(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧制御装置について説明する。
【0012】
流体圧制御装置は、油圧ショベル等の油圧作業機器の動作を制御するものであり、本実施形態では、
図1に示す油圧ショベルのアーム(負荷)1を駆動するシリンダ2の伸縮動作を制御する場合について説明する。
【0013】
まず、
図2を参照して、油圧制御装置の油圧回路について説明する。
【0014】
シリンダ2は、シリンダ2内を摺動自在に移動するピストンロッド3によって、ロッド側圧力室2aと反ロッド側圧力室2bとに画成される。
【0015】
油圧ショベルにはエンジンが搭載され、そのエンジンの動力によって油圧源であるポンプ4及びパイロットポンプ5が駆動する。
【0016】
ポンプ4から吐出された作動油(作動流体)は、制御弁6を通じてシリンダ2に供給される。
【0017】
制御弁6とシリンダ2のロッド側圧力室2aとは第1メイン通路7によって接続され、制御弁6とシリンダ2の反ロッド側圧力室2bとは第2メイン通路8によって接続される。
【0018】
制御弁6は、油圧ショベルの乗務員が操作レバー10を手動操作することに伴ってパイロットポンプ5からパイロット弁9を通じてパイロット室6a,6bに供給されるパイロット圧油によって操作される。
【0019】
具体的には、パイロット室6aにパイロット圧が導かれた場合には、制御弁6は位置aに切り換わり、ポンプ4から第1メイン通路7を通じてロッド側圧力室2aに作動油が供給されると共に、反ロッド側圧力室2bの作動油が第2メイン通路8を通じてタンクTへと排出される。これにより、シリンダ2は収縮動作し、アーム1は、
図1に示す矢印80の方向へと上昇する。
【0020】
一方、パイロット室6bにパイロット圧が導かれた場合には、制御弁6は位置bに切り換わり、ポンプ4から第2メイン通路8を通じて反ロッド側圧力室2bに作動油が供給されると共に、ロッド側圧力室2aの作動油が第1メイン通路7を通じてタンクTへと排出される。これにより、シリンダ2は伸長動作し、アーム1は、
図1に示す矢印81の方向へと下降する。
【0021】
パイロット室6a,6bにパイロット圧が導かれない場合には、制御弁6は位置cに切り換わり、シリンダ2に対する作動油の給排が遮断され、アーム1は停止した状態を保つ。
【0022】
このように、制御弁6は、シリンダ2を収縮動作させる収縮位置a、シリンダ2を伸長動作させる伸長位置b、及びシリンダ2の負荷を保持する遮断位置cの3つの切り替え位置を備え、シリンダ2に対する作動油の給排を切り換え、シリンダ2の伸縮動作を制御する。
【0023】
ここで、
図1に示すように、バケット13を持ち上げた状態で、制御弁6を遮断位置cに切り換えアーム1の動きを止めた場合には、バケット13とアーム1等の自重によって、シリンダ2には伸長する方向の力が作用する。このように、アーム1を駆動するシリンダ2においては、ロッド側圧力室2aが、制御弁6が遮断位置cの場合に負荷圧が作用する負荷側圧力室となる。ここで、負荷の下降とは、負荷側圧力室が収縮する方向への移動を指し、負荷の上昇とは、負荷側圧力室が拡張する方向への移動を指す。
【0024】
負荷側であるロッド側圧力室2aに接続された第1メイン通路7には、負荷保持機構20が介装される。負荷保持機構20は、制御弁6が遮断位置cの場合に、ロッド側圧力室2aの負荷圧を保持するものであり、
図1に示すように、シリンダ2の表面に固定される。
【0025】
なお、ブーム14を駆動するシリンダ15においては、反ロッド側圧力室15bが負荷側圧力室となるため、ブーム14に負荷保持機構20を設ける場合には、反ロッド側圧力室15bに接続されたメイン通路に負荷保持機構20が介装される(
図1参照)。
【0026】
負荷保持機構20は、第1メイン通路7に介装されたオペレートチェック弁21と、パイロット弁9を通じてパイロット室23に供給されるパイロット圧油によって制御弁6と連動して動作し、オペレートチェック弁21の作動を切り換える切換弁としてのメータアウト制御弁22とを備える。
【0027】
オペレートチェック弁21は、第1メイン通路7を開閉する弁体24と、弁体24が着座するシート部28と、弁体24の背面に画成された背圧室25と、弁体24に形成されロッド側圧力室2aの作動油を背圧室25へと常時導く絞り通路26とを備える。絞り通路26には絞り26aが介装される。
【0028】
第1メイン通路7は、弁体24によって、シリンダ側第1メイン通路7aと制御弁側第1メイン通路7bとに分けられる。シリンダ側第1メイン通路7aは、ロッド側圧力室2aとオペレートチェック弁21とをつなぎ、制御弁側第1メイン通路7bはオペレートチェック弁21と制御弁6とをつなぐ。
【0029】
弁体24には、制御弁側第1メイン通路7bの圧力が作用する第1受圧面24aと、シリンダ側第1メイン通路7aを通じてロッド側圧力室2aの圧力が作用する第2受圧面24bとが形成される。
【0030】
背圧室25には、弁体24を閉弁方向に付勢する付勢部材としてのスプリング27が収装される。このように、背圧室25の圧力とスプリング27の付勢力とは、弁体24をシート部28に着座させる方向に作用する。
【0031】
弁体24がシート部28に着座した状態は、オペレートチェック弁21が、ロッド側圧力室2aから制御弁6への作動油の流れを遮断する逆止弁としての機能を発揮する。つまり、オペレートチェック弁21は、ロッド側圧力室2a内の作動油の漏れを防止して負荷圧を保持し、アーム1の停止状態を保持する。
【0032】
また、負荷保持機構20は、ロッド側圧力室2aの作動油をオペレートチェック弁21をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導くバイパス通路30と、背圧室25の作動油を制御弁側第1メイン通路7bへと導く背圧通路31とを備える。
【0033】
メータアウト制御弁22は、バイパス通路30及び背圧通路31に介装され、バイパス通路30及び背圧通路31に対する制御弁側第1メイン通路7bの連通を切り換え、シリンダ2を伸長動作させる際にメータアウト側となる第1メイン通路7の作動油の流れを制御する。
【0034】
メータアウト制御弁22は、バイパス通路30に連通する第1供給ポート32、背圧通路31に連通する第2供給ポート33、及び制御弁側第1メイン通路7bに連通する排出ポート34の3つのポートを備える。
【0035】
また、メータアウト制御弁22は、遮断位置x、第1連通位置y、第2連通位置zの3つの切り換え位置を備える。
【0036】
パイロット室23には、制御弁6のパイロット室6bにパイロット圧が導かれたときに、同時に同じ圧力のパイロット圧が導かれる。つまり、制御弁6を伸長位置bに切り換えた場合に、メータアウト制御弁22も第1連通位置y又は第2連通位置zに切り換わる。
【0037】
具体的に説明すると、パイロット室23にパイロット圧が導かれない場合には、スプリング36の付勢力によって、メータアウト制御弁22は遮断位置xを保つ。遮断位置xでは、第1供給ポート32及び第2供給ポート33の双方が遮断される。
【0038】
パイロット室23に所定圧力未満のパイロット圧が導かれた場合には、メータアウト制御弁22は第1連通位置yに切り換わる。第1連通位置yでは、第1供給ポート32が排出ポート34と連通する。これにより、ロッド側圧力室2aの作動油はバイパス通路30からメータアウト制御弁22を通じて制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。つまり、ロッド側圧力室2aの作動油はオペレートチェック弁21をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。このとき、絞り37によって作動油の流れに抵抗が付与される。第2供給ポート33は遮断された状態を保つ。
【0039】
パイロット室23に所定圧力以上のパイロット圧が導かれた場合には、メータアウト制御弁22は第2連通位置zに切り換わる。第2連通位置zでは、第1供給ポート32が排出ポート34と連通すると共に、第2供給ポート33も排出ポート34と連通する。これにより、背圧室25の作動油は背圧通路31からメータアウト制御弁22を通じて制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。このとき、背圧室25の作動油は絞り37をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。
【0040】
バイパス通路30におけるメータアウト制御弁22の上流には、リリーフ通路40が分岐して接続される。リリーフ通路40には、ロッド側圧力室2aの圧力が所定圧力に達した場合に開弁して作動油の通過を許容し、ロッド側圧力室2aの作動油を逃がすリリーフ弁41が介装される。リリーフ弁41を通過した作動油は、排出通路76を通じてタンクTへ排出される。排出通路76にはオリフィス42が介装され、オリフィス42の上流側の圧力はパイロット室23に導かれる。メータアウト制御弁22は、リリーフ弁41を通過してパイロット室23に導かれたリリーフ圧油の圧力によって、第2連通位置zまで切り換わるように設定される。
【0041】
制御弁側第1メイン通路7bには第1メインリリーフ弁43が接続され、第2メイン通路8には第2メインリリーフ弁44が接続される。第1メインリリーフ弁43,第2メインリリーフ弁44は、アーム1に大きな外力が作用したときに、シリンダ2のロッド側圧力室2a,反ロッド側圧力室2bに生じる高圧を逃がすためのものである。
【0042】
次に、主に
図3を参照して、メータアウト制御弁22について詳細に説明する。
図3は負荷保持機構20の断面図であり、パイロット室23にパイロット圧が導かれておらずメータアウト制御弁22が遮断位置xである状態を示す。なお、
図3において、
図2で示した符号と同一の符号を付したものは、
図2で示した構成と同一の構成である。
【0043】
メータアウト制御弁22はボディ60に組み込まれる。ボディ60にはスプール孔60aが形成され、スプール孔60aには略円筒形状のスリーブ61が挿入される。スリーブ61内には、スプール56が摺動自在に組み込まれる。
【0044】
スプール56の一端面56aの側方には、キャップ57によって区画されたスプリング室54が画成される。スプリング室54は、スリーブ61の端面に形成された切り欠き61aとボディ60に形成された通路62を通じてオリフィス42(
図2参照)の下流側に連通しタンクTに接続される。
【0045】
スプリング室54には、スプール56を付勢する付勢部材としてのスプリング36が収装される。また、スプリング室54には、端面45aがスプール56の一端面56aに当接すると共に中空部45bにスプール56の一端面56aに突出して形成されたピン部56cが挿入される環状の第1バネ受部材45と、キャップ57の底部近傍に配置された第2バネ受部材46と、が収装される。スプリング36は、第1バネ受部材45と第2バネ受部材46との間に圧縮状態で介装され、第1バネ受部材45を介してスプール56を閉弁方向に付勢する。
【0046】
スプリング室54内での第2バネ受部材46の軸方向位置は、キャップ57の底部に貫通して螺合する調節ボルト47の先端部が第2バネ受部材46の背面に当接することによって設定される。調節ボルト47をねじ込むことによって、第2バネ受部材46は第1バネ受部材45に近づく方向に移動する。したがって、調節ボルト47のねじ込み量を調節することによって、スプリング36の初期のスプリング荷重を調整することができる。調節ボルト47はナット48にて固定される。
【0047】
スプール56の他端面56bの側方には、スプール孔60aと連通して形成されたピストン孔60bと、ピストン孔60bを閉塞するキャップ58とによってパイロット室23が画成される。パイロット室23内には、円筒状のカラー51が着脱自在に装着される。カラー51の外径はピストン孔60bの内径と略同一であり、カラー51はピストン孔60b内に嵌合状態で装着される。カラー51の中空部内には、背面にパイロット圧を受けてスプール56にスプリング36の付勢力に抗する推力を付与するピストン50が摺動自在に挿入される。
【0048】
パイロット室23は、ピストン50によって、ピストン50の背面に臨む第1パイロット室23aと、ピストン50の前面及びスプール56の他端面56bに臨む第2パイロット室23bと、に区画される。第1パイロット室23aには、ボディ60に形成された通路52を通じてパイロット弁9からのパイロット圧油が供給される。第2パイロット室23bには、排出通路76を通じてリリーフ弁41を通過したリリーフ圧油が導かれる。
【0049】
カラー51の外周面には、径方向に突出する環状の鍔部51aが形成される。カラー51及びピストン50をパイロット室23内に組み込む際には、キャップ58を取り外し、ボディ60に形成された段部63に鍔部51aが当接するまで、ピストン孔60bの内周面に沿ってカラー51を挿入する。その後、カラー51の中空部内にピストン50を挿入し、キャップ58をボディ60に形成された雌ねじ穴69に締結する。キャップ58は、先端面がカラー51の端面51bに当接するまでねじ込む。このように、カラー51は、ボディ60の段部63とキャップ58とに挟まれ、軸方向の移動が規制された状態でパイロット室23内に装着される。
【0050】
カラー51の胴部には、内外周面に開口部を有する複数の貫通孔51cが形成される。通路52を通じて第1パイロット室23a内に供給されたパイロット圧油は、貫通孔51cを通じてカラー51の中空部内に流入する。これにより、ピストン50の背面にパイロット圧が作用する。
【0051】
ピストン50は、外周面がカラー51の内周面に沿って摺動する摺動部50aと、摺動部50aと比較して小径に形成され、スプール56の他端面56bに対峙する先端部50bと、摺動部50aと比較して小径に形成され、キャップ58の先端面に対峙する基端部50cと、を備える。
【0052】
通路52を通じて第1パイロット室23a内にパイロット圧油が供給されると、基端部50cの背面と摺動部50aの環状背面とにパイロット圧が作用する。これにより、ピストン50は、前進し、先端部50bがスプール56の他端面56bに当接してスプール56を移動させる。このように、スプール56は、ピストン50の背面に作用するパイロット圧に基づいて発生するピストン50の推力を受け、スプリング36の付勢力に抗して移動する。なお、基端部50cの背面がキャップ58の先端面に当接している場合であっても、基端部50cは摺動部50aと比較して小径であってカラー51の貫通孔51cを閉塞しないため、パイロット圧油は貫通孔51cを通じてカラー51の中空部内に流入可能であり、摺動部50aの環状背面にパイロット圧が作用する。
【0053】
排出通路76を通じて第2パイロット室23b内にリリーフ弁41を通過したリリーフ圧油が導かれると、スプール56の他端面56bにリリーフ圧油の圧力が作用する。これにより、スプール56はスプリング36の付勢力に抗して移動し、メータアウト制御弁22は第2連通位置zに切り換わる。この際、リリーフ圧油の圧力はピストン50にも作用するため、ピストン50は後退してキャップ58に当接する。
【0054】
カラー51の外周面とピストン孔60bの内周面との間の作動油の漏れを防止するために、
図5に示すように、ピストン孔60bの内周面に環状溝を形成し、その環状溝にシール部材78を設けるようにしてもよい。
【0055】
スプール56は、一端面56aに作用するスプリング36の付勢力と他端面56bに作用するピストン50の推力とがバランスした位置で停止し、そのスプール56の停止位置にてメータアウト制御弁22の切り換え位置が設定される。
【0056】
スリーブ61には、バイパス通路30(
図2参照)に連通する第1供給ポート32、背圧通路31(
図2参照)に連通する第2供給ポート33、及び制御弁側第1メイン通路7bに連通する排出ポート34の3つのポートが形成される。
【0057】
スプール56の外周面は部分的に環状に切り欠かれ、その切り欠かれた部分とスリーブ61の内周面とで、第1圧力室64、第2圧力室65、第3圧力室66、及び第4圧力室67が形成される。
【0058】
第1圧力室64は、排出ポート34に常時連通している。
【0059】
第3圧力室66は、第1供給ポート32に常時連通している。スプール56のランド部72の外周には、スプール56がスプリング36の付勢力に抗して移動することによって、第3圧力室66と第2圧力室65を連通する複数の絞り37が形成される。
【0060】
第4圧力室67は、スプール56に軸方向に形成された導圧通路68を介して第2圧力室65に常時連通している。
【0061】
パイロット室23にパイロット圧が導かれない場合には、スプリング36の付勢力によってスプール56に形成されたポペット弁70が、スリーブ61の内周に形成された弁座71に押し付けられ、第2圧力室65と第1圧力室64の連通が遮断される。したがって、第1供給ポート32と排出ポート34との連通が遮断される。これにより、ロッド側圧力室2aの作動油が排出ポート34へと漏れることはない。この状態が、メータアウト制御弁22の遮断位置xに相当する。スプリング36の付勢力によってポペット弁70が弁座71に着座した状態では、第1バネ受部材45の端面45aとスリーブ61の端面との間には僅かな隙間が存在するため、ポペット弁70は弁座71に対してスプリング36の付勢力によって確実にシートされる。
【0062】
第1パイロット室23aにパイロット圧が導かれ、スプール56に作用するピストン50の推力がスプリング36の付勢力よりも大きくなった場合には、スプール56はスプリング36の付勢力に抗して移動する。これにより、ポペット弁70が弁座71から離れると共に、第3圧力室66と第2圧力室65が複数の絞り37を通じて連通するため、第1供給ポート32は第3圧力室66、第2圧力室65、及び第1圧力室64を通じて排出ポート34と連通する。第1供給ポート32と排出ポート34の連通によって、ロッド側圧力室2aの作動油が、絞り37を介して制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。この状態が、メータアウト制御弁22の第1連通位置yに相当する。
【0063】
第1パイロット室23aに導かれるパイロット圧が大きくなると、スプール56はスプリング36の付勢力に抗してさらに移動し、第2供給ポート33に第4圧力室67が連通する。これにより、第2供給ポート33は、第4圧力室67、導圧通路68、第2圧力室65、及び第1圧力室64を通じて排出ポート34と連通する。第2供給ポート33と排出ポート34の連通によって、背圧室25の作動油が制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。この状態が、メータアウト制御弁22の第2連通位置zに相当する。
【0064】
次に、主に
図2及び
図3を参照して、油圧制御装置の動作について説明する。
【0065】
制御弁6が遮断位置cの場合には、ポンプ4が吐出する作動油はシリンダ2に供給されない。このとき、メータアウト制御弁22の第1パイロット室23aにはパイロット圧が導かれないため、メータアウト制御弁22も遮断位置xの状態となる。
【0066】
このため、オペレートチェック弁21の背圧室25は、ロッド側圧力室2aの圧力に維持される。ここで、弁体24における閉弁方向の受圧面積(弁体24の背面の面積)は、開弁方向の受圧面積である第2受圧面24bの面積よりも大きいため、背圧室25の圧力とスプリング27の付勢力とによって、弁体24はシート部28に着座した状態となる。このように、オペレートチェック弁21によって、ロッド側圧力室2a内の作動油の漏れが防止され、アーム1の停止状態が保持される。
【0067】
操作レバー10が操作され、パイロット弁9から制御弁6のパイロット室6aへとパイロット圧が導かれると、制御弁6は、パイロット圧に応じた量だけ収縮位置aへと切り換わる。制御弁6が収縮位置aへと切り換わると、ポンプ4が吐出する作動油の圧力は、オペレートチェック弁21の第1受圧面24aへと作用する。このとき、メータアウト制御弁22は、パイロット室23にパイロット圧が導かれず遮断位置xの状態であるため、オペレートチェック弁21の背圧室25は、ロッド側圧力室2aの圧力に維持される。第1受圧面24aに作用する荷重が、背圧室25の圧力による弁体24の背面に作用する荷重とスプリング27の付勢力との合計荷重よりも大きくなった場合には、弁体24はシート部28から離れる。このようにしてオペレートチェック弁21が開弁すれば、ポンプ4から吐出された作動油はロッド側圧力室2aに供給され、シリンダ2は収縮する。これにより、アーム1は、
図1に示す矢印80の方向へと上昇する。
【0068】
操作レバー10が操作され、パイロット弁9から制御弁6のパイロット室6bへとパイロット圧が導かれると、制御弁6はパイロット圧に応じた量だけ伸長位置bへと切り換わる。また、これと同時に、第1パイロット室23aへもパイロット圧が導かれるため、メータアウト制御弁22は、供給されるパイロット圧に応じて第1連通位置y又は第2連通位置zに切り換わる。
【0069】
第1パイロット室23aに導かれるパイロット圧が所定圧力未満の場合には、メータアウト制御弁22は第1連通位置yに切り換わる。この場合、第2供給ポート33と排出ポート34との連通は遮断された状態であるため、オペレートチェック弁21の背圧室25はロッド側圧力室2aの圧力に維持され、オペレートチェック弁21は閉弁状態となる。
【0070】
一方、第1供給ポート32は排出ポート34と連通するため、ロッド側圧力室2aの作動油は、バイパス通路30から絞り37を通過して制御弁側第1メイン通路7bへと導かれ、制御弁6からタンクTへと排出される。また、反ロッド側圧力室2bには、ポンプ4の吐出する作動油が供給されるため、シリンダ2は伸長する。これにより、アーム1は、
図1に示す矢印81の方向へと下降する。
【0071】
ここで、メータアウト制御弁22を第1連通位置yに切り換えるのは、バケット13に取り付けた搬送物を、目的の位置に下ろすクレーン作業を行う場合が主である。クレーン作業では、シリンダ2を低速で伸長動作させてアーム1を矢印81の方向へとゆっくりと下降させる必要があるため、制御弁6は、伸長位置bにわずかに切り換えられるだけである。このため、制御弁6のパイロット室6bに導かれるパイロット圧は小さく、メータアウト制御弁22の第1パイロット室23aに導かれるパイロット圧は所定圧力未満となり、メータアウト制御弁22は第1連通位置yまでしか切り換わらない。したがって、ロッド側圧力室2aの作動油は絞り37を通過して排出されることになり、アーム1はクレーン作業に適した低速で下降する。
【0072】
また、メータアウト制御弁22が第1連通位置yの場合において、制御弁側第1メイン通路7bが破裂などして作動油が外部へと漏れるような事態が発生したとしても、ロッド側圧力室2aから排出される作動油の流量は絞り37によって制限されるため、バケット13の落下速度は速くならない。この機能をメータリング制御という。このため、バケット13が地面に落下する前に、メータアウト制御弁22を遮断位置xに切り換えることができ、バケット13の落下を防止することができる。
【0073】
このように、絞り37は、オペレートチェック弁21の閉弁時におけるシリンダ2の下降速度を抑えると共に、制御弁側第1メイン通路7bの破裂時におけるバケット13の落下速度を抑えるためのものである。
【0074】
第1パイロット室23aに導かれるパイロット圧が所定圧力以上の場合には、メータアウト制御弁22は第2連通位置zに切り換わる。この場合、第2供給ポート33が排出ポート34と連通するため、オペレートチェック弁21の背圧室25の作動油は、背圧通路31から制御弁側第1メイン通路7bへと導かれ、制御弁6からタンクTへと排出される。これにより、絞り通路26の前後にて差圧が発生し、背圧室25内の圧力が小さくなるため、弁体24に作用する閉弁方向の力が小さくなり、弁体24がシート部28から離れ、オペレートチェック弁21の逆止弁としての機能が解除される。
【0075】
このように、オペレートチェック弁21は、制御弁6からロッド側圧力室2aへの作動油の流れを許容する一方、背圧室25の圧力に応じてロッド側圧力室2aから制御弁6への作動油の流れを許容するように動作する。
【0076】
オペレートチェック弁21が開弁すると、ロッド側圧力室2aの作動油は第1メイン通路7を通りタンクTへと排出されるため、シリンダ2は素早く伸長する。つまり、メータアウト制御弁22を第2連通位置zに切り換えると、ロッド側圧力室2aから排出される作動油の流量が多くなるため、反ロッド側圧力室2bに供給される作動油の流量が多くなり、シリンダ2の伸長速度は速くなる。これにより、アーム1は矢印81の方向へと素早く下降する。
【0077】
メータアウト制御弁22を第2連通位置zに切り換えるのは、掘削作業等を行う場合であり、制御弁6は伸長位置bに大きく切り換えられる。このため、制御弁6のパイロット室6bに導かれるパイロット圧は大きく、メータアウト制御弁22の第1パイロット室23aに導かれるパイロット圧は所定圧力以上となり、メータアウト制御弁22は第2連通位置zまで切り換わる。
【0078】
次に、主に
図3を参照して、本実施形態の作用効果について説明する。
【0079】
スプール56は第1パイロット室23aのパイロット圧に応じてスプリング36の付勢力に抗して移動し、その開口面積が変化する。第1パイロット室23aのパイロット圧に応じて変化するスプール56の開口面積の変化特性(以下、単に「スプール56の開口面積変化特性」と称する。)は、油圧ショベルのサイズや機種に応じて異なる。スプール56の開口面積変化特性を、油圧ショベルのサイズや機種に応じた所望の特性とするためには、従来は、スプールの形状やピストンの受圧径を調整する必要があった。その際、ボディ60もスプールの形状やピストンの受圧径に合わせて製造する必要があった。
【0080】
しかし、本実施形態では、カラー51がパイロット室23に着脱自在に装着されるものであるため、内径の異なるカラー51を用いることによって、ピストン50の外径、すなわち、パイロット圧が作用する受圧面積を自由に設定することができる。つまり、内径の異なるカラー51を用いることによって、スプール56に付与されるピストン50の推力を自由に設定することができる。したがって、スプール56及びボディ60は変更することなく、カラー51及びピストン50のみを交換するだけで、スプール56の開口面積変化特性を自由に設定することが可能となる。よって、油圧ショベルのサイズや機種に関係なくスプール56、スリーブ61、及びボディ60を共通化できるため、油圧制御装置の製造コストを低減することができる。
【0081】
また、スプール56を製造するには、溝加工、熱処理、研磨、及び仕上げ加工を行う必要があるため、スプール56は製造に要するリードタイムが長い。そのため、スプール56の開口面積変化特性をスプール56の形状にて調整する方法では、短納期対応するためには、油圧ショベルのサイズや機種毎にスプール56の在庫を持つ必要があった。しかし、本実施形態では、スプール56は油圧ショベルのサイズや機種に関係なく共通化することができるため、スプール56の在庫を持つ必要がないという利点もある。
【0082】
図4は、スプール56の開口面積変化特性を示すグラフ図であり、横軸は第1パイロット室23aのパイロット圧、縦軸はスプール56の開口面積である。スプール56に付与されるピストン50の推力を自由に設定することができるため、
図4に示すように、第1パイロット室23aのパイロット圧に対するスプール56の開口面積の変化の傾きを自由に設定することができる。したがって、多機種の油圧ショベルに対応することが可能となる。なお、
図4における特性Aでは、スプール56の開口面積が0となるパイロット圧の範囲が遮断位置xに相当し、開口面積が0より大きくS以下となるパイロット圧の範囲が第1連通位置yに相当し、開口面積がSを超えるパイロット圧の範囲が第2連通位置zに相当する。
【0083】
ここで、制御弁6が遮断位置cに設定されてアーム1の動きが停止しているときに、アーム1に大きな外力が加わり、シリンダ2のロッド側圧力室2aの圧力が上昇して所定圧力に達した場合には、リリーフ弁41が開弁動作する。リリーフ弁41を通過したリリーフ圧油は第2パイロット室23bに導かれるため、スプール56はスプリング36の付勢力に抗して移動する。この際、メータアウト制御弁22が第1連通位置yまでしか切り換わらない場合には、リリーフ弁41の圧力脈動によりスプール56が発振し、メータアウト制御弁22を通過する作動油の流れも脈動し、機体が振動してしまう。しかし、本実施形態では、メータアウト制御弁22はリリーフ弁41を通過したリリーフ圧油の圧力によって第2連通位置zまで切り換わるように設定される。具体的には、リリーフ弁41を通過したリリーフ圧油の圧力によってスプール56が第2連通位置zまで移動するように、スプリング36のバネ定数又は初期のスプリング荷重が小さく設定される。
【0084】
リリーフ弁41を通過したリリーフ圧油の圧力によってメータアウト制御弁22が第2連通位置zまで切り換わることによって、リリーフ弁41が開弁動作した際には、オペレートチェック弁21が開弁するため、スプール56の開口面積と比較してオペレートチェック弁21の開口面積が十分に大きくなり、ロッド側圧力室2aから排出される作動油のメインの流れはオペレートチェック弁21を通過することになる。したがって、リリーフ弁41の圧力脈動によりスプール56が発振しても、メータアウト制御弁22を通過する作動油の流れの脈動が抑制され、機体の振動も抑制される。
【0085】
このように、スプリング36のバネ定数又は初期のスプリング荷重を小さく設定することによって、機体の振動を抑制することが可能となる。スプリング36のバネ定数又は初期のスプリング荷重を小さく設定した場合には、スプール56の開口面積変化特性が変化してしまう。しかし、本実施形態によれば、カラー51及びピストン50のみを交換することによって、スプール56の開口面積変化特性が変化しないように調整することができる。このように、スプール56に付与されるピストン50の推力を自由に設定することができる結果として、スプリング36のバネ定数又は初期のスプリング荷重を小さく設定して機体の振動を抑制することが可能となった。
【0086】
また、リリーフ弁41を通過したリリーフ圧油の圧力によってメータアウト制御弁22が第2連通位置zまで切り換わる効果として、第2連通位置zは第1連通位置yと比較して開口面積が大きいため、リリーフ弁41が開弁した際のサージ圧力を逃がし易いという効果もある。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0088】
例えば、上記実施形態では、カラー51は、鍔部51aがボディ60の段部63とキャップ58とで挟まれて固定される構成である。この構成に代わり、
図6に示すように、カラー51の外周面に鍔部51aを設けず、カラー51の両端部をボディ60に形成された段部77とキャップ58とで挟んで固定するようにしてもよい。この場合、カラー51の胴部に、リリーフ弁41を通過したリリーフ圧油を第2パイロット室23bに導くための油路51dを形成する必要がある。