特許第5948415号(P5948415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許5948415優れた色彩及び熱安定性並びに耐酸化性を有するパイプ用のポリオレフィン組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948415
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】優れた色彩及び熱安定性並びに耐酸化性を有するパイプ用のポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20160623BHJP
   C08K 5/1545 20060101ALI20160623BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20160623BHJP
   C08K 5/5357 20060101ALI20160623BHJP
   C09K 15/06 20060101ALI20160623BHJP
   C09K 15/08 20060101ALI20160623BHJP
   C09K 15/32 20060101ALI20160623BHJP
   F16L 9/12 20060101ALI20160623BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08K5/1545
   C08K5/13
   C08K5/5357
   C09K15/06
   C09K15/08
   C09K15/32 C
   F16L9/12
   F16L11/04
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-521980(P2014-521980)
(86)(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公表番号】特表2014-527551(P2014-527551A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】EP2012003099
(87)【国際公開番号】WO2013013805
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】11006090.2
(32)【優先日】2011年7月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100187481
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 淳史
(74)【代理人】
【識別番号】100125508
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 愛
(72)【発明者】
【氏名】アンカー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ジャムヴェット,スヴェイン
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−049127(JP,A)
【文献】 特開2001−310972(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02199327(EP,A1)
【文献】 特表2005−501951(JP,A)
【文献】 特表2008−542496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 5/00−5/59
C09K 15/06−15/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)順次的な多段操作で製造されたマルチモーダルポリオレフィンベース樹脂(A)、 b)式(I):
【化1】
(式中、、R、R及びRは、独立して、Hであるか、又はヘテロ原子を含んでいても良い、非置換のもしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基であり、Rは、10〜30個の炭素原子を有する非置換のもしくは置換された脂肪族ヒドロカルビル基である)
の酸化防止剤(B)、
c)式(II):
【化2】
(式中、
・ R、R及びRは、独立して、独立してヘテロ原子を含んでいても良い、非置換の又は置換された脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基であり、
・ X、X、及びXは、独立して、H又はOHであり、ただし、X、X、及びXの少なくとも一つがOHであり、
・ 全体分子は、エステル基を含まない)
の酸化防止剤(C)、及び
d)ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチル−ジ−ホスファイトである式(III):
【化3】
の酸化防止剤(D)
を含むポリオレフィン組成物を含むパイプ又は継手。
【請求項2】
酸化防止剤(B)が、Rが、4,8,12−トリメチルトリデシル基である式(I)の化合物を含む、請求項1に記載のパイプ又は継手。
【請求項3】
前記ベース樹脂(A)が、エチレンホモポリマー又はエチレンコポリマーを含む、請求項1又は2に記載のパイプ又は継手。
【請求項4】
酸化防止剤(B)及び(C)の濃度の合計が、1000ppmと4800ppmの間である、請求項1〜3のいずれかに記載のパイプ又は継手。
【請求項5】
酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の濃度の合計が、500ppmと2500ppmの間である、請求項1〜4のいずれかに記載のパイプ又は継手。
【請求項6】
パイプ又は継手の製造のための、請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン組成物の使用。
【請求項7】
二酸化塩素を含有している水の輸送のための、請求項1〜5のいずれかに記載のパイプ又は継手の使用。
【請求項8】
パイプが二酸化塩素を含有している水と恒久的な接触状態にある順次的な多段操作で製造されたマルチモーダルポリオレフィン組成物製のパイプ又は継手の寿命を延長させるための、ポリオレフィン組成物中での三つの酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の組合せの使用であって、前記酸化防止剤が、以下の式:
・ 式(I):
【化4】
(式中、、R、R及びRは、独立して、Hであるか、又はヘテロ原子を含んでいても良い、非置換のもしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基であり、Rは、10〜30個の炭素原子を有する非置換のもしくは置換された脂肪族ヒドロカルビル基である)
の酸化防止剤(B)、
・ 式(II):
【化5】
(式中、
・ R、R及びRは、独立して、独立してヘテロ原子を含んでいても良い、非置換の又は置換された脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基であり、
・ X、X、及びXは、独立して、H又はOHであり、ただし、X、X、及びXの少なくとも一つがOHであり、
・ この全体分子は、エステル基を含まない)
の酸化防止剤(C)、及び
・ ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチル−ジ−ホスファイトである式(III):
【化6】
の酸化防止剤(D)
を有する、前記三つの酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の組合せの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色及び酸化に対する増加した耐性を有するポリオレフィン組成物並びにそのようなポリオレフィン組成物製のパイプに関する。本発明は、さらに、パイプ又は継手の製造のためのそのポリオレフィン組成物の使用、及びそのポリオレフィン組成物の酸化によって引き起こされる劣化に対する耐性を増すための、特定の種類の酸化防止剤の組合せの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの製造及び処理における最近の進歩は、現代の日常生活のほとんど全ての局面において、プラスチックの利用につながっている。しかしながら、ポリマー化合物は、酸化性物質、光及び熱の影響下でエージングする傾向がある。これは寿命の減少、例えば、強度、剛性及び柔軟性の低下、変色及び引っ掻き傷並びに光沢の低下をもたらす。
【0003】
酸化防止剤及び光安定剤がこれらの影響を防止する又は少なくとも減少させることができることは、当技術分野では良く知られている。いくつかのタイプの添加剤が、保護及び所望の最終用途特性を得るために、加工中にポリマーに添加される。添加剤は、安定剤及び変性剤に一般に分けられる。伝統的及び現在使用されている酸化防止剤のような安定剤は、ヒンダードフェノール類、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤、有機ホスファイト/ホスホナイト及びチオエーテルを含む。しかしながら、安定剤の適切な組合せは、そのポリマー物品が有するべき望ましい最終特性によって注意深く選択されなくてはならない。
【0004】
したがって、ポリオレフィン組成物に、変色及び酸化並びに熱劣化に対するより良好な保護を与え、かくしてそのような酸化防止剤を含んでいるポリオレフィン組成物製の、例えばパイプのより長い寿命を可能にするより効果的な酸化防止剤に対する必要性が依然として存在する。
【0005】
ポリオレフィン組成物中の酸化防止剤の存在に関するさらに重要な問題は、例えば、そのようなポリオレフィン組成物製のパイプ中を移送される媒体の汚染を避けるという目的である。これは、飲料水を移送するパイプの場合、特に重要である。一般的に言えば、パイプ内移送される水によって抽出される可能性のあり得る酸化防止剤の量を減らすために、できるだけ低い濃度の酸化防止剤を使用することが好ましい。さらに、これに関連して、使用される酸化防止剤は、パイプ内移送される水によって抽出される傾向が低いことが望ましい。
【0006】
飲料水中の有害化合物の許容量は、法的必要条件によって決められており、いわゆる欧州アクセプタンススキーム(European acceptance scheme)の導入と共にさらに厳しい要件が予想されている状況にある。
【0007】
ポリオレフィンベースの材料に添加される安定剤及び変性剤の移行挙動は、多数の異なる特性、例えば、ポリマーマトリックス内の分子の拡散割合、その添加剤の化学的安定性、添加剤分解生成物のタイプ等に依存する。一例を挙げれば、特定の添加剤化合物は、改良された化学的安定性を有しており、それによって移行挙動に関して有益な効果を有しているが、他方で、ポリマーマトリックス中に容易に拡散する化合物に分解する可能性があり、それによって移行挙動に関して有害な影響を有する。さらに、移行挙動における改良を達成するために、ポリマーマトリックスの安定化を犠牲にしてはならないということが考慮に入れられるべきである。したがって、低い移行傾向の添加剤組成物の提供は単純ではなく、適切な化合物の注意深い選択を必要とする。
【0008】
しかしながら、飲料水の品質をさらに改善するために、より厳しい法的必要条件が近い将来予想されることを考慮すると、熱安定性及び化学安定性が高く、ごく少量の添加剤を水中に放出するのみであるパイプを提供することはなお高く評価される。
【0009】
加えて、パイプの樹脂組成物中の着色剤と添加剤との間で起り得る反応は、変色を引き起こす可能性がある。したがって、天然又は着色したポリオレフィン組成物における変色の影響を最小限にする添加剤の組合せに対する必要性が存在する。
【0010】
飲料水中への少ない移行量を実現する添加剤の組合せには、変色作用を受ける可能性が依然としてあり、一方、耐着色性の添加剤の組合せには、パイプのポリマー表面と接触している飲料水中に抽出される可能性が依然としてあることに注目すべきである。
【0011】
(特許文献1)は、ポリオレフィン(A)、ジホスファイト構造を有する化合物(B)、c)フェノール系化合物(C)、d)任意に、UV−光安定剤(D)を含む組成物であって、移行した化合物(B)、(C)と、存在する場合、(D)、並びにそれらの分解生成物の合計量が、組成物中の一定の閾値レベルより低い上記組成物を開示している。EN−12873−1に従って室温(23℃)で脱塩素水により組成物試料を浸出し、その組成物は組成物試料に接触した水への添加剤の移行が減少することを示している。
【0012】
(特許文献2)は、二酸化塩素を含有している水により引き起こされる劣化に対する優れた耐性を有しており、同時に使用された添加剤及びその分解生成物、特にフェノールのその組成物からの低い移行を示すポリオレフィン組成物に関する。そのポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンベース樹脂(A)、クロマン−6−オール構造を有する酸化防止剤(B)、分子全体がエステル基を含まないフェノール構造を有する酸化防止剤(C)を含んでおり、そのポリオレフィン組成物中の酸化防止剤(C)の濃度は、全組成物に対して少なくとも1200ppmである。その組成物は、室温(23℃)で、ASTM F2263−03によるClOを含有する水に対する耐性及びEN−12873−1による水中への減少したフェノールの移行を示す。
【0013】
(特許文献3)は、ポリエチレン組成物における酸化及び変色の減少を対象とする。安定剤組成物が開示されており、それは、(a)少なくとも一つの立体障害性フェノール、(b)少なくとも一つのリンを含有している第二の酸化防止剤、及び(c)少なくとも一つのトコフェロール化合物を含み、成分(a)対成分(b)の重量比は2:1から1:4までであり、成分(a)対成分(c)の重量比は2:1から10:1までである。成分(a)、(b)及び(c)に該当する好ましい化合物は、(a)から(c)に属するタイプの拡幅されたリストを含む。
【0014】
それゆえ、送水パイプ用途に適する改良されたポリオレフィン組成物、特に、長時間にわたって変色の減少並びに耐酸化性及び耐熱性の増加を示す、寿命が延長したポリオレフィン組成物に対する必要性がなおも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1911798号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2199330号明細書
【特許文献3】国際公開第97/49758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、長時間にわたって変色の減少並びに耐酸化性及び耐熱性の増加を示す、寿命が延長したパイプ用のポリオレフィン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、該ポリオレフィン組成物が、いくつかのタイプの酸化防止剤の特定の組合せを含む場合に本発明の目的が達成され得ることの発見に基づいている。
【0018】
それゆえ、本発明は、ポリオレフィン組成物であって、
a)ポリオレフィンベース樹脂(A)、
b)式(I):
【化1】
【0019】
(式中、R、R、R、R及びRは、独立して、H、又はヘテロ原子を含んでいても良い、非置換のもしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基である)
の酸化防止剤(B)、
c)式(II):
【化2】
【0020】
(式中、
・ R、R及びRは、独立して、独立してヘテロ原子を含んでいても良い、非置換の又は置換された脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基であり、
・ X、X、及びXは、独立して、H又はOHであり、ただし、X、X、及びXの少なくとも一つがOHであり、
・ この全体分子は、エステル基を含まない)
の酸化防止剤(C)、及び
d)式(III):
【化3】
【0021】
(式中、R及びR’は、同一又は異なり、R及びR’は、独立して、少なくとも6個の炭素原子を含み、ヘテロ原子を含んでいても良く、R及びR’は、ジクミルフェニル基を同時には含まない)
の酸化防止剤(D)
を含む上記ポリオレフィン組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
式(I)の酸化防止剤(B)の非置換のもしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基R、R、R、R及び/又はR中に存在しても良いヘテロ原子は、酸素、硫黄、窒素、リン等であり得る。しかしながら、好ましいのは、R、R、R、R又はRが、より好ましいのは、R、R、R、R及びRが、ヘテロ原子を含まないこと、すなわち、非置換のもしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基のみであること、又は前述のようにHであることである。
【0023】
さらに、好ましくはR、R、R又はRは、より好ましくは、R、R、R及びRは、Hであるか、又は1個から5個までの炭素原子を含んでいる飽和脂肪族ヒドロカルビル基であり、さらにより好ましくは、R、R、R又はRは、より好ましくは、R、R、R及びRは、H又はメチル基である。
【0024】
さらに、好ましくは、Rは、他の残基RからRまでの内容にかかわらずメチル基である。
【0025】
特に好ましい実施形態において、R及びRは、メチル基であり、R及びRは、Hであるか、又はメチル基である。
【0026】
最も好ましくは、R、R、R及びRは、全てメチル基である。
【0027】
なおもさらに、好ましくは、Rは、5個から50個までの炭素原子を含有している非置換のもしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基であり、より好ましくは、Rは、5個から50個まで、より好ましくは、10個から30個までの炭素原子を含有している非置換のもしくは置換された脂肪族ヒドロカルビル基であり、最も好ましくは、Rは、4,8,12−トリメチル−トリデシル基である。
【0028】
さらにより好ましくは、酸化防止剤(B)は、2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール(ビタミンE)である。
【0029】
式(II)の酸化防止剤(C)において、残基R、R及びRは、独立して、非置換の又は置換された脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基であり、それらは、独立して、ヘテロ原子を含んでいても良い。これは、全体分子中の少なくとも一つのエステル基とは別に、さらにヘテロ原子又はヘテロ原子の基が存在し得ることを意味する。
【0030】
好ましくは、残基R、R及びRの少なくとも一つは、少なくとも一つのOH基を含む。さらにより好ましくは、残基R、R及びRの一つだけが少なくとも一つのOH基を含み、より好ましくは、他の二つの残基はいずれのヘテロ原子も含まない。後者の好ましい実施形態は、少なくとも一つのエステル基及び少なくとも一つのOH基が両方共、R、R及びRから選択される同じ残基中に含まれることを意味する。
【0031】
フェノール安定剤(C)が、例えばアミド基及びリンを含有している基等を含まないように、さらなるヘテロ原子がR、R及びR中に存在しないことが好ましい。
【0032】
、R及びRは、脂肪族基であることが好ましい。
【0033】
、R及びRは、独立して、2個から200個までの炭素原子を有することが好ましい。
【0034】
及びRは、独立して、2個から20個までの炭素原子を、より好ましくは、3個から10個までの炭素原子を有することが好ましい。
【0035】
さらに、R及び/又はRは、より好ましくは、R及びRは、芳香環に接続している炭素原子のところで枝分れを有する少なくとも3個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビル基であり、最も好ましくは、R及び/又はRは、より好ましくは、R及びRは、tert−ブチル基である。
【0036】
は、20個から100個までの炭素原子を有することが好ましく、より好ましくは、30個から70個までの炭素原子を有する。
【0037】
さらに、Rは、1以上のフェニル残基を有することが好ましい。
【0038】
なおもさらに、Rは、1以上のヒドロキシフェニル残基を有することが好ましい。
【0039】
最も好ましい実施形態において、Rは、ペンタエリスリチル−トリス(3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)−3−プロピオネート残基である。
【0040】
式(II)の酸化防止剤(C)において、好ましくは、XはOHであり、最も好ましくは、XはOHであり、X及びXはHである。
【0041】
酸化防止剤(C)は、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(Irganox 1010)であることが特に好ましい。
【0042】
酸化防止剤(B)は、該組成物中に、全組成に対して、好ましくは、5000ppm以下、より好ましくは、2000ppm以下、さらにより好ましくは1000ppm以下、さらにより好ましくは500ppm以下、最も好ましくは300ppm以下の量で含まれる。
【0043】
該ポリオレフィン組成物中の酸化防止剤(C)の量は、全組成に対して、好ましくは、5000ppm以下、より好ましくは、3500ppm以下、さらにより好ましくは2500ppm以下であり、特に好ましくは、1300ppm以下である。
【0044】
通常、該組成物は、酸化防止剤(B)及び(C)のどちらも、独立して、少なくとも50ppmの量で含む。
【0045】
酸化防止剤(B)及び(C)の濃度の合計は、500ppmと5000ppmの間が好ましく、より好ましくは、1000ppmと4800ppmの間である。
【0046】
化合物(D)の式(III)におけるR及びR’は、それぞれ、同じか又は異なる残基であり、好ましくは少なくとも10個のC原子を含むことが好ましい。
【0047】
好ましくは、R及びR’は、それぞれ、100個超の炭素原子は含まない。
【0048】
好ましくは、式(III)において、R及び/又はR’は、R’’−O−であり、酸素原子が式(III)のリン原子に結合している。R’’は、少なくとも6個の炭素原子を好ましくは含み、より好ましくは少なくとも10個の炭素原子を含む。好ましくは、R’’は、それぞれ100個超の炭素原子は含まない。
【0049】
好ましくは、R、R’及び/又はR’’は、少なくとも一つのアリール基を含むが、R及びR’は、ジクミルフェニル基を同時には含まない。
【0050】
本発明の特に好ましい実施形態において、化合物(D)は、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチル−ジ−ホスファイト(ADK STAB PEP−36)である。
【0051】
さらに、酸化防止剤(D)は、全組成に対して、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下、最も好ましくは1000ppm以下の量で使用される。
【0052】
通常、該組成物は、酸化防止剤(B)、(C)及び(D)のいずれも、独立して、少なくとも50ppmの量で含む。
【0053】
酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の濃度の合計は、好ましくは、500ppmと2500ppmの間、より好ましくは、1000ppmと2000ppmの間、さらにより好ましくは、1100ppmと1800ppmの間である。
【0054】
用語の「ベース樹脂」とは、本発明によるポリオレフィン組成物中のポリマー成分の全体を意味し、通常全組成の少なくとも90重量%を構成する。
【0055】
本発明による酸化防止剤の好影響は、使用されるポリオレフィンベース樹脂のタイプに依存しない。そのベース樹脂は、それゆえ、任意のポリオレフィン又はポリオレフィン組成物であり得る。
【0056】
しかしながら、該ベース樹脂(A)は、エチレンホモポリマー又はコポリマーあるいはプロピレンホモポリマー又はコポリマーを含むことが好ましい。好ましくは、そのコモノマーは、エチレン及び4個から8個までの炭素原子を有するα−オレフィンから選択される。さらにより好ましくは、エチレン又は1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンから選択されるα−オレフィンが使用される。
【0057】
ベース樹脂(A)中のコモノマーの量は、好ましくは、0.1モル%と7.0モル%の間である。
【0058】
ベース樹脂(A)は、エチレンホモポリマー又はコポリマーを含むことが特に好ましく、ベース樹脂(A)は、エチレンホモポリマー又はコポリマーからなることがより好ましい。
【0059】
本発明の一つの実施形態において、該ベース樹脂は、二つ以上のポリオレフィン、より好ましくは、ポリエチレンの、異なる重量平均分子量を有する画分を含む。そのような樹脂は、通常、マルチモーダル樹脂として示される。
【0060】
マルチモーダル樹脂を含んでいるポリオレフィン、特にポリエチレンの組成物は、それらの、例えば、機械的強度、耐腐食性及び長期間安定性のような有利な物理的及び化学的性質によって、例えばパイプの製造のために頻繁に使用される。そのような組成物は、例えば、欧州特許第0739937号明細書及び国際公開第02/102891号に記載されている。本明細書で使用される用語の分子量は、重量平均分子量Mを一般に意味する。
【0061】
前述のように、画分に対して異なる重量平均分子量をもたらす異なる重合条件下で製造された少なくとも二つのポリオレフィン画分を含んでいるポリエチレン組成物は、通常、「マルチモーダル」と言われる。この接頭辞の「マルチ」は、その組成物が構成している異なるポリマー画分の数に関連している。したがって、例えば、二つの画分のみからなる組成物は、「バイモーダル」と呼ばれる。
【0062】
そのようなマルチモーダルポリエチレンの分子量分布曲線の形、すなわち、その分子量に応じたポリマー重量分率のグラフの様子は、二つ以上の極大値を示すか、又は単一の画分についての曲線と比較して少なくとも明らかに広がっている。
【0063】
例えば、ポリマーが、連続して結合された反応器を利用し、各反応器で異なる条件を使用する順次的な多段操作で製造される場合、異なる反応器中で製造されたポリマー画分は、それぞれ、それら独自の分子量分布及び重量平均分子量を有する。そのようなポリマーの分子量分布曲線が記録されるとき、これらの画分からの個々の曲線は、重ね合わされて得られるポリマー製品全体に対する分子量分布曲線になり、通常は、二つ以上のはっきりとした極大値を有する曲線を生じる。
【0064】
該ベース樹脂が、二つのポリエチレン画分を構成する好ましい実施形態において、低い方の重量平均分子量を有する画分は、画分(A)で示され、他方は画分(B)で示される。
【0065】
画分(A)は、好ましくはエチレンホモポリマーである。
【0066】
画分(B)は、好ましくは、エチレンコポリマーであり、好ましくは、少なくとも0.1モル%の少なくとも一つのα−オレフィンコモノマーを含む。そのコモノマーの量は、好ましくは、最大で14モル%である。
【0067】
ポリオレフィン組成物が、ポリエチレン組成物である好ましい実施形態において、そのポリエチレン組成物のベース樹脂は、好ましくは、少なくとも0.1モル%、より好ましくは少なくとも0.3モル%、さらにより好ましくは、少なくとも0.7モル%の少なくとも一つのα−オレフィンコモノマーを含む。そのコモノマーの量は、好ましくは、最大で7.0モル%、より好ましくは、最大で6.0モル%、さらにより好ましくは、最大で5.0モル%である。
【0068】
α−オレフィンコモノマーとしては、好ましくは、4個から8個までの炭素原子を有するα−オレフィンが使用される。さらにより好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンから選択されるα−オレフィンが使用される。
【0069】
このポリオレフィンのベース樹脂は、好ましくは、0.01から5.0g/10分まで、より好ましくは、0.1から2.0g/10分まで、さらにより好ましくは、0.2から1.5g/10分まで、最も好ましくは0.5から1.0g/10分までのMFR(190℃、5kg)を有する。
【0070】
このベース樹脂の密度は、好ましくは、930から960kg/mまでであり、より好ましくは、935から958kg/mまでであり、最も好ましくは、936から955kg/mまでである。
【0071】
ベース樹脂及び酸化防止剤に加えて、ポリオレフィンと共に使用するための通常の添加剤、例えば、着色剤(例えばカーボンブラック)、安定済、耐酸剤及び/又は耐紫外線剤、帯電防止剤及び利用剤(utilization agents)(例えば加工助剤等)がそのポリオレフィン組成物中に存在しても良い。そのような添加剤の量は、通常は10重量%以下である。
【0072】
カーボンブラックは、紫外線遮断剤としても作用する広く使用される着色剤である。一般的に、カーボンブラックは、0.5から5重量%まで、好ましくは1.5から3.0重量%までの最終量で使用される。好ましくは、このカーボンブラックは、マスターバッチ、すなわちそれが、ポリマー、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)と、例えば実施例に示されているような特定量で前もって混ぜられたカーボンブラックマスターバッチ(CBMB)として加えられる。適切なカーボンブラックマスターバッチは、数ある中でも、Cabot Corporationにより販売されているHD4394、及びPoly Plast MullerによるPPM1805である。
【0073】
該ベース樹脂の製造のための重合触媒としては、チーグラー−ナッタ(ZN)等の遷移金属の配位触媒、メタロセン触媒、非メタロセン触媒、Cr触媒等が挙げられる。この触媒は、例えば、シリカ、Alを含有している担体及び塩化マグネシウム系担体を含めた通常の担体により担持され得る。この触媒は、好ましくは、ZN触媒であり、より好ましくは、この触媒は、非シリカ担持のZN触媒であり、最も好ましくは、MgCl系のZN触媒である。
【0074】
このチーグラー−ナッタ触媒は、さらに好ましくは4族(新しいIUPACシステムによる族番号)金属化合物であり、好ましくはチタン、塩化マグネシウム及びアルミニウムを含む。
【0075】
この触媒は、商業的に入手可能であり、又は文献に基づき、それと同じように製造することができる。本発明において使用できる好ましい触媒の調製のためには、Borealisの国際公開第2004/055068号及び国際公開第2004/055069号並びに欧州特許第0810235号明細書が参照される。これらの文書の全ての内容は、特に、そこに記載されているその触媒の一般的な及び全ての好ましい実施形態並びにその触媒の製造のための方法に関して参照により本明細書に組み込まれる。特に好ましいチーグラー−ナッタ触媒は、欧州特許第0810235号明細書に記載されている。
【0076】
該組成物は、好ましくは、反応器からベース樹脂粉末として一般的に得られるベース樹脂が酸化防止剤及び任意でその他の添加剤と共に押出し機中で押出されて本発明による組成物を生じる配合ステップを含むプロセスで製造される。
【0077】
勿論、本発明の組成物を使用するとき、通常の添加剤、充填剤、鉱物及び滑剤から選択されるさらなる配合物を、それについての加工性及び表面特性を改良するために添加することができる。
【0078】
本発明の組成物は、パイプ−黒の他に自然のまま(すなわち、無着色)の又は着色したパイプ、に好ましくは使用される。好ましくは、上記のパイプは、飲料水供給システムにおいて使用される。そのパイプは、冷水パイプであること、すなわちそれは冷水の輸送のために設計されることがさらに好ましい。
【0079】
それゆえに、本発明は、また、全ての好ましい実施形態を含めた上述の本発明のポリオレフィン組成物を含んでいるパイプも対象とする。そのようなパイプは、酸化及び変色に対して、さらに熱劣化に対して改良された耐性を示す。
【0080】
そのパイプは、該ポリオレフィン組成物の押出し成形によって好ましくは製造される。
【0081】
本発明は、それゆえ、全ての好ましい実施形態を含めた本発明によるポリオレフィン組成物のパイプ又は継手の製造のための使用も対象とする。
【0082】
本発明は、また、液体媒体、例えば、飲料水の輸送のための前記発明のパイプの使用も対象とする。
【0083】
最後に、本発明は、さらに、全ての好ましい実施形態を含めた、ポリオレフィン組成物中での上で定義されている酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の組合せの使用であって、パイプが飲料水と恒久的な接触状態にある前記ポリオレフィン組成物製のパイプ又は継手の寿命を延長させるための、酸化防止剤を少しも含まない対応するポリオレフィン組成物製のパイプと比較して、好ましくは、同じ濃度で、酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の組合せ以外の酸化防止剤又は酸化防止剤の組合せを含んでいる対応するポリオレフィン組成物製のパイプと比較して、長時間にわたって変色の減少と耐酸化性及び耐熱性の増加を示すための、ポリオレフィン組成物中での上記酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の組合せの使用を対象とする。
【0084】
「対応するポリオレフィン組成物」とは、本発明のポリオレフィン組成物と、上記酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の組合せの他は、同じベース樹脂及び同じ濃度の同じ添加剤を含むポリオレフィン組成物を意味する。
【0085】
酸化防止剤の「同じ濃度」は、酸化防止剤(B)、(C)及び(D)の濃度の合計、及び対応するポリオレフィン組成物中の酸化防止剤の濃度の合計に対応する。
【0086】
酸化分解に対する耐性は、以下に説明されている酸素誘導時間(OIT)として表わされる。本発明の組成物は、80℃での125日の貯水後に、45分以上OIT(10%以下の劣化)を好ましくは有する。
【0087】
変色に対する耐性は、以下に説明されている比色法による「デルタE」として表わされる。本発明の組成物は、80℃での125日の貯水後に、20を超えないデルタE値を好ましくは有する。
【0088】
変色に対する耐性は、以下に説明されている比色法による「デルタE」として表わされる。本発明の組成物は、80℃での3000時間の貯水後及び空気循環炉中120℃で167日後に、15を超えないデルタE値を好ましくは有する。
【0089】
耐熱性は、脆化までの時間として表わされ、下記の空気循環炉中で試験される。本発明の組成物は、80℃での3000時間の貯水後及び120℃での少なくとも125日のオーブンエージング後に脆化までの時間を好ましくは有する。
【実施例】
【0090】
(実施例)
1.定義及び測定方法
a)密度
ポリマーの密度は、EN ISO 1872−2(2007年2月)に従って準備された圧縮成形された試験片についてISO 1183−1:2004に従って測定され、kg/mで示される。
【0091】
b)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に従って測定され、g/10分で示される。このMFRは、流動性の指標であり、それゆえ、そのポリマーの加工性を表わす。このメルトフローレートがより高いほど、そのポリマーの粘度はより低い。そのMFRは、ポリエチレンに対して190℃及び5.00kgの負荷で測定される(MFR)。
【0092】
c)酸化防止剤の含有量
試料調製:ポリマーペレットを、2mmの穴の篩を有する超遠心ミル(Retsch ZM 100)中で粉砕する。そのペレットは、液体窒素により冷却する。5gの粉砕したポリマーを50mlのシクロヘキサン中、81℃の温度で2時間抽出する。必要に応じて、シクロヘキサンを次に追加して再度正確な50mlにする。その溶液を室温中で冷却し、その後そのポリマーを50mlのイソプロパノールで沈殿させる。適当量のその溶液を濾過し、HPLC装置に注入する。
【0093】
そのHPLC測定は、例えば、逆相C−18カラム及び移動相としての例えば85:15の比率のメタノールと水により実施することができる。紫外線検出器、Irganox 1010、Irgafos 168及びビタミンEに対して波長230nmを使用することができる。定量化は、標準的な方法における較正曲線を用いて行なわれる。
【0094】
以下のパラメーターは、使用される方法をさらに明確にする:
装置:Agilent 1200
カラム:Zorbax C18−SB(150×4.6mm)
カラム温度:40℃
流量:1ml/分
注入量:10μl
溶離液:メタノール/水
勾配:0分85%メタノール/15%水、6分100%メタノール、23分100%メタノール
検出:紫外線波長230nm
保持時間:
ビタミンE 11.5分
Irganox 1010 10.0分
Irgafos 168 18.8分
ホスフェート 12.6分
ホスフェートは、Irgafos 168から加水分解によって得られる。
【0095】
この結果は、表1に示されている。
【0096】
d)水中80℃でのプラークの保存
保存試験は、その後のOIT試験及びその後のデルタE測定用には3mmの厚さを有しており、その後の80℃での貯水に続く120℃でのオーブンエージング試験用には0.5mmの厚さを有する圧縮成形されたシートについて行なわれた。その圧縮シートは、EN ISO 1872−2(2007年2月)に従って調製された。これらの試料は、蒸留水中に80℃で保存された。その水は、マグネティックスターラーにより連続的に撹拌された。側色及びOIT用の試料は、表2及び表3に明らかにされている特定の時間(日)後に取り出され、その後OIT試験又はデルタEの測定にかけられた。0.5mmの厚さのプラークが、蒸留水中に80℃で3000時間保存され、その試料の取り出し後、120℃でのエージング試験が開始され、特定の時間(日)後に色が測定され、デルタEが以下に説明されているように計算された。
【0097】
e)酸素誘導時間、OIT
上記の80℃での貯水後のOIT試験は、示差走査熱量計(DSC)を用いてASTM D3895に従って実施される。直径3mm及び10mgの重量を有する試験されるその材料の円形の試料は、DSC中に室温で導入され、その試料は窒素雰囲気下で20℃/分で200℃まで加熱される。200℃に到達するやいなや、そのセルは、等温状態に保持され、ガスが窒素から酸素に換えられる。その酸素の流量は50cm/分で保持される。これらの条件の下で、該安定剤は、それが完全に消耗されるまで時間とともに消費される。この時点で、該ポリマー試料は、劣化又は酸化してさらなる熱を放出する(発熱反応)。
【0098】
酸素が導入された時からこの発熱反応が現れるまでにかかる時間(分での時間)が、OIT時間として記録され、その材料の酸化安定性の度合いである。
【0099】
計算:
データは、y軸に熱流量信号(mW)対x軸に時間で描かれる。このx軸は、分析を容易にするためにできるだけ広げられるべきである。
【0100】
該酸化誘導時間は、酸素の導入から最大スロープの時点の発熱に対して描かれた延長されたベースラインと延長された接線のインタセプトまでの分で計算された時間である。
【0101】
上記のこの接線法は、インタセプト点を決定する好ましい方法である。酸化反応が遅い場合は、しかしながら、適切な接線を選択することが困難であり得る場合、発熱のピークがリーディングエッジとなる。
【0102】
適切なベースラインの選択が接線法を用いて明らかでない場合、オフセット法を使用することができる。その結果、第二のベースラインが、第一のベースラインと平行してその第一のベースラインの上に0.05W/gの間隔で描かれる。この第二のラインの発熱信号との交点は、酸化の発現として定義される。その結果は表2に示されている。
【0103】
各条件の二つの試料が測定され、その平均値が計算されている。
【0104】
f)デルタEの測定(変色)
上記の80℃での貯水後の色の測定が、CIELAB Datacolor SF600Xにより行なわれた。光源D65 10Degが使用された。計算は、CIELAB標準による以下の式に従って行なわれた。
【数1】
【0105】
結果は表3に示されている。
【0106】
g)120℃でのオーブンエージング
0.5mmの厚さの試料が、上記の80℃での3000時間の貯水後に120℃のオーブン中での安定性試験にかけられた。この安定性試験及び劣化挙動の評価は、ISO4577 1983(空気中の熱酸化安定性の測定−オーブン法)に基づいて行なわれた。その試料は、特定の期間(日)の後にオーブンから取り出され、上記f)の下で説明したように、同じ測定装置と同じデルタE値を得るための計算を用いて測色が行なわれた。その結果は、表4に示されている。加えて、その試料の表面は、脆化までの時間を判定するために視覚的に観察された。
【0107】
2.異なる酸化防止剤を含んでいるパイプの寿命
実施例のための組成物は、バスコニーダー(Buss-Co-Kneader)100 MDK/E−11 L/D中で配合/融解均質化された。ポリマーと添加剤は、融解段階においてペレットに切断し、水により冷却するペレット化ユニットを備えた下流の排出単独押出し機を有する単軸押出し機であるバスコニーダーの最初のミキサーの入口に供給された。そのミキサーの温度プロフィールは、最初の入口から出口まで91/164/193/189/196℃であり、排出押出し機の温度は113℃であった。そのミキサーのスクリューの毎分回転数(rpm)は、195rpmであり、処理量は175kg/時間であった。
【0108】
12mm×2mm(外径×肉厚)のパイプが、20rpmのスクリュー速度で15kg/時間の生産量を与えるBattenfeld 45−25B押出し機における押出し成形によって調製された。その押出し機の溶融温度は218℃であった。
【0109】
全ての実施例においてベース樹脂として使用されるポリオレフィン(A)は、MFRが0.85g/10分、密度が940kg/mである高分子量部分のポリエチレン中にのみコモノマーが存在する、3.2重量%の全1−ブテンコモノマー含量を有する不安定化されたバイモーダル中密度ポリエチレンである。
【0110】
パイプ製造のために使用されるポリエチレン組成物を生ずるためにベース樹脂に加えられた添加剤は、表1に示されている。別段の指示がない限り、その値は重量%で示されている。表2は、耐酸化性(OIT試験後)の結果を集約しており、表3は、変色に対する耐性(貯水後のデルタE測定結果)を示しており、表4は、変色及び熱エージング耐性の結果(貯水及びオーブンエージング後のデルタE測定結果)を表わしている。
【0111】
本発明による実施例(実施例2)においては、三つの酸化防止剤、すなわち、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン(Ciba Speciality ChemicalsからのCAS No.6683−19−8、Irganox 1330)、2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’,8’,12’−トリメチル−トリデシル)クロマン−6−オール(Ciba Speciality ChemicalsからのCAS No.10191−41−0、Irganox E 201、ビタミンE)及びビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチル−ジ−ホスファイト(Adeka CorporationからのCAS No.80693−00−1、ADK STAB PEP−36)の混合物が使用される。
【0112】
比較例1においては、典型的な従来型の酸化防止剤、すなわち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Ciba Speciality ChemicalsからのCAS No.31570−04−4、Irgafos 168)及びペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(Ciba Speciality ChemicalsからのCAS No.6683−19−8、Irganox 1010)の混合物が使用される。
【0113】
それゆえ、本発明の実施例においては、比較例において使用されるIrgafos 168が、ビタミンEと特定のジホスファイトとの混合物によって置き換えられる。本発明の酸化防止剤の組合せは、80℃での125日の貯水後及びOIT試験の後にわずか−9%の劣化を有する極めて改善された耐酸化性を達成し、一方で、比較例の組合せは、125日の貯水後及びOIT試験後に−61%の劣化を示すことを見ることができる(下の表2に示されている)。この効果は、従来型の組成物との比較で減少された酸化防止剤の濃度により達成される。さらに、添加剤の輸送媒体中への抽出及び変色(80℃での貯水後のΔE)が、大幅に低減されることが見出されている(下の表3に示されている)。また、熱安定性(80℃での貯水に続く120℃でのオーブンエージング後)を改善することができ、リンを含有している酸化防止剤の量を減少させることができた(下の表4に示されている)。対照的に、比較例の組成物は、かなりの変色を受け(表3)、80℃での貯水に続く120℃でのオーブンエージング後には熱的に劣化した(表4)。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】