(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。各図における同一符号は同一物または相当物を示す。
【0011】
図1は、本発明の実施例のマルチ型空調システムにおける冷凍サイクルの構成を示す。
【0012】
このマルチ型空調システムは、室外ユニット11a、11bと、室内ユニット15a、15b、15cとを有する。マルチ型空調システムにおける室外ユニット11の接続台数及び室内ユニット15の接続台数は、この図に限定されず、単数でも複数でも良い。なお、室内ユニット15a、15b、15cの説明のように、符号において数字の後に続くアルファベットにより要素を区別する必要がない場合、そのアルファベットは省略されることがある。
【0013】
室内ユニット15は、室内熱交換器12と、送風機13と、電動膨張弁14とを有する。
【0014】
室外ユニット11は、圧縮機1と、気液分離器2と、逆止弁3と、四方弁4と、電動膨張弁5と、室外熱交換器6と、送風機7と、過冷却器8と、電動膨張弁9と、アキュムレータ10と、ガス阻止弁18と、液阻止弁19と、圧縮機用温度センサ22と、高圧圧力センサ24と、低圧圧力センサ25と、過冷却器温度センサ51とを有する。圧縮機1は容量可変型であり、圧縮機1の吸入配管にはアキュムレータ10が接続されている。四方弁4は冷房運転側と暖房運転側とに切り換えられることが可能である。高圧圧力センサ24は、圧縮機1の吐出配管に設けられており、低圧圧力センサ25は、アキュムレータ10の流入側に設けられており、圧縮機用温度センサ22は、圧縮機1に設けられている。外気センサ23は、室外ユニット11における送風機7の吸込口に設けられている。
【0015】
室外ユニット11と室内ユニット15の間は、ガス配管16と液配管17である接続配管により接続されている。ガス配管16は、室外ユニット11のガス阻止弁18に接続される。液配管17は、室外ユニット11の液阻止弁19に接続される。
【0016】
図2は、マルチ型空調システムにおける電気部品の構成を示す。
【0017】
室外ユニット11は、室外コントローラ20(コントローラ)を有する。室外コントローラ20a、20bは、伝送線32を介して互いに接続され、互いに通信を行う。室内ユニット15は、室内コントローラ21を有する。
【0018】
例えば、室内コントローラ21aは、室外コントローラ20aを初期設定時に親機に設定し、室外コントローラ20bを子機に設定する。これにより、室外コントローラ20aは、室外ユニット11a、11bの統合システム制御を担当する。室外コントローラ20bは、室外コントローラ20aの指令に従い、自己の室外ユニット11b内の各部を制御する。
【0019】
室内コントローラ21a、21b、21cは、伝送線33を介して室外コントローラ20に接続され、室外コントローラ20との通信を行う。マルチ型空調システムが複数の室外ユニット11を有する場合、室内コントローラ21a、21b、21cは、親機の室外コントローラ20aと通信を行う。
【0020】
室外ユニット11は更に、圧縮機用温度センサ22と、外気センサ23と、高圧圧力センサ24と、低圧圧力センサ25と、過冷却器温度センサ51とを有する。室外コントローラ20は、これらのセンサの読み取り値に基づいて、各部の圧力及び温度が目標値になるように室外ユニット11内の各部を制御する。室外ユニット11は更に、操作部41と、表示部42とを有する。操作部41は、例えばボタンである。表示部42は、例えば液晶パネルや7セグメントディスプレイである。操作部41と表示部42は、例えばタッチパネルのように一体であっても良い。
【0021】
室内ユニット15は更に、冷媒状態を把握するためのガス温度センサ27及び液温度センサ28と、空気状態を把握するための吸い込み温度センサ29と、吹出し温度センサ30とを有する。室内コントローラ21は、これらのセンサの計測値を室外コントローラ20aへ送信する。例えば、室外コントローラ20aは、室外コントローラ20aからの計測値に応じて、最適な冷媒状態に調整するための電動膨張弁14の開度指令を室内コントローラ21へ送信する。室内コントローラ21は、室外コントローラ20aからの開度指令に従い、電動膨張弁14を制御する。
【0022】
室内コントローラ21は、リモコン(リモートコントローラ)31からの信号を受信する。室内コントローラ21は、リモコン31からの発停信号に基づいて送風機13を制御し、リモコン31によって設定された温度条件を室外コントローラ20aへ送信する。
【0023】
図3は、マルチ型空調システムの冷房運転における冷媒の流れを示す。
【0024】
この図において、冷媒は実線矢印の方向に流れる。このとき、四方弁4は、圧縮機1の吐出側(高圧側)を室外熱交換器6のガス側へ接続し、ガス配管16を圧縮機1の吸入側(低圧側)へ接続するように、室外コントローラ20によって切り換えられる。
【0025】
圧縮機1から吐出されたガス冷媒は、気液分離器2、逆止弁3、四方弁4を通過し、冷媒通路を有する室外熱交換器6で凝縮する。凝縮した液冷媒は、過冷却器8の上流で分岐する。過冷却器8は、分岐から液阻止弁19へ向かう流路である主流部と、分岐からアキュムレータ10へ向かう流路であるバイパス部とを有する。分岐した一方の液冷媒は、電動膨張弁9で減圧されてガス冷媒となり過冷却器8のバイパス部を経て低圧側配管のアキュムレータ10へバイパスされる。分岐した他方の液冷媒は、過冷却器8の主流部を通過することにより、バイパス部との間で熱交換され、液阻止弁19を通過する。主流部を通過した液冷媒は、過冷却状態となり、バイパス部を通過したガス冷媒は、過熱状態となりアキュムレータ10へ戻る。室外熱交換器6による熱交換に加えて、過冷却器8による熱交換が行われることにより、主流部を流れる冷媒の過冷却度が増加し、分岐により、室外ユニット11から室内ユニット15へ流れる冷媒の流量が減少して圧力損失が小さくなるため、より効率のよい運転が可能となる。
【0026】
液配管17を通過した冷媒は、室内ユニット15の電動膨張弁14に入る。電動膨張弁9は、室外コントローラ20により任意の絞り量を設定可能な膨張装置である。電動膨張弁9にて減圧された冷媒は、蒸発器となる室内熱交換器12に送られ、蒸発する。送風機13が室内熱交換器12へ送風することにより、室内空気は冷却される。室内熱交換器12で蒸発した冷媒は、ガス配管16を流れ、ガス阻止弁18及び四方弁4を通過し、アキュムレータ10により適切な吸入かわき度に調整され、圧縮機1の吸入側に戻る。
【0027】
ここで室内側の負荷状況に応じて室内側容量を低減させる場合、室内側負荷変動により容量可変式圧縮機容量を低減させる、または室外側送風機風量を低下させて室外側熱交換量を低減させることができる。室内側負荷が熱源側容量に対して極端に小さくなった場合、かつ室外ユニット11が複数台接続されている場合は、上記手段だけでなく、室外ユニット11の運転台数を低減させる。
【0028】
図4は、マルチ型空調システムの暖房運転における冷媒の流れを示す。
【0029】
この図において、冷媒は破線矢印の方向に流れる。このとき、四方弁4は、圧縮機1の吐出側をガス配管16へ接続し、室外熱交換器6のガス側を圧縮機1の吸入側へ接続するように、室外コントローラ20によって切り換えられる。
【0030】
圧縮機1から吐出されたガス冷媒は、気液分離器2、逆止弁3、四方弁4、ガス阻止弁18を通過し、ガス配管16を介して、室内ユニット15に流れる。室内ユニット15に流入したガス冷媒は、複数の冷媒通路を有する室内熱交換器12で凝縮する。室外コントローラ20は、任意の過冷却度を確保すべく、電動膨張弁14の絞り量を調整する。送風機13が室内熱交換器12へ送風することにより、放熱され暖房がなされる。凝縮された液冷媒は、液配管17を通過し、液阻止弁19を介して過冷却器8を通過し、電動膨張弁5に入る。電動膨張弁5は、室外コントローラ20により任意の絞り量設定可能な膨張装置である。電動膨張弁5にて減圧された冷媒は、蒸発器となる室外熱交換器6に送られ、蒸発する。蒸発した冷媒は、四方弁4を経由し、アキュムレータ10にて適切な吸入かわき度に調整され、圧縮機1の吸入側に戻る。
【0031】
ここで利用側の負荷状況に応じて室内側容量を低減させる場合、利用側負荷変動により
容量可変式圧縮機容量を低減させる、または熱源側送風機風量を低下させて熱源側熱交換量を低減させることができる。利用側負荷が熱源側容量に対して極端に小さくなった場合、上記手段だけでなく、冷房時同様、室外ユニット11の運転台数を低減させる。
【0032】
以下、マルチ型空調システムの設置時にマルチ型空調システムへ冷媒を充填する冷媒量調整処理について説明する。
【0033】
室外ユニット11は更に、冷媒ボンベを接続するための冷媒封入用チェックジョイント33を有する。冷媒封入用チェックジョイント33は、電磁弁34を介して、電動膨張弁9と過冷却器8のバイパス部との間に接続されている。冷媒封入用チェックジョイント33は更に、逆止弁35を介して、過冷却器8の主流部と液阻止弁19との間に接続されている。逆止弁35は、冷媒封入用チェックジョイント33から液阻止弁19への方向に冷媒を流すことができる。
【0035】
ここでは、既設の室外ユニット及び室内ユニットを交換する場合等、接続配管(配管)が既設の現地配管である場合について説明する。室外ユニット11のガス阻止弁18及び液阻止弁19が閉じられた状態で、必要な最低量の冷媒が室外ユニット11内に封入されている。作業者は、全ての室外ユニット11及び全ての室内ユニット15を設置し、それらを接続配管により接続する。全ての室内ユニット15内の電動膨張弁14が所定の開度に開かれている状態で、作業者は、ガス阻止弁18又は液阻止弁19の外側に設けられているサービスポートに真空ポンプを接続し、真空ポンプにより接続配管及び室内ユニット15内を減圧することにより、接続配管及び室内ユニット15内の空気や水分等を除去する。接続配管が減圧された後、作業者は、操作部41のボタンを押すことにより、室外コントローラ20に冷媒量調整処理を実行させる。
【0036】
冷媒量調整処理において室外コントローラ20は、圧力センサから、所定の時間間隔である測定周期毎に冷凍サイクル内の圧力を取得する。圧力センサは、高圧圧力センサ24又は低圧圧力センサ25である。なお、圧力センサは、高圧圧力センサ24より精度が高い低圧圧力センサ25であることが望ましい。測定周期は、例えば数秒である。ここで、室外コントローラ20は、最新の圧力の測定値(第2測定値)であるP1(n)を取得する。また、室外コントローラ20は、直前に取得された圧力の測定値(第1測定値)であるP1(n−1)を記憶する。冷媒量調整処理の開始後、阻止弁が開かれる前の圧力の測定値は、外気温度に対する冷媒の飽和圧力であり、減圧された接続配管内の圧力より高い。阻止弁は、ガス阻止弁18又は液阻止弁19である。
【0037】
冷媒量調整処理が開始されると、室外コントローラ20は、作業者への指示を示す阻止弁操作メッセージを表示部42に表示させる(S110)。阻止弁操作メッセージは、阻止弁を開くことを指示するメッセージを含んでも良い。
【0038】
その後、室外コントローラ20は、P1(n−1)及びP1(n)の差である第1圧力差ΔP2を算出する(S120)。ここで、ΔP2は、P1(n−1)−P1(n)であっても良いし、|P1(n)−P1(n−1)|であっても良い。その後、室外コントローラ20は、阻止弁の開放を検出したか否かを判定する(S130)。ここで室外コントローラ20は、ΔP2が所定の第1閾値ΔPT2以上である場合に阻止弁の開放を検出したと判定する。ΔPT2は、室外コントローラ20に予め設定されている。
【0039】
阻止弁操作メッセージに応じて、作業者は、阻止弁を開き、室外ユニット11内に封入されている冷媒を接続配管及び室内ユニット15内に解放する。これにより、室外ユニット11内の圧力が急激に低下し、ΔP2がΔPT2以上になる。
【0040】
阻止弁の開放を検出していないと判定された場合、即ちΔP2がΔPT2以上でないと判定された場合(S130:N)、室外コントローラ20は、処理をS110へ移行させることにより、阻止弁の開放を検出するまで当該処理を繰り返す。
【0041】
阻止弁の開放を検出したと判定された場合、即ちΔP2がΔPT2以上である場合(S130:Y)、室外コントローラ20は、阻止弁の開放が検出された時のP1(n−1)を初期圧力P2として記憶し、所定の判定時間後に測定される圧力の測定値P1(n+k)を取得して判定圧力P3(第3測定値)として記憶し、P2及びP3の差である第2圧力差ΔP3と、ΔP3の判定のための第2閾値ΔPT3とを算出する(S140)。判定時間は、k×測定周期である。kは例えば4である。ΔP3は、P2−P3であっても良いし、|P3−P2|であっても良い。なお、測定周期が判定時間であっても良い。判定圧力が阻止弁の開放が検出された時のP1(n)であっても良い。
【0042】
その後、室外コントローラ20は、作業者への指示を示す冷媒ボンベ操作メッセージを表示部42に表示させる(S210)。冷媒ボンベ操作メッセージは、プレチャージの要否の判定が終了したことを示すメッセージを含んでも良いし、所定操作を作業者に指示するメッセージを含んでも良いし、冷媒ボンベの弁を開くことを作業者に指示するメッセージを含んでも良い。所定操作は、例えば操作部41のボタンを押すことである。
【0043】
冷媒ボンベ操作メッセージに応じて、作業者は、操作部41のボタンを押した後、冷媒ボンベを冷媒封入用チェックジョイント33へ接続し、冷媒ボンベの弁を開く。なお、作業者は、冷媒ボンベを冷媒封入用チェックジョイント33へ接続し、冷媒ボンベの弁を開いた後、操作部41のボタンを押しても良い。
【0044】
その後、室外コントローラ20は、所定操作が行われたか否かを判定する(S220)。
【0045】
所定操作が行われていないと判定された場合(S220:N)、室外コントローラ20は、処理をS220へ移行させることにより、所定操作が行われるまで待機する。所定操作が行われたと判定された場合(S220:Y)、室外コントローラ20は、プレチャージ処理(第1充填処理)が必要であるか(プレチャージ処理を行うか)否かを判定する(S230)。ここで室外コントローラ20は、ΔP3が第2閾値ΔPT3以上である場合に、プレチャージ処理が必要であると判定する。ΔPT3は、ΔPT2より大きい。ΔPT3の決定方法については後述する。冷媒量調整処理の開始時において接続配管内が減圧され真空に近くなっているため、接続配管の容積が大きいほど、阻止弁が開かれた後の圧力の測定値は低くなり、ΔP3は大きくなる。つまり、接続配管の容積がある程度大きい場合、プレチャージ処理が必要であると判定される。
【0046】
プレチャージが必要であると判定された場合(S230:Y)、室外コントローラ20は、プレチャージ処理を行い(S240)、冷媒自動充填処理(第2充填処理)を行い(S250)、このフローを終了する。プレチャージが不要であると判定された場合(S230:N)、室外コントローラ20は、冷媒自動充填処理を行い(S250)、このフローを終了する。
【0047】
以上が冷媒量調整処理である。この冷媒量調整処理において、処理の順序は交換可能である。例えば、S230におけるプレチャージの要否の判定を行った後に、S210及びS220における表示及び所定操作の判定を行っても良い。
【0048】
この例において、室外コントローラ20は、冷媒量調整処理の開始後の圧力の変動に基づいて阻止弁が開かれたタイミングを検出したが、作業者による操作部41の操作に基づいて阻止弁が開かれたタイミングを検出しても良い。例えば、室外コントローラ20は、阻止弁操作メッセージにおいて、阻止弁を開いた後にボタンを押すことを指示するメッセージを表示し、阻止弁操作メッセージの表示時の圧力をP2とし、阻止弁を開いた後にボタンが押された時の圧力をP3としても良い。
【0049】
以下、ΔPT3の決定方法について説明する。
【0050】
ΔP3は、接続配管の容積だけでなく、P1(n−1)によっても変化するため、室外コントローラ20は、測定に基づく参照温度T1から、ΔPT3を決定する。T1は、外気温度、又はP1(n−1)に対する冷媒の飽和温度である。室外コントローラ20は、外気センサ23から外気温度を取得する。室外コントローラ20は、予め圧力と飽和温度の関係を記憶しており、その関係を用いてP1(n−1)からT1を決定する。
【0051】
図6は、参照温度と第2閾値の関係を示す。
【0052】
この図において、横軸はT1[℃]を示し、縦軸はΔP3[MPa]を示す。この図中の曲線は、T1とΔPT3の関係を示す。室外コントローラ20は、T1とΔPT3の関係を予め記憶している。室外コントローラ20は、この関係を用いてT1からΔPT3を算出する。この関係によれば、T1が高いほど、ΔPT3は高くなり、T1が高いほど、T1の単位増加量に対するΔPT3の増加量は高くなる。S230において、ΔP3が曲線上か曲線より上にある場合、プレチャージが必要と判定される。一方、ΔP3が曲線より下にある場合、プレチャージが不要と判定される。
【0053】
T1が高い場合、P1(n−1)が高くなるため、阻止弁の開放の前後の圧力差ΔP3は大きくなる。一方、T1が低い場合、P1(n−1)は低くなるため、ΔP3は小さくなる。また、出荷時に室外ユニット11に封入されている冷媒量によってΔP3が変化するため、状態に応じてΔP3を測定することにより、ΔPT3を決定することができる。このように外気温度、又はP1(n−1)に対する冷媒の飽和温度からΔPT3を決定することにより、プレチャージの要否の判定の精度を高めることができる。
【0054】
もし、本発明を適用しないマルチ型空調システムにおいて不要なプレチャージを行うと、冷凍サイクル内の冷媒が過充填となり、マルチ型空調システムの能力が低下する場合がある。例えば、接続配管の容積が小さい場合にプレチャージを行うと、冷媒の過充填が発生する虞がある。また、外気温度が高い場合にプレチャージを行うと、冷媒ボンベの内圧が高くなることから、冷媒の過充填が発生する虞がある。本実施例によれば、接続配管の容積が小さくなると、ΔP3が低くなるため、プレチャージが不要であると判定される。また、T1が高くなると、ΔPT3が高くなるため、プレチャージが不要であると判定される。これにより、プレチャージによる冷媒の過充填を防ぐことができる。
【0055】
また、本発明を適用しないマルチ型空調システムにおいて必要なプレチャージを行わないと、冷媒自動充填処理において冷媒が不足し、圧縮機1の動作により圧縮機1の故障等が発生する場合がある。また、冷媒自動充填処理に掛かる時間が長くなる場合がある。例えば、接続配管の容積が大きい場合、冷媒自動充填処理において冷媒の不足が発生する虞がある。本実施例によれば、接続配管の容積が大きくなると、ΔP3が高くなるため、プレチャージが必要であると判定される。また、T1が低くなると、ΔPT3が低くなるため、プレチャージが必要であると判定される。これにより、冷媒自動充填処理における冷媒の不足を防ぐことができる。
【0056】
以上の冷媒量調整処理によれば、阻止弁の開放のタイミングを検出することができる。これにより、阻止弁の開放前後の冷凍サイクル内の圧力を測定することができる。また、阻止弁の開放前後の圧力を利用して接続配管の容積等、を推定することができる。また、接続配管の容積等に応じてプレチャージの要否を判定することにより、プレチャージによる冷媒の過充填や、冷媒自動充填処理における冷媒の不足を防ぎ、マルチ型空調システムの信頼性を向上させることができる。また、作業者は、表示部42に表示される簡単な指示に従って作業を行うだけで、適切な量の冷媒をマルチ型空調システムへ充填することができ、作業ミスやそれによる性能の低下を防ぐことができる。
【0057】
以下、前述のS240におけるプレチャージ処理について説明する。
【0058】
阻止弁が開かれたことにより、冷凍サイクルの内圧は、冷媒ボンベの内圧に比べて低くなっている。ここで、冷媒封入用チェックジョイント33とバイパス部の間の電磁弁34は閉じられている。冷媒ボンベ操作メッセージに応じて、作業者が冷媒ボンベの弁を開くと、冷媒ボンベの内圧と冷凍サイクルの内圧の差圧により、冷媒ボンベ内の冷媒は、逆止弁35を通過して液阻止弁19側へ流れ、冷凍サイクル内へ充填される。
【0059】
プレチャージ処理が開始されると、室外コントローラ20は、所定の終了判定周期毎に圧力センサにより測定された圧力を取得し、直前の圧力の測定値と最新の圧力の測定値との差である圧力差ΔP4を算出し、ΔP4が所定の変化量閾値SP以下であるか否かを判定する。終了判定周期は、前述の測定周期と同じであっても良いし、測定周期より長くても良い。測定された圧力は低下し、ΔP4は次第に小さくなる。
【0060】
ΔP4がSP以下でないと判定された場合、室外コントローラ20は、終了判定周期の経過後に、再度ΔP4の算出と判定を行うことにより、ΔP4がSP以下になるまで待機する。ΔP4がSP以下であると判定された場合、室外コントローラ20は、プレチャージ処理を終了する。冷媒ボンベから冷凍サイクル内へ冷媒が充填されるにつれ、圧力センサにより測定される圧力の変化が小さくなり、冷媒ボンベ内の冷媒は逆止弁35を通って液阻止弁19側へ流れなくなる。なお、室外コントローラ20は、プレチャージ処理の開始から所定時間が経過した場合にプレチャージ処理を終了しても良い。
【0061】
以上のプレチャージ処理によれば、冷媒自動充填処理前に冷媒をマルチ型空調システム内へ充填することにより、冷媒自動充填処理時に冷媒が不足することによる圧縮機1の故障等を防ぐことができる。
【0062】
以下、前述のS250における冷媒自動充填処理について説明する。
【0063】
冷媒自動充填処理が開始されると、室外コントローラ20は、マルチ型空調システムを冷房運転で起動し、測定に基づいて電磁弁34を制御する。また、室外コントローラ20は、冷媒自動充填処理中であることを示すメッセージを表示部42に表示させる。過冷却器温度センサ51は、過冷却器8の主流部の出口(液阻止弁19側)に設けられている。室外コントローラ20は、高圧圧力センサ24により測定された吐出圧力を取得し、吐出圧力に対する飽和温度を算出し、圧縮機用温度センサ22により測定された吐出温度を取得し、過冷却器温度センサ51により測定された過冷却器出口温度を取得する。更に室外コントローラ20は、吐出温度及び飽和温度から吐出ガス過熱度TdSHを算出し、過冷却器出口温度及び飽和温度から過冷却器出口過冷却度SCを算出する。
【0064】
室外コントローラ20は、吐出温度や吐出圧力等の変化が小さくなる状態、即ち冷凍サイクルが安定するまで待機し、冷凍サイクルが安定であると判定すると、電磁弁34を開く。その後、室外コントローラ20は、電動膨張弁14によりTdSHが所定の値TdSH0以上になるように制御する。圧縮機1が動作することにより、液冷媒の圧力が増加し、低圧側の圧力が冷媒ボンベの内圧より低くなる。これにより、冷媒ボンベから冷媒封入用チェックジョイント33へ流れる冷媒は、逆止弁35を通過せずに、電磁弁34を通り、過冷却器8のバイパス部へ流入する。過冷却器8のバイパス部を流れる冷媒は、過冷却器8の主流部を流れる冷媒の放熱により蒸発ガス化してアキュムレータ10の入口へ流れる。
【0065】
室外コントローラ20は、TdSHがTdSH0以上であれば、SCを演算し、SCが予め設定されている適正冷媒充填時の過冷却度α以上となるまで電磁弁34を開いて冷媒ボンベから冷媒を充填し続け、SCがα以上となった時点で電磁弁34を閉じ、冷媒自動充填処理を終了する。
【0066】
もし冷媒自動充填処理中に冷媒ボンベ内の冷媒が空になると、過冷却器8を流通する冷媒の循環量が減少するため過冷却器8での冷却熱量が減少し、過冷却器8出口の冷媒過冷却度であるSCが低下するため、室外コントローラ20は、冷媒ボンベ内が空であることを認識できる。このことから、室外コントローラ20は、冷媒自動充填処理中であるにも関わらずSCが低下した場合、表示部42に、冷媒ボンベが空であるため冷媒ボンベを交換することを指示するメッセージ、もしくは冷媒ボンベが空であることを示すメッセージを表示部42に表示させる。これにより、作業者は、冷媒ボンベを交換することができる。
【0067】
以上の冷媒自動充填処理によれば、冷媒を追加充填する際にマルチ型空調システムを冷房運転で運転して冷媒ボンベの内圧とアキュムレータ10入口部の圧力差を確保しながら冷媒を充填するため、素早く冷媒を充填することが可能となる。また、冷媒ボンベから流出する液冷媒を過冷却器8により加熱ガス化して充填するため、圧縮機1への液戻りを抑制することができ、冷媒自動充填処理中の圧縮機1の信頼性を確保することができる。さらに、過冷却器8出口の冷媒過冷却度を検出し、過冷却度に基づいて電磁弁34の開閉を制御するため、冷媒の充填を自動化することができ、マルチ型空調システムの施工時間の短縮を図ることが可能である。
【0068】
なお、冷媒量調整処理において、冷媒ボンベは、複数の室外ユニット11の何れに接続されても良い。また、複数の冷媒ボンベが、複数の室外ユニット11の何れか複数又は全部に夫々接続されても良い。
【0069】
マルチ型空調システムは、他の空気調和装置であっても良い。例えば、この空気調和装置は、一つの室外ユニット11を有していても良いし、一つの室内ユニット15を有していても良い。
【0070】
なお、冷媒量調整処理内の判定において、「以上」の代わりに「より大きい」を用いても良いし、「以下」の代わりに「より小さい」を用いても良い。
【0071】
以上の実施例は次のように表現することができる。
【0072】
(表現1)
圧縮機、室外熱交換器、及び膨張弁を有する室外ユニットと、
室内熱交換器を有し配管を介して前記室外ユニットに接続される室内ユニットと、
前記室外ユニット、前記室内ユニット、及び前記配管により形成される冷凍サイクルを制御するコントローラと、
を備え、
前記室外ユニットは更に、前記室外ユニット及び前記配管の間の流路を開閉する阻止弁と、前記室外ユニット内の冷媒の圧力を測定する圧力センサと、を有し、
前記阻止弁が閉じられ前記配管内が減圧された状態で、前記阻止弁の開放が行われた場合、前記コントローラは、前記圧縮機を動作させずに冷媒ボンベから前記冷凍サイクル内へ冷媒を充填する第1充填処理について、前記開放の前後に測定された前記圧力の変動に基づいて、前記第1充填処理を行うか否かを判定する、
空気調和装置。
(表現2)
前記コントローラは、前記第1充填処理を行うと判定された場合、前記第1充填処理を行い、その後、前記冷凍サイクルを冷房運転させることにより前記冷媒ボンベから前記冷凍サイクル内へ冷媒を充填する第2充填処理を行い、前記第1充填処理を行わないと判定された場合、前記第1充填処理を行わずに前記第2充填処理を行う、
表現1に記載の空気調和装置。
(表現3)
前記コントローラは、前記圧力センサによる測定値を定期的に取得し、取得された第1測定値と、前記第1測定値の後に取得された第2測定値との差である第1圧力差を算出し、前記第1圧力差が所定の第1閾値以上である場合に、前記開放を検出する、
表現2に記載の空気調和装置。
(表現4)
前記コントローラは、前記開放が検出された時の第1測定値と、前記開放の後に取得された第3測定値との差である第2圧力差を算出し、前記第1閾値より大きい第2閾値を用いて、前記第2圧力差が前記第2閾値以上である場合に、前記第1充填処理を行うと判定する、
表現3に記載の空気調和装置。
(表現5)
前記コントローラは、予め定められた温度及び前記第2圧力差の関係に基づいて、前記第3測定値に対する飽和温度又は外気温度から前記第2閾値を決定する、
表現4に記載の空気調和装置。
(表現6)
前記室外ユニットは更に、
前記冷媒ボンベを接続することができるチェックジョイントと、
前記室外ユニット内の冷媒の温度を測定する温度センサと、
前記電動膨張弁及び前記配管のうち液配管の間を接続する主流部と、前記電動膨張弁及び前記圧縮機の吸入側の間を接続し前記主流部に対して熱交換を行うバイパス部とを有する過冷却器と、
前記室外ユニットは更に、前記チェックジョイント及び前記バイパス部の間の流路を開閉する電磁弁を有し、
前記コントローラは、前記第2充填処理において、前記圧力センサ及び前記温度センサによる測定結果に基づいて前記主流部を流れる冷媒の過冷却度を算出し、前記過冷却度に基づいて前記電磁弁を制御する、
表現1乃至5の何れか一項に記載の空気調和装置。