特許第5948316号(P5948316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5948316-たばこ原料の膨化方法およびその装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948316
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】たばこ原料の膨化方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   A24B 3/04 20060101AFI20160623BHJP
   A24B 3/18 20060101ALI20160623BHJP
   A24B 5/16 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   A24B3/04
   A24B3/18
   A24B5/16
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-507010(P2013-507010)
(86)(22)【出願日】2011年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2011058342
(87)【国際公開番号】WO2012132008
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年4月26日
【審判番号】不服2014-26647(P2014-26647/J1)
【審判請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】田口 聡
(72)【発明者】
【氏名】植松 宏海
(72)【発明者】
【氏名】西村 学
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幸司
(72)【発明者】
【氏名】土澤 和之
【合議体】
【審判長】 千壽 哲郎
【審判官】 佐々木 正章
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−70058(JP,A)
【文献】 特開2006−520599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 3/04 3/18 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ原料を100〜160℃の水蒸気と共にサイクロンに導入し、サイクロンにおいて旋回して接触させ、たばこ原料を湿潤、膨潤させる工程と、
前記湿潤、膨潤後の前記たばこ原料を乾燥する工程と
を含むたばこ原料の膨化方法。
【請求項2】
前記水蒸気流との接触前のたばこ原料は、15〜50重量%に調湿される請求項1記載のたばこ原料の膨化方法。
【請求項3】
湿潤、膨潤した前記たばこ原料は、前記水蒸気流との接触前のたばこ原料と同じ水分量またはそれより5重量%以内に増加した水分量を有する請求項1記載のたばこ原料の膨化方法。
【請求項4】
前記旋回による滞留時間は、0.5〜5秒間である請求項1記載のたばこ原料の膨化方法。
【請求項5】
前記たばこ原料の乾燥は、過熱水蒸気流又は加熱空気に接触させることにより行う請求項1記載のたばこ原料の膨化方法。
【請求項6】
前記過熱水蒸気流は、前記水蒸気流より高い温度を有する請求項記載のたばこ原料の膨化方法。
【請求項7】
前記たばこ原料が中骨刻である請求項1ないし6のいずれか1項記載のたばこ原料の膨化方法。
【請求項8】
流入口、排気口および排出口を有するサイクロンと、
前記サイクロンの流入口に接続された供給ダクトと、
前記サイクロンの排気口に接続される排気ダクトと、
前記供給ダクトに接続される水蒸気供給部と、
前記水蒸気供給部の接続部と前記サイクロンの流入口との間に位置する前記供給ダクトに接続されるたばこ原料供給部と、
前記サイクロンの排出口から排出されたたばこ原料が搬送され、前記たばこ原料を乾燥するための乾燥機と
を備えており、
前記サイクロンの流入口から前記水蒸気供給部からの水蒸気とともに前記サイクロン内に流入した前記たばこ原料供給部からのたばこ原料は前記サイクロン内で旋回されて湿潤、膨潤され、湿潤、膨潤されたたばこ原料は前記サイクロンの排出口から排出されて前記乾燥機に搬送され、また前記サイクロンにおいてたばこ原料と共に旋回された前記水蒸気流は前記サイクロンの排気口に接続された前記排気ダクトから排出される、たばこ原料の膨化装置。
【請求項9】
前記排気ダクトは、分岐され、その分岐ダクトは前記乾燥機に接続される請求項8記載のたばこ原料の膨化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこ原料の膨化方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ原料(例えば中骨)は、たばこ葉から分離されたもので、たばこ葉の20〜30重量%を占める。中骨の刻(中骨刻)は、たばこ原料の有効利用を目的として中骨を取り除いたたばこ葉の除骨刻と共にたばこ刻に利用されている。中骨刻は、一般に中骨を圧展、裁刻して得られる。この中骨刻は、膨嵩性および燃焼性を高め、かつ喫味の緩和化のために調湿、乾燥による膨化処理が施される。従来の中骨刻の膨化処理およびそれに関連する技術を以下に説明する。
【0003】
特許第4031115号には、たばこ原料にコンディショニング剤を適用するための方法および装置が開示されている。この装置は、回転する唐箕式ロール(以下、ウイノアと称す)を持つ羽根車のような突出部、例えば帯行ピン、にノズル孔を取り付けた構造を有する。この方法は、前記装置を用い、自由落下するたばこ原料に前記ノズルから蒸気を噴霧する、コンディショニング剤の噴射を乾燥前に行い、その後、乾燥処理区間に搬送する。
【0004】
米国特許第4766912号明細書には、たばこ原料を膨張させるための方法と装置が開示されている。この装置は、たばこ原料を搬送する振動コンベアを有し、搬送される原料に振動コンベアの下面の孔を通して蒸気を噴霧し、かつ振動させながらたばこ原料を送る蒸気噴霧装置と流動層乾燥機とを備え、たばこ原料の膨嵩性を向上させることが記載されている。米国特許第2802334号明細書には、前記米国特許に関連し、入口および出口を有する振動コンベアとして形成された閉鎖移送管路と、この移送管路の底部に蒸気または加熱気体を供給するための供給装置と、噴霧孔を備える装置が開示されている。
【0005】
特開昭62−3778号公報には、2段階の気流乾燥処理を連続的に行うたばこの乾燥処理方法およびその装置が開示されている。すなわち、たばこ原料を高温気体媒体中に供給し、第1ダクトを通して第1分離装置に移行し、前記原料と気体媒体を分離する。高温気体媒体を第2ダクトに供給し、一方、分離されたたばこ原料を第1分離装置の下流に供給する。たばこ原料および高温気体媒体を第2ダクトを通して第2分離装置に移送し、分離する。このように2つの乾燥区間を通過せせることによって、1)たばこ原料を高温気体媒体に連続露出させる時間を短縮できる、2)過熱が過度に集中して生じるのを解消できる、3)たばこ原料が2段階で加速され、相対速度差による乾燥効率を向上できる。また、たばこ原料および高温気体媒体が接触する時間を短縮するための分離装置を用いることも記載されている。
【0006】
しかしながら、前述した従来技術は次のような問題がある。
【0007】
特許第4031115号は、自由落下速度、装置の有効高さおよびウイノアの回転数(200rpm)という記載から、当該装置でのたばこ原料および蒸気の通過時間が短い。従って、たばこ原料は蒸気との接触時間が短いために、十分な湿潤および膨潤がなされない。また、ウイノアは回転部分を有するために部品の劣化が速い。さらに、たばこ原料は回転部分に絡み合い易くなる。絡み合ったたばこ原料は、喫味および物性に多大な影響を及ぼす。
【0008】
米国特許第4766912号明細書は、蒸気噴霧装置が振動によって原料の搬送を行い、振動コンベア底面の孔から蒸気を噴霧する構造を有する。このため、振動による駆動部品の劣化が速いために耐久性に劣る。また、振動コンベア底面からの蒸気噴霧は例えば直径0.8mmの細孔を利用する。このため、蒸気に含まれるスケール(炭酸カルシウム等の無機物)およびたばこ原料の細粉が前記細孔に詰まる。細孔詰まりは、蒸気量の変動を起こし、処理後のたばこ原料の品質を不安定にする。
【0009】
特開昭62−3778号公報は、直列に繋いだ2台の分離装置を使用して2段階の気流乾燥処理を行うために、各段階でたばこ原料の乾燥が進行する。しかしながら、装置の特性上、たばこ原料と高温湿り空気または過熱水蒸気流との接触時間が極めて短くなる。その結果、たばこ原料を十分に湿潤または膨潤させることが困難になる。また、分離装置のメッシュスクリーンにたばこ原料が堆積して排気系統が閉塞する。このため、分離装置の連続運転に支障をきたす。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、たばこ原料の膨嵩性を従来法に比べて増大させることが可能なたばこ原料の膨化方法を提供する。
【0011】
本発明は、たばこ原料の膨嵩性を従来法に比べて増大させることが可能で、連続処理および高い耐久性を実現した簡単な構造を有するたばこ原料の膨化装置を提供する。
【0012】
本発明の第1側面によると、たばこ原料を100〜160℃の水蒸気と共にサイクロンに導入し、サイクロンにおいて旋回して接触させ、たばこ原料を湿潤、膨潤させる工程と、前記湿潤、膨潤後の前記たばこ原料を乾燥する工程とを含むたばこ原料の膨化方法が提供される。
【0013】
本発明の第2側面によると、流入口、排気口および排出口を有するサイクロンと、前記サイクロンの流入口に接続された供給ダクトと、前記サイクロンの排気口に接続される排気ダクトと、前記供給ダクトに接続される水蒸気供給部と、前記水蒸気供給部の接続部と前記サイクロンの流入口の間に位置する前記供給ダクトに接続されるたばこ原料供給部と、前記サイクロンの排出口から排出されたたばこ原料が搬送され、前記たばこ原料を乾燥するための乾燥機とを備えており、前記サイクロンの流入口から前記水蒸気供給部からの水蒸気とともに前記サイクロン内に流入した前記たばこ原料供給部からのたばこ原料は前記サイクロン内で旋回されて湿潤、膨潤され、湿潤、膨潤されたたばこ原料は前記サイクロンの排出口から排出されて前記乾燥機に搬送され、また前記サイクロンにおいてたばこ原料と共に旋回された前記水蒸気流は前記サイクロンの排気口に接続された前記排気ダクトから排出される、たばこ原料の膨化装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係るたばこ原料の膨化装置を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るたばこ原料の膨化方法を説明する。
【0016】
(第1工程)
たばこ原料を100〜160℃の水蒸気流と共に旋回して接触させてたばこ原料を湿潤、膨潤させる。
【0017】
たばこ原料は、例えば中骨刻を用いることができる。中骨刻は、たばこ葉から棒状中骨を分離し、この棒状中骨原料を常法に従って圧展、裁刻することにより得られる。具体的には、棒状中骨原料を例えば15〜50重量%の水分量、好ましくは20〜40重量%の水分量、に調湿する。調湿棒状中骨原料を例えばロール間隔0.5〜1.2mmのロール圧延機で圧展した後、幅0.1〜0.3mmに裁刻して中骨刻を作製する。
【0018】
水蒸気は、100〜160℃の温度を有することによって、たばこ原料を乾燥することなく、湿潤、膨潤させることができる。より好ましい水蒸気の温度は、110〜150℃である。
【0019】
たばこ原料を水蒸気流と共に旋回させるには、たばこ原料を前記水蒸気流と共に例えばサイクロンに導入して行うことができる。旋回による滞留時間は、0.5〜5秒間であることが好ましい。
【0020】
たばこ原料を前記温度および滞留時間で水蒸気流と接触させることにより、たばこ原料への水蒸気の凝縮熱伝達が生じる。凝縮熱伝達によって、たばこ原料の水分および温度(品温)が上昇し、たばこ組織が柔軟になって湿潤・膨潤が引き起こされる。たばこ原料を前記温度および滞留時間で水蒸気流と接触させると、湿潤・膨潤後のたばこ原料は乾燥することなく、たばこ原料の水分量が水蒸気流と接触する前と同等、もしくは5重量%以内に増加する。
【0021】
(第2工程)
湿潤、膨潤させたたばこ原料を乾燥し、これによって膨化する。
【0022】
乾燥は、たばこ原料を過熱水蒸気流または加熱空気流に接触させることによって行うことができる。
【0023】
過熱水蒸気流は、前記第1工程の水蒸気の温度より高い温度を有することが好ましい。このように過熱水蒸気流が前記第1工程の水蒸気の温度より高い温度を有することによって、湿潤、膨潤させたたばこ原料を効率よく乾燥することが可能になる。過熱水蒸気流は、前記第1工程の水蒸気の温度より高い温度で、160〜300℃の温度範囲を有することが好ましい。例えば、過熱水蒸気の温度を160℃とした場合には前記第1工程の水蒸気温度は160℃未満の温度とし、過熱水蒸気の温度がその水蒸気温度より高くなるように設定する。より好ましい過熱水蒸気の温度は、180〜280℃である。
【0024】
湿潤、膨潤させたたばこ原料を前記過熱水蒸気流と接触させるには、既存の種々の方法を採用することができる。特に、たばこ原料を前記過熱水蒸気流と共に旋回することが好ましい。旋回は、例えばサイクロンを用いて行うことができる。旋回による滞留時間は、2〜15秒間であることが好ましい。
【0025】
前記乾燥工程により、たばこ原料の水分量を例えば3〜15重量%まで減少させることができる。
【0026】
以上説明した実施形態に係るたばこ原料の膨化方法によれば、最初に、たばこ原料を100〜160℃の水蒸気流と共に旋回して接触させることによって、たばこ原料(例えば中骨刻)を損傷せずに、それらをばらばらに分散した状態で水蒸気と接触できる。その結果、たばこ原料を効率よく湿潤、膨潤させることができる。その後、湿潤、膨潤させたたばこ原料を乾燥する。これによって、従来のように調湿したたばこ原料を直接乾燥したものに比べて高い膨嵩性を有する膨化たばこ原料(例えば膨化中骨刻)を得ることができる。湿潤、膨潤させたたばこ原料の乾燥は、加熱空気、好ましくは過熱水蒸気流(特に前記工程の水蒸気より高い温度で、好ましくは160〜300℃の温度範囲の過熱水蒸気流)接触させて行うことによって、たばこ原料の膨嵩性をより一層増大できる。乾燥後のたばこ原料の水分量を12重量%よりさらに低くすることによって、膨嵩性が格段に増加した膨化たばこ原料を得ることができる。
【0027】
また、湿潤、膨潤工程でたばこ原料を水蒸気流と共に旋回して接触させる際、水蒸気量および排気量を調節することによって、湿潤・膨潤に要する時間を任意に制御することができる。その結果、乾燥処理により中骨刻の膨嵩性を自由に制御することが可能になる。
【0028】
次に、実施形態に係るたばこ原料の膨化装置を図1を参照して説明する。
【0029】
サイクロン1は側壁に流入口2、上部に排気口3および底部に排出口4をそれぞれ有する。供給ダクト5の一端はサイクロン1の流入口2に接続されている。排気ダクト6の一端はサイクロン1の排気口3に接続されている。乾燥機7は、サイクロン1に隣接して配置されている。
【0030】
水蒸気供給管8は、供給ダクト5の他端に接続されている。水蒸気供給管8は、水蒸気の供給量を調節するための開閉弁9が設けられている。ヒータ10は、水蒸気供給管8の接続部とサイクロン1の流入口2の間に位置する供給ダクト5部分に配置されている。
【0031】
たばこ原料供給部11は、ヒータ10とサイクロン1の流入口2の間に位置する供給ダクト5部分にエアロッカ12と通して接続されている。
【0032】
サイクロン1の排出口4は、排出ダクト13に接続され、この排出ダクト13には第2エアロッカ14が介装されている。搬送部材、例えば振動コンベア15は、一端がサイクロン1の排出ダクト13側に位置し、他端が乾燥機7側に位置する。振動コンベア15は、サイクロン1から排出されたたばこ原料を乾燥機7に搬送する。搬送部材は振動コンベアの代わりにベルトコンベアを用いることができる。乾燥機が過熱水蒸気を流通させるダクトを有する気流乾燥機である場合、サイクロン1の排出ダクト13を前記乾燥機のダクトに直接接続してもよい。
【0033】
ドレンセパレータ16および排気ファン17は、排気ダクト6にサイクロン1の排気口3からこの順序で配置されている。排気ダクト6の他端は、開放されてそれに流通する水蒸気を外部に排出するか、または分岐ダクト18を通して乾燥機7に接続され、乾燥機7の乾燥源として再利用される。
【0034】
ダイヤフラム弁19は、分岐ダクト18に配置されている。圧力計20は、ダイヤフラム弁19から乾燥機7側に位置する分岐ダクト18に接続されている。ダイヤフラム弁19はその開度が圧力計20からの圧力検出データ(圧力検出信号)に基づいて制御される。
【0035】
次に、前述した図1に示すたばこ原料の膨化装置によるたばこ原料の膨化方法を説明する。
【0036】
まず、たばこ原料(例えば中骨刻)を準備する。中骨刻は、棒状中骨原料を水分量20〜40重量%(湿物基準)に調湿した後、ロール間隔0.5〜1.2mmのロール圧延機で圧展し、さらに幅0.1〜0.3mmで裁刻することにより得られる。
【0037】
水蒸気供給管8からゲージ圧で1〜7バールの乾き飽和水蒸気を供給ダクト5に噴射する。なお、水蒸気流は必要に応じて供給ダクト5のヒータ10で加熱される。この後、前記中骨刻をたばこ原料供給部11から第1エアロッカ12を通して供給ダクト5に連続的に供給する。排気ファン17を予め駆動することにより、中骨刻は温度100〜160℃の水蒸気流と共に供給ダクト5からサイクロン1内に流入し、水蒸気流と共に旋回する。このとき、中骨刻は水分量が供給前のそれと同等か、もしくは5重量%増加し、十分な湿潤、膨潤がなされる。供給ダクト5での流通とサイクロン1での旋回の時間は、例えば0.5〜5秒間にすることが好ましい。
【0038】
旋回後の中骨刻は、水蒸気流と分離される。分離された中骨刻は、サイクロン1の排出口4に接続した排出ダクト13から第2エアロッカ14を通して振動コンベア15に排出される。一方、水蒸気流は排気ファン17の駆動によりサイクロン1の排気口3から排気ダクト6に排出され、ここから外部に放出される。この水蒸気流が排気ダクト6を流通する間に、水蒸気流中で凝縮した水はドレンセパレータ16から排出される。
【0039】
湿潤された中骨刻は、振動コンベア15で乾燥機(例えば気流乾燥機)7に搬送される。この気流乾燥機7において、湿潤中骨刻を乾燥して、膨化する。気流乾燥機7での乾燥は、過熱水蒸気流または加熱空気流を用いることができる。過熱水蒸気流は、前記サイクロン1に供給した水蒸気に比べて高い温度で、160〜280℃の温度範囲を有することが好ましい。
【0040】
なお、前記サイクロン1から排気される水蒸気を気流乾燥機7の過熱水蒸気の一部に利用する場合には分岐ダクト18に配置したダイヤフラム弁19の開度を圧力計20からの圧力検出データ(圧力検出信号)に基づいて制御し、分岐ダクト18を流通する所望量の水蒸気流を気流乾燥機7に導入する。
【0041】
得られた膨化中骨刻は、水分量が3〜15重量%である。また、膨化中骨刻は膨嵩性が580〜750cc/100gであり、裁刻直後の未乾燥中骨刻の膨嵩性(450cc/100g)に比べて約30〜約70%の充填能力を高めることが可能になる。
【0042】
なお、第2サイクロン21および第2循環ダクト25の系による中骨刻の乾燥工程において、水分量が例えば10重量%以下になった場合には公知の方法、例えば水の噴霧により中骨刻を再調湿することを許容する。
【0043】
以上説明したように実施形態に係るたばこ原料の膨化装置によれば、たばこ原料(例えば中骨刻)の湿潤をサイクロン1およびサイクロン1に接続される供給ダクト5を用いることによって、中骨刻を損傷することなく、中骨刻がばらばらに分散した状態で水蒸気流と効率よく接触させることができる。また、サイクロン1での中骨刻と水蒸気流による旋回流の発生は、装置規模を小さくしても水蒸気流中で中骨刻の滞留時間を長くすることが可能になる。その結果、中骨刻を効率よく湿潤、膨潤でき、その後の気流乾燥機7による乾燥によって、膨嵩性を増大した膨化中骨刻を得ることができる。
【0044】
また、膨化装置に組み込まれるサイクロン1および供給ダクト5は、極めて簡素化した構造で、従来装置のような回転部品、メッシュスクリーンを必要としないため、耐久性に優れ、中骨刻を連続して湿潤、乾燥の処理を行うことが可能になる。
【0045】
さらに、サイクロン1の排気口3に接続した排気ダクト6から分岐ダクト18を分岐し、この分岐ダクト18を気流乾燥機7(例えば過熱水蒸気流を用いる気流乾燥機)に接続すれば、サイクロン1から排気ダクト6を通して分岐ダクト18に流通する水蒸気を乾燥機7の過熱水蒸気の一部として有効に利用でき、省エネルギー運転を実現できる。
【0046】
以下、本発明の実施例を前述した図1に示すたばこ原料の膨化装置を参照して詳細に説明する。
【0047】
(例1;比較例)
この例1では、乾燥工程を図1の気流乾燥機7を用いて行った。
【0048】
まず、黄色種100重量%の棒状中骨原料を当業者が既知の方法、例えば水または水蒸気の噴霧、により水分量を37重量%に調湿した。この棒状中骨を0.8mmの間隙を持つ一対のローラで圧展した後、0.2mmの幅に裁刻してたばこ原料である中骨刻を準備した。
【0049】
中骨刻を気流乾燥機7に湿物重量基準で25kg/時間の流量で連続的に導入した。気流乾燥機は、直径が約100mm、長さが約22mのダクトと、直径が約460mm、分離部有効高さが約1.4mのサイクロンとで構成されている。前記中骨刻の投入口におけるダクトを流通する乾燥媒体は、蒸気割合が90体積%(過熱水蒸気流としてほぼ見做せる)、流速が25m/秒になるようにゲージ圧2バール(0.2MPa)の飽和水蒸気を40kg/時間供給しながら調節されている。すなわち、中骨刻は280℃の過熱水蒸気流と共に前記ダクトを流通し、サイクロンで過熱水蒸気流と共に旋回して乾燥し、膨化した。旋回の滞留時間は5秒であった。
【0050】
(例2,3;比較例)
気流乾燥機7のダクトにおいて、中骨刻と共に流通する過熱水蒸気流の温度をそれぞれ260℃、210℃にした以外、例1と同様な方法で中骨刻を乾燥し、膨化した。
【0051】
(例4:実施例)
この例4では、前述した図1に示すたばこ原料の膨化装置を用いた。
【0052】
例1と同様な処理を施した中骨刻(水分量:37重量%、幅:0.2mm)を準備した。
【0053】
水蒸気供給管8のノズル部(直径3mm)からゲージ圧5バール(0.5MPa)の飽和水蒸気を水平状態に配置した供給ダクト5(直径:約50mm、長さ:約0.6m)に約40kg/時間の流量で噴出した。中骨刻をたばこ原料供給部11から第1エアロッカ12を通して供給ダクト5に湿物重量基準で36kg/時間の流量で連続的に導入した。このとき、供給ダクト5を流通する水蒸気流は温度が150℃の飽和水蒸気であった。排気ファン17を予め駆動することにより、中骨刻は供給ダクト5から水蒸気流と共にサイクロン1(直径:約250mm、分離部有効高さ約0.75m)内に導入され、水蒸気流と共に旋回して湿潤、膨潤した。供給ダクト5とサイクロン1(滞留時間は1.5秒)との通過時間は約1.8秒間であった。湿潤した中骨刻の水分量は、調湿時の水分量(37重量%)から2重量%増加した39重量%であった。
【0054】
次いで、サイクロン1から排出された湿潤した中骨刻を振動コンベア15で気流乾燥機7に連続して導入し、前述した例1と同様な条件で湿潤中骨刻を過熱水蒸気流にて乾燥し、膨化した。なお、過熱水蒸気の温度は280℃とした。
【0055】
(例5;実施例)
気流乾燥機7のダクトにおいて、中骨刻と共に流通する過熱水蒸気流の温度を215℃にした以外、例4と同様な方法で湿潤した中骨刻を乾燥し、膨化した。
【0056】
得られた例1〜例5の膨化中骨刻を温度22.0℃、相対湿度60%の恒温恒湿室に1週間蔵置(調和)し、平衡水分にした後、膨嵩性を測定した。
【0057】
膨嵩性は、たばこ刻を喫煙可能な紙巻き状態にした場合の充填能力を示すものである。この測定は、ドイツのBorgwaldt社製のD51を使用した。試験は、膨化中骨刻の膨嵩性を5回繰り返して測定し、平均値を算出した。
【0058】
また、膨化中骨刻の水分量は約2gの膨化中骨刻を秤量ビンに入れ、温度100℃の自然対流型オーブン内で1時間乾燥させた後、乾燥前後の重量差から算出し、5点の平均値として求めた。
【0059】
例1〜例5の膨化中骨刻の膨嵩性および水分量を下記表1に示す。
【表1】
【0060】
前記表1から明らかなように調湿中骨刻を過熱水蒸気流による乾燥前に150℃の温度の水蒸気による湿潤を施した例4、例5は、どの水分レベルでも中骨刻を過熱水蒸気流による乾燥前に水蒸気流による湿潤を施さない例1〜例3に比べてそれぞれ膨嵩性が50cc/100g以上の増加(向上)することが分かる。
【0061】
このような50cc/100g以上の膨嵩性の向上はその率で表わすと約10%に相当する。乾燥前(調湿、裁刻後)の未処理中骨刻の膨嵩性が410cc/100gであることから、例えば例4では膨化率が51%に増大し、非常に優れた膨化方法であることを確認した。
【0062】
(例6:比較例)
まず、黄色種70重量%とバーレー種30重量%の割合で混合した棒状中骨原料を当業者が既知の方法、例えば水または水蒸気の噴霧、により水分量を37重量%に調湿した。この棒状中骨を0.8mmの間隙を持つ一対のローラで圧展した後、0.2mmの幅に裁刻してたばこ原料である中骨刻を準備した。
【0063】
また、トンネル型振動コンベアを備え、コンベア下面に水蒸気を噴霧するための複数の孔を開口した湿潤装置を用意した。この装置は、外寸法が長さ3800mm、幅400mm、高さ1500mmであり、水蒸気噴霧区間(長さ)が2400mmである。
【0064】
次いで、前記中骨刻を前記湿潤装置のトンネル型振動コンベア上に湿物重量基準で320kg/時間供給した。トンネル型振動コンベアで中骨刻を搬送する間に、コンベア下面の複数の孔から温度150℃、ゲージ圧5バール(0.5MPa)の飽和水蒸気を中骨刻に向けて130kg/時間(水蒸気噴霧区間で噴霧される水蒸気の総量)噴霧して中骨刻を湿潤・膨潤を行った。湿潤した中骨刻の水分量は、調湿時の水分量(37.0重量%)から2重量%増加した39.0重量%であった。
【0065】
湿潤・膨潤した中骨刻を前述した例1と同様な構造の気流乾燥機に湿物重量基準で25kg/時間の流量で連続的に供給し、前述した例1と同様な条件で過熱水蒸気流(温度:220℃)にて乾燥し、膨化した。
【0066】
(例7:実施例)
水蒸気供給管8のノズル部(直径3mm)からゲージ圧5バール(0.5MPa)の飽和水蒸気を水平状態に配置した供給ダクト5(直径:約50mm、長さ:約0.6m)に約40kg/時間の流量で噴出した。例6と同様な中骨刻(水分量:37重量%)をたばこ原料供給部11から第1エアロッカ12を通して供給ダクト5に湿物重量基準で36kg/時間の流量で連続的に導入した。このとき、供給ダクト5を流通する水蒸気流は温度が150℃の飽和水蒸気であった。排気ファン17を予め駆動することにより、中骨刻は供給ダクト5から水蒸気流と共にサイクロン1(直径:約250mm、分離部有効高さ約0.75m)内に導入され、水蒸気流と共に旋回して湿潤、膨潤した。供給ダクト5とサイクロン1(滞留時間は1.5秒)との通過時間は約1.8秒間であった。湿潤した中骨刻の水分量は、調湿時の水分量(37重量%)から2重量%増加した39重量%であった。
【0067】
次いで、サイクロン1から排出された湿潤した中骨刻を振動コンベア15で気流乾燥機7に連続して導入し、前述した例1と同様な条件で湿潤中骨刻を過熱水蒸気流にて乾燥し、膨化した。なお、過熱水蒸気の温度は220℃とした。
【0068】
得られた例6、例7の膨化中骨刻を温度22.0℃、相対湿度60%の恒温恒湿室に1週間蔵置(調和)し、平衡水分にした後、前述した例1〜例5と同様な方法で膨嵩性を測定した。
【0069】
また、膨化中骨刻の水分量を前述した例1〜例5と同様な方法で求めた。
【0070】
これらの結果を下記表2に示す。
【表2】
【0071】
前記表2から明らかなように中骨刻をサイクロンで湿潤・膨潤させ、過熱水蒸気流による乾燥を行った例7は、水蒸気を噴霧するための複数の孔を開口したトンネル型振動コンベアで中骨刻を湿潤・膨潤させ、過熱水蒸気流による乾燥を行った例6に比べて膨嵩性を増大できることが確認された。
図1