係合部60aを第1プッシュロッド22に係合させ、第1ピストン21と第1プッシュロッド22とをブレーキ非作動位置に移動させる。
【0040】
フットブレーキが操作された際には、スプリングブレーキチャンバー1は、二次側チャンバー3の第2制御室14に圧縮空気を供給するように二次側流出入弁を開く。すると、スプリングブレーキチャンバー1は、供給された圧縮空気によってダイヤフラム31をロッド挿通部7側へ移動させる。そして、スプリングブレーキチャンバー1は、ダイヤフラム31がロッド挿通部7側に移動した状態となるので、第2ピストン32がロッド挿通部7側に移動する。よって、スプリングブレーキチャンバー1は、第2ピストン32を介してウェッジ10をブレーキ作動位置に移動させる。スプリングブレーキチャンバー1は、二次側チャンバー3内への圧縮空気の供給量に応じてブレーキ作動量を変更する。
【0041】
図3に示されるように、フットブレーキの作動操作が解除された際には、スプリングブレーキチャンバー1は、二次側チャンバー3の圧縮空気が流出するように二次側流出入弁を開くことで、二次側チャンバー3内の第2制御室14から圧縮空気を排出する。すると、スプリングブレーキチャンバー1は、圧縮空気が排出されたことでダイヤフラム31を一次側チャンバー2側へ移動させる。そして、スプリングブレーキチャンバー1は、ダイヤフラム31が一次側チャンバー2に移動した状態となるので、第2ピストン32が一次側チャンバー2側に移動する。よって、スプリングブレーキチャンバー1は、第2ピストン32を介してウェッジ10をブレーキ作動位置から離間することでブレーキの作動を解除する。
【0042】
さて、
図1に示されるように、第1ケース4の底部にばね取付部61と螺子部62とをまとめて一体に鍛造によって形成したので、ナットとスプリングシートとを別途設ける必要がなく部品点数を削減できる。また、第1ケース4の内側面4bにピストン受部63を一体に鍛造によって形成したので、部品点数を増加させることなく、第1ピストン21の移動範囲を規制することができる。
【0043】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)第1ケース4の底部に鍛造によって螺子部62を一体形成した。このため、リリースボルト60を巻き上げる雌螺子部品が別途必要ないので、部品点数を削減できる。さらに雌螺子部品とリリースボルトを通常使用時に取り外す必要もなく、紛失を防止できる。また、第1ケース4にナットを溶接等により取り付ける必要がなく、鍛造によって形成された第1ケース4の底部に螺子溝62aを形成するのみで螺子部62を形成でき、組立作業が容易である。さらに、接合部がないので、螺子部62の強度を向上できる。
【0044】
(2)第1ケース4の内底面に鍛造によってばね取付部61を一体形成した。このため、圧縮ばね23を設置するスプリングシートが別途必要ないので、部品点数を削減できる。また、第1ケース4にスプリングシートを溶接等により取り付ける必要がなく、鍛造によって形成するのみでよい。さらに、接合部がないので、ばね取付部61の強度を向上できる。
【0045】
(3)螺子部62をばね取付部61に形成したので、第1ケース4に螺子部62とばね取付部61とを別々に設けるよりも軽量化することができる。
(4)第1ケース4の内側面4bに鍛造によってピストン受部63を一体形成した。このため、第1ピストン21が圧縮空気によって付勢された際に、第1ピストン21の移動範囲を規定することができ、第1ピストン21が必要以上に移動することを防止して、圧縮ばね23を必要以上に圧縮することを防止できる。また、部品点数を増加させることなく、第1ピストン21の移動範囲を規制することができる。
【0046】
(5)ピストン受部63を第1ケース4の内側面4bの全周に亘って形成したので、第1ピストン21を確実に受け止め、第1ピストン21の移動を規制することができる。また、圧縮ばね23の巻回によって発生する付勢力が軸方向に対して傾いたとしても第1ピストン21が傾くことを防止できる。
【0047】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、ピストン受部63を第1ケース4の内側面4bの全周に亘って形成したが、第1ピストン21を受け止めることができれば、ピストン受部63を第1ケース4の内側面4bにおいて連続していなくてもよい。すなわち、第1ケース4の内側面4bの周方向に間隔をおいてピストン受部63を形成してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、ピストン受部63を形成したが、ピストン受部63の構成を省略してもよい。
・上記実施形態では、螺子部62をばね取付部61に形成したが、ばね取付部61と螺子部62とを第1ケース4に別々に設けてもよい。なお、ばね取付部61及び螺子部62はそれぞれ第1ケース4に鍛造によって一体に形成される。
【0049】
・上記実施形態では、ばね取付部61を第1ケース4に一体に形成したが、ばね取付部としてのスプリングシートを第1ケース4に別途設けてもよい。
・上記実施形態では、螺子部62を第1ケース4とともに鍛造によって一体形成したが、螺子部62は別体として溶接により第1ケース4に一体化させてもよい。