(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948356
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】ラジアルシャフトシール、ラジアルシャフトシールアセンブリおよび設置方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3204 20160101AFI20160623BHJP
F16J 15/3268 20160101ALI20160623BHJP
【FI】
F16J15/3204 201
F16J15/3268
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-557781(P2013-557781)
(86)(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公表番号】特表2014-511470(P2014-511470A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】US2012027665
(87)【国際公開番号】WO2012122078
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】13/042,533
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セドラー,ブレント・アール
(72)【発明者】
【氏名】トス,デイビッド・エム
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0187768(US,A1)
【文献】
実開平01−102570(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204
F16J 15/3268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルシャフトシールであって、前記ラジアルシャフトシールは、ハウジング内でシャフトの周りに収容されて前記シャフトシールの空気側を前記シャフトシールのオイル側から封止分離するように構成され、
環状の台部分と、
オイル側端部と空気側自由端との間に延びる環状シール面を有するシールリップとを備え、前記シール面は前記シャフトに対して軸方向に延びるように構成され、
第1のヒンジによって前記シールリップの前記オイル側端部に接続され第2のヒンジによって前記台部分に接続された環状ブリッジを備え、前記ブリッジは前記第1のヒンジから前記第2のヒンジまで前記シールリップと径方向に重なる関係で延在し、
前記第1のヒンジから前記シールの前記オイル側に向かって前記ブリッジから遠ざかるように延びる少なくとも1つの突起を備え、前記少なくとも1つの突起は、径方向外側に面する外面と、径方向内側に面する内面とを有し、
前記内面から径方向内側に延び、周方向に間隔が置かれた複数のリブを備え、
前記リブは最小の内径を有し、前記シール面は最大の内径を有し、前記最小の内径は前記最大の内径よりも大きいラジアルシャフトシール。
【請求項2】
前記シールリップは、最大の直径を有する径方向外側に面した表面を有し、前記リブの前記最小の内径は、前記シールリップの前記外側に面した最大の内径よりも大きい、請求項1に記載のラジアルシャフトシール。
【請求項3】
前記少なくとも1つの突起は前記第1のヒンジから離れるように延びる長さを有し、前記リブは実質的に前記少なくとも1つの突起の前記長さに沿って延びる、請求項1に記載のラジアルシャフトシール。
【請求項4】
前記少なくとも1つの突起の前記外面および前記ブリッジに沿って軸方向に延びる周方向に間隔が置かれた複数の補強リブをさらに備える、請求項1に記載のラジアルシャフトシール。
【請求項5】
前記少なくとも1つの突起は周方向に連続する、請求項1に記載のラジアルシャフトシール。
【請求項6】
隙間によって互いに隔てられた複数の前記突起をさらに備える、請求項1に記載のラジアルシャフトシール。
【請求項7】
前記突起の各々は前記リブのうち別個の1つのリブを有する、請求項6に記載のラジアルシャフトシール。
【請求項8】
直立する補強リブが、前記ブリッジに沿ってかつ前記突起の前記外面のうちの少なくともいくつかに沿って軸方向に延びる、請求項7に記載のラジアルシャフトシール。
【請求項9】
前記補強リブは前記突起の各々に沿って延びる、請求項8に記載のラジアルシャフトシール。
【請求項10】
ラジアルシャフトシールアセンブリであって、
中心軸に沿って延び予め定められた直径を有する滑り面が与えられたシャフトと、
ラジアルシャフトシールとを備え、前記ラジアルシャフトシールは、ハウジング内で前記シャフトの周りに収容されて前記ラジアルシャフトシールの空気側を前記ラジアルシャフトシールのオイル側から封止分離するように構成され、
環状の台部分と、
環状のシール面と、オイル側端部と空気側自由端との間に延びる反対側の裏面とを有するシールリップとを備え、前記シール面は前記滑り面と動的封止接触して軸方向に延びるように構成され、
第1のヒンジによって前記シールリップの前記オイル側端部に取付けられ第2のヒンジによって前記台部分に取付けられた環状ブリッジを備え、前記ブリッジは前記第1のヒンジから前記第2のヒンジまで前記シールリップと径方向に重なる関係で延在し、
前記第1のヒンジから前記シールの前記オイル側に向かって軸方向に延びる少なくとも1つの突起を備え、前記少なくとも1つの突起は、径方向外側に面する外面と、径方向内側に面する内面とを有し、
前記内面から径方向内側に延び、周方向に間隔が置かれた複数のリブを備え、
前記リブは、前記滑り面から径方向外側に間隔が空けられる、ラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの突起は前記第1のヒンジから離れるように延びる長さを有し、前記リブは実質的に前記少なくとも1つの突起の前記長さに沿って延びる、請求項10に記載のラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの突起の前記外面および前記ブリッジに沿って軸方向に延びる周方向に間隔が置かれた複数の補強リブをさらに備える、請求項10に記載のラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの突起は周方向に連続する、請求項10に記載のラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項14】
隙間によって互いに隔てられた複数の前記突起をさらに備える、請求項10に記載のラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項15】
前記突起の各々は前記リブのうち別個の1つのリブを有する、請求項14に記載のラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項16】
直立する補強リブが、前記ブリッジに沿ってかつ前記突起の前記外面のうちの少なくともいくつかに沿って軸方向に延びる、請求項15に記載のラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項17】
前記補強リブは前記突起の各々に沿って延びる、請求項16に記載のラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項18】
前記リブは、前記シャフトの前記滑り面から離れるよう径方向外側に間隔をおいて設けられる、請求項10に記載のラジアルシャフトシールアセンブリ。
【請求項19】
ラジアルシャフトシールをシャフト上に設置する方法であって、
滑り面を有するシャフトを与えるステップと、
自由状態においてオイル側端部から空気側自由端まで収束してゆく環状のシール面を有するシールリップと、第1のヒンジによってオイル側端部に取付けられ自由状態において第2のヒンジまで分岐してゆく環状ブリッジとを、前記ラジアルシャフトシールに与えるステップとを含み、前記第2のヒンジは、前記ブリッジが前記シールリップと径方向に重なる関係で延在するように、外側の台部分に取付けられ、前記シールはさらに、前記第1のヒンジから前記シールのオイル側に向かって軸方向に延びる少なくとも1つの突起と、突起から径方向内側に延び周方向に間隔が置かれた複数のリブとを含み、
前記シャフトおよび前記ラジアルシャフトシールを軸方向に、互いに向かって移動させるステップと、
前記シールリップのオイル側端部を前記シャフトの端部と接触させるステップと、
前記リブのうち少なくともいくつかを前記シャフトの滑り面と接触させるステップと、
前記シール面を前記滑り面と封止状態で係合させ、同時に前記リブが移動して前記滑り面から離れるようにするステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
本発明は概して回転軸とハウジングとの間に流体密封シールを形成することを目的とする種類のダイナミックオイルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
ダイナミックラジアルシャフトオイルシールは、シールのいわゆる「オイル側」と「空気側」とを有するように設計される。これらの名称は設置されたときのシールの向きに関連し、オイル側はハウジングの内側に面してオイルと接触し、空気側は外側に面して空気にさらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ラジアルシャフトオイルシールは少なくとも2つの異なるやり方で設置できる。一方は「空気側設置」であり、最初にシールをハウジングの穴の中に設置し、その後シャフト(またはその装着スリーブ)を空気側から軸方向にシールアセンブリの中に(ハウジングの内側方向に)設置してシールを実現する。他方は「オイル側設置」であり、ハウジングおよびシャフトが既にある状態において、軸方向にシールアセンブリをハウジングの中にスライドさせ同時にシャフト(またはその装着スリーブ)の上にスライドさせることで、シャフトがシールのオイル側からシールアセンブリの中に入るようにする。そうでなければ、「オイル側」設置の場合、シールアセンブリをキャリアとも呼ばれるハウジングの中に設置した後、中にシールが設置されたハウジングを「所定の位置にある」シャフトの上で組立ててエンジンを完成することが必要である。
【0004】
設置中、種類に拘らず、シールは、シールのシールリップが裏返る、さもなければ設置が完了した状態でシールリップが無効となる位置にずれることのないよう、設置中に生じる軸方向の負荷に耐えることができなければならない。シールリップに伝わる軸方向の負荷は、主として、設置中にシールリップおよびシャフトを互いに相対的に軸方向に移動させたときにシールリップとシャフトの外面との間に生じる摩擦によるものである。したがって、シールを介してシャフトを設置する間に生じた摩擦を最小限にすることが望ましい。しかしながら、シールリップとシャフトとの間に所望のシールを得るために微妙なバランスを維持する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
一般的な表現を用いると、この発明が提供するラジアルシャフトシールアセンブリの特徴は、たとえシャフトと穴が位置ずれした状態であっても適切なオイル側設置を行なうことが容易であり、さらに、設置の際にシールアセンブリのオイル側が正または負の圧力を受けたときにシールを破損させるような不利な動きに対抗してシールアセンブリのシールリップを支持することである。
【0006】
本発明の現在好ましいある局面に従い、ラジアルシャフトシールが提供され、このラジアルシャフトシールは、ハウジング内でシャフトの周りに収容されてシャフトシールの空気側をシャフトシールのオイル側から封止分離するように構成される。ラジアルシャフトシールは、環状の台部分と、オイル側端部と空気側自由端との間に延びる環状シール面を有するシールリップとを備える。このシール面はシャフトに対して軸方向に延びるように構成される。さらに、環状ブリッジが、第1のヒンジによってシールリップのオイル側端部に接続され第2のヒンジによって台部分に接続される。ブリッジは第1のヒンジから第2のヒンジまでシールリップと径方向に重なる関係で延在する。突起が、第1のヒンジからシールのオイル側に向かってブリッジから遠ざかるように延びる。突起は径方向内側に面する内面を有する。周方向に間隔が置かれた複数のリブが、突起の内面から径方向内側に延びる。これらの突起およびリブは、オイル側設置プロセス中にシールリップが反転することを防止することによって、シールリップを使用中に確実に滑り面と適切に封止接触させる。
【0007】
本発明の別の局面に従い、ラジアルシャフトシールアセンブリが提供される。ラジアルシャフトシールアセンブリは、中心軸に沿って延び予め定められた直径を有する滑り面が与えられたシャフトと、ラジアルシャフトシールとを備え、ラジアルシャフトシールは、ハウジング内でシャフトの周りに収容されてラジアルシャフトシールの空気側をラジアルシャフトシールのオイル側から封止分離するように構成される。ラジアルシャフトシールは、環状の台部分、および、環状のシール面と、オイル側端部と空気側自由端との間に延びる反対側の裏面とを有するシールリップを備える。シール面は滑り面と動的封止接触して軸方向に延びるように構成される。さらに、環状ブリッジが、第1のヒンジによってシールリップのオイル側端部に取付けられ第2のヒンジによって台部分に取付けられている。このブリッジは第1のヒンジから第2のヒンジまでシールリップと径方向に重なる関係で延在する。加えて、少なくとも1つの突起が第1のヒンジからシールのオイル側に向かって軸方向に延びている。突起は、径方向内側に面する内面を有する。周方向に間隔を置いて設けられた複数のリブが、突起の内面から径方向内側に延びる。突起およびリブは、オイル側設置プロセス中にシールリップが反転することを防止することによって、シールリップを使用中に確実に滑り面と適切に封止接触させる。
【0008】
本発明のもう1つの局面に従い、ラジアルシャフトシールをシャフト上に設置する方法が提供される。この方法は、滑り面を有するシャフトを与えるステップと、自由状態においてオイル側端部から空気側自由端まで収束してゆく環状のシール面を有するシールリップを、ラジアルシャフトシールに与えるステップとを含む。さらに、第1のヒンジによってオイル側端部に取付けられ自由状態において第2のヒンジまで分岐してゆく環状ブリッジを、ラジアルシャフトシールに与える。第2のヒンジは、ブリッジがシールリップと径方向に重なる関係で延在するように、外側の台部分に取付けられる。ラジアルシャフトシールはさらに、第1のヒンジからシールのオイル側に向かって軸方向に延びる少なくとも1つの突起を含む。突起は、径方向内側に面する内面を有する。周方向に間隔を置いて設けられた複数のリブが、内面から径方向内側に延びるよう設けられる。次に、シャフトおよびラジアルシャフトシールを軸方向に、互いに向かって移動させ、シールリップのオイル側端部をシャフトの端部と接触させる。さらに、リブをシャフトの滑り面と接触させつつ、同時に突起の内面がシャフトと接触するのを防ぎ、シール面を滑り面と封止状態で係合させ、同時にリブが移動して滑り面から離れるようにする。
【0009】
本発明の上記およびその他の局面、特徴および利点は、以下の現在好ましい実施の形態およびベストモードに関する詳細な説明、添付の請求項、および図面と関連付けて考慮されるとより容易に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のある局面に従って構成されたラジアルシャフトシールの断面図である。
【
図2】
図1の線2−2にほぼ沿うように切取った平面図である。
【
図3】ハウジング内に配置された状態で示される
図1のシールの断面図であって、シャフトがシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図4】ハウジング内に配置された状態で示される
図1のシールの断面図であって、シャフトがシールのオイル側から前進するようにして設置される図である。
【
図5】ハウジング内に配置された状態で示される
図1のシールの断面図であって、シャフトがシールのオイル側から前進するようにして設置される図である。
【
図6】本発明の別の局面に従って構成されたラジアルシャフトシールの断面図である。
【
図7】ハウジング内に配置された状態で示される
図5のシールの断面図であって、シャフトがシールと同軸方向に位置合わせされた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図8】ハウジング内に配置された状態で示される
図5のシールの断面図であって、シャフトがシールと同軸方向に位置合わせされた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図9】ハウジング内に配置された状態で示される
図5のシールの断面図であって、シャフトがシールと同軸方向に位置合わせされた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図10】ハウジング内に配置された状態で示される
図5のシールの断面図であって、シャフトがシールと同軸方向に位置合わせされた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図11】ハウジング内に配置された状態で示される
図5のシールの断面図であって、シャフトがシールと同軸方向に位置合わせされた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図12】ハウジング内に配置された状態で示される
図5のシールの断面図であって、シャフトがシールと同軸方向に位置合わせされた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図13】ハウジング内に配置された状態で示される
図6のシールの断面図であって、シャフトがシールと軸方向の位置がずれた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図14】ハウジング内に配置された状態で示される
図6のシールの断面図であって、シャフトがシールと軸方向の位置がずれた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図15】ハウジング内に配置された状態で示される
図6のシールの断面図であって、シャフトがシールと軸方向の位置がずれた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図16】ハウジング内に配置された状態で示される
図6のシールの断面図であって、シャフトがシールと軸方向の位置がずれた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図17】ハウジング内に配置された状態で示される
図6のシールの断面図であって、シャフトがシールと軸方向の位置がずれた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図18】ハウジング内に配置された状態で示される
図6のシールの断面図であって、シャフトがシールと軸方向の位置がずれた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図19】ハウジング内に配置された状態で示される
図6のシールの断面図であって、シャフトがシールと軸方向の位置がずれた関係でシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図20】本発明の別の局面に従って構成されたラジアルシャフトシールの平面図である。
【
図21】
図20の線21−21にほぼ沿うように切取った断面図である。
【
図22】ハウジング内に配置された状態で示される
図20のシールの断面図であって、シャフトがシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図23】ハウジング内に配置された状態で示される
図20のシールの断面図であって、シャフトがシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図24】ハウジング内に配置された状態で示される
図20のシールの断面図であって、シャフトがシールのオイル側から前進するようにして設置されている図である。
【
図25】本発明のさらに別の局面に従って構成されたラジアルシャフトシールの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい実施の形態の詳細な説明
さらに詳しく図面を参照すると、
図1は、本発明のある局面に従い構成された、以降シール10と呼ぶラジアルシャフトシールを示す。限定ではなく一例として、このシールは、クランクケースに応用して使用するのに適しており、シール10が中に設置されたクランクケース16の穴14を通して延びるラジアルシャフトシールアセンブリ13(
図3〜
図5)の中の回転可能なシャフト12の周りを封止することを目的とする。その他の場合、シール10はキャリアハウジングの中に設置でき、このキャリアハウジングおよびシール10はエンジンに取付けることができる。
図2を参照すると、シール10は、設置されたときのシール10の向きとの関連で、オイル側Oと、軸方向に反対の空気側Aとを有する。オイル側Oはクランクケース16の内側に面する側であり、空気側Aは外側の周囲に面する側である。シール10は、エラストマーシール材料20が装着された金属の輪または環状構造体として設けられた、コアまたはカラー18とも呼ばれるケース等の台部分を含む。シール材料20はエラストマーシール本体22の少なくとも一部を形成する。軸方向に延びるシールリップ24は、使用中シャフト12との動的摩擦接触が小さいため、新たに設置されたとき、使用中および使用時の、シャフト12とシールリップ24との間のトルクは、約0.07〜0.35N
*m(ニュートンメートル)といったように低いトルクである。このように、シール10が示す摩擦損失が最小である結果として、エンジン効率の損失も最小に保たれる。
【0012】
環状の金属のカラー18は、図示のようなL字型、または、当該技術で公知のように特定の用途の要求に応じて環状、C字型またはS字型等、任意の数の構成を有していてもよい。L字型のカラー18は、円筒形の外壁26と、径方向内側に向かって延びる脚28とを有する。示されている金属の強化リング構造体18は、少なくとも一部が外壁26のうち径方向外側に面する面上のエラストマーシール材料20で覆われる。エラストマーシール材料20の輪郭に凹凸30を設けることにより、クランクケース16の穴14にフィットした流体密封状態の設置を実現してもよい。シール本体22のエラストマーシール材料は、脚28の空気側Aでは金属コア18の径方向内側に向かって延びる脚28に沿って延び、内側の端部32の周りに延び、脚28のオイル側の一部を覆い、脚28から径方向内側にシール本体22の中央部分23を与える。コア18およびシール本体22は比較的硬いが、シール材料20はシールリップ24を形成するのに十分な弾力を有する。
【0013】
シールリップ24は、弛緩し設置されていない状態(
図2)のときは、シール10の水平中心軸33からたとえば約1〜10度など、わずかに傾斜させた向きで延びており、環状で径方向内側に面するシール面34と、オイル側端部38と空気側自由端40との間に延びる、反対側の、径方向外側に面する裏面36とを有する。シール面34は、自由状態にある間、オイル側端部38で最大の直径SDを有し、この直径はシャフト12の滑り面35の外径ODよりも小さい(
図3〜
図5)ため、シール面34全体は、設置組立完了時および使用中、確実に滑り面35と封止状態で係合する。シール面34は、シャフト12の回転中オイルをシール10のオイル側Oに押し戻すように作用する、リブまたはねじ山形状の流体力学的特徴41を有するように構成できる。さらに、空気側端部40には粉塵排除リップ39を設けることができる。このリップにより、シールアセンブリ10の空気側Aからオイル側Oへの汚染物質の浸入の防止が容易になり、さらに、潤滑剤をアセンブリ10のオイル側Oに留めることが容易になる。シールリップ24は予め定められた厚みt1を有するように形成され(この厚みは以下に記載の他の寸法の特徴と同じく図面の煩雑化を避けるために
図1のみに示される)、これにより、以下でより詳細に述べるようにシャフト12に対する低トルクシールが容易に保たれる。
【0014】
環状ブリッジ42は、シールリップ24をシール本体22に、使用に適した状態で接続する。環状ブリッジ42は、第1のヒンジ44によってシールリップ24のオイル側端部38に接続されるとともに、第2のヒンジ46によって台部分18の中央部23に接続される。ブリッジ42は、ほぼ仮想線45に沿って長さL1に亘って延びる。この仮想線は、ヒンジ44、46の間でこれらを通して延び、水平中心軸33に対して、たとえば約20〜40度の間の角度をなす。しかしながらこの角度の範囲は水平面から1〜89度に亘ることができる。第2のヒンジ46は、台部分18の径方向の脚28に対して略平行かつシール10の水平軸Hに対して略垂直の向きまで変化する。ブリッジ42は、シールリップ24に対し径方向において重なる関係をなして第1のヒンジ44から第2のヒンジ46まで延びる。このため、シールアセンブリ10の空気側Aに面する環状のポケット48が設けられる。ブリッジ42は厚みt2を有するように構成され、第1のヒンジ44および第2のヒンジ46はそれぞれ厚みt3およびt4を有するように構成される。これらの厚みの相対的関係は、好ましくは、t1≧t3、t2≧t3、かつt2≧t4であり、より好ましくは、t1>t3、t2>t3、かつt2>t4である。加えて、自由状態の間、第1のヒンジ44は第1の直径H1Dを有し、第2のヒンジ46は第2の直径H2Dを有し、H1D<H2Dである。
【0015】
シール10はさらに突起50を有する。この突起50は全体的に、第1のヒンジ44から軸方向に、シールリップ24およびブリッジ42側からシール10のオイル側Oに向かって延びる。突起50は、以下でさらに説明するように、オイル側における設置を補助し、シールリップ24およびブリッジ42の間が設置中に開くことを防ぐように構成される。さらに、突起50は、設置時および使用中、シャフトの滑り面35と接触しない状態を保つように構成される。オイル側Oで圧力変化、たとえば負圧(相対的真空)が生じた場合、シールの両側の圧力差によってシール10に軸方向内向きの力が加わると、突起50は、少なくともある程度はシールリップ24を補強するように作用し、したがって、シールリップ24が浮き上がってシャフトの滑り面35との封止接触を失うことを防止するように作用する。突起50は、径方向内側に面する内面52と径方向外側に面する外面54との間に延びる主厚みを有し、この厚みは、設置中に突起50が反り返るまたは巻き込まれることなくその形状および形態を実質的に保つのに十分である。円滑に設置し易くするために、内面52は、径方向で最も外側にある自由端56に向かって径方向外側へと徐々に先細りになるものとして示され、さらに凸状の輪郭を有するものとして示されているが、これは一例であって限定ではない。円滑に設置し易くするために、周方向に間隔をおいて設けられた複数のスキッドは、突起リブ、スキッドリブまたはリブ53とも称され、シールリップ24と自由端56との間で内面52に沿って軸方向に延びており、自由端56に向かって徐々に先細りになるものとして示されている。リブ53は、好ましくは、シールリップ24の円周の周りに互いから等距離の間隔をおいて設けられ、内面52から、設置中に「低摩擦」のスキッドとして機能する比較的幅狭の接触端55まで、予め定められた距離だけ径方向内側に向かって延びる。「低摩擦」が意味するものは、リブ53がなければ、突起50とシャフト12との間の摩擦が増大するだろうことである。上述のように、リブ53は、設置時および使用中、シャフト滑り面35から離れたままとなる。したがって、内面52およびリブ53が有する最小の直径PDは、シールリップ24のシール面34の内径SDよりも少なくとも僅かに大きいため、上記のように、シャフト12上で組立てられる際、内面52およびリブ53は滑り面35から径方向外側に間隔が空けられたままで接触しない。突起50の、ほぼ第1のヒンジ44からおよび/またはシールリップ24のオイル側端部38から延びる長さL2は、ブリッジ42を反転させる傾向があるどのような力にも対抗するのに十分である。長さL2はブリッジ42の長さL1よりも小さい。リブ53は、突起50の長さL1全体またはほぼ全体に沿って延びる。このため、突起50は、主として、設置中にシールリップ24がシャフト12上で適切な構成以外の状態になることを防止するにあたってこれを補助する役割を果たし、同時に、リブ53は、突起50の内面全体がシャフトに接触するのを防止する。こうして、リブ53によってシャフト12との接触量が減らされるため、設置中にシャフト12に対して生じる摩擦が小さくなり、これにより、シールリップ24の反転がさらに防止される。さらに
図2に示されているように、突起50は想像線45よりも実質的に上に形成され、これにより、突起50およびリブ53がシールブリッジ42に対し「反転防止」特徴として作用する機能をさらに高める。加えて、突起50およびリブ53は、第1のヒンジ44を通り想像線45に対して垂直に延びる想像線47からオイル側Oに向かって軸方向内側に延びる。
【0016】
図3〜
図5は、シール10を通してシャフト12のオイル側設置が進行する様子を示す。シャフト12の中心軸57は、シール10の中心軸33から僅かにずらされ(
図3および
図4)、その後
図5では同軸で位置合わせされる。この設置では、シール10をハウジング16の中に予め設置し、その後シャフト12をシール10を通して穴14の中に向かって入れる。シャフト12が軸方向にスライドして穴14の中に入ると、シャフト12の端部58が最初に突起リブ53の接触端55の少なくともいくつかと係合する。組立を容易にするために、シャフト12の端部58は、導入テーパ面60を与えるように構成される。シャフト12の軸とシール10の軸がずらされているので、シールとシャフトの直径方向反対側(図示せず)は相対的に変位しており、このため、最初はシャフト12と突起リブ53との間に僅かな隙間が生じ得ることが認められるはずである。
図4に示されるように、シャフト12がシール10を通して軸方向に前進する際、リブ53の接触端55は、シャフトの導入テーパ面60の上を滑り面35上までスライドしながら、シャフト12と接触した状態を保つ。この間、主シールリップ24は径方向外向きに拡がり、シールリップ24の空気側端部40は径方向外側に傾くため、ポケット48は部分的に崩れる。このため、シャフト12の周りにシール10を設置するのに必要な軸方向の設置力は減少する。したがって、突起50およびリブ53はシールリップ24をシャフト12と軸方向に位置合わせする役割を果たす。加えて、シールリップ24をシャフト12と軸方向に位置合わせすること以外にも、予め定められた長さL2を有する突起50は、シール10とシャフト12との間に生じたねじれの力がブリッジ42に加わらないようにするレバーアームとして機能し、同時に、周方向に間隔をおいて設けられたリブ53は、突起50の内面52がシャフト12と接触するのを防ぐよう作用する。こうして、シャフト12に対して生じる摩擦の量が最小限にされ、これにより、ブリッジ42がシール10の空気側Aに向かって軸方向外向きに巻き込まれて反転することを防止する。したがって、
図5に示されるように、シール10を通したシャフト12の設置が完了すると、シールリップ24はシャフト12の滑り面35とともに適切な封止構成を実現し、同時に、突起50およびリブ53の接触端55が、シャフトの滑り面35とは接触しないよう径方向外側に間隔を空けて配置されたままとなる。
【0017】
図6は、本発明の別の局面に従い構成されたシール110を示し、
図7〜
図12は、シャフト112上でシール110のオイル側設置が進行する様子を示す。先に用いた参照番号と同じ参照番号に100を加えたものを使用して上記特徴と同様の特徴を識別する。先に述べたように、シール110は、ここでは限定ではなく一例として断面が矩形で金属の強化リング構造体118を有するものとして示される台部分と、エラストマーシール材料カバー120とを有する。示されているカバー120はリング構造体118を包むように成形されている。同じく先に述べたように、示されている材料カバー120は、ハウジング116の穴114にフィットさせて流体密封状態で設置するための、径方向外側に面したリブを備えた外側の輪郭面を有する。
【0018】
エラストマーシール材料120は、コア118の径方向内側に向かって中央の垂直方向に延びる本体部123まで延びるシール本体122を与える。上記シール10と同様に、シール110は、シールリップ124とブリッジ142とを有し、第1のヒンジ144はシールリップ124をブリッジ142に接続し、第2のヒンジ146はブリッジ142をシール本体122の中央部分123に接続する。相対的なシールリップの厚みt1、ブリッジの厚みt2、ならびに第1および第2のヒンジの厚みt3およびt4(
図6)は、それぞれ先に述べたとおりである。さらに、第1および第2のヒンジ144および146の相対的な直径H1DおよびH2Dも先に述べたとおりである。したがって、ここまでは、台部分118の構成以外、シール110はシール10と同一である。
【0019】
シール110と上記シール10の顕著な違いは、シール110上の突起150およびその関連するリブ153の位置であることがわかる。シール110の場合、突起150およびリブ153は上記突起50およびリブ53よりも径方向外側にある位置から延びているが、突起50および150ならびにリブ53および153の形状は同様である。したがって、突起150およびリブ153は全体的に、第1のヒンジ144から、シール110のオイル側Oに向かって、シールリップ124およびブリッジ142から軸方向に遠ざかるように延びている。しかしながら、上記実施の形態と少し異なる点は、突起150およびリブ153が全体的にまたは実質的に全体的に第1のヒンジ144に対して径方向外側に延びている点である。先に述べた突起50と同様、突起150は内面152と外面154との間に延びる厚みを有し、この厚みは、設置中に突起150が巻き込まれるまたは反り返ることなくその形状および形態を実質的に保つのに十分な厚みである。円滑に設置し易くするために、リブ153の内面の接触端155は、次第に先細りになり径方向外側に向かって分岐してゆき、さらに、図示のように、突起150の自由端156へと径方向外側に向かって延びるかまたは自由端156に直接隣接して延びる凸型の輪郭を有する。内面152および接触端155の最小の直径PDは、少なくともシールリップ124のシール面134の内径よりも僅かに大きいため、突起50およびリブ53に関して先に述べたように、シャフト112上で組立てられたとき、内面152および接触端155は、シャフトの滑り面135から径方向外側に間隔を隔てて非接触状態にある。突起の上面または径方向外側に面する外面154は、ブリッジ142からスムーズに移行し、ブリッジ142を反転させようとする力に対抗するのに十分な長さL2だけ延びている。この長さL2はブリッジ142の長さL1よりも小さい。したがって、上記突起50と同様、突起150およびそれに沿って延びるリブ153は主として設置中にシールリップ124がシャフト112上で適切な構成以外の状態になることを防止する役割を果たす。さらに、突起50と比較して、突起150およびリブ153は全体的に第1のヒンジ144と第2のヒンジ146との間に延びる想像線145よりも上に形成される。これにより、突起150がシールブリッジ142に対して「反転防止」レバーアームという特徴として作用する機能がさらに向上する。加えて、突起150は、第1のヒンジ144を通り想像線145に対して垂直に延びる想像線147から、オイル側Oに向かって軸方向内向きに延びる。先に述べたように、突起150の、その内径、厚みおよび長さを含む寸法の特徴は、ブリッジ142が組立中に反転することを防止する機能を与える。
【0020】
図7〜
図12は、シール110を通してシャフト112のオイル側設置が進行する様子を示す。シャフト112の中心軸157は、シール110の中心軸133と同軸方向に位置合わせされている。この設置では、シール110をハウジング116内に予め設置し、その後シャフト112をシール112を通して穴114の中に入れる。シャフト112が軸方向にスライドして穴114の中に入ると、シャフト112の先細り形状の端部158が最初にシールリップ124のオイル側端部138と係合する。これは、突起リブ153のうち径方向内側に面する内面の直径がシャフト112よりも大きくかつシャフト112から径方向外側にあるので、内面は最初はシャフト112と接触しないからである。シールリップ124の端部138がシャフト112の端部158と係合すると、シールリップ124は径方向外側に傾くため、ポケット148は部分的に崩れる。その一方で、同時に突起150は径方向内側に傾く。この傾きの動きは、リブ153の接触端155がシャフト112の外面と係合するまで自由に継続し、突起150の剛性によってさらなる傾きは実質的に防止される。したがって、幅狭の外形を有する接触端155は一連の進行図に示されるようにシャフト112に沿って最低限だけ接触および摩擦係合しつつスライドし、最終的にはシール面134の全体がシャフト112の上に嵌まる。このとき、これらリブ153の接触端155は移動してシャフト112との接触を失い、使用中にシャフト112から離れたままとなる。
【0021】
図13〜
図19は、
図6〜
図11について述べたのと同じ進行に従って、シール110を通したシャフト112のオイル側設置が進行する様子を示すが、シャフト112の中心軸157とシール110の中心軸133はずらされている。シャフト112が軸方向にスライドして穴114の中に入ると、シャフト112の先細り形状の端部158が最初にリブ153の少なくともいくつかと係合し、これらは、滑り面135と接触するまでかつシールリップ124の端部138がシャフト112の端部158と係合するまで、先細り形状の端部158に沿ってスライドする。シールリップ124の端部138がシャフト112の端部158と係合すると、シールリップ124は径方向外側に傾くため、ポケット148は部分的に崩れる。その一方で、同時に突起150は径方向内側に傾き、リブ153を滑り面135に接触させたままで維持する。リブ153が一連の進行図に示されるようにシャフト112に沿ってスライドし、シールリップ124がシャフト112の上に完全に嵌まると、リブ153は、
図19に図示のとおり、突起150とともに径方向外側に移動して、シャフト112から離れたままとなる。
【0022】
図20および
図21は、本発明の別の局面に従い構成されたシール210を示し、
図22〜
図24は、シャフト212上でシール210のオイル側設置が進行する様子を示す。先に用いた参照番号と同じ参照番号に200を加えたものを使用して上記特徴と同様の特徴を識別する。シール210は、全体的に
図6に関して上述したものと同じよう構成され、台部カラー218を含み、クランクケースハウジング216の穴242の中にフィットさせて流体密封状態で設置するための、径方向外側に面したリブを備えた輪郭を有する。さらに、シール本体222は、コア218から径方向内側に向かって中央の垂直方向に延びる本体部分223まで延びる。シール210はシールリップ224とブリッジ242とを有し、第1のヒンジ244はシールリップ224をブリッジ242に接続し、第2のヒンジ246はブリッジ242をシール本体222の中央部223に接続する。相対的なシールリップの厚みt1、ブリッジの厚みt2、ならびに第1および第2のヒンジの厚みt3およびt4は、先に述べたとおりである。さらに、第1および第2のヒンジ244、246の相対的な直径H1DおよびH2Dも先に述べたとおりである。したがって、ここまでは、台部分218の構成以外、シール210はシール110と同一である。加えて、突起250と、突起250の内面252から径方向内側に延びる周方向に間隔を置いて設けられた複数のリブ253とは、全体的に第1のヒンジ244およびブリッジ242からオイル側Oに向かって延びる。突起250の厚みは内面252と外面254との間に延び、突起250およびリブ253の形状は、上記突起50、150およびリブ53、153に関して述べたものとほぼ同じである。内面252およびリブ253の接触端255が有する最小の直径PDは、シールリップ224のシール面234の最大の内径よりも大きいため、突起50、150に関して先に述べたように、シャフト212上で組立てられたとき、リブ253は、シャフトの滑り面235から径方向外側に間隔を隔てて非接触状態にある。突起の外面254はブリッジ242からスムーズに移行し、ブリッジ242を反転させようとする力に対抗するのに十分な長さL2だけ延びている。この長さL2はシール110に関して先に述べたようにブリッジ242の長さL1よりも小さい。
【0023】
シール210と上記シール110との顕著な違いは、シール本体222と一体的に成形された複数の補強リブ60が追加されている点であることがわかる。補強リブ60は、組立を容易にするとともに、組立中および組立時にシールリップ224のシール面234とシャフト212の滑り面235との適切な封止関係を維持する。補強リブ60は、ブリッジ242に沿って軸方向に延び、ここでは突起250の上または外面254に沿ってかつブリッジ242の全長に沿って延びシール本体222の中央の本体部分223で終端をなすものとして示される。ブリッジ242および主シールリップ224が組立中に裏向きに折れることを防止するのに十分な、任意の適切な数の補強リブ60を設ければよい。
図20では、限定ではなく一例として約60個のリブ60を示しており、対応する数のスキッドリブ253の径方向反対側に位置合わせして間隔を空けて設けられている。各補強リブ60は隣の補強リブ60から周方向に間隔をおいて設けられ、補強リブ60はシール本体222の周囲に互いに等間隔で設けられる。補強リブ60の高さは、組立てられているときに補強リブ60の最上端の面62がシール本体222から離れた状態を保つような高さである。したがって、補強リブ60は第2のヒンジ246が使用時に曲がる機能を妨げない。
【0024】
シール210を通したシャフト212のオイル側設置の進行は、同軸で位置合わせした状態での設置については
図7〜
図12に関して述べたものとほぼ同じであり、軸をずらした状態での設置については
図13〜
図19に関して述べたものとほぼ同じである。しかしながら、シールアセンブリ210が軸方向にシャフト212の上に移動し、スキッドリブ253の接触端255がシャフト212と係合すると、補強リブ60は、わずかな張力を受け、シールリップ224およびブリッジ242が反転して開くことを防止するという機能を果たす。さらに、補強リブ60は突起250に剛性を付加するため、シール210のオイル側Oが真空になったときなどに、シールリップ224がシャフト212と封止係合状態を保つ機能がさらに向上する。したがって、組立プロセス中も組立プロセスの終了時も、シールリップ224は確実にシャフト212上で適切な封止の向きを保つ。
【0025】
図25は、本発明の別の局面に従い構成されたシール310の一部を示し、先に用いた参照番号と同じ参照番号に300を加えたものを使用して上記特徴と同様の特徴を識別する。
【0026】
シール310はシール210と同様であり、すべての特徴は、複数の隙間64が突起350の中に軸方向に延びていること以外同じである。これにより、径方向に間隔が置かれた複数の突起350は隙間64によって互いに径方向に隔てられている。隙間64および突起350の間隔および大きさは均一化されているため、シール310の外観は円周対称である。隙間64は、シールリップ324のオイル側端部から、軸方向に、隣接する突起350の自由端356まで貫通する。
図25に示される実施の形態では、隙間64はシール本体322の全周(隙間64+突起350)の約20〜50%を占めるが、この比率は要望に応じて変動し得る。隙間64は、組立中、突起350が各々他の突起に対して撓むことができるようにすることによって、個々に隔てられた突起350の径方向の可撓性を高める。例示される実施の形態は、径方向内側に延びるスキッドリブ353を有する個々の突起350を示す。スキッドリブ353およびそれらの関連する幅狭の外形を有する接触端355は、上述のとおり、オイル側設置プロセスの間、シャフト312に対して生じる摩擦を最小限にするよう機能する。示されている実施の形態では、一例として、各突起350は、突起350の上面に沿って中央に延びてその剛性を高める補強リブ360のうち1つを有する。しかしながら、応用例によっては使用する補強リブ360を少なくすることによりリブのない突起350を少なくともいくつか残すことができることがわかるはずである。
【0027】
上記教示に照らし本発明には数多くの変形および変更が可能であることは明らかである。したがって、以下の請求項および最終的に許可される請求項の範囲内で、具体的に記載されたものとは異なるやり方で本発明を実施し得ることが理解されるはずである。