(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのRNA分子が免疫賦活性RNA(isRNA)またはmRNAである、請求項1または2の一項に記載の免疫賦活剤またはアジュバントとして使用するための組成物。
前記カチオン性ペプチドまたはタンパク質と前記少なくとも1つのRNA分子の窒素/リン酸(N/P)比が、0.1〜20の範囲内、または0.1〜5の範囲内、または0.1〜1の範囲内である、請求項1から3の一項に記載の免疫賦活剤またはアジュバントとして使用するための組成物。
前記ポリマー担体が、前記カチオン性ペプチドまたはタンパク質に加えて、機能的なペプチドまたはタンパク質を含む、請求項1から4の一項に記載の免疫賦活剤またはアジュバントとして使用するための組成物。
前記機能的なペプチドまたはタンパク質が、ペプチド抗原もしくはペプチド抗原エピトープ、またはタンパク質抗原もしくはタンパク質抗原エピトープである、請求項5に記載の免疫賦活剤またはアジュバントとして使用するための組成物。
【背景技術】
【0002】
現在の多くの疾患は、特にワクチン接種との関連で、先天性免疫応答をもたらし、任意選択により適応免疫応答を支持するために、アジュバントの投与を必要とする。これらの疾患の必ずしもすべてではないが一部は、さらに、または代わりに、ペプチド系薬物、タンパク質系薬物、および核酸系薬物の投与、例えば、細胞または組織内への核酸のトランスフェクションを必要とする。これらの要求は、通常、このような疾患の治療における異なる態様を表し、一般的に、一手法において対処することが困難である。結果として、先行技術では通常、別個の手法を介してこのような態様を取り扱う。
【0003】
上記状況において、ワクチン接種は一般に、疾患を予防または治療するのに最も有効で費用効率的な方法の1つであると考えられている。それにもかかわらず、ワクチン開発におけるいくつかの問題は、解決することが困難であることが明らかになっている。ワクチンは、非常に若い人および非常に高齢の人にとって非効率的であることが多い。多くのワクチンは、数回投与される必要があり、ワクチンが付与する防護は、経時的に弱まり、追加免疫投与を必要とし、HIVなどのいくつかの疾患については、効率的なワクチンの開発が緊急に必要とされている。一般に認められているように、これらのワクチンの多くは、より強く、より耐久性のある免疫応答を誘発することができれば、使用可能になり、または改善されるはずである。
【0004】
したがって、対応する先天性免疫応答を開始またはブーストすることによって、適応免疫応答の誘導および維持を支持する、ワクチン接種目的用の新規な効率的で安全なアジュバントの開発は、主な難度の高い課題を象徴する。
【0005】
アジュバントは通常、抗原の固有免疫原性を増大させ、かつ/または調節することができる化合物として定義される。負の副作用を低減するために、新しいワクチンは、以前の全細胞ワクチンまたはウイルス系ワクチンと比較して免疫原性がより低くなることの多い、より規定された組成を有する。したがって、アジュバントは、より少ない抗原およびより少ない注射で済むという追加の利点とともに、新しいワクチンを補助して強力で持続性の免疫応答を誘導することが要求される。現在では、適応免疫応答は、感染またはワクチン接種後に先天的免疫細胞によって認知される最初の危険シグナルのレベルおよび特異性に主に依存することが明らかである(非特許文献1)。特に、非常に精製された組換えタンパク質をますます含むことになり、非常に安全であるが、免疫原性が不十分である新しい世代のワクチン候補のために、効率的なアジュバントがますます必要になる。
【0006】
残念ながら、これまでのところ、ほんのわずかな認可されたアジュバントが利用可能である。最も著名なのはミョウバンであり、これは、安全であることが公知であるが、非常に弱いアジュバントともなる。例えば、病原体、CpG−ヌクレオチドなどの投与を含めた、多くのさらなるアジュバントが開発されている。しかし、多くの新しい問題および台頭しつつある問題が考慮および解決されなければならないので、これらの新しい、または「確立された」アジュバントのほとんどは、依然として上記要求を満たしていない。これらの問題にはとりわけ、新しい感染症および再び台頭しつつある感染症、投与の繰り返し、汎発性インフルエンザの脅威などが含まれる。
【0007】
さらに、新しいワクチン標的は、通常開発することがより困難であり、その特異的に適応した免疫応答のために、成功可能にするのにより強力なアジュバントを必要とする。さらに、現在のところ、我々が有効なワクチンさえもっていない、かなりの数の重要な病原体が依然として存在する。これは、非常に難度の高い将来の標的となる。このような標的に対するワクチン開発を可能にするために、より強力なアジュバントが必要となる。このような新しいアジュバントは、より多くの異種抗体応答、病原体多様性の取り扱い、強力な機能的な抗体応答の誘導、病原体殺傷または中和の保証、ならびに直接的および間接的な病原体殺傷、特にTh1免疫応答の一部である細胞毒性T細胞の誘導のための、より有効なT細胞応答の誘導を含めた利点を提供する必要がある。さらに、アジュバントは、抗原用量の低減、および混合ワクチンにおける抗原競合の克服を含めた、より実利的な効果を実現する必要がある場合がある。さらに、感染症にますますかかりやすい高齢化する人口の背景に対して、新しいアジュバントは、年齢とともに免疫応答が自然に悪化することを克服することが必要となる(非特許文献2)。
【0008】
O’Hagan(非特許文献2;上記を参照)の概説では、新しい有効なアジュバントの緊急の必要性、例えば、ワクチン中のより低い抗原用量の要求、免疫応答および異種活性の幅を増大させ、複雑な混合ワクチンを可能にし、抗原競合を克服し、高齢者、幼児、および乳児、慢性疾患を有する患者、および免疫無防備状態者などの人口の一部の群における制限された免疫応答を克服し、エフェクターT細胞応答および抗体価を増大させ、より急速に防御反応を誘導し、また、メモリーB細胞応答およびメモリーT細胞応答を増強することによって、応答の継続時間を延長する必要性についてのいくつかの理由を要約している。
【0009】
上記を要約すると、好ましくは、先天性免疫応答の誘導、特に抗ウイルス性サイトカインIFN−αの誘導において効率的であり、好ましくはまた、適応免疫応答の支持において効率的であり、安全であり、すなわち、いずれの長期間作用にも関連せず、耐容性良好であり、単純な合成経路を介して入手可能であり、低費用貯蔵条件(特に、実現可能な凍結乾燥)を示し、単純で安価な成分で済み、生分解性であり、多くの異なる種類のワクチン抗原に適合性であり、抗原および免疫性強化物質を同時送達することができるなどである、新しい効率的で安全な免疫賦活剤またはアジュバントが必要とされている。
【0010】
上記に既に説明したように、アジュバントまたは免疫賦活剤は、通常、先天性免疫応答を誘導するその能力を介して作用する。生得免疫系は、ほとんどの生物において宿主防御の支配的な系を形成し、例えば、炎症を含めた体液バリアおよび化学的バリア、補体系、ならびに細胞バリアなどのバリアを含む。生得免疫系は、一般的に、パターン認識受容体と呼ばれる少数の受容体に基づく。これらは、宿主の細胞から、ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫のような異質な生物を区別する、保存された分子パターンを認識する。このような病原体関連分子パターン(PAMP)には、ウイルス核酸、細菌壁および真菌壁の成分、鞭毛タンパク質などが含まれる。詳細に研究されたパターン認識受容体(PAMP受容体)の最初のファミリーは、トール様受容体(TLR)ファミリーであった。TLRは、細胞外環境またはエンドソームのルーメンのリガンドを認識する膜貫通タンパク質である。リガンド結合の後、TLRは、細胞質アダプタータンパク質を介してシグナルを伝達し、これは、宿主防御応答を誘発し、抗微生物ペプチド、炎症促進性ケモカインおよび炎症促進性サイトカイン、抗ウイルス性サイトカインなどの産生を引き起こす(例えば、非特許文献3)。免疫系のさらなる関連した成分には、例えば、エンドソームTLR、細胞質受容体、I型インターフェロン、および細胞質受容体が含まれる。したがって、免疫賦活剤またはアジュバントは、パターン認識受容体(PAMP受容体)を活性化する、先天性免疫応答の誘導物質として好ましくは本明細書で定義される。これによって、シグナルのカスケードが誘発され、これは、例えば、先天性免疫応答を支持するサイトカイン(例えば、IFN−α)の放出をもたらし得る。したがって、このような受容体に結合し、このようなPAMP受容体を活性化することが、免疫賦活剤またはアジュバントのフィーチャであることが好ましい。理想的には、作用物質またはアジュバントなどは、さらに、例えば、好適なクラスのTh細胞が活性化されるように免疫応答をシフトさせることによって、適応免疫応答を支持する。治療される疾患または障害に応じて、Th1に基づく免疫応答へのシフトが好適となり得、または他の場合では、Th2免疫応答へのシフトが好適となり得る。
【0011】
先行技術において、上記に定義した要求される特性のすべてではないが、少なくとも一部を満たす、いくつかの有望なアジュバント候補が存在する。
【0012】
例として、上記開発された新しいアジュバントの中で、CpG DNAオリゴヌクレオチドまたはisRNA(免疫賦活性RNA)のようないくつかの核酸は、先天性免疫応答の治療的または予防的誘導を可能にするので、新しい免疫賦活剤またはアジュバントの有望な候補であることが分かった。分かりやすく言えば、このような核酸に基づくアジュバントは、通常、アジュバント活性を不要に喪失せずに、かついくつかの場合では、全身的に耐えられるレベルを超えて、投与される体積を増大させる必要性を伴わずに、有効な先天性免疫応答の誘導を可能にするために、作用部位に有効に送達されなければならない。
【0013】
この問題を解決する一手法は、生得免疫系の一部である細胞(例えば、樹状細胞、形質細胞様樹状細胞(pDC))に、PAMP受容体(例えば、トール様受容体(TLR))のリガンドであり、したがって核酸リガンドによって免疫刺激をもたらすことができる免疫賦活性核酸をトランスフェクトすることである場合がある。さらなる手法は、核酸に基づくアジュバントの直接トランスフェクションとすることができる。しかし、これらの手法のすべては、一般的に、特に局所的に投与される場合、核酸の非効率な送達、およびしたがってアジュバント活性の減少によって損なわれる。
【0014】
しかし、現在までのこのような核酸に基づくアジュバント手法の1つの主な不利点は、哺乳動物細胞の原形質膜を横断するその能力が限られていることであり、芳しくない細胞へのアクセス、および不十分な治療的有効性をもたらす。現在まで、このハードルは、核酸トランスフェクションに基づく用途、例えば、生物医学的開発、およびしたがって、多くの生物医薬品の商業的成功にとっての主要課題となる(例えば、非特許文献4を参照)。
【0015】
細胞または組織内への核酸または遺伝子のトランスフェクションは、in vitroトランスフェクション目的との関連、および遺伝子治療手法との関連で、これまで調査されている。しかし、効率的で安全な、このような遺伝子送達技法に基づくアジュバント、特に、認可されたアジュバントは、今までのところまったく入手可能でない。これはおそらく、一般に、核酸に基づくアジュバントの場合において解決されるべき安定性問題と相まって、アジュバントの複雑な要求に起因する。
【0016】
それにもかかわらず、(先天性および/もしくは適応)免疫応答を誘発するための、細胞または組織内への核酸または遺伝子のトランスフェクションは、新しいアジュバントを提供するための有望な手法をもたらすと思われる。
【0017】
しかし、これらの手法の多くは、先天性免疫応答の誘導を伴わない、細胞または組織への核酸または遺伝子のトランスフェクションを利用する。先天性免疫応答の誘導を厳密に回避しなければならない、いくつかの遺伝子治療療法さえも存在する。ワクチン接種が核酸の投与を使用して適応性のある抗原特異的免疫応答を誘導するのに実施される稀有な場合においてでも、例えば、DNAまたはmRNAでコードされる抗原を使用する腫瘍ワクチン接種において、適応免疫応答の誘導は、一般的に、付随するアジュバント療法としてではなく、コードされる抗原に対する能動免疫化として実施され、したがって、先天性免疫応答を誘導するために別個のアジュバントの追加投与を必要とする。
【0018】
多数のトランスフェクション法が当技術分野で公知であっても、個体の細胞内への核酸または遺伝子の移入または挿入は、依然として現在の主要な課題となり、まだ十分に解決されていない。この複雑な問題に対処するために、様々な方法が過去10年のうちに開発された。これらには、リン酸カルシウム、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、およびリポソームによるトランスフェクションが含まれる。トランスフェクションのためのさらなる方法は、電気穿孔およびウイルストランスダクションである。
【0019】
しかし、当業者に公知であるように、核酸または遺伝子の移入または挿入のためのシステムは、in vivo用途に関するいくつかの要求を満たさなければならず、これらの要求には、高い機能性を伴った個体の細胞への効率的な核酸送達、遍在的に存在するヌクレアーゼに対する核酸の保護、細胞内への核酸の放出、安全性の懸念のまったくないこと、スケールアップに適用できる、商業的に受け入れられる形態での実現可能な製造、および低費用条件下での貯蔵安定性(例えば、実現可能な凍結乾燥)が含まれる。これらの要求は、特にアジュバントが上記に略述した核酸の形態である場合、アジュバントの複雑な要求に加えられるべきである。
【0020】
現在利用可能な、核酸または遺伝子を移入または挿入するためのいくつかの成功したストラテジーは、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、およびヘルペスウイルスなどの使用に依拠する。ウイルスベクターは、高い効率および長期間遺伝子発現の可能性を伴った遺伝子移入を媒介することができる。しかし、遺伝子療法の臨床試験で取り扱われない急性免疫応答(「サイトカインストーム」)、免疫原性、および挿入突然変異誘発により、いくつかの一般に使用されるウイルスベクターについて、深刻な安全性の懸念が提起された。
【0021】
核酸または遺伝子の移入または挿入の問題に対する別の解決策は、非ウイルスベクターの使用に見出すことができる。非ウイルスベクターは、ウイルスベクターほど効率的ではないが、多くの非ウイルスベクターが開発されることによって、より安全な選択肢をもたらしている。非ウイルス核酸送達の方法は、物理的手法(無担体核酸送達)および化学的手法(合成ベクターに基づく核酸送達)を使用して探索されている。物理的手法には、通常、針による注射、電気穿孔、遺伝子銃、超音波、および流体力学的送達が含まれ、これらは、細胞膜を通り抜け、細胞内遺伝子移入を促進する物理的な力を使用する。化学的手法は、一般的に、細胞内に核酸を送達するための担体として合成化合物または天然に存在する化合物(例えば、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、脂質−ポリマーハイブリッドシステム)を使用する。様々な非ウイルス核酸送達システムの基礎科学および応用において、著しい進展が見られるが、非ウイルス手法の大部分は、特にin vivo遺伝子送達について、依然として、ウイルスベクターよりはるかに効率性が低い(例えば、非特許文献5を参照)。
【0022】
上記に定義したトランスフェクション剤などは、一般的に、in vitro反応においてもっぱら使用されて成功している。しかし、in vivoでの核酸の適用については、さらなる要求が満たされなければならない。例えば、核酸とトランスフェクション剤の複合体は、凝集化(agglomerisation)に対して、生理塩溶液中で安定でなければならない。さらに、担体自体は、個体において適応免疫応答を誘導しないはずのものであるため、このような複合体は、一般的に、宿主の補体系の一部と相互作用してはならず、したがってそれ自体で免疫原性であってはならない。さらに、複合体は、遍在的に存在するヌクレアーゼによる早期細胞外分解から核酸を保護するはずのものである。
【0023】
当技術分野において、多くのトランスフェクション試薬、特にカチオン性脂質が入手可能であり、これは、細胞培養液中で優れたトランスフェクション活性を示す。しかし、これらのトランスフェクション試薬のほとんどは、血清の存在下で十分に機能せず、ほんのわずかがin vivoで活性である。リポプレックスが、血液、粘液、上皮被覆液、または組織基質中に存在する圧倒的な量の負に帯電し、多くの場合両親媒性のタンパク質および多糖に曝露されるとき、サイズ、表面電荷、および脂質組成の劇的な変化が起こる。in vivoで投与されると、リポプレックスは、負に帯電した血液成分と相互作用し、大きな凝集体を形成する傾向があり、これは、循環赤血球の表面上に吸収され、厚い粘液層に捕捉され、または微小血管系で塞栓形成する場合があり、リポプレックスが遠位の位置における意図された標的細胞に到達するのを妨げる。一部はさらには、血液循環に導入された後、溶解する(例えば、非特許文献5を参照)。
【0024】
1つのより有望な手法は、カチオン性ポリマーを利用する。カチオン性ポリマーは、負に帯電した核酸としっかりと複合体形成し、この核酸を凝縮することができるので、核酸のトランスフェクションにおいて効率的であることが分かった。したがって、いくつかのカチオン性ポリマーが、in vitroおよびin vivoでの遺伝子送達用担体として探索されている。これらとして、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミンデンドリマーおよびポリプロピルアミンデンドリマー、ポリアリルアミン、カチオン性デキストラン、キトサン、カチオン性タンパク質、ならびにカチオン性ペプチドが挙げられる。ほとんどのカチオン性ポリマーは、DNAを凝縮して小粒子にする機能を共有し、細胞表面上のアニオン性部位との電荷間相互作用を通じて、エンドサイトーシスを介して細胞取込みを促進するが、これらのトランスフェクション活性および毒性は、劇的に異なる。
【0025】
当技術分野における1つの手法においてのみ、短いカチオン性ペプチドに複合体形成したRNAの免疫賦活性作用が、Fotin−Mleczekら(特許文献1)によって実証された。これらの配合物は、免疫適格細胞内でサイトカイン産生を効率的に誘導すると思われる。残念ながら、Fotin−Mleczekらは、これらの複合体による好ましい抗ウイルス性サイトカインIFN−αの誘導を評価しなかった。さらに、これらの複合体は、凍結乾燥の間、不安定であることが分かった。
【0026】
上記状況において、カチオン性ポリマーは、分子量の上昇とともにより良好なトランスフェクション効率を示す。しかし、分子量が上昇すると、カチオン性ポリマーの毒性も上昇する。この上記状況において、(高分子量)PEIは、おそらく、特に遺伝子送達目的のための核酸のトランスフェクションに関して、最も活性で最も研究されたポリマーである。残念ながら、これは、その非生分解性の性質および毒性のために同じ欠点を示す。さらに、高分子量ポリマーによって形成されるポリプレックスは、生理的条件下での安定性の改善を示すが、データは、このようなポリマーは、ベクターのアンパッキングを妨害する場合があることを示した。この悪影響を克服するために、Readら(非特許文献6;および非特許文献7を参照)は、ペプチドCys−Lys
10−Cysの酸化重縮合によって調製される線状還元性ポリカチオン(linear reducible polycation)(RPC)に基づく新しいタイプの合成ベクターを開発した。このペプチドCys−Lys
10−Cysは、細胞内環境によって切断されて核酸の放出を促進することができる。この状況において、Readら(非特許文献6を参照)は、これらのRPCによって形成されるポリプレックスは、還元条件によって不安定化され、DNAおよびmRNAの効率的な放出を可能にすることを示すことができた。しかし、in vitroでトランスフェクション効率を検査すると、Readら(非特許文献6を参照)は、2のN/P(窒素原子対リン原子(phosphor atom))比は、トランスフェクション効率を改善するのに十分ではなく、より高いN/P比が必要であることも観察した。さらに、Readら(非特許文献6を参照)は、クロロキンまたはカチオン性脂質DOTAPが、トランスフェクション効率を適切なレベルに増強するのにさらに必要であることを観察した。結果として、Readら(非特許文献7を参照)は、公知のエンドソーム緩衝能(endosomal buffering capacity)を有するヒスチジン残基をRPC中に含め、このようなヒスチジンに富むRPCは、細胞内還元性環境によって切断され得ることを示した。この手法は、エンドソーム溶解剤(endosomolytic agent)のクロロキンを必要とすることなく、プラスミドDNA、mRNA、およびsiRNAの分子を含めた広い範囲の核酸の効率的な細胞質送達を可能にした。
【0027】
残念ながら、Readら(非特許文献6を参照)も、Readら(非特許文献7を参照)も、RPCをin vivo用途に直接使用することができるか否かについて評価しなかった。2005年のReadらの研究において、トランスフェクションは、遺伝子移入を増強するヒスチジン残基の能力のマスキングを回避するために、血清の非存在下で実施された。このマスキングは、血清タンパク質がポリプレックスに結合することから生じ、細胞取込みを制限する場合がある。しかし、予備実験では、ヒスチジンリッチRPCポリプレックスのトランスフェクション特性は、血清タンパク質の存在によって影響される場合があり、GFP陽性細胞の50%の減少が10%のFCS中で観察されたことを示した。in vivo用途のために、Readら(非特許文献7を参照)は、親水性ポリマーのポリ−[N−(2ヒドロキシ−プロピル)メタクリルアミド]での修飾を提案した。残念ながら、Readらは、ポリプレックスの凝集およびポリカチオン性複合体の血清タンパク質への結合を防止することができなかった。さらに、強いカチオン性の帯電した複合体が、高いN/P比を特徴とする大過剰のカチオン性ポリマーのために、核酸と複合体形成する際に形成される(正のゼータ電位)。したがって、このような複合体は、塩で誘導される凝集のその強い傾向および血清内容物との相互作用(オプソニン化)のために、in vivoにおいて使用が制限されるものでしかない。さらに、これらの(正に帯電した)複合体は、遺伝子療法の目的で使用される場合、補体活性化を喚起し得る。これらの正に帯電したRPCに基づく複合体は、真皮に局所投与した後の核酸カーゴ(nucleic acid cargo)の翻訳が芳しくないことを示したことも分かった。
【0028】
Readらと同様の手法で、McKenzieら(非特許文献8、および非特許文献9)は、短い合成ペプチド中に複数のシステインを挿入することによって、遺伝子送達剤としての架橋ペプチドを開発した。McKenzieらの研究において、McKenzieらは、DNAとの最適な複合体形成を試験し、結果として、ペプチドDNA凝縮物を完全に形成するために、少なくとも2のN/P比が必要であることを示すことができた。したがって、正に帯電した複合体のみが、最適なDNA凝縮を示すと思われた。これらのデータと対照的に、McKenzieらは、in vivoでの遺伝子送達のために、負に帯電した複合体を開発することを提案した。その理由は、電気的陽性のDNA凝縮物を静脈内に適用すると、急速にオプソニン化され、肺および肝臓に非特異的に生体内分布することが以前の研究で示されたためである(非特許文献10)。したがって、McKenzieら(非特許文献10を参照)は、ポリエチレングリコールおよびターゲティングリガンドを用いた担体の誘導体化を提案した。注目すべきことに、McKenzieらの手法(非特許文献10を参照)はさらに、特許(特許文献2)の対象であり、この特許は、コーディング核酸、アンチセンス核酸、およびリボザイムのトランスフェクションを特に開示している。
【0029】
したがって、アニオン性電荷を有する血漿タンパク質は、正に帯電した複合体に非特異的に結合し、例えば、細網内皮系を介してこれらを急速に除去する場合があるので、核酸のin vivoでの適用は、依然として最も難度の高い問題の1つであると思われる。カチオン性複合体による補体系のオプソニン化および活性化は、投与されたカチオン性複合体のin vivoでの効力の低下に関与し得る追加の生理的現象である。これは、特に、コードされたタンパク質もしくはペプチドの発現、またはトランスフェクトされた核酸のRNAの転写が意図される場合、核酸系薬物の投与、例えば、核酸の細胞または組織へのトランスフェクションに特に当てはまる。
【0030】
上記を要約すると、先行技術では、一方では、ワクチン接種目的にとって効率的で安全なアジュバントを確立させ、他方では、上記に論じた負の副作用を示すことなく、核酸をin vivoで送達する、特に、in vivoでの核酸トランスフェクションの目的のために核酸を凝縮および安定化させるのにさらに適した、実現可能な手段または方法が提供されていない。より正確には、一方では、核酸カーゴを、これらが代謝的に切断される前に標的に輸送するのに十分安定であり、他方では、核酸カーゴが蓄積し、毒性レベルに到達し得る前に組織から取り除くことができる手段または方法は、上記状況において、先行技術ではまったく公知でない。さらに、上記要求に加えて、サイトカイン、特に、抗ウイルスサイトカインIFN−αの望ましいパターンを誘導する手段または方法もまったく公知でない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】ルシフェラーゼ(R1180)をコードする5μgのmRNAを含むポリマー担体カーゴ複合体をトランスフェクトした後のHepG2細胞内のルシフェラーゼ発現を示す図である。CR
12C/R1180は、ジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12C(Cys−Arg
12−Cys)、および核酸カーゴとしてのmRNA R1180によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を示す。R
12/R1180は、比較目的の、非重合カチオン性ペプチドR
12(Arg
12)、および核酸カーゴとしてのmRNA R1180によって形成される、本発明でない担体カーゴ複合体を示す。
【0039】
複合体は、示したように、1:2(w/w)または2:1(w/w)の質量比でカチオン性ペプチドと核酸を含有する。
【0040】
R1180は、複合体形成されていないRNAをトランスフェクトされた細胞とする。
【0041】
緩衝液は、非トランスフェクション細胞についての陰性対照とする。
【0042】
24時間後に、ルシフェラーゼのレベルを、ルシフェリン酸化の化学発光測定によって、溶解産物中で定量化した。
【0043】
データ点は、個々の生物学的複製物を示す。
【0044】
結果は、第一に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体(CR
12C/R1180)は、重合されていないペプチドR
12との本発明でない担体カーゴ複合体(R
12/R1180)より高いレベルのルシフェラーゼ発現を誘導することを示す。第二に、1より高いN/P比がin vitroでのトランスフェクションに有利であることを示すことができた。
【
図2】ルシフェラーゼ(R1180)をコードする5μgのmRNAを含むポリマー担体カーゴ複合体をトランスフェクトした後のHepG2細胞およびB16F10細胞内の(in vitro)ルシフェラーゼ発現を示す図である。CR
12C/R1180は、ジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12C(Cys−Arg
12−Cys)、および核酸カーゴとしてのmRNA R1180によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を示す。R
12/R1180は、比較目的の、非重合カチオン性ペプチドR
12(Arg
12)、および核酸カーゴとしてのmRNA R1180によって形成される、本発明でない担体カーゴ複合体を示す。CR
9C/R1180は、重合されたカチオン性ペプチドCR
9C(Cys−Arg
9−Cys)、および核酸カーゴとしてのmRNA R1180によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を示す。
【0045】
複合体は、2:1(w/w)の質量比でカチオン性ペプチドと核酸を含有する。
【0046】
R1180は、複合体形成されていないRNAをトランスフェクトされた細胞とする。
【0047】
緩衝液は、非トランスフェクション細胞についての陰性対照とする。
【0048】
24時間後に、ルシフェラーゼのレベルを、ルシフェリン酸化の化学発光測定によって、溶解産物中で定量化した。
【0049】
データ点は、個々の生物学的複製物を示す。
【0050】
結果は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体(CR
12C/R1180およびCR
9C/R1180)は、重合されていないペプチドR
9およびR
12との本発明でない担体カーゴ複合体(R
12/R1180およびR
9/1180)より高いレベルのルシフェラーゼ発現を誘導することを示す。
【
図3】ルシフェラーゼ(R1180)をコードする5μgのmRNAをメスBALB/cマウスに皮内注射した後のin vivoルシフェラーゼ発現を示す図である。CR
12C/R1180は、ジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12C(Cys−Arg
12−Cys)、および核酸カーゴとしてのmRNA R1180によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を示す。R
12/R1180は、比較目的の、非重合カチオン性ペプチドR
12(Arg
12)、および核酸カーゴとしてのmRNA R1180によって形成される、本発明でない担体カーゴ複合体を示す。
【0051】
複合体は、示したように、1:2(w/w)または2:1の比でカチオン性ペプチドと核酸を含有する。
【0052】
24時間後に、ルシフェラーゼのレベルを、化学発光アッセイによって、組織溶解産物中で定量化した。
【0053】
結果は、第一に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体(CR
12C/R1180)は、重合されていないペプチドR
12との本発明でない担体カーゴ複合体(R
12/R1180)より高いレベルのルシフェラーゼ発現を誘導することを示す(実際には、重合されていないペプチドR
12を含む試料中でルシフェラーゼ発現をまったく検出することができなかった)。第二に、1未満のN/P比がin vivoでのトランスフェクションに有利であることを示すことができた。
【
図4】Zetasizer Nano(Malvern Instruments、Malvern、UK)を使用した動的光散乱による、担体としての非重合カチオン性ペプチド(R
12およびR
7)との本発明でない複合体と比較した、凍結乾燥後の、担体としてのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12CおよびCR
7Cによって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の未処理の相関曲線を示す図である。流体力学直径を、新鮮な調製した複合体、および凍結乾燥後の再構成された複合体に関して測定した。ペプチド:RNAの質量比は1:2であった。結果として、ジスルフィド結合によってポリマー担体を重合させる、カチオン成分としてのシステイン(cystein)含有ペプチドを含む本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、サイズが変化せず、サイズが大きくなり、したがって、凍結乾燥ステップ間で安定でない、非重合ペプチドによって形成される複合体と対照的であることを示すことができる。したがって、ポリマー担体として重合されたペプチドを含む複合体は、凍結乾燥に関して有利な特性を示す。
【
図5】本発明による様々なw/w比のジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしてのR722によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体のゼータ電位を示す図である。図から分かるように、ゼータ電位は、w/w比が過剰のペプチドから1:1の比(ペプチド/RNA)に変化する際に、正から負に変化する。
【
図6】
図6Aは、本発明による1:2.5(w/w)の質量比(CR
12C/CpG2216)でのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしてのCpG2216によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhIFNaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhIFNaサイトカイン放出を増大させる。
【0054】
図6Bは、本発明による1:2.5(w/w)の質量比(CR
12C/CpG2216)でのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしてのCpG2216によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhTNFaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhTNFaサイトカイン放出を増大させない。
【
図7】
図7Aは、本発明による1:2(w/w)の質量比(CR
12C/R491)でのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしてのルシフェラーゼをコードするmRNA R491によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhIFNaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhIFNaサイトカイン放出を増大させる。
【0055】
図7Bは、本発明による1:2(w/w)の質量比(CR
12C/R491)でのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしてのルシフェラーゼをコードするmRNA R491によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhTNFaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhTNFaサイトカイン放出を増大させる。
【
図8】
図8Aは、本発明による1:2.5(w/w)の質量比(CR
12C/短GUリッチ)でのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしての短いGUリッチRNAオリゴヌクレオチド(短GUリッチ)によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhIFNaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhIFNaサイトカイン放出を増大させる。
【0056】
図8Bは、本発明による1:2.5(w/w)の質量比(CR
12C/短GUリッチ)でのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしての短いGUリッチRNAオリゴヌクレオチド(短GUリッチ)によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhTNFaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhTNFaサイトカイン放出を増大させる。
【
図9】
図9Aは、本発明による、ジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
7Cと、核酸カーゴとしての長い非コーディングGUリッチisRNA R722によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhIFNaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体(CR
7C/R722)は、重合されていないペプチドR
7によって形成される本発明でない担体カーゴ複合体(R
7/R722)と比較して、hPBMC中でのhIFNaサイトカイン放出を増大させる。
【0057】
図9Bは、本発明による、ジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
7Cと、核酸カーゴとしての長い非コーディングGUリッチisRNA R722によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhTNFaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体(CR
7C/R722)は、重合されていないペプチドR
7によって形成される本発明でない担体カーゴ複合体(R
7/R722)と比較して、hPBMC中でのhTNFaサイトカイン放出の弱い増大をもたらすだけである。
【
図10】
図10Aは、本発明による、ジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
9Cと、核酸カーゴとしての長い非コーディングGUリッチisRNA R722によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhIFNaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体(CR
9C/R722)は、重合されていないペプチドR
9によって形成される本発明でない担体カーゴ複合体(R
9/R722)と比較して、hPBMC中でのhIFNaサイトカイン放出を増大させる。
【0058】
図10Bは、本発明による、ジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
9Cと、核酸カーゴとしての長い非コーディングGUリッチisRNA R722によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhTNFaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体(CR
9C/R722)は、重合されていないペプチドR
9によって形成される本発明でない担体カーゴ複合体(R
9/R722)と比較して、hPBMC中でのhTNFaサイトカイン放出を増大させない。
【
図11】
図11Aは、本発明による、様々なw/w比のジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしてのisRNA R722によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhIFNaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhIFNaサイトカイン放出を増大させる。
【0059】
図11Bは、本発明による、様々なw/w比のジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12Cと、核酸カーゴとしてのisRNA R722によって形成されるポリマー担体カーゴ複合体で刺激した後のhPBMC中のhTNFaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhTNFaサイトカイン放出を増大させる。
【
図12】
図12Aは、本発明による、様々なN/P比のカチオン性ペプチドCH
6R
4H
6C、CH
3R
4H
3C、およびCHK
7HCと、核酸カーゴとしてのisRNA R722によって形成されるポリマー担体複合体で刺激した後のhPBMC中のhIFNaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhIFNaサイトカイン放出を増大させる。
【0060】
図12Bは、本発明による、様々なN/P比のジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCH
6R
4H
6C、CH
3R
4H
3C、およびCHK
7HCと、核酸カーゴとしてのisRNA R722によって形成されるポリマー担体複合体で刺激した後のhPBMC中のhTNFaサイトカインの分泌(in vitro)を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴ単独またはカチオン性ペプチド単独と比較して、hPBMC中でのhTNFaサイトカイン放出を増大させる。特に、1以上のN/P比を有する本発明のポリマーカーゴ複合体は、TNFα分泌をもたらす。
【
図13】腫瘍チャレンジ実験においてアジュバントとして使用するために、担体としてのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12C、および核酸カーゴとしてのisRNA R722によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を、タンパク質ワクチンオボアルブミン(Ovalbumine)(OVAタンパク質)に添加することの(in vivo)効果を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、緩衝液対照と比較して腫瘍増殖に対して効果がまったくないタンパク質ワクチン単独と比較して、腫瘍増殖を極度に減速させる(decelaterates)。
【
図14】オボアルブミン特異的IgG2a抗体の誘導におけるアジュバントとして使用するために、担体としてのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12C、および核酸カーゴとしてのisRNA R722によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を、タンパク質ワクチンオボアルブミン(OVAタンパク質)に添加することの(in vivo)効果を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、B細胞応答を強く増大させ、これは、特に、Th1にシフトされた免疫応答の誘導に関して、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の有益なアジュバント特性を証明する。
【
図15】オボアルブミン特異的細胞毒性T細胞の誘導におけるアジュバントとして使用するために、担体としてのジスルフィド架橋されたカチオン性ペプチドCR
12C、および核酸カーゴとしてのisRNA R722によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を、タンパク質ワクチンオボアルブミン(OVAタンパク質)またはオボアルブミン特異的ペプチドワクチンSIINFEKLに添加することの(in vivo)効果を示す図である。図から分かるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、タンパク質またはペプチド単独でのワクチン接種と比較して、オボアルブミン特異的細胞毒性T細胞の誘導を強く増大させ、これは、特に、Th1にシフトされた免疫応答の誘導に関して、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の有益なアジュバント特性をさらに証明する。
【発明を実施するための形態】
【0061】
用語「免疫賦活剤」は、一般的に、適応性のある/細胞傷害性の免疫応答、例えば、「体液性」免疫応答または「細胞」免疫応答を誘発する、言い換えれば、免疫コンピテント細胞によって異質であると認識される抗原の構造特性に対する特異的応答を特徴とする免疫応答を誘発する(かつそれ自体で免疫を付与する)、例えば抗原(どんな化学構造のものでも)のような作用物質を含まないと理解される。むしろ、「免疫賦活剤」とは、一般的に、それ自体でいずれの適応性のある/細胞傷害性の免疫応答も誘因しないが、例えば、「PAMP」受容体を活性化し、それによって実際の適応性のある/細胞傷害性の免疫応答を支持するサイトカインの放出を誘因することによって、非特異的な方法でそのような適応性のある/細胞傷害性の免疫応答をもっぱら増強することができる作用物質/化合物/複合体を意味すると理解される。したがって、適応性のある免疫応答および/または細胞傷害性免疫応答を誘起する(直接または間接的にそれ自体で免疫を付与する)作用物質(例えば、抗原)による任意の免疫刺激は、一般的に、語句「免疫賦活剤」によって否定される。
【0062】
用語「アジュバント」も、それ自体で免疫を付与する作用物質を含まないと理解される。したがって、アジュバントは、それ自体で免疫を付与しないが、例えば、免疫系への抗原の提示を促すことによって、様々な方法で免疫系を補助して抗原特異的免疫応答を増強する。本明細書では、アジュバントは、好ましくは、例えば、支配的なTh1に基づく抗原特異的応答を、よりTh2に基づく抗原特異的応答にシフトし、または逆の場合も同様にシフトすることによって、抗原特異的免疫応答を、例えば、調節することができる。したがって、本発明の脈絡における用語「免疫賦活剤」および「アジュバント」は、一般的に、それ自体で免疫を付与しないが、非特異的な方策、例えば、サイトカイン発現/分泌、抗原提示の改善、免疫応答のアームの性質のシフトなどによって、抗原特異的な(適応性のある細胞免疫応答および/または体液性免疫応答)を調節する効果による非特異的な方法で(抗原特異的免疫応答と対照的に)免疫応答をもっぱら支持する作用物質、化合物、または複合体を意味すると理解される。したがって、それ自体で免疫を誘起する任意の作用物質は、一般的に、用語「アジュバント」または「免疫賦活剤」によって否定される。
【0063】
本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、ワクチン接種目的のための効率的で安全なアジュバント、およびワクチン接種、アジュバント療法、または遺伝子治療用途などの分野におけるトランスフェクションのための担体の提供を可能にする。有利には、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸のin vivo送達に、特に、上記に論じた高分子量ポリマーの負の副作用、例えば、生分解性がまったくないこと、もしくは悪いこと、またはさらには高い毒性、凝集、in vivoでの低いトランスフェクション活性などを示すことなく、核酸トランスフェクションの目的で核酸を凝縮および安定化させるのに適している。本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、血清安定性、塩安定性、効率的な取込み、補体活性化のまったくないこと、核酸放出などを含む、特に皮内経路または筋肉内経路を介したin vivoでの効率的な核酸移入ももたらす。このような本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、アジュバントとして提供される場合、さらに、対応する先天性免疫応答を開始またはブーストすることによって、適応免疫応答の誘導および維持を支持する。さらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、特に凍結乾燥の間の優れた貯蔵安定性を示す。
【0064】
上記に定義した本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、一成分として、ジスルフィド架橋されたカチオン性成分によって形成されるポリマー担体を含む。用語「カチオン性成分」は、一般的に、約1〜9のpH値、好ましくは、9以下、8以下、7以下のpH値、最も好ましくは生理的pH値、例えば、約7.3〜7.4で正に帯電した(カチオン)帯電分子を指す。したがって、本発明によるカチオン性のペプチド、タンパク質またはポリマーは、生理的条件下、特にin vivoでの細胞の生理塩条件下で正に帯電している。この定義「カチオン性」は、「ポリカチオン性」成分も指す場合がある。
【0065】
この脈絡において、カチオン性成分は、ジスルフィド架橋によって、本発明のポリマー担体カーゴ複合体のポリマー担体の基礎を形成し、この目的に適した任意の適当なカチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、またはポリマー、本発明によって定義される核酸と複合体形成し、それによって好ましくは核酸を凝縮することができる特定の任意のカチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、またはポリマーから選択される。カチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、またはポリマーは、直鎖状分子であることが好ましいが、分岐のカチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、またはポリマーも使用することができる。
【0066】
ポリマー担体のそれぞれのカチオン性またはポリカチオン性のタンパク質、ペプチド、またはポリマーは、本明細書で言及されるポリマー担体のカチオン性成分としての少なくとも1つのさらなるカチオン性またはポリカチオン性のタンパク質、ペプチド、またはポリマーと縮合するとジスルフィド結合を形成することができる、少なくとも1つの−SH部分、最も好ましくは少なくとも1つのシステイン残基、または−SH部分を呈する任意のさらなる化学基を含有する。
【0067】
ポリマー担体のそれぞれのカチオン性もしくはポリカチオン性のタンパク質、ペプチド、もしくはポリマー、または任意のさらなる成分は、ジスルフィド架橋を介してその隣接する成分(複数可)(カチオン性タンパク質、ペプチド、ポリマー、または他の成分)に連結されることが好ましい。好ましくは、ジスルフィド架橋は、少なくとも1つのカチオン性またはポリカチオン性のタンパク質、ペプチド、またはポリマーと、少なくとも1つのさらなるカチオン性またはポリカチオン性のタンパク質、ペプチド、もしくはポリマー、または他の成分との間の(可逆性の)ジスルフィド結合(−S−S−)である。ジスルフィド架橋は一般的に、ポリマー担体の成分、特に、カチオン性成分の−SH−部分の縮合によって形成される。このような−SH−部分は、ジスルフィド架橋の前のポリマー担体のカチオン性もしくはポリカチオン性のタンパク質、ペプチド、もしくはポリマー、または任意のさらなる成分の構造の一部であってもよく、あるいは以下に定義される修飾によって、ジスルフィド架橋の前に添加することができる。この状況において、ジスルフィド結合をもたらすのに必要な、ポリマー担体の一成分に隣接する硫黄は、成分自体によって、例えば、本明細書で定義される−SH部分によってもたらすことができ、または成分をそれに応じて修飾して、−SH部分を呈することによってもたらすことができる。これらの−SH−部分は一般的に、例えば、システイン、または−SH部分を担持する成分の任意のさらなる(修飾)アミノ酸もしくは化合物を介して、成分のそれぞれによってもたらされる。ポリマー担体のカチオン性成分または任意のさらなる成分がペプチドまたはタンパク質である場合では、−SH部分は、少なくとも1つのシステイン残基によってもたらされることが好適である。あるいは、ポリマー担体の成分は、好ましくは、−SH部分を担持する化合物との化学反応を介して、−SH部分でそれに応じて修飾することができ、その結果、ポリマー担体の成分のそれぞれは、少なくとも1つのそのような−SH部分を担持する。−SH部分を担持するこのような化合物は、例えば、(追加の)システイン、または−SH部分を担持するポリマー担体の成分の任意のさらなる(修飾)アミノ酸もしくは化合物とすることができる。このような化合物は、本明細書で定義される成分中に−SH部分を含有し、または導入することを可能にする任意の非アミノ化合物または部分であってもよい。このような非アミノ化合物は、化合物の化学反応または結合を介して、例えば、3−チオプロピオン酸もしくは2−イミノチオラン(トラウト試薬)の結合によって、アミド形成(例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミンなど)によって、マイケル付加(例えば、マレインイミド部分、α,β不飽和(unsatured)カルボニルなど)によって、クリック化学(例えば、アジドもしくはアルキン)によって、アルケン/アルキンメタセシス(methatesis)(例えば、アルケン、もしくはアルキン)、イミン形成もしくはヒドロゾン形成(アルデヒド、もしくはケトン(keton)、ヒドラジン(hydrazin)、ヒドロキシルアミン(hydroxylamin)、アミン)、複合体形成反応(アビジン、ビオチン、プロテインG)、またはS
n型置換反応を可能にする成分(例えば、ハロゲンアルカン(halogenalkan)、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩)、またはさらなる成分の結合に利用することができる他の化学的な部分によって、本発明によるポリマー担体の成分に結合させることができる。いくつかの場合では、−SH部分は、成分への化学結合の間に保護基によってマスクすることができる。このような保護基は、当技術分野で公知であり、化学的カップリングの後に除去することができる。それぞれの場合において、例えば、システイン、または任意のさらなる(修飾)アミノ酸もしくは化合物の−SH部分は、ポリマー担体の成分の末端、または任意の位置の内部に存在することができる。本明細書で定義される場合、ポリマー担体の成分のそれぞれは、一般的に、少なくとも1つの−SH−部分を呈するが、2つ、3つ、4つ、5つ、またはさらに多くの−SH−部分を含有することもできる。カチオン性成分の結合に加えて、−SH部分は、本明細書で定義されるポリマー担体のさらなる成分、特にアミノ酸成分、例えば、抗原エピトープ、抗原、抗体、細胞透過性ペプチド(例えば、TAT)、リガンドなどを結合させるのに使用することができる。
【0068】
上記に定義したように、本発明のポリマー担体カーゴ分子のポリマー担体は、ジスルフィド架橋されたカチオン性(またはポリカチオン性)成分によって形成される。
【0069】
1つの第1の選択肢によれば、ポリマー担体の少なくとも1つのカチオン性(またはポリカチオン性)成分は、カチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質から選択することができる。このようなカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、約3〜100アミノ酸の長さ、好ましくは、約3〜50アミノ酸の長さ、より好ましくは、約3〜25アミノ酸の長さ、例えば、約3〜10、5〜20、5〜15、8〜15、16、もしくは17、10〜15、16、17、18、19、もしくは20、または15〜25アミノ酸の長さを呈する。代わりに、またはさらに、このようなカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、約0.5kDa〜約100kDa、好ましくは、約10kDa〜約50kDa、さらにより好ましくは、約10kDa〜約30kDaの分子量を含めて、約0.01kDa〜約100kDaの分子量を呈することができる。
【0070】
ポリマー担体のカチオン性成分がカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質を含む特定の場合では、カチオン性もしくはポリカチオン性のペプチドもしくはタンパク質、またはポリマー担体全体のカチオン特性は、ポリマー担体がカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質から完全に構成される場合、カチオン性アミノ酸のその含量によって決定され得る。好ましくは、カチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質および/あるいはポリマー担体中のカチオン性アミノ酸の含量は、少なくとも10%、20%、もしくは30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、60%、もしくは70%、しかしやはり好ましくは、少なくとも80%、90%、またはさらに、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、最も好ましくは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%であり、または約10%〜90%の範囲内、より好ましくは、約15%〜75%の範囲内、さらにより好ましくは、約20%〜50%の範囲内、例えば、20、30、40、もしくは50%、または前述の値の任意の2つによって形成される範囲内とすることができ、ただし、カチオン性もしくはポリカチオン性のペプチドもしくはタンパク質、またはポリマー担体全体におけるすべてのアミノ酸、例えば、カチオン性、親油性、親水性、芳香族、およびさらなるアミノ酸の含量は、ポリマー担体がカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質から完全に構成される場合、100%である。
【0071】
この脈絡において、カチオン性アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸のArg(アルギニン)、Lys(リシン)、His(ヒスチジン)、およびOrn(オルニチン(ornithin))であることが好ましい。しかし、より広い意味において、その側鎖上にカチオン性電荷を担持する任意の(非天然)アミノ酸も、本発明を実施するのに想定することができる。しかし、その側鎖が生理的pH条件下で正に帯電したカチオン性アミノ酸が好ましい。より好適な実施形態では、これらのアミノ酸は、Arg、Lys、およびOrnである。
【0072】
好ましくは、少なくとも1つの−SH部分を含み、または含むようにさらに修飾されたポリマー担体のカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、それに制限されることなく、カチオン性のペプチドもしくはタンパク質、例えば、プロタミン、ヌクレオリン(nucleoline)、スペルミン、もしくはスペルミジンなど、オリゴL−リシンもしくはポリL−リシン(PLL)、塩基性ポリペプチド、オリゴアルギニンもしくはポリアルギニン、細胞透過性ペプチド(CPP)、トランスポータンなどのキメラCPP、またはMPGペプチド、HIV結合ペプチド、Tat、HIV−1 Tat(HIV)、Tat誘導ペプチド、ペネトラチンファミリーのメンバー、例えば、ペネトラチン、アンテナペディア誘導ペプチド(特にDrosophila antennapedia由来)、pAntp、pIslなど、抗菌剤由来CPP(antimicrobial−derived CPP)、例えば、ブフォリン(Buforin)−2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、MAP、KALA、PpTG20、ロリゴメレ(Loligomere)、FGF、ラクトフェリン、ヒストン、VP22由来ペプチドもしくはVP22類似体ペプチド、HSV、VP22(単純ヘルペス(Herpes simplex))、MAP、KALA、またはタンパク質トランスダクションドメイン(PTD)、PpT620、プロリン(prolin)リッチペプチド、アルギニンリッチペプチド、リシンリッチペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、カルシトニンペプチド(複数可)などから選択される。
【0073】
代わりに、またはさらに、少なくとも1つの−SH部分を含み、または含むようにさらに修飾されたポリマー担体のこのようなカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、それに制限されることなく、以下の和の式(I)を有する以下のカチオン性ペプチドから選択される:
{(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
x};
(式中、l+m+n+o+x=3〜100であり、l、m、n、またはoは互いに独立に、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90、および91〜100から選択される任意の数であり、ただし、Arg(アルギニン)、Lys(リシン)、His(ヒスチジン)、およびOrn(オルニチン)の全含量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも10%を占め;Xaaは、Arg、Lys、His、またはOrnを除く天然の(=天然に存在する)または非天然のアミノ酸から選択される任意のアミノ酸であり;xは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90から選択される任意の数であり、ただし、Xaaの全含量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の90%を超えない)。アミノ酸Arg、Lys、His、Orn、およびXaaのいずれも、ペプチドの任意の場所に位置することができる。この脈絡において、7〜30アミノ酸の範囲内のカチオン性のペプチドまたはタンパク質が特に好適である。この式のさらにより好適なペプチドは、オリゴアルギニン、例えば、
【0075】
特定の好適な実施形態によれば、上記に示した経験的な和の式(I)を有するポリマー担体のこのようなカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、それに制限されることなく、以下の式の亜群のうちの少なくとも1つを含むことができる:
【0076】
【化2】
さらなる特に好適な実施形態によれば、上記に示した経験的な和の式(I)を有し、少なくとも1つの−SH部分を含み、または含むようにさらに修飾されたポリマー担体のカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、それに制限されることなく、以下の式の亜群のうちの少なくとも1つから選択することができる。以下の式(経験式(I)と同様に)は、いずれのアミノ酸の順序も指定しないが、それぞれのペプチドの成分としてアミノ酸(の数)をもっぱら指定することによって経験式を反映することが意図されている。したがって、例として、経験式Arg
(7−29)Lys
1は、この式に入るペプチドは、どんな順序のものであれ、7〜19個のArg残基および1個のLys残基を含有することを意味することが意図されている。ペプチドが7個のArg残基および1個のLys残基を含有する場合、7個のArg残基および1個のLys残基を有するすべての変異体が包含される。したがって、Lys残基は、例えば、7個のArg残基および1個のLys残基から構成される8アミノ酸長の配列中のどこにでも位置することができる。この亜群は、好ましくは:
【0078】
さらなる特定の好適な実施形態によれば、上記に示した経験的な和の式(I)を有し、少なくとも1つの−SH部分を含み、または含むようにさらに修飾されたポリマー担体のカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、それに制限されることなく、一般式Arg
7(R
7とも呼ばれる)、Arg
9(R
9とも呼ばれる)、Arg
12(R
12とも呼ばれる)からなる亜群から選択することができる。
【0079】
さらなる特定の好適な一実施形態によれば、ポリマー担体のカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、上記に示した式{(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
x}(式(I))によって定義され、少なくとも1つの−SH部分を含み、または含むようにさらに修飾されている場合、それに制限されることなく、部分式(Ia)から選択することができる:
{(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa’)
x(Cys)
y} 式(Ia)
(式中、(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;およびxは、本明細書で定義した通りであり、Xaa’は、Arg、Lys、His、Orn、またはCysを除く天然の(=天然に存在する)または非天然のアミノ酸から選択される任意のアミノ酸であり、yは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、および81〜90から選択される任意の数であり、ただし、Arg(アルギニン)、Lys(リシン)、His(ヒスチジン)、およびOrn(オルニチン)の全含量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも10%を占める)。
【0080】
この実施形態は、ポリマー担体のカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質が、例えば、上記に示した経験式(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
x(式(I))によって定義される場合に、上記意味において−SH部分として少なくとも1つのシステインを含み、またはこれらで修飾されており、その結果、カチオン性成分としてのカチオン性またはポリカチオン性ペプチドが、ポリマー担体の他の成分とジスルフィド結合を形成することができる少なくとも1つのシステインを担持する状況に適用することができる。
【0081】
別の特定の好適な実施形態によれば、ポリマー担体のカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質は、上記に示した式{(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
x}(式(I))によって定義される場合に、それに制限されることなく、部分式(Ib)から選択することができる:
Cys
1{(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
x}Cys
2 (式(Ib))
(式中、経験式{(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
x}(式(I))は、本明細書で定義した通りであり、(半経験的な)式(I)によるアミノ酸配列のコアを形成し、Cys
1およびCys
2は、(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
xの近位または末端のシステインである)。例示的な例は、2つのCysによって隣接された上記配列および以下の配列のいずれかを含むことができる:
【0082】
【化4】
この実施形態は、ポリマー担体のカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質が、例えば、上記に示した経験式(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
x(式(I))によって定義される場合に、上記意味において−SH部分として少なくとも2つのシステインで修飾されており、その結果、カチオン性成分としての本発明のポリマー担体カーゴ複合体のカチオン性またはポリカチオン性ペプチドが、ポリマー担体の他の成分とジスルフィド結合を形成することができる少なくとも2つの(末端)システインを担持する状況に適用することができる。
【0083】
第2の選択肢によれば、ポリマー担体の少なくとも1つのカチオン性(またはポリカチオン性)成分は、例えば、この状況において適当な任意の(非ペプチド性)カチオン性またはポリカチオン性ポリマーから選択することができ、ただし、この(非ペプチド性)カチオン性またはポリカチオン性ポリマーは、少なくとも1つの−SH−部分を呈し、または呈するように修飾されており、−SH−部分は、カチオン性またはポリカチオン性ポリマーを本明細書で定義されるポリマー担体の別の成分と連結するジスルフィド結合をもたらす。したがって、本明細書で定義したのと同様に、ポリマー担体は、同じまたは異なるカチオン性またはポリカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0084】
ポリマー担体のカチオン性成分が(非ペプチド性)カチオン性またはポリカチオン性ポリマーを含む特定の場合では、(非ペプチド性)カチオン性またはポリカチオン性ポリマーのカチオン特性は、カチオン性ポリマーの成分の全電荷と比較した場合のカチオン性電荷のその含量によって決定され得る。好ましくは、本明細書で定義される(生理的)pHにおけるカチオン性ポリマー中のカチオン性電荷の含量は、少なくとも10%、20%、もしくは30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、60%、もしくは70%、しかしやはり好ましくは、少なくとも80%、90%、またはさらに、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、最も好ましくは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%であり、または約10%〜90%の範囲内、より好ましくは、約30%〜100%の範囲内、さらにより好ましくは、約50%〜100%の範囲内、例えば、50、60、70、80%、90%、もしくは100%、または前述の値の任意の2つによって形成される範囲内とすることができ、ただし、カチオン性ポリマー全体中の、全電荷、例えば、本明細書で定義される(生理的)pHにおける正電荷および負電荷の含量は、100%である。
【0085】
好ましくは、ポリマー担体の(非ペプチド性)カチオン性成分は、一般的に、約0.1もしくは0.5kDa〜約100kDa、好ましくは、約1kDa〜約75kDa、より好ましくは、約5kDa〜約50kDa、さらにより好ましくは、約5kDa〜約30kDaの分子量、または約10kDa〜約50kDa、さらにより好ましくは、約10kDa〜約30kDaの分子量を呈するカチオン性またはポリカチオン性ポリマーを代表する。さらに、(非ペプチド性)カチオン性またはポリカチオン性ポリマーは、一般的に、少なくとも1つの−SH−部分を呈し、これは、本明細書で定義されるポリマー担体の他のカチオン性成分または他の成分と縮合するとジスルフィド連結を形成することができる。
【0086】
上記状況において、ポリマー担体の(非ペプチド性)カチオン性成分は、アクリレート、pDMAEMA(ポリ(ジメチルアミノエチルメチルアクリレート))などの修飾アクリレート、キトサン、アジリジン、または2−エチル−2−オキサゾリン(オリゴエチレンイミン、もしくは修飾オリゴエチレンイミンを形成する)、オリゴβアミノエステルもしくはポリアミドアミンを形成する、ビスアクリレートとアミンの反応によって得られるポリマー、またはポリエステル、ポリカーボネートのような他のポリマーなどから選択することができる。これらの(非ペプチド性)カチオン性またはポリカチオン性ポリマーの各分子は、一般的に、少なくとも1つの−SH−部分を呈し、これらの少なくとも1つの−SH−部分は、例えば、イミノチオラン(imonothiolan)、3−チオプロピオン酸を使用する化学修飾、またはシステインもしくは任意のさらなる(修飾)アミノ酸などの−SH−部分含有アミノ酸の導入によって、(非ペプチド性)カチオン性またはポリカチオン性のポリマー中に導入することができる。このような−SH−部分は、好ましくは上記で既に定義した通りである。
【0087】
ポリマー担体との関連で、ジスルフィド架橋によってポリマー担体の基礎を形成するカチオン性成分は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。本発明のポリマー担体が、カチオン性のペプチド、タンパク質、またはポリマー、および任意選択により、本明細書で定義されるさらなる成分の混合物を含み、これらが、本明細書に記載されるように、ジスルフィド結合によって架橋されていることも特に好適である。
【0088】
この脈絡において、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、その多様なポリマー担体により有利には、異なる(短い)カチオン性もしくはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、もしくはポリマー、または他の成分の所望の特性を組み合わせることを可能にする。ポリマー担体は、例えば、核酸の効率的なトランスフェクションの目的のため、アジュバント療法のため、遺伝子療法の目的のため、活性の喪失を伴わない遺伝子ノックダウンまたは他のストラテジーのために、核酸を効率的に凝縮することを可能にし、特に、in vitroでの核酸の異なる細胞株への効率的なトランスフェクションを呈するが、特にin vivoでのトランスフェクションを呈する。ポリマー担体、したがって本発明のポリマー担体カーゴ複合体はさらに、細胞に対して毒性でなく、その核酸カーゴを効率的に放出し、凍結乾燥の間、安定であり、免疫賦活剤またはアジュバントとして適用可能である。ポリマー担体カーゴ複合体は、抗ウイルス性サイトカインIFN−αを誘導することができるのが好ましい。
【0089】
特に、ジスルフィド連結したカチオン性成分によって形成されるポリマー担体は、例えば、ポリマー担体中にカチオン性成分として同じ、または異なるカチオン性のペプチド(複数可)またはポリマー(複数可)を組み込み、任意選択により、他の成分を添加することによって、かなり容易に、かつ速く、そのペプチドまたはポリマーの含量を相当に変更し、したがって、ポリマー担体の生物物理学的/生化学的特性、特にカチオン特性を調節することを可能にする。非常に小さい無毒性のモノマー単位からなるが、ポリマー担体は、長いカチオン性結合配列を形成し、核酸カーゴの強い凝縮、および複合体の安定性をもたらす。細胞質ゾル(cytosole)(例えば、細胞質ゾルのGSH)の還元条件下で、複合体は、急速に分解してその(カチオン性)成分になり、これらはさらに分解される(例えば、オリゴペプチド)。これは、細胞質ゾル内で核酸カーゴの送達(deliberation)を支持する。細胞質ゾル内で小さいオリゴペプチドまたはポリマーに分解するため、高分子オリゴペプチドまたはポリマーについて公知であるような、例えば、高分子ポリアルギニンからの毒性はまったく観察されない。
【0090】
したがって、本発明のポリマー担体カーゴ複合体のポリマー担体は、任意選択により、本明細書で定義されるさらなる成分と一緒に、本明細書で定義されるカチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、または(非ペプチド性)ポリマーから選択される、異なる(短い)カチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、またはポリマーを含むことができる。
【0091】
さらに、上記に定義した本発明のポリマー担体カーゴ複合体のポリマー担体、より好ましくは、ジスルフィド架橋を介してポリマー担体の基礎を形成している、異なる(短い)カチオン性またはポリカチオン性のペプチド、または(非ペプチド性)ポリマーの少なくとも1つは、好ましくはジスルフィド架橋の前に、少なくとも1つのさらなる成分で修飾することができる。あるいは、ポリマー担体自体を、少なくとも1つのさらなる成分で修飾することができる。これはまた、一般的に、ジスルフィド架橋を介して、上記に定義した他の(短い)カチオン性またはポリカチオン性ペプチドと一緒にポリマー担体ジスルフィド(polymeric carrier disulfide)を形成する、少なくとも1つのさらなる成分を任意選択により含むことができる。
【0092】
上記に定義したカチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたは(非ペプチド性)ポリマーの修飾を可能にするために、ポリマー担体の成分のそれぞれは(好ましくはジスルフィド架橋の前に既に)、本明細書で定義されるこのようなさらなる成分の結合を可能にする、少なくとも1つのさらなる機能的部分も含有することができる。このような機能的部分は、例えば、アミド形成(例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミンなど)によって、マイケル付加(例えば、マレインイミド部分、α,β不飽和カルボニルなど)によって、クリック化学(例えば、アジドもしくはアルキン)によって、アルケン/アルキンメタセシス(例えば、アルケン、もしくはアルキン)、イミン形成もしくはヒドロゾン形成(アルデヒド、もしくはケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アミン)、複合体形成反応(アビジン、ビオチン、プロテインG)、またはS
n型置換反応を可能にする成分(例えば、ハロゲンアルカン、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩)、またはさらなる成分の結合に利用することができる他の化学的な部分によって、さらなる成分の結合を可能にする機能性、例えば、本明細書で定義される機能性から選択することができる。
【0093】
特に好適な実施形態によれば、ポリマー担体中に含めることができ、または本発明のポリマー担体カーゴ複合体のポリマー担体の基礎を形成している、異なる(短い)カチオン性もしくはポリカチオン性のペプチドもしくは(非ペプチド性)ポリマーを修飾するのに使用することができるさらなる成分は、アミノ酸成分(AA)であり、これは、例えば、本明細書で定義されるポリマー担体の生物物理学的/生化学的特性を改変することができる。本発明によれば、アミノ酸成分(AA)は、好ましくは、約1〜100の範囲内の、好ましくは、約1〜50の範囲内の、より好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15〜20を含む数から選択され、または前述の値の任意の2つによって形成される範囲から選択することができるいくつかのアミノ酸を含む。この脈絡において、アミノ酸成分(AA)のアミノ酸は、互いに独立して選ぶことができる。例えば、ポリマー担体中に2つ以上の(AA)成分が存在する場合、これらは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0094】
アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含有することができ、またはこの部分によって隣接されている(例えば、末端に)場合があり、この−SH含有部分は、本明細書で定義されるポリマー担体中に、ジスルフィド結合を介してこの成分(AA)を導入することを可能にする。−SH含有部分がシステインを表す特定の場合では、アミノ酸成分(AA)は、−Cys−(AA)−Cys−と読むこともでき、ここで、Cysは、システインを表し、ジスルフィド結合に必要な−SH−部分を提供する。−SH含有部分は、カチオン性成分またはその成分のいずれかについて上記に示した修飾または反応のいずれかを使用して、アミノ酸成分(AA)中に導入することもできる。
【0095】
さらに、例えば、アミノ酸成分(AA)が2つのさらなる成分の間のリンカーとして(例えば、2つのカチオン性ポリマーの間のリンカーとして)使用される場合、アミノ酸部分(AA)は、ジスルフィド結合を介して2つの機能性部に結合することを可能にするために、例えば、式HS−(AA)−SHによって表される形態で、2つの−SH−部分(またはさらに多く)が備わっている場合がある。この場合、1つの−SH部分は、当技術分野で公知の保護基を使用して、第1のステップで保護され、式HS−(AA)−S−保護基のアミノ酸成分(AA)をもたらすことが好ましい。次いで、アミノ酸成分(AA)は、ポリマー担体のさらなる成分に結合することによって、保護されていない−SH部分を介して、第1のジスルフィド結合を形成することができる。次いで、保護された−SH−部分は、一般的に、脱保護され、ポリマー担体のさらなる成分のさらなる遊離−SH−部分に結合されることによって、第2のジスルフィド結合を形成する。
【0096】
あるいは、アミノ酸成分(AA)は、ポリマー担体の他の成分について既に上述した他の機能性が備わっている場合があり、これは、アミノ酸成分(AA)が、ポリマー担体の成分のいずれかに結合することを可能にする。
【0097】
したがって、本発明によれば、アミノ酸成分(AA)は、ジスルフィド連結を使用して、または使用せずにポリマー担体のさらなる成分に結合している場合がある。ジスルフィド連結を使用しない結合は、上述した反応のいずれかによって、好ましくは、本明細書で定義されるアミド(amid)化学を使用して、アミノ酸成分(AA)をポリマー担体の他の成分に結合させることによって達成することができる。望まれる場合、または必要な場合、アミノ酸成分(AA)の他の末端、例えば、N末端またはC末端を、別の成分、例えば、リガンドLにカップリングさせるのに使用することができる。この目的のために、アミノ酸成分(AA)の他の末端は、さらなる機能性、例えば、クリック化学を介して他の成分を添加するのに使用することができる、例えば、アルキン(alkyn)種(上記を参照)を含み、または含むように修飾されていることが好ましい。リガンドが酸不安定結合を介して結合している場合、この結合は、エンドソーム内で切断されることが好ましく、ポリマー担体は、その表面でアミノ酸成分(AA)を提示する。
【0098】
アミノ酸成分(AA)は、上記に定義したポリマー担体のさらなる成分として、例えば、カチオン性成分同士間のリンカーとして、例えば、1つのカチオン性ペプチドとさらなるカチオン性ペプチドの間のリンカーとして、1つのカチオン性ポリマーとさらなるカチオン性ポリマーの間のリンカーとして、1つのカチオン性ペプチドとカチオン性ポリマーの間のリンカーとして(好ましくは、すべて本明細書で定義された)、または例えば、側鎖、SH−部分を介して、もしくは本明細書で定義されるさらなる部分を介して、例えば、アミノ酸成分(AA)をポリマー担体またはその成分に結合させることによって(したがって、アミノ酸成分(AA)は、修飾されていることが好ましい)、ポリマー担体の追加の成分として存在することができる。
【0099】
さらなる特に好適な選択肢によれば、アミノ酸成分(AA)は、ポリマー担体、特に、上記に定義したポリマー担体中のカチオン成分の含量を改変するのに使用することができる。
【0100】
この脈絡において、ポリマー担体中のカチオン成分の含量は、少なくとも10%、20%、もしくは30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、60%、もしくは70%、しかしやはり好ましくは、少なくとも80%、90%、またはさらに、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、最も好ましくは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%であり、または約30%〜100%の範囲内、より好ましくは、約50%〜100%の範囲内、さらにより好ましくは、約70%〜100%の範囲内、例えば、70、80、90、もしくは100%、または前述の値の任意の2つによって形成される範囲内であることが好ましく、ただし、ポリマー担体中のすべての成分の含量は、100%である。
【0101】
本発明の脈絡において、アミノ酸成分(AA)は、以下の選択肢から選択することができる。
【0102】
第1の選択肢によれば、アミノ酸成分(AA)は、芳香族アミノ酸成分(AA)とすることができる。本発明のポリマー担体中に芳香族アミノ酸成分(AA)として芳香族アミノ酸または配列を組み込むことにより、ポリマー担体分子のカチオン性に帯電した配列による、ポリマー担体のリン酸骨格への結合と対照的に、芳香族アミノ酸と核酸カーゴの塩基との相互作用により、ポリマー担体の核酸への異なる(第2の)結合が可能になる。この相互作用は、例えば、インターカレーションによって、副溝結合または主溝結合によって起こり得る。この種類の相互作用は、in vivoで細胞外基質内に主に見出されるアニオン性錯体形成パートナー(例えば、ヘパリン、ヒアルロン酸)による脱凝縮を起こす傾向がなく、また、塩の効果にそれほど感受性でない。
【0103】
この目的のために、芳香族アミノ酸成分(AA)中のアミノ酸は、同じ、または異なる芳香族アミノ酸から選択する、例えば、Trp、Tyr、またはPheから選択することができる。あるいは、アミノ酸(または芳香族アミノ酸成分(AA)全体)は、以下のペプチドの組合せ、
【0104】
【化5】
から選択することができる。このようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15回、またはさらに多くの回数繰り返すことができる。これらのペプチドの組合せは、適当な場合、互いに組み合わせることもできる。
【0105】
さらに、芳香族アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含有することができ、またはこの部分によって隣接されている場合があり、この−SH含有部分は、上記に定義したポリマー担体中のさらなる部分として、例えば、リンカーとして、ジスルフィド結合を介してこの成分を導入することを可能にする。このような−SH含有部分は、本明細書で定義される1つの成分を、本明細書で定義されるさらなる成分にカップリングさせるのに適した、本明細書で定義される任意の部分とすることができる。例として、このような−SH含有部分は、システインとすることができる。さらにまた、例えば、芳香族アミノ酸成分(AA)は、例えば、ペプチドの組合せ、
【0106】
【化6】
から選択することができる。上記それぞれのCysはまた、本明細書で定義される遊離−SH−部分を担持する任意の修飾されたペプチドまたは化学化合物で置換することができる。(配列番号43〜75)。このようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15回、またはさらに多くの回数繰り返すことができる。これらのペプチドの組合せは、適当な場合、互いに組み合わせることもできる。
【0107】
さらに、芳香族アミノ酸成分(AA)は、芳香族アミノ酸成分(AA)中のTrp、Tyr、およびPheのより長い配列の構造ブレイカーとして機能を果たすことができる少なくとも1つのプロリン、好ましくは2つ、3つ、またはそれ以上のプロリンを含有し、または表すことができる。
【0108】
第2の選択肢によれば、アミノ酸成分(AA)は、親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸成分(AA)とすることができる。本発明のポリマー担体中に、親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸成分(AA)として、親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸を組み込むことにより、核酸カーゴへのより柔軟な結合が可能になる。これは、核酸カーゴをより有効に凝縮し、したがって、ヌクレアーゼおよび望まれない脱凝縮に対するより良好な保護をもたらす。これはまた、望まれる場合、または必要な場合、担体全体にわたるカチオン性電荷の低減、およびこの脈絡において、より良好に調整された結合特性を呈する(長い)ポリマー担体の提供を可能にする。
【0109】
この目的のために、親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸成分(AA)中のアミノ酸は、同じ、または異なる親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸から選択する、例えば、Thr、Ser、Asn、またはGlnから選択することができる。あるいは、アミノ酸(または親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸成分(AA)全体)は、以下のペプチドの組合せ、
【0110】
【化7】
から選択することができる。このようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15回、またはさらに多くの回数繰り返すことができる。これらのペプチドの組合せは、適当な場合、互いに組み合わせることもできる。
【0111】
さらに、親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含有することができ、またはこの部分によって隣接されている場合があり、この−SH含有部分は、上記一般式(I)のさらなる部分として、例えば、リンカーとして、ジスルフィド結合を介してこの成分を導入することを可能にする。このような−SH含有部分は、本明細書で定義される1つの成分を、本明細書で定義されるさらなる成分にカップリングさせるのに適した、本明細書で定義される任意の部分とすることができる。例として、このような−SH含有部分は、システインとすることができる。さらにまた、例えば、親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸成分(AA)は、例えば、ペプチドの組合せ、
【0112】
【化8】
から選択することができる。上記それぞれのCysはまた、本明細書で定義される遊離−SH−部分を担持する任意の修飾されたペプチドまたは化学化合物で置換することができる。(配列番号:112〜153)。このようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15回、またはさらに多くの回数繰り返すことができる。これらのペプチドの組合せは、適当な場合、互いに組み合わせることもできる。
【0113】
さらに、親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸成分(AA)は、親水性の(かつ、好ましくは帯電していない極性の)アミノ酸成分(AA)中のSer、Thr、およびAsnのより長い配列の構造ブレイカーとして機能を果たすことができる少なくとも1つのプロリン、好ましくは2つ、3つ、またはそれ以上のプロリンを含有することができる。
【0114】
第3の選択肢によれば、アミノ酸成分(AA)は、親油性(lipohilic)アミノ酸成分(AA)とすることができる。本発明のポリマー担体中に親油性アミノ酸成分(AA)として親油性のアミノ酸または配列を組み込むことにより、核酸カーゴおよび/または複合体を形成する場合、ポリマー担体とその核酸カーゴのより強い凝縮が可能になる。これは特に、ポリマー担体の1つまたは複数のポリマー鎖、特に、親油性アミノ酸成分(AA)の親油性セクションと核酸カーゴとの相互作用によるものである。この相互作用は、好ましくは、ポリマー担体とその核酸カーゴの間の複合体に追加の安定性を加えることになる。この安定化は、異なるポリマー鎖同士間の非共有結合性架橋のようなものと何らかの形で匹敵し得る。特に水性環境において、この相互作用は、一般的に強く、著しい効果をもたらす。
【0115】
この目的のために、親油性アミノ酸成分(AA)中のアミノ酸は、同じ、または異なる親油性アミノ酸から選択する、例えば、Leu、Val、Ile、Ala、Metから選択することができる。あるいは、アミノ酸AA(または親油性アミノ酸成分(AA)全体)は、以下のペプチドの組合せ、
【0116】
【化9】
から選択することができる。このようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15回、またはさらに多くの回数繰り返すことができる。これらのペプチドの組合せは、適当な場合、互いに組み合わせることもできる。
【0117】
さらに、親油性アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含有することができ、またはこの部分によって隣接されている場合があり、この−SH含有部分は、上記ポリマー担体のさらなる部分として、例えば、リンカーとして、ジスルフィド結合を介してこの成分を導入することを可能にする。このような−SH含有部分は、本明細書で定義される1つの成分を、本明細書で定義されるさらなる成分にカップリングさせるのに適した、本明細書で定義される任意の部分とすることができる。例として、このような−SH含有部分は、システインとすることができる。さらにまた、例えば、親油性アミノ酸成分(AA)は、例えば、ペプチドの組合せ、
【0118】
【化10】
から選択することができる。上記それぞれのCysはまた、本明細書で定義される遊離−SH−部分を担持する任意の修飾されたペプチドまたは化学化合物で置換することができる。(配列番号189〜229)。このようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15回、またはさらに多くの回数繰り返すことができる。これらのペプチドの組合せは、適当な場合、互いに組み合わせることもできる。
【0119】
さらに、親油性アミノ酸成分(AA)は、親油性アミノ酸成分(AA)中のLeu、Val、Ile、Ala、およびMetのより長い配列の構造ブレイカーとして機能を果たすことができる少なくとも1つのプロリン、好ましくは2つ、3つ、またはそれ以上のプロリンを含有することができる。
【0120】
最後に、第4の選択肢によれば、アミノ酸成分(AA)は、弱塩基性アミノ酸成分(AA)とすることができる。本発明のポリマー担体中に弱塩基性アミノ酸成分(AA)として弱塩基性のアミノ酸または配列を組み込むと、プロトンスポンジとして機能を果たすことができ、エンドソームエスケープ(エンドソーム放出とも呼ばれる)(プロトンスポンジ効果)を促進する。このような弱塩基性アミノ酸成分(AA)を組み込むと、好ましくは、トランスフェクション効率が増強される。
【0121】
この目的のために、弱塩基性アミノ酸成分(AA)中のアミノ酸は、同じ、または異なる弱いアミノ酸から選択する、例えば、ヒスチジンまたはアスパルテート(アスパラギン酸)から選択することができる。あるいは、弱塩基性アミノ酸(または弱塩基性アミノ酸成分(AA)全体)は、以下のペプチドの組合せ、
【0122】
【化11】
から選択することができる。このようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15回、またはさらに多くの回数繰り返すことができる。これらのペプチドの組合せは、適当な場合、互いに組み合わせることもできる。
【0123】
さらに、弱塩基性アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含有することができ、またはこの部分によって隣接されている場合があり、この−SH含有部分は、上記一般式(I)のさらなる部分として、例えば、リンカーとして、ジスルフィド結合を介してこの成分を導入することを可能にする。このような−SH含有部分は、本明細書で定義される1つの成分を、本明細書で定義されるさらなる成分にカップリングさせるのに適した、本明細書で定義される任意の部分とすることができる。例として、このような−SH含有部分は、システインとすることができる。さらにまた、例えば、弱塩基性アミノ酸成分(AA)は、例えば、ペプチドの組合せ、
【0124】
【化12】
から選択することができる。上記それぞれのCysはまた、本明細書で定義される遊離−SH−部分を担持する任意の修飾されたペプチドまたは化学化合物で置換することができる。(配列番号242〜255)。このようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15回、またはさらに多くの回数繰り返すことができる。これらのペプチドの組合せは、適当な場合、互いに組み合わせることもできる。
【0125】
さらに、弱塩基性アミノ酸成分(AA)は、弱塩基性アミノ酸成分(AA)中のヒスチジンまたはアスパルテート(アスパラギン酸)のより長い配列の構造ブレイカーとして機能を果たすことができる少なくとも1つのプロリン、好ましくは2つ、3つ、またはそれ以上のプロリンを含有することができる。
【0126】
第5の選択肢によれば、アミノ酸成分(AA)は、シグナルペプチドまたはシグナル配列、局在化シグナルもしくは配列、核局在化シグナルもしくは配列(NLS)、抗体、細胞透過性ペプチド(例えば、TAT)などとすることができる。このようなアミノ酸成分(AA)は、(可逆性の)ジスルフィド結合を介して、ポリマー担体、またはポリマー担体の別の成分に結合していることが好ましい。この脈絡において、シグナルペプチドまたはシグナル配列、局在化シグナルもしくは配列、核局在化シグナルもしくは配列(NLS)、抗体、細胞透過性ペプチド(例えば、TAT)などは、少なくとも1つの−SH−部分をさらに含む。この脈絡において、シグナルペプチド、局在化シグナルもしくは配列、または核局在化シグナルもしくは配列(NLS)は、特定の標的細胞(例えば、肝実質細胞または抗原提示細胞)に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を向けるのに使用することができ、好ましくは、特定の標的、例えば、細胞内、核内、エンドソームコンパートメント、ミトコンドリアの基質についての配列、原形質膜についての局在化配列、ゴルジ体、核、細胞質、および細胞骨格(cytosceleton)についての局在化配列内などへのポリマー担体のトランスローカリゼーション(translocalization)を可能にする。このようなシグナルペプチド、局在化シグナルもしくは配列、または核局在化シグナルは、本明細書で定義される核酸のいずれか、好ましくは、RNAまたはDNA、より好ましくは、shRNAまたはpDNAを、例えば、核内に輸送するのに使用することができる。それに限定されることなく、このようなシグナルペプチド、局在化シグナルもしくは配列、または核局在化シグナルは、例えば、小胞体についての局在化配列を含むことができる。特定の局在化シグナルもしくは配列、または核局在化シグナルとして、例えば、KDEL(配列番号256)、DDEL(配列番号257)、DEEL(配列番号258)、QEDL(配列番号259)、RDEL(配列番号260)、およびGQNLSTSN(配列番号261)、PKKKRKV(配列番号262)、PQKKIKS(配列番号263)、QPKKP(配列番号264)、RKKR(配列番号265)、RKKRRQRRRAHQ(配列番号266)、RQARRNRRRRWRERQR(配列番号267)、MPLTRRRPAASQALAPPTP(配列番号268)、GAALTILV(配列番号269)、およびGAALTLLG(配列番号270)を含めた核局在化配列、MDDQRDLISNNEQLP(配列番号271)を含めたエンドソームコンパートメントについての局在化配列、MLFNLRXXLNNAAFRHGHNFMVRNFRCGQPLX(配列番号272)を含めたミトコンドリアの基質についての局在化配列、原形質膜についての局在化配列:GCVCSSNP(配列番号273)、GQTVTTPL(配列番号274)、GQELSQHE(配列番号275)、GNSPSYNP(配列番号276)、GVSGSKGQ(配列番号277)、GQTITTPL(配列番号278)、GQTLTTPL(配列番号279)、GQIFSRSA(配列番号280)、GQIHGLSP(配列番号281)、GARASVLS(配列番号282)、およびGCTLSAEE(配列番号283)、GAQVSSQK(配列番号284)、およびGAQLSRNT(配列番号285)を含めた小胞体および核についての局在化配列、GNAAAAKK(配列番号286)を含めたゴルジ体、核、細胞質、および細胞骨格についての局在化配列、GNEASYPL(配列番号287)を含めた細胞質および細胞骨格についての局在化配列、GSSKSKPK(配列番号288)を含めた原形質膜および細胞骨格についての局在化配列などを挙げることができる。本明細書で定義される分泌性シグナルペプチド配列の例として、それに限定されることなく、古典的または非古典的MHC分子のシグナル配列(例えば、MHC I分子およびMHC II分子の、例えば、MHCクラスI分子HLA−A
*0201のシグナル配列)、本明細書で定義されるサイトカインまたは免疫グロブリンのシグナル配列、本明細書で定義される免疫グロブリンまたは抗体のインバリアント鎖のシグナル配列、Lamp1、タパシン、Erp57、カルレティキュリン、カルネキシン、およびさらなる膜関連タンパク質の、または小胞体(ER)もしくはエンドソーム−リソソームコンパートメントに付随するタンパク質のシグナル配列が挙げられる。特に好ましくは、MHCクラスI分子HLA−A
*0201のシグナル配列を、本発明によって使用することができる。このような追加の成分は、例えば、カチオン性ポリマー、または本明細書で定義されるポリマー担体の任意の他の成分に結合することができる。このシグナルペプチド、局在化シグナルもしくは配列、または核局在化シグナルもしくは配列(NLS)は、(可逆性の)ジスルフィド結合を介してポリマー担体、またはポリマー担体の別の成分に結合していることが好ましい。この目的のために、(AA)成分は、本明細書で定義される少なくとも1つの−SH部分をさらに含む。ポリマー担体の成分のいずれかへの結合は、好ましくは、ポリマー担体の成分のいずれかの側鎖を介した酸不安定結合を使用しても達成することができ、酸不安定結合は、より低いpH値、例えば、本明細書で定義される生理的pH値で追加の成分を脱離または放出することを可能にする。
【0127】
さらに、別の選択肢によれば、アミノ酸成分(AA)は、機能的なペプチドまたはタンパク質とすることができ、これは、それなりにポリマー担体の機能性を調節することができる。アミノ酸成分(AA)としてのこのような機能的なペプチドまたはタンパク質は、本明細書で定義される、例えば、治療的に活性なタンパク質として以下に定義される任意のペプチドまたはタンパク質を含むことが好ましい。一選択肢によれば、このようなさらなる機能的なペプチドまたはタンパク質は、輸送のためのいわゆる細胞透過性ペプチド(CPP)またはカチオン性ペプチドを含むことができる。特に好適なのはCPPであり、これは、エンドソーム内のpH媒介コンフォメーション変化を誘導し、リポソームの脂質層内に挿入することによって、エンドソームからのポリマー担体(核酸との複合体中の)の放出を改善する。輸送のためのこれらの細胞透過性ペプチド(CPP)またはカチオン性ペプチドとして、それに限定されることなく、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン、またはスペルミジン、オリゴL−リシンもしくはポリL−リシン(PLL)、塩基性ポリペプチド、オリゴアルギニンもしくはポリアルギニン、細胞透過性ペプチド(CPP)、トランスポータンなどのキメラCPP、またはMPGペプチド、HIV結合ペプチド、Tat、HIV−1 Tat(HIV)、Tat誘導ペプチド、ペネトラチンファミリーのメンバー、例えば、ペネトラチン、アンテナペディア誘導ペプチド(特にDrosophila antennapedia由来)、pAntp、pIslなど、抗菌剤由来CPP、例えば、ブフォリン−2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、MAP、KALA、PpTG20、ロリゴメレ、FGF、ラクトフェリン、ヒストン、VP22由来ペプチドもしくはVP22類似体ペプチド、HSV、VP22(Herpes simplex)、MAP、KALA、またはタンパク質トランスダクションドメイン(PTD)、PpT620、プロリンリッチペプチド、アルギニンリッチペプチド、リシンリッチペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、カルシトニンペプチド(複数可)などを挙げることができる。このようなアミノ酸成分(AA)はまた、本明細書で定義されるポリマー担体の任意の成分に結合することができる。これは、(可逆性の)ジスルフィド結合を介して、ポリマー担体、またはポリマー担体の別の成分に結合していることが好ましい。上記目的のために、アミノ酸成分(AA)は、本明細書で定義される少なくとも1つの−SH部分を含むことが好ましい。ポリマー担体の成分のいずれかへの結合は、好ましくは、ポリマー担体の成分のいずれかの側鎖を介したSH−部分または酸不安定結合を使用しても達成することができ、これは、より低いpH値、例えば、本明細書で定義される生理的pH値で追加の成分を脱離または放出することを可能にする。
【0128】
最後の選択肢によれば、アミノ酸成分(AA)は、細胞内で任意の好都合な機能を実行することができる任意のペプチドまたはタンパク質からなる場合がある。特に好適なのは、治療的に活性なタンパク質もしくはペプチドから、抗原、例えば、腫瘍抗原、病原性抗原(動物抗原、ウイルス抗原、原虫抗原、細菌性抗原、アレルギー抗原)、自己免疫抗原、もしくはさらなる抗原から、アレルゲンから、抗体から、免疫賦活性のタンパク質もしくはペプチドから、抗原特異的T細胞受容体から、またはコーディング核酸について以下に定義される特定の(治療的)用途に適した任意の他のタンパク質もしくはペプチドから選択されるペプチドまたはタンパク質である。特に好適なのは、本明細書で定義される抗原に由来するペプチドエピトープである。
【0129】
ポリマー担体は、上述したカチオン性もしくはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、もしくはポリマー、またはさらなる成分、例えば、(AA)のうちの少なくとも1つを含むことができ、ここで上記選択肢のいずれも、互いに組み合わせることができ、これらの−SH−部分を介した重合縮合反応でこれらを重合することによって形成することができる。
【0130】
別の態様によれば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体のポリマー担体、あるいはこのポリマー担体の、例えば、上述したカチオン性もしくはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、もしくはポリマー、またはさらなる成分、例えば、(AA)の1つの成分は、リガンド、好ましくは、炭水化物、より好ましくは、糖、さらにより好ましくは、マンノースでさらに修飾することができる。このリガンドは、(可逆性の)ジスルフィド結合を介して、またはマイケル付加を介して、ポリマー担体またはポリマー担体の成分に結合していることが好ましい。リガンドがジスルフィド結合によって結合している場合、このリガンドは、少なくとも1つの−SH−部分をさらに含む。これらのリガンドは、特定の標的細胞(例えば、肝実質細胞または抗原提示細胞)に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体に向けるのに使用することができる。この脈絡において、特にワクチン接種またはアジュバントの目的にとって、樹状細胞が標的である場合、マンノースがリガンドとして特に好適である。
【0131】
本発明のさらなる態様によれば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、−SH部分を含まない、上記に定義した(AA)成分を含むことができる。これらの(AA)成分は、少なくとも1つの核酸分子の複合体形成反応の前、または間に添加することができる。それによって、(AA)成分(複数可)は、(共有結合性の)重合によってポリマー担体自体中に(AA)成分(複数可)を含めることなく、本発明のポリマー担体カーゴ複合体中に(非共有結合的に)組み込まれる。
【0132】
特定の一実施形態によれば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体全体は、第1ステップで、上述したカチオン性もしくはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、もしくはポリマー、またはさらなる成分、例えば、(AA)を(これらの少なくとも1つを)、これらの−SH−部分を介して重合縮合し、第2ステップで、核酸をこのようなポリマー担体と複合体形成することによって形成することができる。したがって、ポリマー担体は、少なくとも1つまたはさらに多くの数の同じ、または異なる上記に定義したカチオン性もしくはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、もしくはポリマー、またはさらなる成分、例えば、(AA)を含有することができ、この数は、上記範囲によって決められることが好ましい。
【0133】
代替の特定の一実施形態によれば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、核酸カーゴを(in situ調製された)ポリマー担体と複合体形成するのと同時に、上述したカチオン性もしくはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、もしくはポリマー、またはさらなる成分、例えば、(AA)の少なくとも1つの、これらの−SH−部分を介した重合縮合を実施することによって形成される。同様に、ポリマー担体は、したがってこの場合でも、少なくとも1つまたはさらに多くの数の同じ、または異なる上記に定義したカチオン性もしくはポリカチオン性のペプチド、タンパク質、もしくはポリマー、またはさらなる成分、例えば、(AA)を含有することができ、この数は、上記範囲によって決められることが好ましい。
【0134】
本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、カーゴとして、少なくとも1つの核酸(分子)をさらに含む。本発明の脈絡において、このような核酸分子は、例えば、任意の(一本鎖もしくは二本鎖)DNA、好ましくは、それに限定されることなく、例えば、ゲノムDNA、一本鎖DNA分子、二本鎖DNA分子、コーディングDNA、DNAプライマー、DNAプローブ、免疫賦活性DNA、(短い)DNAオリゴヌクレオチド((短い)オリゴデオキシリボヌクレオチド(oligodesoxyribonucleotide))から選択される任意の適当な核酸とすることができ、または例えば、任意のPNA(ペプチド核酸)から選択することができ、または例えば、任意の(一本鎖もしくは二本鎖)RNA、好ましくは、それに限定されることなく、(短い)RNAオリゴヌクレオチド((短い)オリゴリボヌクレオチド)、コーディングRNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、免疫賦活性RNA、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、マイクロRNA、核内低分子RNA(snRNA)、小ヘアピン(sh)RNA、もしくはリボスイッチ、リボザイム、またはアプタマーなどから選択することができる。本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、またはウイルスRNA(vRNA)とすることもできる。本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、RNAであることが好ましい。より好ましくは、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、(直鎖状の)一本鎖RNA、さらにより好ましくは、mRNAまたは免疫賦活性RNAである。本発明の脈絡において、mRNAは、一般的に、いくつかの構造要素、例えば、任意選択の5’−CAP構造、任意選択の5’−UTR領域、後にコード領域が続く、上流に位置したリボソーム結合部位、後にポリA末端(および/またはポリC末端)が続く場合のある、任意選択の3’−UTR領域から構成されるRNAである。mRNAは、モノシストロン性、ジシストロン性、またはさらにはマルチシストロン性のRNA、すなわち、1つ、2つ、またはそれ以上のタンパク質またはペプチドのコード配列を担持するRNAとして存在し得る。ジシストロン性、またはさらにはマルチシストロン性のmRNA中のこのようなコード配列は、例えば、本明細書で定義される少なくとも1つのIRES配列によって離されている場合がある。
【0135】
さらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸は、一本鎖もしくは二本鎖の核酸(分子)(これらも2本の一本鎖の核酸(複数可)(分子)の非共有結合性会合により核酸(分子)とみなすことができる)、または少なくとも部分的に自己相補的である部分的に二本鎖もしくは部分的に一本鎖の核酸(これらの部分的に二本鎖または部分的に一本鎖の核酸分子はともに、一般的に、1本のより長い一本鎖の核酸分子と1本のより短い一本鎖の核酸分子によって、もしくは長さがほぼ等しい2本の一本鎖核酸分子によって形成され、ここで、一方の一本鎖核酸分子は、他方の一本鎖核酸分子と部分的に相補性であり、したがって、両方は、この領域で二本鎖の核酸分子、すなわち、部分的に二本鎖もしくは部分的に一本鎖の核酸(分子)を形成する)とすることができる。好ましくは、核酸(分子)は、一本鎖核酸分子とすることができる。さらに、核酸(分子)は、環状または直鎖状の核酸分子、好ましくは直鎖状核酸分子とすることができる。
【0136】
一選択肢によれば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、コーディング核酸、例えば、DNAまたはRNAとすることができる。このようなコーディングDNAまたはコーディングRNAは、本明細書で定義される任意のDNAまたはRNAとすることができる。好ましくは、このようなコーディングDNAまたはコーディングRNAは、一本鎖もしくは二本鎖のDNAもしくはRNA、より好ましくは一本鎖のDNAもしくはRNA、および/または環状もしくは直鎖状のDNAもしくはRNA、より好ましくは直鎖状のDNAもしくはRNAとすることができる。さらにより好ましくは、コーディングDNAまたはコーディングRNAは、(直鎖状の)一本鎖のDNAまたはRNAとすることができる。最も好ましくは、本発明による核酸分子は、((直鎖状の)一本鎖の)メッセンジャーRNA(mRNA)とすることができる。このようなmRNAは、モノシストロン性、ジシストロン性、またはさらにはマルチシストロン性のRNA、すなわち、1つ、2つ、またはそれ以上のタンパク質またはペプチドのコード配列を担持するRNAとして存在し得る。ジシストロン性、またはさらにはマルチシストロン性のmRNA中のこのようなコード配列は、例えば、本明細書で定義される少なくとも1つのIRES配列によって離されている場合がある。
【0137】
コーディング核酸:
本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、それに制限されることなく、例えば、アジュバントタンパク質を含めた治療的に活性なタンパク質もしくはペプチドから、抗原、例えば、腫瘍抗原、病原性抗原(例えば、動物抗原、ウイルス抗原、原虫抗原、細菌性抗原から選択される)、アレルギー抗原、自己免疫抗原、もしくはさらなる抗原から、アレルゲンから、抗体から、免疫賦活性のタンパク質もしくはペプチドから、抗原特異的T細胞受容体から、または特定の(治療的)用途に適した任意の他のタンパク質もしくはペプチドから選択することができるタンパク質またはペプチドをコードすることができ、ここで、コーディング核酸は、細胞、組織、または生物内に輸送することができ、タンパク質は、この細胞、組織、または生物内で引き続いて発現され得る。
【0138】
a)治療的に活性なタンパク質
本発明の脈絡において、治療的に活性なタンパク質またはペプチドは、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされ得る。治療的に活性なタンパク質は、治癒に対する効果を有し、好ましくは本明細書で定義される疾患を予防的に防ぎ、もしくは治療的に処置するタンパク質として本明細書で定義され、または、個体が必要とするタンパク質である。これらは、先行技術から当業者に公知の、任意の天然に存在し、または合成的に設計された組換えタンパク質または単離タンパク質から選択することができる。それに制限されることなく、治療的に活性なタンパク質は、細胞内でシグナル伝達を刺激または阻害することができるタンパク質、例えば、サイトカイン、リンホカイン、モノカイン、増殖因子、受容体、シグナル伝達分子、転写因子など;抗凝固剤;抗トロンビン;抗アレルギータンパク質;アポトーシス因子またはアポトーシス関連タンパク質、治療的な活性酵素、および任意の後天性疾患または任意の遺伝性疾患と関連がある任意のタンパク質を含むことができる。
【0139】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされ得る治療的に活性なタンパク質は、アジュバントタンパク質とすることもできる。この脈絡において、アジュバントタンパク質は、本明細書で定義される先天性免疫応答を誘発することができる任意のタンパク質として理解されることが好ましい。好ましくは、このような先天性免疫応答は、パターン認識受容体、例えば、ヒトTLR1〜TLR10またはマウストール様受容体(TLR)TLR1〜TLR13から選択されるトール様受容体を含めたトール様受容体ファミリーから選択される受容体などの活性化を含む。より好ましくは、アジュバントタンパク質は、ヒトアジュバントタンパク質から、またはそれに限定されることなく、細菌タンパク質、原虫タンパク質、ウイルスタンパク質、または真菌タンパク質からなる群から選択される病原性アジュバントタンパク質、動物タンパク質から、特に、細菌性アジュバントタンパク質から選択される。さらに、アジュバント効果に関与するヒトタンパク質(例えば、パターン認識受容体のリガンド、パターン認識受容体、シグナル伝達経路のタンパク質、転写因子、またはサイトカイン)をコードする核酸も、同様に使用することができる。
【0140】
b)抗原
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、あるいは抗原をコードすることができる。本発明によれば、用語「抗原」は、免疫系によって認識され、例えば、適応免疫応答の一部として抗体または抗原特異的T細胞を形成することによって、抗原特異的免疫応答を誘因することができる物質を指す。この脈絡において、適応免疫応答の第1ステップは、抗原提示細胞によるナイーブな抗原特異的T細胞の活性化である。これは、ナイーブT細胞が常に通過しているリンパ組織および臓器内で起こる。抗原提示細胞として機能を果たすことができる3つの細胞型は、樹状細胞、マクロファージ、およびB細胞である。これらの細胞のそれぞれは、免疫応答の誘発において独特な機能を有する。組織樹状細胞は、食作用およびマクロピノサイトーシスによって抗原を吸収し、感染によって刺激されることによって局所的なリンパ組織へと遊走し、ここでこれらは、分化して成熟した樹状細胞になる。マクロファージは、細菌などの粒子抗原を摂取し、感染性病原体(infectious agent)によって誘導されてMHCクラスII分子を発現する。B細胞の、これらの受容体を介して可溶性タンパク質抗原に結合および内部移行するユニークな能力は、T細胞を誘導するのに重要となり得る。MHC分子上で抗原を提示することによって、T細胞が活性化され、これにより、T細胞の増殖およびアームド(armed)エフェクターT細胞への分化が誘導される。エフェクターT細胞の最も重要な機能は、一緒に細胞媒介免疫を構成するCD8
+細胞毒性T細胞による感染細胞の殺傷、およびTH1細胞によるマクロファージの活性化、ならびに異なるクラスの抗体を産生し、したがって体液性免疫応答を推進するための、TH2細胞およびTH1細胞の両方によるB細胞の活性化である。T細胞は、そのT細胞受容体によって抗原を認識し、T細胞受容体は、直接に抗原を認識および結合しないが、代わりに、例えば、他の細胞の表面上でMHC分子に結合している病原体のタンパク質抗原の短いペプチド断片を認識する。
【0141】
T細胞は、異なるエフェクター機能を有する2つの主要なクラスに分類される。この2つのクラスは、細胞表面タンパク質CD4およびCD8の発現によって区別される。これらの2つのタイプのT細胞は、これらが認識するMHC分子のクラスが異なる。2つのクラスのMHC分子、すなわち、MHCクラスI分子MHCクラスII分子が存在し、これらは、その構造および体の組織における発現パターンが異なる。CD4
+T細胞は、MHCクラスII分子に結合し、CD8
+T細胞は、MHCクラスI分子に結合する。MHCクラスI分子およびMHCクラスII分子は、細胞の中で独特に分布し、この分布は、これらの分子を認識するT細胞の異なるエフェクター機能を反映する。MHCクラスI分子は、CD8
+T細胞に病原体、一般的にウイルスに由来するペプチドを提示し、CD8
+T細胞は、分化して細胞毒性T細胞になり、この細胞毒性T細胞は、これらが特異的に認識する任意の細胞を殺すように特殊化されている。ほとんどすべての細胞がMHCクラスI分子を発現するが、構成的発現のレベルは、細胞型によって変化する。しかし、ウイルスに由来する病原性ペプチドのみが、MHCクラスI分子によって提示されるのではなく、腫瘍抗原のような自己抗原もこれらによって提示される。MHCクラスI分子は、細胞質ゾル内で分解され、小胞体内で輸送されるタンパク質由来のペプチドに結合する。それによって、ウイルスまたは他の細胞質ゾル病原体(cytosolic pathogen)に感染した細胞の表面上のMHCクラスI分子は、これらの病原体に由来するペプチドを展示する。MHCクラスI:ペプチド複合体を認識するCD8
+T細胞は、異質なペプチドを展示する任意の細胞を殺すように特殊化されており、したがって、ウイルスおよび他の細胞質ゾル病原体に感染した細胞のボディを取り除く。MHCクラスII分子を認識するCD4
+T細胞(CD4
+ヘルパーT細胞)の主な機能は、免疫系の他のエフェクター細胞を活性化することである。したがって、MHCクラスII分子は、通常、Bリンパ球、樹状細胞、およびマクロファージ、免疫応答に参加する細胞上に見出され、他の組織細胞上には見出されない。例えば、マクロファージは、活性化されてこれらが宿す小胞内病原体を殺し、B細胞は、活性化されて異質な分子に対する免疫グロブリンを分泌する。MHCクラスII分子は、小胞体内のペプチドに結合することが妨げられ、したがって、MHCクラスII分子は、エンドソーム内で分解されるタンパク質に由来するペプチドに結合する。これらは、マクロファージの小胞系に入った病原体、または未成熟樹状細胞もしくはB細胞の免疫グロブリン受容体によって内部移行された抗原に由来するペプチドを捕捉することができる。マクロファージおよび樹状細胞小胞の内部に大量に蓄積する病原体は、TH1細胞の分化を刺激する傾向があり、一方、細胞外抗原は、TH2細胞の産生を刺激する傾向がある。TH1細胞は、マクロファージの殺菌性を活性化し、食細胞による摂取のために細胞外病原体をオプソニン化するのに非常に有効なIgG抗体を作るようにB細胞を誘導し、一方、TH2細胞は、ナイーブB細胞を活性化してIgMを分泌させることによって体液応答を開始し、弱くオプソニン化する抗体(antibodes)、例えば、IgG1およびIgG3(マウス)、ならびにIgG2およびIgG4(ヒト)、ならびにIgAおよびIgE(マウスおよびヒト)などの産生を誘導する。
【0142】
本発明の脈絡において、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされる抗原は、一般的に、上記定義に入る任意の抗原、抗原エピトープ、または抗原ペプチド、より好ましくは、タンパク質抗原およびペプチド抗原、例えば、腫瘍抗原、アレルギー抗原、自己免疫性自己抗原(auto−immune self−antigen)、病原性抗原などを含む。特に、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされる抗原は、細胞の外側で生成される抗原、より一般的には、宿主生物体(例えば、ヒト)自体に由来するのではなく(すなわち、非自己抗原)、宿主生物体の外側の宿主抗原に由来する抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原、原生動物(protozoological)抗原、動物抗原、アレルギー抗原などとすることができる。アレルギー抗原(allergenic antigen)(アレルギー抗原((allergy antigen))は、一般的に、ヒトにおいてアレルギーを引き起こす抗原であり、ヒトまたは他の源に由来し得る。さらに、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされる抗原は、その上、細胞、組織、または体の内部で生成される抗原とすることができる。このような抗原には、宿主生物体(例えば、ヒト)自体に由来する抗原、例えば、自己免疫性自己抗原などの腫瘍抗原、自己抗原(self−antigen)または自己抗原(auto−antigen)が含まれ、しかし、宿主生物体の外側の宿主細胞に最初に由来したが、例えば、(プロテアーゼ)分解、代謝などによって体、組織、または細胞の内部で断片化または分解される、本明細書で定義される(非自己)抗原も含まれる。
【0143】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされる抗原の1つのクラスは、腫瘍抗原を含む。「腫瘍抗原」は、(腫瘍)細胞の表面上に位置していることが好ましい。腫瘍抗原は、正常細胞と比較して腫瘍細胞内で過剰発現されるタンパク質からも選択することができる。さらに、腫瘍抗原には、それ自体(または最初にそれ自体)縮退していない(not degenerated)(縮退していなかった)が、想定される腫瘍に関連する細胞内で発現される抗原も含まれる。腫瘍を供給する血管またはその(再)形成と関連がある抗原、特に、血管新生と関連する抗原、例えば、VEGF、bFGFなどの増殖因子も、本明細書に含められる。腫瘍と関連がある抗原には、一般的に腫瘍が根付いている細胞または組織に由来する抗原がさらに含まれる。さらなる、いくつかの物質(通常タンパク質またはペプチド)は、がん疾患を罹患している(知っていて、または知らないで)患者において発現され、これらは、前記患者の体液中で濃度が増大して発生する。これらの物質も、「腫瘍抗原」と呼ばれるが、これらは、免疫応答を誘導する物質の厳密な意味において抗原でない。腫瘍抗原のクラスは、腫瘍特異的抗原(TSA)と腫瘍関連抗原(TAA)にさらに分けることができる。TSAは、腫瘍細胞によってのみ提示され得、決して正常な「健康な」細胞によって提示され得ない。これらは、一般的に、腫瘍特異的突然変異から生じる。TAAは、より一般的であり、通常、腫瘍細胞および健康細胞の両方によって提示される。これらの抗原は、認識され、抗原提示細胞は、細胞毒性T細胞によって破壊され得る。さらに、腫瘍抗原は、例えば、変異型受容体の形態で腫瘍の表面に存在する場合もある。この場合、これらは、抗体によって認識され得る。特定の好適な腫瘍抗原は、5T4、707−AP、9D7、AFP、AlbZIP HPG1、α−5−β−1−インテグリン、α−5−β−6−インテグリン、α−アクチニン−4/m、α−メチルアシル補酵素Aラセマーゼ、ART−4、ARTC1/m、B7H4、BAGE−1、BCL−2、bcr/abl、β−カテニン/m、BING−4、BRCA1/m、BRCA2/m、CA15−3/CA27−29、CA19−9、CA72−4、CA125、カルレティキュリン、CAMEL、CASP−8/m、カテプシンB、カテプシンL、CD19、CD20、CD22、CD25、CDE30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CEA、CLCA2、CML28、CML66、COA−1/m、コアクトシン様タンパク質、コラーゲン(collage)XXIII、COX−2、CT−9/BRD6、Cten、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp−B、CYPB1、DAM−10、DAM−6、DEK−CAN、EFTUD2/m、EGFR、ELF2/m、EMMPRIN、EpCam、EphA2、EphA3、ErbB3、ETV6−AML1、EZH2、FGF−5、FN、Frau−1、G250、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE7b、GAGE−8、GDEP、GnT−V、gp100、GPC3、GPNMB/m、HAGE、HAST−2、ヘプシン、Her2/neu、HERV−K−MEL、HLA−A
*0201−R17I、HLA−A11/m、HLA−A2/m、HNE、ホメオボックスNKX3.1、HOM−TES−14/SCP−1、HOM−TES−85、HPV−E6、HPV−E7、HSP70−2M、HST−2、hTERT、iCE、IGF−1R、IL−13Ra2、IL−2R、IL−5、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン−2、カリクレイン−4、Ki67、KIAA0205、KIAA0205/m、KK−LC−1、K−Ras/m、LAGE−A1、LDLR−FUT、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−B1、MAGE−B2、MAGE−B3、MAGE−B4、MAGE−B5、MAGE−B6、MAGE−B10、MAGE−B16、MAGE−B17、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−D1、MAGE−D2、MAGE−D4、MAGE−E1、MAGE−E2、MAGE−F1、MAGE−H1、MAGEL2、マンマグロビンA、MART−1/メラン−A、MART−2、MART−2/m、基質タンパク質22、MC1R、M−CSF、ME1/m、メソテリン、MG50/PXDN、MMP11、MN/CA IX−抗原、MRP−3、MUC−1、MUC−2、MUM−1/m、MUM−2/m、MUM−3/m、ミオシンクラスI/m、NA88−A、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ−V、Neo−PAP、Neo−PAP/m、NFYC/m、NGEP、NMP22、NPM/ALK、N−Ras/m、NSE、NY−ESO−1、NY−ESO−B、OA1、OFA−iLRP、OGT、OGT/m、OS−9、OS−9/m、オステオカルシン、オステオポンチン、p15、p190マイナーbcr−abl、p53、p53/m、PAGE−4、PAI−1、PAI−2、PART−1、PATE、PDEF、Pim−1−キナーゼ、Pin−1、Pml/PARα、POTE、PRAME、PRDX5/m、プロステイン、プロテイナーゼ−3、PSA、PSCA、PSGR、PSM、PSMA、PTPRK/m、RAGE−1、RBAF600/m、RHAMM/CD168、RU1、RU2、S−100、SAGE、SART−1、SART−2、SART−3、SCC、SIRT2/m、Sp17、SSX−1、SSX−2/HOM−MEL−40、SSX−4、STAMP−1、STEAP、サバイビン、サバイビン−2B、SYT−SSX−1、SYT−SSX−2、TA−90、TAG−72、TARP、TEL−AML1、TGFβ、TGFβRII、TGM−4、TPI/m、TRAG−3、TRG、TRP−1、TRP−2/6b、TRP/INT2、TRP−p8、チロシナーゼ、UPA、VEGF、VEGFR−2/FLK−1、およびWT1からなる群から選択される。このような腫瘍抗原は、好ましくは、MAGE−A1(例えば、受託番号M77481によるMAGE−A1)、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A6(例えば、受託番号NM_005363によるMAGE−A6)、MAGE−C1、MAGE−C2、メラン−A(例えば、受託番号NM_005511によるメラン−A)、GP100(例えば、受託番号M77348によるGP100)、チロシナーゼ(例えば、受託番号NM_000372によるチロシナーゼ)、サバイビン(surviving)(例えば、受託番号AF077350によるサバイビン)、CEA(例えば、受託番号NM_004363によるCEA)、Her−2/neu(例えば、受託番号M11730によるHer−2/neu)、WT1(例えば、受託番号NM_000378によるWT1)、PRAME(例えば、受託番号NM_006115によるPRAME)、EGFRI(上皮増殖因子受容体1)(例えば、受託番号AF288738によるEGFRI(上皮増殖因子受容体1))、MUC1、ムチン−1(例えば、受託番号NM_002456によるムチン−1)、SEC61G(例えば、受託番号NM_014302によるSEC61G)、hTERT(例えば、受託番号NM_198253によるhTERT)、5T4(例えば、受託番号NM_006670による5T4)、NY−Eso−1(例えば、受託番号NM_001327によるNY−Eso1)、TRP−2(例えば、受託番号NM_001922によるTRP−2)、STEAP、PCA、PSA、PSMAなどからなる群から選択することができる。
【0144】
別の選択肢によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされる抗原の1つのさらなるクラスは、アレルギー抗原を含む。このようなアレルギー抗原は、様々な源、例えば、動物、植物、真菌、細菌などに由来する抗原から選択することができる。この脈絡におけるアレルゲンには、例えば、草、花粉、カビ、薬物、または多数の環境要因などが含まれる。アレルギー抗原は、一般的に、様々なクラスの化合物、例えば、核酸およびその断片、タンパク質またはペプチドおよびこれらの断片、炭水化物、多糖、糖、脂質、リン脂質などに属する。本発明との関連で特に対象とするのは、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされ得る抗原、すなわち、タンパク質抗原もしくはペプチド抗原およびその断片、もしくはエピトープ、または核酸およびその断片、特に、このようなタンパク質抗原もしくはペプチド抗原およびその断片もしくはエピトープをコードする核酸およびその断片である。
【0145】
c)抗体
さらなる選択肢によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、抗体または抗体断片をコードすることができる。本発明によれば、このような抗体は、当技術分野で公知の任意の抗体、例えば、任意の組換えで生成される抗体または天然に存在する抗体、特に、治療目的、診断目的、もしくは科学目的に適した抗体、または特定のがん疾患に関係して同定された抗体から選択することができる。本明細書において、用語「抗体」は、その最も広い意味で使用され、特にモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(アゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、および阻止抗体または中和抗体を含む)、ならびに多エピトープ特異性を有する抗体種をカバーする。本発明によれば、用語「抗体」は、一般的に、当技術分野で公知の任意の抗体(例えば、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgE抗体)、例えば、天然に存在する抗体、宿主生物体内での免疫化によって生成される抗体、天然に存在する抗体または宿主生物体内での免疫化によって生成される抗体、および当技術分野で公知の生体分子法によって組換えで生成される抗体から単離および同定された抗体、ならびにキメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、細胞内発現抗体(intrabody)、すなわち、細胞内で発現され、場合により特定の細胞コンパートメント内に局在化した抗体など、ならびに上述の抗体の断片および変異体を含む。一般に、抗体は、ともに可変ドメインおよび定常ドメインを有する軽鎖および重鎖からなる。軽鎖は、N末端可変ドメイン、V
L、およびC末端定常ドメイン、C
Lからなる。対照的に、IgG抗体の重鎖は、例えば、N末端可変ドメイン、V
H、ならびに3つの定常ドメイン、C
H1、C
H2、およびC
H3から構成される。
【0146】
本発明の脈絡において、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされる抗体は、好ましくは完全長抗体、すなわち、上述したように、完全な重鎖および完全な軽鎖から構成される抗体を含むことができる。しかし、抗体断片、変異体、または付加体などの抗体の誘導体も、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされ得る。抗体断片は、上述の(完全長)抗体のFab、Fab’、F(ab’)
2、Fc、Facb、pFc’、Fd、およびFv断片から選択されることが好ましい。一般に、抗体断片は、当技術分野で公知である。例えば、Fab(「断片、抗原結合」)断片は、重鎖および軽鎖のそれぞれの1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインから構成される。この2つの可変ドメインは、特異的抗原上のエピトープに結合する。2本の鎖は、ジスルフィド連結を介して接続されている。scFv(「単鎖可変断片」)断片は、例えば、一般的に、軽鎖および重鎖の可変ドメインからなる。ドメインは、人工の連結、一般に、15〜25のグリシン、プロリンおよび/またはセリン残基から構成されるペプチドなどのポリペプチド連結によって連結されている。
【0147】
本脈絡において、抗体または抗体断片の異なる鎖は、マルチシストロン性核酸分子によってコードされることが好ましい。あるいは、抗体または抗体断片の異なる系統は、いくつかのモノシストロン性核酸(複数可)(配列)によってコードされる。
【0148】
siRNA:
さらなる選択肢によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、dsRNA、好ましくはsiRNAの形態である場合がある。dsRNAまたはsiRNAは、特にRNA干渉の現象に関連して興味深い。RNA干渉(RNAi)のin vitro技法は、遺伝子発現の配列特異的抑制を誘因する二本鎖RNA分子(dsRNA)に基づく(Zamore(2001年)Nat. Struct. Biol. 9巻:746〜750頁;Sharp(2001年)Genes Dev. 5巻:485〜490頁:Hannon(2002年)Nature 41巻:244〜251頁)。長いdsRNAを用いた哺乳動物細胞のトランスフェクションにおいて、プロテインキナーゼRおよびRnaseLを活性化すると、例えば、インターフェロン応答などの非特異的効果が起きる(Starkら(1998年)Annu. Rev. Biochem. 67巻:227〜264頁;HeおよびKatze(2002年)Viral Immunol. 15巻:95〜119頁)。これらの非特異的効果は、より短い、例えば、21〜23merの、いわゆるsiRNA(低分子干渉RNA)が使用される場合回避され、その理由は、非特異的効果は、30bpより短いsiRNAによって誘因されないためである(Elbashirら(2001年)Nature 411巻:494〜498頁)。
【0149】
したがって、本明細書の本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、17〜29、好ましくは19〜25の長さを有する二本鎖RNA(dsRNA)とすることができ、コーディングセクションであっても非コーディングセクションであっても、上文で(活性成分として)記載した(治療的に妥当な)タンパク質もしくは抗原、または本明細書に記載される任意のさらなるタンパク質の核酸分子のセクション、好ましくは、コーディングセクションと好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、特に100%(dsRNAのヌクレオチドの)相補性である。このような核酸分子(のセクション)は、「標的配列」と本明細書で呼ばれる場合があり、本明細書で定義される任意の核酸分子、好ましくは、ゲノムDNA、cDNA、RNA、例えば、mRNAなどとすることができる。90%の相補性は、例えば、20ヌクレオチドの本明細書で記載されるdsRNAの長さでは、dsRNAが、標的配列の対応するセクションとまったく相補性を示さない2個以下のヌクレオチドを含有することを意味する。しかし、本発明によって使用される二本鎖RNAの配列は、その一般的な構造において、標的配列のセクションと完全に相補性であることが好ましい。この脈絡において、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、一般構造5’−(N
17〜29)−3’を有し、好ましくは一般構造5’−(N
19〜25)−3’を有し、より好ましくは一般構造5’−(N
19〜24)−3’を有し、またはさらにより好ましくは一般構造5’−(N
21〜23)−3’を有するdsRNAとすることができ、ここで、それぞれの一般構造について、各Nは、好ましくは、標的配列のセクションの17〜29ヌクレオチドの連続数から選択され、その自然の順序で一般構造5’−(N
17〜29)−3’で存在する、標的配列のセクションの(好ましくは異なる)ヌクレオチドである。原理上は、標的配列中に存在する17〜29、好ましくは19〜25の塩基対の長さを有するすべてのセクションが、本明細書で定義されるdsRNAの調製に機能を果たすことができる。同様に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子として使用されるdsRNAは、コード領域内、特に、標的配列の5’非コード領域内にない、上文で(活性成分として)記載した(治療的に妥当な)タンパク質または抗原のヌクレオチド配列、例えば、したがって、制御機能を有する標的配列の非コード領域に向けることもできる。したがって、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子として使用されるdsRNAの標的配列は、標的配列の翻訳領域および非翻訳領域、ならびに/または上文で記載したタンパク質もしくは抗原の制御要素の領域内にある場合がある。本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子として使用されるdsRNAについての標的配列は、非翻訳配列と翻訳配列の重複領域内にある場合もある。特に、標的配列は、例えば、ゲノムDNA、cDNA、RNA、またはmRNAなどのコード領域の開始トリプレットの上流に少なくとも1つのヌクレオチドを含むことができる。
【0150】
免疫賦活性核酸:
a)免疫賦活性CpG核酸:
別の選択肢によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、好ましくは、先天性免疫応答を誘導する(免疫賦活性)CpG核酸、特に、CpG−RNAまたはCpG−DNAの形態である場合がある。本発明によって使用されるCpG−RNAまたはCpG−DNAは、一本鎖CpG−DNA(ss CpG−DNA)、二本鎖CpG−DNA(dsDNA)、一本鎖CpG−RNA(ss CpG−RNA)、または二本鎖CpG−RNA(ds CpG−RNA)とすることができる。本発明によって使用されるCpG核酸は、好ましくは、CpG−RNAの形態、より好ましくは、一本鎖CpG−RNA(ss CpG−RNA)の形態である。やはり好ましくは、このようなCpG核酸は、上述した長さを有する。好ましくは、CpGモチーフは、メチル化されていない。
【0151】
b)免疫賦活性RNA(isRNA):
同様に、さらなる選択肢によれば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の(免疫賦活性)核酸分子は、好ましくは、先天性免疫応答を誘発する免疫賦活性RNA(isRNA)の形態である場合がある。このような免疫賦活性RNAは、本明細書で定義される任意の(二本鎖または一本鎖)RNA、例えば、コーディングRNAとすることができる。好ましくは、免疫賦活性RNAは、一本鎖、二本鎖、もしくは部分的に二本鎖のRNA、より好ましくは、一本鎖RNA、および/または環状もしくは直鎖状RNA、より好ましくは、直鎖状RNAとすることができる。より好ましくは、免疫賦活性RNAは、(直鎖状)一本鎖RNAとすることができる。さらにより好ましくは、免疫賦活性RNAは、(長い)(直鎖状)一本鎖)非コーディングRNAとすることができる。この脈絡において、isRNAは、その5’末端で三リン酸を担持することが特に好適であり、これは、in vitroで転写されるRNAの場合である。免疫賦活性RNAは、本明細書で定義される短いRNAオリゴヌクレオチドとして存在する場合もある。免疫賦活性RNAは、本明細書において、さらに、自然において見出され、または合成的に調製され、先天性免疫応答を誘導することができ、抗原によって誘導される適応免疫応答を支持することができるRNA分子の任意のクラスから選択することができる。この脈絡において、免疫応答は、様々な方法で起こり得る。適当な(適応)免疫応答の実質的な要因は、様々なT細胞亜集団の刺激である。Tリンパ球は、一般的に、2つの亜集団、すなわち、Tヘルパー1(Th1)細胞およびTヘルパー2(Th2)細胞に分けられ、これらとともに、免疫系は、細胞内の(Th1)病原体および細胞外の(Th2)病原体(例えば、抗原)を破壊することができる。2つのTh細胞集団は、これらによって産生されるエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンが異なる。したがって、Th1細胞は、マクロファージおよび細胞傷害性T細胞の活性化による細胞性免疫応答を補助する。他方で、Th2細胞は、血漿細胞への変換のためのB細胞の刺激によって、および抗体(例えば、抗原に対する)の形成によって体液性免疫応答を促す。したがって、Th1/Th2比は、適応免疫応答の誘導および維持において非常に重要である。本発明に関連して、(適応)免疫応答のTh1/Th2比は、細胞応答(Th1応答)への方向にシフトされることが好ましく、それによって、細胞性免疫応答が誘導される。一例によれば、適応免疫応答を支持することができる生得免疫系は、トール様受容体(TLR)のリガンドによって活性化され得る。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、哺乳動物における先天性免疫において極めて重要な役割を果たす高度に保存されたパターン認識受容体(PRR)ポリペプチドのファミリーである。現在、TLR1〜TLR13と指定された少なくとも13のファミリーメンバー(トール様受容体:TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、またはTLR13)が同定されている。さらに、いくつかの特定のTLRリガンドが同定されている。例えば、非メチル化細菌性DNAおよびその合成類似体(CpG DNA)は、TLR9のリガンドであることが見出された(Hemmi Hら(2000年)Nature 408巻:740〜5頁;Bauer Sら(2001年)Proc NatlAcadSci USA 98巻、9237〜42頁)。さらに、ある特定のTLRのリガンドは、ある特定の核酸分子を含み、ある特定のタイプのRNAは、配列非依存様式または配列依存様式で免疫賦活性であり、これらの様々な免疫賦活性RNAは、例えば、TLR3、TLR7、もしくはTLR8、またはRIG−I、MDA−5などの細胞内受容体を刺激することができることが報告されている。例えば、Lipfordらは、ある特定のG,U含有オリゴリボヌクレオチドを、TLR7およびTLR8を介して作用することによって免疫賦活性であると判定した(WO03/086280を参照)。Lipfordらによって記載された免疫賦活性のG,U−含有オリゴリボヌクレオチドは、リボソームRNA、トランスファーRNA、メッセンジャーRNA、およびウイルスRNAを含めたRNA源から導き出せると考えられた。
【0152】
したがって、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子として使用される免疫賦活性RNA(isRNA)は、それに限定されることなく、好ましくは、ヒトファミリーメンバーTLR1〜TLR10またはマウスファミリーメンバーTLR1〜TLR13から選択され、より好ましくは、(ヒト)ファミリーメンバーTLR1〜TLR10、さらにより好ましくは、TLR7およびTLR8から選択されるTLRのリガンド、RNAの細胞内受容体のリガンド(RIG−IまたはMDA−5など)となり、かつ/もしくはコードするRNA配列(例えば、Meylan, E.、Tschopp, J.(2006年)、Toll−like receptors and RNA helicases: two parallel ways to trigger antiviral responses. Mol. Cell 22巻、561〜569頁を参照)、または任意の他の免疫賦活性RNA配列を含めた、免疫賦活性であることが公知である任意のRNA配列を含むことができる。さらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子として使用される免疫賦活性RNA分子(のクラス)は、先天性免疫応答を誘発することができる任意の他のRNAを含むことができる。それに限定されることなく、このような免疫賦活性RNAとして、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、およびウイルスRNA(vRNA)を挙げることができる。このような免疫賦活性RNAは、1000〜5000、500〜5000、5〜5000、または5〜1000、5〜500、5〜250、5〜100、5〜50、または5〜30のヌクレオチドの長さを含むことができる。
【0153】
特に好適な実施形態によれば、このような免疫賦活性核酸配列は、好ましくは、式(II)または(III)の核酸からなり、またはこの核酸を含むRNAであることが好ましい:
G
lX
mG
n、(式(II))
(式中:
Gは、グアノシン、ウラシル、またはグアノシンもしくはウラシルの類似体であり、
Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、または上述したヌクレオチドの類似体であり、
lは、1〜40の整数であり、
ここで
l=1であるとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
l>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%は、グアノシンまたはその類似体であり、
mは、整数であり、少なくとも3であり、
ここで
m=3であるとき、Xは、ウラシルまたはその類似体であり、
m>3であるとき、少なくとも3つ連続のウラシルまたはウラシルの類似体が存在し、
nは、1〜40の整数であり、
ここで
n=1であるとき、Gは、グアノシンまたはその類似体であり、
n>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%は、グアノシンまたはその類似体である)。
【0154】
C
lX
mC
n、(式(III))
(式中:
Cは、シトシン、ウラシル、またはシトシンもしくはウラシルの類似体であり、
Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、または上述したヌクレオチドの類似体であり、
lは、1〜40の整数であり、
ここで、
l=1であるとき、Cは、シトシンまたはその類似体であり、
l>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%は、シトシンまたはその類似体であり、
mは、整数であり、少なくとも3であり、
ここで
m=3であるとき、Xは、ウラシルまたはその類似体であり、
m>3であるとき、少なくとも3つ連続のウラシルまたはウラシルの類似体が存在し、
nは、1〜40の整数であり、
ここで、
n=1であるとき、Cは、シトシンまたはその類似体であり、
n>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%は、シトシンまたはその類似体である)。
【0155】
本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸カーゴとして使用することができる式(II)または(III)の核酸は、5〜100(しかし、特定の実施形態について、100ヌクレオチドより長い、例えば、最大200ヌクレオチドであってもよい)、5〜90または5〜80ヌクレオチドの一般的長さ、好ましくは、約5〜70の長さ、より好ましくは、約8〜60の長さ、より好ましくは、約15〜60ヌクレオチド、より好ましくは、20〜60、最も好ましくは、30〜60ヌクレオチドの長さを有する、比較的短い核酸分子である場合がある。本発明の核酸カーゴ複合体の核酸が、例えば、100ヌクレオチドの最大長を有する場合、mは、一般的に98以下となる。式(II)の核酸中のヌクレオチドGの数は、lまたはnによって決定される。lおよびnは、互いに独立に、それぞれ1〜40の整数であり、ここで、lまたはn=1であるとき、Gは、グアノシンまたはその類似体であり、lまたはn>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%は、グアノシンまたはその類似体である。例えば、いずれの限定も暗示することなく、lまたはn=4であるとき、G
lまたはG
nは、例えば、GUGU、GGUU、UGUG、UUGG、GUUG、GGGU、GGUG、GUGG、UGGG、またはGGGGなどとすることができ、lまたはn=5であるとき、G
lまたはG
nは、例えば、GGGUU、GGUGU、GUGGU、UGGGU、UGGUG、UGUGG、UUGGG、GUGUG、GGGGU、GGGUG、GGUGG、GUGGG、UGGGG、またはGGGGGなどとすることができるなどである。本発明による式(II)の核酸中でX
mに隣接するヌクレオチドは、ウラシルでないことが好ましい。同様に、本発明による式(III)の核酸中のヌクレオチドCの数は、lまたはnによって決定される。lおよびnは、互いに独立に、それぞれ1〜40の整数であり、ここで、lまたはn=1であるとき、Cは、シトシンまたはその類似体であり、lまたはn>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%は、シトシンまたはその類似体である。例えば、いずれの限定も暗示することなく、lまたはn=4であるとき、C
lまたはC
nは、例えば、CUCU、CCUU、UCUC、UUCC、CUUC、CCCU、CCUC、CUCC、UCCC、またはCCCCなどとすることができ、lまたはn=5であるとき、C
lまたはC
nは、例えば、CCCUU、CCUCU、CUCCU、UCCCU、UCCUC、UCUCC、UUCCC、CUCUC、CCCCU、CCCUC、CCUCC、CUCCC、UCCCC、またはCCCCCなどとすることができるなどである。本発明による式(III)の核酸中でX
mに隣接するヌクレオチドは、ウラシルでないことが好ましい。好ましくは、式(II)について、lまたはn>1であるとき、上記に定義したように、ヌクレオチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、またはさらには100%が、グアノシンまたはその類似体である。フランキング配列G
1および/またはG
n中の100%までの残りのヌクレオチドは(グアノシンがヌクレオチドの100%未満を構成する場合)、上文で定義したように、ウラシルまたはその類似体である。やはり好ましくは、lおよびnは、互いに独立に、それぞれ、2〜30の整数、より好ましくは、2〜20の整数、さらにより好ましくは、2〜15の整数である。lまたはnの下限は、必要であれば変更することができ、少なくとも1、好ましくは、少なくとも2、より好ましくは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または10である。この定義は、式(III)にも対応して適用する。
【0156】
特に好適な実施形態によれば、上記式(II)または(III)のいずれかによる核酸は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸として使用することができ、以下の配列のいずれかからなり、もしくはこれらの配列を含む配列:
【0159】
【化15】
またはこれらの配列のいずれかと少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくはさらには95%の配列同一性を有する配列から選択することができる。
【0160】
さらなる特に好適な実施形態によれば、このような免疫賦活性核酸配列、特にisRNAは、式(IV)または(V)の核酸からなり、またはこの核酸を含む:
(N
uG
lX
mG
nN
v)
a、(式(IV))
(式中:
Gは、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、またはグアノシン(グアニン)もしくはウリジン(ウラシル)の類似体、好ましくは、グアノシン(グアニン)またはその類似体であり、
Xは、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、アデノシン(アデニン)、チミジン(チミン)、シチジン(シトシン)、またはこれらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の類似体、好ましくは、ウリジン(ウラシル)またはその類似体であり、
Nは、約4〜50、好ましくは、約4〜40、より好ましくは、約4〜30、または4〜20核酸の長さを有する核酸配列であり、各Nは、独立して、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、アデノシン(アデニン)、チミジン(チミン)、シチジン(シトシン)、またはこれらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の類似体から選択され、
aは、1〜20、好ましくは、1〜15、最も好ましくは1〜10の整数であり、
lは、1〜40の整数であり、
ここで、l=1であるとき、Gは、グアノシン(グアニン)またはその類似体であり、
l>1であるとき、これらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の少なくとも50%は、グアノシン(グアニン)またはその類似体であり、
mは、整数であり、少なくとも3であり、
ここで、m=3であるとき、Xは、ウリジン(ウラシル)またはその類似体であり、
m>3であるとき、少なくとも3つ連続のウリジン(ウラシル)またはウリジン(ウラシル)の類似体が存在し、
nは、1〜40の整数であり、
ここで、n=1であるとき、Gは、グアノシン(グアニン)またはその類似体であり、
n>1であるとき、これらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の少なくとも50%は、グアノシン(グアニン)またはその類似体であり、
u、vは、互いに独立して、0〜50の整数とすることができ、
好ましくは、u=0であるとき、v≧1であり、または
v=0であるとき、u≧1であり、
式(IV)の核酸分子は、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは、少なくとも100ヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも150ヌクレオチド、さらにより好ましくは、少なくとも200ヌクレオチド、最も好ましくは、少なくとも250ヌクレオチドの長さを有する)。
【0161】
(N
uC
lX
mC
nN
v)
a、(式(V))
(式中:
Cは、シチジン(シトシン)、ウリジン(ウラシル)、またはシチジン(シトシン)もしくはウリジン(ウラシル)の類似体、好ましくは、シチジン(シトシン)またはその類似体であり、
Xは、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、アデノシン(アデニン)、チミジン(チミン)、シチジン(シトシン)、または上述したヌクレオチド(ヌクレオシド)の類似体、好ましくは、ウリジン(ウラシル)またはその類似体であり、
Nは、互いに独立して、約4〜50、好ましくは、約4〜40、より好ましくは、約4〜30、または4〜20核酸の長さを有する核酸配列であり、各Nは、独立して、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、アデノシン(アデニン)、チミジン(チミン)、シチジン(シトシン)、またはこれらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の類似体から選択され、
aは、1〜20、好ましくは、1〜15、最も好ましくは1〜10の整数であり、
lは、1〜40の整数であり、
ここで、l=1であるとき、Cは、シチジン(シトシン)またはその類似体であり、
l>1であるとき、これらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の少なくとも50%は、シチジン(シトシン)またはその類似体であり、
mは、整数であり、少なくとも3であり、
ここで、m=3であるとき、Xは、ウリジン(ウラシル)またはその類似体であり、
m>3であるとき、少なくとも3つ連続のウリジン(ウラシル)またはウリジン(ウラシル)の類似体が存在し、
nは、1〜40の整数であり、
ここで、n=1であるとき、Cは、シチジン(シトシン)またはその類似体であり、
n>1であるとき、これらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の少なくとも50%は、シチジン(シトシン)またはその類似体であり、
u、vは、互いに独立して、0〜50の整数とすることができ、
好ましくは、u=0であるとき、v≧1であり、または
v=0であるとき、u≧1であり、
本発明による式(V)の核酸分子は、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは、少なくとも100ヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも150ヌクレオチド、さらにより好ましくは、少なくとも200ヌクレオチド、最も好ましくは、少なくとも250ヌクレオチドの長さを有する)。
【0162】
式(V)について、要素N(すなわち、N
uおよびN
v)およびX(X
m)、特に上記に定義したコア構造について、ならびに整数a、l、m、n、u、およびvについて上記に与えた定義のいずれも、対応して式(V)の要素に同様に適用し、ここで、式(V)において、コア構造は、C
lX
mC
nによって定義される。隣接要素N
uおよびN
vの定義は、N
uおよびN
vについて上記に与えた定義と同一である。
【0163】
非常に特に好適な実施形態によれば、式(IV)による本発明の核酸分子は、例えば、以下の配列のいずれかから選択することができる:
【0165】
【化17】
別の非常に特に好適な実施形態によれば、式(V)による核酸分子は、例えば、以下の配列のいずれかから選択することができる:
【0166】
【化18】
さらなる好適な実施形態では、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、修飾核酸の形態で存在する場合もある。
【0167】
第1の態様によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、「安定化された核酸」として、好ましくは、安定化されたRNAまたはDNAとして、より好ましくは、in vivo分解(例えば、エキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼによる)に本質的に耐性であるRNAとして提供することができる。
【0168】
この脈絡において、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、主鎖修飾、糖修飾、または塩基修飾を含有することができる。本発明に関連した主鎖修飾は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子中に含有されるヌクレオチドの主鎖のリン酸が化学修飾された修飾である。本発明に関連した糖修飾は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子のヌクレオチドの糖の化学修飾である。さらに、本発明に関連した塩基修飾は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子のヌクレオチドの塩基部分の化学修飾である。
【0169】
さらなる態様によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、脂質修飾を含有することができる。このような脂質修飾核酸は、一般的に、本明細書で定義される核酸を含む。本発明のポリマー担体カーゴ複合体のこのような脂質修飾核酸分子は、一般的に、その核酸分子に共有結合的に連結された少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーに共有結合的に連結された少なくとも1つの脂質をさらに含む。あるいは、脂質修飾核酸分子は、本明細書で定義される少なくとも1つの核酸分子、およびその核酸分子に共有結合的に連結された(リンカーを用いずに)少なくとも1つの(二官能性の)脂質を含む。第3の選択肢によれば、脂質修飾核酸分子は、本明細書で定義される核酸分子、その核酸分子に共有結合的に連結された少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーに共有結合的に連結された少なくとも1つの脂質、およびまたその核酸分子に共有結合的に連結された(リンカーを用いずに)少なくとも1つの(二官能性の)脂質を含む。
【0170】
本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、特に、本発明の目的で、RNAまたはmRNAが核酸分子として使用される場合、様々な手法によって、核酸分子の分解を防止するために同様に安定化させることができる。RNAの不安定性および(速い)分解は、一般に、RNAに基づく組成物の用途において深刻な問題となり得ることが、当技術分野で公知である。RNAのこの不安定性は、一般的に、RNA分解酵素、「RNAases」(リボヌクレアーゼ)に起因し、このようなリボヌクレアーゼが混入すると、時折、溶液中でRNAが完全に分解される場合がある。したがって、細胞の細胞質内でのRNAの自然分解は、非常に精密に制御されており、RNaseの混入は、一般に、特に、ジエチルピロカルボネート(DEPC)を用いて、前記組成物を使用する前に特別に処理することによって除去することができる。自然分解のいくつかの機構は、先行技術におけるこの関係において公知であり、これらも同様に利用することができる。例えば、末端構造は、一般的に、特にmRNAにとって極めて重要である。例として、天然に存在するmRNAの5’末端では、通常、いわゆる「キャップ構造」(修飾されたグアノシンヌクレオチド)が存在し、3’末端では、一般的に、最大200アデノシンのヌクレオチドの配列(いわゆるポリA末端)が存在する。
【0171】
別の態様によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、特に、核酸分子がコーディング核酸、例えば、mRNAの形態である場合、核酸分子、特にmRNA、好ましくはそのコード領域のG/C含量を改変することによって、改変し、したがって安定化させることができる。
【0172】
本発明の特に好適な態様では、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子のコード領域のG/C含量は、特に、核酸分子がmRNAの形態である場合、その特定の野生型コード配列、すなわち、無修飾mRNAのG/C含量と比較して、改変され、特に増加している。核酸配列のコードされたアミノ酸配列は、特定の野生型mRNAのコードされたアミノ酸配列と比較して、修飾されていないことが好ましい。
【0173】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子のG/C含量の改変は、特に、核酸分子が、mRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、翻訳される任意のmRNA領域の配列が、そのmRNAの効率的な翻訳に重要であるという事実に基づく。したがって、様々なヌクレオチドの組成および配列は、重要である。特に、G(グアノシン)/C(シトシン)含量が増加した配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含量が増加した配列より安定である。本発明によれば、したがって、コード配列またはmRNAのコドンは、翻訳されるアミノ酸配列を保持しながら、野生型のコード配列またはmRNAと比較して変化しており、その結果、これらは、増加した量のG/Cヌクレオチドを含む。いくつかのコドンが1つの同じアミノ酸をコードするという事実(いわゆる遺伝子コードの縮退)に関して、安定性について最も好都合なコドンを求めることができる(いわゆる代替のコドン使用頻度)。
【0174】
好ましくは、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子のコード領域のG/C含量は、特に、核酸がmRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、野生型mRNAのコードされる領域のG/C含量と比較して、少なくとも7%、より好ましくは、少なくとも15%、特に好ましくは、少なくとも20%増加している。特定の態様によれば、本明細書で定義されるタンパク質もしくはペプチド、またはその断片もしくはその変異体をコードする領域、あるいは野生型のmRNA配列またはコード配列の全配列中の置換可能なコドンの少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、より好ましくは、少なくとも70%、さらにより好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも90%、95%、あるいはさらには100%が置換され、それによって、前記配列のG/C含量を増加させる。
【0175】
この脈絡において、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子のG/C含量を、特に、核酸がmRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、野生型配列と比較して、特にタンパク質をコードする領域において、最大(すなわち、置換可能なコドンの100%)まで増加させることが特に好ましい。
【0176】
本発明によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子のさらなる好適な修飾は、特に、核酸がmRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、翻訳効率はまた、細胞内でのtRNAの出現の様々な頻度によって決定されるという知見に基づく。したがって、いわゆる「希少コドン」が本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子中に存在する場合、特に、核酸がmRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、大体において、対応する修飾核酸分子は、相対的に「頻繁な」tRNAをコードするコドンが存在する場合より、翻訳される程度が著しく芳しくない。
【0177】
特に、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の修飾核酸分子が、mRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、修飾核酸のコード領域は、細胞内で相対的に稀有であるtRNAをコードする野生型配列の少なくとも1つのコドンが、細胞内で相対的に頻繁であり、相対的に稀有なtRNAと同じアミノ酸を担持するtRNAをコードするコドンと交換されるように、野生型のmRNAまたはコード配列の対応する領域と比較して修飾されることが好ましい。この修飾によって、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子の配列は、特に、核酸がmRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、頻繁に存在するtRNAが利用可能であるコドンが挿入されるように修飾される。言い換えれば、本発明によれば、この修飾によって、細胞内で相対的に稀有であるtRNAをコードする野生型配列のすべてのコドンを、細胞内で相対的に頻繁であり、それぞれの場合において、相対的に稀有なtRNAと同じアミノ酸を担持するtRNAをコードするコドンと、それぞれの場合において交換することができる。
【0178】
どのtRNAが細胞内で相対的に頻繁に存在し、どれが、対照的に、相対的にまれに存在するかは、当業者に公知である。例えば、Akashi、Curr. Opin. Genet. Dev. 2001年、11巻(6号):660〜666頁を参照。特定のアミノ酸について、最も頻繁に存在するtRNAを使用するコドン、例えば、(ヒト)細胞内で最も頻繁に存在するtRNAを使用するGlyコドンが特に好適である。
【0179】
本発明によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の修飾核酸分子中で増加され、特に最大化される連続したG/Cコンテントを、特に、核酸がmRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、核酸分子のコード領域によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を修飾することなく、「頻繁な」コドンと連結することが特に好ましい。この好適な態様は、特に、核酸がmRNAの形態であり、またはmRNAをコードする場合、特に効率的に翻訳および安定化される(修飾される)本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子の提供を可能にする。
【0180】
本発明のさらなる好適な態様によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、特に、核酸がコーディング核酸分子の形態である場合、少なくとも1つの5’および/または3’安定化配列(stabilizing sequence)を有することが好ましい。5’および/または3’非翻訳領域内のこれらの安定化配列は、細胞質ゾル内での核酸の半減期を延ばす効果を有する。これらの安定化配列は、ウイルス、細菌、および真核生物内に存在する天然に存在する配列と100%の配列同一性を有することができるが、部分的または完全に合成のものである場合もある。例えば、Homo sapiensまたはXenopus laevisに由来する(α−)グロビン遺伝子の非翻訳配列(UTR)を、核酸の安定化のために、本発明で使用することができる安定化配列の例として言及することができる。安定化配列の別の例は、一般式(C/U)CCAN
xCCC(U/A)Py
xUC(C/U)CC(配列番号383)を有し、これは、(α−)グロビン、(I)型−コラーゲン、15−リポキシゲナーゼ、またはチロシンヒドロキシラーゼをコードする非常に安定なRNAの3’UTR内に含有されている(Holcikら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997年、94巻:2410〜2414頁を参照)。このような安定化配列は、もちろん、個々に、または互いに組み合わせて、かつまた、当業者に公知の他の安定化配列と組み合わせて使用することができる。
【0181】
それにもかかわらず、塩基の置換、付加、または脱離は、特に、核酸がmRNAの形態である場合、周知の部位特異的突然変異誘発の技法によって、またはオリゴヌクレオチドライゲーションストラテジーを用いて核酸分子を調製するためのDNAマトリックスを使用して、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子を用いて実施されることが好ましい(例えば、Maniatisら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、3版、Cold Spring Harbor、NY、2001年を参照)。本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子を調製するためのこのようなプロセスでは、特に、核酸がmRNAの形態である場合、対応するDNA分子をin vitroで転写することができる。このDNAマトリックスは、in vitro転写のための適当なプロモーター、例えば、T7またはSP6プロモーター、およびin vitro転写の終結シグナルを含むことが好ましく、プロモーターの後に、調製される核酸分子、例えば、mRNAの所望のヌクレオチド配列が続く。対象とする少なくとも1つのRNAの基質を形成するDNA分子は、発酵増殖させ、その後、細菌内で複製され得るプラスミドの一部として単離することによって調製することができる。本発明に適したものとして言及することができるプラスミドは、例えば、プラスミドpT7T(GenBank受託番号U26404;Laiら、Development 1995年、121巻:2349〜2360頁)、pGEM(登録商標)シリーズ、例えば、pGEM(登録商標)−1(GenBank受託番号X65300;Promegaから)、およびpSP64(GenBank受託番号X65327)である。GriffinおよびGriffin(編)、PCR Technology: Current Innovation、CRC Press、Boca Raton、FL、2001年におけるMezeiおよびStorts、Purification of PCR Productsも参照。
【0182】
本明細書で定義される本発明によって使用される核酸分子は、例えば、固相合成、ならびにin vitro転写反応などのin vitro法を含めた当技術分野で公知の任意の方法を使用して調製することができる。
【0183】
別の特に好適な態様によれば、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子は、特に、核酸は、コーディング核酸分子の形態である場合、さらにまたは代わりに、分泌性シグナルペプチドをコードすることができる。このようなシグナルペプチドは、それに限定されることなく、一般的に、約15〜30アミノ酸の長さを呈する配列であり、好ましくはコードされるペプチドのN末端に位置される。本明細書で定義されるシグナルペプチドは、特に、核酸がmRNAの形態である場合、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされるタンパク質またはペプチドの、画定された細胞内コンパートメント、好ましくは細胞表面、小胞体(ER)、またはエンドソーム−リソソームコンパートメント内への輸送を可能にすることが好ましい。本明細書で定義される分泌性シグナルペプチド配列の例として、それに限定されることなく、古典的または非古典的MHC分子のシグナル配列(例えば、MHC I分子およびMHC II分子の、例えば、MHCクラスI分子HLA−A
*0201のシグナル配列)、本明細書で定義されるサイトカインまたは免疫グロブリンのシグナル配列、本明細書で定義される免疫グロブリンまたは抗体のインバリアント鎖のシグナル配列、Lamp1、タパシン、Erp57、カルレティキュリン、カルネキシン、およびさらなる膜関連タンパク質の、または小胞体(ER)もしくはエンドソーム−リソソームコンパートメントに付随するタンパク質のシグナル配列が挙げられる。特に好ましくは、MHCクラスI分子HLA−A
*0201のシグナル配列を、本発明によって使用することができる。
【0184】
上記修飾のいずれも、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子、および本発明との関連で使用される任意の核酸に適用することができ、適当または必要な場合、任意の組合せで互いに組み合わせることができ、ただし、修飾のこれらの組合せは、それぞれの核酸中で互いに干渉しない。当業者は、それ相応に当業者の選択を採用することができる。
【0185】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子、ならびにこの核酸分子によってコードされるタンパク質またはペプチドは、これらの配列の断片または変異体を含むことができる。このような断片または変異体は、一般的に、少なくとも1つの核酸分子によってコードされる場合、上述した核酸の1つ、またはタンパク質もしくはペプチドもしくは配列の1つと、核酸レベルについて、またはアミノ酸レベルについて、野生型配列全体に対して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、同様により好ましくは、少なくとも85%、さらにより好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%、またはさらには97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0186】
本発明の脈絡における(本明細書で定義される核酸によってコードされる)タンパク質またはペプチドの「断片」は、本明細書で定義されるタンパク質またはペプチドの配列を含むことができ、これは、そのアミノ酸配列(またはそのコードされる核酸分子)に関して、元の(天然の)タンパク質(またはそのコードされる核酸分子)のアミノ酸配列と比較して、N末端、C末端、および/または配列内で(intrasequentially)トランケートされている。したがって、このようなトランケーションは、アミノ酸レベルまたは対応して核酸レベルで行うことができる。したがって、本明細書で定義されるこのような断片に関した配列同一性は、好ましくは、本明細書で定義されるタンパク質もしくはペプチドの全体、またはこのようなタンパク質もしくはペプチドの(コーディング)核酸分子全体を参照することができる。同様に、本発明の脈絡における核酸の「断片」は、本明細書で定義される核酸の配列を含むことができ、その核酸分子に関して、元の(天然の)核酸分子の核酸分子と比較して、5’、3’、および/または配列内でトランケートされている。したがって、本明細書で定義されるこのような断片に関した配列同一性は、好ましくは、本明細書で定義される核酸全体を参照することができる。
【0187】
本発明の脈絡における(例えば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされる)タンパク質あるいはペプチドの断片は、約6〜約20あるいはそれ以上のアミノ酸の長さを有する、本明細書で定義されるタンパク質あるいはペプチドの配列、例えば、好ましくは、約8〜約10アミノ酸、例えば、8、9、または10、(またはさらには、6、7、11、もしくは12アミノ酸)の長さを有する、MHCクラスI分子によって処理および提示される断片、あるいは好ましくは、約13以上のアミノ酸、例えば、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上のアミノ酸の長さを有する、MHCクラスII分子によって処理および提示される断片をさらに含むことができ、これらの断片は、アミノ酸配列の任意の部分から選択することができる。これらの断片は、一般的に、ペプチド断片およびMHC分子からなる複合体の形態でT細胞によって認識され、すなわち、断片は、一般的に、これらの天然型では認識されない。
【0188】
本明細書で定義される(例えば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされる)タンパク質またはペプチドの断片は、これらのタンパク質またはペプチドのエピトープも含むことができる。本発明の脈絡におけるエピトープ(「抗原決定基」とも呼ばれる)は、一般的に、好ましくは、5〜15アミノ酸を有し、より好ましくは、5〜12アミノ酸を有し、さらにより好ましくは、6〜9アミノ酸を有する、本明細書で定義される(天然の)タンパク質またはペプチドの外側表面上に位置する断片であり、これらは、抗体またはB細胞受容体によって、すなわち、これらの天然型で認識され得る。タンパク質またはペプチドのこのようなエピトープは、さらに、このようなタンパク質またはペプチドの本明細書で言及される変異体のいずれかから選択することができる。この脈絡において、抗原決定基は、本明細書で定義されるタンパク質またはペプチドのアミノ酸配列において不連続であるが、1本のポリペプチド鎖から構成される3次元構造エピトープまたは連続エピトープまたは線状エピトープで一緒になる、本明細書で定義されるタンパク質またはペプチドのセグメントから構成される立体構造エピトープまたは不連続エピトープとすることができる。
【0189】
本発明の脈絡において定義される(例えば、本明細書で定義される核酸によってコードされる)タンパク質またはペプチドの「変異体」は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされ得る。それによって、1つまたは複数の置換、挿入され、かつ/または欠失したアミノ酸(複数可)などの1つまたは複数の突然変異(複数可)で元の配列と異なるアミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドを生成することができる。これらの断片および/または変異体は、完全長ネイティブタンパク質と比較して同じ生物学的機能または特異的活性、例えば、その特異的抗原性を有することが好ましい。
【0190】
本発明の脈絡において定義される(例えば、本明細書で定義される核酸によってコードされる)タンパク質またはペプチドの「変異体」は、その天然の、すなわち、突然変異されていない生理的な配列と比較して、保存的アミノ酸置換(複数可)を含むことができる。これらのアミノ酸配列ならびにそのコードヌクレオチド配列は、特に、本明細書で定義される用語の変異体に入る。同じクラスが起源であるアミノ酸が互いに交換される置換は、同類置換と呼ばれる。特に、これらは、脂肪族側鎖、正または負に帯電した側鎖、側鎖またはアミノ酸中の芳香族基、水素ブリッジに参加することができる側鎖、例えば、ヒドロキシル機能を有する側鎖を有するアミノ酸である。これは、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸が同様に極性側鎖を有する別のアミノ酸によって入れ替えられている、例えば、疎水性側鎖を特徴とするアミノ酸が同様に疎水性側鎖を有する別のアミノ酸によって置換されていること(例えば、トレオニン(セリン)によるセリン(トレオニン)またはイソロイシン(ロイシン)によるロイシン(イソロイシン))を意味する。挿入および置換は、特に、3次元構造にまったく改変を引き起こさず、または結合領域に影響しない配列位置で可能である。挿入(複数可)または欠失(複数可)による3次元構造に対する改変は、例えば、CDスペクトル(円偏光二色性スペクトル)によって容易に判定することができる(Modern Physical Methods in Biochemistry、Neubergerら(編)、Elsevier、Amsterdam中のUrry、1985年、Absorption, Circular Dichroism and ORD of Polypeptides)。
【0191】
さらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子によってコードされ得る本明細書で定義されるタンパク質またはペプチドの変異体は、核酸のヌクレオチドが、タンパク質またはペプチドのそれぞれのアミノ酸配列を変化させずに、遺伝子コードの縮退によって交換されている、すなわち、アミノ酸配列またはその少なくとも一部が、上記意味の範囲内で1つまたは複数の突然変異(複数可)で元の配列と異ならない場合のある配列も含むことができる。
【0192】
2つの配列が同一の、例えば、本明細書で定義される核酸配列またはアミノ酸配列、好ましくは本明細書で定義されるポリマー担体の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、またはアミノ酸配列自体である百分率を求めるために、配列を整列させることによって、引き続いて互いに比較することができる。したがって、例えば、第1の配列の位置を、第2の配列の対応する位置と比較することができる。第1の配列における1つの位置が、第2の配列における1つの位置での場合のように同じ成分によって占有されている場合、2つの配列は、この位置において同一である。これがそうでない場合、配列は、この位置において異なる。第1の配列と比較して第2の配列中に挿入が存在する場合、ギャップを第1の配列中に挿入することによって、さらなる位置合わせを可能にすることができる。第1の配列と比較して第2の配列中に欠失が存在する場合、ギャップを第2の配列中に挿入することによって、さらなる位置合わせを可能にすることができる。このとき、2つの配列が同一である百分率は、1つの配列中でのみ占有されている位置を含めた位置の合計数によって除された同一の位置の数の関数である。2つの配列が同一である百分率は、数学アルゴリズムを使用して求めることができる。好適であるが限定的でない、使用することができる数学アルゴリズムの例は、Karlinら(1993年)、PNAS USA、90巻:5873〜5877頁、またはAltschulら(1997年)、Nucleic Acids Res.、25巻:3389〜3402頁のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、BLASTプログラムに組み込むことができる。ある程度本発明の配列と同一である配列を、このプログラムによって同定することができる。
【0193】
本発明のポリマー担体カーゴ複合体において、本明細書で定義されるポリマー担体のカチオン性成分および核酸カーゴは、一般的に、ポリマー担体と核酸の約1対10000のモル比、好ましくは、約5対5000のモル比、より好ましくは、約10対2500のモル比、さらにより好ましくは、約25対2000のモル比、最も好ましくは、約25対1000のモル比で提供される。
【0194】
さらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体において、本明細書で定義されるポリマー担体のカチオン性成分および核酸カーゴは、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.75、1、1.5、または2のN/P比で提供されることが好ましい。好ましくは、N/P比は、約0.1、0.3、0.4、0.5、0.75、1.0、1.5、または2〜20の範囲内、好ましくは、約0.2(0.5または0.75または1.0)〜12の範囲内、さらにより好ましくは、約0.4(0.75または1.0)〜10のN/P比内にある。この脈絡において、N/P比は、ポリマー担体のカチオン性(側鎖)成分またはポリマー担体自体のイオン変化の尺度である。特に、カチオン性成分のカチオン特性が窒素(アミノ酸側鎖の)によって生じる場合、N/P比は、ポリマー担体のカチオン性成分の(側鎖)窒素原子が正電荷に寄与し、核酸のリン酸骨格のリン酸が負電荷に寄与するとみなして、ヌクレオチド主鎖中の塩基性窒素原子とリン酸残基の比を表す。式は、実施例に与えられている。N/P比は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体全体の窒素/リン酸比(N/P比)として定義される。これは、一般的に、ポリマー担体中のカチオン性成分の含量/量について例示的であり、本発明のポリマー担体カーゴ複合体内で結合または複合体形成した核酸の含量/量について特徴的である。これは、RNAが塩基の統計的分布を呈すると仮定して、例えば、1μgのRNAが一般的に約3nmolのリン酸残基を含有することに基づいて計算することができる。さらに、1nmolのペプチドは、一般的に、分子量およびその(カチオン性)アミノ酸の数に応じて、約x nmolの窒素残基を含有する。
【0195】
この脈絡において、本発明のポリマー担体カーゴ複合体において、本明細書で定義されるポリマー担体のカチオン性成分および核酸カーゴは、in vitroでのトランスフェクション目的で、少なくとも約1、または好ましくは、約1〜20の範囲のN/P比で提供されることが好ましい。
【0196】
核酸カーゴのコードされるタンパク質の発現またはコードされる核酸、例えば、mRNAまたはsiRNAの転写が、治療目的(in vivo用途)のために意図されている場合、少なくとも0.1(0.2、0.3、0.4、0.5、0.6)、好ましくは、約0.1(0.2、0.3、0.4、0.5、または0.6)〜1.5の範囲のN/P比が好適である。さらにより好適なのは、0.2〜0.9のN/P比の範囲または0.5〜0.9のN/P比の範囲である。本発明のポリマー担体カーゴ複合体が、例えば、免疫賦活剤またはアジュバントとして(先天性免疫応答を誘導する目的で)、(in vivo)免疫刺激のために使用される場合では、約0.1〜20のN/P比が好適であり、さらに特に0.1〜5または0.1〜1.5のN/P比が好適である。
【0197】
(in vivo)免疫賦活剤あるいはアジュバントとして本発明のポリマーカーゴ複合体を使用してIFN−αの誘導が意図される特定の場合では、少なくとも0.1(0.2、0.3、0.4、0.5、もしくは0.6)のN/P比、または0.1〜1のN/P比の範囲が好適であり、あるいは0.2〜0.9のN/P比の範囲、または0.5〜0.9のN/P比の範囲がより好適である。その他の場合では、(in vivo)免疫賦活剤またはアジュバントとして本発明のポリマーカーゴ複合体を使用してTNFαの誘導が意図される場合、1〜20のN/P比が特に好適である。
【0198】
N/P比は、得られる本発明のポリマー担体カーゴ複合体の表面電荷に著しく影響を与える。したがって、特に、核酸カーゴのコードされるタンパク質の発現、またはコードされる核酸の転写が意図されている場合、得られる本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、in vitroでのトランスフェクション目的では正に帯電し、in vivoトランスフェクション目的では負または中性に帯電していることが好ましい。得られる本発明のポリマー担体カーゴ複合体の表面電荷は、ゼータ電位として示すことができ、これは、Zetasizer Nano(Malvern Instruments、Malvern、UK)を使用してドップラー電気泳動法によって測定することができる。
【0199】
本発明は、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する方法であって、
a)それぞれ少なくとも1つの−SH部分を含む本明細書で定義される少なくとも1つのカチオン性のタンパク質もしくはペプチド、および/または少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性ポリマー、および任意選択により、本明細書で定義される少なくも1つのアミノ酸成分(AA)を提供するステップと、
b)好ましくは上述した比で、本明細書で定義される少なくとも1つの核酸分子を提供するステップと、
c)好ましくは、本明細書で定義される塩基性または中性環境で、好ましくは、酸素または本明細書で定義されるさらなるスターターの存在下で、好ましくは、本明細書で定義されるpH、温度、および時間で、ステップa)およびb)で提供される成分を混合し、それによって、ジスルフィド結合を介してステップa)で提供されるカチオン成分を互いに縮合し、したがって重合することによって(重合縮合または重縮合で)、ポリマー担体を得、ステップb)で提供される核酸分子を、ステップa)で提供されるカチオン性成分と複合体形成させるステップと、
d)好ましくは本明細書で定義される方法を使用して、ステップc)によって得られる本発明のポリマー担体カーゴ複合体を任意選択により精製するステップと、
e)ステップc)またはd)によって得られる本発明のポリマー担体カーゴ複合体を任意選択により凍結乾燥するステップと
を含む方法も提供する。
【0200】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する方法は、ステップc)において、遊離体、例えば、本明細書で定義されるカチオン性のペプチドまたはポリマー、および任意選択によりさらなるアミノ酸成分(AA)の−SH部分を介した多段階の縮合重合または重縮合を含む。核酸分子の複合体形成または静電気的(electrostratic)結合と同時に起こる、縮合重合または重縮合反応により、ポリマー担体が縮合ポリマーであり、1つの成分がジスルフィド結合によって連結されている本発明のポリマー担体カーゴ複合体がもたらされることが好ましい。
【0201】
本明細書で定義されるように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する本発明の方法のステップa)において、本明細書で定義される少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性のタンパク質もしくはペプチド、および/または本明細書で定義される少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性ポリマーが、好ましくは、上記に示した比で提供される。これらの成分は、好ましくは、本明細書で定義される塩基性または中性環境で、好ましくは、酸素または本明細書で定義されるさらなるスターターの存在下で、好ましくは、本明細書で定義されるpH、温度、および時間で、ステップb)で提供される核酸分子とステップc)で混合され、それによって、ジスルフィド結合を介してこれらの成分が互いに縮合され、したがって重合されることによって(重合縮合または重縮合で)、本明細書で定義される核酸分子と複合体形成されたポリマー担体を得る。
【0202】
選択肢によれば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する本発明のステップa)において、少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性のタンパク質もしくはペプチドおよび/または少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性ポリマーが、本明細書で規定されるように提供され、任意選択により少なくとも1つのアミノ酸成分(AA)が、本明細書で規定されるようにステップa)で提供され、ステップb)の核酸を添加するステップの前であるが、ステップc)について略述した同じ重合条件を使用して、重合縮合または重縮合および複合体形成に使用される。次いで、重合したポリマー担体およびステップb)の核酸が、ステップc)で混合される。成分は、好ましくは、本明細書で定義される塩基性または中性環境で、好ましくは、酸素または本明細書で定義されるさらなるスターターの存在下で、好ましくは、本明細書で定義されるpH、温度、および時間で、すべて上記に示した比で提供され、混合されることが好ましい。混合し、反応を開始した後、成分は、ジスルフィド結合を介して互いに縮合され、したがって重合されることによって(重合縮合または重縮合で)、本明細書で定義される核酸分子と複合体形成されたポリマー担体が得られる。
【0203】
上記選択肢の両方において、異なるポリマー担体、特に、異なるペプチドおよび/または異なるポリマーを、上記に示した縮合重合において選択することができる。この脈絡において、ポリマー担体の異なる成分(複数可)の選択は、一般的に、最終的なポリマー担体の所望の特性および最終的なポリマー担体の所望のカチオン強度に依存する。したがって、カチオン性成分の内容物は、例えば、本明細書で定義されるアミノ酸成分(AA)を、好ましくは上記に規定した比で導入することによって、ステップa)の上記選択肢でさらに「希釈し」または修飾することができる。それによって、修飾されたポリマー担体を得ることができ、ここで、無修飾ポリマー担体のカチオン性の特徴は、一般的に、上記で定義した制限内に残る。したがって、最終的なポリマー担体の特性は、ステップa)において、本明細書で定義されるアミノ酸成分(AA)を挿入することによって、成分(AA)の特性を用いて、望まれるように調整することができる。
【0204】
ステップc)において、本明細書で定義される少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性のタンパク質もしくはペプチドおよび/または本明細書で定義される少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性ポリマー、および任意選択により少なくとも1つのアミノ酸成分(AA)、および本明細書で定義される少なくとも1つの核酸は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する本発明の方法のステップa)において、塩基性または中性環境で収容されることが好ましい。このような塩基性または中性環境は、一般的に、約5〜約10のpH範囲、好ましくは、約6〜約9のpH範囲、より好ましくは、約7〜約8、例えば、約6.5、7、7.5、8、8.5、もしくは9のpH範囲、またはこれらの値または上述の値の任意の2つから選択される任意の範囲を呈する。
【0205】
さらに、ステップc)における溶液の温度は、好ましくは、約5℃〜約60℃の範囲内、より好ましくは、約15℃〜約40℃の範囲内、さらにより好ましくは、約20℃〜約30℃の範囲内、最も好ましくは、約20℃〜約25℃の範囲内、例えば、約25℃である。
【0206】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する本発明の方法のステップc)において、適当な場合、緩衝液を使用することができる。好適な緩衝液は、それだけに限らないが、緩衝剤として、炭酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、ビシン緩衝液、CHES緩衝液、CAPS緩衝液、エタノールアミン含有緩衝液、HEPES、MOPS緩衝液、リン酸緩衝液、PIPES緩衝液、トリス緩衝液、トリシン緩衝液、TAPS緩衝液、および/またはTES緩衝液を含むことができる。炭酸塩緩衝液が特に好適である。
【0207】
好ましくは、酸素の存在下で、好ましくは、本明細書で定義される塩基性または中性環境(mileu)の存在下で、成分を混合した後、縮合重合または重縮合反応および少なくとも1つの核酸分子の複合体形成が開始される。この目的のために、ステップc)における混合物は、酸素に曝露されることが好ましく、またはさらなるスターター、例えば、触媒量の酸化剤、例えば、DMSOなどを使用して開始することができる。少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性のタンパク質もしくはペプチドおよび/または少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性ポリマー、および任意選択により本明細書で定義される少なくとも1つのアミノ酸成分(AA)の縮合重合または重縮合反応が開始された後、ジスルフィド結合を介して互いに縮合され、したがって重合される(重合縮合または重縮合)。この反応ステップa)において、好ましくは、線状ポリマーが、少なくとも1つの反応性の−SH部分を有するモノマー、すなわち、それぞれの成分が、例えばその末端において、本明細書で定義される少なくとも1つの遊離−SH−部分を呈する、少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性のタンパク質もしくはペプチドおよび/または少なくとも1つのカチオン性もしくはポリカチオン性ポリマー、および任意選択により本明細書で定義される少なくとも1つのアミノ酸成分(AA)を使用して作り出される。しかし、1つを超える、好ましくは2つの遊離−SH−部分を有する成分を使用することができ、これは、分岐ポリマーをもたらすことができる。重合反応と同時に、カチオン性ポリマーは、少なくとも1つの核酸分子に結合し、それによってこれを複合体形成する。
【0208】
一選択肢によれば、本発明のポリマー担体カーゴ複合体はさらに、本明細書で定義される成分(AA)で修飾することができる。
【0209】
第1の例によれば、成分(AA)(例えば、リガンド)は、本明細書で定義される任意の機能性、例えば、−SH部分を介して、ステップa)においてカチオン性成分を提供する前に、カチオン性成分に結合される。この成分(AA)または(例えば、リガンド)は、これらの成分の一末端でカチオン性成分に結合されることが好ましい。結合が−SH結合を介して実施される場合、カチオン性成分は、2つの(またはさらにはそれ以上の)−SH−部分が備わっていることが好ましい。成分(AA)または(例えば、リガンド)は、ただ1つの−SH部分を担持することが好ましい。この場合、カチオン性成分の1つの−SH部分は、当技術分野で公知の保護基を使用して、第1のステップにおいて保護されることが好ましい。次いで、カチオン性成分は、成分Lに結合することによって、保護されていない−SH部分を介して第1のジスルフィド結合を形成することができる。次いで、カチオン性成分の保護された−SH−部分は、一般的に、さらなる反応のために脱保護される。
【0210】
あるいは、上述した成分(AA)または(例えば、リガンド)は、ステップc)において使用することによって、遊離−SH部分をブロックすることなく、例えばジスルフィド結合を介して、上記ステップa)で提供されるカチオン成分とカップリングすることができる。しかし、この脈絡において、当業者に公知または本明細書で定義されるすべての方法を、成分(AA)をカチオン性成分またはポリマー担体に結合させるのに使用することができる。
【0211】
あるいは、成分(AA)または(例えば、リガンド)は、本明細書で定義される任意の機能性、例えば、−SH部分を介してステップc)の後に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体に結合することができる。この脈絡において、成分(AA)(例えば、リガンド)は、ポリマー担体成分の遊離−SH部分を介して結合していることが好ましい。
【0212】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する本発明の方法のステップc)によって、本明細書で定義される少なくとも1つの核酸分子が、ステップb)で提供されるカチオン成分と、好ましくは上述した比で混合される。一般的に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体において、本明細書で定義されるカチオン性成分、および少なくとも1つの核酸分子は、約5対10000のモル比、好ましくは約5対5000のモル比、より好ましくは、約10対2500のモル比、さらにより好ましくは、約10対1000のモル比のカチオン性ポリマーと核酸で提供される。N/P比は、上記に示した通りであることが好ましい。この脈絡において、N/P比は、選択され、それによって、in vivoでの凝集および毒性を回避することが特に好適である。
【0213】
特定の実施形態では、−SH部分を含まない、上記で定義される(AA)成分を、ステップc)で添加することができ、これらはそれによって、(末端)−SH部分による重合を伴うことなく、本発明のポリマー(polxmeric)担体カーゴ複合体中に組み込まれる。それによって、これらの(AA)成分は、一般的に、共有結合的に連結されず、さらなる成分として本発明の複合体中に非共有結合的に含められる。
【0214】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する本発明の方法のさらなるステップd)によれば、ステップc)によって得られる本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、任意選択により精製される。精製は、クロマトグラフィー法、例えば、HPLC、FPLC、GPS、透析などを使用することによって行うことができる。
【0215】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する本発明の方法のさらなるステップe)によれば、ステップc)またはd)によって得られる本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、任意選択により凍結乾燥される。この目的のために、任意の適当な凍結保護物質またはリオプロテクタントを、ステップc)またはd)で得られる本発明のポリマー担体カーゴ複合体に添加することができる。
【0216】
本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を調製する本発明の方法は、ポリマー担体のその成分を具体的に選択することにより、所望の本発明のポリマー担体カーゴ複合体の化学的性質を適応させ、それによって、in vivoでの凝集および毒性を回避するのに特に適している。
【0217】
さらなる実施形態によれば、本発明は、特に治療目的で、細胞、組織、または生物にトランスフェクトし、それによって本発明のポリマー担体カーゴ複合体を適用または投与するための方法も提供する。この脈絡において、一般的に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を上述したように調製した後、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、好ましくは、裸の形態で、または本明細書に記載される医薬組成物もしくはワクチンとして、より好ましくは、本明細書に記載される投与モードのいずれかを使用して、細胞、組織、または生物に投与されることが好ましい。細胞にトランスフェクトするための方法は、in vitro、in vivo、またはex vivoで実施することができる。
【0218】
同様に、別の実施形態によれば、本発明はまた、特に治療目的で、細胞、組織、または生物にトランスフェクトし、それによって上述した本発明のポリマー担体カーゴ複合体を、好ましくは、裸の形態で、または本明細書に記載される医薬組成物もしくはワクチンとして、より好ましくは、本明細書に記載される投与モードのいずれかを使用して、細胞、組織、または生物に適用または投与するための本発明のポリマー担体カーゴ複合体の使用に関する。投与は、in vitro、in vivo、またはex vivoで実施することができる。
【0219】
したがって、特定の好適な実施形態では、本発明は、本明細書で定義される核酸カーゴおよび本明細書で定義されるポリマー担体によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を含む医薬組成物も提供する。医薬組成物は、薬学的に許容される担体および/またはビヒクルを任意選択により含む。
【0220】
第1の成分として、本発明の医薬組成物は、本明細書で定義される核酸カーゴおよびポリマー担体(および任意選択により、(AA)成分(複数可))によって形成される本発明のポリマー担体カーゴ複合体を含む。
【0221】
第2の成分として、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの追加の医薬として活性な成分を含むことができる。この関係における医薬として活性な成分は、特定の徴候、好ましくは、がん疾患、自己免疫疾患、アレルギー、または感染症を治癒し、回復させ、または予防する治療効果を有する化合物である。このような化合物として、いずれの限定も暗示することなく、好ましくは本明細書で定義されるペプチドまたはタンパク質、好ましくは本明細書で定義される核酸、(治療的に活性な)低分子量の有機または無機化合物(5000未満、好ましくは、1000未満の分子量)、好ましくは本明細書で定義される糖、抗原、または抗体、先行技術において既に公知の治療剤、抗原性細胞、抗原性細胞の断片、細胞画分、細胞壁成分(例えば、多糖)、改変、弱毒化、または不活化された(例えば、化学的に、または照射によって)病原体(ウイルス、細菌など)、好ましくは本明細書で定義されるアジュバントなどが挙げられる。
【0222】
さらに、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体および/またはビヒクルを含むことができる。本発明の脈絡において、薬学的に許容される担体は、一般的に、本発明の医薬組成物の液体または非液体の主成分を含む。本発明の医薬組成物が液体形態で提供される場合、担体は、一般的に、無発熱物質水、等張食塩水または緩衝(水性)溶液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩などの緩衝液となる。注射緩衝液は、特定の参照媒質に関して高張性、等張性、または低張性とすることができ、すなわち、緩衝液は、特定の参照媒質に関して、より高い、同一の、またはより低い塩含量を有することができ、ここで、好ましくは、このような濃度の上述の塩を使用することができ、これは、浸透または他の濃度効果によって細胞を損傷させない。参照媒質は、例えば、「in vivo」法で存在する液体、例えば、血液、リンパ、細胞質ゾル液体、もしくは他の体液など、または例えば、一般的な緩衝液もしくは液体などの「in vitro」法で参照媒質として使用することができる液体である。このような一般的な緩衝液または液体は、当業者に公知である。リンガー乳酸溶液は、液体主成分として特に好適である。
【0223】
しかし、治療される患者への投与に適した、1つまたは複数の適合性の固体または液体の充填剤または希釈剤または封入化合物(encapsulating compound)も、本発明の医薬組成物のために同様に使用することができる。用語「適合性の」は、本明細書において、本発明の医薬組成物のこれらの構成要素が、一般的な使用条件下で本発明の医薬組成物の薬剤有効性を実質的に低減する相互作用がまったく起こらない様式で、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体と混合され得ることを意味する。薬学的に許容される担体、充填剤、および希釈剤は、もちろん、十分に高い純度および十分に低い毒性を有することによって、これらを治療される人への投与に適したものにしなければならない。薬学的に許容される担体、充填剤、またはこれらの構成要素として使用することができる化合物のいくつかの例は、糖、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロースなど;デンプン、例えば、コーンスターチまたはジャガイモデンプンなど;セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースなど;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タロウ;固形流動促進剤、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなど;硫酸カルシウム;植物油、例えば、アメリカホドイモ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびカカオ由来の油など;ポリオール、例えば、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなど;アルギン酸である。
【0224】
特定の態様によれば、本発明の医薬組成物は、(追加の)アジュバントを含むことができる。この脈絡において、アジュバントは、生得免疫系の免疫応答、すなわち、非特異的免疫応答を開始し、または増大させるのに適した任意の化合物として理解され得る。言い換えると、投与される場合、本発明の医薬組成物は、一般的に、任意選択によりその中に入れられたアジュバントにより先天性免疫応答を誘発する。このようなアジュバントは、当業者に公知であり、本件、すなわち、哺乳動物における先天性免疫応答の誘導を支持することに適した任意のアジュバントから選択することができる。
【0225】
本発明の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、または移植されたリザーバを介して投与することができる。用語の非経口は、本明細書において、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、結節内、滑液嚢内、胸骨内、クモ膜下、肝内、病巣内、頭蓋内、経皮、皮内、肺内、腹腔内、心臓内、動脈内、舌下の注射または注入技法が含まれる。
【0226】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、非経口注射によって、より好ましくは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、結節内、滑液嚢内、胸骨内、クモ膜下、肝内、病巣内、頭蓋内、経皮、皮内、肺内、腹腔内、心臓内、動脈内、舌下の注射または注入技法によって投与することができる。皮内注射および筋肉内注射が特に好適である。滅菌注射用形態の本発明の医薬組成物は、水性または油性の懸濁液とすることができる。これらの懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当技術分野で公知の技法によって製剤化することができる。滅菌した注射用調剤品は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌性注射用溶液または懸濁液とすることもできる。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中では、水、リンガー液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌した固定油は、溶媒または懸濁化媒質として慣例的に使用される。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含めた、任意の無刺激性固定油を使用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にそのポリオキシエチル化されたバージョンにおいて、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注入可能医薬品の調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液は、カルボキシメチルセルロースなどの長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、またはエマルジョンおよび懸濁液を含めた、薬学的に許容される剤形の製剤において一般に使用される同様の分散剤も含有することができる。他の一般に使用される界面活性剤、例えば、Tween、Span、および他の乳化剤など、または薬学的に許容される固体、液体、もしくは他の剤形の製造において一般に使用されるバイオアベイラビリティーエンハンサーも、本発明の医薬組成物を製剤化する目的で使用することができる。
【0227】
本明細書で定義される本発明の医薬組成物は、それだけに限らないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液、または溶液を含めた、任意の経口的に許容される剤形で経口投与することもできる。経口で使用するための錠剤の場合では、一般に使用される担体には、ラクトースおよびコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も、一般的に添加される。カプセル形態での経口投与について、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれる。経口で使用するために水性懸濁液が必要とされる場合、活性成分、すなわち、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。必要に応じて、ある特定の甘味料、香味料、または着色剤も添加することができる。
【0228】
本発明の医薬組成物は、特に治療標的が、例えば、皮膚または任意の他のアクセス可能な上皮組織の疾患を含めた、局所適用によって容易にアクセス可能な範囲または臓器を含む場合、局所投与することもできる。これらの範囲または臓器のそれぞれについて、適当な局所製剤が容易に調製される。局所適用のために、本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の担体中に懸濁または溶解された本発明のポリマー担体カーゴ複合体を含有する適当な軟膏の状態で製剤化することができる。局所投与のための担体には、それだけに限らないが、鉱油、液体ペトロラタム、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水が含まれる。あるいは、本発明の医薬組成物は、適当なローション剤またはクリームの状態で製剤化することができる。本発明の脈絡において、適当な担体として、それだけに限らないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステル、ワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が含まれる。
【0229】
本発明の医薬組成物は、一般的に、本発明の医薬組成物、特に、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の「安全で有効な量」の成分、または核酸自体を含む。本明細書において、「安全で有効な量」は、本明細書で定義される疾患または障害の有益な改変を有意に誘導するのに十分である本発明のポリマー担体カーゴ複合体自体の量を意味する。しかし、同時に、「安全で有効な量」は、深刻な副作用を回避し、利点とリスクの間の理にかなった関係を可能にするように十分少ない。これらの制限の判定は、一般的に、理にかなった医学的判断の範囲内にある。本発明の医薬組成物、特に、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の成分の「安全で有効な量」は、治療される特定の状態、ならびにまた、治療される患者の年齢および身体状態、体重、全体的な健康、性別、飲食物、投与の時間、排泄率、薬物の組合せ、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の活性、状態の重症度、治療の継続時間、付随する療法の性質、使用される特定の薬学的に許容される担体の性質、ならびに同行する医師の知見および経験内の同様の知見に関連してさらに変化することになる。本発明の医薬組成物は、一般に医薬組成物として、またはワクチン、免疫賦活剤、もしくはアジュバントとして、ヒトに、また獣医学目的、好ましくはヒトの医学目的で使用することができる。
【0230】
特定の好適な実施形態によれば、本発明の医薬組成物(または本発明のポリマー担体カーゴ複合体)は、免疫賦活剤として提供または使用することができる。この脈絡において、本発明の医薬組成物は、上記に定義した通りであることが好ましい。より好ましくは、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸は、好ましくは医薬組成物中に含有されており、一般的に、本明細書で定義される免疫賦活性核酸、例えば、CpG−DNAまたは免疫賦活性RNA(isRNA)である。代わりに、またはさらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸は、好ましくは医薬組成物中に含有されており、本明細書で定義されるコーディング核酸、好ましくは、cDNAまたはmRNA、より好ましくは、好ましくは本明細書で定義されるアジュバントタンパク質をコードするものである。
【0231】
この脈絡における特定の実施形態では、アジュバントタンパク質は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の、好ましくは、ポリマー担体の成分であることが好適である。
【0232】
さらにより好適な実施形態によれば、本発明の医薬組成物(または本発明のポリマー担体カーゴ複合体)は、アジュバントとして提供または使用することができる。この脈絡において、アジュバントは、上記で本発明の医薬組成物として定義されることが好ましい。より好ましくは、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸は、好ましくはアジュバント中に含有されており、一般的に、本明細書で定義される免疫賦活性核酸、例えば、CpG−DNAまたは免疫賦活性RNA(isRNA)である。代わりに、またはさらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸は、好ましくはアジュバント中に含有されており、本明細書で定義されるコーディング核酸、好ましくは、cDNAまたはmRNA、より好ましくは、好ましくは本明細書で定義されるアジュバントタンパク質をコードするものである。本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、好ましくはアジュバント中に含有されており、一般的に、治療される患者において先天性免疫応答を開始する。このようなアジュバントは、任意の公知のワクチンまたは任意のさらなる(公知の)治療剤とともに、好ましくは、主療法の投与の前、同時、または後で、さらなる(公知の)ワクチンまたは(公知の)さらなる治療剤の投与の前、同時、または後で、任意の付随する療法において利用することができる。
【0233】
アジュバントとして提供または使用される、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体または本発明の医薬組成物は、好ましくは免疫賦活性の様式で、非抗原特異的(先天的)免疫反応(生得免疫系によってもたらされるような)を誘因することができることが好ましい。免疫反応は、一般に、様々な方法でもたらすことができる。適当な免疫応答にとって重要な要因は、異なるT細胞亜集団の刺激である。Tリンパ球は、一般的に、2つの亜集団、すなわち、Tヘルパー1(Th1)細胞およびTヘルパー2(Th2)細胞に分けられ、これらとともに、免疫系は、細胞内の(Th1)病原体および細胞外の(Th2)病原体(例えば、抗原)を破壊することができる。2つのTh細胞集団は、これらによって産生されるエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンが異なる。したがって、Th1細胞は、マクロファージおよび細胞傷害性T細胞の活性化による細胞性免疫応答を補助する。他方で、Th2細胞は、血漿細胞への変換のためのB細胞の刺激、および抗体(例えば、抗原に対する)の形成によって体液性免疫応答を促す。したがって、Th1/Th2比は、免疫応答において非常に重要である。本発明に関連して、免疫応答のTh1/Th2比は、免疫刺激剤、すなわち、本発明のポリマー担体カーゴ複合体によって、細胞応答、すなわちTh1応答への方向にずらされることが好ましく、それによって、主に細胞性の免疫応答が誘導される。上記に定義したように、本発明のポリマー担体カーゴ複合体は、非特異的な先天性免疫応答をそれ自体で発揮し、これは、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を、免疫賦活剤として、それ自体で(別の医薬として活性な成分を添加することなく)使用することを可能にする。別の医薬として活性な成分、好ましくは、特異的免疫原性成分、好ましくは、抗原と一緒に投与される場合、本発明の核酸は、他の医薬として活性な成分、例えば、抗原によって誘発される特異的適応免疫応答を支持するアジュバントとして機能を果たす。
【0234】
本発明の化合物または本発明の複合体の(先天的)免疫賦活性能力またはアジュバント能力の判定:
本発明の化合物または本発明の複合体の免疫賦活性能力を判定するために、当技術分野で公知のいくつかの方法を使用することができる。例えば、in vitro法は、生得免疫系の(もっぱら、または少なくとも一般的に)一部であるサイトカインを誘導し、それによって(免疫系(zthe immune system)の追加のアームとして)、一般的に、抗原によって引き起こされる抗原特異的免疫応答の誘導を改善する化合物の能力について、化合物をスクリーニングするのに有利である。この目的のために、例えば、PBMCを血液試料から単離し、特定の化合物または複合体で刺激することができる。インキュベーション後に、一般的に生得免疫系の一部である(かつ抗原特異的免疫系の一部でない)所望のサイトカイン(例えば、PAMP受容体の活性化の反応としての)の分泌が、ELISAによって判定される。これらの選択されたサイトカインを、体内の先天性免疫応答の誘導の決定基として、当技術分野で使用することができる。この脈絡において、TNF−αおよびIFN−αの分泌が測定されることによって、化合物または複合体によって誘起される非特異的(先天性免疫応答)が判定されることが好ましい。特に、IFN−αは、ウイルス感染後の非特異的免疫応答の誘導において重要な役割を果たす。したがって、スクリーニングアッセイによって同定されるはずである免疫賦活性の化合物または複合体は、例えば、IFN−αの分泌を誘導することが特に好適である。このような化合物または複合体を、例えば、ワクチン接種療法において、免疫賦活剤(immunotimualting agent)(非特異的(先天的)免疫応答を誘因する)として使用するために適用することができる。
【0235】
IFN−αは、I型インターフェロンのファミリーの一部である。I型インターフェロン(IFN)は、抗ウイルス免疫応答を支持するのに必須である多面発現性サイトカインである。これらは、ナチュラルキラー(NK)およびT細胞を活性化することに加えて、ウイルス感染細胞のアポトーシスおよびウイルス感染に対する細胞耐性を誘導する。I型インターフェロンは、とりわけ、免疫細胞成熟、ホーミング、エフェクター機能、およびアポトーシスに影響を与える、大きなセットのサイトカインおよびケモカインに対する効果を有する。一般的に、IFN−α/βの主要な役割は、サイトカインを含めた他のメディエーターの産生および制御に影響するプライミング状態の誘導である。例えば、IFN−α/βシグナル伝達は、樹状細胞(DC)およびT細胞によるIFN−γ産生を上方制御し、それによってTh1細胞の誘導および維持に有利に働く。Th1免疫応答の方向への免疫応答のシフトは、タンパク質またはペプチドワクチンが使用されると重要となり得、その理由は、これらのワクチンは、通常、Th2に基づく免疫応答を誘導し、したがってこれは、細胞毒性T細胞の誘導を防止するためである。
【0236】
したがって、アジュバントとして使用される化合物または複合体は、好ましくは、ワクチンによって引き起こされる抗原特異的免疫応答を、Th1に基づく免疫応答にシフトさせる特性を有することができることが好適である。ワクチンによって誘導される免疫応答の方向は、通常、抗原特異的抗体のいくつかのサブタイプの誘導、および抗原特異的細胞傷害性CD8+T細胞の誘導の判定によって測定される。この脈絡において、サブタイプ抗体IgG1は、Th2に基づく免疫応答の誘導を代表し、サブタイプ抗体IgG2aの誘導および細胞毒性T細胞の誘導は、Th1に基づく免疫応答の誘導を代表する。抗原特異的抗体の誘導は、ELISAによって、ワクチン接種を受けた人の血液中の抗体価を測定することによって判定される。抗原特異的細胞毒性T細胞の誘導は、ELISPOTによって、抗原特異的ペプチドで刺激した後の脾細胞中のIFN−γ分泌を測定することによって判定される。この脈絡において、IFN−γ分泌の誘導は、細胞表面でMHC I分子上の抗原のエピトープを提示する細胞を特異的に攻撃することができる、抗原特異的細胞毒性T細胞が脾臓中に存在することを証明する。
【0237】
したがって、アジュバントの有益な特性を判定するために、in vivoでのワクチン接種が実施される。それによって、アジュバントまたは免疫賦活性の化合物もしくは複合体が、ワクチンによって引き起こされる抗原特異的免疫応答を改善するか否か、さらに、これが、アジュバント特性を展示するように所望の方向に抗原特異的免疫応答をシフトさせることができるか否かを見出すことが可能である。特に、抗腫瘍免疫応答の誘導において、Th1にシフトした免疫応答の誘導、特に、細胞毒性T細胞の誘導は、主要な役割を果たし、その理由は、抗原特異的な細胞毒性T細胞の誘導は、腫瘍との闘いに成功するための欠かせない必要条件となるためである。
【0238】
したがって、免疫賦活剤および/またはアジュバントとしての特性を実際に呈する化合物または複合体をスクリーニングするための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、試験される化合物/複合体によって誘発される免疫応答を測定するELISA試験によって、容易に適用することができる。
【0239】
別の特に好適な実施形態によれば、本発明の医薬組成物(または本発明のポリマー担体カーゴ複合体)は、ワクチンとして提供または使用することができる。
【0240】
この脈絡において、ワクチンは、アジュバントとして、または上記に開示した本発明の医薬組成物として定義されることが好ましい。より好ましくは、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸は、好ましくはこのようなワクチン中に含有されており、上記に定義した任意の核酸、好ましくは、本明細書で定義される免疫賦活性核酸、例えば、CpG−DNAまたは免疫賦活性RNA(isRNA)とすることができる。代わりに、またはさらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸は、好ましくはワクチン中に含有されており、本明細書で定義されるコーディング核酸、好ましくは、cDNAまたはmRNA、より好ましくは、好ましくは本明細書で定義されるアジュバントタンパク質をコードするものである。代わりに、またはさらに、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸は、好ましくはワクチン中に含有されており、本明細書で定義されるコーディング核酸、好ましくは、cDNAまたはmRNA、より好ましくは、好ましくは本明細書で定義される抗原をコードするものである。さらに、特に、本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸が抗原をコードしない場合、本発明のワクチンは、タンパク質もしくはペプチドとしての、または核酸によってコードされる、好ましくは上記に定義された抗原、あるいは抗原性細胞、抗原性細胞の断片、細胞画分;細胞壁成分(例えば、多糖)、改変、弱毒化、または不活化された(例えば、化学的に、または照射によって)病原体(ウイルス、細菌など)を含有することができる。
【0241】
第1の態様によれば、免疫賦活性核酸が本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸分子として使用される場合、このような本発明のワクチンは、一般的に、本発明のアジュバントのように構成され、好ましくは、治療される患者の免疫系の先天性免疫応答を支持または誘発する。
【0242】
第2の態様によれば、好ましくは、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の核酸が、適応免疫応答を誘発するのに適した本明細書で定義される抗原をコードする場合、本発明のワクチンは、適応免疫応答を誘発することができる。あるいは、この抗原は、ペプチド、タンパク質、もしくはエピトープの形態であることができ、または前記抗原をコードする追加の核酸として提供することができる。抗原は、例えば、本明細書で定義される(AA)成分としての、本発明のポリマー担体の成分とすることもできる。
【0243】
本発明のワクチン、免疫賦活剤、またはアジュバントは、本発明の医薬組成物のための、本明細書で定義される、薬学的に許容される担体、アジュバント、および/またはビヒクルも含むことができる。本発明のワクチンの具体的な脈絡において、薬学的に許容される担体の選択は、本発明のワクチンが投与される様式によって原理上は決定される。本発明のワクチンは、例えば、全身的または局所的に投与することができる。全身投与のための経路として一般に、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、および腹腔内の注射を含めた経皮、経口、非経口の経路、ならびに/または鼻腔内投与経路が挙げられる。局所投与のための経路には一般に、例えば、局所投与経路が含まれ、しかし、皮内、経皮、皮下、もしくは筋肉内の注射、または病巣内、頭蓋内、肺内、心臓内、および舌下の注射も含まれる。より好ましくは、ワクチンは、皮内、皮下、または筋肉内の経路によって投与することができる。したがって、本発明のワクチンは、液体(または時に固体)形態で製剤化されることが好ましい。投与される本発明のワクチンの適当な量は、動物モデルを用いた日常の実験によって求めることができる。このようなモデルには、いずれの限定も暗示することなく、ウサギ、ヒツジ、マウス、ラット、イヌ、および非ヒト霊長類のモデルが含まれる。注射用の好適な単位用量形態には、水、生理食塩水、またはこれらの混合物の滅菌溶液が含まれる。このような溶液のpHは、約7.4に調整されるべきである。注射用の適当な担体には、ヒドロゲル、制御放出または遅延放出用のデバイス、ポリ乳酸、およびコラーゲン基質が含まれる。局所適用に適した薬学的に許容される担体には、ローション剤、クリーム、ゲルなどにおいて使用するのに適したものが含まれる。本発明のワクチンが経口投与される場合、錠剤、カプセルなどが好適な単位用量形態である。経口投与に使用することができる単位用量形態を調製するための薬学的に許容される担体は、先行技術において周知である。これらの選択は、本発明の目的にとって極めて重要というわけではない二次的考慮事項、例えば、味覚、費用、および貯蔵性などに依存することになり、当業者によって、困難なく行うことができる。
【0244】
本発明のワクチン、免疫賦活剤、またはアジュバントは、必要に応じて、その免疫原性または免疫賦活性能力を増大させるために、1つまたは複数の補助物質をさらに含有することができる。本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体、および本発明のワクチン中に任意選択により含有され得る補助物質、本明細書で定義される免疫賦活剤またはアジュバントの相乗作用は、それによって実現されることが好ましい。様々なタイプの補助物質に応じて、様々な機構がこの点において、考慮事項に加わり得る。例えば、樹状細胞(DC)の成熟を可能にする化合物、例えば、リポ多糖、TNF−α、またはCD40リガンドは、第1のクラスの適当な補助物質を形成する。一般に、免疫応答が標的化された様式で増強され、かつ/または影響を受けることを可能にする、「危険シグナル」(LPS、GP96など)またはGM−CFSなどのサイトカインの様式で免疫系に影響を与える任意の作用物質を補助物質として使用することが可能である。特に、好適な補助物質は、先天性免疫応答をさらに促すモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、またはケモカインなどのサイトカイン、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、INF−α、IFN−β、INF−γ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、LT−β、またはTNF−α、hGHなどの増殖因子などである。
【0245】
本発明のワクチン、免疫賦活剤、またはアジュバント中に含めることのできるさらなる添加剤は、乳化剤、例えば、Tween(登録商標)など;湿潤剤、例えば、硫酸ラウリルナトリウムなど;着色剤;風味付与剤(taste−imparting agent)、薬学的担体;錠剤形成剤;安定剤;抗酸化剤;保存剤である。
【0246】
本発明のワクチン、免疫賦活剤、またはアジュバントは、ヒトトール様受容体TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10へのその結合親和性(リガンドとして)により、またはマウストール様受容体TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、もしくはTLR13へのその結合親和性(リガンドとして)により、免疫賦活性であることが公知である任意のさらなる化合物もさらに含有することができる。
【0247】
本発明のワクチン、免疫賦活剤、またはアジュバントは、さらに、または代わりに、(先天的)免疫応答を誘因し、または増大させる、免疫賦活性RNA,すなわち、免疫賦活性RNAに由来するRNAも含有することができる。好ましくは、このような免疫賦活性RNAは、一般に、上文で定義した通りであることができる。
【0248】
この脈絡において、本発明のワクチン、免疫賦活剤、またはアジュバントに添加することができる別のクラスの化合物は、CpG核酸、特に、CpG−RNAまたはCpG−DNAとすることができる。CpG−RNAまたはCpG−DNAは、一本鎖CpG−DNA(ssCpG−DNA)、二本鎖CpG−DNA(dsDNA)、一本鎖CpG−RNA(ssCpG−RNA)、または二本鎖CpG−RNA(dsCpG−RNA)とすることができる。CpG核酸は、好ましくは、CpG−RNAの形態、より好ましくは、一本鎖CpG−RNA(ssCpG−RNA)の形態である。CpG核酸は、少なくとも1つまたは複数の(分裂促進性)シトシン/グアニンジヌクレオチド配列(複数可)(CpGモチーフ(複数可))を含有することが好ましい。第1の好適な選択肢によれば、これらの配列中に含有される少なくとも1つのCpGモチーフ、すなわち、CpGモチーフのC(シトシン)およびG(グアニン)は、メチル化されていない。これらの配列中に任意選択により含有されるすべてのさらなるシトシンまたはグアニンは、メチル化されていても、メチル化されていなくてもよい。しかし、さらなる好適な選択肢によれば、CpGモチーフのC(シトシン)およびG(グアニン)は、メチル化形態で存在することもできる。
【0249】
本発明はさらに、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体、本発明の医薬組成物、本発明の免疫賦活剤、もしくはアジュバント、およびこれらを含む本発明のワクチン、またはこれらを含むキットのいくつかの用途および使用を提供する。
【0250】
特定の一実施形態によれば、本発明は、薬剤としての、好ましくは、免疫賦活剤、アジュバント、もしくはワクチンとしての、または遺伝子療法の分野における本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の第1の医療上の使用を対象とする。
【0251】
別の実施形態によれば、本発明は、本明細書で定義される疾患を治療するための本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の第2の医療上の使用、好ましくは、本明細書で定義される様々な疾患を予防、治療し、かつ/または寛解させる、特に、本明細書で定義される疾患を予防、治療し、かつ/または寛解させるための薬剤を調製するための、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体、医薬組成物、ワクチン、免疫賦活剤、アジュバント、もしくはこれらを含むワクチン、またはこれらを含むキットの使用を対象とする。医薬組成物、免疫賦活剤、アジュバント、またはワクチンは、この目的のために、それを必要とする患者に使用または投与されることが好ましい。
【0252】
好ましくは、本明細書で言及される疾患は、がん疾患もしくは腫瘍疾患、感染症、好ましくは(ウイルス、細菌、もしくは原生動物の)感染症、自己免疫疾患、アレルギーもしくはアレルギー性疾患、単一遺伝子疾患(monogenetic disease)、すなわち、(遺伝性の)疾患、もしくは一般遺伝病(genetic diseases in general)、遺伝的に継承された背景を有し、一般的に、1つの遺伝子欠陥によって引き起こされ、メンデルの法則によって継承される疾患、心血管疾患、神経細胞疾患、または本発明によって影響を受け得る任意の疾患から選択される。
【0253】
このような疾患は、好ましくは、黒色腫、悪性黒色腫、結腸癌、リンパ腫、肉腫、芽腫、腎癌、胃腸腫瘍、神経膠腫、前立腺腫瘍、膀胱がん、直腸腫瘍、胃がん、食道がん、膵がん、肝がん、乳癌(=乳がん)、子宮がん、子宮頸がん、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、肝細胞癌、様々なウイルス誘発腫瘍、例えば、パピローマウイルス誘発癌(例えば、子宮頸癌=子宮頸がん)、腺癌、ヘルペスウイルス誘発腫瘍(例えば、バーキットリンパ腫、EBV誘発B細胞リンパ腫)、B型肝炎(heptatitis B)誘発腫瘍(肝細胞癌)、HTLV−1誘発リンパ腫およびHTLV−2誘発リンパ腫など、聴神経腫、肺癌(=肺がん=気管支癌)、小細胞肺癌、咽頭癌、肛門癌、グリア芽細胞腫、直腸癌、神経膠星状細胞腫、脳腫瘍、網膜芽細胞腫、基礎細胞腫、脳転移、髄芽腫、膣がん、膵がん、精巣がん、ホジキン症候群、髄膜腫、Schneeberger病、脳下垂体腫瘍、菌状息肉腫、カルチノイド、神経鞘腫、棘細胞腫、バーキットリンパ腫、喉頭癌、腎がん、胸腺腫、体癌(corpus carcinoma)、骨がん、非ホジキンリンパ腫、尿道がん、CUP症候群、頭部/頸部腫瘍、乏突起膠腫、外陰部がん、腸がん、結腸癌、食道癌(=食道がん)、いぼ障害(wart involvement)、小腸の腫瘍、頭蓋咽頭腫(craniopharyngeoma)、卵巣癌、生殖器の腫瘍、卵巣がん(=卵巣癌)、膵癌(=膵がん)、子宮内膜癌、肝転移、陰茎がん、舌がん、胆嚢がん、白血病、形質細胞腫、眼瞼腫瘍、前立腺がん(=前立腺腫瘍)などから選択されるがん疾患または腫瘍疾患が含まれる。
【0254】
さらなる特定の一実施形態によれば、本明細書で定義される疾患は、感染症、好ましくは(ウイルス、細菌、または原生動物の)感染症を含む。このような感染症、好ましくは(ウイルス、細菌、または原生動物の)感染症は、一般的に、インフルエンザ、マラリア、SARS、黄熱病、AIDS、ライムボレリア症、リーシュマニア症、炭疽、髄膜炎、AIDSなどのウイルス感染症、Condylomata acuminata(Condyloma acuminata)、凹窩いぼ(hollow wart)、デング熱、三日熱、エボラウイルス、感冒、初夏髄膜脳炎(FSME)、流感、帯状疱疹(shingles)、肝炎、単純ヘルペスI型、単純ヘルペスII型、帯状疱疹(Herpes zoster)、インフルエンザ、日本脳炎、ラッサ熱、マールブルグウイルス、麻疹、口蹄疫、単核球症、流行性耳下腺炎、ノーウォークウイルス感染症、Pfeiffer腺熱(Pfeiffer’s glandular fever)、天然痘、ポリオ(小児期跛行)、偽クループ、第5病、狂犬病、いぼ、西ナイル熱、水痘、サイトメガロウイルス(cytomegalic virus)(CMV)、流産(前立腺炎)などの細菌感染症、炭疽、虫垂炎、ボレリア症、ボツリヌス中毒、Campylobacter(Camphylobacter)、トラコーマ病原体(尿道の炎症、結膜炎)、コレラ、ジフテリア、鼠径リンパ肉芽腫症(donavanosis)、喉頭蓋炎、チフス熱、ガス壊疽、淋疾、野兎病、Heliobacter pylori、百日咳、気候性横痃、骨髄炎、レジオネラ病、ライ病、リステリア症、肺炎、髄膜炎、細菌性髄膜炎、炭疽、中耳炎、Mycoplasma hominis、新生児敗血症(絨毛羊膜炎)、壊疽性口内炎、パラチフス、ペスト、ライター症候群、ロッキー山紅斑熱、Salmonella paratyphus、Salmonella typhus、猩紅熱、梅毒、破傷風、トリッパー(tripper)、ツツガムシ病、結核、チフス、膣炎(vaginitis)(膣炎(colpitis))、軟性下疳、および寄生虫、原生動物、または真菌によって引き起こされる感染症、例えば、アメーバ症、ビルハルツ住血吸虫症、シャーガス病、Echinococcus、裂頭条虫、魚中毒(シガテラ)、キツネ条虫、足白癬、イヌ条虫、カンジダ症、酵母菌の斑点(yeast fungus spot)、疥癬、皮膚リーシュマニア症、ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)、シラミ、マラリア、マイクロスコピー(microscopy)、糸状虫症(河川盲目症)、真菌疾患、ウシ条虫、住血吸虫症、ブタ条虫、トキソプラスマ症、トリコモナス症、トリパノソーマ症(睡眠病)、内臓リーシュマニア症、おむつ(nappy)/おむつ(diaper)皮膚炎、または微小条虫(miniature tapeworm)などから選択される。
【0255】
別の特定の実施形態によれば、本明細書で定義される疾患は、以下に定義される自己免疫疾患を含む。自己免疫疾患は、各疾患の主要な臨床病理学的特徴に応じて、全身性自己免疫疾患、および臓器特異的自己免疫疾患、または局在化した自己免疫疾患に広く分けることができる。自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、強皮症、関節リウマチ、および多発性筋炎を含めた全身性症候群、または内分泌学的(I型糖尿病(糖尿病1型)、橋本甲状腺炎、アジソン病など)、皮膚科学的(尋常性天疱瘡)、血液学的(自己免疫性溶血性貧血)、神経性(多発性硬化症)とすることができ、もしくは体組織の実質的に任意の限局性の塊(circumscribed mass)を伴う場合がある局所的症候群のカテゴリーに分けることができる。治療される自己免疫疾患は、I型自己免疫疾患、またはII型自己免疫疾患、またはIII型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、糖尿病、I型糖尿病(糖尿病1型)、慢性多発性関節炎、バセドー氏病、慢性肝炎の自己免疫形態、潰瘍性大腸炎、I型アレルギー疾患、II型アレルギー疾患、III型アレルギー疾患、IV型アレルギー疾患、線維筋痛症、脱毛、ベヒテレフ病、クローン病、重症筋無力症、神経皮膚炎、リウマチ性多発性筋痛、進行性全身性硬化症(PSS)、ライター症候群、リウマチ性関節炎、乾癬、血管炎など、またはII型糖尿病などからなる群から選択することができる。免疫系が、なぜ自己抗原に対する免疫反応を誘導するかに関する正確な機序は、これまでのところ解明されていないが、病因に関してはいくつかの知見が存在する。したがって、自己反応(autoreaction)は、T細胞バイパスに起因し得る。正常な免疫系は、大量に抗体を産生することができる前に、T細胞によるB細胞の活性化を必要とする。T細胞のこの要求は、B細胞の、またはさらには非特異的な様式でT細胞受容体のβサブユニットに直接結合することによって、T細胞のポリクローナル活性化を開始することができる超抗原を産生する生物による感染などの稀有な場合においてバイパスされ得る。別の説明では、分子擬態から自己免疫疾患を演繹する。外来性抗原は、ある特定の宿主抗原と構造上の類似性を共有することができ、したがって、この抗原(これは、自己抗原を模倣する)に対して産生される任意の抗体も、理論では、宿主抗原に結合し、免疫応答を増幅することができる。分子擬態の最も顕著な形態は、群A β−溶血性streptococciにおいて観察され、これは、ヒト心筋と抗原を共有し、リウマチ熱の心臓症状に関与する。
【0256】
さらに、さらなる特定の一実施形態によれば、本明細書で定義される疾患は、アレルギーまたはアレルギー性疾患、すなわち、アレルギーに関係する疾患を含む。アレルギーは、一般的に、本明細書で定義されるアレルギー抗原などのある特定の外来抗原またはアレルゲンに対する、異常な後天性の免疫学的過敏症を伴う状態である。このようなアレルギー抗原またはアレルゲンは、本明細書で定義されるアレルギー抗原、異なる源、例えば、動物、植物、真菌、細菌などに由来する抗原から選択することができる。この脈絡におけるアレルゲンには、例えば、草、花粉、カビ、薬物、または多数の環境要因などが含まれる。アレルギーは、通常、これらの抗原またはアレルゲンに対する局所的または全身性の炎症反応をもたらし、これらのアレルゲンに対して体内で免疫をもたらす。理論に束縛されることなく、いくつかの異なる疾患機構が、アレルギーの発症に関与していると仮定されている。P. GellおよびR. Coombsによる分類スキームによれば、単語「アレルギー」は、古典的なIgE機構によって引き起こされるI型過敏症に制限された。I型過敏症は、IgEによる肥満細胞および好塩基球の過剰な活性化を特徴とし、鼻水ほどの温和なものから、生命を危うくするアナフィラキシーショックおよび死亡までの症状をもたらし得る全身性炎症反応をもたらす。周知のタイプのアレルギーとして、それに限定されることなく、アレルギー性喘息(鼻粘膜の膨張に至る)、アレルギー性結膜炎(結膜の発赤およびかゆみに至る)、アレルギー性鼻炎(「枯草熱」)、アナフィラキシー、血管性浮腫(angiodema)、アトピー性皮膚炎(湿疹)、じん麻疹(urticaria)(じん麻疹(hives))、好酸球増多、呼吸アレルギー(respiratory)、昆虫毒針に対するアレルギー、皮膚アレルギー(湿疹、じん麻疹(hives)(じん麻疹(urticaria))、および(接触)皮膚炎などの様々な発疹に至り、これらを含む)、食物アレルギー、医薬に対するアレルギーなどが挙げられる。このようなアレルギー性の障害または疾患の治療は、好ましくは、特定の免疫応答を誘因する免疫反応を脱感作することによって行うことができる。このような脱感作は、本明細書で定義される核酸によってコードされる、有効量のアレルゲンまたはアレルギー抗原を投与して、好ましくは、医薬組成物として製剤化される場合、わずかな免疫反応を誘導することによって実行することができる。次いで、アレルゲンまたはアレルギー抗原の量を、治療される患者の免疫系が特定の量のアレルゲンまたはアレルギー抗原に耐容性を示すまで、引き続く投与において、段階的に増やすことができる。
【0257】
さらに、本発明の脈絡における、治療される疾患には、同様に、(遺伝性)疾患、一般的な単一遺伝子疾患における遺伝病すなわち、(遺伝性の)疾患、または一般遺伝病が含まれる。このような(単一)遺伝病、(遺伝性)疾患、または一般遺伝病は、一般的に、例えば、タンパク質活性の喪失、またはタンパク質の転写もしくは翻訳を可能にしない調節突然変異をもたらす遺伝子突然変異により、遺伝学的欠陥によって引き起こされる。頻繁に、これらの疾患は、代謝異常または他の症状、例えば、筋ジストロフィーをもたらす。本発明は、以下の(遺伝性)疾患または遺伝病の治療を可能にする:3−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症(II型);3−ケトチオラーゼ欠損症;6−メルカプトプリン感受性(mercaptopurine sensitivity);アールスコグスコット症候群;無βリポタンパク質血症;無カタラーゼ血症;軟骨無発生症;軟骨無発生症−軟骨低発生症;軟骨形成不全;色盲;遠位中間肢異形成症(Hunter−Thompson型);ACTH欠損症;アシル−CoAデヒドロゲナーゼ欠損症(短鎖、中鎖、長鎖);大腸腺腫症;アデノシン(adenosin)−デアミナーゼ欠損症;アデニロスクシナーゼ欠損;アドハリノパチー(adhalinopathy);先天性の副腎過形成(11−β−ヒドロキシラーゼ欠損症による;17−α−ヒドロキシラーゼ欠損症による;21−ヒドロキシラーゼ欠損症による);先天性の、低ゴナドトロピン性性機能低下症を伴った副腎低形成;副腎性器症候群(syndrom);副腎白質萎縮症;副腎脊髄神経障害;無フィブリノーゲン血症;無γグロブリン血症;アラジール症候群;白化症(褐色、眼球、眼皮膚、赤褐色);アルコール不耐性、急性;アルドラーゼA欠損症;糖質コルチコイド反応性アルドステロン症;アレキサンダー病;アルカプトン尿症;全身性脱毛症;α−1−アンチキモトリプシン欠損症;α−メチルアシル−CoAラセマーゼ欠損症;α−サラセミア/精神遅滞症候群;アルポート症候群;アルツハイマー病−1(APP関連);アルツハイマー病−3;アルツハイマー病−4;エナメル質形成不全症;アミロイドニューロパチー(家族性、いくつかの対立遺伝子型);アミロイド症(オランダ型;フィンランド型;遺伝性の腎臓の;腎臓の;老人性全身性の);筋萎縮性側索硬化症;無アルブミン血症;アンドロゲン非感受性;貧血(Diamond−Blackfan);貧血(溶血性、PK欠損による);貧血(溶血性、Rhヌル、抑制因子型);貧血(新生児溶血性、致命的およびほぼ致命的);貧血(鉄芽球性、失調症を伴った);貧血(鉄芽球性/低色素);G6PD欠損による貧血;動脈瘤(家族性、動脈);アンジェルマン症候群;血管性浮腫;無虹彩症;前区異常(anterior segment anomalies)および白内障;前眼部間葉異発生;前眼部間葉異発生および白内障;アンチトロンビンIII欠損症;不安関連パーソナリティ特性(anxiety−related personality trait);アペール症候群;無呼吸(麻酔後);ApoA−I欠損症およびapoC−III欠損症(複合);アポリポタンパク質A−II欠損症;アポリポタンパク質B−100(リガンドが欠損した);偽性ミネラルコルチコイド過剰(による高血圧症);アルギニン血症;アルギニノコハク酸尿症;関節症(進行性偽リウマトイド、小児期の);アスパルチルグルコサミン尿症;失調症(突発性);単離ビタミンE欠乏症(isolated vitamin E deficiency)を伴った失調症;毛細血管拡張性失調症;骨発生不全症II;ATP依存性DNAリガーゼI欠損;房室伝導障害を伴った心房中隔欠損症;丘疹病変を伴った無毛症;自閉症(スクシニルプリン性(succinylpurinemic));I型自己免疫性多腺疾患;自律神経系機能不全;アクセンフェルト奇形;無精子症;Bamforth−Lazarus症候群;Bannayan−Zonana症候群;バース症候群(Barthsyndrome);バーター症候群(2型または3型);基底細胞癌;基底細胞母斑症候群;BCG感染;Beare−Stevenson脳回転状皮膚(cutis gyrata)症候群;ベッカー型筋ジストロフィー;Beckwith−Wiedemann症候群;Bernard−Soulier症候群(B型;C型);ベスレムミオパチー;胆汁酸吸収不良、原発性;ビオチニダーゼ欠損症;膀胱がん;欠損したトロンボキサンA2受容体による出血性障害;ブルーム症候群;短指症(B1型またはC型);鰓耳症候群(branchiootic syndrome);鰓弓耳腎症候群;乳がん(侵襲性の管内の;小葉の;ライフェンスタイン症候群を伴った男性の;散発性);乳がん−1(早期発病);乳がん−2(早期発病);Brodyミオパチー;ブルガダ症候群;ブルンナー症候群;バーキットリンパ腫;蝶形ジストロフィー(butterfly dystrophy)(網膜);C1q欠損症(A型;B型;C型);C1r/C1s欠損症;C1s欠損症、単独;C2欠損症;C3欠損症;C3b不活化因子欠損症;C4欠損症;C8欠損症、II型;C9欠損症;常染色体性転換を伴った屈曲肢異形成;屈指症−関節症−内反股−心膜炎(coxa varapericarditis)症候群;カナバン病;カルバモイルリン酸シンテターゼI欠損症;糖タンパク質糖鎖不全症候群(carbohydrate−deficient glycoprotein syndrome)(I型;Ib型;II型);肺のカルチノイド腫瘍;心臓脳ミオパチー(cardioencephalomyopathy)(致命的な乳児性、チトクロムcオキシダーゼ欠損症による);心筋症(拡張型;X染色体拡張型;家族性肥大性;肥大性);カルニチン欠損症(全身性原発性);カルニチン−アシルカルニチントランスロカーゼ欠損症;手根管症候群(家族性);白内障(青色;先天性;結晶性棘状型;若年性発病;多型および層状;点状;毛様小帯粉状);白内障、Coppock様;CD59欠損症;セントラルコア病;小脳失調症;脳アミロイド血管障害;皮質下梗塞および白質脳症を伴った脳動脈症;脳海綿状血管腫(cerebral cavernous malformation)−1;脳・眼・顔・骨格症候群(Cerebrooculofacioskeletal)症候群;脳腱黄色腫症;脳血管疾患;セロイドリポフスチン沈着症(ニューロン、変形若年性型(variant juvenile type)、顆粒状オスミウム酸親和性沈着物を伴った);セロイドリポフスチン沈着症(ニューロン−1、乳児性);セロイドリポフスチン沈着症(ニューロン−3、若年性);Char症候群;シャルコー−マリー−トゥース病;シャルコー−マリー−トゥースニューロパチー;Charlevoix−Saguenay型;チェディアック−東症候群;クロール下痢症(フィンランド型);胆汁うっ滞(温和な再発性肝内);胆汁うっ滞(家族性肝内);胆汁うっ滞(進行性家族性肝内);コレステリルエステル蓄積症;点状軟骨異形成症(末節骨短縮型;近位肢型;X染色体優性;X染色体劣性;Grebe型);軟骨肉腫;先天性脈絡膜欠如;慢性肉芽腫症(常染色体、CYBAの欠損による);慢性肉芽腫症(X染色体連鎖性);NCF−1の欠損による慢性肉芽腫症;NCF−2の欠損による慢性肉芽腫症;カイロミクロン血症候群、家族性;シトルリン血症;古典的コケイン症候群−1;口唇裂、顎裂、口蓋裂;口唇裂/口蓋外胚葉異形成症候群;鎖骨頭蓋異形成症;CMO II欠損症;コーツ病;コケイン症候群−2、B型;コフィン−ローリー症候群;コルヒチン耐性;結腸腺癌;大腸がん;色覚異常(2型色覚者;1型色覚者;3型色覚者);結腸直腸がん;因子VおよびVIII複合欠損症(combined factor V and VIII deficiency);複合高脂血症(家族性);複合免疫不全症(X染色体連鎖性、中等度);複合体I欠損症;複合神経障害;錐体ジストロフィー−3;錐体桿体ジストロフィー3;錐体桿体ジストロフィー6;錐体桿体網膜ジストロフィー−2;先天性両側輸精管欠損;結膜炎、木質性;拘縮性クモ指症;コプロポルフィリン症;先天性扁平角膜;角膜混濁;角膜ジストロフィー(アベリノ型;膠様滴状;Groenouw型I;格子型I;Reis−Bucklers型);コルチゾール耐性;クマリン耐性;カウデン病;CPT欠損症、肝臓(I型;II型);こむら返り(家族性、カリウム惹起性);頭蓋−聾−手症候群;頭蓋骨癒合症(2型);クレチン症;クロイツフェルト−ヤコブ病;クリグラー−ナジャー症候群;クルーゾン症候群;Currarino症候群;皮膚弛緩症;周期性造血;周期性魚鱗癬(cyclic ichthyosis);円柱腫症;嚢胞性線維症;シスチン症(腎症の);シスチン尿症(II型;III型);先天色覚異常;ダリエ病;D−二機能性タンパク質欠損症;聴覚障害、常染色体優性1;聴覚障害、常染色体優性11;聴覚障害、常染色体優性12;聴覚障害、常染色体優性15;聴覚障害、常染色体優性2;聴覚障害、常染色体優性3;聴覚障害、常染色体優性5;聴覚障害、常染色体優性8;聴覚障害、常染色体優性9;聴覚障害、常染色体劣性1;聴覚障害、常染色体劣性2;聴覚障害、常染色体劣性21;聴覚障害、常染色体劣性3;聴覚障害、常染色体劣性4;聴覚障害、常染色体劣性9;聴覚障害、非症候性感音性13;聴覚障害、X染色体連鎖性1;聴覚障害、X染色体連鎖性3;デブリソキン感受性;デジュリーヌ−ソッタス病;認知症(家族性、デンマーク);認知症(前頭側頭骨、パーキンソン症を伴った);デント病;歯異常;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症;デニス−ドラッシュ症候群;隆起性皮膚線維肉腫;デスモイド疾患;尿崩症(腎原発性);尿崩症(神経下垂体性);糖尿病(インスリン抵抗性);糖尿病(珍しい型);糖尿病(II型);捻曲性骨異形成症;ジヒドロピリミジン尿症;遺伝子量感受性性転換(dosage−sensitive sex reversal);網膜のDoyneハニカム変性(Doyne honeycomb degeneration);デュビン−ジョンソン症候群;デュシェンヌ型筋ジストロフィー;血小板減少症を伴った赤血球産生異常性貧血;異常フィブリノーゲン血症(α型;β型;γ型);先天性角化異常症−1;プロトロンビン異常症;ジストニア(DOPA反応性(DOPAresponsive));ジストニア(ミオクローヌス性);ジストニア−1(ねじれ);外胚葉異形成;水晶体偏位;瞳孔偏位;欠指症(外胚葉異形成、および口唇裂/口蓋症候群3);エーラス−ダンロス症候群(早老性型);エーラス−ダンロス症候群(I型;II型;III型;IV型;VI型;VII型);エラスチン大動脈弁上狭窄(Elastin Supravalvar aortic stenosis);楕円赤血球症−1;楕円赤血球症−2;楕円赤血球症−3;エリスファンクレフェルト症候群;Emery−Dreifuss型筋ジストロフィー;気腫;脳症;心内膜線維弾性症−2;子宮内膜癌;終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症;S錐体増強症候群;前庭水管拡大症;表皮水疱症;栄養障害型表皮水疱症(優性または劣性);単純型表皮水疱症;表皮剥離性角質増殖症;表皮剥離性掌蹠角化症;てんかん(全般化する;若年性;ミオクローヌス性;夜行性前頭葉;進行性ミオクローヌス性);てんかん、良性、新生児(1型または2型);骨端異形成症(多発性);発作性運動失調症(2型);発作性運動失調症/ミオキミア症候群;赤血病(α−;異形成);赤血球増多;紅斑角皮症;エストロゲン耐性;LDH−Aの欠損による運動後ミオグロビン尿症;外骨腫、多発性(1型;2型);滲出性硝子体網膜症、X染色体連鎖性;ファブリー病;H因子欠損症;第VII因子欠損症;第X因子欠損症;第XI因子欠損症;第XII因子欠損症;第XIIIA因子欠損症;第XIIIB因子欠損症;家族性地中海熱;ファンコニ貧血;F
anconi−Bickel症候群;ファーバー脂肪肉芽腫症;脂肪肝(急性);ソラマメ中毒症;魚眼病;中心窩形成不全;脆弱X症候群;フレイジャー症候群;フリードライヒ失調症;フルクトース−ビスホスファターゼフルクトース不耐性(fructose−bisphosphatase Fructose intolerance);フコース症;フマラーゼ欠損症;白点状眼底;黄色斑眼底;G6PD欠損症;GABA−トランスアミナーゼ欠損症;白内障を伴ったガラクトキナーゼ欠損症;ガラクトースエピメラーゼ欠損症;ガラクトース血症;ガラクトシアリドーシス;GAMT欠損症;ガードナー症候群;胃がん;ゴーシェ病;熱性けいれんが加わった全般てんかん;胚細胞腫瘍;Gerstmann−Straussler病;巨細胞肝炎(新生児);巨大血小板障害;巨細胞線維芽腫;ギテルマン症候群;グランツマン血小板無力症(A型;B型);緑内障1A;緑内障3A;多形性神経膠芽腫;糸球体硬化症(巣状分節状);グルコース輸送欠陥(血液脳関門);グルコース/ガラクトース吸収不全症;グルコシダーゼI欠損症;グルタル酸尿症(I型;IIB型;IIC型);グルタチオン(gluthation)合成酵素欠損症;グリセロールキナーゼ欠損症;グリシン受容体(α−1ポリペプチド);糖原病I;糖原病II;糖原病III;糖原病IV;糖原病VI;糖原病VII;グリコーゲン症(肝臓、常染色体);グリコーゲン症(X染色体連鎖性肝臓);GM1−ガングリオシド蓄積症;GM2−ガングリオシド蓄積症;甲状腺腫(青年期多結節性);甲状腺腫(先天性);甲状腺腫(非風土性、単純);性腺形成不全(XY型);肉芽腫症、敗血性;グレーブス病;Greig脳性多合指症候群(Greig cephalopolysyndactyly syndrome);Griscelli症候群;成長ホルモン欠乏性小人症;聴覚障害および精神遅滞を伴った成長遅延;女性化乳房(家族性、アロマターゼ活性の増大による);オルニチン血症を伴った、脈絡膜および網膜の脳回転状萎縮(B6奏功性または無奏功性);ヘイリー−ヘイリー病;Haim−Munk症候群;手足子宮症候群;ハルデロポルフィリン尿症(harderoporphyrinuria);HDL欠損症(家族性);心ブロック(非進行性または進行性);ハインツ小体性貧血;HELLP症候群;血尿(家族性良性);ヘムオキシゲナーゼ−1欠損症;片まひ性片頭痛;血色素症(hemochromotosis);ヘモグロビンH症;ADA過剰による溶血性貧血;アデニレートキナーゼ欠損症による溶血性貧血;バンド3欠損による溶血性貧血;グルコースリン酸イソメラーゼ欠損症による溶血性貧血;グルタチオン合成酵素欠損症による溶血性貧血;ヘキソキナーゼ欠損症による溶血性貧血;PGK欠損症による溶血性貧血;溶血性尿毒症症候群;血球貪食性リンパ組織球増多症;血友病A;血友病B;第V因子欠損症による出血性素因;ヘモシデローシス(全身性、無セルロプラスミン血症による);肝性リパーゼ欠損症;肝芽腫;肝細胞癌;遺伝性出血性末梢血管拡張−1;遺伝性出血性末梢血管拡張−2;Hermansky−Pudlak症候群;内臓逆位(X染色体連鎖性内臓);異所形成(室周囲);Hippel−Lindau症候群;ヒルシュスプルング病;HRG欠損によるヒスチジンリッチ糖タンパク質血栓形成傾向;HMG−CoAリアーゼ欠損症;全前脳症−2;全前脳症−3;全前脳症−4;全前脳症−5;ホルト−オーラム症候群;ホモシスチン尿症;Hoyeraal−Hreidarsson;HPFH(欠失型または非欠失型);HPRT関連痛風;ハンチントン病;中脳水道狭窄による水頭症;胎児水腫;高βリポたんぱく血症;高コレステロール血症、家族性;高フェリチン血症−白内障症候群;高グリセロール血症(hyperglycerolemia);高グリシン血症;高IgD血症および間欠熱症候群;高インスリン症;高インスリン症−高アンモニア血症症候群;高カリウム血性周期性四肢麻痺;高リポ蛋白血症;高リシン血症;高メチオニン血症(持続性、常染色体、優性、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(methionine, adenosyltransferase)I/III欠損症による);高オルニチン−高アンモニア−ホモシトルリン血症(Hyperornithinemia−hyperammonemiahomocitrullinemia)症候群;高シュウ酸尿症;副甲状腺機能亢進症;プテリン−4a−カルビノールアミン(4acarbinolamine)デヒドラターゼ欠乏による高フェニルアラニン血症;高プロインスリン血症;高プロリン血症;高血圧症;甲状腺機能亢進症(hyperthroidism)(先天性);高トリグリセリド血症;低αリポ蛋白血症;低βリポ蛋白血症;低カルシウム血症;軟骨低形成症;低色素性小球性貧血;歯数不足症;低フィブリノーゲン血症;低グロブリン血症およびB細胞非存在(absent B cell);性腺機能低下症(性腺刺激ホルモン過剰);下垂体性機能不全の(性腺機能低下症);低カリウム血性周期性四肢麻痺;低マグネシウム血症;ミエリン形成不全(先天性);副甲状腺機能低下症;低ホスファターゼ血症(成人;小児期;乳児性;遺伝性);低プロトロンビン血症;甲状腺機能低下症(先天性;遺伝性先天性;非甲状腺腫性);魚鱗癬様紅皮症;魚鱗癬;ジーメンス型水疱性魚鱗癬;IgG2欠損症;線毛不動症候群−1;免疫不全症(T細胞受容体/CD3複合体);免疫不全症(X染色体連鎖性、高IgMを伴った);CD3−γの欠陥による免疫不全症;免疫不全−動原体の不安定顔面異常症候群(immunodeficiency−centromeric instabilityfacial anomalies syndrome);色素失調症;無痛症(先天性、無汗症を伴った);不眠(致命的家族性);インターロイキン−2受容体欠損(α鎖);椎間板疾患;虹彩隅角発生不全(iridogoniodysgenesis);成長ホルモン単独欠損症(GHが存在しないIllig型および生物学的不活性なGHを伴うKowarski型);イソ吉草酸血症;Jackson−Weiss症候群(sydnrome);Jensen症候群;ジャーベル−ランゲニールセン症候群;ジュベール症候群;Juberg−Marsidi症候群;カルマン症候群;神崎病;角膜炎;角皮症(掌蹠);掌蹠角化症(keratosis palmoplantaris striata)I;掌蹠角化症II;SCOT欠損症によるケトアシドーシス;Keutel症候群;Klippel−Trenaunay syndrome(Klippel−Trenaurnay syndrom);クニースト骨異形成症;コストマン型好中球減少症;クラッベ病;Kurzripp−Polydaktylie症候群;PDX1欠損による乳酸血症;Langer中脚異形成(Langer mesomelic dysplasia);ラロン小人症;Laurence−Moon−Biedl−Bardet症候群;LCHAD欠損症;レーバー先天性黒内障;左右軸形成異常(left−right axis malformation);リー症候群;平滑筋腫症(びまん性、アルポート症候群を伴った);妖精症;Leri−Weill軟骨異形成症;レッシュ−ナイハン症候群;白血病(急性骨髄性;急性前骨髄球性;急性T細胞リンパ芽球性;慢性骨髄性;若年性骨髄単球性);白血病−1(T細胞急性リンパ球性);白血球接着不全症;Leydig細胞腺腫;Lhermitte−Duclos症候群;Liddle症候群;リ−フラウメニ症候群;リポアミドデヒドロゲナーゼ欠乏;脂肪異栄養症;リポイド副腎過形成;リポタンパク質リパーゼ欠損症;脳回欠損(X染色体連鎖性);脳回欠損−1;肝糖原病(0型);QT延長症候群−1;QT延長症候群−2;QT延長症候群−3;QT延長症候群−5;QT延長症候群−6;Lowe症候群;肺がん;肺がん(非小細胞);肺がん(小細胞);リンパ浮腫;リンパ腫(B細胞非ホジキン);リンパ腫(びまん性大細胞);リンパ腫(濾胞);リンパ腫(MALT);リンパ腫(マントル細胞);リンパ球増殖性症候群(X染色体連鎖性);リシン尿性蛋白質不耐症;マシャド−ジョセフ病;不応性大球性貧血(macrocytic anemia refractory)(5q症候群の);黄斑ジストロフィー;悪性中皮腫;マロニル−CoA脱炭酸酵素欠損症;マンノース症(α−またはβ−);メープルシロップ尿症(Ia型;Ib型;II型);Marfan症候群;マロトー−ラミー症候群;マーシャル症候群;MASA症候群;肥満細胞性白血病;関連した血液病を伴った肥満細胞症;マックアードル病;McCune−Albright多骨性線維性骨異形成症;McKusick−Kaufman症候群;McLeod表現型;甲状腺髄様癌;髄芽腫;Meesmann角膜ジストロフィー;巨赤芽球性貧血−1;黒色腫;メンブロ増殖性糸球体腎炎(membroproliferative glomerulonephritis);メニエール病;髄膜腫(NF2関連;SIS関連);メンケス病;精神遅滞(X染色体連鎖性);メフェニトインプアメタボライザー(mephenytoin poor metabolizer);中皮腫;異染性白質ジストロフィー;骨幹端軟骨形成不全症(Murk Jansen型;Schmid型);メトヘモグロビン血症;メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ欠損症(常染色体劣性);メチルコバラミン欠損症(cbl G型);メチルマロン酸尿症(ムターゼ欠損型);メバロン酸尿症;MHCクラスII欠損症;小眼球症(白内障、および虹彩異常);三好型ミオパチー;MODY;Mohr−Tranebjaerg症候群;モリブデン補助因子欠損症(A型またはB型);連珠毛;Morbus Fabry;Morbus Gaucher;ムコ多糖症;ムコビシドーシス;Muencke症候群;ミュア−トール症候群;マリブレー低身長症;多発性カルボキシラーゼ欠損症(ビオチン反応性);多発性内分泌腫瘍症;筋グリコーゲン症(muscle glycogenosis);筋ジストロフィー(先天性メロシン欠損型);筋ジストロフィー(福山型先天性);筋ジストロフィー(肢帯型);筋ジストロフィー(デュシェンヌ様);単純型表皮水疱症を伴った筋ジストロフィー;筋無力症症候群(スローチャネル型先天性);マイコバクテリア感染(非定型的、家族性散在性);骨髄異形成症候群;骨髄性白血病;骨髄性悪性腫瘍;ミエロペルオキシダーゼ欠損症;ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損;PGK欠損症によるミオグロビン尿症/溶血;ミオ神経胃腸脳筋症症候群(myoneurogastrointestinal encephalomyopathy syndrome);ミオパチー(アクチン;先天性;デスミン関連;心骨格;遠位;ネマリン);CPT II欠損症によるミオパチー;ホスホグリセレートムターゼ欠損症によるミオパチー;先天性筋緊張症;ミオトニアレヴィオール(myotonia levior);筋緊張性ジストロフィー;粘液性脂肪肉腫;NAGA欠損症;爪膝蓋骨症候群;ネマリンミオパチー1(常染色体優性);ネマリンミオパチー2(常染色体劣性);新生児副甲状腺機能亢進症;腎結石症;ネフロンろう(若年性);腎症(慢性低補体性);ネフローゼ−1;ネフローゼ症候群;ネザートン症候群;神経芽細胞腫;神経線維腫症(1型または2型);ニューロレモマトーシス(neurolemmomatosis);ニューロン−5セロイドリポフスチン沈着症;ニューロパチー;好中球減少(同種免疫新生児);ニーマン−ピック病(A型;B型;C1型;D型);夜盲症(先天性定常);ナイミーヘン染色体不安定症候群(nijmegen breakage syndrome);左心室筋の非圧縮;非表皮剥離性(nonepidermolytic)掌蹠角皮症;ノリエ病;Norum病;ヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症;肥満症;オクチ
ピタールホーン症候群;眼白皮症(Nettleship−Falls型);眼咽頭型筋ジストロフィー(dystorphy);小口病;乏歯症;オーメン症候群;Opitz G症候群;腎疾患を伴った視神経欠損症;オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症;オロト酸尿症;起立耐性失調;OSMED症候群;脊椎後縦靱帯骨化症;骨関節症;骨形成不全症;骨溶解;大理石骨病(劣性または特発性);骨肉腫;卵巣癌;卵巣発育不全;先天性爪肥厚症(Jackson−Lawler型またはJadassohn−Lewandowsky型);骨のページェット病;パリスター−ホール症候群;膵臓非形成;膵がん;膵炎;パピヨン−ルフェーブル症候群;傍神経節腫;先天性パラミオトニア;頭頂孔;パーキンソン病(家族性または若年性);発作性夜間血色素尿症;ペリツェウス−メルツバッハー病;ペンドレッド症候群;会陰部尿道下裂;間欠熱;ペルオキシソーム生合成障害;乳児期の持続性高インスリン性低血糖症;持続性ミュラー管症候群(II型);ピータース異常;Peutz−Jeghers症候群;ファイファー症候群;フェニルケトン尿症;ホスホリボシルピロリン酸合成酵素関連痛風;肝臓および筋肉のホスホリラーゼキナーゼ欠損症;まだら症;石灰化上皮腫;両側性網膜芽細胞腫を伴った松果体腫;ACTH産生下垂体腺腫;下垂体ホルモン欠損症;下垂体腫瘍;胎盤ステロイドスルファターゼ欠損症;プラスミン阻害剤欠損症;プラスミノーゲン欠損症(I型およびII型);プラスミノーゲンTochigi病(plasminogen Tochigi disease);血小板障害;血小板糖タンパク質IV欠損症;血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ欠損;多発性嚢胞腎;硬化性白質脳症(sclerosing leukenencephalophathy)を伴った多発嚢胞性脂肪膜性骨異形成症;多指症、軸後性;ポリープ症;膝窩翼状片症候群;ポルフィリン症(急性肝臓または急性間欠性または先天性赤血球形成性);晩発性皮膚ポルフィリン症;骨髄肝性ポルフィリン症;多型ポルフィリン症;プラダー−ウィリー症候群;思春期早発症;早発閉経;早老症I型(Typ I);早老症II型;進行性外眼筋麻痺;進行性肝内胆汁うっ滞−2;プロラクチン産生腺腫(副甲状腺機能亢進症、カルチノイド症候群);プロリダーゼ欠損症;プロピオン酸血症;前立腺がん;タンパク質S欠損症;タンパク尿症;プロトポルフィリン症(赤血球形成性);偽軟骨異形成症;偽半陰陽;偽低アルドステロン症;偽性副甲状腺機能低下症;偽膣性会陰部陰嚢部尿道下裂(pseudovaginal perineoscrotal hypospadias);偽性ビタミンD欠乏性くる病;弾力線維性仮性黄色腫(常染色体優性;常染色体劣性);肺胞蛋白症;肺高血圧症;劇症紫斑病;濃化異骨症;熱変形赤血球症;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症;ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症;ラブソン−メンデンホール症候群;レフサム病;腎細胞癌;尿細管性アシドーシス;聴覚障害を伴った尿細管性アシドーシス;尿細管性アシドーシス−大理石骨病症候群;細網症(家族性組織球性);網膜変性症;網膜ジストロフィー;網膜色素変性症;白点状網膜炎;網膜芽細胞腫;レチノール結合タンパク質欠損症;網膜分離症;レット症候群;Rh(mod)症候群;ラブドイド素因症候群;ラブドイド腫瘍;横紋筋肉腫;横紋筋肉腫(肺胞);肢根型点状軟骨異形成症;Ribbing症候群;くる病(ビタミンD抵抗性);リーガー異常;ロビノウ症候群;ロトムンド−トムソン症候群;ルビンシュタイン−テイビ症候群;サッカロース尿症;Saethre−Chotzen症候群;サラ病;サンドホフ病(乳児型、若年型、および成人型);サンフィリポ症候群(A型またはB型);Schindler病;脳裂;統合失調症(慢性);シュワン腫(散発性);SCID(常染色体劣性、T陰性/B陽性型);TMDを伴った分泌経路;先天性SED;Segawa症候群;選択的なT細胞欠陥;SEMD(パキスタン型);SEMD(Strudwick型);中隔視神経異形成症;重度複合免疫不全症(B細胞陰性);重度複合免疫不全症(T細胞陰性、B細胞/ナチュラルキラー細胞陽性型);重度複合免疫不全症(X染色体連鎖性);ADA欠損症による重度複合免疫不全症;性転換(XY、副腎不全を伴った);セザリー症候群;Shah−Waardenburg症候群;低身長;シュプリンツェン−ゴールドバーグ症候群;シアル酸蓄積症(sialic acid storage disorder);シアリドーシス(I型またはII型);シアル酸尿症;鎌状赤血球性貧血;シンプソン−ゴラビ−ベーメル症候群;非定位(Situs ambiguus);シェーグレン−ラルソン症候群;スミス−ファインマン−マイヤーズ症候群;スミス−レムリ−オピッツ症候群(I型またはII型);ソマトトロピノーマ(somatotrophinoma);ソースビー眼底変性症;痙性対麻痺;球状赤血球症;球状赤血球症−1;球状赤血球症−2;Kennedyの球脊髄性筋委縮症;脊髄性筋萎縮症;脊髄小脳失調症;脊椎肋骨異骨症;遅発性脊椎骨端異形成症;脊髄骨幹端異形成(日本型);シュタルガルト症−1;多発性脂腺嚢腫症;スティックラー症候群;スタージ−ウェーバー症候群;皮質下ラミナルヘテロピア(subcortical laminal heteropia);皮質下層状異所形成(subcortical laminar heterotopia);コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ欠損症;糖不耐性;Sutherland−Haan症候群;CFを伴わない汗塩化物上昇(sweat chloride elevation);指節癒合症;骨癒合症候群(synostoses syndrome);合多指症;タンジール病;テイ−サックス病;T細胞急性リンパ芽球性白血病;T細胞免疫不全症;T細胞前リンパ球性白血病;サラセミア(α−またはδ−);Hb Leporeによるサラセミア;致死性骨異形成症(I型またはII型);チアミン反応性巨赤芽球性貧血症候群;血小板血症;血栓形成傾向(ジスプラスミノーゲネミック(dysplasminogenemic));ヘパリン補助因子II欠損による血栓形成傾向;プロテインC欠損症による血栓形成傾向;トロンボモジュリン欠損による血栓形成傾向;甲状腺腫;甲状腺ホルモン不応症;甲状腺ヨウ素ペルオキシダーゼ欠損症;ティーツェ症候群;トルブタミドプアメタボライザー(tolbutamide poor metabolizer);タウンズ−ブロックス症候群;トランスコバラミンII欠損症;Treacher Collins下顎顔面骨形成不全症;毛髪歯骨(trichodontoosseous)症候群;毛髪鼻指節骨症候群;裂毛症;三官能性タンパク質欠損症(I型またはII型);トリプシノーゲン欠損症;結節性硬化症−1;結節性硬化症−2;ターコット症候群;チロシンホスファターゼ;チロシン血症;尺骨乳房症候群;尿路結石症(2,8−ジヒドロキシアデニン);アッシャー症候群(1B型または2A型);静脈奇形;心室頻脈;男性化;ビタミンK依存性凝固(vitamin K−dependent coagulation)欠損症;VLCAD欠損症;フォーヴィンケル症候群;フォンヒッペル−リンダウ症候群;フォンウィルブランド病;ワールデンブルグ症候群;ワールデンブルグ症候群/眼白皮症;ワールデンブルグ−シャー神経性変形(Waardenburg−Shah neurologic variant);ワールデンブルグ−シャー症候群;Wagner症候群;ワルファリン感受性;ワトソン症候群;Weissenbacher−Zweymuller症候群;ウェルナー症候群;Weyers先端歯骨形成不全症;白色海綿状母斑;ウィリアムズ−ビューレン症候群;ウィルムス腫瘍(1型);ウィルソン病;ウィスコット−アルドリッチ症候群;ウォルコット−ラリソン症候群;ウルフラム症候群;ウォルマン病;キサンチン尿症(I型);色素性乾皮症;X−SCID;イエメン盲ろう色素脱失症候群;低カルシウム尿性高カルシウム血症(ypocalciuric hypercalcemia)(I型);ツェルウェガー症候群;Zlotogora−Ogur症候群。
【0258】
同様に、本発明の脈絡において治療される疾患には、遺伝学的に継承された背景を有する疾患、ならびに一般的に1つの遺伝子欠損によって引き起こされ、メンデルの法則によって継承される疾患も含まれ、好ましくは、常染色体性劣性遺伝病、例えば、アデノシンデアミナーゼ欠損症、家族性高コレステロール血症、Canavan症候群、ゴーシェ病、ファンコニ貧血、ニューロンセロイドリポフスチン沈着症(lipofuscinoses)、ムコビシドーシス(嚢胞性線維症)、鎌状赤血球性貧血、フェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、白皮症、甲状腺機能低下症、ガラクトース血症、α−1−抗トリプシン欠損症、色素性乾皮症、Ribbing症候群、ムコ多糖症、口唇裂、顎、口蓋、Laurence Moon Biedl Bardet症候群(sydrome)、短肋骨多指症候群(short rib polydactylia syndrome)、クレチン症、ジュベール症候群、II型早老症、短指、副腎性器症候群など、ならびにX染色体遺伝病(X−chromosome inherited disease)、例えば、色覚異常、例えば、赤緑色覚異常、脆弱X症候群、筋ジストロフィー(Duchenne and Becker−Kiener型)、血友病Aおよび血友病B、G6PD欠損症、ファブリー病、ムコ多糖症、ノリエ症候群、網膜色素変性症、敗血性肉芽腫症、X−SCID、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、レッシュ−ナイハン症候群など、または常染色体優性遺伝病(autosomal−dominant inherited diseases)、例えば、遺伝性血管性浮腫(angiooedema)、マルファン症候群、神経線維腫症、I型早老症、骨形成不全症、Klippel−Trenaunay症候群(Klippel−Trenaurnay syndrome)、スタージ−ウェーバー症候群、ヒッペル−リンダウ症候群、および結節性硬化症(tuberosis sclerosis)などからなる群から選択される。
【0259】
本発明は、遺伝継承されていない疾患、または上記カテゴリー下に集約することができない疾患の治療も可能にする。このような疾患は、例えば、特定のタンパク質因子、例えば、上述した特定の治療的に活性なタンパク質を必要とする患者の治療を含むことができる。これは、例えば、透析患者、例えば、(定期的な)腎臓(kidney)または腎臓(renal)の透析を受け、本明細書で定義される特定の治療的に活性なタンパク質、例えば、エリスロポエチン(EPO)などを必要とする場合のある患者を含むことができる。
【0260】
同様に、本発明の脈絡における疾患として、それに限定されることなく、冠動脈性心疾患、動脈硬化症、脳卒中、および高血圧症などから選ばれる心血管疾患を挙げることができる。
【0261】
最後に、本発明の脈絡における疾患は、例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ジストニア、てんかん、多発性硬化症、およびパーキンソン病などを含めたニューロン疾患から選ぶことができる。
【0262】
別の実施形態によれば、本発明は、遺伝子療法によって本明細書で定義される疾患を治療するための、本明細書で定義される本発明のポリマー担体カーゴ複合体の第2の医療上の使用を対象とする。
【0263】
さらなる好適な実施形態では、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を、医薬組成物、免疫賦活剤、アジュバント、またはワクチンを調製するのに使用することができる。
【0264】
本発明の医薬組成物、免疫賦活剤、アジュバント、またはワクチンはさらに、本明細書で定義される疾患または障害を治療するのに使用することができる。
【0265】
最後の実施形態によれば、本発明は、キット、特に、単独の、もしくはさらなる成分と組み合わせた成分として、本明細書で定義される少なくとも1つの本発明のポリマー担体カーゴ複合体、このポリマー担体カーゴ複合体を含む少なくとも1つの医薬組成物、免疫賦活剤、アジュバント、もしくはワクチンを含むキットオブパーツ、ならびに/またはこのポリマー担体カーゴ複合体と、任意選択によりポリマー担体分子、核酸、本発明のポリマー担体複合体、および/もしくは本発明の医薬組成物の投与および投与量についての情報を含む技術的指示書を含むキットも提供する。このようなキット、好ましくは、キットオブパーツは、例えば、上述した用途または使用のいずれにも適用することができる。このようなキットは、キットオブパーツとして存在する場合、キットの異なるパーツ内に本発明の医薬組成物、免疫賦活剤、アジュバント、またはワクチンの各成分をさらに含有することができる。
【0266】
本発明において、別段の指示がなければ、適当な場合、選択肢および実施形態の異なるフィーチャを互いに組み合わせることができる。さらに、用語「〜を含む」は、具体的に言及されていない場合「〜からなる」の意味として解釈されないものとする。しかし、本発明の脈絡において、用語「〜を含む」は、適当な場合、用語「〜からなる」と置き換えることができる。
【実施例】
【0267】
以下の実施例は、本発明をさらに例示することが意図されている。これらは、本発明の主題をこれらに限定することは意図されていない。
【0268】
1.試薬:
カチオン性成分としてのカチオン性ペプチド:
【0269】
【化19】
カーゴとしての核酸:
R1180:ルシフェラーゼをコードするmRNA(配列番号384)
R722:長い非コーディングisGUリッチRNA(配列番号385)
R491:ルシフェラーゼをコードするmRNA(配列番号386)
CpG2216:CpGオリゴヌクレオチド(配列番号387)
短GUリッチ:GUリッチRNAオリゴヌクレオチド(配列番号369)
2.核酸配列の調製:
本実施例のために、実施例1に示した核酸配列を調製し、本発明の重合されたポリマー担体カーゴ複合体、または比較のための重合されていない担体カーゴ複合体を形成するために使用した。これらのポリマー担体カーゴ複合体を、in vitroおよびin vivoでのトランザクション、in vitro免疫刺激、ならびに粒子特徴づけのために使用した。
【0270】
第1の調製によって、対応するRNA配列R1180、R722、およびR491配列をコードするDNA配列を調製した。対応するRNAの配列を、配列表(配列番号:384、385、および386)に示す。
【0271】
短いGUリッチ配列およびCpG2216オリゴヌクレオチドを、ホスホラミジット化学による自動固相合成によって調製した。配列を配列表に示す(配列番号:387および369)。
【0272】
2.In vitro転写:
R1180、R722、およびR491について実施例2で調製したそれぞれのDNAプラスミドを、製造者の指示書に従って、T7−ポリメラーゼ(T7−Opti mRNA Kit、CureVac、Tubingen、ドイツ)を使用してin vitroで転写した。引き続いて、PureMessenger(登録商標)(CureVac、Tubingen、ドイツ)を使用してmRNAを精製した。
【0273】
3.ポリマー担体カーゴ複合体の合成:
実施例1で上記に定義した核酸配列を、実施例1で定義したカチオン性成分と混合した。したがって、示した量の核酸配列を、示した質量比でそれぞれのカチオン成分と混合し、それによって複合体を形成した。カチオン性成分の重合を本発明によって使用する場合、カチオン性成分の重合は、核酸カーゴの複合形成と同時に行った。その後、得られた溶液を水で調整して50μlの最終体積にし、室温で30分間インキュベートした。実験で使用したカチオン性成分/核酸の様々な比を表1に示す。
【0274】
【表1】
N/P比=ポリマー担体のカチオン性成分またはポリマー担体自体のイオン変化の尺度である。カチオン性成分のカチオン特性が窒素原子によってもたらされる場合、N/P比は、窒素原子が正電荷に対応し、核酸のリン酸骨格のリン酸が負電荷に対応するとみなして、塩基性窒素原子とリン酸残基の比である。
【0275】
N/Pは、以下の式によって計算されることが好ましい:
【0276】
【数1】
例として186kDaの分子量を有する配列番号385によるRNA R722を適用した。したがって、1μgのR722 RNAは、5.38pmolのRNAに対応する。
【0277】
4.HepG2細胞およびB16F10細胞へのトランスフェクション:
ルシフェラーゼをコードする5μgのmRNA(R1180)を含有するポリマー担体カーゴ複合体を、実施例3に示したように調製した。HepG2細胞またはB16F10細胞(150×10
3/ウェル)を、トランスフェクションの1日前に、24ウェルのマイクロタイタープレート上に播種し、トランスフェクションを実施したとき、70%のコンフルエンスになった。トランスフェクションのために、ポリマー担体カーゴ複合体溶液50μlを無血清培地250μlと混合し、細胞に添加した(最終的なRNA濃度:13μg/ml)。無血清トランスフェクション溶液を添加する前に、1ウェル当たり1mlのOptimen(Invitrogen)で2回、細胞を穏やかに、かつ慎重に洗浄した。次いで、トランスフェクション溶液(1ウェル当たり300μl)を細胞に添加し、細胞を37℃で4時間インキュベートした。引き続いて、10%のFCSを含有するRPMI培地(Camprex)100μlをウェルごとに添加し、細胞を37℃でさらに20時間インキュベートした。トランスフェクトして24時間後にトランスフェクション溶液を吸引し、溶解緩衝液(25mMのトリス−PO
4、2mMのEDTA、10%のグリセロール、1%のTriton−X100、2mMのDTT)300μl中に細胞を溶解させた。次いで上清を、ルシフェリン緩衝液(25mMのグリシルグリシン(glycylglycin)、15mMのMgSO
4、5mMのATP、62.5μMのルシフェリン)と混合し、ルミノメーター(Lumat LB9507(Berthold Technologies、Bad Wildbad、ドイツ))を使用してルミネセンス(luminiscence)を検出した。
【0278】
5.in vivoでのルシフェラーゼの発現:
ルシフェラーゼをコードする5μgのmRNA(R1180)を含有するポリマー担体カーゴ複合体を、実施例3に示したように調製した。その後、得られた溶液をリンガー乳酸溶液で調整して100μlの最終体積にし、室温で30分間インキュベートし、0.1g/lの濃度のポリマー担体カーゴ複合体を含む溶液を得た。この溶液100μlを、生後7週間のBALB/cマウスの皮内(背中)に投与した。24時間後に、マウスを屠殺し、試料(背中からの皮膚)を収集し、−78℃で凍結させ、組織溶解装置(tissue lyser)(Qiagen、Hilden、ドイツ)で、全速力で3分間溶解させた。その後、溶解緩衝液600μlを添加し、得られた溶液を、全速力でさらに6分間、組織溶解装置にかけた。4℃で、13500rpmで10分遠心分離した後、上清を、ルシフェリン緩衝液(25mMのグリシルグリシン、15mMのMgSO
4、5mMのATP、62.5μMのルシフェリン)と混合し、ルミノメーター(Lumat LB9507(Berthold Technologies、Bad Wildbad、ドイツ))を使用してルミネセンスを検出した。
【0279】
6.hPBMC中でのサイトカイン刺激:
健康なドナーの末梢血からのHPBMC細胞を、フィコール勾配を使用して単離し、引き続いて、1(PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した。次いで細胞を、96ウェルのマイクロタイタープレート上に播種した(200×10
3/ウェル)。X−VIVO15培地(BioWhittaker)中に示した量の核酸を含有する、実施例3からの本発明のポリマー担体カーゴ複合体10μlとともに、hPBMC細胞を24時間インキュベートした。免疫賦活性効果を、hPBMCのサイトカイン産生(腫瘍壊死因子(tumour necrose factor)αおよびインターフェロンα)を検出することによって測定した。したがって、ELISAマイクロタイタープレート(Nunc Maxisorb)を、特異的サイトカイン抗体をさらに含有する結合緩衝液(0.02%のNaN
3、15mMのNa
2CO
3、15mMのNaHCO
3、pH9.7)とともに一晩(o/n)インキュベートした。次いで細胞を、1%のBSA(ウシ血清アルブミン)を含有する1×PBSでブロックした。細胞上清を添加し、37℃で4時間インキュベートした。引き続いて、マイクロタイタープレートを、0.05%のTween−20を含有する1×PBSで洗浄し、次いで、ビオチン標識二次抗体(BD Pharmingen、Heidelberg、ドイツ)とともにインキュベートした。ストレプトアビジン結合西洋わさび(horseraddish)ペルオキシダーゼをプレートに添加した。次いで、プレートを、0.05%のTween−20を含有する1×PBSで再び洗浄し、ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチル−ベンズチアゾリン−6−スルホン酸)を基質として添加した。サイトカインの量は、Tecan(Crailsheim、ドイツ)からのSunrise ELISA−Readerを用いて、組換えサイトカイン(BD Pharmingen、Heidelberg、ドイツ)を用いた検量線を使用して、405nmにおける吸収(OD405)を測定することによって求めた。
【0280】
7.ゼータ電位測定:
ポリマー担体カーゴ複合体のゼータ電位は、Zetasizer Nano(Malvern Instruments、Malvern、UK)を使用して、レーザードップラー電気泳動法によって評価した。測定は、25℃で実施し、173°の散乱角を使用した。
【0281】
8.凍結乾燥後の複合体の安定性
上記で調製したポリマー担体カーゴ複合体の流体力学直径を、製造者の指示書に従って、Zetasizer Nano(Malvern Instruments、Malvern、UK)を使用して、動的光散乱によって測定した。測定は、緩衝液中で、25℃で実施し、キュムラント法によって分析することによって、ポリマー担体カーゴ複合体の流体力学直径および多分散指数を得た。ポリマー担体カーゴ複合体を、実施例3に示したように形成し、流体力学直径を、新鮮な調製した複合体、および凍結乾燥後の再構成された複合体に関して測定した。
【0282】
9.免疫化実験:
免疫化するために、ワクチンのオボアルブミンタンパク質(OVA)(5μg)またはオボアルブミン特異的ペプチドSIINFEKL(50μg)を、アジュバントとしての本発明のポリマーカーゴ複合体R722/CR
12C(2:1 w/wの比の)(30μgのR722/15μgのCR
12C)と合わせ、メスのC57BL/6マウス(腫瘍チャレンジについて1群当たり7匹のマウス、および免疫応答の検出について1群当たり5匹のマウス)の皮内に注射した。ワクチン接種を、2週間の中で2回繰り返した。比較のために、本発明のポリマーカーゴ複合体を用いずにマウスに注射した。
【0283】
10.抗原特異的免疫応答(B細胞免疫応答)の検出:
抗原特異的免疫応答(B細胞免疫応答)の検出は、抗原特異的抗体を検出することによって実施した。したがって、最後にワクチン接種をして5日後に、ワクチン接種されたマウスから血液試料を採取し、血清を調製した。MaxiSorbプレート(Nalgene Nunc International)を、Gallus gallusのオボアルブミンタンパク質でコーティングした。0.05%のTween−20および1%のBSAを含有する1×PBSでブロックした後、プレートを、希釈したマウス血清とともにインキュベートした。引き続いて、ビオチン結合二次抗体(抗マウス−IgG2a、Pharmingen)を添加した。洗浄後、プレートを、西洋わさびペルオキシダーゼ−ストレプトアビジンとともにインキュベートし、引き続いて、ABTS基質(2,2’−アジノ−ビス(3−エチル−ベンズチアゾリン−6−スルホン酸)の変換を測定した。
【0284】
11.ELISPOTによる抗原特異的細胞性免疫応答の検出:
最後にワクチン接種して5日後に、マウスを屠殺し、脾臓を取り出し、脾細胞を単離した。INFγを検出するために、コートマルチスクリーンプレート(coat multiscreen plate)(Millipore)を、INFγに対する抗体(BD Pharmingen、Heidelberg、ドイツ)を含むコーティング緩衝液(0.1Mの炭酸塩−炭酸水素塩(Carbonat−Bicarbonat)緩衝液、pH9.6、10.59g/lのNa
2CO
3、8.4g/lのNaHCO
3)とともに一晩インキュベートした。翌日に、1×10
6細胞/ウェルを添加し、1μg/ウェルの関連ペプチド(relevant peptide)(オボアルブミンのSIINFEKL)、非関連ペプチド(irrelevant peptide)(コネキシン=対照ペプチド)、またはペプチドを含まない緩衝液で再刺激した。その後、細胞を、37℃で24時間インキュベートした。翌日に、PBSで3回、水で1回、およびPBS/0.05%のTween−20で1回、プレートを洗浄し、その後、ビオチン結合二次抗体とともに、4℃で11〜24時間インキュベートした。次いで、プレートをPBS/0.05%のTween−20で洗浄し、ブロッキングバッファー中でストレプトアビジンにカップリングしたアルカリホスファターゼとともに、室温で2時間インキュベートした。PBS/0.05%のTween−20で洗浄した後、基質(Sigma Aldrich、Taufkirchen、ドイツからの5−ブロモ−4−クロロ(cloro)−3−インドリル ホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム液体基質系)をプレートに添加すると、基質の変換を視覚的に検出することができた。次いで、プレートを水で洗浄することによって反応を停止した。次いで、乾燥させたプレートを、ELISPOTプレートリーダーで読み取った。スポットレベルを視覚化するために、バックグラウンド減算によって数値を補正した。
【0285】
12.腫瘍チャレンジ:
最後にワクチン接種して1週間後に、1×10
6個のE.G7−OVA細胞(オボアルブミンを安定に発現する腫瘍細胞)を、ワクチン接種されたマウスの皮下に移植した。ノギスを使用して3次元で腫瘍サイズを測定することによって、腫瘍増殖をモニターした。