(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948369
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】植物のランナー固定ピン
(51)【国際特許分類】
A01G 1/00 20060101AFI20160623BHJP
A01G 9/12 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
A01G1/00 301H
A01G9/12 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-117451(P2014-117451)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-228845(P2015-228845A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2014年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】原田 卓摩
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−075569(JP,A)
【文献】
特開平11−215925(JP,A)
【文献】
特開平05−187126(JP,A)
【文献】
特開2007−187380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00
A01G 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂で一体成形され、上部の摘まみ部と、下部に2つの刺し込み脚を有する脚部とを具備し、使用時に2つの刺し込み脚間に植物のランナーを抱持し、刺し込み脚が培地に突き刺される植物のランナー固定ピンであって、
前記摘まみ部は、厚さ方向の表面とその反対側の裏面とを有する平板状をなし、
前記脚部は、摘まみ部の下部に連なる湾曲接続部と、前記摘まみ部の幅方向の両側に位置する湾曲接続部の両端部から下方へ延出する一対の前記刺し込み脚とを具備し、
前記刺し込み脚は、前記湾曲部の両端から互いに平行に下方へ延びる直線部とこの直線部の下端部に連続する尖鋭部とを具備し、
前記刺し込み脚の直線部は、前記湾曲接続部の両端部に連続して外側縁部に沿って延びるフランジ部と、このフランジ部から垂直に内側へ延出してフランジ部に沿って延びかつ上端部において前記湾曲接続部の湾曲の内側に沿って湾曲して延びるウェブ部とを具備することを特徴とする植物のランナー固定ピン。
【請求項2】
前記湾曲接続部は、前記摘まみ部の表面及び裏面から隆起した表裏の隆起面を有し、摘まみ部側へ湾曲して延び、湾曲の外側において摘まみ部の下部に連なり、
前記フランジ部は、前記隆起面と面一をなす表裏面を有し、前記湾曲接続部の両端に連続することを特徴とする請求項1に記載の植物のランナー固定ピン。
【請求項3】
前記尖鋭部は、前記刺し込み脚のフランジ部及びウェブ部を斜めに切断するように前記直線部の下部外側から内側下端に向かう内向き斜面と、直線部のフランジ部に連続して内向き斜面の縁に沿い下端に収束する斜面を有する尖鋭フランジ部とを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の植物のランナー固定ピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴなどのつる性植物の株から発生するランナーを培地に固定するために、培地に刺して使用される植物のランナー用の固定ピンに関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴ等のつる性植物は親株からランナーを発生して子株を形成し、さらに子株からランナーを発生して新たな子株を形成することを繰り返して増殖するが、ランナーが培地から離れていては子株の根付きが悪い。そこで従来、子株の根部が培地に確実に接触して発根が促されるように、ランナーを概略逆U字状の合成樹脂製の押さえ具で培地に押さえ付けることが行われている。このようなランナーの固定具として、特許文献1に記載されたものが知られている。このランナー用固定具は、ランナーを上方から押しつけることができる円弧状の基端部と、この基端部の両端からランナーを挟んで両側に位置するようにそれぞれ延び、培地にさし込まれる一対の丸棒状の脚部と、基端部から一対の脚部の突出方向と反対方向に突出する丸棒状の取っ手部とを有し、合成樹脂で一体に形成される。一対の脚部は、基端部の両端から中途部までは互いに徐々に拡開する直線状に形成され、中途部から先端までは互いがほぼ平行の直線状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−75569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のランナー用固定具は、脚部も取っ手部も、先丸で細長い丸棒状の構成である。ところで、近時、育成用の培地として、粉砕した杉の皮などの樹木の皮が用いられる。このような培地は硬い部分が多く、上記従来の固定具のような構成では、脚部を培地に容易に突き刺すことができず、また培地の表層部分に突き刺せても、深部に硬い部分があると、そこで止まってしまったり、脚部が変形して全体がねじれ、培地にしっかり固定することができなかったりする問題点がある。
したがって、本発明は、杉皮培地のような、硬度が不均一で、しかも硬い部分が多い培地に対しても、変形することなく容易に突き刺すことができ、ランナーを確実に固定することができる植物のランナー固定ピンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のランナー固定ピン1は、合成樹脂で一体成形され、上部の摘まみ部2と、下部の脚部3とを具備する。摘まみ部2は、厚さ方向の表面4とその反対側の裏面5とを有する平板状である。脚部3は、摘まみ部2の下部に連なる湾曲接続部6と、摘まみ部2の幅方向の両側に位置して湾曲接続部6の両端部から下方へ延出する一対の刺し込み脚7とを具備する。一対の刺し込み脚7は、互いに平行に直線状に下方へ延出する直線部10と、この直線部10の下端部に連続する尖鋭部11とを具備する。直線部10は、湾曲接続部6の両端部に連続して外側縁部に沿って延びるフランジ部12と、このフランジ部12から垂直に内側へ延出してフランジ部12に沿って延び、かつ上端部において湾曲接続部6の湾曲の内側に沿って湾曲して延びるウェブ部13とを具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のランナー固定ピン1は、刺し込み脚7の直線部10がフランジ部12とウェブ部13とで構成されるから、曲げ変形に対する強度が高く一対の刺し込み脚7間が拡開することがなく、真っ直ぐに培地Bに差し込むことができる。刺し込み脚7間の拡開は、湾曲接続部6の内側にまで延びるウェブ部13によっても防止される。また尖鋭部11は、比較的硬い培地Bに対しても容易に突き刺すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るランナー固定ピンの斜視図である。
【
図8】
図1におけるVIII−VIII断面図である。
【
図9】
図1のランナー固定ピンの使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
ランナー固定ピン1は、合成樹脂で一体成形され、上部の摘まみ部2と、下部の脚部3とを具備する。ランナー固定ピン1は、
図9に示すように、使用時に、脚部3の2つの刺し込み脚7間に植物のランナーRを抱持し、刺し込み脚7が培地に突き刺される。
【0009】
摘まみ部2は、厚さ方向の表面4とその反対側の裏面5とを有する平板状である。脚部3は、摘まみ部2の下部に連なる湾曲接続部6と、摘まみ部2の幅方向の両側に位置し、湾曲接続部6の両端部から下方へ延出する一対の刺し込み脚7とを具備する。
【0010】
湾曲接続部6は、摘まみ部2の表面4及び裏面5から隆起した表裏の隆起面8,9を有し、摘まみ部2側へ湾曲して延び、湾曲の外側(上部)において摘まみ部2の下部に連なる。
【0011】
刺し込み脚7は、湾曲接続部6の両端部から互いに平行に直線状に下方へ延出する直線部10と、この直線部10の下端部に連続する尖鋭部11とを具備する。
【0012】
直線部10は、フランジ部12とウェブ部13とを具備する。フランジ部12は、湾曲接続部6の両端部に連続して直線部10の外側縁部に沿って延びる。すなわち、フランジ部12は、湾曲接続部6の隆起面8,9と面一をなす表裏面14,15を有し、湾曲接続部6と同じ厚さで、湾曲接続部6の両端に連続する。ウェブ部13は、フランジ部12から垂直に内側へ延出してフランジ部12に沿って延び、かつ上端部において湾曲接続部6の湾曲の内側に沿って湾曲して延びる。
【0013】
尖鋭部11は、フランジ部12及びウェブ部13を斜めに切断するように、直線部10の下部外側から内側下端に向かう内向き斜面16を具備する。尖鋭部11は、フランジ部12に連続して、内向き斜面16の縁に沿う尖鋭フランジ部18を具備する。尖鋭フランジ部18は、下端に収束する斜面17を有する
【0014】
図6において、ランナー固定ピン1を用いて植物のランナーRを培地Bの上面に接するように固定する場合には、ランナーRを一対の刺し込み脚7の間に保持して、刺し込み脚7を培地Bに刺し込む。この際、培地Bが杉皮などの比較的固い素材で構成される場合、相応の強い力で刺し込み脚7を刺し込む必要があるが、ランナー固定ピン1は、この際にかかる曲げ応力に耐えることができる。すなわち、刺し込み脚7が、摘まみ部2より厚みの大きい湾曲接続部6に連続するフランジ部12とウェブ部13とを有するため、曲げ変形に対する強度が高い。また尖鋭部11は、内側が培地Bに対して垂直となる直線状で、外側に内向き斜面16があるため、培地Bに突き刺すときに、一対の刺し込み脚7間が拡開することがなく、真っ直ぐに培地Bに差し込むことができる。刺し込み脚7間の拡開は、湾曲接続部6の内側にまで湾曲して延びるウェブ部13によっても防止される。尖鋭部11にもウェブ部13が連続し、その外縁にはフランジ部12に連続する尖鋭フランジ部18が形成されるため、尖鋭部11の強度が高く、硬い培地へも変形することなく刺し込むことができる。培地Bの性質により、直線部10のフランジ部12とウェブ部13の構成のみで刺し込み脚7間の拡開が防止できるのであれば、尖鋭部11の内側に外向きの斜面を設けてもよい。
【符号の説明】
【0015】
1 ランナー固定ピン
2 摘まみ部
3 脚部
4 摘まみ部の表面
5 摘まみ部の裏面
6 湾曲接続部
7 刺し込み脚
8 隆起面
9 隆起面
10 直線部
11 尖鋭部
12 フランジ部
13 ウェブ部
14 表面
15 裏面
16 内向き斜面
17 斜面
18 尖鋭フランジ部