(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
動植物性油脂と脂肪族アルコール類を、少なくとも2nm以上のサイズの気孔が支配的である耐火性多孔性物質の存在下でエステル交換反応させて脂肪酸アルキルエステルとグリセロールを生成させる段階を含み、
前記エステル交換反応は、液体状の前記動植物性油脂と気体状の前記脂肪族アルコール類との間に起こる異種状反応で行うバイオディーゼルの製造方法。
前記エステル交換反応の温度は、熱エネルギーの供給によって前記動植物性油脂のエネルギー準位と前記脂肪族アルコール類のエネルギー準位を高めることによって、多孔性物質の存在下でエステル交換反応が行われる温度で制御され、そして
前記エステル交換反応の温度は、前記脂肪酸アルキルエステルが気体状で生成され、前記動植物性油脂の熱的クラッキング(thermal cracking)が発生しない温度で制御される、請求項1に記載のバイオディーゼルの製造方法。
前記エステル交換反応は、窒素、アルゴン、および二酸化炭素からなる群より選択される1種以上のガス雰囲気下で行う、請求項1に記載のバイオディーゼルの製造方法。
少なくとも2nm以上のサイズの気孔が支配的である耐火性多孔性物質が装入されている反応器内に動植物性油脂と脂肪族アルコール類を連続的に供給し、油脂と脂肪族アルコール類との間のエステル交換反応を誘導する第1段階と、
前記第1段階のエステル交換反応によって生成されたガス状の脂肪酸アルキルエステルおよびグリセロールを捕集する第2段階と、を含み、
前記エステル交換反応は、液体状の前記動植物性油脂と気体状の前記脂肪族アルコール類との間に起こる異種状反応で行うバイオディーゼルの製造方法。
前記第1段階で、前記動植物性油脂および脂肪族アルコール類と共にパージガスを連続的に供給し、前記パージガスは、窒素、アルゴン、および二酸化炭素からなる群より選択される1種以上である、請求項11に記載のバイオディーゼルの製造方法。
前記反応器の温度は、熱エネルギーの供給によって前記動植物性油脂のエネルギー準位と前記脂肪族アルコール類のエネルギー準位を高めることによって、多孔性物質の存在下でエステル交換反応が行われる温度で制御され、そして
前記反応器の温度は、前記脂肪酸アルキルエステルが気体状で生成され、前記動植物性油脂の熱的クラッキング(thermal cracking)が発生しない温度で制御される、請求項11に記載のバイオディーゼルの製造方法。
【背景技術】
【0002】
現在、バイオディーゼルの生産工程のうち、エステル交換反応工程のみが唯一に商用化になっている。
【0003】
このようにエステル交換反応を通じてバイオディーゼル(Fatty Acid Methyl Esters:FAMEs)に転換する方法において、使用される食用/非食用の動植物性油脂の基本成分はトリグリセリド(Triglyceride)である。
【0004】
前記エステル交換反応を通じてトリグリセリドからFAMEsおよびグリセリンが生成されるが、その反応速度が非常に遅い。したがって、商用化したバイオディーゼル製造工程では、エステル交換反応の速度を高めるために酸触媒/塩基触媒が用いられる。
【0005】
知られているところでは、エステル交換反応を通じて95%FAME転換率を得るが、酸触媒の場合には30時間以上の反応時間が、そして塩基触媒の場合には2時間以上の反応時間がかかる。当然に塩基触媒を用いた方がよいと言えるが、問題はトリグリセリドから分離された脂肪酸(Fatty Acids)、つまり、遊離脂肪酸(Free Fatty Acids:FFAs)である。この遊離脂肪酸によって酸価(1以上)が高い油脂は、塩基触媒を用いたエステル交換反応で鹸化反応を招く。熱、太陽光、酸化などの外部刺激によって油脂から遊離脂肪酸が比較的に簡単に発生し、バイオディーゼル製造工程に使用されるすべての油脂には遊離脂肪酸が存在すると見ることができる。
【0006】
現在、商用化したバイオディーゼル転換工程は、酸触媒(H
2SO
4)を用いる前処理工程および塩基触媒(KOH、NaOH)を用いる本処理工程に区分して行われる。
【0007】
前記前処理および本処理工程は、それぞれ、最小30時間以上または2時間以上の長時間の反応時間を必要とし、このような前処理および本処理工程は、回分式(Batch)反応であるため、FAMEsの大量生産に適用し難い短所がある。
【0008】
また、商用化したバイオディーゼル転換工程は、酸触媒および塩基触媒によって温水を用いた水洗(Washing)工程を必須的に含む。しかし、このような水洗工程は、多量の廃水を発生させる問題があるだけでなく、反応基質物である動植物性油脂の損失を招いて全体工程の収率が顕著に低下するという短所がある。
【0009】
また、商用化したバイオディーゼル反応工程で上記のような触媒を用いて大量のバイオディーゼルを生産する際、水洗および定置分離過程のために多くの時間がかかり、且つ多量の廃水が発生するようになる。遠心分離機を使用しない自然定置の場合には最小1時間、通常2時間以上がかかる。水洗および定置工程でバイオディーゼルが洗い流されてバイオディーゼルの生成収率が減少することがある。
【0010】
前述した触媒使用による短所を解決するために、メタノールあるいはエタノールと油脂成分を120乃至250℃および50乃至200barの高圧条件下で反応して直接脂肪酸アルキルエステルを得る超臨界エステル交換反応(Supercritical Transesterification)工程が研究されている。
【0011】
しかし、前記超臨界エステル交換反応工程では、生成された脂肪酸アルキルエステルを回収することはできるが、メタノールあるいはエタノールなどのアルコール類と油脂の比が約20:1程度で多量のアルコール類が使用され、連続工程化が困難であり、高圧条件によって生産原価が増大するおそれがある。したがって、超臨界エステル交換反応工程は、現在までは単に研究開発(R&D)水準の技術に過ぎない。特に、前記超臨界エステル交換反応工程は、過剰のエタノールを投入することから、エネルギーが効率が低いという短所があるため、ディーゼル生産のための商用化工程は現在までは遥かに遠い。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明による一実施形態は、動植物性油脂と脂肪族アルコール類を多孔性物質の存在下でエステル交換反応させて脂肪酸アルキルエステルとグリセロールを生成させる段階を含むバイオディーゼルの製造方法を提供する。
【0034】
以下、発明の具体的な実施形態により動植物性油脂からエステル交換反応を通じて脂肪酸アルキルエステルに転換するバイオディーゼルの製造方法についてより詳しく説明する。ただし、これは発明の一つの例示として提示されるものであり、これによって発明の権利範囲が限定されず、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0035】
追加的に、本明細書全体において特別な言及がない限り「含む」または「含有する」とは、如何なる構成要素(または構成成分)を特別な制限なく含むことを意味し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くと解釈されてはならない。
【0036】
本発明者らは、動植物性油脂からエステル交換反応を通じたバイオディーゼルの製造などに対する研究を繰り返す過程で、別途の触媒の導入なしに多孔性物質を使用する場合、動植物性油脂に含まれている遊離脂肪酸(FFAs:Free Fatty Acids)の存在有無や含量などに関係なく高純度の脂肪酸アルキルエステルとグリセロールを回分式方式でない連続式方式で生産できることを確認して本発明を完成した。
【0037】
本発明は、熱化学的転換方法によってエステル交換反応を誘導する。本発明は、液体でも固体でも触媒を利用する必要がなく、高圧の超臨界条件も必要としない。
【0038】
本発明者らは、反応温度がエステル交換反応の主要動力(main driving force)になり得ると判断し、エステル交換反応の活性化エネルギーは、熱エネルギーの供給によって十分に到達できると見た。本発明者らは、エステル交換反応の活性化エネルギーがメタン蒸気改質(methane steam reforming)のようなその他の触媒反応の活性化エネルギーよりも低いという事実に注目した。
【0039】
本発明者らは、異種状の熱化学的工程(heterogeneous thermo−chemical process)を通じて無触媒エステル交換反応が可能であると判断した。ここで異種状の熱化学的工程は、高い温度で液体状の動植物性油脂と気体状のアルコール類との間に起こる反応を含む。しかし、無触媒エステル交換反応が可能な温度範囲が曖昧であるため、可能な温度範囲を調査するために動植物性油脂に対して熱重量分析(thermo−gravimetric Ananlyzer、TGA)が行われており、その結果が
図6に示された。
図6と関連した熱重量分析についての詳細な説明は後述する。
【0040】
本発明者らは、熱重量分析を通じて調査された温度範囲で無触媒エステル交換反応を試みたが、有意味な脂肪族アルキルエステルの転換は起こらなかった。本発明者らは、その理由を、液体状の動植物性油脂と気体状のアルコール類との間の接触時間(contact time)が短かったためと判断した。これによって、本発明者らは、異種状の反応基質物の接触時間を増加させるために、ねじれ(tortuosity)と吸着能(adsorption capability)を有する多孔性物質を無触媒エステル交換反応に利用した。
【0041】
本発明による一実施形態は、従来の触媒を用いたエステル交換反応とは異なり、熱源を供給して反応基質物のエネルギー準位を高め、多孔性物質を用いることによって、エステル交換反応を誘導する。したがって、本発明による一実施形態は、別途の触媒を使用せず、反応基質物はアルコール類(MeOH、EtOHなど)と動植物性油脂のみを使用してもバイオディーゼルを得ることができる。
【0042】
本発明による一実施形態における動植物性油脂は、食用および非食用油をすべて含み、微細藻類オイルまでも含む。動植物性油とは、トリグリセリド(Triglyceride)を含むすべての油脂を意味し、その遊離脂肪酸(Free Fatty Acids:FFAs)までも含む。特に、前記動植物性油脂は、下記化学式1で表されるトリグリセリド(Triglyceride)を含むことができる。
【0044】
式中、
R
1、R
2、およびR
3は、互いに同一またた異なり、それぞれ、炭素数4乃至38の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数4乃至24、より好ましくは炭素数12乃至20の脂肪族炭化水素基であってもよい。前記トリグリセリド(Triglyceride)の脂肪族炭化水素基の炭素数は、通常の軽油が有する炭素数と類似した個数で最適化され得る。
【0045】
前記動植物性油脂の物理化学的性質(粘度、分子量、沸点など)は、トリグリセリドに存在している脂肪酸(Fatty Acids:FAs)の種類、つまり、前記化学式1で置換基R
1、R
2、R
3などの種類によって変わり得る。このような動植物性油脂の代表的な成分に対する脂肪酸プロファイルは、
図1に例示したとおりである。
【0046】
また、前記動植物性油脂の具体的な一例として、下記化学式2で表されるトリグリセリドを含むものが挙げられる。
【0048】
本発明による一実施形態では、前記動植物性油脂は、少量のその他不純物を含んだり水などが含まれたものを使用することもできる。特に、本発明による一実施形態では、このように反応基質物に水が含まれていてもエステル交換反応を効果的に行うことができるという長所がある。例えば、廃食用油の場合、多量の水を含有していたり非食用油にも若干の水が存在することがあるが、このような油脂は、別途の水分除去過程なしに本発明の実施形態によるエステル交換反応にそのまま使用することができる。ただし、油脂の種類によっては一層効果的な工程効率を達成するために、油脂に含まれている水の含量は適正な範囲内に最少化され得る。
【0049】
本発明の実施形態により使用可能な動植物性油脂は、例えば、パーム油、大豆油、菜種油、とうもろこし油、キャノーラ油、ひまわり油、紅花油、綿実油、こま油、えごま油、米糠油、パーム核油、つばき油、ひまし油、オリーブ油、ヤシ油、アーモンド油、ジャトロファ油、珪藻類(Diatom)、下水スラッジ(Sludge)、微細藻類(Microalgae)、牛脂(beef tallow)、豚脂(lard)、羊脂、魚油、鯨油、鮪油などがある。また、これら動植物性油脂は、1種以上を混合して使用することができ、ひいては、これらの廃油も使用することができる。
【0050】
一方、本発明による一実施形態では、前記動植物性油脂と一共に反応基質物として脂肪族アルコール類または一次アルコール類を使用することができる。例えば、炭素数1乃至12の脂肪族アルコール類を使用することができる。このような脂肪族アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールなどを使用することができ、これらアルコール類は1種以上を混合して使用することができる。
【0051】
前記アルコール類のうち、メタノールおよびエタノールなどが価格的な側面から好まれ、反応性を考慮する際にはメタノールがエタノールより適している。メタノール(MeOH)の場合、メタノールの反応性および立体的(steric)因子によりエステル交換反応の反応性が良好になり得る。また、炭素数が多いアルコールを使用して生成されるFAMEの炭素分子数を増加させることができる。特に、炭素数が異なる多様な種類のアルコールを使用することによって、生成されるFAMEに多様な物性の変化を試みることができる。
【0052】
前記動植物性油脂と前記アルコール類を反応させることにおいて、前記動植物性油脂:アルコール類は、重量比が1:0.1乃至1:1、好ましくは1:0.15乃至1:1、より好ましくは1:0.2乃至1:1の範囲で使用することができる。場合によって、前記動植物性油脂:アルコール類の重量比は、1:0.05で使用することもできる。また、前記動植物性油脂100重量部に対して前記アルコール類は、10重量部以上、好ましくは15重量部以上、より好ましくは20重量部以上を使用することができる。前記アルコール類は、化学量論的側面から前記動植物性油脂との重量比を10重量部以上が好ましく、多量で反応させることもできるが、エネルギー効率の側面からその使用量を最少化して動植物性油脂との反応を行うことができる。また、動植物性油脂100重量部を基準に前記アルコール類を100重量部を超えて使用できるが、本発明者らが今まで確認したことによれば、このようなアルコール類の超過使用は、工程原価を増加させるに過ぎず、有意味な効果改善はなかった。
【0053】
一方、従来の酸触媒またはアルカリ触媒を使用する方法や超臨界的エステル交換方法を適用する場合には、動植物性油脂100重量部に対してアルコール10重量部程度に反応させると、バイオディーゼルを生成させる転換反応が全く起こらないかまたは少なくとも2時間以上の反応時間が必要であった。しかし、本発明による一実施形態によれば、前述したような少量のアルコール類を適用時にも、5分以下、本発明者らが確認できた実験結果基準では1分未満程度の短時間にほぼ90%以上、適合な反応条件では95%以上、より適合化した反応条件では98%以上の転換率を得ることができた。特に、本発明による一実施形態は、従来のバイオディーゼル転換工程に比べて顕著に少量のアルコールが使用されることが特徴と言える。
【0054】
本発明による一実施形態は、前記動植物性油脂と脂肪族アルコール類を使用してエステル交換反応を行うことにおいて、従来の酸触媒および塩基触媒などではなく、多孔性物質の存在下で無触媒で反応を進行させることを特徴とする。本発明による一実施形態における多孔性物質は、触媒として作用せず、かかる点から固相触媒と明確に区別される。
【0055】
本発明の実施形態による多孔性物質(Porous Material)は、熱化学的転換過程、つまり、高温のエステル交換反応でも多孔性を維持する必要がある。例えば、このような多孔性物質は、本発明の一実施形態による反応温度範囲で熱分解が起こらない多孔性物質であってもよい。このような観点から、本発明では多孔性物質が耐火性(refractory)を有するとしたり、本発明による多孔性物質が耐火性多孔性物質と称されていることが理解される必要がある。
【0056】
本発明による耐火性多孔性物質は、活性化した反応基質物が受容され、その内で動植物性油脂とアルコール類との間の反応が効果的に行われ得る、かかる気孔(Pore)が存在するすべての多孔性物質になり得る。高温によって気状化したアルコール類は、運動エネルギーが増加して気孔(Pore)に吸着して存在する動植物性油脂成分と衝突し、これによってエステル交換反応(Transesterification)が急激に進行され得る。
図3の説明で反応メカニズムがより具体的に説明されるだろう。
【0057】
本発明による一実施形態の耐火性多孔性物質は、反応基質物の気状化および吸着などが可能な条件で多様な気孔サイズおよび気孔分布を有することができる。例えば、前記耐火性多孔性物質としては、メゾ気孔体(mesopore、気孔直径:1nm以上乃至50nm未満)、またはマクロ気孔体(macropore、気孔直径:50nm以上乃至500μm以下)を使用することができる。ただし、反応器のサイズの最適化および工程効率改善の側面から、前記耐火性多孔性物質は、1nm以上または1nm以上乃至500μm以下、好ましくは1.5nm以上、より好ましくは2nm以上の平均直径を有する気孔を含むものになり得る。
【0058】
本発明の実施形態による多孔性物質の気孔サイズまたは形態に対する理解のために、いくつかの例を
図4a乃至
図4cに示した。
図4aは、活性化したアルミナの気孔分布、
図4bおよび
図4cは、それぞれ、コージライト(cordierite)およびチャコール(charcoal)の気孔分布を示したものである。
図4a乃至
図4cから分かるように、支配的な(dominant)気孔サイズ、つまり、それぞれの気孔分布曲線で最も大きい密度あるいはピークを形成する気孔サイズは、ほぼ10nm以上と判断される。
【0059】
上記で本発明者らは、本発明による反応条件で油脂とアルコールとの間の接触時間を増加させるための目的で多孔性物質の使用を考慮したことを明らかにした。トリグリセリドの平均的な分子サイズがほぼ2nmであるため、気孔内にトリグリセリドを吸着または受容し、気孔内で油脂とアルコールとの間のエステル化交換反応が円滑に行われるためには、本発明の実施形態による多孔性物質は、少なくとも2nm以上のサイズの気孔が支配的である必要があると判断される。
【0060】
本発明による多孔性物質を気孔サイズを用いて定量的に明確に定義することは難しい。ただし、その間の実験結果に基づくと、本発明者らは、通常、メゾ気孔体またはマクロ気孔体と呼ばれる程度の多孔性物質は、本発明による多孔性物質として使用することができることを確認した。
図4a乃至
図4cのみを考慮すれば、支配的な(dominant)気孔サイズが10nm以上である多孔性物質が好ましいと言われ得るだけである。
【0061】
一方、通常、触媒反応などのために使用される高温(500℃超過)用担持体の場合、焼結(sintering)処理をするため、その過程に気孔が閉じられたり小さくなることがある。したがって、本発明による一実施形態に、かかる従来の担持体を適用する場合に、メゾ気孔体(mesopore)の量が相対的に減少し得るため、より多くの充填物が必要であり、反応器のサイズが過度に大きくなる短所が発生することもある。特に、従来の焼結処理された担体を用いる場合、つまり、ナノサイズのポアを有する微細気孔体の焼結処理担体はより多くの充填物を入れても本発明の効果的な反応が起こらないことがある。このような側面から、本発明による一実施形態は、メゾ気孔体(mesopore)が全体気孔の80%以上になる耐火性多孔性物質を使用することができる。
【0062】
本発明による一実施形態では、現在まで知られたすべての耐火性多孔性物質を使用することができ、ひいては気孔(Pore)を有しているレンガなども使用可能である。このような耐火性多孔性物質としては、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、ゼオライト(Zeolite)、活性炭素(Activated Carbon)、チャコール(Charcoal)、シリカなどやこれらの混合または複合物を使用することができる。
【0063】
また、本発明による一実施形態は、無触媒でも実現することができるが、場合によっては、多孔性物質に追加的に特定の金属や無機物質をドーピング(Doping)して使用することもできる。例えば、Ag、Au、Na、Mg、Ca、Pt、Rh、Zn、Co、Cu、Rhなどで1種以上の金属成分がドーピングされた耐火性多孔性物質を使用することができる。しかし、本発明による一実施形態で金属ドーピングされた多孔性物質を使用した場合、有意味なFAMEの転換率増加が現れないことを確認した。また、多孔性物質を金属成分などでドーピングする場合に、油脂のクラッキング(Cracking)によりディーゼル範囲にある炭素数12乃至20の炭化水素化合物、芳香族化合物などの量が多少増加し得る。
【0064】
一方、本発明による一実施形態によるエステル交換反応は、反応基質物である動植物性油脂の熱的クラッキング(Thermal cracking)が起こらず、単に熱エネルギーによってこれら反応基質物が活性化エネルギーに到達可能な程度にのみ最小限の熱を加えることが特徴である。このような側面から、本発明の実施形態によるエステル交換反応の反応温度、一例として反応器の温度は、350乃至500℃であることが好ましい。
図11、
図14およびこれら図面の説明から確認できるように、本発明によるエステル交換反応の反応温度は、転換率が低いかまたは反応時間が長くなり得るが、250℃程度まで拡張されることもできるだろう。しかし、前記反応温度の上限は、550℃未満に制御されることが好ましいと判断される。一例として、クッキングオイルは、550℃で熱的クラッキング(Thermal Cracking)が観察された。
【0065】
また、本発明による一実施形態のエステル交換反応は、常圧条件で使用可能であり、この条件で優れた転換率を示した。本発明者らの実験例によれば、本発明によるエステル交換反応は、圧力による制限を受けないと見られる。例えば前記反応は高圧または減圧条件でも可能であった。しかし、工程効率および原価側面では常圧条件がより有利であると言える。実施形態による反応圧力は、例えば、10mmHg乃至10atm、好ましくは0.5乃至7atm、より好ましくは1乃至5atmであってもよい。
【0066】
前記エステル交換反応は、前述したような温度および圧力条件下で、滞留時間が0.1乃至5分、または0.2乃至4分、0.3乃至3分で行うことができる。特に、本発明による一実施形態のエステル交換反応は、耐火性多孔性物質の存在下で反応基質物である動植物性油脂とアルコール類のエネルギー準位を効果的に増加させ、前記反応基質物の気状化および吸着などが効果的に行われるように0.1分以上の滞留時間で行うことができる。ただし、反応時間が長時間化し、反応性が減少することを防止することができるように滞留時間を5分以下に行うことができる。当然にも実施形態によるエステル交換反応の滞留時間は、反応器構造の設計により適切に選択され得る。このような本発明による一実施形態の反応時間は、従来の酸触媒および塩基触媒を使用する場合に、前処理および本処理工程で少なくとも2時間以上であったことに比べて顕著に減少したものであり、これによって非常に優れた工程効率を示す。また、現在研究段階で開発中であると知られた超臨界エステル交換反応の5分乃至20分程度の反応時間に比べても非常に優れた工程効率を示すものである。
【0067】
本発明による一実施形態のエステル交換反応は、多孔性物質(Porous material)の存在下で液相または気相の異種状(Heterogeneous)反応で行うことができる。本発明の実施形態による反応条件で油脂は、全面的にそうだとは限らないが、液相であろうと判断される。沸点が低いアルコール類は該当反応条件で気相であろうと判断されるので、実施形態によるエステル交換反応は、気相のアルコール類が液相の油脂と反応して気相のFAMEsを生成させる方式で進行されると見られる。油脂の主成分であるトリグリセリド(Triglycerides)が液相または気相で存在するようになって簡単に多孔性物質(Porous material)に吸着が起こり、熱源によってトリグリセリドのエネルギー準位が上がり得る。熱源によってエステル交換反応の活性化エネルギーが十分に到達することができる。
【0068】
一方、本発明による一実施形態の無触媒連続式反応は、パージガス(Purge gas)がなくてもFAMEsを生産することができるが、反応の滞留時間(Retention time)の調節および円滑な連続工程進行の誘導のためにパージガス(Purge gas)を使用することができる。前記パージガス(Purge gas)としては、通常、非活性気体を使用し、例えば、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)などを1種以上使用することができる。このパージガスは、油脂などの反応基質物と共に反応器内部に供給され得る。
【0069】
本発明の実施形態によれば、前記パージガスとしては二酸化炭素(CO
2)または少なくともこれを含むガスが好まれる。本発明の実施形態によるエステル交換反応の結果として多孔性物質(Porous material)の間にコーキング(coking)現象が発生する。このコーキング現象は、本発明によるエステル交換連続工程を妨害するが、パージガスとして使用された二酸化炭素がかかるコーキング現象を顕著に低減させる。一方、前記二酸化炭素パージガスを使用する場合、本発明の実施形態による無触媒エステル交換反応で脂肪酸アルキルエステルの転換率が多少向上し得る。
図11で確認できるように、二酸化炭素パージガスを使用する場合、FAMEの転換率が他のパージガスを使用する場合よりも約3〜4%増加し得る。
【0070】
本発明による一実施形態によるバイオディーゼルの製造方法において、前記エステル交換反応は、連続式工程で行われ得る。本発明による連続式バイオディーゼルの製造工程は、耐火性多孔性物質が存在する反応器内に動植物性油脂と脂肪族アルコール類を連続的に供給しながらエステル交換反応を連続的に行う形態で構成され得る。もちろん、耐火性多孔性物質は、反応器に固定的に予め装入されている場合が大部分であるが、場合によっては反応器に沿って連続的に供給されることもできる。
【0071】
一方、本発明の実施形態によれば、気孔を有するバイオマス(biomass)自体を多孔性物質として使用することができる。このような例として、本発明者らは、韓国特許出願第2011−0101961号を出願しており、この出願内容は本発明に参照され含まれ得る。
一方、本発明による一実施形態は、上述したように、無触媒で多孔性物質の存在下に動植物性油脂と脂肪族アルコール類のみを反応させてバイオディーゼルを製造するため、得られたバイオディーゼルに不純物を最少化し、純度が高いという特徴を有する。この時、転換率も従来の工程よりも顕著に向上した程度に得ることができる。
【0072】
このような本発明による一実施形態のエステル交換反応を通じて生成される脂肪酸アルキルエステルは、炭素数10乃至24、好ましくは炭素数12乃至22、より好ましくは炭素数14乃至20である脂肪族部分を含むことができる。
【0073】
一方、本発明による一実施形態によるエステル交換反応は、下記反応式1に示したようになされる。
【0075】
式中、R
1、R
2、R
3、R
1’、R
2’、およびR
3’は、互いに同一またた異なり、それぞれ、炭素数4乃至38の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数4乃至24、より好ましくは炭素数12乃至20の脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0076】
以下、添付図面を参考として、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態によるバイオディーゼル製造工程について具体的に説明する。
【0077】
まず、
図2に図式化されているように、本発明の実施形態によるバイオディーゼル製造工程には多孔性物質(Porous materials)が使用されることを特徴とする。
【0078】
図3に図式化されているように、気孔(Pore)やバルク相(Bulk Phase)に存在する気状化したMeOHは高温によって運動エネルギーが増加する。活動性が強くなったMeOHは、気孔(Pore)に吸着または受容されているトリグリセリド(Triglyceride)と衝突してエステル交換反応(Transesterification)を誘発する。反応生産物であるFAMEsとグリセリンは、反応温度によって気相で反応器外部に出るようになり、この気相の反応生成物を凝縮(Condensation)させることだけで高純度のFAMEsおよびグリセリンを得ることができる。知られているように、グリセリンはFAMEsから容易に分離され得る。
【0079】
本発明の一実施形態により製造されたFAMEとグリセリンの混合物の例(左側図)、そしてグリセリンが除去されたFAMEの例(右側図)が
図5に比較図示されている。
図5に示されるバイオディーゼルは、活性化したアルミナ(Activated Alumina、Al
2O
3)を使用して得られたものであり、400℃でFAME転換率99%を見せることを確認することができた。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、連続工程の反応器内に供給された反応基質物の滞留時間(Retention time)は1分を越えない。実施形態によれば、エステル交換反応は、1分以内に完了して気相の生成物を発生させ、この生成物を単純に捕集および精製してFAMEを得ることができる。このように本発明の実施形態によるエステル交換反応の速い反応速度のため、バイオディーゼル製造工程を連続式に設計することが可能である。滞留時間はパージガス(Purge Gas)およびMeOHの量により決定されるところ、パージガスで反応速度をコントロールすることができる。
【0081】
また、本発明による一実施形態の無触媒連続式エステル交換反応の最適化は、トリグリセリド(Triglycerides)の沸点(Boiling Point)およびFAMEsの沸点によって大きく左右される。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、バイオディーゼル製造工程の反応温度は、油脂、つまり、トリグリセリドは反応に必要な活性化エネルギー以上に熱エネルギーを供給されるが、ただし、熱的クラッキングが発生せず、該当反応温度でFAMEsは気相であるように設計される。この時、油脂は液相であり、沸点が低いアルコールは気相であり得る。
【0083】
本発明の一実施形態によるバイオディーゼル製造工程の適切な反応温度を求めるために、一例として
図6のような熱重量分析が行われた。
図6に示される熱重量分析(Thermo−gram)は、NETZSCH社の熱重量分析器(Thermo−gravimetric Ananlyzer、TGA)を用いて得られた。実験条件は、昇温温度(Heating rate:100℃/min)下、20℃から1,000℃までAr雰囲気下で実施された。
図6は、温度による質量変化(Mass change)および前記質量変化を1次微分した示差熱重量分析(Differential Thermo−Gram、DTG)で構成されている。
【0084】
図6に示されるように、大豆油のトリグリセリド(Triglycerides)の沸点は、約405.2℃であり、DTGで見せられるように、452℃で質量変化(Mass Change)は最大値に達するようになる。したがって、
図7の結果を考慮すれば、大豆油トリグリセリドを使用したバイオディーゼル転換工程の反応温度は、350〜400℃または350〜450℃程度が好ましいと言える。反応温度を過度に増加させることは不必要にトリグリセリド(Triglyceride)を増発させることであり、その蒸発潜熱によるエネルギー損失を誘発することであり得る。上述したように反応温度は、上限はトリグリセリドの熱的クラッキング(thermal cracking)が発生しないように550℃未満、好ましくは500℃以下に制御されることがよい。
【0085】
また、本発明による一実施形態を通じて得られたFAMEsの凝縮(Condensation)あるいはトリグリセリドの蒸発潜熱によるエネルギー損失を減少させるために反応温度350℃以上で反応することが好ましい。これは
図8に示したような代表的なFAMEsの沸点によって簡単に理解することができる。
図8に示したような大部分の動植物性油脂の脂肪酸の炭素範囲は、炭素数14乃至20(C
14−20)である。本発明による一実施形態の反応で生成されたC
14−20のFAMEsを凝縮過程なしにガス状で得るためには、350乃至500℃の温度、より好ましくは350乃至450℃がよい。MeOHの沸点が65℃であることを考慮すれば、ガス状のFAMEsが簡単に分離され、精製過程でエネルギーを節約できるという点で反応温度350乃至500℃、より好ましくは350乃至450℃が適切であると言える。また、
図8に整理されているように、アラキジン酸メチルエステル(Arachidic Acid Methyl Ester)の場合、沸点は約215乃至216℃であるが、常圧でない10mmHgの値であるため、バイオディーゼル転換工程で350℃以上の温度が必要であると言える。しかし、反応温度が過度に増加する場合に、トリグリセリド(Triglyceride)の蒸発潜熱によるエネルギー損失が最大に発生するため、推奨事項にならない。
【0086】
このようなエステル交換反応の温度変化によるFAMEsの転換率の一例を
図7に示した。反応は大気圧下で行われ、多孔性物質(Porous material)としては活性化したアルミナ(Activated Al
2O
3)を使用し、MeOH:Oil重量比率は約0.2:1であった。
図7に示されるように、350℃以上の反応温度で98%乃至99%の高いFAME転換率を得ることができた。また、
図7に示されるように、本発明の実施形態によるエステル交換反応は350℃以下でも可能である。ただし、この場合、FAME転換率は90%以下で多少落ち、反応時間が多少長くなり得る。
【0087】
一方、本発明による一実施形態の無触媒連続式エステル交換反応工程の一実施形態において、反応基質物はトリグリセリド(Triglyceride)とMeOHである。反応基質物であるMeOH:Triglycerideの好ましい重量比率は、理論的には0.1:1であり、これは化学量論的(Stoichiometry)側面から算測されたものであって
図9でも確認可能である。
【0088】
本発明による一実施形態の工程の動植物性油脂、つまり、トリグリセリド(Triglyceride)とMeOHの最適化のために多様なMeOH:Triglycerideの重量比率をもって実験した。
図9の実験で、バイオディーゼルのためのエステル交換反応は、大気圧および400℃で実施し、多孔性物質(Porous Material)としてチャコール(charcoal)を使用した。
図9に示されているように、好ましくは20%以上のMeOHの比率でFAME転換率が非常に優れていることが分かる。本発明の実施形態による他の多孔性物質、例えば活性化したアルミナ(Activated Al
2O
3)を使用した際にも
図9とほとんど類似した結果となった。
【0089】
図11は、二酸化炭素をパージガスとして使用した場合にFAME転換率が上昇することを示すグラフである。
図11の実験は、大気圧下で行われ、多孔性物質として活性化したアルミナを使用し、アルコールとしてメタノールを使用した。
【0090】
また、本発明による一実施形態において、脂肪酸100%で反応した一例としてパージガス(Purge gas)に対するFAME転換率(Conversion)を示すグラフを
図12に示した。
図12の実験において、大気圧下で多孔性物質として活性化したアルミナを使用し、アルコールとしてメタノールを使用し、動植物性油脂としてオレイン酸(oleic acid)を使用した。この実験で酸価がほぼ200である100%脂肪酸を使用したにも拘らず、
図12で示されるように、約400℃以上の温度で約90%以上のFAME転換率が得られることが明らかになった。
【0091】
本発明による一実施形態において、多孔性物質(Porous material)のうち、活性化したアルミナ(Activated Al
2O
3)の代わりにチャコール(Charcoal)を使用した反応結果を
図13に示した。この時、MeOH:Oil重量比は0.2:1であり、実験温度は350℃、400℃、および450℃であった。前記チャコール(Charcoal)の多孔性構造は、
図10に示すSEMイメージで確認できる。一方、前記チャコール(Charcoal)を利用して高い転換率を達成できることは
図9でも確認できる。実施形態によれば、チャコール(Charcoal)以外にもシリカおよびゼオライトのような多孔性物質もFAME転換に使用することができる。
【0092】
上述したような本発明による一実施形態のバイオディーゼルの製造方法は、従来のバイオディーゼル生産のためのエステル交換反応工程の短所を克服し、現在活発に研究開発(R&D)で進行中であるエステル交換反応の短所をすべて克服したと見られる。
【0093】
本発明の実施形態によれば、連続工程を通じてバイオディーゼルを得ることができる。
【0094】
動植物性油に存在する遊離脂肪酸(FFAs)により工程プロセスおよび工程オペレーション(Operation)が変わった従来の工程とは異なり、本発明による一実施形態は、遊離脂肪酸の量とは関係なく効果的にバイオディーゼル転換工程が行われ得る。
【0095】
また、本発明の実施形態によれば、エステル交換反応工程で使用された触媒を使用しないため、前処理および本処理を統合した形態でバイオディーゼル転換工程を構築することができる。また、本発明による一実施形態は、統合型前処理/本処理工程によって廃水発生およびバイオディーゼル(FAMEs)の損失を基本的に封鎖する効果もある。
【0096】
また、現在の研究開発(R&D)段階にある高温/高圧の超臨界的(Supercritical)反応によるエステル交換反応工程とは異なり、本発明による一実施形態は、常圧で反応することも主要な特徴と言える。
【0097】
一方、本発明による一実施形態は、工程で二酸化炭素を使用するという点で従来の商用化したエステル交換反応工程および研究開発(R&D)段階のエステル交換反応工程と明確な対比を示す。これは環境に優しい工程であるため、本発明による一実施形態の効果と言える。
【0098】
また、本発明による一実施形態は、バイオディーゼルは従来の商用工程より速く生産できるため、エネルギー節減の側面で明確な効果を奏する。特に、反応物質であるメタノールと動植物性油のみをもってバイオディーゼル(FAMEs)を製造するため、蒸留精製費用において顕著な費用節減を期待できる。
【0099】
一方、本発明による一実施形態により耐火性多孔性物質の存在下で行われるエステル交換反応から生成される脂肪酸アルキルエステルの転換率は、90%以上、高い場合は95%以上、より高い場合は98%以上得られる。
【0100】
本発明において、上述した内容以外の事項は、必要に応じて加減可能であるため、本発明では特に限定しない。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の理解のために好適な実施例を提示するが、下記実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲は下記実施例に限定されない。
【0102】
実施例1〜16
下記表1に示したような条件で、動植物性油脂と炭素数1乃至12の脂肪族アルコール類とを耐火性多孔性物質の存在下でエステル交換反応を連続式工程で行い、生成された脂肪酸アルキルエステルとグリセロールを回収してバイオディーゼルを製造した。特に、動植物性油脂として実施例1乃至14は大豆油(soy bean oil)、実施例15はジャトロファ油(jatropha oil)、実施例16は牛脂および豚脂(extracted lipid from beef tallow and lard)を使用した。
この時、生成された脂肪酸メチルエステル(FAME)の転換率は、次のような方法で測定した。
【0103】
<FAME転換率>
FAME転換率は、GC/MSを通じた分析値を利用する。バイオディーゼルの分析法でASTM D6751あるいはEN14214標準規格を定めている。特に、EN14103(EsterとLinoleic Acid Methyl ester含量分析)を利用してFAMEの収率を求めた。それ以外にもEN14106/ASTM D6584はグリセリンとMono−、Di−、Triglycerideの含量を求める際に使用した。
【0104】
【表1】
【0105】
比較例1
従来の方式のとおりH
2SO
4を酸触媒として使用し反応温度は65℃で30時間エステル交換反応を行ってバイオディーゼルを製造した。この時、生成された脂肪酸メチルエステル(FAME)の転換率は94%であった。
【0106】
比較例2
従来の方式のとおりNaOHを塩基触媒として使用し反応温度は65℃で2時間エステル交換反応を行ってバイオディーゼルを製造した。この時、生成された脂肪酸メチルエステル(FAME)の転換率は94%であった。
【0107】
比較例3
従来の酸触媒および塩基触媒を使用せず、多孔性充填物の代わりにバブリング(Bubbling)を用いて無触媒で反応時間300分以上に熱化学的転換方法を適用したことを除いては、実施例1と同様な方法でエステル交換反応を行ってバイオディーゼルを製造した。この時、生成された脂肪酸メチルエステル(FAME)の転換率は91%であった。これと関連して、その結果の一例を
図15に示した。
図15でMEはメタノールであり、TGはトリグリセリドであり、DGはジグリセリドであり、MGはモノグリセリドである。
【0108】
前記表1に示したように、本発明により酸触媒および塩基触媒などを使用せず、耐火性多孔性物質の存在下でエステル交換反応を行った実施例1〜16の場合には、反応時間が共に1分内外で行われ、転換率も共に95%以上、より優秀な場合には99%以上で、短時間内に高い転換率を達成できることが分かる。反面、従来の方式のとおり、酸触媒および塩基触媒を使用した比較例1〜2の場合には、転換率が共に94%に過ぎず、多孔性物質を充填せずに熱化学的転換方法を行った比較例3の場合には、300分以上の長時間反応を行った後にも転換率がたかが91%に過ぎず、良くないことが分かった。
【0109】
一方、実施例16により牛脂と豚脂を使用してエステル交換反応を行って得られた生成物に対して質量分析(GC−MS:Gas Chromatography Mass Spectroscopy)を行って得られたクロマトグラムを
図16に示した。
図16で確認できるように、本発明により別途の酸触媒および塩基触媒などを使用せず、牛脂と豚脂を使用してエステル交換反応を行った実施例16の場合に、初期成分に該当する脂肪酸が検出されず、バイオディーゼル(Fatty Acid Methyl Esters:FAMEs)への転換が効果的に行われたことを確認できる。