(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき説明する。先ず、
図1〜
図3を用いて本発明の湿式画像形成装置の一実施形態に係るカラープリンター1の概略構成を説明する。
図1は、カラープリンター1の全体構成を示す概略断面図、
図2は、液体現像剤循環装置の部分を除いたカラープリンター1の概略断面図、
図3は、画像形成部の一つを拡大して示す断面図である。
【0023】
カラープリンター1は、画像形成のための様々なユニットや部品が収納される上側本体部1Aと、この上側本体部1Aの下部に配置され、各色用の液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBkが収納される下側本体部1Bとを含む。ここでは、上側本体部1Aと下側本体部1Bとを結ぶ配管類は図示を省略している。
【0024】
カラープリンター1は、上側本体部1Aに収容された、画像データに基づいてトナー画像を形成するタンデム式の画像形成部2と、シートを収容するシート収納部3とを含む。上側本体部1Aの上部には、画像形成処理後のシートを機外に排出する排出口31が備えられている。上側本体部1Aの内部には、シート収納部3から排出口31まで上方向に用紙を搬送するシート搬送路32が備えられている。このシート搬送路32の途中には、画像形成部2で形成されたトナー画像をシート上に転写する二次転写部23と、該二次転写部23へシートを所定のタイミングで向かわせるレジストローラー対33と、二次転写部23を通過したシートを排出口31へ搬送する搬送ローラー対34が配置されている。
【0025】
画像形成部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21のクリーニング部22と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBkとを備える。中間転写ベルト21は、導電性を有する無端状、すなわちループ状のベルト状部材であって、
図1、
図2において時計回りに周回駆動される。中間転写ベルト21は、前記周回の方向と直交する幅が、本カラープリンター1において使用可能な最大のシートの幅よりも幅広である。
【0026】
画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBkは、中間転写ベルト21の近傍であって、クリーニング部22と二次転写部23との間にタンデムに配置されている。各画像形成ユニットFY、FM、FC、FBkの配置の順番はこの限りではないが、各色の混色による完成画像への影響を配慮すると、この配置が好ましい。
【0027】
画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBkは、感光体ドラム10(像担持体)、帯電器11、露光装置12、除電装置13、現像装置14、クリーニング装置15、キャリア液除去ローラー16及び一次転写ローラー20を備える。画像形成ユニットのうち、最も二次転写部23に近い位置に位置する画像形成ユニットFBkには、キャリア液除去ローラー16が設けられていないが、その他の画像形成ユニットの構成は同一である。各画像形成ユニットFY、FM、FC、FBkに対応して、それぞれ液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBkが設けられ、各色の液体現像剤の供給、並びに回収が行われる。液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBkについては後に詳述する。
【0028】
感光体ドラム10は、円柱状の部材であって、その周面に静電潜像及びトナー像(現像剤像)を担持する。感光体ドラム10は、その回転軸回りに、
図2及び
図3において反時計方向に回転駆動される。帯電器11は、感光体ドラム10の周面を一様に帯電させる。露光装置12は、LED等の光源を有し、外部の機器から入力される画像データに応じて、一様に帯電した感光体ドラム10の周面に光を照射する。これにより、感光体ドラム10の周面には、静電潜像が形成される。
【0029】
現像装置14は、トナー(着色粒子)、液体のキャリア(溶媒)及び結着樹脂(溶解樹脂)を含む液体現像剤を、感光体ドラム10の周面に供給し、前記静電潜像にトナーを付着させる。これにより、静電潜像はトナー像として可視化される。
図3を参照して、現像装置14は、現像容器140(回収部の一部)、現像ローラー141(現像部)、供給ローラー142、支持ローラー143、供給ローラーブレード144、現像クリーニングブレード145、現像剤回収装置146(回収部の一部)及び現像ローラー帯電器147を含む。
【0030】
現像容器140は、液体現像剤の供給を受ける容器である。後述するが、この液体現像剤は、トナー、キャリア及び結着樹脂の濃度調整が予め行われた状態で、供給ノズルNから現像容器140内へ供給される。液体現像剤は、供給ローラー142と支持ローラー143とのニップ部へ向けて供給され、その余剰分は支持ローラー143の下方へ落下し、現像容器140の底部において貯留される。貯留された液体現像剤は、第2パイプG2を通して液体現像剤循環装置で回収される(
図4参照)。
【0031】
支持ローラー143は、現像容器140の略中央に配置され、下方から支える態様で供給ローラー142に当接されてニップ部を形成する。供給ローラー142は、支持ローラー143の直上ではなく、供給ノズルNから離れる方向の斜め上に配置され、その周面には液体現像剤を保持するための溝が設けられている。図中に点線矢印で示すように、支持ローラー143は反時計方向に、供給ローラー142は時計方向に回転する。
【0032】
供給ノズル37Nから供給される液体現像剤は、前記ニップ部の回転方向上流側で一時的に滞留され、両ローラー142、143の回転に伴って、供給ローラー142の前記溝に保持された状態で上方へ運ばれる。供給ローラーブレード144は、供給ローラー142の周面に圧接され、供給ローラー142に保持される液体現像剤の量が所定量になるように規制する。供給ローラーブレード144により掻き落とされた余剰の液体現像剤は、現像容器140の底部で受け取られる。
【0033】
現像ローラー141は、感光体ドラム10の周面に液体現像剤を供給して前記周面の静電潜像を現像する現像動作を行う。現像ローラー141は、現像容器140の上部開口部に、側方において感光体ドラム10と、下方において供給ローラー142と各々接するように配置されている。現像ローラー141は供給ローラー142と同方向に回転され、これにより現像ローラー141の周面には、供給ローラー142の周面に保持された液体現像剤が受け渡される。供給ローラー142の液体現像剤の層厚が所定値に規制されているので、現像ローラー141の表面に形成される液体現像剤層の層厚も所定値に保たれる。現像ローラー141には現像バイアスが印加される。感光体ドラム10の周面の静電潜像の電位と前記現像バイアスとの電位差によって、現像ローラー141の周面のトナーは感光体ドラム10の周面へ移動する。
【0034】
現像ローラー帯電器147は、トナーの帯電極性と同極性の帯電電位を与える。これにより、現像ローラー141に担持された現像剤層中のトナーは該層の表面側に移動され、現像効率が向上する。現像ローラー帯電器147は、現像ローラー141の、供給ローラー142との接触部の回転方向下流側であって、感光体ドラム10との接触部の上流側において、現像ローラー141の周面に対向するように設けられている。
【0035】
現像クリーニングブレード145は、現像ローラー141の感光体ドラム10との接触部の回転方向下流側に接触するように配置され、感光体ドラム10への現像動作を終えた現像ローラー141の表面の液体現像剤を除去する。
【0036】
現像剤回収装置146は、現像クリーニングブレード145で除去された液体現像剤を回収して、液体現像剤循環装置の第1パイプG1へ該液体現像剤を送り出す。液体現像剤は現像クリーニングブレード145の表面に沿って流下するが、液体現像剤の粘度が高いことから、現像剤回収装置146には液体現像剤の送り出しを補助する送り出しローラーが備えられている。本実施形態では、この現像剤回収装置146と、上述の現像容器140とが、前記現像動作に用いられなかった液体現像剤を回収する回収部としての機能を果たすものである。
【0037】
一次転写ローラー20は、中間転写ベルト21の裏面に、感光体ドラム10と対向して配置されている。一次転写ローラー20には、図示しない電源からトナー像中のトナーとは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧を印加される。つまり、一次転写ローラー20は、中間転写ベルト21と接触している位置で、中間転写ベルト21にトナーと逆極性の電圧を印加する。中間転写ベルト21は導電性を有するので、この印加電圧によって、中間転写ベルト21の表面側及びその周辺にトナーが引き付けられる。
【0038】
クリーニング装置15は、感光体ドラム10から用紙に転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングするための装置であって、残留現像剤搬送スクリュー151と、クリーニングブレード152とを備えている。残留現像剤搬送スクリュー151は、クリーニングブレード152によって掻き取られ、クリーニング装置15内に収納された残留現像剤をクリーニング装置15の外部に搬送するための部材である。クリーニングブレード152は、感光体ドラム10の回転軸方向に延びる板状の部材である。クリーニングブレード152は、その端部が感光体ドラム10の周面に摺接しており、感光体ドラム10の回転に伴って感光体ドラム10の周面上に残留した液体現像剤を掻き取る。
【0039】
除電装置13は、感光体ドラム10の周面を除電するための光源を有する。クリーニングブレード152による液体現像剤除去後、次の感光体ドラム10の周回による画像形成に備えて、除電装置13は、感光体ドラム10の周面に対して前記光源から除電光を照射し、該周面の残留電荷を除電する。
【0040】
キャリア液除去ローラー16は、感光体ドラム10の回転軸と平行な回転軸を中心として感光体ドラム10と同方向に回転可能な略円柱状の部材である。キャリア液除去ローラー16は、感光体ドラム10と中間転写ベルト21とが接触する位置よりも二次転写部23が配置されている側に配置され、中間転写ベルト21の表面(外周面)に当接している。キャリア液除去ローラー16は、中間転写ベルト21の周回によって従動回転し、中間転写ベルト21の表面に付着しているキャリア液を除去する。
【0041】
図2に戻って、シート収納部3は、画像形成に供されるシートの束を収納するシートカセットを有する。二次転写部23は、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像をシートに転写する部分であって、中間転写ベルト21を支持する支持ローラー24と、支持ローラー24に対向して配置された二次転写ローラー25とを有する。
【0042】
<第1実施形態>
図4は、第1実施形態に係る液体現像剤循環装置LC(LC−1)の全体の概略を示す。他の液体現像剤循環装置LY、LM、LBkも同じ構成である。液体現像剤循環装置LC−1は、感光体ドラム10へ液体現像剤を供給した後に現像クリーニングブレード145によって現像ローラー141の表面から掻き取られた残留現像剤(トナー、キャリア液及び結着樹脂の混合物)を循環させ再利用するための装置である。
【0043】
液体現像剤循環装置LC−1は、回収現像剤タンク41、調整タンク42(第1容器)を含む濃度調整部A1、濃度検出装置43、キャリアタンク44、トナータンク45、結着樹脂タンク46、現像剤リザーブタンク47、再分散タンク48(第2容器)を含む再分散部A2(再分散手段)、キャリア分離装置49及び複数のポンプP1〜P12を備えている。
【0044】
回収現像剤タンク41は、現像装置14に第1パイプG1及び第2パイプG2を介して接続され、現像装置14側から回収された液体現像剤を収容可能なタンクである。第1パイプG1及び第2パイプG2の途中には、それぞれ第1ポンプP1及び第2ポンプP2が取り付けられている。
【0045】
感光体ドラム10へトナーを供給した後に、現像クリーニングブレード145によって現像ローラー141の周面から掻き取られた液体現像剤は、第1ポンプP1の駆動により第1パイプG1を通して回収現像剤タンク41に移動される。また、現像容器140内において供給ローラー142から現像ローラー141へ供給されずに現像容器140にて回収された液体現像剤は、第2ポンプP2の駆動により第2パイプG2を通して回収現像剤タンク41に移動される。
【0046】
回収現像剤タンク41の下流には後述する再分散タンク48が配置され、再分散タンク48の下流には調整タンク42が配置されている。回収現像剤タンク41と再分散タンク48とは第3パイプG3で、再分散タンク48と調整タンク42とは第4パイプG4で各々接続されている。第3パイプG3には第3ポンプP3が、第4パイプG4には第4ポンプP4が各々取り付けられている。本実施形態では、以上のパイプG1、G2、G3、G4が、回収部(現像剤回収装置146、現像容器140)で回収された液体現像剤(以下、回収液体現像剤)を濃度調整部A1へ供給する第1供給系統である。このうち、第1パイプG1、第2パイプG2及び第3パイプG3が、第1〜第3ポンプP1〜P3の駆動によって前記回収部から再分散タンク48まで液体現像剤を搬送する上流系統、第4パイプG4が、第4ポンプP4の駆動によって再分散タンク48から調整タンク42まで液体現像剤を搬送する下流系統である。
【0047】
濃度調整部A1は、調整タンク42と第1攪拌装置50とを含み、トナー、キャリア液及び溶解樹脂の混合比が所定の混合比に調整された液体現像剤を生成する。調整タンク42は、液体現像剤を貯留するタンクであって、回収液体現像剤と、トナー溶液、結着樹脂溶液及びキャリア液とが加えられるタンクである。第1攪拌装置50は、調整タンク42内の液体現像剤を攪拌すると共に、調整タンク42内の液体現像剤量を検出する機能を備えた装置である。この、第1攪拌装置50については、
図5A及び
図5Bに基づき、後記で詳述する。
【0048】
濃度検出装置43は、光学式センサを含み、調整タンク42内の液体現像剤の固形分の濃度(トナーの濃度)及び結着樹脂の濃度を検出するための装置である。調整タンク42に接続されている環状の第5パイプG5に、濃度検出装置43が接続されている。この環状の第5パイプG5には第5ポンプP5が取り付けられている。調整タンク42内の液体現像剤は、第5ポンプP5の駆動により第5パイプG5の入口端から濃度検出装置43へ導かれ、その後、第5パイプG5の出口端から調整タンク42内に戻される。
【0049】
キャリアタンク44は、キャリア液を貯留するタンクである。このキャリア液としては、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油等からなる電気絶縁性の有機溶剤を用いることができる。なお、現像性を向上させるため、キャリア液の体積抵抗は10
12Ω・cm以上であることが望ましい。濃度検出装置43により、調整タンク42内のトナーの濃度若しくは結着樹脂の濃度が適正範囲よりも高いと判定された場合に、キャリアタンク44から調整タンク42内にキャリア液が供給され、調整タンク42内の液体現像剤のトナー濃度又は結着樹脂濃度が下げられる。キャリアタンク44と調整タンク42とは第6パイプG6で接続されており、前記キャリア液の供給は、第6パイプG6の途中に設けられた第6ポンプP6の駆動によって実行される。
【0050】
トナータンク45は、高濃度のトナー溶液を貯留するタンクである。前記トナー溶液とは、各色の画像形成に寄与する顔料(着色粒子)の分散液である。勿論、予め顔料を結着樹脂に分散させた溶液を用いることもできるが、本実施形態では顔料と結着樹脂とを分離して貯留する例を示す。前記顔料としては、従来公知の画像形成用の各種有機・無機顔料を用いることができる。前記顔料の分散液は、液体現像剤中において顔料粒子の分散を促進する分散促進剤を含むことが望ましい。なお、本明細書においては、この顔料のことを「トナー」と呼ぶことがある。
【0051】
濃度検出装置43により、調整タンク42内のトナーの濃度が適正範囲よりも低いと判定された場合に、トナータンク45から調整タンク42内にトナー濃度が高い前記トナー溶液が供給され、調整タンク42内の液体現像剤におけるトナー濃度が上げられる。トナータンク45と調整タンク42とは第7パイプG7で接続されている。前記トナー溶液の供給は、第7パイプG7の途中に設けられた第7ポンプP7の駆動によって実行される。
【0052】
結着樹脂タンク46には、トナーを印刷用紙に定着させるための成分を含む有機高分子化合物の溶液が収容されている。有機高分子化合物(溶解樹脂)としては、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等を例示することができる。この有機高分子化合物は、絶縁性有機溶剤に溶解された状態で、結着樹脂タンク46に収容される。濃度検出装置43により、調整タンク42内の結着樹脂の濃度が適正範囲よりも低いと判定された場合に、結着樹脂タンク46から調整タンク42内に結着樹脂濃度が高い前記溶液が供給され、調整タンク42内の液体現像剤における結着樹脂濃度が上げられる。結着樹脂タンク46と調整タンク42とは第8パイプG8で接続されている。前記有機高分子化合物溶液の供給は、第8パイプG8の途中に設けられた第8ポンプP8の駆動によって実行される。
【0053】
現像剤リザーブタンク47は、現像装置14に補給する液体現像剤を収納するタンクである。現像剤リザーブタンク47は、調整タンク42と第9パイプG9で接続されており、第9パイプG9の途中に設けられた第9ポンプP9の駆動によって、調整タンク42から濃度調整済みの液体現像剤の供給を受ける。現像剤リザーブタンク47に貯留された液体現像剤は、供給ノズルNを介して現像装置14(現像容器140)へ供給される。供給ノズルNと現像剤リザーブタンク47とは第10パイプG10で接続されており、前記液体現像剤の供給は、第10パイプG10に取り付けられた第10ポンプP10の駆動によって実行される。本実施形態では、上記第9パイプG9及び第10パイプG10は、濃度調整部A1で生成された液体現像液を現像装置14へ供給する第2供給系統である。
【0054】
キャリア分離装置49は、クリーニング装置15で回収された残留現像剤からキャリア液を分離して抽出する装置である。クリーニング装置15とキャリア分離装置49との間は、第11ポンプP11が取り付けられた第11パイプG11で接続されている。第11ポンプP11の駆動により、クリーニング装置15内の残留現像剤は、キャリア分離装置49に送られる。キャリア分離装置49とキャリアタンク44との間には、第12ポンプP12が取り付けられた第12パイプG12が設けられている。キャリア分離装置49で抽出されたキャリア液は、第12ポンプP12の駆動によってキャリアタンク44へ送られる。
【0055】
なお、図示は省略しているが、回収現像剤タンク41、キャリアタンク44、トナータンク45、結着樹脂タンク46及び現像剤リザーブタンク47の適所には、これらタンク内の液面高さを検知するための液面センサが備えられている。
【0056】
以上の構成に加えて、本実施形態では再分散部A2が回収現像剤タンク41と濃度調整部A1(調整タンク42)との間に配置されている。再分散部A2は、前記回収部において回収された液体現像剤に対して、トナー及び溶解樹脂を当該液体現像剤中おいて再分散させる処理を行うために設けられている。回収液体現像剤、つまり回収現像剤タンク41中の液体現像剤は、トナー及び溶解樹脂のキャリア液への分散状態が良好ではない場合がある。例えば、トナーの凝集物や、溶解樹脂の析出物が、回収液体現像剤中に浮遊している状態となることがある。このような液体現像剤が調整タンク42へ流入し、現像剤リザーブタンク47を通して現像装置14へ供給されてしまうと、シートに形成する画像の画質が低下することになる。また、液体現像剤中に浮遊物が存在すると、濃度検出装置43による濃度検出の光学的なセンシング動作等の正確性が妨げられる。そこで、本実施形態の液体現像剤循環装置LC−1においては、回収液体現像剤に対して再分散部A2において前記再分散の処理を施した後、これを調整タンク42に供給することで、上記の問題を解消する。
【0057】
再分散部A2は、再分散タンク48、第2攪拌装置60(攪拌手段)、液温センサ66及びヒーター67(加熱手段)を備える。本実施形態において、前記再分散の処理は、ヒーター67による回収液体現像剤の加熱及び第2攪拌装置60による第2攪拌装置60の攪拌である。ヒーター67による加熱と、第2攪拌装置60による攪拌力との併用によって、トナー及び溶解樹脂を液体現像剤中おいて良好に再分散させることができる。
【0058】
再分散タンク48は、回収液体現像剤を貯留する。この再分散タンク48には、第3ポンプP3の駆動により、回収現像剤タンク41から第3パイプG3を通して回収液体現像剤が供給される。ここで供給される回収液体現像剤は、上述の浮遊物が存在している可能性のある液体現像剤である。再分散タンク48内で前記再分散処理が為された後、回収液体現像剤は、第4ポンプP4の駆動によって、再分散タンク48から第4パイプG4を通して調整タンク42へ搬入される。
【0059】
第2攪拌装置60は、再分散タンク48に貯留された回収液体現像剤を攪拌すると共に、再分散タンク48内の回収液体現像剤量を検出する機能を備えた装置である。この第2攪拌装置60については、
図6に基づき、後記で詳述する。液温センサ66は、測温抵抗体、熱電対或いはサーミスタ等の感温素子を含み、再分散タンク48内の回収液体現像剤の液温を計測する。液温センサ66は、前記感温素子が回収液体現像剤中へ浸漬される態様で、再分散タンク48に取り付けられる。ヒーター67は、再分散タンク48に貯留された回収液体現像剤を加熱する。このヒーター67としては、発熱線や面ヒーター等の各種の抵抗加熱素子を用いることができ、これらを再分散タンク48の周壁や底壁に添設若しくは巻回する配置を取ることができる。
【0060】
液体現像剤循環装置LC−1は、制御部70をさらに備える。制御部70は、第1〜第12ポンプP1〜P12の動作を制御することによって液体現像剤の循環動作を制御すると共に、濃度検出装置43による濃度検出結果に基づき、第1攪拌装置50の動作を制御しつつ、調整タンク42内における液体現像剤の濃度調整動作を制御する。また、制御部70は、液温センサ66による液温の計測結果を参照しつつ、第2攪拌装置60及びヒーター67の動作を制御することによって、再分散タンク48内における回収液体現像剤の再分散処理を制御する。この制御部70の機能構成及び動作については、
図8の機能ブロック図及び
図9のフローチャートに基づき後述する。
【0061】
図5Aは、濃度調整部A1の断面図、
図5Bは、濃度調整部A1が備える第1攪拌装置50の斜視図である。調整タンク42は、上面が開口した円筒型のタンクである。調整タンク42の上端付近には、キャリア液を供給する第6パイプG6の端部が接続される第1受入孔421が設けられている。また、第1受入孔421と同じ高さ位置であって周方向の異なる位置には、高濃度のトナー溶液を供給する第7パイプG7の端部が接続される第2受入孔422、及び、高濃度の結着樹脂溶液を供給する第8パイプG8の端部が接続される第3受入孔423が設けられている。さらに、調整タンク42の下端付近には、再分散処理が施された回収液体現像剤を供給する第4パイプG4が接続される第4受入孔424と、濃度調整された液体現像剤を現像剤リザーブタンク47へ向けて吐出する送出孔425とが備えられている。これに加え、環状の第5パイプG5の一端と他端とが接続される図略の出入口も、調整タンク42に備えられている。
【0062】
第1攪拌装置50は、調整タンク42の上面開口からキャビティ内に入り込む態様で、調整タンク42に取り付けられている。第1攪拌装置50は、第1攪拌部材51と、第1液面検知部材52と、液体現像剤の撹拌用の第1モーター53と、液面検知用の第2モーター54とを備えている。
【0063】
第1攪拌部材51は、調整タンク42内の液体現像剤を撹拌するための部材であって、第1回転軸511と、第1羽根部材512とを有している。第1回転軸511は、上端が第1モーター53の出力回転軸に取り付けられている。第1羽根部材512は、第1回転軸511の下端部に取り付けられる筒状の部分と、筒状の部分から径方向に放射状に広がるように延び出している羽根部とを有している。第1羽根部材512は、第1回転軸511が第1モーター53によって回転駆動されることによって、第1回転軸511の軸回りに回転する。
【0064】
第1液面検知部材52は、調整タンク42内の所定の高さ位置に設けられ、調整タンク42内の液面hが所定高さ位置に位置した際に、攪拌部材51によって撹拌された液体現像剤により負荷が作用する部材である。第1液面検知部材52は、第2回転軸521、環状部材522、接続部材523及び第2羽根部材524を有している。
【0065】
第2回転軸521は、第1回転軸511が内部を貫通する筒状の軸体であって、その上端部には外周側にギア歯が形成された円板状ギア部材55が取り付けられている。第2回転軸521は、第1回転軸511よりも短く、第1回転軸511に対して相対回転可能な部材である。
図5Aに示すように、第2回転軸521の先端eは、第1回転軸511の実質的に液面hへ浸漬されない位置にある。第2回転軸521が液体現像剤と接触すると、それだけで回転負荷が増加してしまうと共に、第1回転軸511と第2回転軸521との間のギャップに液体現像剤が入り込んで、第2回転軸521の回転性が悪化することが起こり得る。先端eの位置を上記の通りに設定することで、このような不具合を回避することができる。
【0066】
環状部材522は、第1羽根部材512の上側に設けられており、内周側に配置された第1環状部材525と、第1環状部材525の外周側に同心で配置された第2環状部材526とを有している。環状部材522は、調整タンク42の内壁に近接するように配置されている。なお、第1環状部材525の内径は第1羽根部材512が回転時に作る回転軌跡の外径よりも大きく設定されている。
【0067】
第2羽根部材524は、第1環状部材525と第2環状部材526とを連結する部材であって、第1環状部材525と第2環状部材526との間に配置された板状の部分である。ここでは第2羽根部材524は、周方向に等間隔に8枚設けられており、各第2羽根部材524間には空間が配置されている例を示している。
【0068】
接続部材523は、環状部材522と第2回転軸521とを接続する部材である。接続部材523の一端側は第1環状部材525に接続され、他端側は第2回転軸521の先端eに接続されている。接続部材523は、第2回転軸521の先端eに取り付けられた円板部527と、この円板部527から下方に延びる4本のL字型の帯状部とからなる。
【0069】
第1モーター53は、第1羽根部材512を回転駆動させるための駆動部であって、第1回転軸511の上端部に配置されている。第2モーター54は、第1液面検知部材52を回転駆動させるための駆動部である。第2モーター54の出力回転軸には、第2回転軸521の円板状ギア部材55に噛み合うピニオンギア541が取り付けられている。
【0070】
図6は、再分散部A2の断面図、
図7は再分散部A2が備える第2攪拌部材61の斜視図である。再分散部A2は、再分散タンク48と第2攪拌装置60とを含み、この第2攪拌装置60は、上述の第1攪拌装置50に類似した構成を備えている。再分散タンク48は、上面が開口した円筒型のタンクである。再分散タンク48の下端付近には、回収現像剤タンク41から回収液体現像剤を搬送する第3パイプG3が接続される受入孔481と、再分散処理後の回収液体現像剤を調整タンク42へ搬送するする送出孔482とが備えられている。
【0071】
液温センサ66は、その感温部が再分散タンク48の内周側壁の下方(液面hよりも下方)に沿うように配置されている。ヒーター67は、再分散タンク48の底壁48Bの外面に取り付けられている例を示している。ヒーター67は、底壁48Bを加温し、これにより再分散タンク48に貯留されている回収液体現像剤を適温に加熱する。好ましい回収液体現像剤の加熱温度は60℃程度である。
【0072】
第2攪拌装置60は、再分散タンク48の上面開口からキャビティ内に入り込む態様で、再分散タンク48に取り付けられている。第2攪拌装置60は、第2攪拌部材61(攪拌羽根)と、第2液面検知部材62と、回収液体現像剤の撹拌用の第3モーター63(駆動部)と、液面検知用の第4モーター64とを備えている。
【0073】
第2攪拌部材61は、再分散タンク48内の回収液体現像剤を撹拌するための部材であって、第3回転軸611と、第3羽根部材612とを有している。第3回転軸611は、上端が第3モーター63の出力回転軸に取り付けられている。第3羽根部材612は、
図7に示すように溶解型攪拌羽根であって、第3回転軸611の下端部に取り付けられる円板部613と、円板部613の外周縁に設けられた下羽根614及び上羽根615とを有している。下羽根614は、円板部613の外周縁から下方に折り曲げられた羽根であり、上羽根615は上方に折り曲げられた羽根である。第3羽根部材612は、第3回転軸611が第3モーター63によって回転駆動されることによって、第3回転軸611の軸回りに回転する。
【0074】
第2液面検知部材62は、再分散タンク48内の所定の高さ位置に設けられ、再分散タンク48内の液面hが所定高さ位置に位置した際に、第2攪拌部材61によって撹拌された回収液体現像剤により負荷が作用する部材である。第2液面検知部材62は、第4回転軸621、環状部材622、接続部材623及び第4羽根部材624を有している。第4回転軸621は、第3回転軸611が内部を貫通する筒状の軸体であって、その上端部には外周側にギア歯が形成された円板状ギア部材65が取り付けられている。この第2液面検知部材62の構成は、上述の第1液面検知部材52の構成と実質的に同じであるので、ここでは説明を省略する。なお、第4回転軸621、環状部材622、接続部材623及び第4羽根部材624は、各々、第1液面検知部材52の第2回転軸521、環状部材522、接続部材523及び第2羽根部材524に対応する部材である。
【0075】
第3モーター63は、第3羽根部材612を回転駆動させるための駆動部であって、第3回転軸611の上端部に配置されている。この第3モーター63としては、15,000RPM以上の高速回転が可能なモーターを選択することが望ましい。第4モーター64は、第2液面検知部材62を回転駆動させるための駆動部である。第4モーター64の出力回転軸には、第4回転軸621の円板状ギア部材65に噛み合うピニオンギア641が取り付けられている。
【0076】
図8は、第1実施形態に係る液体現像剤循環装置LC−1の制御部70の機能ブロック図である。制御部70は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、各種の制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算処理や制御処理などのデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)などを含む。制御部70は、プログラムの実行により、モーター駆動制御部71、電力算出部72、液面判定部73、液温判定部74、ヒーター制御部75及びポンプ制御部76を機能的に具備するように動作する。
【0077】
モーター駆動制御部71は、第1攪拌装置50の第1モーター53及び第2モーター54と、第2攪拌装置60の第3モーター63及び第4モーター64との回転駆動を制御する。モーター駆動制御部71は、第1モーター53及び第3モーター63を回転させて、調整タンク42内の液体現像剤及び再分散タンク48内の回収液体現像剤を攪拌させるために第1攪拌部材51及び第2攪拌部材61を回転させる。また、モーター駆動制御部71は、タンク内の液量検出のために第2モーター54及び第4モーター64を動作させて第1液面検知部材52及び第2液面検知部材62を回転させる。
【0078】
モーター駆動制御部71は、第3モーター63を制御することにより、再分散処理のために回収液体現像剤を攪拌する第2攪拌部材61を、状況に応じて少なくとも5000RPM〜18000RPM程度の高速回転(第1速度)と、200RPM〜1000RPM程度の低速回転(第2速度)との2段階で回転させる。回収液体現像剤に多くの凝集物が含有されており且つ液温が低温(所定の閾値温度以下)である場合、回収液体現像剤の粘度は高い。この場合、モーター駆動制御部71は第3モーター63を高速回転させ、第2攪拌部材61によって回収液体現像剤を高速で攪拌させる。この撹拌により、第3羽根部材612と回収液体現像剤との摩擦熱によって、回収液体現像剤の液温をある程度上昇させることができる。一方、回収液体現像剤の液温が高温のとき(前記閾値温度を上回るとき)、モーター駆動制御部71は第3モーター63を低速回転させる。
【0079】
電力算出部72は、第2モーター54及び第4モーター64によって消費されている電力を逐次算出する。この電力は、第2、第4モーター54、64の負荷電流と印加電圧とから求めることができる。なお、単に第2、第4モーター54、64の負荷電流の変化を監視させるようにしても良い。第2、第4モーター54、64の負荷電流は、第1、第2液面検知部材52、62に作用する負荷によって変動する。調整タンク42又は再分散タンク48内において液体現像剤の液面hが上昇して、環状部材522又は622が液体現像剤と接触すると前記負荷が増大し、負荷電流も増加する。電力算出部72は、このような消費電力乃至は負荷電流の変動を検出し、液面判定部73へ出力する。
【0080】
液面判定部73は、電力算出部72の出力データに基づいて、調整タンク42内における液体現像剤の液面hの高さ、及び、再分散タンク48内における液体現像剤の液面hの高さが所定値を超過したか否かを判定する。例えば液面判定部73は、第2、第4モーター54、64の消費電力乃至は負荷電流が、3秒間の平均値で予め設定された閾値を超過したときに、液面hの高さが所定値を超過したと判定する。また、液面判定部73は、回収現像剤タンク41、キャリアタンク44、トナータンク45、結着樹脂タンク46及び現像剤リザーブタンク47に備えられている液面センサ77(
図4では図略)から検知データを取得して、これらタンク内の液面高さを管理する。
【0081】
液温判定部74は、再分散タンク48内に配置されている液温センサ66から測定データを取得し、該測定データに基づき回収液体現像剤の液温を特定する。後記でも説明するが、本実施形態で用いる液体現像剤は、液温が60℃を超えると、凝集したトナー及び結着樹脂の分散性が良好となる性質を有する。液温判定部74は、この60℃を閾値温度とし、回収液体現像剤の液温が前記閾値温度を超過しているか否かの判定信号を出力する。
【0082】
ヒーター制御部75は、ヒーター67に対する通電量を制御することによって、ヒーター67の発熱量を制御する。ヒーター制御部75は、液温判定部74が特定した液温に応じて前記発熱量を制御する他、液温判定部74が閾値温度超過の判定信号を出力した場合に、ヒーター67への通電を停止させる制御を行う。
【0083】
ポンプ制御部76は、第1〜第12ポンプP1〜P12に対して駆動又は停止の制御信号を与え、その動作を制御する。例えばポンプ制御部76は、液面判定部73による判定結果、並びに濃度検出装置43によるトナー濃度の判定結果等を踏まえて、各タンクの液面レベルを適正に保つと共に、タンク間の液体の移動が適正に行われるよう、関係するポンプの動作を制御する。
【0084】
続いて、本実施形態に係る湿式のカラープリンター1の画像形成動作を説明する。カラープリンター1に接続されたパーソナルコンピュータ(図略)からの画像形成指示を受けると、カラープリンター1は、作成指示を受けた画像データに対応した各色のトナー像を画像形成ユニットFY、FM、FC、FBを用いて形成する。具体的には、感光体ドラム10上に画像データに基づいた静電潜像が形成され、この静電潜像に現像装置14から液体現像剤が供給される。このようにして各画像形成ユニットで形成された画像は、中間転写ベルト21に順次重ね合わせて転写され、中間転写ベルト21上にはフルカラートナー像が形成される。
【0085】
このカラートナー像の形成と同期して、シート収納部3に収容されているシートが一枚ずつ取り出されて、シート搬送路32に沿って搬送される。そして、シートは、レジストローラー対33によって、中間転写ベルト21への一次転写とタイミングを合わせて二次転写部23に送り込まれる。二次転写部23において、中間転写ベルト21上のカラートナー像がシートに二次転写される。その後、シートは、搬送ローラー対34によって搬送され、排出口31からカラープリンター1の外部に排出される。二次転写後、中間転写ベルト21に残留したトナーは、中間転写ベルト21のクリーニング部22によって中間転写ベルト21から除去される。
【0086】
次に、現像装置14に液体現像剤を供給する動作、すなわち第1実施形態に係る液体現像剤循環装置LC−1によるシアン液体現像剤の循環動作について説明する。ここで説明する動作は、マゼンタ、シアン、ブラックの液体現像剤循環装置LM、LC、LBkにおいても同じである。
【0087】
画像形成動作時に感光体ドラム10に供給されずに現像ローラー141上に残留した液体現像剤は、現像クリーニングブレード145によって掻き取られ、第1パイプG1を介して回収現像剤タンク41に回収される。また、供給ローラー142から現像ローラー141へ供給されずに現像容器140にて回収された液体現像剤も、第2パイプG2を通して回収現像剤タンク41に回収される。さらに、クリーニング装置15で回収された残留現像剤からキャリア分離装置49にて抽出されたキャリア液が、キャリアタンク44へ回収される。ポンプ制御部76は、このようなリサイクル液体循環を実行させるため、第1、第2、第11、第12ポンプP1、P2、P11、P12を駆動させる。
【0088】
回収現像剤タンク41に一旦貯留された回収液体現像剤は、その後に再分散タンク48に導入される。ポンプ制御部76は、液面判定部73による回収現像剤タンク41内の回収液体現像剤の液面高さを参照して、適宜なタイミングで第3ポンプP3を駆動させる。再分散タンク48に貯留された回収液体現像剤に対して、モーター駆動制御部71及びヒーター制御部75等の制御下において、第2攪拌装置60及びヒーター67により再分散処理が施される。この再分散処理の一例については、後記で詳述する。
【0089】
調整タンク42内の液体現像剤量が減少すると、ポンプ制御部76は第4ポンプP4を駆動させ、再分散タンク48から第4パイプG4を通して再分散処理済みの回収液体現像剤を調整タンク42へ供給させる。調整タンク42が所定量の(回収)液体現像剤で満たされたことが液面判定部73で検知されると、第4ポンプP4の駆動は停止される。第2モーター54の消費電力乃至は負荷電流は、電力算出部72により常時監視されている。消費電力乃至は負荷電流が、予め設定された閾値を超過した場合、液面判定部73は、液体現像剤の液面hの高さが、所定値を超過したと判定する。第4モーター64についても同様である。
【0090】
次いでポンプ制御部76は、第5ポンプP5を駆動させる。これにより、調整タンク42内の液体現像剤は濃度検出装置43に送られる。濃度検出装置43おいて、現状の液体現像剤におけるトナー濃度及び結着樹脂濃度が検出される。この検出結果は、ポンプ制御部76に送信される。
【0091】
濃度検出装置43により、液体現像剤中のトナー濃度が高いことが検出された場合、ポンプ制御部76は、第6ポンプP6を駆動させて、キャリアタンク44からキャリア液を調整タンク42へ供給させる。一方、トナー濃度が低いことが検出された場合には、ポンプ制御部76は、第7ポンプP7を駆動させて、トナータンク45から高濃度のトナー溶液を調整タンク42へ供給させる。同様に、液体現像剤中の結着樹脂濃度が高いことが検出された場合、ポンプ制御部76は、第6ポンプP6を駆動させて、キャリアタンク44からキャリア液を調整タンク42へ供給させる。一方、結着樹脂濃度が低いことが検出された場合には、ポンプ制御部76は、第8ポンプP8を駆動させて、結着樹脂タンク46から高濃度の結着樹脂溶液を調整タンク42へ供給させる。高濃度のトナー溶液又は結着樹脂溶液の調整タンク42への供給に際しては、両者の配合比が変わらないよう、一方が供給されれば他方も適量供給される。
【0092】
その後、適宜濃度検出装置43により液体現像剤中のトナー濃度及び結着樹脂濃度が検出される。これらの濃度が適正範囲に至れば、必要に応じてポンプ制御部76は第9ポンプP9を駆動させ、調整タンク42から現像剤リザーブタンク47へ濃度調整がなされた液体現像剤を供給する。さらに、ポンプ制御部76は、適宜第10ポンプP10を駆動させ、現像剤リザーブタンク47に収納された液体現像剤を、供給ノズルNを介して現像装置14に供給させる。
【0093】
図9は、第1実施形態の制御部70による再分散処理を示すフローチャートである。ここでは、回収現像剤タンク41から再分散タンク48内に所定量の、常温の回収液体現像剤が供給された状態を想定する。この場合、第3、第4ポンプP3、P4は停止状態とされ、一定量の回収液体現像剤が再分散タンク48に閉じ込められた状態が形成される。まず、制御部70のモーター駆動制御部71は、第3モーター63(駆動部)を10,000RPM程度の回転数で高速回転(所定の第1速度)させる(ステップS1)。これにより、第2攪拌部材61(攪拌羽根)も高速回転し、再分散タンク48内の回収液体現像剤は高度に攪拌される。モーター駆動制御部71は、この第2攪拌部材61の高速回転を一定時間(例えば3分間)継続させる(ステップS2)。なお、この段階では、ヒーター67は停止状態である。
【0094】
その後、液温センサ66から測定データを取得している液温判定部74により、回収液体現像剤の液温が60℃以上であるか否かが判定される(ステップS3)。なお、ヒーター67が停止状態であるにも拘わらず液温判定を行うのは、第2攪拌部材61の第3羽根部材612と回収液体現像剤との摩擦熱によって、回収液体現像剤の液温が上昇するからである。
【0095】
回収液体現像剤の液温が60℃以上である場合(ステップS3でYES)、モーター駆動制御部71は、第3モーター63を、前記高速回転の状態から500RPM程度の低速回転(第2速度)の状態へ切り替える(ステップS4)。これは、上述の通り、本実施形態で用いられている液体現像剤は、液温が60℃を超えるとトナー及び結着樹脂の分散性が良好となるので、もはや高速回転の必要がないからである。その後、凝集物を再分散させるのに十分な一定時間(例えば5分間)だけ、第3モーター63の低速回転が継続される(ステップS5)。しかる後、モーター駆動制御部71は第3モーター63の回転を停止させ(ステップS6)、再分散処理を終える。なお、再分散タンク48に濃度センサが配置される変形実施形態では、前記一定時間の経過を待たず、前記濃度センサが凝集物の消失を検知した段階で、第3モーター63の回転を停止させても良い。
【0096】
これに対し、回収液体現像剤の液温が60℃以下である場合(ステップS3でNO)、ヒーター制御部75は、ヒーター67に通電させ、発熱動作を開始させる(ステップS7)。これにより、再分散タンク48内の回収液体現像剤は加熱され、再分散が促進される。なお、液温判定部74が特定した液温が低い程、ヒーター67への通電量を増加させる制御を行っても良い。これに合わせて、モーター駆動制御部71は第3モーター63を低速回転に切り替える。これは、ヒーター67による加熱のアシストがあるので、高速回転により回収液体現像剤に前記摩擦熱を発生させる必要がないからである。そして、第3モーター63の低速回転状態、及び、ヒーター67の発熱動作が一定時間継続される(ステップS9)。
【0097】
その後、液温判定部74により、回収液体現像剤の液温が60℃以上であるか否かが判定される(ステップS10)。回収液体現像剤の液温が60℃以上である場合(ステップS10でYES)、ヒーター制御部75は、ヒーター67に対して間欠的に通電を行う間欠モード動作を実行する(ステップS11)。これは、液温を60℃に保持するためであり、さらなる回収液体現像剤の加温が分散性の向上に実質的に寄与しないことに依る。
【0098】
その後、凝集物を再分散させるのに十分な一定時間だけ、第3モーター63の低速回転及びヒーター67の前記間欠モード動作が継続される(ステップS12)。しかる後、ヒーター制御部75はヒーター67への通電を完全に停止し(ステップS13)、また、モーター駆動制御部71は第3モーター63の回転を停止させ(ステップS14)、再分散処理を終える。なお、再分散タンク48に濃度センサが配置される変形実施形態では、前記一定時間の経過を待たず、前記濃度センサが凝集物の消失を検知した段階で、ヒーター67への通電への通電及び第3モーター63の回転を停止させても良い。
【0099】
一方、回収液体現像剤の液温が60℃以下である場合(ステップS10でNO)、制御部70は再分散システムにエラーが発生したと判定し、所定のエラー処理を行う(ステップS15)。これは、ヒーター67で回収液体現像剤を強制加熱しているにも拘わらず液温が上昇しないのは、何らかの処理エラー若しくは装置故障が発生している可能性が高いからである。
【0100】
以上の通りの再分散処理が行われることで、回収現像剤タンク41から再分散タンク48内に供給された回収液体現像剤にトナーの凝集物や、結着樹脂の析出物が生じていたとしても、これらは再分散タンク48内において回収液体現像剤中に再分散される。従って、画像形成部2において形成される画像の画質の低下や、濃度検出装置43におけるセンシング動作の阻害等の問題を解消できる。また、第2攪拌部材61とヒーター67とを効率良く使って再分散処理を行わせることができる。すなわち、前記閾値温度を超過するか否かに基づき第2攪拌部材61の回転速度、及びヒーター67の動作状態が切り替えられるので、無駄なく前記再分散処理を行わせることができる。
【0101】
続いて、上記第1実施形態に基づく、具体的な再分散処理の実験例を挙げる。供試液体現像剤として、シアン顔料、スチレン系エラストマーを用いた結着樹脂及びキャリア液を含む液体現像剤を次の条件で製造した。スチレン系エラストマーとして、スチレン−ブタジエン系エラストマー(旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)T−413」:スチレン含有量30質量%)1.33質量部を、溶剤としての植物油(花王社製の中鎖脂肪酸トリグリセライド「ココナードMT」)98.67質量部に溶解させることにより、結着樹脂溶液を得た。一方、キャリア液としての流動パラフィン(松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−200」)72質量部と、着色粒子としてのシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)20質量部と、分散安定剤としてのISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」8質量部とを、ロッキングミル(セイワ技研社製 RM−10)を用いて、駆動周波数60Hzにて1時間、混合・分散させることにより、顔料分散体を得た。顔料分散体中の顔料の平均粒子径(D50)は0.5μmであった。そして、樹脂溶液と顔料分散体とを3:1の混合比(質量比)で混合することにより、顔料を5質量%、スチレン系エラストマーを1質量%含有するシアン液体現像剤を得た。
【0102】
上記で得たシアン液体現像剤を、カラープリンター1の液体現像剤循環装置LCの調整タンク42内へ投入し、当該シアン液体現像剤を循環させて画像形成動作を行わせた。この画像形成動作を、回収現像剤タンク41に約100ccの回収液体現像剤が貯留されるまで継続した。その後、該回収液体現像剤を、第2攪拌部材61及びヒーター67の双方が停止状態である再分散タンク48へ供給した。
【0103】
図10は、この再分散タンク48中の回収液体現像剤、すなわち再分散処理を施していない常温の回収液体現像剤を顕微鏡撮影した画像である。当該画像に暗部として表れているように、回収液体現像剤中には凝集物Cが存在している。なお、点線のサークルC1で囲んでいる領域は、粒子の分散状態が良好な領域である。
【0104】
その後、第2攪拌部材61を回転させると共にヒーター67を動作させ、回収液体現像剤を攪拌しつつ徐々に加熱する再分散処理を施した。そして、適宜な液温において、回収液体現像剤の分散状態を観察した。その結果を表1に示す。表1において、液温は液温センサ66が感知した回収液体現像剤の温度、回転数は、第3モーター63の回転数である。分散状態が「×」とは、
図10に例示したような凝集物Cが回収液体現像剤中に観察された状態である。分散状態が「○」とは、凝集物Cが回収液体現像剤中に実質的に観察されず、粒子がサブミクロンレベルで分散されている状態である。
【0106】
図11は、液温が60℃、第2攪拌部材61の回転数が1,400RPMのときの回収液体現像剤を顕微鏡撮影した画像である。当該回収液体現像剤は、凝集物Cが存在しない、良好な分散状態であることが判る。
【0107】
図12は、第2攪拌部材61単体の再分散処理による回収液体現像剤の再分散状況を示す画像である。上記と同様にして、再分散処理を施していない常温の回収液体現像剤を再分散タンク48へ導入し、第3モーター63(第2攪拌部材61)の回転数を低速と高速との2段階で変化させて、分散状態を観察した。ヒーター67は動作させていない。
【0108】
図12(A)は、第2攪拌部材61の回転数を2,000RPMとして回収液体現像剤を3分間だけ攪拌したときの、当該回収液体現像剤の画像である。回収液体現像剤中には多くの凝集物が存在しており、分散状態が不良であることが判る。これに対し、
図12(B)は、第2攪拌部材61の回転数を12,000RPMとして回収液体現像剤を3分間だけ攪拌したときの、当該回収液体現像剤の画像である。回収液体現像剤中には実質的に凝集物は存在せず、分散状態が良好であることが判る。なお、このとき液温は、摩擦熱により57℃まで上昇していた。
【0109】
図13は、ヒーター67を中心とした再分散処理による回収液体現像剤の再分散状況を示す画像である。上記と同様にして、再分散処理を施していない常温の回収液体現像剤を再分散タンク48へ導入し、第2攪拌部材61を低速回転(500RPM)させながら、ヒーター67を動作させて液温を変化させて分散状態を観察した。
【0110】
図13(A)は、ヒーター67の動作により回収液体現像剤の液温が25℃とされたときの、当該回収液体現像剤の画像である。回収液体現像剤中には多くの凝集物が存在しており、分散状態が不良であることが判る。これに対し、
図13(B)は、回収液体現像剤の液温が60℃とされたときの、当該回収液体現像剤の画像である。回収液体現像剤中には実質的に凝集物は存在せず、分散状態が良好であることが判る。
【0111】
以上の実験結果から、回収液体現像剤の液温が60℃付近の状態で低速攪拌すれば、回収液体現像剤中におけるトナー及び結着樹脂の再分散状態が良好となることが判る。また、ヒーター67によるアシスト加熱がなくとも、高速攪拌による摩擦熱で液温を60℃付近に至らせることができれば、再分散状態が良好となる。
図9に示したフローチャートの再分散制御動作は、上記の実験結果に裏付けされたものである。
【0112】
<第2実施形態>
図14は、第2実施形態に係る液体現像剤循環装置LC(LC−2)の全体の概略を示すブロック図である。
図4に示した第1実施形態と同一部分については同一符号を付しており、ここでは説明を省略乃至は簡素化する。第1実施形態では、濃度調整部A1と別個に再分散部A2を設置する例を示したが、第2実施形態では再分散部の機能が一体化された濃度調整部A3を備える液体現像剤循環装置LC−2を例示する。
【0113】
液体現像剤循環装置LC−2は、回収現像剤タンク41、調整タンク42A(第1容器)と攪拌装置60A(濃度調整攪拌手段)とを含む濃度調整部A3(再分散手段)、濃度検出装置43、キャリアタンク44、トナータンク45、結着樹脂タンク46、現像剤リザーブタンク47、キャリア分離装置49及び複数のポンプP1、P2、P5〜P13を備えている。
【0114】
回収現像剤タンク41の下流には調整タンク42Aが配置されている。回収現像剤タンク41と調整タンク42Aとは、第13パイプG13(第1供給系統)で接続されている。第13パイプG13には第13ポンプP13が取り付けられ、この第13ポンプP13駆動によって、回収液体現像剤が調整タンク42Aへ供給される。
【0115】
濃度調整部A3の調整タンク42Aは、回収液体現像剤を含む液体現像剤を貯留するタンクであって、
図5Aに示した調整タンク42と同じ構造を備える。第2実施形態の調整タンク42Aでは、調整タンク42の第4受入孔424に相当する孔に、第13パイプG13の下流端が接続される。また、この調整タンク42Aに対して、
図6で示した態様と同じ態様で、液温センサ66及びヒーター67(加熱手段)が付設される。
【0116】
攪拌装置60Aは、調整タンク42Aに貯留された液体現像剤を攪拌する装置であって、第1タンクに貯留された液体現像剤を攪拌する攪拌部材61Aと、該攪拌部材61Aを回転駆動するメインモーター63A(駆動部)とを含む。攪拌部材61Aは、第1実施形態の第2攪拌部材61と同様な溶解型攪拌羽根を備えた部材である。メインモーター63Aは、第3モーター63と同様な、15,000RPM以上の高速回転が可能なモーターである。また、攪拌装置60Aは、先に説明した第1液面検知部材52と同様な液面検知部材(図略)を含み、これを回転駆動するサブモーター64A(第4モーター64に相当)が備えられている。
【0117】
この第2実施形態によれば、調整タンク42Aは、濃度調整用のタンクと再分散処理用のタンクとを兼用することになる。従って、再分散処理のために新たにタンクをカラープリンター1内に設置する必要がなく、カラープリンター1のコンパクト化に寄与することができる。また、回収液体現像剤の攪拌も、濃度調整用に準備されている攪拌部材61Aによって行われる。また、調整タンク42Aにヒーター67が付設されるので、調整タンク42A内の液体現像剤も加熱される。従って、前記加熱及び前記攪拌を、既存の装置を用いて効率良く行わせることができる。
【0118】
液体現像剤循環装置LC−2は、制御部80をさらに備える。制御部80は、第1、第2、第5〜第13ポンプP1、P2、P5〜P13の動作を制御することによって液体現像剤の循環動作を制御すると共に、濃度検出装置43による濃度検出結果に基づき、攪拌装置60Aの動作を制御しつつ、調整タンク42A内における液体現像剤の濃度調整動作を制御する。また、制御部80は、液温センサ66による液温の計測結果を参照しつつ、攪拌装置60A及びヒーター67の動作を制御することによって、調整タンク42A内における回収液体現像剤の再分散処理を制御する。
【0119】
図15は、第2実施形態に係る液体現像剤循環装置LC−2の制御部80の機能ブロック図である。制御部80は、プログラムの実行により、モーター駆動制御部81、電力算出部82、液面判定部83、液温判定部84、ヒーター制御部85及びポンプ制御部86を機能的に具備するように動作する。なお、これら機能部は、第1実施形態の制御部70における、モーター駆動制御部71、電力算出部72、液面判定部73、液温判定部74、ヒーター制御部75及びポンプ制御部76に準ずる機能を果たす。
【0120】
モーター駆動制御部81は、攪拌装置60Aのメインモーター63A及びサブモーター64Aの回転駆動を制御する。モーター駆動制御部81は、液体現像剤の濃度調整若しくは回収液体現像剤の再分散処理のために、メインモーター63Aにより攪拌部材61Aを回転させる。攪拌部材61Aの回転により、調整タンク42A内の液体現像剤及び回収液体現像剤は攪拌される。また、モーター駆動制御部81は、タンク内の液量検出のためにサブモーター64Aを回転させて、液面検知部材を動作させる。
【0121】
電力算出部82は、サブモーター64Aの消費電力又は負荷電流の変動を検出し、液面判定部73へ出力する。液面判定部83は、電力算出部82の出力データに基づいて、調整タンク42A内における液体現像剤の液面の高さが所定値を超過したか否かを判定する。液温判定部84は、調整タンク42Aに配置されている液温センサ66から測定データを取得し、該測定データに基づき調整タンク42A内の液体現像剤の液温を特定する。ヒーター制御部85は、ヒーター67に対する通電量を制御することによって、ヒーター67の発熱量を制御する。ポンプ制御部86は、ポンプP1、P2、P5〜P13に対して駆動又は停止の制御信号を与え、その動作を制御する。
【0122】
この第2実施形態では、濃度検出装置43は、液体現像剤の濃度調整時においてトナー濃度及び結着樹脂濃度を検出すると共に、再分散処理時において回収液体現像剤中の固形分含有度、つまり凝集物の存在の有無の検知のために用いられる。モーター駆動制御部81及びヒーター制御部85は、再分散処理時においては、濃度検出装置43の濃度検出値に基づいてメインモーター63A及びヒーター67の動作を制御する。
【0123】
図16は、第2実施形態の制御部80による再分散処理を示すフローチャートである。ここでは、回収現像剤タンク41から調整タンク42A内に所定量の、常温の回収液体現像剤が供給された状態を想定する。この場合、第13、第9ポンプP13、P9は停止状態とされ、一定量の回収液体現像剤が調整タンク42Aに閉じ込められた状態が形成される。なお、第5ポンプP5は動作状態とされ、濃度検出装置43により回収液体現像剤の濃度検出が可能な状態とされる。
【0124】
制御部80のモーター駆動制御部81は、メインモーター63A(駆動部)を10,000RPM程度の回転数で高速回転(所定の第1速度)させる(ステップS21)。これにより、攪拌部材61A(攪拌羽根)も高速回転し、調整タンク42A内の回収液体現像剤は高度に攪拌される。モーター駆動制御部81は、この攪拌部材61Aの高速回転を一定時間(例えば3分間)継続させる(ステップS22)。なお、この段階では、ヒーター67は停止状態である。
【0125】
その後、液温センサ66から測定データを取得している液温判定部84により、回収液体現像剤の液温が60℃以上であるか否かが判定される(ステップS23)。回収液体現像剤の液温が60℃以上である場合(ステップS23でYES)、モーター駆動制御部81は、メインモーター63Aを、前記高速回転の状態から500RPM程度の低速回転(第2速度)の状態へ切り替える(ステップS24)。
【0126】
その後、モーター駆動制御部81は、濃度検出装置43から所定期間(例えば5秒)内の濃度検出値を取得し、該濃度検出値が前記所定期間内において一定値を示しているかを判定する(ステップS25)。回収液体現像剤中に凝集物が浮遊していると、濃度検出値は安定しない。例えば光学的に濃度を検出する場合、凝集物が検知エリアに進入したときと、進入していないときでは、大きく光学特性が異なるからである。一方、液体現像剤中に凝集物が存在しないと、濃度検出値は安定する。濃度検出値が一定値を示している場合(ステップS25でYES)、モーター駆動制御部81はメインモーター63Aの回転を停止させ(ステップS26)、再分散処理を終える。
【0127】
濃度検出値が一定値を示していない場合(ステップS25でNO)、モーター駆動制御部81は、メインモーター63Aの前記低速回転を継続させると共に、凝集物を再分散させるのに十分な一定時間(例えば5分間)が経過したか否かを判定する(ステップS27)。前記一定時間が未経過のときは(ステップS27でNO)、ステップS25に戻る。一方、前記一定時間が経過したとき(ステップS27でYES)、再分散システムにエラーが発生したと判定し、所定のエラー処理を行う(ステップS28)。
【0128】
これに対し、回収液体現像剤の液温が60℃以下である場合(ステップS23でNO)、ヒーター制御部85は、ヒーター67に通電させ、発熱動作を開始させる(ステップS29)。これにより、調整タンク42A内の回収液体現像剤は加熱され、再分散が促進される。これに合わせて、モーター駆動制御部81はメインモーター63Aを低速回転に切り替える。そして、メインモーター63Aの低速回転状態、及び、ヒーター67の発熱動作が一定時間継続される(ステップS31)。
【0129】
その後、液温判定部84により、回収液体現像剤の液温が60℃以上であるか否かが判定される(ステップS32)。回収液体現像剤の液温が60℃以上である場合(ステップS32でYES)、ヒーター制御部85は、ヒーター67に対して間欠的に通電を行う間欠モード動作を実行する(ステップS33)。続いて、ヒーター制御部85は、濃度検出装置43から所定期間(例えば5秒)内の濃度検出値を取得し、該濃度検出値が前記所定期間内において一定値を示しているかを判定する(ステップS35)。濃度検出値が一定値を示している場合(ステップS35でYES)、ヒーター制御部85はヒーター67への通電を停止させ(ステップS36)、また、モーター駆動制御部81はメインモーター63Aの回転を停止させ(ステップS37)、再分散処理を終える。
【0130】
濃度検出値が一定値を示していない場合(ステップS35でNO)、モーター駆動制御部81はメインモーター63Aの前記低速回転を継続させると共に、ヒーター制御部85は間欠モード動作によるヒーター67への通電を継続する。そして、凝集物を再分散させるのに十分な一定時間(例えば5分間)が経過したか否かが判定される(ステップS38)。前記一定時間が未経過のときは(ステップS38でNO)、ステップS35に戻る。一方、前記一定時間が経過したとき(ステップS38でYES)、再分散システムにエラーが発生したと判定し、所定のエラー処理を行う(ステップS39)。
【0131】
以上の通りの再分散処理が行われることで、回収現像剤タンク41から調整タンク42A内に供給された回収液体現像剤にトナーの凝集物や、結着樹脂の析出物が生じていたとしても、これらは調整タンク42A内において回収液体現像剤中に再分散される。従って、画像形成部2において形成される画像の画質の低下を防止できる。
【0132】
続いて、上記第2実施形態に基づく、具体的な再分散処理の実験例を挙げる。第1実施形態で得た常温のシアン液体現像剤を、攪拌部材61A及びヒーター67の双方が停止状態である調整タンク42Aへ投入した。液体現像剤内のトナーや結着樹脂は、本来的に凝集する傾向を持つ。このため、本実験例では、あえて回収液体現像剤を調整タンク42Aへ供給しない状態において、液体現像剤の分散状態を観察するものとした。なお、回収液体現像剤を調整タンク42Aへ供給した場合は、先に
図10〜
図13に示した結果と実質的に同じである。
【0133】
図17は、調整タンク42A中の液体現像剤、すなわち再分散処理を施していない常温の液体現像剤を顕微鏡撮影した画像である。当該画像にまだら模様として表れているように、液体現像剤中には10μm〜数十μmの凝集物が存在していることが判る。その後、攪拌部材61Aを回転させると共にヒーター67を動作させ、液体現像剤を攪拌しつつ徐々に加熱する再分散処理を施した。
図18は、液温が60℃、攪拌部材61Aの回転数が1,400RPMのときの液体現像剤を顕微鏡撮影した画像である。当該液体現像剤は、凝集物が存在しない、良好な分散状態であることが判る。
【0134】
図19は、攪拌部材61A単体の再分散処理による液体現像剤の再分散状況を示す画像である。上記と同様にして、再分散処理を施していない常温の液体現像剤を調整タンク42Aへ導入し、メインモーター63A(攪拌部材61A)の回転数を低速と高速との2段階で変化させて、分散状態を観察した。ヒーター67は動作させていない。
【0135】
図19(A)は、攪拌部材61Aの回転数を2,000RPMとして回収液体現像剤を3分間だけ攪拌したときの、当該液体現像剤の画像である。当該画像には凝集物の存在を示す斑模様が確認され、分散状態が不良であることが判る。これに対し、
図19(B)は、攪拌部材61Aの回転数を10,000RPMとして液体現像剤を3分間だけ攪拌したときの、当該液体現像剤の画像である。液体現像剤中には実質的に凝集物は存在せず、分散状態が良好であることが判る。なお、このとき液温は、摩擦熱により57℃まで上昇していた。
【0136】
図20は、ヒーター67を中心とした再分散処理による液体現像剤の再分散状況を示す画像である。上記と同様にして、再分散処理を施していない常温の液体現像剤を調整タンク42Aへ導入し、攪拌部材61Aを低速回転(500RPM)させながら、ヒーター67を動作させて液温を変化させて分散状態を観察した。
【0137】
図20(A)は、ヒーター67の動作により液体現像剤の液温が25℃とされたときの、当該液体現像剤の画像である。当該画像には凝集物の存在を示す斑模様が確認され、分散状態が不良であることが判る。これに対し、
図20(B)は、液体現像剤の液温が60℃とされたときの、当該液体現像剤の画像である。回収液体現像剤中には実質的に凝集物は存在せず、分散状態が良好であることが判る。
【0138】
以上説明した通り、本実施形態に係る液体現像剤のリサイクル機構を備えるカラープリンター1(湿式画像形成装置)によれば、トナー(着色粒子)及び結着樹脂(溶解樹脂)の分散状態を良好に維持することができる。従って、高画質の画像形成を安定して行うことができるカラープリンター1を提供することができる。