(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周方向に複数の磁極を有するマグネットローラーと、当該マグネットローラーに外装されたローラー状の現像スリーブとを有し、感光体ドラムに磁性トナーを供給する現像ローラーを備え、
前記現像スリーブのうち、回転軸方向の中央部に位置し、前記感光体ドラムに磁性トナーを供給する画像領域の表面は、非磁性体の材料により被覆されており、前記回転軸方向の両端部に位置し、前記感光体ドラムに磁性トナーを供給しない非画像領域の表面は、磁性体の材料により被覆され、
前記画像領域の表面を被膜する前記非磁性体は、ニッケル−リンの合金からなり、
前記非画像領域の表面を被膜する前記磁性体は、ニッケル、又は、前記画像領域の表面を被膜するニッケル−リンの合金と比較してリンの含有率が少ないニッケル−リンの合金からなり、
前記非磁性体の材料により被膜された前記画像領域の表面、および、前記磁性体の材料により被膜された前記非画像領域の表面は、クロムメッキにより更に被膜され、
前記非画像領域の周面に対向させて配置されるシール部材を備える現像装置。
前記シール部材は、前記非画像領域の周面に対して非接触で配置され、前記マグネットローラーとの間に形成される磁気ブラシにより、前記現像スリーブの周面上の磁性トナーが前記回転軸方向の端部に移動することを抑制する請求項1に記載の現像装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態にかかる現像装置及びこれを備えた画像形成装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る現像装置を有する画像形成装置の構造を示す正面断面図である。
【0010】
本開示の一実施形態に係る画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機である。画像形成装置1は、装置本体11に、操作部47、画像形成部12、定着部13、給紙部14、原稿給送部6、及び原稿読取部5等を備えて構成されている。
【0011】
画像形成装置1が原稿読取動作を行う場合、原稿給送部6により給送されてくる原稿、又は原稿載置ガラス161に載置された原稿の画像を原稿読取部5が光学的に読み取り、画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは内蔵HDD又はネットワーク接続されたコンピューター等に保存される。
【0012】
画像形成装置1が画像形成動作を行う場合は、上記原稿読取動作により生成された画像データ又は内蔵HDDに記憶されている画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての記録紙Pにトナー像を形成する。画像形成部12の画像形成ユニット12M、12C、12Y、及び12Bkは、感光体ドラム121と、帯電装置123と、露光装置124と、現像装置122と、1次転写ローラー126とをそれぞれ備えている。
【0013】
画像形成ユニット12M、12C、12Y、及び12Bkの各現像装置122は、本開示に係る磁性トナーを収容している。現像装置122は、当該トナーを、上記帯電装置123による帯電及び上記露光装置124による露光が完了した感光体ドラム121表面に供給する。
【0014】
カラー印刷を行う場合、画像形成部12のマゼンタ用の画像形成ユニット12M、シアン用の画像形成ユニット12C、イエロー用の画像形成ユニット12Y及びブラック用の画像形成ユニット12Bkは、それぞれに、画像データを構成するそれぞれの色成分からなる画像に基づいて、帯電、露光及び現像の工程により感光体ドラム121上にトナー像を形成し、トナー像を1次転写ローラー126により、駆動ローラー125a及び従動ローラー125bに張架されている中間転写ベルト125上に転写させる。
【0015】
中間転写ベルト125は、その外周面にトナー像が転写される像担持面が設定され、感光体ドラム121の周面に当接した状態で駆動ローラー125aによって駆動される。中間転写ベルト125は、各感光体ドラム121と同期しながら、駆動ローラー125aと従動ローラー125bとの間を無端走行する。
【0016】
中間転写ベルト125上に転写される各色のトナー画像は、転写タイミングを調整して中間転写ベルト125上で重ね合わされ、カラーのトナー像となる。2次転写ローラー2
10は、中間転写ベルト125の表面に形成されたカラーのトナー像を、中間転写ベルト125を挟んで駆動ローラー125aとのニップ部Nにおいて、給紙部14から搬送路190を搬送されてきた記録紙Pに転写させる。この後、定着部13が、記録紙P上のトナー像を熱圧着により記録紙Pに定着させる。定着処理の完了したカラー画像形成済みの記録紙Pは、排出トレイ151に排出される。
【0017】
次に、現像装置122の構成を説明する。
図2は、現像装置122の一部を切り欠いて示す斜視図である。
図3は、
図2におけるA−A線断面図である。
図2及び
図3において、X−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0018】
図2及び
図3に示すように、現像装置122は、筐体58内に、第1スパイラルフィーダー51と、第2スパイラルフィーダー52と、現像ローラー53とを備える。
【0019】
第1スパイラルフィーダー51は、トナーコンテナー59から補給された磁性トナーを攪拌しながら後方に向かって搬送する。第2スパイラルフィーダー52は、この第1スパイラルフィーダー51から受け渡された磁性トナーを前方に向かって搬送する。現像ローラー53は、第2スパイラルフィーダー52によって搬送される磁性トナーを受け取って感光体ドラム121の周面の潜像領域1211(後述する
図4参照)に供給する。
【0020】
現像ローラー53は、マグネットローラー531と現像スリーブ532とを備える。現像スリーブ532は、マグネットローラー531に外装されている。現像スリーブ532は、感光体ドラム121の表面及び第2スパイラルフィーダー52に隣接する位置で筐体58に回転可能に軸支されている。
【0021】
マグネットローラー(磁性体)531は、現像スリーブ532内に固設される永久磁石である。マグネットローラー531は、S極とN極が周方向に交互に配列された複数の磁極を有し、現像スリーブ532に向けて磁界を発生する。現像スリーブ532には、磁性トナーを感光体ドラム121に供給するために、直流に交流を重畳した現像バイアスが印加される。
【0022】
例えば、マグネットローラー531の規制ブレード81に対向する位置には、磁極S1が配置されている。また、潜像領域1211に対向する位置には磁極N2が配置され、更に、現像後の残存トナーが搬送されるトナー循環領域には磁極S2が配置され、更に、第2スパイラルフィーダー52に対向する位置には磁極N1が配置されている。
【0023】
現像スリーブ532の周面には、マグネットローラー531の磁力により、筐体58のトナー供給口581を通じてトナーコンテナー59から供給されて第1スパイラルフィーダー51及び第2スパイラルフィーダー52から移動されてきた磁性トナーが担持される。
【0024】
規制ブレード81は、現像スリーブ532の周面に担持される磁性トナーを予め定められた層厚に規制するものであり、現像スリーブ532の上方で現像スリーブ532表面との間に予め定められた間隔を隔てて、筐体58に支持されている。
【0025】
現像スリーブ532に現像バイアスが印加されることにより、現像スリーブ532と感光体ドラム121との間に電位差が発生し、現像スリーブ532上の磁性トナーは感光体ドラム121に移動し、感光体ドラム121上の静電潜像はトナー像に現像される。
【0026】
現像スリーブ532の周面に対向する位置には、上記規制ブレード81を含むトナー量
調整機構80が配設されている。このトナー量調整機構80について、
図4を用いて説明する。
【0027】
図4に示すように、トナー量調整機構80は、規制ブレード81と、シール部材82と、ブレードマグネット83とを備えている。
【0028】
シール部材82は、磁性部材からなり、現像スリーブ532においてその回転軸方向の両方の端部に、当該現像スリーブ532の周面に対向させてそれぞれ配置されている。シール部材82は、当該現像スリーブ532周面上の磁性トナーが上記回転軸方向の端部側に移動することを抑制する。
【0029】
ブレードマグネット83は、磁性部材からなり、規制ブレード81に対してその長手方向にシール部材82の配設位置までに亘って取り付けられている。ブレードマグネット83は、規制ブレード81の側面部であって、現像スリーブ532の周面が回転する方向において上流側となる側面に取り付けられている。ブレードマグネット83は、現像スリーブ532側の側縁部は、現像スリーブ532内のマグネットローラー531の磁極S1と同じS極とされ、その反対側の縁部はN極とされている。
【0030】
規制ブレード81は、現像スリーブ532周面の回転によって感光体ドラム121の周面の潜像領域1211(
図4に示す2点鎖線間の静電潜像が形成される領域)に供給する磁性トナーの量を規制して過供給を防止する。現像スリーブ532は、現像スリーブ532周面に対向する位置において、現像スリーブ532をその回転軸方向に横断するように設けられている。規制ブレード81の先端縁部は、エッジ状をなして現像スリーブ532周面に対向している。当該先端縁部は、現像スリーブ532周面から予め定められた間隔をあけて設けられている。
【0031】
シール部材82は、現像スリーブ532周面の磁性トナーが規制ブレード81の配設位置に到達するまでの間に、現像スリーブ532の回転軸方向の中央部周面から端部に向けて磁性トナーが移動するのを防止する。シール部材82は、正面視(
図4におけるB方向からの視認)で曲率中心角が略180°に設定された円弧状に形成されている。シール部材82は、その下端部が筐体58の一部に支持されることで、現像スリーブ532周面に対して一定の間隔を隔てて配設されている。当該間隔は、例えば0.1mm〜1.0mmとされる。
【0032】
このシール部材82によれば、当該シール部材82と現像スリーブ532に内装されたマグネットローラー531との間に磁力線による磁気ブラシが形成される。この磁気ブラシが、現像スリーブ532の回転軸方向における端部側への磁性トナーの移動を規制するため、磁性トナーが現像スリーブ532の周面からその端部に向かう移動が防止される。
【0033】
次に、現像ローラー53の詳細な構成を説明する。
図5は、現像ローラー53及びシール部材82部分を示す斜視図である。
図6は、
図5の矢印C方向から視認した現像ローラー53及びシール部材82部分を示す側面図である。
【0034】
図6に示すように、現像ローラー53の現像スリーブ532には、回転軸方向の中央部に位置する画像領域5321と、回転軸方向の両端部に位置する非画像領域5322とが存在する。画像領域5321は、感光体ドラム121の周面の潜像領域1211(
図4参照)に対向し、感光体ドラム121に磁性トナーを供給する。非画像領域5322は、感光体ドラム121の周面の非潜像領域1212(
図4に示す2点鎖線の外側の静電潜像が形成されない領域)に対向し、感光体ドラム121に磁性トナーを供給しない。
【0035】
ここで、現像ローラー53の現像スリーブ532は、アルミニウム等の非磁性材料からなる円筒状の基材と、当該基材の周面を被膜する被膜層とを含んで構成される。当該現像スリーブ532は、その周面の位置により、基材の周面を被膜する被膜層の材料が異なっている。
【0036】
具体的には、現像スリーブ532の画像領域5321の表面は、非磁性体の材料により被膜されており、非画像領域5322の表面は、磁性体の材料により被膜されている。非画像領域5322の表面を被膜する磁性体の材料としては、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、リンの含有率が低いニッケル−リンの合金等を用いることができる。ここで、リンの含有率が低いニッケル−リンの合金とは、後述する画像領域5321に用いるニッケル−リンの合金と比較して、リンの含有率が低いものをいい、より具体的には、リンの含有率が8wt%より小さいものをいう。一方、画像領域5321の表面を被膜する非磁性体の材料としては、例えば、アルミニウム、リンの含有率が中程度のニッケル−リンの合金等を用いることができる。ここで、リンの含有率が中程度のニッケル−リンの合金とは、前述した非画像領域5322に用いるニッケル−リンの合金と比較して、リンの含有率が高いものをいい、より具体的には、リンの含有率が8wt%以上のものをいう。
【0037】
上記のように、ニッケル−リンの合金は、リンの含有率により、磁性を有するか否かが決まる。このため、リンの含有率を調整することで、非画像領域5322及び画像領域5321の表面を被膜することができる。少ない工程で現像スリーブ532を製造することができるため、現像スリーブ532の製造コストを低減することができる。
【0038】
以上のように、現像スリーブ532の回転軸方向の両端部に位置する非画像領域5322の表面を磁性体の材料で被膜することで、現像スリーブ532の両端部の磁性トナーを安定して保持することができる。このため、現像スリーブ532の両端部におけるトナー層の乱れに起因する磁性トナーの飛散や、端部かぶりを抑制することができる。
【0039】
また、非画像領域5322のみを磁性体の材料で被膜し、それ以外の画像領域5321については、非磁性体の材料で被膜しているため、現像スリーブ532上の磁性トナーが、感光体ドラム121上に移動することを妨げない。加えて、アルミニウム等の非磁性材料からなる現像スリーブ532の基材を、非磁性体の材料で被膜しているため、現像スリーブ532の機械的強度を高めることができる。
【0040】
上記の構成に加えて、本実施の形態にかかる現像装置122では、現像スリーブ532の両端部における磁性トナー漏れを防ぐため、現像スリーブ532の両端部に対向する位置にシール部材82が設けられている。具体的には、上記の
図5及び
図6に示したように、現像スリーブ532の非画像領域5322の周面に対向させてシール部材82が配置されている。シール部材82とマグネットローラー531との間に磁気ブラシが形成され、この磁気ブラシにより現像スリーブ532の端部側への磁性トナーの移動が規制される。
【0041】
ここで、現像スリーブ532の非画像領域5322の表面が非磁性体で構成される場合、非画像領域5322における磁性トナーに対する磁気拘束力が弱いため、非画像領域5322における磁性トナーがチャージアップしやすい。その結果、非画像領域5322のトナー層が太り、磁性トナーの飛散や、端部かぶりが発生するおそれがある。
【0042】
これに対して、本実施の形態では、非画像領域5322の表面を磁性体で構成している。これにより、非画像領域5322における磁性トナーに対する磁気拘束力が強く、磁性トナーを安定して保持することができ、非画像領域5322における磁性トナーがチャージアップし難い。このため、非画像領域5322のトナー層が太り難く、磁性トナーの飛散や、端部かぶりを抑制することができる。
【0043】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。
図1乃至
図6を用いて上記各実施形態に示した構成は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の構成はこれに限定されるものではない。
【0044】
例えば、上記の実施の形態では、現像スリーブ532の画像領域5321の表面を、非磁性体の材料で被膜する場合を説明したが、本発明は必ずしもこの場合に限定されない。現像スリーブ532の基材が、非磁性体の材料で構成されていれば、その表面を非磁性体の材料で被膜しなくてもよい。ただ、上記の実施の形態でも述べたように、現像スリーブ532の機械的強度を高める観点からは、画像領域5321の表面を非磁性体の材料で被膜することが好ましい。
【0045】
また、現像スリーブ532の機械的強度をさらに高めるため、上記の実施の形態で述べた被膜に加えて、現像スリーブ532の表面全体を、クロムメッキを用いてさらに被膜してもよい。