(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948367
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】吻合のためのスキャホールド形成システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20160623BHJP
A61F 2/06 20130101ALI20160623BHJP
A61F 2/82 20130101ALI20160623BHJP
【FI】
A61F2/04
A61F2/06
A61F2/82
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-115722(P2014-115722)
(22)【出願日】2014年6月4日
(62)【分割の表示】特願2011-521252(P2011-521252)の分割
【原出願日】2009年7月28日
(65)【公開番号】特開2014-221208(P2014-221208A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】12/181,244
(32)【優先日】2008年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511025503
【氏名又は名称】インキューブ ラブス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INCUBE LABS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ミール イマラン
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−523515(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0229711(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0055770(US,A1)
【文献】
特表2002−529193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04
A61F 2/06
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃腸管内の吻合の治癒を促進するために、患者の胃腸管内の吻合部位に配置するための組織スキャホールドであって、前記組織スキャホールドが、
2つの外側部と、中間部と、各外側部に連結している少なくとも1つの保持要素と、を備えた、径方向へ拡張可能なスキャホールド構造、および
少なくとも前記中間部を覆う障壁層
を備え、
前記スキャホールド構造の少なくとも一部がストリップからなり、
前記保持要素が、吻合創治癒の期間中に前記吻合部位において前記組織スキャホールドを保持するよう前記スキャホールド構造が拡張される際に、前記胃腸管の組織壁を係合するように構成され、
前記障壁層が、スキャホールド構造が拡張される際に、形を柔軟に変えることにより前記吻合部位の組織壁を係合するように構成され、それによって、吻合の対向する胃腸組織において流体シールを提供し、
前記障壁層と前記スキャホールド構造が、移植後、前記障壁層が前記スキャホールド構造より長持ちするような分解速度を有するよう構成され、
前記スキャホールド構造の中間部が、前記胃腸管内のぜん動収縮の間、前記吻合において前記シールを形成および維持するのに十分な半径方向剛性を有するよう構成され、
前記スキャホールド構造の中間部におけるストリップ厚さが、前記中間部が前記外側部よりも大きい半径方向剛性を有するように、前記外側部におけるストリップ厚さよりも大きく、
前記スキャホールド構造が拡張される際に、前記障壁層を含む前記中間部による係合の前に、前記外側部および前記保持要素が前記胃腸管の組織壁に係合するように、前記中間部が、前記外側部よりも大きい半径方向剛性を有するように構成され、
前記組織スキャホールドが半径方向に拡張すると、前記吻合の対向する組織層の位置合わせを維持し、前記胃腸管内の前記ぜん動収縮により引き起こされる張力から前記吻合が破損するのを防ぐように、該組織スキャホールドが前記吻合に圧縮力を印加する、
組織スキャホールド。
【請求項2】
前記障壁層が生物学的材料を含むことを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項3】
前記生物学的材料が、増殖因子、VEGF、抗炎症剤または抗菌剤のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2記載の組織スキャホールド。
【請求項4】
前記組織スキャホールドの少なくとも一部が、生体再吸収性の材料を含むことを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項5】
前記生体再吸収性の材料が、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、またはポリグリコール酸とポリ乳酸の混合物を含むことを特徴とする請求項4記載の組織スキャホールド。
【請求項6】
前記スキャホールド構造が、複数の軸方向に隣接したセルを含むことを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項7】
前記組織スキャホールドの軸長が、前記スキャホールド構造が拡張される際に、短くなることを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項8】
前記スキャホールド構造が、拡張可能な装置またはインフレータブル・バルーンのうちの1つによって拡張可能であることを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項9】
前記スキャホールド構造が部分的に拡張される際に、前記スキャホールド構造が、前記スキャホールド構造の横軸に対して外向きに張り出した形状を有することを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項10】
前記障壁層が、前記スキャホールド構造全体にわたり配置された管状の部材を含むことを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項11】
前記障壁層が、フルオロポリマー、PTFE、ポリエチレン、PETまたはナイロンのうちの1つを含むことを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項12】
前記スキャホールド構造が、前記胃腸管の湾曲に適合して曲がるよう十分な柔軟性を有することを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項13】
前記スキャホールド構造が、拡張状態において実質的に管状の形状を有することを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項14】
前記スキャホールド構造が、拡張状態において実質的にT字形の形状を有し、
前記形状が、端側吻合部に配置されるように構成されることを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項15】
前記スキャホールド構造が、拡張状態において実質的にS字形の形状を有し、
前記形状が、側側吻合部に配置されるように構成されることを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項16】
前記スキャホールド構造が、拡張状態において曲線形状を有し、
前記形状が湾曲した体腔に配置されるように構成されることを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項17】
前記保持要素がフックであることを特徴とする請求項1記載の組織スキャホールド。
【請求項18】
吻合の治癒を促進するために、胃腸管内の吻合部位に配置するための組織スキャホールドであって、前記組織スキャホールドが、
伸長可能な部材により結合され、中間部および2つの側部を含む3個のセクションを形成する、伸長可能な蛇行セルを備えた、径方向へ拡張可能なスキャホールド構造と、
前記2つの側部の各々に連結した少なくとも1つの保持要素と、
少なくとも前記中間部を覆う障壁層と、
を備え、
前記保持要素が、前記スキャホールド構造が拡張される際に、前記胃腸管の組織壁に係合し、吻合創治癒の期間中に前記吻合部位において前記組織スキャホールドを保持するよう構成され、
前記障壁層が、前記組織スキャホールドの拡張の際に、形を柔軟に変えることにより前記吻合に接している前記組織壁に係合し、吻合の対向する胃腸組織において流体シールを提供するよう構成され、
前記スキャホールド構造が拡張される際に、前記組織スキャホールドの軸方向長さが短くなり、それにより、内方向の圧縮力が前記吻合に働き、前記吻合の対向する胃腸組織層の位置合わせを維持し、
前記スキャホールド構造が拡張される際に、前記障壁層を含む前記中間部による係合の前に、前記2つの側部および前記保持要素が前記胃腸管の組織壁に係合するように、前記中間部が、前記2つの側部よりも大きい半径方向剛性を有するように構成されている、
組織スキャホールド。
【請求項19】
前記組織スキャホールドの軸長が、前記スキャホールド構造が半径方向に拡張される際に、短くなり、
前記保持要素が、前記スキャホールド構造が拡張される際に吻合の対向する胃腸組織層を物理的に寄せるよう構成されているとともに、前記保持要素が、該胃腸組織層に係合するよう構成されており、
前記胃腸組織層の各々が、1つ以上の保持要素により個別に係合されることを特徴とする請求項7記載の組織スキャホールド。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、「吻合のためのスキャホールド形成システムおよび方法(SYSTEM AND METHOD FOR SCAFFOLDING OF ANASTOMESIS)」という発明の名称で2008年7月28日出願の米国特許出願第12/181,244号の優先権の利益を主張する;前述の優先権の元となる出願は、参照することによりその全体が本明細書に含まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施の形態は、吻合の治癒を促進するためのシステムおよび方法に関する。さらに詳細には、本発明の実施の形態は、腸の吻合の治癒を促進するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
毎年、かつてないほど多くの消化器手術が行われている。結腸の切除だけでも、米国において毎年600,000回を超える数の手術を計上する。結腸の切除およびこのような多くの他の手術には、切除術および、腸、食道および他の消化器官および組織の部分の吻合または外科的接合が含まれる。しかしながら、外科技術の進歩にもかかわらず、吻合創治癒の不全または不良は、依然として、胃腸の外科手術における大きな課題である。このような治癒の不全/不良は、結果的に、漏出、感染、狭窄および閉塞を引き起こす。結腸および食道の切除術は、漏出および狭窄の形成に起因して、吻合部合併症を起こす最も高い確率とある程度関係がある。例えば、結腸の切除の合併症を起こす確率は50%の高さであり、吻合部縫合不全を有する患者の死亡率は10〜15%の範囲である。胃管吊り上げ術、すなわち根治的食道切除術後の標準介入は、漏出および狭窄に起因して、高い罹患率および死亡率に同じように関連している。
【0004】
胃腸管の吻合不全は、幾つかの要因によって生じうる。主な問題には、以下のものが挙げられる。治癒を妨げ、吻合部縫合不全および腹膜感染を引き起こしうる吻合部位における感染。吻合の2つの側部を引き離すか、または別の方法で正常な治癒を妨げるのに十分な吻合上の軸力(横方向張力)および/または半径方向の他の張力(吻合張力と称される)。吻合の張力および/または吻合における過度の縫合/ステープル圧縮によって生じうる、吻合における血液の供給の低下に起因する組織虚血。吻合の創縁の不適切な位置合わせによって生じた組織の付着不良。最後に、腸閉塞を生じる、吻合後に腸管腔が狭くなることに起因する狭窄の形成。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、これらの要因の1つ以上に対処することによる、吻合創治癒を改善するためのシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態は、人工装具のスキャホールドまたは他のプロテーゼを使用して、腸、食道および他の体腔における外科的吻合の治癒を促進および/または遂行する、装置、システムおよび方法を提供する。多くの実施の形態は、さまざまな手段を通じて、吻合の治癒を促進するために、外科手術後の吻合部位に配置することができる、拡張可能な人工装具の組織スキャホールドを提供する。第一に、スキャホールドは、吻合に直接取り付けずに、スキャホールドが所望の管腔の適当な位置に保持できるようにするアンカーまたは保持要素を、スキャホールドの外側部に含みうる。これは、吻合の対向する類似の組織層が直接接合できるようにし、よって、容易に血管再生および治癒可能にする。スキャホールドはまた、吻合が圧縮状態に置かれるように、拡張の際に長さが短くなるように構成することができる。これは、吻合に作用する張力(例えばぜん動波に起因する)の量を最小化し、すなわち、張力下にある吻合部位から生じた吻合の裂傷および組織虚血の危険性を低減する。スキャホールドは、吻合部位において内腔壁と係合し、排泄物および他の腸液など腸内容物の吻合の外への漏出を防ぐ障壁層も含みうる。これは、吻合部位における感染および炎症の危険性を低減する。
【0007】
人工装具のスキャホールドの実施の形態は、大腸・小腸および食道の外科的吻合の治癒の促進に特に有用である。それらはまた、制限なく、心臓(例えば、冠状動脈、瘻孔)、肝臓(例えば肝管、胆管など)、膵臓(例えば膵管)、胆嚢(胆嚢管)、脳(例えば大脳動脈);生殖−泌尿器系(例えば、尿管、尿道、卵管、輸精管)および脈管構造におけるさまざまな部位、例えば、大動脈、頸動脈、大腿部または他の末梢動脈または静脈などを含む、体内におけるさまざまな他の管腔の部位にも適合することができる。スキャホールドの寸法、形状および特性は、特定の部位に適合させることができる。例えば、動脈の用途では、スキャホールドの形状および漸減は、動脈の形状に適合させることができる(例えば、上行大動脈の形状)。また、スキャホールドは、ヘパリンなどの非血栓性のコーティングを有しうる。
【0008】
外科的に形成された吻合の配置に加えて、スキャホールドのさまざまな実施の形態もまた、外科的吻合に関して同一の方法で治癒を促進するために、自然にできた裂傷または切開が存在する体腔に配置して差し支えない(例えば、分離した食道を有する事例など)。これらの実施の形態では、スキャホールドの形状および材料の特性は、裂傷の形状、位置および組織特性に適合させることができる。
【0009】
1つの実施の形態では、本発明は、2つの外側部および中間部を有する径方向へ拡張可能なスキャホールド構造、各外側部に連結された少なくとも1つの保持要素、および障壁層を備えた、体腔内の吻合部位に配置するための組織スキャホールドを提供する。保持要素は、吻合創治癒の期間中に、スキャホールドが体腔に保持されるようにスキャホールド構造が拡張される際に、アンカーまたは別の方法で腸または他の内腔壁を係合するフックを含みうる。以下に説明するように、それらはまた、吻合に圧縮力を印加することができる。スキャホールドの中間部は、スキャホールドが拡張される際に(例えば、バルーン・カテーテルまたは他の拡張手段によって)、外側部が最初に保持要素に沿って拡張し、中間部に係合する前に内腔壁組織を係合するように、外側部よりも大きい半径方向剛性を有しうる。スキャホールド構造が拡張される際に、スキャホールドは、典型的には長さ方向が収縮するであろうことから、これは、保持要素が吻合に圧縮力を働かせることを可能にする。望ましくは、この力は、吻合の対向する組織層の位置合わせを維持するのに十分であることが望ましい。
【0010】
スキャホールドのすべてまたは一部は、吻合創治癒が実質的に完了した後、経時とともに、消化液および他の体液への曝露によりスキャホールドが体内に再吸収されるか、または、別の方法で加水分解によって溶解するように、生体吸収性および/または生物分解性の材料から製造することができる。再吸収/分解速度は、材料の選択(例えば、選択されるコポリマーおよび架橋結合の程度)およびスキャホールド寸法を通じて選択することができ、特定の吻合部位で漸増されうる。障壁層は、腸または他の体腔の外への漏出を防ぐように、吻合に流体シールを提供するため、スキャホールドが拡張される際に、吻合部位の組織壁を係合するように構成される。スキャホールドの中間部は、吻合創治癒が生じる間に長時間、吻合にシールを形成し、維持するため、拡張状態において十分な半径方向剛性を有する。
【0011】
多くの実施の形態では、スキャホールド/スキャホールド構造は、展開されていない状態から、より大きい直径に展開された状態に拡張されるように構成される。これは、バルーン・カテーテルまたは他の拡張装置などに由来する力の印加と共に、直径が伸張するスキャホールド構造の使用を通じて達成することができる。スキャホールド構造は、例えば、外側部が中間部より硬くなるようになど、所望の剛性プロファイルを生じるように、スキャホールドの長さ全体にわたり変化する厚さを有しうる。スキャホールド構造は、さまざまなパターン有しうる。さまざまな実施の形態では、スキャホールド構造は、完全に展開した状態および部分的に展開した状態のスキャホールド用に異なる形状を生じるように構成することもできる。例えば、完全に展開されたスキャホールドが、選択される部位においてスキャホールドを安定させ、スキャホールドの移動を防ぐことを助けるために、スキャホールド構造は、犬用の骨の形状または他の外向きに張り出した形状を有するように構成することができる。スキャホールド構造は、最終的な展開状態において実質的に管状の形状と仮定する前に、まず、スキャホールドの外側部が内腔壁を係合するように、部分的に展開した状態においてこの形状を有するように構成することもできる(これは、上述の変化する剛性プロファイルを通じて達成することができる)。加えて、スキャホールドは、吻合に圧縮力を働かせるように、完全に展開した状態において長さ方向が収縮するように構成することができる。圧縮力は、吻合の対向する組織層の位置合わせを維持するのに十分であることが望ましい。
【0012】
さまざまな実施の形態では、障壁層は、スキャホールドの中間部に適合する管状の保護部材を含みうる。胃腸の用途では、スキャホールドが再吸収された後、保護部材は、正常な消化作用によって腸を通過するように構成することができる。他の用途では、保護部材はまた、スキャホールドと同一または異なる速度の生体吸収性になるように構成することができる。好ましくは、保護部材/障壁層は、さまざまな体液に不透過性の材料で構築される。腸の用途では、障壁は、糞便および細菌に不透過性であることが好ましい。障壁層はまた、治癒を促進し、炎症を低減し、感染を防止し、吻合部位におけるコラーゲンの堆積を促進するための1つ以上のコーティングまたは作用物質を含みうる。障壁層はまた、吻合部位における治癒をさらに促進するように構成された生物学的材料または他の材料のシートで被覆されうる。
【0013】
多くの実施の形態では、スキャホールドは、典型的には、当技術分野で既知のバルーンデリバリーカテーテルでありうるが、他の送達手段もまた意図されている、デリバリーカテーテルを使用して送達することができる。スキャホールドおよびデリバリーカテーテルは、両方とも、内視鏡、腹腔鏡または観血的手術を使用して送達されるように構成することができる。さまざまな胃腸の用途では、スキャホールドは、食道、直腸または観血的手術を使用して送達されるように構成することができる。スキャホールドはまた、制限されることなく、端々吻合、端側吻合および側側吻合を含めたさまざまな吻合の配置を行うために形状化することができ、これらおよび関係する吻合にそれぞれ適合するように、管状、T字形の形状、S形の形状をした配置を有しうる。
【0014】
多くの実施の形態では、放射線不透過性、エコー画像または他の医学画像視認マーカーが、スキャホールドおよび/またはデリバリーカテーテルの所望の位置に配置される。特に、スキャホールドの上、および/または、障壁層の端において、側部の中点またはその近くに放射線不透過性マーカーを提供することが望ましく、これにより、医師がスキャホールドの中点を吻合と位置合わせし、ならびに、吻合のいずれかの側に十分な長さの保護部材/障壁層が存在することを確実にすることができるようになる。マーカーは、保持要素の位置またはその上に置くこともできる。バーベル、犬の骨または別の方法で外向きに張り出した形状をしたスキャホールド構造を有する実施の形態では、マーカーは、スキャホールドが展開状態にあるときに、直径が張り出し始める、展開されていないスキャホールド上の転移点に配置することができる。
【0015】
典型的な展開プロトコルでは、人工装具のスキャホールドは、まず、バルーン・カテーテルなどのデリバリーカテーテルを使用して、所望の吻合部位に配置される。これは、内視鏡(viewing scope)を用いて直接観察下で行うか、または蛍光透視像または当技術分野で既知の他の医学画像手段(例えば、超音波)を通じて行うことができる。次に、スキャホールドの中間部を吻合と位置合わせし、バルーン・カテーテルを使用してスキャホールドを拡張する。バルーン・カテーテルは、保持要素と保護部材を含めたスキャホールドが体腔を係合するまで、選択される体腔内にスキャホールドを膨張させる。バルーンは、保護部材を吻合に幾分押圧し、保持要素を内腔壁に設置し、スキャホールドを適当な位置に取り付けるために、拡張し続けることができる(これはまた、デリバリーカテーテルを引っ張り、釣り針と同様の方法で保持要素を設置することによって促進することもできる)。部分的に展開状態にある、外向きに張り出したスキャホールドを有する実施の形態では、バルーンは、最初に、保持要素を含む側部を有するように拡張され、内腔壁を係合し、次に、保護部材を含むスキャホールド中間部が吻合を係合および封止するまで、拡張され続ける。次に、バルーンをしぼませ、完全に展開した状態にあるスキャホールドの内部から引き抜き、ここで、保持要素が設置され、保護部材は吻合にシールを形成する。多くの実施の形態では、拡張量は、当技術分野で既知の放射線不透過性染料を使用して、バルーンを膨張させることによって評価することができる。スキャホールドの最終的な直径は、スキャホールド構造の構築および/または非弾力性の拡張バルーンの使用の両方を通じて調節することができる。
【0016】
典型的には、スキャホールド全体が同時に拡張されるであろう;しかしながら、一部の例では、スキャホールドは部分的に拡張することができ、スキャホールドの特定の実施の形態は、これら部分拡張をするように構成することができる。例えば、スキャホールドの外側部の1つを最初に拡張し、次に、他の外側部、その後、中間部を拡張することができる。あるいは、最初に中間部を拡張し、その後、外側部を拡張してもよいであろう。これは、同一または異なるバルーン・カテーテルを用いて行うことができる。例えば、特定の膨張直径を有する第1のバルーンを外側部の拡張に使用し、より小さい直径を有する第2のバルーンを中間部の膨張に使用してもよく、あるいは第2のバルーンは、より大きい直径を有しうる。さらに他の状態では、第1の直径を有する第1のバルーンを、スキャホールドの1つの外側部の拡張に使用し、他の側面には別の異なる寸法のバルーンを使用し、さらに中間部には第3のバルーンを使用して構わない。このような手法を、端側吻合または側側吻合術に使用して差し支えなく、ここで、スキャホールドの一部分は、異なる直径を有する体腔に存在する。それは、管腔の長さにわたって変化する直径を有する体腔(例えば、S状結腸が直腸と接合するところ)、または外側部の1つが体腔の開口部に配置されるところ(例えば、胃の噴門が食道と接合するところ)にも適合することができる。本発明のこれらおよび他の実施の形態および態様のさらなる詳細は、以下にさらに十分に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】吻合部に配置され、取り付けられた本発明の人工装具のスキャホールドの実施の形態を示す側面図。
【
図2】デリバリーカテーテルに取り付けられた本発明の人工装具のスキャホールドの実施の形態を示す側面図。
【
図3】展開パターンに示されるスキャホールド構造の実施の形態を例証する側面図。
【
図4a】展開状態におけるスキャホールドの短縮を例証する、非展開の状態(
図3a)における人工装具のスキャホールドの実施の形態を示す側面図。
【
図4b】展開状態におけるスキャホールドの短縮を例証する、展開した状態(
図3b)における人工装具のスキャホールドの実施の形態を示す側面図。
【
図5a】吻合部位の内腔壁に印加する圧縮力を例証する、吻合部に配置される場合の非展開の状態における人工装具のスキャホールドの実施の形態を示す側面図。
【
図5b】吻合部位の内腔壁に印加する圧縮力を例証する、吻合部に配置される場合の展開した状態における人工装具のスキャホールドの実施の形態を示す側面図。
【
図6a】バルーンデリバリーカテーテルを使用した、吻合部位における人工装具のスキャホールドの展開方法を例証する側面図。
【
図6b】バルーンデリバリーカテーテルを使用した、吻合部位における人工装具のスキャホールドの展開方法を例証する側面図。
【
図6c】バルーンデリバリーカテーテルを使用した、吻合部位における人工装具のスキャホールドの展開方法を例証する側面図。
【
図6d】バルーンデリバリーカテーテルを使用した、吻合部位における人工装具のスキャホールドの展開方法を例証する側面図。
【
図6e】バルーンデリバリーカテーテルを使用した、吻合部位における人工装具のスキャホールドの展開方法を例証する側面図。
【
図7a】バルーンデリバリーカテーテルの部分拡張を使用した、人工装具のスキャホールドの部分展開方法を例証する側面図。
【
図7b】バルーンデリバリーカテーテルの部分拡張を使用した、人工装具のスキャホールドの部分展開方法を例証する側面図。
【
図7c】バルーンデリバリーカテーテルの部分拡張を使用した、人工装具のスキャホールドの部分展開方法を例証する側面図。
【
図8a】腸壁または内腔壁の吻合部または他の開口部を通じたアクセスによる、人工装具のスキャホールドの展開方法を例証する側面図;展開されていない状態のスキャホールド。
【
図8b】腸壁または内腔壁の吻合部または他の開口部を通じたアクセスによる、人工装具のスキャホールドの展開方法を例証する側面図;展開した状態のスキャホールド。
【
図9a】切開した組織層を同じ位置に配置するための、吻合部位の腸壁におけるスキャホールドの位置合わせおよび取り付けを例証する断面図。
【
図9b】組織層が整列した、治癒した状態における吻合部位を例証する断面図。
【
図10】湾曲した体腔を有する吻合部位における端々吻合術に使用するためのスキャホールドの実施の形態。
【
図11a】変化する位置合わせを有する体腔の側側吻合に使用するためのスキャホールドの実施の形態;位置合わせした腸を有する吻合における使用。
【
図11b】変化する位置合わせを有する体腔の側側吻合に使用するためのスキャホールドの実施の形態;オフセットした体腔を有する吻合における使用。
【
図12】側端吻合に使用するためのスキャホールドの実施の形態。
【
図13】胃と小腸など、より大きい直径とより小さい直径の体腔の吻合に使用するためのスキャホールドの実施の形態。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態は、腸、食道および他の体腔における外科的吻合の治癒を促進および/または支援するために、人工装具のスキャホールドまたは他の人工装具を使用するための装置、システムおよび方法を提供する。多くの実施の形態は、吻合の閉鎖および治癒の両方を促進するため、外科手術後の吻合部位に配置することができる拡張可能な人工装具のスキャホールドを提供する。本明細書では、外科的吻合または吻合という用語は、体内の導管、管または血管の間を外科的接続または再接続することをいう。それは、端々吻合、端側吻合、側端吻合、または側側吻合でありうる。論述の簡略化のため、用語は、典型的には、端々吻合接合に関して用いられるが、他の用途にも本明細書の実施の形態に均等に適用可能である。本明細書に記載のスキャホールドの実施の形態は、全身の多くの管腔に幅広い用途を有するが、論述の簡略化のため、以下の説明は、腸、典型的には大腸における装置の使用について言及するけれども、本明細書に記載のすべての他の組織部位が均等に適用可能であることもまた理解されるべきである。
【0019】
図1〜5を参照すると、腸または他の体腔BLの壁W内において、吻合Aへ組織人工装具のスキャホールドを送達および展開するためのシステム5の実施の形態は、スキャホールド10およびデリバリーカテーテル20を備えることができる。スキャホールド10は、中間部12、近位部13pおよび遠位部13dを含めた側部13、および、近位端14pおよび遠位端14dを含めた末端14を備えている。すべてまたは一部のスキャホールド10は、径方向へ拡張可能なスキャホールド構造30、保持要素41としても知られる1つ以上のアンカー41を含むアンカー構造40、および障壁層50を備える。障壁層50はまた、本明細書に記載されるさまざまな薬剤または作用物質56を含む、1つ以上のコーティングまたは生物学的層55も含むことができる。
【0020】
多くの実施の形態では、スキャホールド10は、デリバリーカテーテル20を使用して吻合部位に送達するように構成される。デリバリーカテーテルは、インフレータブル・バルーン23を有するバルーンデリバリーカテーテル24でありうるが、他の送達手段も意図されている。スキャホールドは、接着(放出可能な接着剤を使用)、クリンピング、または拘束シースまたは被覆の使用を通じてなど、幾つかの手段によって、デリバリーカテーテルに取り付けられうる。スキャホールドおよびデリバリーカテーテルは、内視鏡、腹腔鏡または観血的手術を用いて送達されるように構成することもできる。デリバリーカテーテルの長さおよび膨張直径は、特定の手術、アプローチ法および選択される吻合部位について寸法化することができる。内視鏡手術では、デリバリーカテーテルの長さは、100〜150mmの範囲であって差し支えなく、特定の実施の形態では、110、120、130および140mmでありうる。
【0021】
スキャホールド10は、特定の体腔および吻合部位ASについて寸法化し、形状化することもできる。多くの実施の形態では、スキャホールド10は、一般に、さまざまな端々吻合術に使用することができる円筒形の形状を有する。スキャホールド10は、特に本明細書で論じた半展開状態において、犬用の骨またはバーベルの形状などの外向きに張り出した形状を有することもある。本明細書でさらに論じるように、U、SおよびT字形の形状を含めた他の形状もまた、意図されている。スキャホールドの展開した長さ10L’および展開/拡張した直径10D’は、特定の管腔および吻合部位ASについて寸法化することができる。小腸における局所的用途では、スキャホールドの拡張された直径10dは、2〜4cmの範囲であって差し支えなく、特定の実施の形態では2.5および3cmでありうるのに対し、大腸の用途では、拡張された直径は6〜9cmの範囲であって差し支えなく、特定の実施の形態では、7、7.5、および8cmでありうる。他の体腔のためのその他の直径もまた、意図されている。長さ10Lのスキャホールドは、2〜30cmの範囲であって差し支えなく、特定の実施の形態では、2.5、5、7.5、10、15、20および25cmでありうる。最終的な拡張された直径は、バルーン23または他の拡張装置を定寸装置として使用して、調節することができる。
【0022】
典型的には、スキャホールド10は、侵襲の少ない方法を用いた送達を促進するために、展開されていない状態から、より大きい直径へと展開した状態に拡張されるように構成される。これは、バルーン・カテーテルまたは他の拡張装置などに由来する力の印加と共に、直径が伸長するスキャホールド構造の使用を通じて、達成されうる。したがって、多くの実施の形態では、スキャホールド10は、典型的には、バルーンデリバリーカテーテル24の一部であるバルーン23などの拡張装置22によって拡張可能であろう、拡張可能な構造を含む。侵襲の少ない外科的分野において周知の他の拡張装置もまた意図されている。あるいは、スキャホールド10は、例えば、スキャホールドの拘束状態が保持され、その後、解放される、当技術分野で周知の形状記憶材料など、自己拡張可能なように構成することもできる。拡張可能な実施の形態では、スキャホールド10は、展開状態(
図6a)および完全に展開状態(
図6c)を有する。スキャホールド10は、例えば、犬用の骨、バーベルまたは、スキャホールドの横軸10Aに対して外向きに張り出した他の形状を有する、
図6bに示すような、部分的に展開した状態も有しうる。典型的には、スキャホールド10は、展開されていない状態のデリバリーカテーテル20に担持され、所望の吻合部位に配置されるとすぐに、展開状態になる。スキャホールドは、腸壁BWまたは他の内腔壁Wを有する保持要素41の係合を促進するため、部分的に展開状態にすることもできる。典型的には、これは、中間部が腸壁を係合するように、最初に腸壁を係合し(保持要素41に沿って)、次に、スキャホールドを完全に拡張するという、スキャホールド側部13の拡張によって行われる。展開状態(本明細書で論じた)において、スキャホールドが横方向に収縮する実施の形態では、スキャホールドは、保持要素41が腸壁に圧縮力を印加可能にする、すなわち、吻合する。
【0023】
図3を参照すると、スキャホールド10の構造についての説明が提示されている。さまざまな実施の形態では、スキャホールド構造30は、十字形、らせん、蛇行、またはそれらの組合せを含めたさまざまなパターンを有しうる。スキャホールド構造30の使用には、当技術分野で既知の幅広いさまざまな他のパターンが均等に適用可能であることは明らかであろう。展開パターンの
図3に示すスキャホールド10の典型的な実施の形態では、スキャホールド構造30は、ストリップ31から形成される、複数の径方向に伸長可能な蛇行したセル32を含む。セル32は、より小さい伸長可能な部材34で連結される。この実施の形態および関係する実施の形態において、スキャホールド30は、中間部12と側部13に対応する、中間部35と2つの側部36に分けられる。典型的には、中間部35のストリップ厚は、側部36の厚さよりも大きい。これは、側部13、36に対し、非常に大きい半径方向剛性を有する中間部12、35を提供する。このような配置はまた、側部13、36を最初に拡張することを可能にし(バルーン・カテーテルまたは他の拡張装置の外側径方向力に由来)、したがって、中間部12による係合より先に腸壁BWを係合する保持要素41を含むセクション12を有する。多くの実施の形態では、スキャホールド構造は、拡大する際に横方向に収縮することから、これは、スキャホールドが吻合に圧縮力を働かせることを可能にする。このように、スキャホールドは、吻合のためのメカニカル・クランプとして機能する。中間部35、12を含むスキャホールドのすべてまたは一部の半径方向剛性も、スキャホールドが吻合Aを含む吻合部位ASを機械的に支持および強化するように構成することができる。望ましくは、少なくとも中間部12/35の半径方向剛性は、消化(例えば、ぜん動波)または他の生理的機能、ならびに患者の運動に由来する腸運動の間に、吻合部における流体シールおよび吻合接合部の完全性を維持するのに十分である。このように、スキャホールドは、吻合の治癒を促進し、吻合部における狭窄形成、感染および炎症(例えば吻合部漏出に起因)および吻合部剥離を含めたさまざまな術後合併症の危険性を低減するために、吻合および吻合部位の機械的支持としての機能を果たす。側部13、36に対する中間部12、35の半径方向剛性を増加させるための他の手段としては、これらのセクションにおけるカーボン・ナノチューブまたは他の硬化添加剤の使用、ならびに、例えば、e−ビームまたは当技術分野で既知の他の放射技術を通じた、中間部の架橋結合の増大が挙げられる。
【0024】
図4〜5を参照すると、多くの実施の形態では、スキャホールド10は、
図4aおよび4bの実施の形態に示すように、直径方向が拡大する際に、長さ方向が収縮するように構成される。この実施の形態において、スキャホールドは、長さ方向がL’からL”へと収縮すると同時に、直径方向はD’からD”へと拡大する。これは、セル自体の直径方向が拡大し、長さ方向が収縮するように構成される、伸長可能なセル32の特定の配置を通じて達成することができる。長さ方向の収縮量は、5〜50%の範囲であって差し支えなく、特定の実施の形態では、10、20、30、および40%でありうる。直径方向の拡張量は、意図する直径の膨張量より大きく、10〜200%の範囲でありうる。
図5aおよび5bを参照すると、保持要素41の使用を通じたこの収縮効果は、選択される吻合部位ASの内腔壁W上に圧縮力CFを印加することである。圧縮力CFは、吻合を閉じる役割をし、また、腸壁の対向する組織層の位置合わせを維持する働きもする。圧縮力CFは、吻合を閉鎖状態に保持する働き、および/または、さまざまな生理的機能(例えば、ぜん動波および他の消化管運動)ならびに患者の運動に由来して被りやすい、張力に逆らうことによる吻合の裂傷または他の不全を防止する働きもする。よって、圧縮力CFは、治癒する吻合の強度を増大させる応力としての働きをする。吻合を閉鎖状態に保つことは、感染または炎症を生じる管腔からの材料の漏出を防ぐことによって、治癒を促進する。さまざまな実施の形態では、圧縮力の大きさは、45.36〜907.2g(0.1〜2ポンド)の範囲であって差し支えなく、特定の実施の形態では、226.8、340.2、453.6および680.4g(0.5、0.75、1.0および1.5ポンド)でありうる。それより大きいまたは小さい力の範囲(force area)も意図されており、力は、特定の吻合部位ASに対し漸増することができる。これらの実施の形態に由来する圧縮力は、吻合の閉鎖を保持し、裂傷を最小化する利益のみならず、吻合が被る張力の大きさを最小化および/または相殺する。張力は、裂傷に加えて、血液および栄養素を部位に供給する血管(毛細血管を含む)を収縮または圧迫することによって、吻合部位における増殖する組織に虚血を生じさせうる(あるいは、適切なかん流の量を低減する)ことから、潜在的に、吻合創治癒に悪影響を及ぼす。このように、横方向に収縮するスキャホールドの実施の形態は、吻合部位の組織への虚血を最小限にすることによって、または、部位への適切なかん流の維持を補助することによって、吻合創の治癒を促進する働きをする。本明細書にさらに詳細に述べるように、これらの実施の形態は、対向する組織様の層の付着を保つことによって、治癒を促進する役割もする。
【0025】
多くの実施の形態では、スキャホールド構造30を含むスキャホールド10のすべてまたは一部は、生体再吸収性のまたは生物分解性のポリマー(論述の簡略化のため、生体再吸収性と称する)から製造することができる。適切な生体再吸収性の材料としては、ラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、およびトリメチレンカーボネートのポリマー、カプロラクトン、それらの混合物、およびそれらのコポリマーが挙げられる。好ましい実施の形態では、材料は、高分子量のポリ乳酸−グリコール酸など、ポリ乳酸−グリコール酸(PGLA)を含む。さまざまな実施の形態では、生体再吸収性のポリマーは、ナノチューブまたはカーボン・ファイバーで補強して差し支えない。これは、本明細書で論ずるマーカー15など、スキャホールドのすべてまたは選択部分を放射線不透過性にするために、当技術分野で既知の放射線不透過性材料と組み合わせてもよい。別の実施の形態では、スキャホールドは、NITINOLなどの形状記憶超弾性材料で構築することができる。これらの実施の形態は、恒久的に留置するか、摘出するか、または腸管を通過するように、構成することができる。
【0026】
腸または他の体腔内の流体へのインビボ曝露の際に、生体再吸収性の材料は、完全に吸収されるか、またはスキャホールドを軟化して、腸または他の体腔の外に容易に排出されうる、柔軟な塊へと崩壊するように構成される。スキャホールド構造の分解/吸収速度は、材料、寸法(例えば、厚さ)またはその両方の選択によって調節することができる。特定の実施の形態では、スキャホールド構造を含む材料の分子量は、分解速度を調節するために用いることができ、より速い分解速度のためには、より低分子量の材料が選択されるが、逆もまた同様に成り立つ。吻合部位、体腔などに応じて、選択される期間中、スキャホールドが持続するように、スキャホールド材料および寸法のうちの1つまたは両方の選択を通じて、分解速度を漸増することができる。例えば、そうでなければ治癒するのに長期間かかる、大きい直径および/または複雑な吻合では、分解速度が遅くなり、対応するスキャホールドの滞留期間が長くなるように選択することができる。より小さい、および/または、より速い吻合の治癒にとって、より速い速度が選択されうる。
【0027】
保持構造40および保持要素41は、吻合創の治癒の期間、腸または他の体腔における選択される吻合部位に、スキャホールド10が保持されるように配置および構成される。このような治癒の期間は1〜8週間であって差し支えなく、特定の実施の形態では、2、4および6週間でありうる。3、6および12ヶ月を含めたさらに長い期間もまた意図されている。このような長い期間は、スキャホールド構造に、架橋した、高分子量および/または、より大きい材料を使用することを通じて達成することができる。腸の用途では、それらは、蠕動収縮および他の生理的機能、ならびに患者の運動から生じる腸運動に起因して、スキャホールドが移動することを防ぐのに十分な保持力を提供するように構成される。それらはまた、膨張する際に横方向に収縮するスキャホールド構造を有する実施の形態において、腸壁または他の内腔壁に圧縮力を印加する役割をする。保持構造40は、1つ以上の保持要素41を備える。典型的には、保持構造は、2つ以上保持要素群を含む。3、4、5、および6またはそれ以上の群も意図されている。保持要素41として、フック、ピン、返し、ヘリカルコイル、または他の保持手段が挙げられる。長さは、特定の体腔用に選択することができるが、1〜5mmの範囲であって差し支えなく、特定の実施の形態では2、3および4mmでありうる。それらの長さ、直径、形状および他の寸法は、特定の吻合部位用に選択することができる。それらはまた、一直線であるか、または特定の方向に傾斜しうる。典型的には、それらはスキャホールドの中点の方向に傾斜するであろう。保持要素は、スキャホールド構造に完全に取り付けるか、または接着付加することができる。保持要素は、カーボン・ナノチューブで補強することもでき、本明細書に記載されるマーカー15として機能する放射線不透過性または他の材料を含みうる。それらは、カーボン・ナノチューブまたは他の補強材料で補強することによって達成することができる、選択量のスプリング力を有しうる。
【0028】
さまざまな実施の形態では、障壁層50は、スキャホールド構造30に適合し、接着または当技術分野で既知の他の取り付け方法(例えば、超音波溶接)によって取り付けられる、保護部材または管状のスリーブ51を備えることができる。障壁層50は、当技術分野で既知のさまざまなコーティング方法を用いて、スキャホールド構造30上にコーティングすることができる。典型的には、保護部材51は、スキャホールド構造30の形状にほぼ適合する円筒形の形状を有するであろう。しかし、それはまた、スキャホールド構造の形状に適合するように選択された他の管状の形状を有していてもよい。このような形状としては、湾曲形状、U型の形状、S字形の形状、T字形の形状、および同様の形状が挙げられる。以下に十分に論述するように、障壁層はまた、スキャホールド構造の形状に適合するように、十分に柔軟でありうる。障壁層は、スキャホールド構造のすべてまたは一部を覆うことができるが、典型的には、中間部のみを覆う。典型的には、障壁層は、スキャホールド10の中間部12に、中心に配置され、後述するように、選択される吻合の流体シールを形成および維持するために、スキャホールドの中心12cのいずれかの側に横方向に伸びるように、十分な長さを有することが望ましい。他の実施の形態では、障壁層は、スキャホールドの中心からはずれて配置することができる。
【0029】
障壁層50は、幾つかの異なる機能を実行するように構成されうる。第1に、それは、治癒吻合を通じた腸または体腔の内容物の漏出を防ぐための障壁としての働きをする。腸の用途では、これは、吻合部位ASにおける感染および炎症の危険性を低減する。したがって、多くの実施の形態では、障壁層50は、吻合部位ASの組織壁を係合するように構成され、スキャホールド10が拡張されたときに、吻合の外かつ周囲組織内への腸または他の体腔の内容物の漏出を防ぐのに十分な流体シール52を提供する。障壁層50はまた、吻合内および周囲の細胞増殖および治癒を促進するため、吻合および周囲組織に生体適合性表面を提供することが望ましい。層は、スキャホールドの運動に伴って、曲げたり、動かしたりするのに十分に柔軟であり、かつ、依然として流体シールを維持することが望ましい。したがって、さまざまな実施の形態では、障壁層50は、当技術分野で既知の流体不透過性の柔軟な生体適合性の材料を含みうる。障壁50のための適切な材料としては、拡張されたPTFEまたは他のフルオロポリマー、シリコーン、ウレタンおよびそれらのコポリマーが挙げられる。さまざまな腸および血管用途では、障壁層50は、選択される体腔内のさまざまな生理学的圧力(例えば、動脈圧またはぜん動波に由来する圧力)に直面して、流体シールを維持するために、十分な破裂/漏えい強度を有することが望ましい。適切な高強度の材料としては、PTFEまたは他のフルオロポリマー、ポリエチレン、およびポリエチレン・テレフタレート(PET)およびナイロンが挙げられる。腸および他の胃腸用途では、障壁層50はまた、それ自体が吸収されるように構成されて差し支えなく、非吸収性の実施の形態では、スキャホールド10が実質的に吸収されると、消化管を容易に通過するように構成されうる。吸収性/生物分解性の実施の形態では、障壁50は、例えば、PGLAを含む、本明細書に記載の1つ以上の生体吸収性および/または生物分解性の材料から製造することができる。障壁層50の分解/吸収速度は、障壁層がスキャホールド構造より長持ちするように、スキャホールド構造よりも十分に遅くなるように構成することができる。これは、例えば、より大きい分子量および/または架橋した生体吸収性の/生物分解性のポリマーを使用して、障壁層の材料および寸法の選択を通じて達成することができる。
【0030】
多くの実施の形態では、障壁層50はまた、さまざまな薬剤を含むコーティングまたは生物学的層55、吻合部位ASにおいて、治癒を促進し、炎症を低減し、コラーゲンおよび細胞の堆積を促進する、治療または他の生物学的作用物質56を含みうる。生物学的層55は、作用物質56を直接、吻合Aおよび周囲吻合部位ASに送達することができるように、障壁層50のすべてまたは一部を被覆し、中点12cに関して中心に位置合わせされることが望ましい。生物学的層55はまた、例えば、スキャホールドの中点構造および/または障壁層の中心に配置された第1の生物学的層55’と、障壁層の端の近くに配置された第2の生物学的層55”など、少なくとも第1および第2の生物学的層55’および55”を含みうる。第1および第2の層55’および55”は、異なる生物学的作用物質56を含んで差し支えなく、または、例えば、特定の作用物質の2つの相の送達を生じる、異なる濃度の同一の作用物質を含みうる。
【0031】
さまざまな実施の形態では、作用物質56としては、制限されることなく:創傷の治癒およびコラーゲンの堆積を促進するための因子であるVEGFまたは他の増殖因子、感染の危険性を低減するための抗生物質または他の抗菌剤、炎症を低減するためのデキサメタゾンまたは他のステロイドまたは抗炎症剤、およびヘパリンまたは他の抗凝固剤または抗血栓剤(血管用途のため)が挙げられる。好ましい実施の形態では、作用物質56は、増殖を促進し、炎症を低減するためのVEGFとデキサメタゾンの組み合わせを含む。作用物質56はまた、溶出物質または当技術分野で既知の他の担体化合物57と組み合わせて、周囲吻合部位への作用物質56の放出を制御することができる。溶出作用物質は、例えば、短時間の即時放出の後、長時間の持続放出速度など、所望の作用物質56の短時間および長時間の放出速度の両方を生じるように構成することができる。他の異なる放出速度もまた意図されている(例えば、定常状態および非定常状態)。適切な担体化合物57は、さまざまなシリコーン、ポリウレタンおよび当技術分野で既知の他の生体適合性の透過性ポリマーを含みうるさまざまな生物学的作用物質の放出を防ぐことに加えて、生物学的層55はまた、後に再吸収される前に、吻合部における新しい組織の増殖のための基質としての役割をするように構成することもできる。これらの実施の形態では、層55は、PGLG、または本明細書に記載する、または当技術分野で既知の他の生体吸収性の材料を含みうる。
【0032】
多くの実施の形態では、放射線不透過性、エコー画像または他の医学画像視認マーカー15を、スキャホールド10の1つ以上の選択位置に配置することができる。特に、マーカー15を、スキャホールド10上の側部の中点12cまたはその近く、および/または障壁層50の端に提供することが望ましく、これは、医師によってスキャホールドの中心を吻合Aと位置合わせ可能にするとともに、吻合のいずれかの側に十分な長さの障壁層が存在することを確実にする。特定の実施の形態では、マーカー15は、スキャホールドの中心12cに置かれたマーカー15cおよび障壁層50の端に置かれたマーカー15cを含みうる。マーカー15はまた、保持要素41の位置に置くこともできる。バーベル、犬の骨または別の方法で外向きに張り出した形状をしたスキャホールド構造を有する実施の形態では、マーカー15は、展開されていないスキャホールド上の転移点16に置くこともでき、ここで、直径が外側に張り出し始め、スキャホールドは展開状態になる。マーカー15はまた、スキャホールドの分解量の指標として機能させるために、スキャホールド構造30に配置し、置くことができる。これは、固定長、幅、面積または他の寸法の、特定のマーカーを構成し、その寸法の減少を測定することによって達成することができる。このような分解の指標は、医師が次のうちの1つ以上を評価するのに使用することができる:i)スキャホールドの分解の量および速度;ii)吻合の治癒の量および速度、iii)吻合の任意の裂傷または不全;iv)スキャホールドが置換を必要とする場合;およびv)外科的介入が必要な場合。
【0033】
図6a〜6eを参照すると、スキャホールド10の典型的な展開プロトコルが提示されている。このプロトコルは、内視鏡、腹腔鏡、または観血的手術において使用するのに適合することができる。第一に、人工装具のスキャホールドは、
図6aに示すように、バルーン・カテーテルなどのデリバリーカテーテルを使用して、所望の吻合部位に配置される。内視鏡手術では、これは、経口または直腸のアプローチ法を用いて行うことができ、ここで、デリバリーカテーテルは、直接、胃腸管を通じて、または、内視鏡または他のガイディングカテーテルの管腔を通じて、進行させるが、腹腔鏡の手術では、デリバリーカテーテルは、トロカールまたは他のポート装置を通じて進行させることができる。また、デリバリーカテーテルの位置合わせは、内視鏡(viewing scope)または他の視認手段を使用して、または蛍光透視像または当技術分野で既知の他の医学画像手段(例えば、超音波)を通じて、直視下で行うことができる。次に、スキャホールドの中点12cを、吻合Aと大雑把に位置合わせし、バルーン・カテーテル24を使用してスキャホールドを拡張する。これは、スキャホールド10上の中心マーカー15cまたは障壁層50の端のマーカー15eの使用によって促進することができる。バルーン・カテーテルは、保持要素41および障壁層50を含むスキャホールド10が体腔を係合するまで(
図6cに示すように)、選択される体腔内でスキャホールドを拡大する。バルーンは、障壁層を吻合にいくらか押圧し、内腔壁に保持要素を設置し、スキャホールドを適当な位置に取り付けるように拡張し続けることができる。これはまた、デリバリーカテーテルを引っ張り、釣り針と同様の方法で保持要素を設置することによって促進することもできる。部分的に展開状態の外向きに張り出したスキャホールドを有する実施の形態では(
図6b参照.)、バルーンは、最初に、内腔壁Wを拡張および係合する保持要素40を含む側部13を有するように拡張され(
図6bに示すように)、次いで、障壁層50を含むスキャホールド中間部12が吻合を係合し、封止するまで拡張し続ける。この実施の形態はまた、吻合を閉じたままに保ち、閉鎖状態を維持するように、スキャホールド10が圧縮力CFを腸壁BWまたは他の内腔壁Wに印加する方法を例証する。これは、保持要素41を有することにより生じ、最初に、腸壁を係合し、次いで、スキャホールドが拡張され続けることから、保持要素が圧縮力CFを印加して、半分の腸壁2つを引き合わせるように、長さを収縮する。本明細書で論じるように、この圧縮力は、消化、呼吸または患者の運動の間に生じる、体腔の引っ張りまたは運動によって生じる吻合上の張力を克服することによって、吻合を閉鎖状態に維持する助けとなる。本明細書で論じるように、吻合上の張力の低下はまた、このような張力によってその部位における脈管構造が圧縮されるのを防ぐことにより、吻合部位に適切なかん流を維持することによって、吻合創治癒を促進する役割もする。
【0034】
膨張完了の後、バルーンをしぼませ(
図6dに示すように)、完全に展開状態にあるスキャホールドの内部から抜き取り(
図6eに示すように)、ここで、保持要素が設置され、保護部材は吻合にシール52を形成する。多くの実施の形態では、バルーンおよびスキャホールドの膨張量は、当技術分野で既知の放射線不透過性染料でバルーンを膨張することによって評価することができる。直接画像化を通じて、マーカー15を測定することによっても評価することができる。スキャホールドの最終的な直径は、スキャホールド構造の構築および非弾力性の拡張バルーンの使用の両方を通じて制御することができる。
【0035】
典型的には、スキャホールド全体が同時に拡張されるであろう;しかしながら、一部の例では、スキャホールドは部分的に拡張することができ、スキャホールドの特定の実施の形態は、これら部分拡張をするように構成することができる。
図7a〜7cを参照すると、部分拡張プロトコルの1つの実施の形態では、スキャホールドの1つの外側部13を、最初に拡張し(例えば、
図7aに示す近位部13p)、次いで、他の外側部(
図7bに示す)、次いで中間部12(
図7cに示す)を拡張することができる。あるいは、中間部を最初に拡張し、その後、外側部を拡張することもできよう。部分拡張術のこれらおよび他の実施の形態は、同一または異なるバルーン・カテーテルを用いて行うことができる。例えば、特定の膨張直径を有する第1のバルーンは、外側部13の拡張に使用することができ、より小さい直径を有する第2のバルーンは、中間部12の膨張に使用することができよう。部分拡張プロトコルは、選択される吻合部位が腸または他の体腔の極端に湾曲または屈曲した(convoluted)部分であるなど、多くの状態で使用することができる。このアプローチ法は、医師が、別のセクションを行う前に、最初に保持要素を使用して、スキャホールドの一部分を拡張および固定することができるようにする。これは、すべてが一度に膨張する場合に、スキャホールドの湾曲部分が飛び出す可能性を低減する。部分拡張はまた、側端吻合に使用するように構成されたT字形の形状または他の形状をしたスキャホールドを膨張させるのに使用することもできる。
【0036】
さらに他の実施の形態では、第1の直径を有する第1のバルーンは、スキャホールドの1つの外側部の拡張に使用することができ、他の側面には別の異なる寸法のバルーンを使用し、中間部には第3のバルーンを使用してもよい。このような手順は、スキャホールドの一部が異なる直径を有する体腔にある、端側吻合または側側吻合に使用することができる。それは、管腔の長さ全体にわたり変化する直径を有する(例えば、S状結腸が直腸と接合するところ)か、または、外側部の1つが体腔の開口部にある(例えば、胃の噴門が食道と接合するところ)体腔にも適用することができる。
【0037】
本明細書で論じたように、さまざまな胃腸用途において、スキャホールド10は、経口または直腸のアプローチ法を通じて、吻合部位に送達されるように構成することができる。これらの実施の形態では、スキャホールドの膨張に用いられるバルーン・カテーテルは、スキャホールドの近位端から(取り付けられたカテーテルを通じて)膨張し、また、同一端から抜管される。しかしながら、
図8a〜8bを参照すると、他の実施の形態では、スキャホールドは、吻合自体または腸に作られた別の開口部を通じて吻合部位に送達されるように構成することができる。これらの実施の形態では、バルーン・カテーテルは、
図8aおよび8bに示すように、中心が膨張するように(すなわち、スキャホールドのおよそ中点から、または中心から外れて)構成することができる。このようなアプローチ法を使用する展開プロトコルの実施の形態では、デリバリーカテーテルは、吻合の閉鎖の前に、吻合を通じて挿入することができ、その後、外科医がデリバリーカテーテルの周囲を縫合し、スキャホールドを配置するようにバルーンを膨張させ、その後、しぼませて、吻合の残りの開口部を通じて抜き取られる。次に、外科医は、残りの開口部を閉じるために最終的な縫合を行うことができる。バリエーションにおいて、外科医はまた、バルーンを少なくとも部分的に膨張させ、スキャホールドを拡大し、よって、スキャホールドを、縫合するためのマンドレルまたは支持体として使用することができ(スキャホールドは構造に押圧を提供することから、縫合過程を容易にする)、または、縫合または他の閉鎖要素をスキャホールド自体に実際におくことができる。この後者のアプローチ法は、吻合部位においてスキャホールドを保持し、スキャホールドの移動を妨げる付加的手段を提供する。
【0038】
図9a〜9bを参照すると、吻合創治癒の過程を促進および推進するために、吻合部位ASにおけるスキャホールド10の位置合わせについての論述が提示される。本発明の多くの実施の形態は腸における用途および他の胃腸用途のために構成されることから、腸壁の形態の構造についての簡潔な論述もまた提示される。腸を含めた胃腸管の4つの主要層(食道および直腸の下部3分の1などの腹膜腔外の構造を除く)を
図9aに示す。これらの層は、(1)上皮、固有層および筋層粘膜で構成される粘膜M;(2)粘膜下層SM;(3)筋層MP;および(4)腸の外層の漿膜Sを含む。腸壁BWの厚さは約3mmである。
【0039】
図9aは、吻合Aにわたる腸壁BWの表面BS上のスキャホールド10の位置合わせの拡大図を示す。スキャホールドは、障壁層50の位置が吻合のいずれかの側になるように、スキャホールド10の中心12cおよび障壁層50の中心50cが吻合とほぼ位置合わせするように、腸壁表面に配置されることが望ましい(位置合わせは、放射線不透過性または本明細書に記載の他の造影マーカーを使用することによって促進することができる)。これは、吻合の周囲に良好なシールの生成を促進し、また、細菌を吻合の外に保つように、吻合のすぐ上に位置する生体適合性の保護層を有することによって吻合の治癒を促進する役割をする。吻合および周囲組織にある程度の量の圧縮を保ちつつ、それらを機械的に支持および強化する役目もする。このように、スキャホールド10は、機械的支持およびメカニカル・クランプの両方の働きをする。この支持およびクランプ機能は、同様に、吻合創治癒の期間中に付着における吻合の対向する類似の組織層(例えば、漿膜S)を保持する働きもし、類似の組織層間の治癒を可能にする。吻合の1つの側の層に由来する細胞は、他の側の類似の組織層に容易に成長しうることから、治癒は、類似の組織層間でより速区進行する。ひとたび吻合が治癒すると、
図9bに示すように、創縁は結合し、4つの腸層は、より強くより長い、永続する吻合組織の接合点を生じる、接合した類似の組織を有する類似の組織と適切に位置合わせされる。このように、スキャホールド10は、組織の位置合わせ治具および組織の治癒プラットフォームの両方の機能を果たすことができる。
【0040】
図10、11a、11b、12および13を参照すると、多くの実施の形態において、スキャホールド10は、それぞれの図に示すように、さまざまな吻合の配置のさまざまな形状に適合するように、十分に合致させることができる。同じように、保護部材51の形状も合致させることができる。多くの実施の形態では、展開状態のスキャホールドは、
図1〜2に示すように、端々吻合術を行うための円筒状または管状の形状を有しうる。これらの実施の形態はまた、同様に、他の吻合の配置を取るための他の形状に適合するように、十分に合致させることができる。特定の実施の形態は、所望の腸部分または他の体腔の湾曲した、屈曲した(convoluted)または他の形状に適合するように、屈曲およびひねりに十分に柔軟でありうる。円筒形の形状のスキャホールドのさまざまな実施の形態は、特定の体腔(例えば、直腸またはS状結腸)の漸減する形状に順応するように、漸減した形状でありうる。他の特定の実施の形態では、スキャホールドの展開状態は、
図10に示すような湾曲した体腔において、端側吻合を行うために湾曲していてもよく;位置合わせした腸(
図11aに示すような)と側側吻合を行うためにほぼU型の形状を取ることができ、オフセットした腸(
図11bに示すような)と側側吻合を行うためにほぼS字形の形状を取ることができ、または、側端吻合(
図12に示すような)を行うためにほぼT字形の形状を取ることができる。他の実施の形態では、スキャホールドは、胃と小腸など、大きい直径の体腔と小さい直径の体腔(
図13に示すような)間で吻合を行うために、じょうご状またはワイングラスの形状を有しうる。したがって、これらの実施の形態は、さまざまな胃バイパス術に特に有用である。
【0041】
逆の曲線、すなわち約180°より大きい曲線を含めた、スキャホールド10の他の形状もまた意図されている。特定の形状を、選択した管腔の特定の吻合および生体構造に適合させることができる。スキャホールドは、あらかじめ形成するか、または挿入前に医師が形成し、次いでデリバリーカテーテルに取り付けることができる。これらおよび関係する実施の形態では、バルーン・カテーテルを使用するスキャホールドの拡張は、選択される管腔の生体構造および吻合の配置に応じて、幾つかの方法のうちの1つで行うことができる。これらには、次のものが挙げられる:i)単一のバルーンの使用;ii)2つのバルーンの使用(血管形成の技術分野で知られるキッシングバルーン法の使用)またはii)本明細書に記載の方法を使用する人工装具のスキャホールドを通じて異なる位置に移動させた単一のバルーンに由来する複数の膨張の使用。
結論
前述のさまざまな本発明の実施の形態の説明は、例証および説明の目的で提示されている。本発明を開示された正確な形態に限定することは意図されていない。多くの変更、変形および微調整は当業者には明白であろう。例えば、人工装具のスキャホールドシステムおよび関係する方法の実施の形態は、食道、心臓(例えば冠状動脈)、肝臓(例えば、肝管、胆管など)、膵臓(例えば膵管)、胆嚢(胆嚢管)、脳(例えば大脳動脈)、大動脈、頸動脈、大腿部または他の末梢動脈または静脈などに見られるものなど、あらゆる体腔の吻合部位に位置合わせし、スキャホールディングするように構成することができる。スキャホールドは、特定の位置に送達および展開するように形成し、寸法化し、コーティングし、その他適合させることができる。また、スキャホールドの実施の形態は、さまざまな小児および新生児の用途用に、寸法化するか、または別の方法で適合させることができる。
【0042】
1つの実施の形態に由来する要素、特徴、または作用は、本発明の範囲内の多くの追加の実施の形態を形成するいずれかの他の実施の形態に由来する1つ以上の要素、特徴または作用と容易に再結合または置換することができる。さらには、他の要素と組み合わせて提示または記載される要素は、さまざまな実施の形態において、独立型要素として存在しうる。よって、本発明の範囲は、記載される実施の形態の細目に限定されるのではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。