(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
レーザ光による金属粉末焼結積層造形法においては、造形テーブル上に金属材料粉体を均一に撒布して材料粉体層を形成し、材料粉体層の所定箇所にレーザ光を照射して焼結させることによって焼結層を形成し、この焼結層の上に金属材料粉体を均一に撒布して新たな材料粉体層を形成し、その新たな材料粉体層にレーザ光を照射して焼結させることによって下の焼結層と接合した新たな焼結層を形成し、そしてこれらを繰り返すことによって、複数の焼結層を積層して一体となる焼結体からなる所望の三次元造形物を形成する。
【0003】
金属材料粉体をレーザ光によって焼結する場合は、金属材料粉体を変質させないように保護するとともに、所要のエネルギのレーザ光を安定して照射できるようにするために、所定の造形領域の周囲を可能な限り酸素が存在しない状態に維持することが要求される。そのため、レーザ光による金属粉末焼結積層造形法を実施するための積層造形装置は、密閉されたチャンバ内に窒素ガスのような不活性ガスを供給し、チャンバ内において酸素濃度が十分に低い雰囲気下で所定の照射領域にレーザ光を照射することができるように構成されている。
【0004】
金属材料粉体にレーザ光を照射して焼結させるときに、ヒュームと称される特有の煙が発生する。ヒュームがチャンバ内に充満すると、レーザ光を遮蔽して、所要のエネルギのレーザ光が焼結部位に届かなくなり、焼結不良が発生するおそれがある。そのため、特許文献1に開示されるように、ヒュームがレーザ光を遮蔽しないように、チャンバ内からヒュームを含む不活性ガスを排出しながら、チャンバ内に清浄な不活性ガスを供給する積層造形装置が知られている。特許文献1の発明によると、チャンバに供給される清浄な不活性ガスによりチャンバ内の汚れた不活性ガスを押し出して不活性ガスの流れを形成することによって、所要のエネルギのレーザ光の照射に影響がない程度にヒュームをチャンバの外に排出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不活性ガス給排装置は、チャンバに設けられている複数の供給口と複数の排出口を通して不活性ガスを循環させている。不活性ガス給排装置の最大供給量を超える流量で不活性ガスが供給されると、供給される不活性ガスの濃度が低下して、チャンバ内の酸素濃度が許容値を上回る。不活性ガス給排装置の最大供給量は、実用上の限界がある。
【0007】
所望の形状を有する三次元造形物を所定の高さで分割してなる複数の分割層のそれぞれの分割層におけるレーザ光の照射面積が大きくなるほど同一の照射条件における焼結時間がより長くなって発生するヒュームの量も増加する。そのため、ヒュームの発生量が不活性ガス給排装置で除去できる除去量を上回り、次の分割層において材料粉体層を形成しレーザ光を照射するまでの間にヒュームを除去しきれない場合がある。特に、チャンバの容量が不活性ガス給排装置の最大供給量に対して相対的に大きくなると、チャンバ内のヒュームで汚染されている不活性ガスの排出量が不足して、残留するヒュームがチャンバの側壁面に沿って上昇し、チャンバの上側に設けられている排出口から排出しきれないヒュームがレーザ光の照射経路を横切る方向に流れてチャンバ内に滞留する。
【0008】
そのため、ヒュームが所要のエネルギのレーザ光の照射に影響を与えない程度十分に排出されるまでの間、レーザ光の照射を休止する必要がある。例えば、焼結層を1層形成する毎に待機時間を設け、次の焼結層の形成の開始を前記待機時間分遅延させる。このとき、十分な長さの待機時間を設定し、前記待機時間中にヒュームの除去を行えば、ヒュームの除去を十分に行うことができる。しかしながら、任意の形状の三次元形状物を生成するときは、各分割層の間で照射面積が大きく異なることがあるので、発生するヒュームの発生量も各焼結層毎に異なる。したがって、複数の分割層中で最もヒュームの残留量が多くなる場合を基準にして待機時間を一定にすることは、造形サイクルにおいて不必要に余計な時間を要し、所望の三次元造形物を生成するまでに要する全体の造形時間が許容できないほど長くなるおそれがある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、各分割層毎に所要のエネルギのレーザ光の照射に影響しなくなるまでヒュームを除去するために必要な適する待機時間の間、レーザ光の照射の開始を遅延させながら所望の三次元造形物を生成することができるようにされた積層造形装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、密閉されたチャンバ内において所望の形状を有する三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の分割層の各分割層毎に金属材料粉体を均一に撒布して形成される材料粉体層上の所定の照射領域にレーザ光を照射して焼結層を形成するレーザ照射装置と、前記チャンバ内が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように前記チャンバに不活性ガスを供給するとともに前記レーザ光の照射によって発生したヒュームで汚染された不活性ガスを前記チャンバの外に排出する不活性ガス給排装置と、前記分割層毎に最上層の焼結層を形成する
焼結工程を完了してから前記不活性ガス給排装置の不活性ガスの供給能力に対応して所要のエネルギの前記レーザ光の照射に影響を与えない
、焼結不良が発生しない程度
に前記ヒューム
が除去されるまでの前記焼結時間に対して比例的に増減する前記チャンバ内のヒュームの残留量に応じた待機時間が経過した後に前記レーザ照射装置に対し前記レーザ光の照射開始指令を行う制御装置と、を備え
、前記制御装置は、前記焼結層の形成に要した焼結時間を取得する焼結時間取得部または前記焼結層における照射面積を取得する照射面積取得部と、前記焼結層毎にテスト加工によって得られる焼結時間または照射面積に対応する待機時間の複数のデータに基づいて前記取得した焼結時間または照射面積に応じた前記所要の待機時間を算出する待機時間算出部と、を有する積層造形装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る積層造形装置においては、制御装置は、各分割層毎にチャンバ内のヒュームの残留量に応じて所要のエネルギのレーザ光の照射に影響がなくなるまでヒュームを除去するために要求される適する待機時間が経過した後にレーザ照射装置に対し次の焼結工程のレーザ光の照射開始指令を行う。そのため、必要十分にチャンバ内に残留するヒュームを排出してから不必要に余計な時間を要することなく次の焼結工程を開始し、常時所要のエネルギのレーザ光を安定して照射することができる。
【0012】
また、特に、本発明において、ヒュームの残留量と間に相関関係を有する最上層の焼結層において焼結に要した焼結時間または最上層の焼結層における照射面積に応じて待機時間を算出するようにした場合は、より容易に適する待機時間を得ることができる。
【0013】
また、本発明において、レーザ光のスポット径、出力または走査速度に応じて待機時間を補正し再算出するようにした場合は、より適する待機時間を設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される複数の各構成部材における変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
【0016】
本発明においては、積層造形の各工程について、それぞれ、造形テーブル5上に金属材料粉体を均一に撒布して材料粉体層8を形成する工程をリコート工程、材料粉体層8の所定箇所にレーザ光Lを照射して焼結させることによって焼結層50を形成する工程を焼結工程、各分割層49毎にチャンバ1内のヒューム25の残留量に応じて所要のエネルギのレーザ光Lの照射に影響がなくなるまでヒューム25を除去するために要求される適する待機時間に従って次の焼結工程のレーザ光Lの照射の開始を遅延させる工程を遅延工程、複数層の焼結層50を形成する度に焼結層50に対してスピンドルヘッドに装着された回転切削工具によって切削加工を行う工程を切削工程という。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態の積層造形装置10は、実質的に密閉されたチャンバ1内に粉体層形成装置3と駆動装置52が設けられる。駆動装置52は、ベッド51上に配置される。粉体層形成装置3とベッド51は、ベース54上に配置される。チャンバ1は、前チャンバ1fと後チャンバ1rに分かれており、前チャンバ1f内に造形室1dが設けられ、後チャンバ1r内に駆動室1eが設けられる。造形室1dと駆動室1eは、伸縮可能なX軸蛇腹53で仕切られる。造形室1dと駆動室1eとの間には、不活性ガスが通過できるだけのわずかな隙間である連通部が存在している。
【0018】
駆動装置52は、造形室1d内に配置される加工ヘッド57をY軸方向に移動させるY軸駆動装置52bと、Y軸駆動装置52bをX軸方向に移動させるX軸駆動装置52aで構成される。加工ヘッド57は、図示しないスピンドルヘッドと、これをZ軸方向に移動させるZ軸駆動装置を備える。スピンドルヘッドは、エンドミルなどの回転切削工具を装着して回転させることができるように構成されている。以上の構成によって、加工ヘッド57は、スピンドルヘッドを造形室1d内の任意の位置に移動させて、後述する焼結体50に対して切削加工を施すことができるようになっている。この回転切削工具を用いて、所定数の焼結層50が形成される度に、焼結層50に対して切削加工を行ってもよい。また、リコータヘッド11が焼結層50の隆起部に衝突したときにも、隆起部を除去するために焼結層50に対して切削加工を行ってもよい。
【0019】
図2および
図3に示すように、前チャンバ1f内に粉体層形成装置3が設けられる。粉体層形成装置3は、造形領域Rを有するベース台4と、ベース台4上に配置されかつ水平1軸方向(矢印B方向)に移動可能に構成されたリコータヘッド11と、リコータヘッド11の移動方向に沿って造形領域Rの両側に設けられた細長部材9r,9lとを備える。造形領域Rには、上下方向(矢印A方向)に移動可能な造形テーブル5が設けられる。積層造形装置の使用時には、造形テーブル5上に造形プレート7が配置され、その上に材料粉体層8が形成される。
【0020】
リコータヘッド11は、
図4および
図5に示すように、材料収容部11aと、材料収容部11aの上面に設けられた材料供給部11bと、材料収容部11aの底面に設けられかつ材料収容部11a内の金属材料粉体を排出する材料排出部11cとを備える。材料排出部11cは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に延びるスリット形状である。リコータヘッド11の両側面には、材料排出部11cから排出された金属材料粉体を平坦化して材料粉体層8を形成するスキージングブレード11fb,11rbが設けられる。また、リコータヘッド11の両側面には、金属材料粉体の焼結時に発生するヒューム25を吸引するヒューム吸引部11fs,11rsが設けられる。ヒューム吸引部11fs,11rsは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に沿って設けられる。金属材料粉体は、例えば平均粒径20μmの球形をなす鉄粉などの金属粉である。
【0021】
細長部材9r,9lにはそれぞれリコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に沿って開口部9ra,9laが設けられる。これらの開口部9ra,9laの一方が不活性ガス供給口として利用され、他方が不活性ガス排出口として利用されることによって、造形領域R上に矢印A方向の不活性ガスの流れができるので、造形領域Rで発生したヒューム25がこの不活性ガスの流れに沿って容易に排出される。なお、本明細書において、不活性ガスとは、金属材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが例示される。
【0022】
前チャンバ1fの上方にはレーザ照射装置13が設けられ、レーザ照射装置13から出力されたレーザ光Lは、前チャンバ1fに設けられたウィンドウ1aを透過して造形領域Rに形成された材料粉体層8に照射される。レーザ照射装置13は、前チャンバ1f内において所望の形状の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の分割層49の各分割層49毎に金属材料粉体を均一に撒布して形成される材料粉体層8上の所定の照射領域45に所要のエネルギのレーザ光Lを照射して焼結層50を形成する。レーザ照射装置13は、造形領域Rにおいてレーザ光Lを二次元走査可能に構成されていればよく、例えば、レーザ光Lを生成するレーザ光源と、レーザ光Lを造形領域Rにおいて二次元走査可能とする一対のガルバノスキャナとで構成される。レーザ光Lは、金属材料粉体を焼結可能なものであればその種類は限定されず、例えば、CO2レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザなどである。ウィンドウ1aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光Lがファイバレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ1aは石英ガラスで構成可能である。
【0023】
前チャンバ1fの上面には、ウィンドウ1aを覆うようにヒューム拡散装置17が設けられる。ヒューム拡散装置17は、
図6および
図7に示すように、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cを備える。筐体17aと拡散部材17cの間に不活性ガス供給空間17dが設けられる。また、筐体17aの底面には、拡散部材17cの内側に開口部17bが設けられる。拡散部材17cには多数の細孔17eが設けられており、不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガス27は細孔17eを通じて清浄空間17fに充満される。そして、清浄空間17fに充満された清浄な不活性ガス27は、開口部17bを通じてヒューム拡散装置17の下方に向かって噴出される。この噴出された清浄な不活性ガス27は、レーザ光Lの照射経路に沿って流れ出てレーザ光Lの照射経路からヒューム25を排除し、ウィンドウ1aがヒューム25によって汚れることを防止する。
【0024】
次に、不活性ガス給排装置の不活性ガス供給系統とヒューム排出系統について説明する。実施形態の不活性ガス給排装置は、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19と、ダストボックス21,23と、ヒューム拡散装置17と、を含んでなる。不活性ガス給排装置は、チャンバ1内が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように不活性ガスを供給するとともに、レーザ光Lの照射によって発生したヒューム25によって汚染された不活性ガスをチャンバ1の外に排出する。
【0025】
チャンバ1への不活性ガス供給系統には、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19が接続されている。不活性ガス供給装置15は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、周囲の空気から窒素ガスを取り出す膜式窒素セパレータを備える装置である。ヒュームコレクタ19は、その上流側及び下流側にそれぞれダクトボックス21,23を有する。前チャンバ1fから排出されたヒューム25を含む不活性ガスは、ダクトボックス21を通じてヒュームコレクタ19に送られ、ヒュームコレクタ19においてヒューム25が除去された不活性ガスがダクトボックス23を通じて前チャンバ1fへ送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。
【0026】
チャンバ1への不活性ガス供給系統は、
図1および
図2に示すように、前チャンバ1fの上部供給口1bと、後チャンバ1rの供給口1gと、ヒューム拡散装置17の不活性ガス供給空間17dと、細長部材9rにそれぞれ接続される。上部供給口1bを通じて前チャンバ1fの造形室1d内に不活性ガスが充填される。細長部材9r内に供給された不活性ガスが開口部9raを通じて造形領域R上に排出される。また、後チャンバ1r内に供給された不活性ガスは、造形室1dと駆動室1eとの間の連通部を通じて造形室1d内に供給される。
【0027】
ヒューム排出系統は、
図1、
図2、
図3および
図4に示すように、前チャンバ1fの上部排出口1cと、リコータヘッド11のヒューム吸引部11fs,11rs、及び細長部材9lにそれぞれ接続される。上部排出口1cを通じて前チャンバ1fの造形室1d内の、ヒューム25を含む不活性ガスが排出されることによって、造形室1d内に上部供給口1bから上部排出口1cに向かう不活性ガスの流れが形成される。リコータヘッド11のヒューム吸引部11fs,11rsは、リコータヘッド11が造形領域R上を通過する際に造形領域Rで発生したヒューム25を吸引することができる。また、細長部材9lの開口部9laを通じてヒューム25を含む不活性ガスがチャンバ1外に排出される。ヒューム排出系統は、ダクトボックス21を通じてヒュームコレクタ19に接続されており、ヒュームコレクタ19においてヒューム25が取り除かれた後の不活性ガスが再利用される。
【0028】
次に、前記積層造形装置における焼結層50の形成方法について説明する。以下の説明では、少なくとも、レーザ光Lのスポット径、出力、走査速度は、操作者によって任意に設定変更可能なレーザ光Lの照射条件に含まれる。また、本発明では、レーザ光Lの照射条件と走査経路、および切削加工の切削条件と工具軌跡と、を含んだ積層造形装置をプログラム運転するための造形プログラムのデータを造形データという。
【0029】
まず、
図8に示すように、CAM(コンピュータ支援製造)装置64において、所望の三次元造形物46をコンピュータ上でモデル化した三次元造形物のモデル47を作成し、このモデル47を所定単位高で水平面で分割して分割層49a,49b,49c,49d,49e,49fを形成する。複数の分割層49のそれぞれ輪郭形状で囲まれた領域が、レーザ光Lを照射すべき照射領域45a,45b,45c,45d,45e,45fである。CAM装置64は、照射領域45の全体に渡ってレーザ光Lが照射されるような走査経路を算出するとともに、適正なレーザスポット径、レーザ出力およびレーザ走査速度を算出し、造形データを積層造形装置の制御装置61に出力する。なお、実施形態の積層造形装置では、所望の三次元造形物46を所定単位高で等分割しているが、本発明においては、分割層49の厚さが常に同じである必要はなく、所定高さが分割層49によって異なる場合を含む。
【0030】
制御装置61は、具体的に、分割層49毎にヒューム25の残留量に応じてヒューム25を所要のエネルギのレーザ光Lの照射に影響を与えない
で焼結不良が発生しない程度まで除去するために要求される待機時間が経過した後にレーザ照射装置13に対し次の焼結工程のレーザ光Lの照射開始指令を行う。特に、実施形態の制御装置61は、まず、分割層49毎にそのときの最上層の焼結層50において、不活性ガス給排装置の不活性ガスの供給能力(最大供給量)に対応してヒューム25の残留量を比例的に増減させる焼結時間から待機時間を算出する。そして、制御装置61は、待機時間が経過した後にレーザ照射装置13に対し次の分割層49の焼結工程におけるレーザ光Lの照射開始を指令する。
【0031】
積層造形装置は、CAM装置64よって作成された造形データに基づいてレーザ光Lを材料粉体層8に対して照射することによって、金属材料粉体を選択的に焼結させて、分割層49a,49b,49c,49d,49d,49fに対応した形状を有する焼結層50a,50b,50c,50d,50d,50fを形成するとともに、それぞれの焼結層50を互いに融合させ、所望の三次元造形物46を形成する。
【0032】
次に、
図9および
図10に基づき、焼結層50を1層形成する毎に行う遅延工程について説明する。
【0033】
図9に示すように、実施形態の積層造形装置の制御装置61は、演算装置62と、待機時間を算出するための待機時間データベース63とを備える。制御装置61は、前記に示した方法のとおり、CAM装置64において生成された造形データを受信し、この造形データに基づいて積層造形の制御を行う。具体的に、待機時間データベース63には、あらかじめ各々の焼結時間に応じて、ヒューム25を十分に除去するために適する待機時間のデータが格納される。待機時間データベース63における焼結時間に対応する待機時間の複数のデータは、テスト加工によって得ることができる。制御装置61は、直前の焼結工程の完了と共に、待機時間のカウントを開始する。このとき、待機時間は、リコート工程に要する時間よりも短く設定されることがある。その場合は制御装置61は、リコート工程の完了時に直ちに次の焼結工程に移行するよう積層造形の制御を行う。
【0034】
ここで
図10に示すように、まず、制御装置61の演算装置62の焼結時間取得部71が、直前の焼結工程において、焼結層50の形成に要した時間である焼結時間を内部カウンタによって計測して取得する(ステップS1)。
【0035】
次に、演算装置62の待機時間算出部72は、待機時間データベース63を参照し、前記焼結時間に応じた待機時間を取得する(ステップS2)。このとき、待機時間データベース63の中に焼結時間取得部71が取得した焼結時間と一致するデータが存在しない場合は、取得した焼結時間よりも短く最も近い焼結時間のデータと、取得した焼結時間よりも長く最も近い焼結時間のデータとを検索し、抽出した2つの焼結時間の比例式により待機時間を得る。例えば、取得した焼結時間をt、待機時間データベース63内に格納されたデータにおけるtよりも短く最も近い焼結時間をt1、tよりも長く最も近い焼結時間をt2、t,t1,t2における適する待機時間をそれぞれx,u1,u2とおけば、所望の待機時間xは下記の通り表わせる。
【0037】
そして、制御装置61は、前記待機時間が経過するまでレーザ照射装置13に対しレーザ光Lの照射開始指令を行わない(ステップS3)。なお、待機時間の起算はステップS2の完了時から行うが、ステップS1およびS2は瞬時に行われるため、実質的な起算点は直前の焼結工程の完了時点である。
【0038】
前記待機時間が経過したと判断されると(ステップS4)、制御装置61は、レーザ照射装置13に対し、次の焼結工程におけるレーザ光Lの照射開始指令を行う(ステップS5)。
【0039】
制御装置61は、焼結工程を1回終える毎にステップS1からステップS5までの遅延工程を行う。所要のエネルギのレーザ光Lの照射に直接影響を与えるチャンバ1内のヒューム25の残留量またはチャンバ1内のヒューム25による汚染状態を直接測定することが難しいので、この実施形態の積層造形装置によると、適する待機時間を比較的容易に得ることができる利点がある。
【0040】
実施形態の積層造形装置は、待機時間データベース63によって焼結時間から待機時間を取得するようにしているが、待機時間がヒューム25の残留量に応じて比例的に増減するものであって、ヒューム25の残留量が焼結時間に応じておおよそ比例的に増減するものであることから、待機時間データベース63によって待機時間を算出する方式に代えて、テスト加工によって得ることができる焼結時間と待機時間の複数の測定データから生成される種々の近似法に基づく近似式、例えば、最小二乗法に基づく近似式によって待機時間を算出するように変形することができる。なお、近似式で待機時間を算出するようにする場合、造形を繰り返すたびに測定データを累積記録して測定データを蓄積していき、蓄積された測定データに基づいて近似式を作り直すことによって、待機時間の精度を向上させるようにすることができる。
【0041】
ここで、一連の積層造形の工程について、より詳細に説明する。
【0042】
まず、1回目のリコート工程を行う。
図11に示すように、造形テーブル5上に造形プレート7を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する。この状態で材料収容部11a内に金属材料粉体が充填されているリコータヘッド11を矢印B方向に造形領域Rの右側から左側に移動させることによって、造形テーブル5上に、例えば、
図8に示される分割層49aにおける1層目の材料粉体層8aを形成する。
【0043】
次に、1回目の焼結工程を行う。
図8に示される材料粉体層8a中の所定の照射領域45aにレーザ光Lを照射し、材料粉体層8aのレーザ光照射部位を焼結させることによって、
図8および
図11に示すように、1層目の焼結層50aを得る。このとき、制御装置61は、焼結層50aを形成するために要した時間を計測している。
【0044】
1回目の遅延工程は、1回目の焼結工程の完了と同時に開始する。具体的には、すでに説明されているステップS1からステップS5で示されている方法のとおり、1回目の焼結工程に要した焼結時間に応じて、所定の待機時間が経過するまでの間、2回目の焼結工程の開始を遅延させる。待機時間は1回目の焼結工程の完了と同時にカウントを開始する。制御装置61は、レーザ照射装置13に焼結工程を開始させる制御信号を出力したら、内部カウンタに保持されている焼結時間をリセットするとともに、次の焼結時間のカウントを開始する。
【0045】
2回目のリコート工程は、1回目の遅延工程の開始と同時または直後に開始され、1回目の遅延工程と2回目のリコート工程は平行して行われる。
図12に示すように、造形テーブル5の高さを材料粉体層8の1層分下げ、リコータヘッド11を造形領域Rの左側から右側に移動させることによって、焼結層50aを覆うように造形テーブル5上に2層目の材料粉体層8bを形成する。好ましくは、リコータヘッド11が焼結層50の隆起部に衝突したときは、隆起部を除去するために焼結層50に対して切削加工を行う。
【0046】
もし2回目のリコート工程の完了時に、取得した待機時間が既に経過していれば、直ちに2回目の焼結工程に移行する。
【0047】
1回目の遅延工程と2回目のリコート工程の両方が完了した後に、前記に示した方法のとおり、材料粉体層8b中の所定の照射領域45bにレーザ光Lを照射し、照射領域45bを焼結させることによって、
図8に示すように2層目の焼結層50bを得る。
図13に示すように、以上の工程を繰り返すことによって、3層目の焼結層50c、4層目の焼結層50d、5層目以降の焼結層50とが順次形成される。上下に隣接する焼結層50は、互いに強く固着される。
【0048】
好ましくは、三次元造形物46の表面精度を高める等の目的で、複数層の焼結層50を形成する度に、焼結層50に対して、スピンドルヘッドに装着された回転切削工具によって切削加工を行う切削工程を実施する。既述のとおり、CAM装置64から出力される造形データには、この切削加工のための回転切削工具の種類、回転速度、および送り速度等の切削条件、あるいは工具軌跡等の設定値も含まれる。
【0049】
リコート工程、焼結工程および遅延工程においては、前記に示した方法のとおり、不活性ガスの給排出により、チャンバ1内のヒューム25の除去を行う。切削工程においては、金属材料粉体が不活性ガスの層流によって巻き上げられるのを防ぐために、ヒューム25の除去が停止される。リコータヘッド11が焼結層50の隆起部に衝突したときに行われる切削加工時も同様にヒューム25の除去が停止される。
【0050】
一般に、照射面積が大きくなる程、焼結時間も長くなる。最上層の焼結層50において焼結に要した焼結時間とヒューム25の発生量に相関関係があるのと同様、最上層の焼結層50における照射面積とヒューム25の発生量にも相関関係がある。ゆえに、前記実施形態では待機時間算出部72は、焼結時間を基に待機時間を算出したが、代わりに照射面積に応じて前記待機時間を算出してもよい。このとき演算装置62は、焼結時間取得部71に代えて照射面積取得部を備える。照射面積取得部は、CAM装置64で生成される造形データに含まれる走査経路または輪郭形状のデータから計算して求めるか、または、図示しないCAD装置で生成されているソリッドデータの照射領域45の面積を参照し、照射面積を取得する。
【0051】
また、焼結工程で発生するヒューム25の量は、レーザ光Lのスポット径、出力および走査速度によっても変化する。ゆえに前記待機時間にレーザ光Lのスポット径、出力および走査速度による補正をかければ、より最適な待機時間が求められる。レーザ光Lのスポット径、出力および走査速度のデータは、CAM装置64から積層造形装置の制御装置61に送られる造形データに含まれているので、それを参照すればよい。
【0052】
以上のとおり、実施形態の積層造形装置によると、各分割層49毎にそれぞれヒューム25の残留量に密接に関係する焼結時間、あるいは照射面積に応じて、次の分割層49における金属材料粉体をリコートする時間を含めて所要のエネルギのレーザ光Lの照射に影響がなくなるまでヒューム25が排出される適する待機時間の間、レーザ光Lの照射を開始することを遅延させることができるので、各分割層49毎に不必要に時間を多くかけることなく、各焼結工程で所要のエネルギのレーザ光Lを安定して照射することができ、良好な三次元造形を実施することができる。
【0053】
とりわけ、実施形態の積層造形装置のように、スピンドルヘッドを移動させる駆動装置52が収容される駆動室1eを備える切削加工を行なうことができる積層造形装置においては、ヒューム25が十分に排出されるまでの時間がより長くなることから、全体の造形時間の増長を小さく抑える点で、より効果的である。
【0054】
本発明は、すでにいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形ないし応用が可能である。
【解決手段】密閉されたチャンバ1内において所望の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の各分割層毎に金属材料粉体を均一に撒布して形成される材料粉体層8上の所定の照射領域にレーザ光Lを照射して焼結層を形成するレーザ照射装置13と、チャンバ内1が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているようにチャンバ1に不活性ガスを供給するとともにヒュームを前記チャンバの外に排出する不活性ガス給排装置15と、所要のエネルギのレーザ光Lの照射に影響を与えない程度までチャンバ1内のヒュームの残留量に応じた待機時間が経過した後にレーザ照射装置13に対しレーザ光Lの照射開始指令を行う制御装置と、を備えた積層造形装置。