(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の基礎になった知見)
本発明の実施の形態の説明に先立ち、本発明の一態様を得るに至った経緯について、
図14〜16を用いて説明する。
図14は、従来の薄膜半導体基板の一画素のレイアウトを示す概略図である。
図15は、
図14のA−A’線における断面図である。
図16は、
図15に示す薄膜半導体基板の上に有機EL素子を形成したときの発光パネルの断面図である。
【0016】
図14は、トップゲート構造のTFTを用いて有機EL素子を駆動するときの画素PXの一例を示している。
図14に示すように、従来の薄膜半導体アレイ基板101は、ゲート配線(走査線)131、ソース配線(データ線)132、電源配線133、有機EL素子(不図示)の電極と接続されるコンタクトパッド150、第1のTFT110及び第2のTFT120より構成されている。
【0017】
スイッチングトランジスタである第1のTFT110は、第1のゲート電極110Gがゲート配線131に接続され、第1のソース電極110Sがソース配線132に接続され、第1のドレイン電極110Dがコンタクト部160を介して第2のTFT120の第2のゲート電極120Gに接続されている。
【0018】
また、駆動トランジスタである第2のTFT120は、第2のゲート電極120Gが第1のTFT110の第1のドレイン電極110Dに接続され、第2のソース電極120Sがコンタクトパッド150に接続され、第2のドレイン電極120Dが電源配線133に接続されている。
【0019】
図15に示すように、第1のTFT110は、トップゲート構造のTFTであり、基板161の上に形成された第1の半導体層(チャネル層)111と、第1の半導体層111の上に形成された第1のゲート絶縁膜112と、第1のゲート絶縁膜112の上に形成された第1のゲート電極110Gとの積層構造である。
【0020】
同様に、第2のTFT120も、トップゲート構造のTFTであり、基板161の上に形成された第2の半導体層(チャネル層)121と、第2の半導体層121の上に形成された第2のゲート絶縁膜122と、第2のゲート絶縁膜122の上に形成された第2のゲート電極120Gとの積層構造である。
【0021】
また、第1のゲート電極110G及び第2のゲート電極120Gを覆うようにパッシベーション層164が形成されている。第1のTFT110において、第1のソース電極110S及び第1のドレイン電極110Dは、パッシベーション層164に形成されたコンタクトホールを介して第1の半導体層111に接続されている。同様に、第2のTFT120において、第2のソース電極120S及び第2のドレイン電極120Dは、パッシベーション層164に形成されたコンタクトホールを介して第2の半導体層121に接続されている。
【0022】
ゲート配線131及びソース配線132は、配線負荷低減の観点から低抵抗であることが望ましい。また、電源配線133は、均一性向上及び消費電力低減の観点から低抵抗であることが望ましい。いずれにしても、ゲート配線131、ソース配線132及び電源配線133は、低抵抗であること望ましく、一般的には厚膜化して300nm以上の膜厚で形成される。
【0023】
しかし、ゲート配線131、ソース配線132及び電源配線133は、TFTの電極と同一工程で形成することが多いので、ゲート配線131、ソース配線132及び電源配線133を厚膜化すると、TFTの電極も厚膜化されることになる。
【0024】
例えば、
図14及び
図15に示す薄膜半導体アレイ基板101では、ソース配線132及び電源配線133と、第1のTFT110における第1のソース電極110S及び第1のドレイン電極110Dと、第2のTFT120における第2のソース電極120S及び第2のドレイン電極120Dとが同一工程で形成される。このため、ソース配線132及び電源配線133を厚膜化すると、第1のソース電極110S及び第1のドレイン電極110Dが厚膜化するとともに、第2のソース電極120S及び第2のドレイン電極120Dも厚膜化する。
【0025】
この結果、第1のTFT110及び第2のTFT120の上方にEL層などの層(上部層)を形成したときに、当該上部層の平坦性を確保することが難しくなる。
【0026】
例えば、
図16に示すように、
図15に示す薄膜半導体アレイ基板101の上に、上部層として、平坦化層170、陽極181、発光層を含む有機EL層182、陰極183及び隔壁190を形成すると、陽極181の下に、ソース配線132及び電源配線133と同一工程で形成された厚膜の第1のドレイン電極110D及び第2のソース電極120Sが存在するので、陽極181を平坦に形成することが困難になる。
【0027】
このように、陽極181の平坦性が不十分になった場合、陽極181上の有機EL層182も均一に形成することが困難になる。この結果、有機EL層182の一部に電界が集中して発光層にかかる電圧が不均一となり、有機EL素子の寿命が短くなってしまうという課題が発生する。
【0028】
そこで、第1のドレイン電極110D及び第2のソース電極120Sなど、第1のTFT110及び第2のTFT120の電極を薄く形成することも考えられるが、そのようにすると、これらの電極と同一工程で形成されるソース配線132及び電源配線133の膜厚も薄くなってしまい、ソース配線132及び電源配線133が高抵抗化する。
【0029】
なお、ゲート配線131及びソース配線132と第1のTFT110及び第2のTFT120の電極とを同一工程で形成した後に、第1のTFT110及び第2のTFT120の電極のみを薄膜化することも考えられる。しかしながら、この方法では、別途薄膜化工程を追加する必要がある。
【0030】
このように、ゲート配線131、ソース配線132及び電源配線133の各配線の低抵抗化と、TFTの上部層の平坦化との両立を図ることは難しい。
【0031】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、TFTに接続される配線を低抵抗化しつつ、TFT上方の上部層の平坦性を確保しやすくできる、薄膜半導体基板、表示パネル及び薄膜半導体基板の製造方法を提供することを目的とする。
【0032】
上記目的を達成するために、本発明に係る薄膜半導体基板の一態様は、基板と、前記基板の上方に形成された第1の半導体素子及び第2の半導体素子と、前記基板の上方に形成されたデータ線とを備え、前記第1の半導体素子は、第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上方に位置する第1のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜の上方に位置する第1のゲート電極と、前記第1の半導体層の一部に接続された第1のソース電極及び第1のドレイン電極と、前記第1のゲート電極の上方に位置する第1の保護層とを含み、前記第2の半導体素子は、第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上方に位置する第2のゲート絶縁膜と、前記第2のゲート絶縁膜の上方に位置する第2のゲート電極と、前記第2の半導体層の一部に接続された第2のソース電極及び第2のドレイン電極と、前記第2のゲート電極の上方に位置する第2の保護層とを含み、前記第1のソース電極及び前記第1のドレイン電極のうちの一方の電極は、前記第2のゲート電極が延伸されて構成されており、前記データ線は、前記第1のソース電極及び前記第1のドレイン電極の他方の電極と接続されており、前記第2の保護層は、前記第2のゲート電極の上方から前記第1のソース電極及び前記第1のドレイン電極のうちの前記一方の電極の上方まで連続して形成されており、前記第2のゲート電極の厚みは、前記データ線の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、第2のゲート電極の厚みと、第2のゲート電極から延伸する第1のソース電極及び第1のドレイン電極のうちの一方の電極の厚みとが、データ線の厚みよりも薄くなるように構成されている。これにより、データ線を厚膜化して低抵抗化したとしても、第2の半導体素子の第2のゲート電極と第1の半導体素子の前記一方の電極とを薄くしているので、第1の半導体素子及び第2の半導体素子の上方に形成する上部層の平坦性を確保しやすくできる。
【0034】
また、本発明に係る薄膜半導体基板の一態様において、さらに、前記第1のゲート電極に接続された第1のゲート配線を備え、前記第1のゲート電極の厚みは、前記第1のゲート配線の厚みと略同一であり、前記データ線の厚みよりも薄くてもよい。
【0035】
本態様によれば、第1のゲート電極の厚みがデータ線の厚みよりも薄くなるように構成されている。これにより、第1の半導体素子及び第2の半導体素子の上方に形成する上部層の平坦性を一層確保しやすくできる。
【0036】
また、本発明に係る薄膜半導体基板の一態様において、さらに、前記第1のゲート配線の上に積層された第2のゲート配線を備える、としてもよい。
【0037】
本態様によれば、第1のゲート電極を薄くして形成すると、第1のゲート電極と同一膜厚である第1のゲート配線を第1のゲート電極と同一工程で形成すると、第1のゲート配線も薄くなって高抵抗化するが、第1のゲート配線の上に第2のゲート配線が積層されているので、ゲート配線の配線抵抗を実質的に低くすることができる。したがって第1の半導体素子及び第2の半導体素子の上方に形成する上部層の平坦化とデータ線の低抵抗化とに加えて、ゲート配線も低抵抗化することができる。
【0038】
また、本発明に係る薄膜半導体基板の一態様において、さらに、前記第2のソース電極及び前記第2のドレイン電極のうちの一方の電極に接続された電源配線を備え、前記電源配線の厚みは、前記データ線の厚みと略同一であってもよい。
【0039】
本態様によれば、電源配線の厚みがデータ線の厚みと略同一であるので、電源配線とデータ線とを同一工程で形成することができる。これにより、電源配線も厚く形成できるので、電源配線も低抵抗化することができる。
【0040】
また、本発明に係る発光パネルの一態様は、上記いずれか記載の薄膜半導体基板と、前記薄膜半導体基板の上方に形成された陽極と、前記陽極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された陰極と、前記発光層を側方から挟む隔壁とを備え、前記隔壁は、前記データ線の上方に配置されていることを特徴とする。
【0041】
本態様によれば、第2のゲート電極の厚みと、第2のゲート電極から延伸する第1のソース電極及び第1のドレイン電極のうちの一方の電極の厚みとが、データ線の厚みよりも薄くなるように構成された薄膜半導体基板の上に、陽極及び発光層が形成されている。これにより、陽極及び発光層の平坦性を確保することができるので、発光層にかかる電圧を均一にするこができる。したがって、発光パネルの寿命を向上させることができる。
【0042】
また、本発明に係る発光パネルの一態様において、前記隔壁の側壁は、2段形状である、としてもよい。
【0043】
本態様によれば、有機EL層の材料を隔壁内に印刷して形成するときに、隔壁の2段形状部分で有機EL層の材料の高さ位置を規制することができるので、基板面内において有機EL層の材料を印刷するときのピンニング位置を揃えることができる。したがって、基板面内において有機EL層の膜厚を均一にすることができる。
【0044】
また、本発明に係る発光パネルの一態様において、当該発光パネルを平面視したときに、前記隔壁に挟まれた前記発光層に対応する領域を発光領域とすると、前記第1の半導体素子における第1のゲート電極及び一方の電極と、前記第2の半導体素子における第2のゲート電極とは、前記発光領域内に形成されており、前記データ線は、前記発光領域外に形成されている、としてもよい。
【0045】
本態様によれば、第2のゲート電極と、第2のゲート電極から延伸する第1のソース電極及び第1のドレイン電極のうちの一方の電極とが、発光領域内に形成されており、一方、データ線は発光領域外に形成されている。これにより、発光領域内では第1の半導体素子及び第2の半導体素子の電極を薄膜化し、発光領域外ではデータ線を厚膜化することができる。したがって、発光状態に影響を与えることなく、データ線の低抵抗化と上部層の平坦化との両立を図ることができる。
【0046】
また、本発明に係る薄膜半導基板の製造方法の一態様は、基板上の上方に第1の半導体層及び第2の半導体層を形成する工程と、前記第1の半導体層及び第2の半導体層の上にゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層に開口を形成して、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層の一部を露出させる工程と、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層における前記ゲート絶縁層から露出する部分を覆うように、前記ゲート絶縁層上に第1金属層を形成する工程と、前記第1金属層をパターニングすることによって、第1のゲート電極、第2のゲート電極、第1のドレイン電極及び第1のソース電極のうちの一方の電極、並びに、第2のドレイン電極及び第2のソース電極のうちの一方の電極を形成する工程と、前記ゲート絶縁層をパターニングされた前記第1金属層をマスクパターンとしてパターニングすることによって、前記第1の半導体層と前記第1のゲート電極との間に第1のゲート絶縁膜を形成するとともに、前記第2の半導体層と前記第2のゲート電極との間に第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、前記第1のゲート電極、前記第1のドレイン電極、前記第2のソース電極及び前記第2のゲート電極の上にパッシベーション層を形成する工程と、前記パッシベーション層に開口を形成して、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層の一部を露出させる工程と、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層における前記パッシベーション層から露出する部分を覆うように、前記パッシベーション層上に、前記第1金属層よりも厚い膜厚の第2金属層を形成する工程と、前記第2金属層をパターニングすることによって、前記第1のドレイン電極及び前記第1のソース電極のうちの他方の電極、前記第2のドレイン電極及び前記第2のソース電極のうちの他方の電極、並びに、前記第1のドレイン電極及び前記第1のソース電極のうちの前記他方の電極に接続されるデータ線を形成する工程とを含み、前記第1金属層をパターニングする工程において、前記第1のソース電極及び前記第1のドレイン電極のうちの前記一方の電極と前記第2のゲート電極とが繋がるように第1金属層をパターニングすることを特徴とする。
【0047】
本態様によれば、同一の第1金属層をパターニングして形成される第2のゲート電極と第1のソース電極及び第1のドレイン電極のうちの一方の電極との厚みが、第2金属層をパターニングして形成されるデータ線の厚みよりも薄くなるように構成されている。これにより、データ線を厚膜化して低抵抗化したとしても、第2のゲート電極と前記一方の電極とを薄くすることができるので、第1の半導体素子及び第2の半導体素子の上方に形成する上部層の平坦性を確保しやすくできる。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程(ステップ)、工程の順序などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0049】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図同士の縮尺等は、必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0050】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る薄膜半導体アレイ基板の概略構成を示す平面図である。
【0051】
本実施の形態に係る薄膜半導体アレイ基板(TFTアレイ基板)は、薄膜半導体基板の一例であって、例えば有機ELディスプレイを作製するためのアクティブマトリクス基板である。
【0052】
図1に示すように、薄膜半導体アレイ基板1は、複数の画素PXがマトリクス状に配列されることで構成される表示部を備える。
【0053】
なお、
図1には、2つの薄膜半導体アレイ基板1を得るためのマザー基板を示しており、このマザー基板を切断することによって、2つの薄膜半導体アレイ基板1を得ることができる。また、
図1において、画素PXは表示部の4隅の一部にしか図示されておらず、実際には、画素PXは表示部内に複数配列されている。
【0054】
図2は、本発明の実施の形態1に係る有機ELディスプレイの一部切り欠き斜視図である。
【0055】
有機ELディスプレイ2は、発光パネルの一例であって、画素回路を構成する複数の画素PXを有する薄膜半導体アレイ基板1と、薄膜半導体アレイ基板1の上において複数の画素PXに対応して形成された有機EL素子80と、画素PXの行方向に沿って形成された複数のゲート配線(走査線)31と、画素PXの列方向に沿って形成された複数のソース配線(データ線)32と、ソース配線32と並行して形成された電源配線33(不図示)とを備える。
【0056】
有機EL素子80は、薄膜半導体アレイ基板1上に順次積層された、陽極81、有機EL層82及び陰極83で構成されている。
【0057】
図3は、
図1及び
図2に示す薄膜半導体アレイ基板1における画素PXの回路構成を示す図である。
【0058】
各画素PXは、第1のTFT10、第2のTFT20、ゲート配線31、ソース配線32、電源配線33及び容量(コンデンサ)40によって構成されている。各画素PXにおいて、第1のTFT10は、画素PXを選択するためのスイッチングトランジスタであり、第2のTFT20は、画素PXを駆動するための駆動トランジスタである。
【0059】
第1のTFT10は、第1のゲート電極10Gがゲート配線31に接続され、第1のソース電極10Sがソース配線32に接続され、第1のドレイン電極10Dが容量40と第2のTFT20の第2のゲート電極20Gとに接続されている。
【0060】
また、第2のTFT20は、第2のゲート電極20Gが第1のTFT10の第1のドレイン電極10Dに接続され、第2のソース電極20Sが有機EL素子80の陽極81に接続され、第2のドレイン電極20Dが電源配線33に接続されている。
【0061】
ゲート配線(走査線)31は、画素行に含まれる各画素PXの画素回路に、データ電圧を書き込むタイミング信号(ゲート電圧)を供給する。
【0062】
ソース配線(データ線)32は、画素列に含まれる各画素PXの画素回路に、当該画素PXにおける有機EL素子80の発光強度を決定するデータ電圧を供給する。
【0063】
電源配線33は、画素行に含まれる各画素PXの画素回路に電源電圧を供給する。本実施の形態において、電源配線33は、各画素PXの第2のTFT20に電源電圧を供給する。
【0064】
容量40は、ソース配線32から供給されたデータ電圧を保持する保持容量である。
【0065】
このように構成される各画素PXにおいて、ゲート配線31にゲート信号が入力されて第1のTFT10がオン状態になると、ソース配線32を介して供給されたデータ電圧(映像信号電圧)が容量40に書き込まれる。そして、容量40に書き込まれたデータ電圧は、1フレーム期間を通じて保持される。この保持されたデータ電圧により、第2のTFT20のコンダクタンスがアナログ的に変化し、発光階調に対応した駆動電流が、有機EL素子80の陽極81から陰極83へと流れて有機EL素子80が発光する。これにより、所定の画像を表示することができる。
【0066】
なお、本実施の形態においては、2つのTFTと1つの容量とからなる2Tr1Cの画素回路を例示したが、画素回路の構成は、これに限るものではない。また、TFTの閾値電圧を補正することのできる画素回路を用いてもよい。
【0067】
図4は、本発明の実施の形態1に係る薄膜半導体アレイ基板における一画素のレイアウトを示す概略図である。
図5Aは、
図4のA−A’線における断面図であり、
図5Bは、
図4のB−B’線における断面図であり、
図5Cは、
図4のC−C’線における断面図であり、
図5Dは、
図4のD−D’線における断面図である。なお、
図4において、画素PXの内側において破線で囲まれる領域は、薄膜半導体アレイ基板1の上に有機EL素子を形成した場合における発光領域ELを示している。
【0068】
図4に示すように、画素PXは、直交するゲート配線31とソース配線32とによって区画されており、各画素PXには、第1のTFT10、第2のTFT20、容量40及びコンタクトパッド50が設けられている。コンタクトパッド50は、コンタクト部を介して有機EL素子80の陽極81と接続される。
【0069】
図5A〜
図5Dに示すように、薄膜半導体アレイ基板1は、基板61と、基板61の上方に形成された第1のTFT(第1の半導体素子)10及び第2のTFT(第2の半導体素子)20とを備える。また、基板61の上方には、ゲート配線31、ソース配線32及び電源配線33も形成される。
【0070】
図5Aに示すように、第1のTFT10は、トップゲート構造のTFTであり、基板61の上方に位置する第1の半導体層(チャネル層)11と、第1の半導体層11の上方に位置する第1のゲート絶縁膜12と、第1のゲート絶縁膜12の上方に位置する第1のゲート電極10Gと、第1の半導体層11の一部に接続された第1のソース電極10S及び第1のドレイン電極10Dと、第1のゲート電極10Gの上方に位置する第1の保護層13とを有する。
【0071】
また、第2のTFT20は、トップゲート構造のTFTであり、基板61の上方に位置する第2の半導体層(チャネル層)21と、第2の半導体層21の上方に位置する第2のゲート絶縁膜22と、第2のゲート絶縁膜22の上方に位置する第2のゲート電極20Gと、第2の半導体層21の一部に接続された第2のソース電極20S及び第2のドレイン電極20Dと、第2のゲート電極20Gの上方に位置する第2の保護層23とを有する。
【0072】
図4及び
図5Aに示すように、ソース配線32は、第1のTFT10における第1のソース電極10Sと接続されている。本実施の形態では、ソース配線32と第1のソース電極10Sとが一体形成されており、ソース配線32の一部が第1のソース電極10Sを構成している。
【0073】
また、電源配線33は、第2のTFT20における第2のドレイン電極20Dと接続されている。本実施の形態では、電源配線33と第2のドレイン電極20Dとが一体形成されており、電源配線33の一部が第2のドレイン電極20Dを構成している。
【0074】
図5Aに示すように、第1のゲート絶縁膜12と第2のゲート絶縁膜22とは、同一のゲート絶縁層62によって構成されており、同一の工程で形成される。また、第1の保護層13と第2の保護層23とは、同一のパッシベーション層64によって構成されており、同一の工程で形成される。
【0075】
パッシベーション層64は、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S及び第2のゲート電極20Gを連続して覆うように形成されている。言い換えると、第1の保護層13は、第1のドレイン電極10Dの上方の領域及び第2のソース電極20Sの上方の領域を跨ぐように、第1のゲート電極10Gの上方の領域から第2のゲート電極20Gの上方の領域まで連続して形成されている。同様に、第2の保護層23は、第2のソース電極20Sの上方の領域及び第1のドレイン電極10Dの上方の領域を跨ぐように、第2のゲート電極20Gの上方の領域から第1のゲート電極10Gの上方の領域まで連続して形成されている。
【0076】
このように、第2のゲート電極20Gのうち第2の半導体層21の上方に位置する領域の上面と、第1のゲート電極10Gのうち第1の半導体層11の上方に位置する領域の上面と、その間に位置する部分の領域の上面とは、連続膜からなるパッシベーション層64と接している。
【0077】
図4及び
図5Bに示すように、第1のTFT10における第1のドレイン電極10Dは、第2のTFT20における第2のゲート電極20Gが延伸されて構成されている。具体的には、第1のドレイン電極10Dと第2のゲート電極20Gとは、第1のドレイン電極10D及び第2のゲート電極20Gと同層に形成された中継電極60によって接続されている。つまり、第1のドレイン電極10Dと第2のゲート電極20Gとは、コンタクト部(コンタクトホール)を介さずに接続されている。中継電極60は、第1のドレイン電極10Dと第2のゲート電極20Gとを接続するための接続電極である。
【0078】
なお、
図4に示すように、コンタクトパッド50は、第2のTFT20の第2のソース電極20Sが延伸されて構成されている。
【0079】
また、
図4に示すように、ゲート配線31は、ソース配線32及び電源配線33と交差するように形成されている。第1のTFT10における第1のゲート電極10Gは、ゲート配線31の一部が延伸されて構成されている。また、
図5Cに示すように、ゲート配線31とソース配線32及び電源配線33との間には、パッシベーション層64が形成されている。
【0080】
このように構成される薄膜半導体アレイ基板1において、第1のゲート電極10Gと、第1のドレイン電極10Dと、第2のソース電極20Sと、第2のゲート電極20Gと、ゲート配線31と、コンタクトパッド50と、中継電極60とは、共通の金属層(第1金属層)をパターニングすることによって形成される。したがって、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S、第2のゲート電極20G、ゲート配線31、コンタクトパッド50及び中継電極60の各々の厚さは、製造上の誤差を除き、ほぼ同じである。
【0081】
また、ソース配線32と電源配線33とは、第1金属層よりも上層に形成される共通の第2金属層をパターニングすることによって形成される。したがって、ソース配線32及び電源配線33の各々の厚さは、製造上の誤差を除き、同じである。
【0082】
そして、本実施の形態では、第1金属層は、第2金属層よりも薄い膜厚で形成される。つまり、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S、第2のゲート電極20G、ゲート配線31、コンタクトパッド50及び中継電極60の各々の厚さは、ソース配線32及び電源配線33の各々の厚さよりも薄くなっている。
【0083】
これにより、第1のTFT10における第1のゲート電極10G及び第1のドレイン電極10Dの膜厚と第2のTFT20における第2のソース電極20S及び第2のゲート電極20Gの膜厚とを薄くすることができる一方で、ソース配線32の膜厚及び電源配線33の膜厚を厚くすることができる。
【0084】
また、
図4及び
図5Dに示すように、容量40は、半導体層41と絶縁膜42と第1の金属膜43とからなるMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造と第1の金属膜43と絶縁膜44と第2の金属膜45とからなるMIM(Metal−Insulator−Metal)構造とにより構成される。但し、
図4において、画素PXの内側において破線で囲まれる領域(薄膜半導体アレイ基板1の上に有機EL素子を形成した場合における発光領域EL)では、容量40は、半導体層41と絶縁膜42と第1の金属膜43とからなるMIS構造で形成されている。
【0085】
半導体層41は、第1の半導体層11及び第2の半導体層21と同一の半導体材料をパターニングすることによって形成される。また、絶縁膜42は、第1のゲート絶縁膜12及び第2のゲート絶縁膜22と同一の絶縁材料をパターニングすることによって形成される。また、第1の金属膜43は、第1のゲート電極10G及び第2のゲート電極20Gと同一の第1金属層をパターニングすることによって形成される。また、絶縁膜44はパッシベーション層64と同一の絶縁材料をパターニングすることによって形成される。また、第2の金属膜45はソース配線32及び電源配線33と同一の金属層をパターニングすることによって形成される。
【0086】
以上、本実施の形態に係る薄膜半導体アレイ基板1によれば、トップゲート型のTFTを有する画素PXであっても、画素PX内において、第1のTFT10の電極(第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D)及び第2のTFT20の電極(第2のゲート電極20G、第2のソース電極20S)の厚さを薄くすることができる。これにより、第1のTFT10及び第2のTFT20の上に形成する上部層の平坦性が確保しやすくなる。
【0087】
しかも、本実施の形態によれば、第1のTFT10及び第2のTFT20の電極とソース配線32及び電源配線33とを異なる層で形成している。これにより、第1のTFT10及び第2のTFT20の電極の厚さを薄くしたとしても、ソース配線32及び電源配線33の厚さを厚くすることができる。したがって、ソース配線32及び電源配線33を厚膜化して低抵抗化することができるので、信号遅延を抑制したり電圧低下による輝度ムラを抑制したりすることができる。
【0088】
このように、本実施の形態によれば、画素PX内のTFTに接続される配線を低抵抗化しつつ、TFTの上方における上部層の平坦性を確保しやすくできる。
【0089】
また、本実施の形態において、容量40は、薄膜半導体アレイ基板1の上に有機EL素子を形成した場合における発光領域ELでは、第1のゲート電極10G(第1金属層)と同層の薄膜の第1の金属膜43を金属電極とするMIS構造であって、容量40を構成する層には厚膜のソース配線32及び電源配線33(第2金属層)が含まれていない。これにより、第1のTFT10及び第2のTFT20の上方に形成される上部層の平坦性が一層確保しやすくなる。
【0090】
次に、本実施の形態における有機ELディスプレイ2の断面構成について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態における有機ELディスプレイの構成を示す断面図であって、
図5Aに示す薄膜半導体アレイ基板1の上に有機EL素子80を形成したときの図を示している。
【0091】
図6に示すように、本実施の形態における有機ELディスプレイ2は、トップエミッション型の表示パネルであって、薄膜半導体アレイ基板1と、薄膜半導体アレイ基板1の上に形成された平坦化層70と、平坦化層70の上に形成された有機EL素子80及び隔壁90とを備える。
【0092】
有機EL素子80は、発光層を含む発光素子であって、第2のTFT20を介してデータ電圧に応じた駆動電流が流れることにより発光する。有機EL素子80は、平坦化層70の上に形成された陽極81と、陽極81の上に形成された有機EL層82と、有機EL層82の上に形成された陰極83とによって構成されている。隔壁(バンク層)90は、有機EL層82を側方から挟むように構成されている。
【0093】
陽極(アノード)81は、例えば、光反射性を有する反射電極等によって構成することができる。
【0094】
有機EL層82は、有機材料によって形成することができ、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層などの各層が積層されて構成される。有機EL層82は、隔壁90の開口部内に形成される。
【0095】
陰極(カソード)83は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)又はインジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)等の透明金属酸化物等を用いることができる。
【0096】
陽極81及び有機EL層82は、薄膜半導体アレイ基板1の画素PXに対応して形成されている。有機EL層82は、発光層を含み、画素PXにおける発光領域ELとなる。
【0097】
隔壁90は、ソース配線32及び電源配線33の上方に位置するよう形成されている。つまり、隔壁90に挟まれる有機EL層82は、後述のプロセスにより、ソース配線32と電源配線33との間の領域に形成される。隔壁90の幅は、ソース配線32及び電源配線33の線幅よりも大きくなるように構成されている。
【0098】
なお、隔壁90は、一つの画素PX毎に有機EL層82の周囲を囲むように構成されたピクセルバンクであってもよいし、列方向に並ぶ複数の画素PXに共通する有機EL層82を囲むように構成されたラインバンクであってもよい。
【0099】
以上、本実施の形態に係る有機ELディスプレイ2によれば、有機EL素子80が上記の薄膜半導体アレイ基板1の画素PXに対応して形成されており、陽極81及び有機EL層82が形成されている領域の下側には、厚い膜厚の層(ソース配線32及び電源配線33)が形成されておらず、薄い膜厚の層(第1のTFT10の電極及び第2のTFT20)のみが形成されている。
【0100】
これにより、平坦化層70によって画素PX内の段差(凹凸)を良好に平坦化することが可能となる。したがって、平坦化層70を厚膜化することなく、陽極81及び有機EL層82を容易に平坦に形成することができる。したがって、発光層にかかる電圧を均一にするこができるので、有機EL素子80の寿命を向上させることができる。
【0101】
特に、本実施の形態では、有機ELディスプレイ2を平面視したときに、
図4に示すように、第1のTFT10の電極(第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D)及び第2のTFT20の電極(第2のゲート電極20G、第2のソース電極20S)は、発光領域EL内に形成されており、一方、ソース配線32及び電源配線33は、発光領域EL外に形成されている。
【0102】
これにより、発光領域EL内では第1のTFT10の電極及び第2のTFT20の電極を薄膜化し、発光領域EL外では配線(ソース配線32及び電源配線33)を厚膜化することができる。したがって、有機EL素子80の発光状態に影響を与えることなく、配線の低抵抗化と上部層(陽極81及び有機EL層82)の平坦化との両立を図ることができる。
【0103】
また、本実施の形態では、上述のとおり、各画素PXの発光領域ELにおいて、容量40には厚膜の配線層が含まれていない。これにより、さらに陽極81を容易に平坦に形成することが可能となるので、有機EL素子80の寿命をさらに向上させることが可能となる。
【0104】
また、本実施の形態において、隔壁90は、厚膜で形成されたソース配線32及び電源配線33の上方に形成されている。したがって、平坦化層70の厚みにもよるが、隔壁90の高さを容易に高くすることができる。つまり、高さのあるソース配線32及び電源配線33を利用することで、高さの高い隔壁90を容易に形成することができる。これにより、有機EL層82の材料を印刷法、例えば、インクジェット法で形成する場合に、より多くの液滴を隔壁90内に塗布することが可能となり、有機EL層82の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0105】
さらに、
図6に示すように、隔壁90の幅をソース配線32及び電源配線33の線幅よりも大きくすることによって、隔壁90のエッジを、厚膜で形成されたソース配線32及び電源配線33よりも内側に持ってくることができる。これにより、隔壁90の側壁を2段形状にすることができるので、有機EL層82の材料を隔壁90の開口部内にインクジェット法にて塗布するときに、隔壁90の2段形状部分において有機EL層82の材料の高さ位置を規制することができる。したがって、インクジェット時における基板面内でのピンニング位置を揃えることができるので、基板面内において有機EL層82の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。その結果、輝度の均一性を向上させることが可能となる。
【0106】
次に、本発明の実施の形態1に係る薄膜半導体アレイ基板1の製造方法について、
図7〜
図9を用いて説明する。
図7〜
図9は、本発明の実施の形態1に係る薄膜半導体アレイ基板の製造方法の各工程を示す図である。
【0107】
まず、
図7(a)に示すように、基板61の上に第1の半導体層11及び第2の半導体層21を形成する。
【0108】
具体的には、まず、基板61を準備する。基板61は、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス又は高耐熱性ガラス等のガラス材料からなるガラス基板である。なお、ガラス基板の中に含まれるナトリウムやリン等の不純物が第1の半導体層11及び第2の半導体層21に侵入することを防止するために、基板61上にシリコン窒化膜(SiN
x)、酸化シリコン(SiO
y)又はシリコン酸窒化膜(SiO
yN
x)等からなるアンダーコート層を形成してもよい。さらに、酸化物半導体は水素(H)に対して敏感であるため、これを抑制するためにアルミナ(Al
yO
x)をアンダーコート層として形成してもよい。アンダーコート層の膜厚は、例えば100nm〜2000nm程度とすることができる。
【0109】
その後、基板61の上に半導体膜をスパッタ法により形成する。半導体膜を形成するための半導体材料としては、IGZO(In−Ga−Zn−O)、ITZO(In−Tin−Zn−O)、ZnO(Zn−O)、IGO(In−Ga−Zn−O)又はIZO(In−Zn−O)等の酸化物半導体材料を用いることができる。なお、上述のように画素PX内を平坦にしやすくする構造を実現するにあたり、半導体材料は、上記のものに限られるものではない。半導体材料としては、トップゲート型のTFTを実現できるものであればよく、例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン等の結晶シリコン、Siナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン等を用いてよい。
【0110】
上記半導体材料を用いて半導体膜を成膜した後、一般的なフォトリソグラフィー法及びエッチング法により、所望の領域に所定形状の第1の半導体層11及び第2の半導体層21をパターン形成する。このとき、
図5Dに示される容量40の半導体層41も形成される。なお、半導体膜の膜厚としては、例えば、10nm〜300nm程度とすることができる。
【0111】
本実施の形態において、第1の半導体層11及び第2の半導体層21は、IGZOを用いて形成した。
【0112】
続いて、
図7(b)に示すように、第1の半導体層11及び第2の半導体層21の上にゲート絶縁層(第1の層間絶縁膜)62を形成する。ゲート絶縁層62としては、例えば、CVD法により酸化シリコンを形成することができる。酸化シリコンは、例えば、シランガス(SiH
4)と亜酸化窒素ガス(N
2O)とを所定の濃度比で導入することで成膜することができる。なお、酸化シリコン以外に、窒化シリコン、酸窒化シリコン、又はそれらの積層膜を積層してもよい。ゲート絶縁層62の膜厚としては、例えば、50nm〜400nm程度とすることができる。
【0113】
続いて、
図7(c)に示すように、ゲート絶縁層62のパターニングを行う。本実施の形態では、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、ゲート絶縁層62の一部を開口して第1の半導体層11及び第2の半導体層21の各々の一部を露出させる。
【0114】
例えば、六フッ化硫黄(SF
6)等のガスを用いたドライエッチングプロセスにより、第1のTFT10における第1のドレイン電極10Dの領域と第2のTFT20における第2のソース電極20Sの領域となる部分について、ゲート絶縁層62の一部を開口して第1のコンタクトホールCH1と第2のコンタクトホールCH2を形成し、第1の半導体層11の一部の表面と第2の半導体層21の一部の表面とを露出させる。
【0115】
続いて、
図7(d)に示すとおり、第1の半導体層11及び第2の半導体層21におけるゲート絶縁層62から露出する部分を覆うように、ゲート絶縁層62上に、薄膜の金属層である第1金属層63を形成する。
【0116】
第1金属層63としては、ゲート電極を構成する材料を用いればよく、例えば、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、モリブデンタングステン(MoW)、銅(Cu)、チタン(Ti)又はクロム(Cr)等を用いることができる。本実施の形態において、第1金属層63は、スパッタ法によりMoW膜を形成した。また、第1金属層63の膜厚としては、例えば、20〜100nm程度とすることができる。
【0117】
続いて、
図8(a)に示すように、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、第1金属層63のパターニングを行う。これにより、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S、第2のゲート電極20G及びゲート配線31(不図示)が所定形状に形成される。このとき、
図4に示すように、第1のドレイン電極10Dと第2のゲート電極20Gとが連続して繋がるように第1金属層63をパターニングする。
【0118】
続いて、
図8(b)に示すように、ゲート絶縁層62を、パターニングされた第1金属層63をマスクパターンとしてパターニングすることによって、第1の半導体層11と第1のゲート電極10Gとの間に第1のゲート絶縁膜12を形成するとともに、第2の半導体層21と第2のゲート電極20Gとの間に第2のゲート絶縁膜22を形成する。
【0119】
本実施の形態では、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S、第2のゲート電極20G及びゲート配線31(不図示)をマスクにして、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、ゲート絶縁層62をパターニングする。これにより、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S、第2のゲート電極20G及びゲート配線31の直下の領域にのみゲート絶縁層62が残り、それ以外の領域におけるゲート絶縁層62は除去される。このゲート絶縁層62の加工により、所定形状の第1のゲート絶縁膜12及び第2のゲート絶縁膜22が形成されるとともに、第1の半導体層11及び第2の半導体層21の一部が露出する。
【0120】
なお、ゲート絶縁層62の加工後は、酸化物半導体層である第1の半導体層11及び第2の半導体層21に対して低抵抗化処理を行うとよい。これにより、第1の半導体層11及び第2の半導体層21の露出部分、すなわち、第1の半導体層11及び第2の半導体層21において第1金属層63が被らない領域(オフセット領域)を、低抵抗化させることが可能となり、良好なTFT特性を得ることができる。
【0121】
続いて、
図8(c)に示すように、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S及び第2のゲート電極20Gの上に、パッシベーション層(第2の層間絶縁膜)64を形成する。
【0122】
本実施の形態では、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S、第2のゲート電極20G及びゲート配線31(図外)を覆うように、基板61上の全体にパッシベーション層64を形成する。
【0123】
パッシベーション層64としては、例えば、CVD法により酸化シリコンを用いることができる。この場合、酸化シリコンは、例えば、シランガス(SiH
4)と亜酸化窒素ガス(N
2O)とを所定の濃度比で導入することで成膜することができる。なお、酸化シリコン以外に、窒化シリコン、酸窒化シリコン、又はそれらの積層膜を積層してもよい。もしくは、アルミナを形成してもよい。パッシベーション層64の膜厚としては、例えば、50nm〜400nm程度とすることができる。
【0124】
続いて、
図8(d)に示すように、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、パッシベーション層64の一部を開口して第1の半導体層11及び第2の半導体層21の各々の一部を露出させる。
【0125】
例えば、第1のTFT10における第1のソース電極10Sの領域と第2のTFT20における第2のドレイン電極20Dの領域となる部分について、パッシベーション層64の一部を開口して第3のコンタクトホールCH3及び第4のコンタクトホールCH4を形成し、第1の半導体層11の一部の表面と第2の半導体層21の一部の表面とを露出させる。
【0126】
その後、
図9(a)に示すように、第1の半導体層11及び第2の半導体層21におけるパッシベーション層64から露出する部分を覆うように、パッシベーション層64上に、厚膜の金属層である第2金属層65を形成する。つまり、第3のコンタクトホールCH3及び第4のコンタクトホールCH4を埋めるようにして第2金属層65を形成する。ここで、第2金属層65は、第1金属層63よりも厚い膜厚で形成する。
【0127】
第2金属層65としては、配線を構成する材料を用いればよく、例えば、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、モリブデンタングステン(MoW)、銅(Cu)、チタン(Ti)又はクロム(Cr)等を用いることができる。本実施の形態において、第2金属層65は、スパッタ法により、MoW/Al/MoWの3層を積層することにより形成した。また、第2金属層65の膜厚としては、例えば、300〜800nm程度とすることができる。
【0128】
引き続き、
図9(b)に示すように、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、第2金属層65のパターニングを行う。これにより、第1のソース電極10Sと、これに接続されるソース配線32と、第2のドレイン電極20Dと、これに接続される電源配線33とを所定形状で形成する。
【0129】
このようにして、
図4及び
図5A〜
図5Dに示されるような薄膜半導体アレイ基板1を製造することができる。
【0130】
その後、図示しないが、薄膜半導体アレイ基板1の上に、平坦化層70、隔壁90、陽極81、有機EL層82及び陰極83を形成することによって、
図6に示される有機ELディスプレイ2を製造することができる。
【0131】
以下、本実施の形態に係る有機ELディスプレイ2の製造方法について、
図10を参照しながら、上記
図6を用いて簡単に説明する。
図10は、本発明の実施の形態1に係る有機ELディスプレイの製造方法を説明するための図である。
【0132】
具体的には、
図6及び
図10に示すように、まず、薄膜半導体アレイ基板1の全体を覆うように平坦化層70を形成する。
【0133】
その後、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、平坦化層70を貫通するコンタクトホール(不図示)を形成する。このコンタクトホールは、後に、有機EL素子80の陽極81と第2のソース電極20Sとを電気的に接続するために、陽極81とコンタクトパッド50(
図4参照)とを接続するための貫通孔となる。
【0134】
その後、同図に示すように、隔壁90が、平坦化層70上の各画素PXの境界に対応する位置に形成される。また、陽極81が、平坦化層70上で、隔壁90の開口部内に画素PX毎に形成される。このとき、陽極81を構成する材料が平坦化層70のコンタクトホールに充填され、コンタクト部が形成される。このコンタクト部とコンタクトパッド50とを介して、陽極81と第2のソース電極20Sとが電気的に接続される。
【0135】
なお、陽極81の材料は、例えば、モリブデン、アルミニウム、金、銀、銅などの導電性金属若しくはそれらの合金、PEDOT:PSSなどの有機導電性材料、酸化亜鉛、又は、鉛添加酸化インジウムのいずれかの材料である。これらの材料からなる膜を、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタ法、又は、印刷法などにより形成し、所定形状の電極パターンを形成する。
【0136】
その後、
図6に示すように、発光層を含む有機EL層82を形成する。有機EL層82は、陽極81上で、隔壁90の開口部内に画素PX毎に形成される。この有機EL層82は、上述のように、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層などの各層が積層されて構成される。例えば、正孔注入層として銅フタロシアニンを、正孔輸送層としてα−NPD(Bis[N−(1−Naphthyl)−N−Phenyl]benzidine)を、発光層としてAlq
3(tris(8−hydroxyquinoline)aluminum)を、電子輸送層としてオキサゾール誘導体を、電子注入層としてAlq
3を用いることができる。なお、これらの材料は、あくまで一例であって他の材料を用いてもよい。
【0137】
有機EL層82の各層の有機材料82Aは、例えばインクジェット法にて隔壁90の開口部内に印刷することができる。このとき、本実施の形態では、
図10に示すように、隔壁90の側壁が2段形状となっているので、隔壁90の2段形状部分で有機材料82Aの高さ位置を規制することができる。これにより、画素PX間における有機材料82Aのピンニング位置を揃えることができるので、基板面内における有機EL層82の膜厚を容易に均一にすることができる。なお、有機材料82Aを塗布した後は、加熱処理を行うことによって、所定の膜厚の有機EL層82の各層を形成することができる。
【0138】
その後、
図6に示すように、全ての画素PXに共通するように陰極83を形成する。陰極83は、全ての有機EL層82上に連続的に形成される光透過性を有する電極である。陰極83の材料は、上述のように、ITO又はIZOを用いることができるが、この他に、SnO
2、In
2O
3、ZnO又はこれらの組み合わせなどを用いてもよい。
【0139】
このようにして、
図6に示されるような有機ELディスプレイ2が得られる。
【0140】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る薄膜半導体アレイ基板1A及び有機ELディスプレイについて、
図11、
図12A及び
図12Bを用いて説明する。
図11は、本発明の実施の形態2に係る薄膜半導体アレイ基板における一画素のレイアウトを示す概略図であり、
図4に対応する。
図12Aは、
図11のC−C’線における断面図であり、
図12Bは、
図11のE−E’線における断面図である。なお、実施の形態1と共通する点の説明については省略し、実施の形態1と相違する点を中心に説明する。
【0141】
図11、
図12A及び
図12Bに示すように、本発明の実施の形態2に係る薄膜半導体アレイ基板1Aでは、ゲート配線31Aが複数の金属層によって構成されている。本実施の形態におけるゲート配線31Aは、2つの金属膜の積層構造であり、下層の第1のゲート配線31aと上層の第2のゲート配線31bとによって構成されている。つまり、ゲート配線31Aは、実施の形態1における薄膜のゲート配線31を第1のゲート配線31aとしたときに、この第1のゲート配線31aの上に第2のゲート配線31bが積層された構造となっている。
【0142】
さらに、本実施の形態では、第2のゲート配線31bの膜厚は、第1のゲート配線31aの膜厚よりも厚くしている。また、第2のゲート配線31bは、第1のゲート配線31aとは組成が異なる金属材料を用いて形成している。本実施の形態において、薄膜の第1のゲート配線31aとしてTi膜を形成し、厚膜の第2のゲート配線31bとして、MoW/Al/MoWの3層膜を形成した。なお、第2のゲート配線31bの材料としては、低抵抗金属材料を用いることが好ましく、実施の形態1におけるゲート配線31と同様の材料を用いてもよい。
【0143】
2層構造のゲート配線31Aを形成する場合、第1のゲート配線31aとなる下部金属層と第2のゲート配線31bとなる上部金属層とを連続して形成し、その後、ハーフトーンマスクを用いたハーフトーンプロセスによりパターニングするとよい。これにより、例えば、1回のマスク工程によって、第1のTFT10及び第2のTFT20の電極には下部金属層(Ti)のみを残し、ゲート配線31Aには上部金属層(Ti)及び上部電極層(MoW/Al/MoW)が積層されるように形成することができる。
【0144】
また、本実施の形態では、上層の第2のゲート配線31bをウエットエッチングにより形成し、下層の第1のゲート配線31aをドライエッチングにより形成しているため、
図12Bに示すように、ゲート配線31Aは、上層の第2のゲート配線31bの線幅が下層の第1のゲート配線31aの線幅よりも小さくなる。
【0145】
本実施の形態における薄膜半導体アレイ基板1Aは、ゲート配線31Aの形成以外は、実施の形態1と同様の方法によって製造することができる。また、本実施の形態に係る有機ELディスプレイは、実施の形態1と同様にして製造することができる。
【0146】
なお、第2のゲート配線層32bを形成するときの金属層は、第1のゲート配線層32a上のみに形成されている。つまり、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S及び第2のゲート電極20Gは、実施の形態1と同様に、第1金属層(第1のゲート配線層32aの金属層)のみによって構成されており、これらの電極の上には、第2のゲート配線層32bを形成するときの金属層は形成されていない。
【0147】
このように構成されるゲート配線31Aは、実施の形態1におけるゲート配線31と比べて、厚膜になった分、低抵抗化することができる。これにより、実施の形態1よりも、ゲート配線における信号伝達性を向上させることができるので、画質向上に貢献することができる。この点について、以下、詳細に説明する。
【0148】
実施の形態1におけるゲート配線31は、膜厚を薄くしたい第1のゲート電極10G等と同一の金属層(第1金属層)を用いて形成されることから薄く形成されてしまう。つまり、ゲート配線31は、第1のゲート電極10G等の膜厚の制約を受けて薄く形成せざるを得ないことから、ソース配線32及び電源配線33にように、容易に厚膜化して低抵抗化することができない。このため、実施の形態1のゲート配線31については信号遅延が生じうる。
【0149】
これに対して、本実施の形態では、2層構造のゲート配線31Aを用いているので、第1のゲート配線31aを、実施の形態1におけるゲート配線31と同様に第1のゲート電極10G等と同一の金属層(第1金属層)を用いて形成したとしても、第1のゲート配線31aの上に第2のゲート配線31bが積層されているので、ゲート配線としての実質的な配線抵抗を低下させることができる。これにより、実施の形態1と比べて、ゲート配線における信号遅延を抑制することができる。
【0150】
以上、本実施の形態に係る薄膜半導体アレイ基板1Aによれば、トップゲート型のTFT構造であっても画素内を平坦にしやすくする構造を維持したまま、ゲート配線の抵抗を下げることが可能となる。すなわち、第1のTFT10及び第2のTFT20の上方に形成される上部層の平坦化と、ソース配線32及び電源配線33の低抵抗化とに加えて、ゲート配線31Aも低抵抗化することができる。
【0151】
また、本実施の形態において、第2のゲート配線31bの膜厚は、第1のゲート配線31aの膜厚よりも厚い。これにより、ゲート配線31Aの配線抵抗をさらに下げることができる。
【0152】
また、本実施の形態において、ゲート配線31は、ハーフトーンプロセスにより形成されている。これにより、実施の形態1に対して、マスク工程を増やすことなく、低抵抗のゲート配線31Aを形成することができる。
【0153】
また、本実施の形態では、ゲート絶縁層62は、実施の形態1と同様に、第1のゲート電極10G、第1のドレイン電極10D、第2のソース電極20S、第2のゲート電極20G及び第1のゲート配線31aをマスクにしてパターニングされるので(
図8(b)参照)、
図12A及び
図12Bに示すように、第1のゲート配線31aの下には、第1のゲート配線31aの線幅と同じ線幅の絶縁層62aが形成される。
【0154】
ソース配線32は、絶縁層62a、第1のゲート配線31a及び第2のゲート配線31bの積層構造を乗り越える必要があるが、本実施の形態では、第1のゲート配線31aの下に絶縁層62aを形成しているので、上記積層構造における段差の高さが大きくなっている。このため、当該積層構造の段差によってパッシベーション層64が薄くなって段切れが生じて、ソース配線32とゲート配線31Aとがショートしてしまう可能性がある。
【0155】
これを回避するために、ゲート配線を
図13に示すような構成としてもよい。
図13は、本発明の実施の形態2の変形例に係る薄膜半導体アレイ基板の構成を示す断面図であり、
図12Bの断面図に対応する。
【0156】
図13に示すように、本変形例では、基板61の上に第1のゲート配線31aを形成してゲート配線31Bを構成している。これにより、第1のゲート配線31a及び第2のゲート配線31bの積層構造における段差を緩和することができる。したがって、ソース配線32とゲート配線31Bとがショートする確率を低減することが可能となる。
【0157】
なお、
図13に示す構成のゲート配線31Bを形成する場合、絶縁層62aのパターニングは、第1のゲート配線31aをマスクにして行うのではなく、第1のゲート配線31aを形成する前に行う必要がある。
【0158】
具体的には、
図7(c)に示されるゲート絶縁層62のパターニング工程において、絶縁層62aを形成すればよい。このように、本実施の形態では、ゲート絶縁層62のパターニング工程(
図7(c))を含むので、製造工程を追加することなく、
図13に示す構成のゲート配線31Bを形成することができる。
【0159】
(その他)
以上、本発明の実施の形態に係る薄膜半導体アレイ基板及びその製造方法、並びに、発光パネルについて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0160】
例えば、上記の実施の形態において、ソース電極とドレイン電極は、TFTの種類に応じて入れ替えてもよい。具体的には、第1のTFT10において、第1のソース電極10Sを第1のドレイン電極10Dとするとともに、第1のドレイン電極10Dを第1のソース電極10Sとしてもよい。また、第2のTFT20において、第2のソース電極20Sを第2のドレイン電極20Dとするとともに、第2のドレイン電極20Dを第2のソース電極20Sとしてもよい。
【0161】
また、上記の実施の形態において、薄膜半導体アレイ基板は、有機EL素子を用いた有機ELディスプレイ(発光パネル)に適用する例について説明したが、これに限らない。例えば、上記の実施の形態における薄膜半導体アレイ基板は、広くアクティブマトリクス基板として用いることができ、液晶表示パネル等の他のアクティブマトリクス方式の表示パネルにも適用することもできる。
【0162】
その他、実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。