特許第5948443号(P5948443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5948443二つの置換基を非対称構造として含むジアミン化合物、これを使用して製造された重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948443
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】二つの置換基を非対称構造として含むジアミン化合物、これを使用して製造された重合体
(51)【国際特許分類】
   C07C 217/90 20060101AFI20160623BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20160623BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   C07C217/90CSP
   C07C213/02
   C08G73/10
【請求項の数】17
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-557554(P2014-557554)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2015-508772(P2015-508772A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】KR2012010447
(87)【国際公開番号】WO2013133508
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年8月14日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0024323
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】315000283
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン ユル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ダル
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イム シク
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−0600449(KR,B1)
【文献】 特開2006−343585(JP,A)
【文献】 特開2004−143051(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/025145(WO,A1)
【文献】 特開平08−176301(JP,A)
【文献】 特開昭59−219330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 217/00
C07C 213/00
C08G 73/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化学式1]で表示される、二つの置換基RおよびR’が環状基Aのみに結合されていることを特徴とする非対称ジアミン化合物。
[化学式1]
ここで、RおよびR’は、互いに独立して
(i)フッ素原子を含有するC1〜C12のアルキル基、
(ii)フッ素原子を含有し、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルキル基、
(iii)フッ素原子を含有するC1〜C12のアルコキシ基または
(iv)フッ素原子を含有し、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルコキシ基から選択される官能基であり、
連結基−L−は、−O−、−S−または−SO−であり、
上記環状基
は、互いに独立して、(i)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたフェニル基、ナフチル基またはビフェニル基である。
【請求項2】
上記Lは、−O−または−S−である請求項1記載の非対称ジアミン化合物。
【請求項3】
下記化学式2で表わされ、二つのトリフルオロメチル基が一方の環状グループのみに非対称的に結合されている請求項1記載のジアミン化合物。
[化学式2]
【請求項4】
化学式Aの化合物と化学式Bの化合物とを、求核基置換反応によって化学式Cのジニトロ化合物を製造する段階;
前記化学式Cのジニトロ化合物を水素化反応する段階;を含む化学式1で表示される非対称ジアミン化合物の製造方法。
[反応式1]
[反応式2]
式中、
i)上記の[反応式1]で−Xまたは−Yのいずれかは、ハロゲン原子である−F、−Cl、−Br及び−Iから選択される1つの官能基であり、残りの一つは、上記反応式(1)の最初の反応の生成物であるジニトロ化合物で連結基−L−を形成する、OH、SHまたはこれらのアルカリ金属塩であり、
ii)RおよびR’は、互いに独立して
(i)フッ素原子を含有するC1〜C12のアルキル基、
(ii)フッ素原子を含有し、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルキル基、
(iii)フッ素原子を含有するC1〜C12のアルコキシ基または
(iv)フッ素原子を含有し、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルコキシ基から選択される官能基であり、
iii)連結基−L−は、−O−、−S−または−SO−であり、
上記環状基
は、互いに独立して、(i)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたフェニル基、ナフチル基またはビフェニル基である。
【請求項5】
上記Lは、−O−又は−Sである請求項1記載の非対称ジアミン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記反応式1の反応物として、1−ブロモ−4−ニトロ−2,6−ビストリフルオロメチルベンゼンおよび4−ニトロフェノールを使用して、下記化学式3で表されるジニトロ化合物を製造し、化学式3のジニトロ化合物内のニトロ基を還元反応させる段階からなる請求項5記載のジアミン化合物の製造方法。
[化学式3]
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の非対称ジアミン化合物を単量体として使用して重合反応によってポリイミドを製造する方法。
【請求項8】
上記非対称ジアミン化合物とテトラカルボン酸を単量体とし、イミド化反応を通じてポリイミドを製造する方法であって、得られるポリイミドは、下記の化学式5で表される請求項7記載のポリイミドを製造する方法。
[化学式5]
ここで、nは、10〜5,000,000から選択される整数であり、芳香族環Ar基は、水素、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基を含む芳香族基、あるいは水素、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基を含むヘテロサイクリック芳香族基であり、RおよびR’は、請求項1に定義されたものと同じである。
【請求項9】
上記非対称ジアミン化合物とテトラカルボキシル酸単量体を有機溶媒に溶解してポリアミック酸を作り、これを加熱、攪拌してイミド化する段階となる請求項8記載のポリイミドの製造方法。
【請求項10】
上記テトラカルボキシル酸単量体は、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルカルボキシル酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルカルボキシル酸二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボキシルジフェニルスルフィド二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシルジフェニルスルフィド二無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボキシルジフェニルスルホン二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシルジフェニルスルホン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物からなる群から少なくとも一つ選択される請求項8記載のポリイミドの製造方法。
【請求項11】
上記ジアミン化合物は4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−アミノベンジルアミン、m−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、3,4−ジアミノフェニルスルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、3,4−ジアミノフェニルスルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、3,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される他のジアミンと混合して、ポリアミック酸を製造する請求項8に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の非対称ジアミン化合物に由来する構造単位とテトラカルボキシル酸に由来する構造単位を含む、下記化学式5で表されるポリイミド重合体。
[化学式5]
ここで、nは、10〜5,000,000から選択される整数であり、芳香族環Ar基は、水素、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基を含む芳香族基、あるいは水素、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基を含むヘテロサイクリック芳香族基であり、RおよびR’は、請求項1に定義されたものと同じである。
【請求項13】
上記テトラカルボキシル酸単量体は、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルカルボキシル酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルカルボキシル酸二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボキシルジフェニルスルフィド二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシルジフェニルジフェニルスルフィド二無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボキシルジフェニルスルホン二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシルジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物からなる群から少なくとも一つ選択される請求項12記載のポリイミド重合体。
【請求項14】
上記のジアミン化合物は4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−アミノベンジルアミン、m−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、3,4−ジアミノフェニルスルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、3,4−ジアミノフェニルスルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、3,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される他のジアミンに由来する構造単位を含む請求項12記載のポリイミド重合体。
【請求項15】
請求項12記載のポリイミド重合体を極性非陽性子性有機溶媒または芳香族アルコール溶媒に溶解させて製造することを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項16】
上記極性非陽性子性有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)及びアニソールからなる群から選択され、前記芳香族アルコール溶媒は、m−クレゾールである請求項15記載のフィルムの製造方法。
【請求項17】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の非対称ジアミン化合物に由来する構造単位を含む、下記化学式6で表されるポリアミック酸重合体。
[化学式6]



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの置換基RおよびR'が、ジアミン化合物のうちのいずれか一方のみに非対称的に導入されていることを特徴とする新規なジアミン化合物、これの製造方法及び前記ジアミン化合物を用いた高分子重合体に関するものである。
【0002】
本発明のジアミン化合物は、ポリイミドに使用される単量体とすることが可能であり、得られるポリイミドポリマーは、有機溶媒に高い濃度で溶解でき、加工し易い特性を示し、これをフィルム化すると、熱的、機械的および光学的特性に優れた物性を維持することができ、電気、電子用または光学用材料物質として有用である。
【背景技術】
【0003】
ジアミン化合物は、重合体の主鎖の中にイミドおよび/またはアミド基を含む重合体の製造において有用な単量体である。しかし、芳香族ジアミンを含有して製造されたポリイミドまたはポリアミドは、耐熱性と機械的強度に優れる反面、多くの場合、溶解性が低減し、加工性が低く、フィルムや繊維として製造するのは容易ではない。
【0004】
例えば、米国特許5,071,997号には、下記の化学式のようにフッ化アルキル基を非対称的に含む芳香族ジアミンが開示されている。
[参照化学式1]
ここで、Aは、フッ化アルキル基、アリール基または置換されたアリール基であり、Zpは、芳香族基に置換することができる官能基である。
【0005】
これから製造されたポリイミドは、微細電子デバイスのコーティング物質、気体分離膜、高い収縮強度と高い引張強度を持つ繊維として使用することができる。
【0006】
また、米国特許第5,286,841号には、下記の非対称型芳香族ジアミン化合物が開示されているとともに、芳香族テトラカルボン酸二無水物と共に重合された可溶性芳香族ポリイミドとそれを用いたフィルム、繊維、または成形品が開示されている。
[参照化学式2]
ここで、RfはC1〜C18の直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基である。
【0007】
また、大韓民国登録特許公報第10-0562151号及び大韓民国登録特許公報第10-0600449号にも、それぞれ以下の[参照化学式3]と[参照化学式4]に表される溶解性の高い芳香族ポリイミドを製造するのに有用な非対称型のジアミン化合物とこれを用いて製造されるポリイミドが開示されている。
[参照化学式3]

[参照化学式4]
【0008】
一般的に、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物単量体とを重合させることにより得られるポリイミドは、耐熱性、力学的強度、寸法安定性に優れ、難燃性、電気絶縁性に優れている。上記の優れた物性により、ポリイミドは、電気および電子機器、航空宇宙機器、輸送機器などの様々な応用分野で使用されており、使用しようとする用途に応じてさまざまな形での研究が行われている。
【0009】
上記のようなポリイミドの中で芳香族ポリイミドは、熱安定性、機械的物性、電気絶縁性、耐化学性などの諸物性が非常に優れており、電子産業では、層間絶縁材料、高分子複合体の支持体、混合気体の分離のための分離膜、高分子電解質燃料電池の電解質膜、高温用接着剤、被覆剤、液晶表示装置の配向膜、透明で柔軟な電気、電子用基板の素材などの用途で使用される代表的な高性能高分子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般的な芳香族ポリイミドはイミド化が完全に行われた最終段階では、有機溶媒に全く溶解されず、溶融前に分解が起き、加工できないため、中間体であるポリアミック酸の形態で加工した後、熱処理過程を経てイミド化を完了させる2段階のプロセスを使用して最終的な完成品を製造する。しかし、このように加工可能な中間体であるポリアミック酸の状態で加工した後、熱または化学処理による硬化を介して最終的な成形品を製造する方法は、中間体であるポリアミック酸の不安定性と硬化の際に生成される水等の副産物の生成とにより成形品の変形や欠陥の原因となる問題点がある。
【0011】
したがって、芳香族ポリイミドの諸物性の低下を最小限に抑えながら、イミド化が完全に進行した後でも、有機溶媒に対する溶解度が十分で、最終段階においても、フィルムや繊維の形で容易に加工することができる可溶性ポリイミドを開発しようとする研究が活発に行われてきた。可溶性ポリイミドを製造する方法としては、高分子鎖間の相互作用(interaction)を低減する方法として、より具体的には、高分子の主鎖に柔軟な作用基を導入したり、体積が大きい置換基を導入する方法、高分子鎖の平面をねじるようにする方法、脂肪族環構造(alicyclic)を有する単量体を使用する方法、非対称構造を導入し、分子構造の規則性を低下させる方法、有機溶媒への溶解性が良い成分と共に共重合する方法などがある。特にフィルム化するのに十分な可溶性を示す全芳香族ポリイミドは、その例は多くないが、例えば、米国特許7,550,194B2において、以下のような構造の2つのトリフルオロメチル基を非フェニルに非対称的に含むジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)benzidine)から製造された溶解性と透明性とに優れた全芳香族(fully aromatic)ポリイミドが開示されている。
[参照化学式5]
【0012】
このように体積が大きいトリフルオロメチル基を含むパーフルオロアルキル基をポリイミド主鎖に導入することは、炭素−水素間の結合よりも強い炭素−フッ素間の結合を介して、生成されたポリイミドの耐熱性を大幅に低下させず、従来のポリイミドが備える種々の相互作用(interaction)を抑制することによって、生成されたポリマーの溶解度を大幅に増加させるだけでなく、フッ素原子の低い分極性(polarizability)に起因する水分吸収率、誘電率、屈折率等に著しい低下をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者らは二つの官能基RおよびR'が、ジアミン化合物を構成する環のうちのどちらか一方のみ非対称的に導入されていることを特徴とする新規なジアミン化合物を製造し、これを単量体として使用してポリイミドを製造することにより、既存のポリイミドが持っている欠点を解決することを可能とした。
【0014】
より具体的には、本発明で提供される非対称ジアミン化合物、特に置換基としてフッ素を含む炭化水素基を非対称的に有する新規なジアミン化合物を使用して、汎用テトラカルボン酸二無水物と重合させることにより、イミド化が完全に起きた後でも、有機溶媒に溶解し、加工性に優れた可用性芳香族ポリイミドを開発した。
【0015】
本発明は、具体的には、ポリイミドまたはポリアミドが有する複数の相互作用(interaction)を抑制させるために二つの置換基が非対称的に導入されたジアミン化合物を提供することで、上記二つの置換基が、体積が大きい基(bulky group)であることを特徴とする。
【0016】
上記の体積が大きい基は、電子求引基(electron with drawing group)とすることができ、前記電子求引基が直鎖または分岐のパーフルオロ化アルキル基とすることができる。より具体的には、上記の直鎖または分岐のパーフルオロ化アルキル基がトリフルオロメチル基とすることができる。
【0017】
本発明は、二つの置換基が非対称的に導入されたジアミン化合物を用いて、イミド基および/またはアミド基を含む重合体を提供することができる。より具体的に二つの置換基が非対称的に導入されたジアミン化合物を用いて、ポリアミック酸および/またはポリイミドを製造する方法と、それによって製造されたポリアミック酸および/またはポリイミドを提供する。
【0018】
本発明は、二つの置換基が非対称的に導入されたジアミン化合物を利用して、イミド化が完全に進行した後でも、有機溶媒への溶解度が十分で加工性に優れたポリイミドを提供することができる。上記二つの置換基が非対称的に導入されたジアミン化合物と芳香族のテトラカルボン酸二無水物とを重合すると、イミド化が完全に進行した後でも、有機溶媒への溶解度が十分で加工性に優れ、熱的特性と光学的特性とに優れた全芳香族(fully aromatic)ポリイミドを提供することができる。
【0019】
本発明は、ポリイミド鎖間の複数の相互作用を抑制するために分子構造を適切に調節することができるように、非対称的に導入された置換基がフルオロアルキル基であるジアミン化合物とするものであり、これを利用して重合されたポリイミドはイミド化が完全に進行した後でも、有機溶媒に高濃度で溶解し、加工し易い可溶性ポリイミドを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により得られるポリイミドは、熱可塑性であり、ポリイミドの優れた物性を維持することができ、強直な構造で強靭性でありながらも、最終的なポリマーの状態での溶解度が十分で、加工性に優れ、低い屈折率を有する。これは、上記のジアミン化合物の特異な構造に起因するものと判断され、得られるポリイミドをフィルム化しても、熱的、機械的および光学的特性に優れた物性を維持することができるので、電気、電子用または光学用材料物質として有用であり、今後商業的価値が非常に高いものと見られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ジアミン化合物の合成例に対する水素原子の核磁気共鳴分光分析スペクトルである。
図2】ジアミン化合物の合成例に対する炭素原子の核磁気共鳴分光分析スペクトルである。
図3】実施例1で合成されたポリイミドの水素原子の核磁気共鳴分光分析スペクトルである。
図4】実施例2で合成されたポリイミドの水素原子の核磁気共鳴分光分析スペクトルである。
図5】実施例3で合成されたポリイミドの水素原子の核磁気共鳴分光分析スペクトルである。
図6】実施例4で合成されたポリイミドの水素原子の核磁気共鳴分光分析スペクトルである。
図7】実施例5で合成されたポリイミドの水素原子の核磁気共鳴分光分析スペクトルである。
図8】実施例1、2、3、4、5で合成されたポリイミドの赤外線分光分析スペクトルである。
図9】実施例1、2、3、4、5で合成されたポリイミドのDSCを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の上記目的およびその他の目的は、以下説明する本発明によって全て達成することができる。以下、本発明の内容を詳細に説明する。
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、下記[化学式1]で表示される、二つの置換基RおよびR’が環状グループAと環状グループBとのいずれかの環状グループAのみ結合している非対称ジアミン化合物を提供する。
[化学式1]

ここでRおよびR'は、互いに独立して(i)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルキル基、(ii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルコキシ基、(iii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC2〜C12のアルケニル基、(iv)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC2〜C12のアルキニル基、(v)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC4〜C30のシクロアルキル基、(vi)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたシクロアルケニル基、(vii)置換されていないか、一つ以上のハロゲン、C1〜C12のアルキル基、C1〜C12のアルコキシ基、C1〜C12のハロゲン化アルキル基および/またはC1〜C12のハロゲン化アルコキシ基で置換されたC6〜C30のアリール基、(viii)置換されていないか、一つ以上のハロゲン、C1〜C12のアルキル基、C1〜C12のアルコキシ基、C1〜C12のハロゲン化アルキル基および/またはC1ないC12のハロゲン化アルコキシ基で置換されたC3〜C30のヘテロアリール基、または(ix)置換されていないか、一つ以上のハロゲン、C1〜C12のアルキル基、C1〜C12のアルコキシ基、C1〜C12のハロゲン化アルキル基および/またはC1ないC12のハロゲン化アルコキシ基で置換されたC6〜C30のアリールアルキル基から選択される官能基であり、
連結基Lは、単結合、-O-、-S-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)-、-SO2-、C(CH32-、-C(CF32-、-NR""-、またはそれらの組み合わせであり(ここで、R""は水素または置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C6のアルキル)であり、
上記環状基
及び
は、互いに独立に、(i)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換された5員または6員環を少なくとも1つ以上含むC5〜C30のアリールまたはシクロアルキル基、(ii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換された5員または6員環を少なくとも1つ以上含むC3〜C30のヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル基である。
【0024】
上記置換基RとR'は、好ましくは、フッ素を含有する炭化水素基であり、より好ましくはトリフルオロメチル基である。
また、上記Lは、好ましくは単結合、-O-、-S−から選択されるいずれか一つとすることができる。
【0025】
また、本発明で得られる非対称ジアミンは、具体的には、下記化学式2で表わされ、二つのトリフルオロメチル基が一方の環状グループにのみ非対称的に結合されているジアミン化合物とすることができる。
[化学式2]
【0026】
また、本発明は、式(1)の化学式Aの化合物と化学式Bの化合物とを、求核基置換反応によって化学式Cのジニトロ化合物を製造する工程;前記化学式Cのジニトロ化合物を水素化反応する工程;を含み、下記反応式2の内、化学式1で表示される非対称ジアミン化合物の製造方法を提供する。
【0027】
[反応式1]

[反応式2]
【0028】
i)上記の[反応式1]で-Xまたは-Yのどちらか一つはハロゲン原子(-F、-Cl、-Brまたは-I)、エステル基、-C(O)-Cl基、スルホニルクロライド基の中から選択される1つの官能基であり、残りの一つは、上記式(1)の最初の反応の生成物であるジニトロ化合物の連結基-L-を形成するOH、SH、またはこれらのアルカリ金属塩であり、
ii)RおよびR'は、互いに独立して(i)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルキル基、(ii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルコキシ基、(iii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC2〜C12のアルケニル基、(iv)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC2〜C12のアルキニル基、(v)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC4〜C30のシクロアルキル基、(vi)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたシクロアルケニル基、(vii)置換されていないか、一つ以上のハロゲン、C1〜C12のアルキル基、C1〜C12のアルコキシ基、C1〜C12のハロゲン化アルキル基および/またはC1〜C12のハロゲン化アルコキシ基で置換されたC6〜C30のアリール基、(viii)置換されていないか、一つ以上のハロゲン、C1〜C12のアルキル基、C1〜C12のアルコキシ基、C1〜C12のハロゲン化アルキル基および/またはC1〜C12のハロゲン化アルコキシ基で置換されたC3〜C30のヘテロアリール基、または(ix)置換されていないか、一つ以上のハロゲン、C1〜C12のアルキル基、C1〜C12のアルコキシ基、C1〜C12のハロゲン化アルキル基および/またはC1〜C12のハロゲン化アルコキシ基で置換されたC6〜C30のアリールアルキル基から選択される官能基であり、
iii)連結基-L-は、-O-、-S-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-SO2-、の中から選択される一つの連結基であり、
上記環状基
及び
は、互いに独立的に、(i)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換された5員または6員環を少なくとも1つ以上含むC5〜C30のアリールまたはシクロアルキル基、(ii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換された5員または6員環を少なくとも1つ以上含むC3〜C30のヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル基である。
【0029】
上記製造方法において、置換基R及びR'は、フッ素を含有する炭化水素基であり、より好ましくはトリフルオロメチル基であってもよい。また、上記Lは、好ましくは単一結合、-O-、-Sの中から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0030】
本発明のジアミン化合物の製造方法は、より具体的には、以下の[反応式3]のように、上記二つの置換基が非対称的に導入されたジアミン化合物の製造方法を提供する。
[反応式3]
【0031】
上記[反応式3]で-Xまたは-Yのいずれかの一つは、-halで表示されているハロゲン(-F、-Cl、-Brまたは-I)であり、残りの一つは、本発明の[化学式1]で連結基-L-を形成するための反応性を有する官能基である。たとえば、-Xが-halであり、-Yが、-OHまたは-SHの場合、連結基-L-は、それぞれ-O-および-S-となり、前記[化学式1]に記載された残りの連結基も、通常の知識を有する者であれば、上記の[反応式1]と[化学式1]に記載された連結基から容易に-Xと-Yを選択することができる。
【0032】
RおよびR'の置換基で独立的に選択される(i)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、または他の直鎖または分岐のC1〜C12のアルキル基をすべて含み、ハロゲンで置換された場合は、フッ素で置換されるのが好ましく、この場合、トリフルオロメチルなどがあげられる。
【0033】
RおよびR’の置換基で独立的に選択される(ii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC1〜C12のアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、または他の直鎖または分岐アルコキシをすべて含み、ハロゲンで置換された場合は、フッ素で置換されるのが好ましく、この場合、トリフルオロメトキシ等があげられる。
【0034】
RおよびR’の置換基で独立的に選択される(iii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC2〜C12のアルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、または他の直鎖または分岐のC2〜C12のアルケニル基の両方を含み、ハロゲンで置換された場合は、フッ素で置換されることが好ましく、この場合、フルオロエテニル、フルオロプロフェニル、フルオロブテニル、トリフルオロメチルエテニルなどがあげられる。
【0035】
RおよびR’の置換基で独立して選択される(iv)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC2〜C12のアルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブーティーニールまたはその他の直鎖または分岐のC2〜C12のアルキニル基の両方を含み、ハロゲンで置換された場合は、フッ素で置換されることが好ましく、この場合、フルオロエチニル、フルオロプロピニル、フルオロブチニル、トリフルオロメチルエチニル等があげられる。
【0036】
RおよびR'の置換基で独立的に選択される(v)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたC4〜C30のシクロアルキル基の例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはその他の直鎖または分岐のC4〜C30のシクロアルキル基をすべて含み、ハロゲンで置換される場合は、フッ素で置換されることが好ましく、この場合、フルオロシクロブチル、フルオロシクロペンチル、フルオロシクロヘキシルなどがあげられる。
【0037】
RおよびR’の置換基で独立的に選択される(vi)置換されていないか、一つ以上のハロゲンで置換されたシクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等またはその他の直鎖または分岐のシクロアルケニル基の両方を含み、ハロゲンで置換される場合は、フッ素で置換されることが好ましく、この場合、フルオロシクロプロフェニル、フルオロシクロブテニルフルオロシクロペンテニルなどがあげられる。
【0038】
RおよびR’の置換基で独立的に選択される(vii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンおよび/またはC1〜C12のアルキル基で置換されたC6〜C30のアリール基の例としては、フェニル、ナフチル等、またはその他の直鎖または分岐のアルキル基、またはハロゲンで置換されたアリール基を含む。
【0039】
RおよびR’の置換基で独立的に選択される(viii)置換されていないか、一つ以上のハロゲンおよび/またはC1〜C12のアルキル基で置換されたC3〜C30のヘテロアリール基の例としては、ピロール、ピリジル、チオフェニル、インドリールなど他の直鎖または分岐のアルキル基、またはハロゲンで置換されたヘテロアリール基をすべて含む。
【0040】
RおよびR'の置換基で独立的に選択される(ix)置換されていないか、一つ以上のハロゲンおよび/またはC1〜C12のアルキル基で置換されたC6〜C30のアリールアルキル基の例としては、トリル、メッシュチルリル、キシリル、またはその他の直鎖または分岐のアルキル基、またはハロゲンで置換されたアリールアルキル基のすべてを含む。
【0041】
RおよびR’の置換基として好ましいのは、フッ素で置換されたアルキル、フッ素で置換されたアルコキシまたは置換されていないか、または置換されたアリール基であり、特に好ましいのは、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、置換されていないか、または置換されたフェニルであり、最も好ましいのはトリフルオロメチル(-CF3)である。
【0042】
一方、連結基-L-として、好ましくは単一結合、-O-、-S-または-NH-が選択され、最も好ましくは単一結合-O-または-S-である。
【0043】
また、前記ジアミン化合物の製造において、環状グループAとBとが6員環である場合、アミン基は連結基-L-に対してパラ位にあることが望ましい。
【0044】
本発明の最も好ましいジアミン化合物の製造方法で得られる化合物は、2,6-ビストリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(2,6-bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl ether)として[化学式2]で示される。
[化学式2]
【0045】
具体的には、上記[化学式2]のジアミン化合物は、以下の[反応式4]のような方法で製造することができる。ここでhalは、好ましくはBrで表される化合物を使用することができる。
[反応式4]
【0046】
下記の反応式2に基づいて、前記ジアミン化合物(化学式1)は、1-ブロモ-4-ニトロ-2,6-ビストリフルオロメチルベンゼン(1-bromo-4-nitro-2,6-bis(trifluoromethyl)benzene)と4-ニトロフェノール(4-nitrophenol)とを、塩基である炭酸カルシウムの存在下で反応させて化学式3で表わされたジニトロ化合物を製造した後、ニトロ基の還元反応を経て得られる。
[化学式3]
【0047】
また、本発明は上記非対称ジアミン化合物を単量体として使用して重合反応によってポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミドから選択されるいずれかのポリマーを製造する方法を提供する。より具体的には、前記非対称ジアミン化合物とテトラカルボキシル酸を単量体にしてイミド化して、製造し、下記の化学式5で表されるポリイミドを製造する方法を提供する。
[化学式5]
ここで、nは、1〜10,000から選択される整数であり、芳香族環Ar基は、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基を含む芳香族グループ、または炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基を含むヘテロサイクリック芳香族基であり、RおよびR’は、先に定義されたものと同じである。
【0048】
本発明は、前記ポリイミドを製造する方法であって、本発明は、非対称ジアミン化合物とテトラカルボキシル酸単量体を有機溶媒に溶解させてポリアミック酸を生成し、これを加熱し、攪拌してイミド化させる工程を含むことができる。
【0049】
上記テトラカルボキシル酸単量体は、カルボキシル酸を一つの分子内に4個を含む直鎖炭化水素、環状炭化水素または芳香族炭化水素の中から選択されるいずれも可能であるが、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシル酸二無水物、
1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシル酸二無水物、
1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシル酸二無水物、
1,3-ジクロロ-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシル酸二無水物、
1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシル酸二無水物、
1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボキシル酸二無水物、
【0050】
1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボキシル酸二無水物、
3,3',4,4'-ジシクロヘキシルテトラカルボキシル酸二無水物、
2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、
3,5,6-トリカルボキシノルボルナン-2酢酸二無水物、
2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボキシル酸二無水物、
1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、
1,3,3a、4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]-フラン-1,3-ジオン、
【0051】
1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-エチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]-フラン-1,3-ジオン、
1,3,3a、4,5,9b-ヘキサヒドロ-7-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]-フラン-1,3-ジオン、
1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-7-エチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]-フラン-1,3-ジオン、
1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]-フラン-1,3-ジオン、
1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-エチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]-フラン-1,3-ジオン、
1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5,8-ジメチル-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]-フラン-1,3-ジオン、
【0052】
5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフランイル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシル酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボキシル酸二無水物、
3-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3,4’-(テトラヒドロフラン-2'、5'-ジオン)、
5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシル酸無水物、
【0053】
3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシノルボルナン-2:3,5:6二無水物、
4,9-ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン-3,5,8,10-テトラオンなどの脂肪族テトラカルボキシル酸二無水物と脂環族テトラカルボキシル酸二無水物があげられる。
ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボキシル酸二無水物)、
3,3’,4,4'-ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物、
2,2’,3,3'-ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物、
3,3’,4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物、
2,2’,3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物、
【0054】
1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、
1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、
2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、
3,3’,4,4'-ビフェニルエーテルテトラカルボキシル酸二無水物、
2,2’,3,3'-ビフェニルエーテルテトラカルボキシル酸二無水物、
3,3’,4,4'-テトラカルボキシジフェニルスルフィド二無水物、
2,2’,3,3'-テトラカルボキシジフェニルジフェニルスルフィド二無水物、
【0055】
3,3’,4,4'-テトラカルボキシジフェニルスルホン二無水物、
2,2’,3,3'-テトラカルボキシジフェニルスルホン二無水物、
3,3’,4,4'-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、
3,3’,4,4'-ジメチルジフェニルシランテトラカルボキシル酸二無水物、
3,3’,4,4'-テトラフェニルシランテトラカルボキシル酸二無水物、
1,2,3,4-フランテトラカルボキシル酸二無水物、
【0056】
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、
ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、
p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、
【0057】
ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、
ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物、
エチレングリコール-ビス(アンヒドロトリメリテート)
プロピレングリコール-ビス(アンヒドロトリメリテート)
1,4-ブタンジオール-ビス(アンヒドロトリメリテート)
1,6-ヘキサンジオール-ビス(アンヒドロトリメリテート)
1,8-オッタンジオール-ビス(アンヒドロトリメリテート)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(アンヒドロトリメリテート)等の芳香族テトラカルボキシル酸二無水物があげられ、これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0058】
好ましくは、
1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボキシル酸二無水物、
3,3’,4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物、
2,2’,3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物、
3,3’,4,4'-ジフェニルエーテルカルボキシル酸二無水物、
2,2’,3,3'-ジフェニルエーテルカルボキシル酸二無水物、
3,3’-オキシジフタル酸二無水物、
【0059】
3,3’,4,4'-ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物、
2,2’,3,3'-ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物、
3,3’,4,4'-テトラカルボキシルジフェニルスルフィド二無水物、
2,2’,3,3'-テトラカルボキシルジフェニルジフェニルスルフィド二無水物、
3,3’,4,4'-テトラカルボキシルジフェニルスルホン二無水物、
2,2’,3,3'-テトラカルボキシルジフェニルスルホン二無水物、
4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、
1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、
1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物、および2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボキシル酸二無水物からなる群から少なくても一つ選択することができる。
【0060】
また、上記ポリイミドの製造方法において、本発明の非対称ジアミン化合物は、使用用途に応じて、ポリマーの物性、特に溶解度と透明度を減少させない範囲で、以下に記載される他のジアミン類を混合して使用することができる。
上記の追加によって含まれるジアミン化合物も一つの分子内で2つのアミン基を有する直鎖炭化水素、環状炭化水素または芳香族炭化水素の中から選択される1つであれば可能であり、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、
p-アミノベンジルアミン、m-アミノベンジルアミン、
4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、
3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、
4,4’-ジアミノベンズアニリド、
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、
3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4'-ジアミノジフェニルエーテル、
2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、2,3'-ジアミノジフェニルエーテル、
1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、
【0061】
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、3,4-ジアミノフェニルスルフィド、
ビス(4-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3-アミノフェニル)スルホキシド、3,4-ジアミノフェニルスルホキシド、
ビス(4-アミノフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、3,4-ジアミノフェニルスルホン、
4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、
【0062】
ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、
ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、
ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、
1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、
1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、
4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、
4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、
4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、
4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、
1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、
1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、
1,3-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、
1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、
2,2’-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、
【0063】
2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、
3,3’-ジトリフルオロメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、
5-アミノ-1-(4'-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、
6-アミノ-1-(4'-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、
2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、
1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、
1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、
9,9-ビス(4-アミノフェニル)-10-ヒドロアントラセン、
【0064】
2,7-ジアミノフルオレン、
9,9-ジメチル-2,7-ジアミノフルオレン、
9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、
4,4'-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、
2,2',5,5'-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、
【0065】
2,2'-ジクロロ-4,4'-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、
3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、
1,4,4'-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、
4,4'-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、
2,2'-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、
4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、
4,4'-ビス[(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]-オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミンがあげられる。
【0066】
また、
1,1-メタキシレンジアミン、
1,3-プロパンジアミン、
テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、
ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレン、
オクタメタキシレンジアミン、ノナメチレンジアミン、
1,4-ジアミノシクロヘキサン、
イソホロンジアミン、
【0067】
テトラハイドロディ・シクロペンタジエニレンジアミン、
ヘキサハイドロ-4,7-メタのダニルレンジメチレンジアミン、
トリシクロ[6.2.1.02.7]-ウンデサイクレンジメチルアミン、
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンと脂環式ジアミンがあげられる。
【0068】
また、2,3-ジアミノピリジン、2,6-ジアミノピリジン、
3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、
5,6-ジアミノ-2,3-ジシアノピラジン、
5,6-ジアミノ-2,4-ジヒドロキシピリミジン、
2,4-ジアミノ-6-ジメチルアミノ-1,3,5-トリアジン、
1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、
2,4-ジアミノ-6-イソプロポキシ-1,3,5-トリアジン、
【0069】
2,4-ジアミノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジアミノ-6-メチル-s-トリアジン、
2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、
4,6-ジアミノ-2-ビニル-s-トリアジン、
2,4-ジアミノ-5-フェニルチアゾール、
2,6-ジアミノプリン、
5,6-ジアミノ-1,3-ジメチルウラシル、
3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、
6,9-ジアミノ-2-エトキシアクリジン乳酸塩、
3,8-ジアミノ-6-フェニルフェナントリジン、
1,4-ジアミノピペラジン、
3,6-ジアミノアクリジン、
ビス(4-アミノフェニル)フェニルアミン、
3,6-ジアミノカルバゾール、
N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、
N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、
N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、
N、N'-ジ(4-アミノフェニル)-ベンジジン等の分子内に2つの1級アミノ基及び前記1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミンをあげることができ、他にも公知のジアミノオルガノシロキ酸、ステロイド基を含むジアミン、アセチレン基を含む強直性のあるジアミンなどが[化学式2]のジアミン化合物と共に追加的に使用することができる。
【0070】
上記のテトラカルボキシル酸二無水物及び非対称ジアミン化合物と組み合わせて使用できるジアミンは上記の例として述べたものに限定されることではなく、そのほかにも公知のものを追加的に使用することができる。例えば、日本公開特許公報2010-262263号、2010-097188号、2010-217866号、2010-197999号、2011-118354号、2011-022612号及び大韓民国公開特許公報10-2010-0073993号で記載されているテトラカルボキシル酸二無水物とジアミンを使用することができる。
【0071】
上記の追加的に使用できるジアミンの種類は、好ましくは
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、
3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4'-ジアミノジフェニルエーテル、
2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、2,3'-ジアミノジフェニルエーテル、
1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、
1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、
1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、
【0072】
p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、
p-アミノベンジルアミン、m-アミノベンジルアミン、
4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、
3,3’-ジアミノジフェニルメタン、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、
3,4-ジアミノフェニルスルフィド、
ビス(4-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3-アミノフェニル)スルホキシド、3,4-ジアミノフェニルスルホキシド、
【0073】
ビス(4-アミノフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、3,4-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、
ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)]スルホン、
ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)]スルホン、
ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)]エーテル、
1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、
1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、
4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、
4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、
4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、
4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、
1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、
1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択することも可能である。
【0074】
また、本発明は、前記非対称ジアミン化合物を単量体として使用して重合反応によって得られるポリアミドおよび/またはポリイミドを提供する。または前記非対称ジアミン化合物を単量体として使用して重合反応によって得られるポリアミック酸および/またはポリイミド高分子重合体を提供することができる。
【0075】
前記高分子ポリマーは、より具体的には、前記非対称ジアミン化合物とテトラカルボキシル酸とを単量体としてイミド化して製造され、下記化学式5で表されるポリイミド重合体とすることもできる。
[化学式5]
ここで、nは、1〜10,000から選択される整数であり、芳香族環Ar基は、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基を含む芳香族基、または炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基を含むヘテロサイクリック芳香族基であり、RおよびR’は、先に定義されたものと同様である。
【0076】
前述したように、置換基を非対称的に導入する場合、特に体積が大きく、電子求引性がある官能基を非対称的に導入した場合には、これらから重合されるポリイミドは、全芳香族で製造される場合にも、鎖間の対称性を相殺させて、相互作用を低下させることができるので、有機溶媒に対する溶解度とフィルム化した後の透明度とを大幅に向上させることができる。
【0077】
上記ポリイミド重合体において、単量体として使用されるテトラカルボキシル酸単量体は、先に記載したような種類のテトラカルボキシル酸の使用が可能であり、また、前記ポリイミド重合体において、前記非対称ジアミン化合物は、他の種類のジアミンと混合されて、ポリアミック酸を経てポリイミドとすることができる。
【0078】
また、本発明は、前記非対称ジアミン単量体を含むポリイミドを極性非陽子性有機溶媒または芳香族アルコール溶媒に溶解させて製造されるフィルムを提供することができる。上記極性非陽子性有機溶媒は、好ましくはN,N-ジメチルホルムアマイド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアマイド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、アニソールからなる群から選択され、前記芳香族アルコール溶媒は、好ましくはm-クレゾールからなる群から選択することができる。
【0079】
本発明に係るポリマーの例としては、下記[化学式6]で全芳香族ポリアミック酸があげられる。
[化学式6]
【0080】
上記芳香族環Ar基で表わされる4価の有機基は、上記で説明した芳香族テトラカルボキシル酸二無水物から由来するものである。
【0081】
また、本発明に係るポリマーとしては、前記[化学式6]のポリアミック酸をイミド化した下記、[化学式7]のような全芳香族ポリイミドがあげられる。
[化学式7]
【0082】
具体的には、上記ポリアミック酸およびポリイミドの製造工程を見ると、本発明の非対称ジアミン化合物とテトラカルボキシル酸二無水物単量体とを、同じ当量で極性溶媒(polar solvent)に溶解し、常温で一定時間攪拌して、[化学式6]のポリアミック酸を形成する。
【0083】
一般的に溶液の濃度は10〜20%(単量体の重量(g)/溶媒の量(ml))程度が適当である。前記溶液の濃度を5〜10%に希釈した後、温度を高めて一定時間攪拌してイミド化させる。この際、イミド化反応が効率的に行われるように、少量の脱水閉環剤(dehydrating agent)またはイミド化触媒(imidization catalyst)を続けて添加することにより、反応の間に生成される水を除去してイミド化を高めるのがよい。脱水閉環剤及びイミド化触媒は、当業者に公知のものを使用することができる。例えば、JP公報及び書籍に記載されたものを使用することができる。反応が完全に進行すると、反応溶液を過剰量のメタノールと水の混合溶液に沈殿させ、湯及びアルコールで洗浄した後、真空オーブンで乾燥させる。
【0084】
[反応式5]
【0085】
本発明の非対称ジアミン化合物を使用して製造された、ポリアミック酸を粉末状態で得るか、またはポリアミック酸の状態でフィルムを得た後、300℃でイミド化させることでポリイミドを製造することができる方法があるが、これは、中間体であるポリアミック酸が不安定になり、保管が困難になるだけでなく、イミド化の過程で生成される水等の副産物をもたらすため、所望の形への加工が困難となる。
【0086】
本発明のジアミンは、上記非対称ジアミンを全体のジアミンに対して0.1モル%以上含むものであり、20モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましく、特に80モル%以上含むことが望ましい。このような割合で、上記[化学式2]で示されるジアミン化合物を含むジアミンを使用してポリマーを製造することにより、耐熱性、透明性及び溶解性がより優れた高分子を提供することができるので好ましい。
【0087】
実施例
本発明のジアミン化合物とポリイミドは、下記の実施例により、明確に理解することができる。下記の実施例は本発明の例示の目的に過ぎず、発明の範囲を制限するものではなく、また、本発明の単純な変形ないし変更は当業者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の範囲に含まれるものである。
【0088】
実施例に係る単量体及び重合体の構造と物性は次の方法を使用して測定した。
合成された物質の構造は、IR(紫外線分光分析)およびNMR(核磁気共鳴分光分析)より確認された。IRの図は、KBrまたはフィルムを使用して、Bruker社製FTIR EQUINOX-55 spectrophotometerから得て、NMRの図は、クロロホルム、ジメチルスルホキシド-d6に試料を溶解してBruker社のFourier Transform AVANCE 400 spectrometerを使用して得た。合成された高分子の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)溶媒を使用するGPC(gel permeation chromatography)から35℃で測定した。GPCはPLgel 10 μm MIXED-BカラムとViscotek TDA 302屈折率検出器を使用した。TGA(Thermogravimetric Analysis)、DSC(Differential Scanning Calorimetry)およびTMA(Thermomechanical Analysis)はTA instrument社のTGA Q500、DSC Q100、TMA 2940を使用した。TGAとDSCの場合には10℃/minの温度上昇率で測定し、TMAの場合には5℃/minの温度上昇率で測定した。上記の熱分析は、すべて一定の窒素気流下で測定し、TGA分析は、一定の空気気流下でも実施した。5%と10%重量減少温度は、TGA分析から得た。ガラス転移温度(Tg)は、DSCグラフで曲線の傾きが変化する部分の中間点を選択した。熱膨脹係数(CTE)は、TMAを使用して50〜250℃の温度領域で測定した。屈折率は、630と1310nmの波長のレーザを光源としてSairon SPA-4000プリズムカプラーを使用して測定した。測定は2-8μmの厚さを有する均一なフィルムを製造して常温で水平方向と垂直方向の屈折率をそれぞれ測定した。
【0089】
ジアミン化合物の合成例
2,6-ビストリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルの合成(2,6-bis(trifluoroemthyl)-4,4'-diaminodiphenyl ether)ダイナトリウムホスフェート18.2g(123mmol)及びテトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート2.1g(6.20mmol)をアセトンとジクロロメタン溶液500mLに溶かした後、4-ブロモ-3,5-ビストリフルオロメチルアニリン10.0g(32.5mmol)をオクソンと共に一滴づつ反応溶液に滴下しながら、0℃で1時間攪拌した。この時、カリウムヒドロキシド溶液を添加し、反応溶液の酸性度を7.5-8.5程度に維持した。反応が終わった後、ジクロロメタンで希釈し、蒸留水で数回に渡って塩を除去した。上記ジクロロメタン溶液を、無水硫酸マグネシウムを使用して水分除去した後、溶媒を蒸発させ、シリカカラムを通過させ、淡黄色の1-ブロモ-4-ニトロ-2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを得た。(8.05g、23.8mmol、収率73.3%)
【0090】
融点:56-57℃。
1HNMR(CDCl3、400MHz、ppm):8.71(s、2H)。
13CNMR(DMSO-d6、100MHz、ppm):146.62、132.48(q、J=31.9Hz)、126.71(q、J=5.7Hz)、125.63、121.68(q、J=272.9Hz)。
【0091】
前記化合物1-ブロモ-4-ニトロ-2,6-ビストリフルオロメチルベンゼン6.99g(20.7mmol)および4-ニトロフェノール3.16g(22.7mmol)を40mLのジメチルスルホキシドに溶解した後、炭酸カリウム(K2CO3)4.29g(31.0mmol)を入れ、1.5時間撹拌した。これを300mLの酢酸エチルで希釈した後、蒸留水で数回にわたって抽出して、ジメチルスルホキシドおよび塩を除去した。上記酢酸エチル溶液を、無水硫酸マグネシウムを使用して水分除去した後、溶媒を蒸発させ、シリカカラムを通過させて、黄色のジニトロ化合物、2,6-ビストリフルオロメチル-4,4’-ジニトロエーテルを得た。(8.20g、20.7mmol;収率100%)
【0092】
1HNMR(CDCl3、400MHz、ppm):8.831(s、2H)、8.181(d、J=9.6Hz、2H)、6.891(d、J=9.6Hz、2H)。
13CNMR(CDCl3、100MHz、ppm):162.48、153.74、144.91、143.74、128.17(q、J=34.3Hz)、127.39(q、J=5.0Hz)、125.87、121.02(q、J=274.8Hz)、115.95。
【0093】
上記ジニトロ化合物8g(20.2mmol)を、5%パラジウムカーボン4gを160mLの酢酸エチル及び160mLのエタノールの混合溶液に入れ、水素ガス下で3日間攪拌した。反応後、フィルターを使用して、パラジウムカーボンを除去し、エタノールと酢酸エチルとを蒸発させると黄色のジアミン化合物を得ることができた。これを、シリカカラムを通過させ、クロロホルムとヘキセンとの混合溶液から再結晶して、130℃で真空昇華させて白色の結晶である2,6-ビストリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを得た。(6.6g、19.6mmol;収率97%)
【0094】
融点:138-139℃。
1HNMR(DMSO-d6、400MHz、ppm):7.164(s、2H)、6.414(m、4H)、5.927(s、2H)、4.675(s、2H)。
13CNMR(DMSO-d6、100MHz、ppm):151.38、146.61、143.32、138.15、125.31(q、J=30.7Hz)、122.83(q、J=273.7Hz)、115.06、115.00、114.56。
FTIR(KBr、cm-1):
【0095】
実施例1
可溶性ポリイミドの製造
上記合成例で製造されたジアミン化合物0.39801g(1.184mmol)を精製した4.9mLのNMPに完全に溶かし、同じ当量の1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボキシル酸二無水物(PMDA)0.25850g(1.185mmol)を固体状態で加えた後、常温で4時間撹拌してポリアミック酸を含む溶液を製造した。この溶液に、4.9mLのNMPをより加えた後、温度を190℃に高め、少量のクロロベンゼンでイミド化の際に生成される副産物である水を除去しながら6時間攪拌した。反応の間に沈殿、ゲル化現象(gelation)は起こらなかった。これを2mLのNMPで希釈して常温に冷して粘性のある溶液をメタノールと水との混合物に沈殿させ、ろ過した後、沈殿物を過剰量の水、熱メタノールで数回洗浄した後、70℃の温度で真空乾燥してポリマーを得た。
【0096】
1HNMR(DMSO-d6、400MHz、ppm):8.479(m、2H)、8.473(s、2H)、7.526(m、2H)、7.118(m、2H)。
【0097】
合成されたポリマーの一部を7.5重量%のDMAc溶液にしてガラス板に塗布した後、100℃の温度および真空状態で24時間溶媒を除去することにより、透明で、強靭なフィルムを得た。
【0098】
FTIR(フィルム、cm-1):1728、1732(C=O stretching of imide)1606、1509、1475(Aromatic C=C)1373(C-N stretching of imide)1298、1252(-O-)1203、1167、1148(C-F in CF3)726(Imide ring deformation)。
【0099】
実施例1-1
上記合成例で製造されたジアミン化合物0.22114g(0.658mmol)を精製した2.6mLのm-クレゾールに完全に溶解する当量の1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボキシル酸二無水物(PMDA)0.14372g(0.659mmol)と少量のアイソキノリンとを加えた後、常温で4時間撹拌してポリアミック酸を含む溶液を製造した。溶液に、2.6mLのm-クレゾールを加えた後、温度を190℃に高め、少量のクロロベンゼンでイミド化の際に生成される副産物である水を除去しながら12時間攪拌した。反応の間に沈殿、ゲル化現象(gelation)は起きなかった。これを常温に冷して粘性のある溶液をメタノールと水との混合物に沈殿させ、ろ過した後、沈殿物を過剰量の水、熱メタノールで数回洗浄した後、70℃の温度で真空乾燥してポリマーを得た。
【0100】
1HNMR(DMSO-d6、400MHz、ppm):8.479(m、2H)、8.473(s、2H)、7.526(m、2H)、7.118(m、2H)。
【0101】
合成されたポリマーの一部を7.5重量%のDMAc溶液にしてガラス板に塗布した後、100℃の温度および真空状態で24時間溶媒を除去することにより、透明で、強靭なフィルムを得た。
【0102】
実施例2
上記合成例で製造されたジアミン化合物0.39739g(1.182mmol)とPMDAとの代わりに3,3’、4,4'-ビフェニルテトラカルボキスル酸二無水物(BPDA)0.34793g(1.183mmol)を使用することを除いて、実施例1と同様の方法でポリイミドを製造した。反応の際に沈殿、ゲル化現象が起きない可溶性ポリイミドが得られた。
【0103】
1HNMR(DMSO-d6、400MHz、ppm):8.435(s、2H)、8.388(m、4H)、8.163(t、J=7.7Hz、1H)、8.086(t、J=7.6Hz、1H)、7.513(d、J=8.4Hz、2H)、7.041(d、J=8.1Hz、2H)。
【0104】
合成されたポリマーの一部を7.5重量%のDMAc溶液にしてガラス板に塗布した後、100℃の温度および真空状態で24時間溶媒を除去することにより、透明で、強靭なフィルムを得た。
【0105】
FTIR(フィルム、cm-1):1779、1727(C=O stretching of imide)1620、1509、1475(Aromatic C=C)1383(C-N stretching of imide)1298、1253(-O-)1202、1168、1146、1120(C-F in CF3)738(Imide ring deformation)。
【0106】
実施例3
上記合成例で製造されたジアミン化合物0.3964g(1.179mmol)とPMDAとの代わりに3,3’、4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物(BTDA)0.3808g(1.182mmol)を使用することを除いては、実施例1と同様の方法でポリイミドを製造した。反応の際に沈殿、ゲル化する現象のない可溶性ポリイミドが得られた。
【0107】
1HNMR(DMSO-d6、400MHz、ppm):8.433(s、2H)、8.244(m、6H)、7.477(d、J=7.8Hz、2H)、7.074(d、J=8.1Hz、2H)。
【0108】
合成されたポリマーの一部を7.5重量%のDMAc溶液にしてガラス板に塗布した後、100℃の温度および真空状態で24時間溶媒を除去することにより、透明で、強靭なフィルムを得た。
【0109】
FTIR(フィルム、cm-1):1782、1731(C=O stretching of imide);1678(diaryl ketone of BTDA);1619-1475(Aromatic C=C)1385(C-N stretching of imide)1298、1248(-O-)1206、1164、1146(C-F in CF3)720(Imide ring deformation)。
【0110】
実施例4
上記合成例で製造されたジアミン化合物0.39648g(1.179mmol)とPMDAとの代わりに3,3’、4,4'-ジフェニルエーテルカルボキシル酸二無水物(ODPA)0.36623g(1.181mmol)を使用することを除いては、実施例1と同様の方法でポリイミドを製造した。反応の際に沈殿、ゲル化現象がない可溶性ポリイミドが得られた。
【0111】
1HNMR(DMSO-d6、400MHz、ppm):8.395(s、2H)、8.146(t、J=9.4Hz、1H)、8.057(t、J=9.6Hz、1H)、7.655(m、4H)、7.433(d、J=7.3Hz、2H)、7.041(d、J=7.7Hz、2H)。
【0112】
合成されたポリマーの一部を7.5重量%のDMAc溶液にしてガラス板に塗布した後、100℃の温度および真空状態で24時間溶媒を除去することにより、透明で、強靭なフィルムを得た。
【0113】
FTIR(フィルム、cm-1):1781、1727(C=O stretching of imide)1608、1508、1474(Aromatic C=C)1383(C-N stretching of imide)1297、1275、1253(-O-)1201、1167、1144、1113(C-F in CF3)744(Imide ring deformation)。
【0114】
実施例5
上記合成例で製造されたジアミン化合物0.39624g(1.178mmol)とPMDAとの代わりに4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンダイフタル酸無水物(6-FDA)0.52558g(1.183mmol)を使用することを除いては、実施例1と同様の方法でポリイミドを製造した。反応の際に沈殿、ゲル化現象がない可溶性ポリイミドが得られた。
【0115】
1HNMR(DMSO-d6、400MHz、ppm):8.371(s、2H)、8.268(t、J=9.4Hz、1H)、8.170(t、J=9.4Hz、1H)、8.024(t、J=7.4Hz、1H)、7.940(t、J=7.9Hz、1H)、7.804(d、J=7.0Hz、1H)、7.715(d、J=8.1Hz、1H)、7.427(d、J=8.4Hz、2H)、7.051(d、J=8.4Hz、2H)。
【0116】
合成されたポリマーの一部を7.5重量%のDMAc溶液にしてガラス板に塗布した後、100℃の温度および真空状態で24時間溶媒を除去することにより、透明で、強靭なフィルムを得た。
【0117】
FTIR(フィルム、cm-1):1788、1735(C=O stretching of imide)1509、1475(Aromatic C=C);1385(C-N stretching of imide)1298、1255(-O-)1203、1148、1121(C-F in CF3)722(Imide ring deformation)。
【0118】
ポリイミドの物性
【表1】
【0119】
MN:数平均分子量
Mw:重量平均分子量
PDI:重合分散度(polydispersity Index)
Tg:ガラス転移温度
CTE:熱膨脹係数(Coefficient of Thermal Expansion):TMAを使用して50〜250℃の温度領域で測定された
実施例1-1:m-クレゾールから12時間の間イミド化させたポリイミド
【0120】
表1の結果から分かるように、合成されたすべてのポリイミドのTgは297℃以上で現れ、実施例1の場合、500℃まではTgが表われなかった。また、合成されたポリイミドは、大韓民国登録特許公報第10-0600449号の実施例に示すいずれかのトリフルオロメチル基を含むジアミン単量体(参照式4)を用いて作られたポリイミドよりも高いTgを示した。これは、二つのトリフルオロメチル基がエーテルの接続の自由度を妨げることにより、ポリイミド鎖の強直が増加したためである。
【0121】
また、TGAの結果から、イミド化が完全に進行されたポリイミドは優れた熱安定性を有し、実施例1の場合、イミド化が完全に行われていなかったため、比較的低い熱安定性を示す。しかし、イミド化が完全に進行された実施例1-1の場合、他のポリイミドに比べて最も優れた熱安定性を示す。また、大韓民国登録特許公報第10-0600449号の実施例と比較して、トリフルオロメチル基が一つ増えたにも拘わらず、熱膨脹係数の大きい増加は見られない。
【0122】
[参照化学式4]
【0123】
ポリイミドの溶解度
【表2】
【0124】
*溶解性:++常温でよく溶ける、+加熱したとき溶ける、+-部分的に溶ける、-S膨れ上がり、-溶けない。
NMP:N-メチルピロリドン
DMAc:N、N-ジメチルアセトアミド
DMF:N、N-ジメチルホルムアマイド
DMSO:ジメチルスルホキシド
THF:テトラヒドロフラン
EA:酢酸エチル
【0125】
表2の結果から分かるように、実施例1を含むすべてのポリイミドは、室温で極性溶剤であるNMP、DMAc、DMF、DMSO、m-クレゾール、アニソール、THFに優れた溶解性を示した。これは、トリフルオロメチル基の立体効果だけでなく、電子求引効果、低分極率による鎖間の凝集力を減少させ、ポリイミド鎖間の相互作用を低下させるからである。実施例4と5は、クロロホルムにも良好な溶解性を見せ、実施例1と5は、EAとアセトンにも良好な溶解性を示した。その中で、フッ素の含有量が最も高い実施例5は、ポリイミド鎖間の相互作用が最も大きく妨害されたため、合成されたすべてのポリイミドの中で最も優れた溶解性を示した。これは、本発明に係るポリイミドはイミド化が進んだ後でも、有機溶媒に対する溶解度が十分で加工性に優れた有用な重合体を提供することになる。
【0126】
表1と表2の結果から分かるように、トリフルオロメチル基が非対称的に導入されているジアミン化合物を使用して、[反応式3]に基づく工程によって製造されるポリイミドは、耐熱性と熱膨脹係数の低下がなく、優れた溶解性を示すが、これは本発明に係るポリイミドがツリーフルオロメチル基が導入され、強直な構造を有するにもかかわらず、上記のトリフルオロメチル基の立体効果と誘導効果、全体的な非対称的な構造でいくつかの相互作用が抑制されることで、可用性のポリマーを提供することになる。
【0127】
ポリイミドフィルムの屈折率
【表3】
【0128】
*上記の表で表示されるものは、次のことを意味する
a:水平方向の屈折率、b:垂直方向の屈折率、c:平均屈折率、d:複屈折率、e:平均屈折率をもとに計算した誘電常数(ε=1.10Nav2
【0129】
表3に示すように合成されたポリイミドはイミドの直立した平面構造にもかかわらず、すべての場合に、低屈折率と共に低い複屈折率を示す。これは、2つの巨大ツリーフルオロメチル基がポリイミド鎖間の相互作用を妨害するだけでなく、ポリマーに含有されるフッ素原子の低い分極性(polarizability)のためであり、これにより本発明のポリイミドは、電気電子、光学用材料として有用であるに使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、二つの置換基を非対称構造として含むジアミン化合物およびその製造方法、それを用いた高分子材料に関するものであり、前記高分子材料は、優れた物性を持ち、電気、電子用または光学用材料物質として適用することができ、産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9