特許第5948501号(P5948501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5948501殺菌剤含有水に対するポリオレフィン組成物の耐性を向上させるための酸捕捉剤の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948501
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】殺菌剤含有水に対するポリオレフィン組成物の耐性を向上させるための酸捕捉剤の使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20160623BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20160623BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160623BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20160623BHJP
   C08K 5/5393 20060101ALI20160623BHJP
   C08K 5/1545 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   C08L23/02
   C08K7/00
   C08K3/22
   C08K5/098
   C08K5/5393
   C08K5/1545
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-524653(P2015-524653)
(86)(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公表番号】特表2015-523449(P2015-523449A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】EP2013001692
(87)【国際公開番号】WO2014063762
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年2月3日
(31)【優先権主張番号】12007305.1
(32)【優先日】2012年10月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】ヤルトバリ、トマス
(72)【発明者】
【氏名】アウダーケルク、ヨルン
(72)【発明者】
【氏名】コスタ、フランシス
(72)【発明者】
【氏名】トラン、アン・トゥアン
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−121537(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/101091(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02199330(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00124664(EP,A1)
【文献】 特表2003−524049(JP,A)
【文献】 特開2001−081252(JP,A)
【文献】 特開平11−228957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素含有水に対するポリオレフィン組成物の耐性を向上させるための、層状複水酸化物(LDH)、金属酸化物、乳酸金属塩およびステアロイル−2−乳酸金属塩から選択される酸捕捉剤の使用であって、
前記酸捕捉剤が、前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.025〜0.750重量%の、次式(I):
【化1】
(式中、
、RおよびRは、独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、
、XおよびXは、独立に、HまたはOHであり、但し、X、XおよびXの少なくとも1つはOHである)に従う少なくとも1種の酸化防止剤(A)と、
前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.025〜0.300重量%の、次式(II):
−P(OAr) (II)
(式中、OArは、式(II.A):
【化2】
(式中、
は、ヘテロ原子を含んでいてもよい、無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、
、R、R、RおよびRは、独立に、水素原子であるかまたはヘテロ原子を含んでいてもよい無置換もしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基である)に従う)を有する酸化防止剤(B)、
前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.010〜0.200重量%の、次式(III):
【化3】
(式中、
11、R12、R13、R14およびR15は、独立に、Hであるかまたはヘテロ原子を含んでいてもよい無置換もしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基である)に従う酸化防止剤(C)、ならびに
前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.025〜0.300重量%の、次式(IV):
【化4】
(式中、
21およびR22は、それぞれ、同一であるかまたは異なる、少なくとも6個の炭素原子を有する基である)に従う酸化防止剤(D)
から選択される少なくとも1種の酸化防止剤と
組み合わせて使用される、酸捕捉剤の使用
【請求項2】
前記酸捕捉剤が、ハイドロタルサイトである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
酸捕捉剤の量が、前記ポリオレフィン組成物の0.05〜1.5重量%である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリオレフィン組成物中のポリマー成分全体(「ベース樹脂」)が前記ポリオレフィン組成物全体の少なくとも90重量%を構成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ベース樹脂がエチレンホモポリマーもしくはコポリマーまたはプロピレンホモポリマーもしくはコポリマーを含む、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
エチレンホモポリマーまたはコポリマーおよびプロピレンホモポリマーまたはコポリマーの総量が前記ベース樹脂の少なくとも80重量%である、請求項4または5に記載の使用。
【請求項7】
前記ポリオレフィン組成物が、管、継手、テープ、フィルム、シートまたは容器等の物品の形態にある、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記物品が管である、請求項に記載の使用。
【請求項9】
二酸化塩素含有水を輸送するための方法であって、ポリオレフィン組成物を含む管を介して前記水を搬送するステップを含み、前記ポリオレフィン組成物が、層状複水酸化物(LDH)、金属酸化物、乳酸金属塩およびステアロイル−2−乳酸金属塩から選択される酸捕捉剤を含み、
前記酸捕捉剤が、前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.025〜0.750重量%の、次式(I):
【化5】
(式中、
、RおよびRは、独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、
、XおよびXは、独立に、HまたはOHであり、但し、X、XおよびXの少なくとも1つはOHである)に従う酸化防止剤(A)と、
前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.025〜0.300重量%の、次式(II):
−P(OAr) (II)
(式中、OArは、式(II.A):
【化6】
(式中、
は、ヘテロ原子を含んでいてもよい、無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、
、R、R、RおよびRは、独立に、水素原子であるかまたはヘテロ原子を含んでいてもよい無置換もしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基である)に従う)を有する酸化防止剤(B)、
前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.010〜0.200重量%の、次式(III):
【化7】
(式中、
11、R12、R13、R14およびR15は、独立に、Hであるかまたはヘテロ原子を含んでいてもよい無置換もしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基である)に従う酸化防止剤(C)、ならびに
前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.025〜0.300重量%の、次式(IV):
【化8】
(式中、
21およびR22は、それぞれ、同一であるかまたは異なる、少なくとも6個の炭素原子を有する基である)に従う酸化防止剤(D)
から選択される少なくとも1種の酸化防止剤と
組み合わせて使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤含有水に対するポリオレフィン組成物の耐性を向上させるための酸捕捉剤の使用に関する。さらに本発明は、殺菌剤含有水を輸送するための方法であって、この水を、酸捕捉剤を含有するポリオレフィン組成物を含む管を介して搬送するステップを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリマーの製造および加工が進歩したことにより、現代の日常生活における事実上あらゆる局面にプラスチックが使用されるようになった。ポリオレフィンは多くの用途に用いられており、飲料水配水系用の管、継手または貯蔵容器の作製にも使用されている。以下の開示内容においては、特に明記しない限り、管に付与される全ての特性および作用は継手および貯蔵容器にも付与される。人間が飲用するための飲料水に十分な品質を確保するために、殺菌が行われる場合が多い。殺菌とは、病原性微生物を除去、不活化または殺滅することを意味する。
【0003】
感染症の拡大を防ぐための水処理において塩素を殺菌剤として使用することは知られている。
【0004】
ポリオレフィン等の多くのポリマーを含む材料のほとんどは塩素処理された水の影響を受ける可能性があることも知られている。実験室における加圧試験の結果および現場での経験から、水中の塩素濃度が高くなるとポリオレフィン管の早期脆性破壊が起こる可能性があることが分かっている。
【0005】
飲料水系統に用いられる殺菌剤の有効な代替品に二酸化塩素(ClO)がある。二酸化塩素は塩素よりも強力な酸化剤であり、ハロゲン化された副生成物を生成しない。これは水中で加水分解しないが、溶解した気体として溶液中に残留する。ポリオレフィン樹脂の寿命は、塩素を含有する水中よりも二酸化塩素を含有する水中の方が短くなることが分かっている。したがって、塩素に耐性を示すポリオレフィン樹脂が二酸化塩素に対する耐性も示すというわけではない。
【0006】
それでもやはり、二酸化塩素含有水も同様に、ポリマー材料と絶えず接触し続ける。ポリマー材料の内面と接触し続けることにより、ポリオレフィン組成物の劣化を引き起こす。
【0007】
管用ポリオレフィン組成物に使用されている、塩素処理水に対する十分な耐性を付与することが知られている添加剤が、必ずしも二酸化塩素含有水に対する十分な耐性を付与するわけではないことが分かっている。したがって、塩素含有水から十分に保護することに加えて、ClO含有水に対しても十分な保護作用を示す、より有効な添加剤が依然として求められている。そうすることにより、例えば、このような添加剤を含むポリオレフィン組成物から作製された、管、継手または貯蔵容器等の物品の寿命を延ばすことが可能になる。
【0008】
ポリオレフィン組成物中に添加剤を存在させることに関するさらに重要な事項は、このようなポリオレフィン組成物から作製された管等を介して輸送される媒体中に添加剤が混入することを防ぐという目的にある。管が飲料水の輸送用である場合は特にこのことが重要になる。一般的に言えば、管中から輸送されている水中へと抽出される可能性のある酸化防止剤の量を低減するためには、添加剤を可能な限り低濃度で使用することが好ましい。さらに、これに関連して、管中から輸送されている水中へ抽出されにくい添加剤を使用することが望ましい。
【0009】
飲料水が含有することができる有害な化合物の許容量は法律上の要件によって定められており、いわゆる「欧州認証制度(European acceptance scheme)」の導入により、この要件が一層厳しくなることが予想されている。
【0010】
ポリオレフィン系材料に添加される安定剤や改質剤等の添加剤の移行挙動は、ポリマーマトリクス中における分子の拡散速度、添加剤の化学的安定性、添加剤の分解物の種類等の様々な特性に応じて異なる。一例を挙げると、特定の添加剤化合物は化学的安定性が改善されている可能性があり、それによって移行挙動が好ましいものになる。他方、これよりも安定性の低い他の添加剤化合物は、ポリマーマトリクス中で容易に拡散する化合物に分解する可能性があり、それによって移行挙動に悪影響が及ぼされる。さらに、移行挙動を改善するためにポリマーマトリクスの安定性を犠牲にしてはならないということを考慮しなければならない。
【0011】
一方で、飲料水の品質をさらに改善するために、かつ近い将来、法的要件が一層厳しくなることが予想されることを考えると、高い熱的安定性および化学安定性を有するポリマー材料を提供することは依然として高く評価される。
【0012】
特許文献1には、ポリオレフィン(A);ジホスファイト構造を有する化合物(B);c)フェノール性化合物(C);および任意選択的にd)UV光安定剤(D)を含み、移行した化合物(B)、(C)および(D)(存在する場合)に加えてこれらの分解物の総量が組成物の特定の閾値を下回る組成物が開示されている。この組成物は、組成物試料と接触している水の中へ移行する添加剤の量が低減されている(EN−12873−1に準拠し、室温(23℃)下で、塩素処理されていない水を用いて浸出)。
【0013】
特許文献2は、二酸化塩素含有水による分解に対する耐性に優れ、使用した添加剤およびその分解物、特にフェノールの組成物外への移行が少ないポリオレフィン組成物に関する。このポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンベース樹脂(A);クロマン−6−オール構造を有する酸化防止剤(B);フェノール系構造を有する酸化防止剤(C)を含み、分子全体がエステル基を含まず、ポリオレフィン組成物中の酸化防止剤(C)の含有量が、組成物全体を基準として少なくとも1200ppmである。この組成物は、90℃のClO含有水に対する耐性を示し(ASTM F2263−03に準拠)、水中に移行するフェノール性化合物の量が低減されている(EN−12873−1に準拠、室温(23℃)下)。
【0014】
特許文献3は、使用した添加剤およびその分解物(特にフェノール)の組成物外への移行が少ないポリオレフィン組成物に関し、したがって、この組成物は、特に管用途(例えば、飲料水用)に適している。このポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン(A)、ビタミンE型安定剤(B)およびフェノール系安定剤(C)および任意選択的なUV安定剤(D)を含む。
【0015】
特許文献4は、ClO含有水に起因する劣化に対する耐性が向上しているポリオレフィン組成物およびこの種のポリオレフィン組成物から作製された管であって、ポリオレフィン組成物に使用されている酸化防止剤が、この管で輸送されている水の中に抽出されにくい管に関するものである。このポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンベース樹脂および酸化防止剤を含み、上記ポリオレフィン組成物は、ClO濃度4ppmのClO含有水に対する90℃における耐性を測定する試験(ASTM F2263−03に準拠した装置を使用)による寿命が少なくとも200時間である。
【0016】
殺菌剤として使用した塩素により劣化した管においては、酸化防止剤が塩素との直接反応に消費されることが観測されていた。二酸化塩素を殺菌剤として使用した場合は、管のポリマー材料に対する二酸化塩素の攻撃性が塩素よりもはるかに高くなることが分かった。約1mmの深さまでの酸化防止剤が二酸化塩素によって急速に消費されることが分かった。そうなるとポリマーは無防備な状態のまま、厚さ50〜200μmの層に亘って酸化される。この管に応力が加わると、劣化した材料に微小亀裂が生成することになり、この亀裂は影響を受けていない材料へと移行する。また、亀裂の先端に化学的浸食が起こると、亀裂が材料内に伝搬するであろう。ポリオレフィン組成物の酸化防止剤は、水中に含まれる殺菌剤の攻撃に対し、殺菌剤と接触するポリマーの表面を保護する役割を果たすはずであるが、この酸化防止剤が使い果たされた後は、上記機構により、ポリマー材料の劣化が加速される可能性がある。
【0017】
したがって、管、継手または貯蔵用途に適した改善されたポリオレフィン組成物、特に殺菌剤含有水と接触した際の安定性が向上したポリオレフィン組成物が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1911798A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2199330A1号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2014704A1号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1911799A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、殺菌剤に対する耐性、特に、ポリオレフィン組成物が殺菌剤含有水と絶えず接触する場合の殺菌剤に対する耐性が向上した、管、継手または貯蔵容器等の物品を製造するのに有用なポリオレフィン組成物に使用するための添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、酸捕捉剤を添加剤として使用することによって本発明の目的を達成することができることを発見したことに基づいている。
【0021】
したがって、本発明は、殺菌剤含有水に対するポリオレフィン組成物の耐性を向上するための酸捕捉剤の使用を提供する。
【0022】
本発明における「殺菌剤」とは、塩素および二酸化塩素を指す。
【0023】
驚くべきことに、酸捕捉剤を使用することにより、ポリオレフィン組成物の殺菌剤に対する耐性が大幅に改善されることが見出された。さらに、本組成物から作製された管は耐圧性を保持している、すなわち、酸捕捉剤が存在しても圧力安定性は悪影響を受けていないことも見出された。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】二酸化塩素処理前後のポリオレフィン組成物試験片の表面を示すものである。
図2】二酸化塩素処理前後のポリオレフィン組成物試験片の表面を示すものである。
図3a】実験項に記載する曲げ戻し試験(RBBT)において屈曲させる前の管の240°の扇状体(試験片)の形態を示すものである。
図3b】実験項に記載する曲げ戻し試験(RBBT)において屈曲させた後の管の240°の扇状体(試験片)の形態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述したように、良好な耐塩素性を付与する添加剤が必ずしも良好な耐二酸化塩素性も付与するわけではない。しかしながら、本発明に使用される酸捕捉剤は、塩素含有水のみならず二酸化塩素含有水に対しても良好な耐性を付与する。したがって、好ましくは、殺菌剤は二酸化塩素である。
【0026】
好ましくは、酸捕捉剤は、層状複水酸化物(LDH)、ステアリン酸金属塩、金属酸化物、乳酸金属塩およびステアロイル−2−乳酸金属塩から選択される。
【0027】
層状複水酸化物(LDH)は、正に帯電した層と、その層間領域に位置する、電荷をバランスする陰イオンとの、通常とは異なる形態の層状材料である。固体化学では、負に帯電した層と層間の陽イオンとを有する材料群(例えば、カオリナイト、AlSi(OH))の方がはるかに多いという点で、通常とは異なっている。
【0028】
通常、層状複水酸化物(LDH)は、次式に従う化合物である:
[MII1−xIII(OH)x+(An−x/n・yH
(式中、
IIは、2価の金属イオン、好ましくは、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Fe2+、Zn2+、Cu2+、Ni2+およびCo2+であり、
IIIは、3価の金属イオン、好ましくは、Al3+、Cr3+、Fe3+、Ga3+およびMn3+であり、
n−は、陰イオン、好ましくは、Cl、CO2−、NO、Br、SO2−およびアルキルスルホン酸イオン、アルキルアリールスルホン酸イオン、有機カルボン酸イオン、有機リン酸イオンまたはこれらの混合物、より好ましくは、Cl、CO2−、NO、Br、SO2−またはこれらの混合物であり、
ここで、nは、負電荷の数、例えば、Clの場合はn=1であり、CO2−の場合はn=2であり、通常、nは1〜2の範囲内にあり、
yは、結晶構造を安定化させるのに必要な水分子の数であり、通常、yは、0.25〜4、好ましくは0.5〜4、より好ましくは0.5〜1.0の範囲にあり、
xは、通常は0.1〜0.5の範囲内、好ましくは0.10〜0.38の範囲内、より好ましくは0.10〜0.33の範囲内にある)。
【0029】
層状複水酸化物(LDH)は、特に、F.Cavani,F.Trifiro,A.Vaccari,Catal.Today 1991,11,173に記載されており、これを、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0030】
n−がアルキルスルホン酸イオンである場合、アルキル基は、通常、C〜C20アルキル基である。
【0031】
n−がアルキルアリールスルホン酸イオンである場合、アルキルアリール基はC〜C20アルキルアリール基である。
【0032】
n−が有機カルボン酸イオンである場合、カルボン酸基に結合している有機基は、通常、1〜20個の炭素原子および5個までのヘテロ原子を含み、好ましくは、ヘテロ原子(存在する場合)は、N、O、PおよびSから選択される。通常、有機カルボン酸は1〜2個のカルボン酸基、好ましくは1個のカルボン酸基を有する。
【0033】
「カルボン酸基に結合している有機基」という語は、カルボン酸基がその有機基の一部ではないことを意味している。したがって、カルボン酸基中に存在する酸素原子および炭素原子は有機基に含めない。したがって、例えば酢酸イオンの場合、有機基はメチルである。
【0034】
n−が有機リン酸イオンである場合、リン酸基に結合している有機基は、独立に、通常は1〜20個の炭素原子および5個までのヘテロ原子を含み、好ましくは、ヘテロ原子(存在する場合)は、N、O、PおよびSから選択される。通常、有機リン酸イオンは、1個のリン酸基および1個の有機基を含む。
【0035】
「リン酸基に結合している有機基」という語は、リン酸基がその有機基の一部ではないことを意味している。したがって、リン酸基中に存在する酸素原子およびリン原子は有機基に含めない。したがって、例えばリン酸メチルの場合、有機基はメチルである。
【0036】
好ましくは、層状複水酸化物(LDH)は、次式に従う化合物である:
[MII1−xIII(OH)x+(An−x/n・yH
(式中、
IIは、Mg2+、Ca2+またはZn2+から選択され、
IIIは、Al3+であり、
n−は、Cl、CO2−およびNOから選択される陰イオンであり、
yは、0.25〜4の範囲内、好ましくは0.5〜1.0の範囲内にあり、
xは、0.10〜0.38の範囲内、好ましくは0.10〜0.33の範囲内にある)。
より好ましくは、層状複水酸化物(LDH)は、
合成ハイドロタルサイト
Mg4.5Al(OH)13(CO)・3.5HO(CAS no.11097−59−9)
または
ハイドロタルサイト
MgAl(OH)16(CO)・4H
から選択される。
【0037】
ステアリン酸金属塩、乳酸金属塩およびステアロイル−2−乳酸金属塩の場合、金属は、好ましくは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Znまたはこれらの混合物から選択され、好ましくは、金属は、Ca、Na、K、Mg、Znまたはこれらの混合物から選択される。
【0038】
好ましいステアリン酸金属塩は、ステアリン酸カルシウム(CAS no.1592−23−0)、ステアリン酸ナトリウム(CAS no.822−16−2)およびステアリン酸亜鉛(CAS no.557−05−1)である。
【0039】
好ましい金属酸化物は、酸化マグネシウム(CAS no.1309−48−4)および酸化亜鉛(CAS no.1314−13−2)である。
【0040】
好ましい金属乳酸塩は、乳酸カルシウム(CAS no.814−80−2)である。
【0041】
好ましいステアロイル−2−乳酸塩は、ステアロイル−2−乳酸ナトリウム(CAS no.25383−99−7)およびステアロイル−2−乳酸カルシウム(CAS no.5793−94−2)である。
【0042】
好ましくは、酸捕捉剤は、
ステアリン酸金属塩(金属は、Na、K、MgまたはZn);
乳酸金属塩(金属は、Na、K、MgまたはZn);
ステアロイル−2−乳酸金属塩(金属は、Na、K、MgまたはZn);
酸化マグネシウム、酸化亜鉛; 層状複水酸化物(LDH);
またはこれらの混合物
から選択され、より好ましくは、酸捕捉剤は、ハイドロタルサイト、合成ハイドロタルサイト、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、乳酸カルシウム、ステアロイル−2−乳酸ナトリウム、ステアロイル−2−乳酸カルシウムおよびこれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは、酸捕捉剤は、ハイドロタルサイト、合成ハイドロタルサイト、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛およびこれらの混合物から選択され、最も好ましくは、酸捕捉剤は、ハイドロタルサイトまたは合成ハイドロタルサイトから選択される。
【0043】
ハイドロタルサイトおよび合成ハイドロタルサイトは炭素のみを炭酸塩の形態で含む鉱物であるので、二酸化塩素と反応した場合も有機分解物が形成される可能性がない。
【0044】
合成ハイドロタルサイトが酸捕捉剤として特に好ましい。
【0045】
好ましくは、酸捕捉剤の量は、ポリオレフィン組成物の総重量を基準として少なくとも0.05重量%、より好ましくは、酸捕捉剤の量は、ポリオレフィン組成物の総重量を基準として少なくとも0.10重量%、最も好ましくは、酸捕捉剤の量は、ポリオレフィン組成物の総重量を基準として少なくとも0.15重量%である。
【0046】
酸捕捉剤は、好ましくは、ポリオレフィン組成物の総重量を基準として1.5重量%以下、より好ましくは、ポリオレフィン組成物の総重量を基準として1.0重量%以下、さらにより好ましくは、ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.7重量%以下、さらにより好ましくは、ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.5重量%以下、最も好ましくは、ポリオレフィン組成物の総重量を基準として0.3重量%以下の量で存在する。
【0047】
好ましくは、酸捕捉剤は、次式(I):
【0048】
【化1】
【0049】
(式中、
、RおよびRは、独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい、無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、
、XおよびXは、独立に、HまたはOHであり、但し、X、XおよびXの少なくとも1つはOHである)に従う酸化防止剤(A)と一緒に使用され、より好ましくは、酸捕捉剤は、層状複水酸化物(LDH)であり、式(I)に従う酸化防止剤(A)と一緒に使用され、さらにより好ましくは、酸捕捉剤は、合成ハイドロタルサイトまたはハイドロタルサイトから選択され、式(I)に従う酸化防止剤(A)と一緒に使用される。
【0050】
酸捕捉剤は、任意選択的に、式(I)に従う酸化防止剤(A)と、次式(II)〜(IV)に従う1種もしくは複数種の酸化防止剤またはこれらの混合物と一緒に使用され:
酸化防止剤(B)は、一般式:
−P(OAr) (II)
(式中、OArは、式(II.A):
【0051】
【化2】
【0052】
(式中、
は、ヘテロ原子を含んでいてもよい無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、
、R、R、RおよびRは、独立に、水素原子であるかまたはヘテロ原子を含んでいてもよい無置換もしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基である)に従う)を有し、
酸化防止剤(C)は、式(III):
【0053】
【化3】
【0054】
(式中、
11、R12、R13、R14およびR15は、独立に、Hであるかまたはヘテロ原子を含んでいてもよい無置換もしくは置換された脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル基である)に従い、
酸化防止剤(D)は、式(IV):
【0055】
【化4】
【0056】
(式中、
21およびR22は、それぞれ、少なくとも6個の炭素原子を含む同一であるかまたは異なる残基である)に従う。
【0057】
酸化防止剤A:
式(I)に従う酸化防止剤が存在する場合、ポリオレフィン組成物中における式(I)に従う酸化防止剤の総量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは0.025〜0.750重量%、より好ましくは0.050〜0.600重量%、さらにより好ましくは0.075〜0.550重量%である。
【0058】
一般に、式(I)に従う酸化防止剤(A)は、1個または複数個のエステル基を含んでいてもよく(A1)、あるいはエステル基を全く含まない(A2)。
【0059】
特に明記しない限り、酸化防止剤(A1)は次に示す好ましい特徴を有する。
【0060】
上述したように、酸化防止剤(A1)は、1個または複数個のエステル基を有する。
【0061】
酸化防止剤(A1)において、残基R、RおよびRは、独立に、ヘテロ原子を独立に含んでいてもよい無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基である。これは、分子全体の中に含まれる少なくとも1個のエステル基とは別に、さらなるヘテロ原子またはヘテロ原子団が存在してもよいことを意味する。
【0062】
好ましくは、残基R、RおよびRの少なくとも1つは、少なくとも1個のOH基を含む。さらにより好ましくは、残基R、RおよびRの1つのみが少なくとも1個のOH基を含み、より好ましくは、他の2種の残基はヘテロ原子を含まない。後者の好ましい実施形態は、少なくとも1個のエステル基および少なくとも1個のOH基の両方がR、RおよびRから選択される同一の残基に含まれることを意味する。
【0063】
好ましくは、R、RおよびR中には、酸素以外のヘテロ原子は存在せず、したがって、フェノール系安定剤(A1)は、例えば、アミド基もリン含有基も含まない。
【0064】
好ましくは、R、RおよびRは脂肪族基である。
【0065】
好ましくは、R、RおよびRは、独立に、2〜200個の炭素原子を有する。
【0066】
好ましくは、RおよびRは、独立に、2〜20個の炭素原子を有し、より好ましくは3〜10個の炭素原子を有する。
【0067】
さらに、好ましくはRおよび/またはRは、より好ましくはRおよびRは、少なくとも3個の炭素原子を有し、芳香族環に結合している炭素原子上に分岐を有する脂肪族ヒドロカルビル基であり、最も好ましくはRおよび/またはRは、より好ましくはRおよびRは、tert−ブチル基である。
【0068】
は、好ましくは20〜100個の炭素原子、より好ましくは30〜70個の炭素原子を有する。
【0069】
さらに、好ましくはRは、1個または複数個のフェニル基を含む。
【0070】
さらに、好ましくはRは、1個または複数個のヒドロキシフェニル基を含む。
【0071】
最も好ましい実施形態においては、Rは、ペンタエリスリチル−トリス(3−(3’,5’−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)−3−プロピオネート基である。
【0072】
好ましくは、酸化防止剤(A1)において、XはOHであり、最も好ましくは、XはOHであり、かつXおよびXはHである。
【0073】
特に好ましくは、酸化防止剤(A1)は、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(Irganox 1010)である。
【0074】
特に明記しない限り、酸化防止剤(A2)は、次に示す好ましい特徴を有する。
【0075】
上述したことではあるが、酸化防止剤(A2)はエステル基を含まない。
【0076】
酸化防止剤(A2)において、残基R、RおよびRは、独立に、OH基を含んでいてもよい無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基である。これは、R、RおよびR中にはOH基以外にさらなるヘテロ原子は存在せず、したがって、フェノール系安定剤(A2)は、例えば、エステル基、アミド基およびリン含有基を含まないことを意味する。
【0077】
好ましくは、R、RおよびRは、独立に、OH基を含んでいてもよく、2〜200個の炭素原子を有する、無置換または置換された脂肪族または芳香族、より好ましくは脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0078】
好ましくは、RおよびRは、独立に、2〜20個の炭素原子、より好ましくは3〜10個の炭素原子を有する。
【0079】
さらに、好ましくはRおよび/またはRは、より好ましくはRおよびRは、脂肪族ヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基、さらにより好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有し、芳香環に結合している炭素原子上に分岐を有するアルキル基、最も好ましくはRおよび/またはRは、より好ましくはRおよびRは、tert−ブチル基である。
【0080】
は、好ましくは20〜100個の炭素原子を有し、より好ましくは、30〜70個の炭素原子を有する。
【0081】
さらに、好ましくはRは、1個または複数個のフェニル基を含む。
【0082】
さらに、好ましくはRは、1個または複数個のヒドロキシフェニル基を含む。
【0083】
好ましくは、酸化防止剤(A2)において、XはOHであり、最も好ましくは、XはOHであり、かつXおよびXはHである。
【0084】
特に好ましくは、酸化防止剤(A2)は1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン(Irganox 1330)である。
【0085】
酸化防止剤B:
は、好ましくは、脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、存在するヘテロ原子は、酸素、窒素およびリン原子から選択される。
【0086】
少なくとも1個のリン原子を有する場合、特に好ましくは、Rは、式R−P(OAr)のリン原子に、芳香族ヒドロカルビル基の炭素原子を介して直接結合しており、それ自体は、他のP(OAr)基の他のリン原子に上記芳香族ヒドロカルビル基の異なる炭素原子を介して直接結合している。すなわち、Rは、2個のP(OAr)−基を架橋している芳香族ヒドロカルビル基である。
【0087】
好ましくは、上記架橋芳香族ヒドロカルビル基の炭素原子の個数は、6〜25個、より好ましくは6〜20個である。
【0088】
代替的な特に好ましい実施形態においては、Rは、脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、存在するヘテロ原子は酸素原子のみであり、そのうちの1個がRをP(OAr)−基のリン原子に結合させている。さらにより好ましくは、上記酸素原子がR中に存在する唯一のヘテロ原子である。
【0089】
上述した代替的な好ましい実施形態においては、さらに好ましくは、Rは、1〜20個の炭素原子、より好ましくは2〜16個の炭素原子を有する。
【0090】
上記代替的な好ましい実施形態において、さらに好ましくは、Rは、上記結合している酸素原子以外にさらなるヘテロ原子を含まず、上記酸素原子は、芳香族ヒドロカルビル基をP(OAr)−基に結合させている。
【0091】
上記代替的な好ましい実施形態において、さらに好ましくは、Rは、上記結合している酸素原子以外にさらなるヘテロ原子を含まず、上記酸素原子は芳香族ヒドロカルビル基をP(OAr)−基に結合させており、さらにより好ましくは、Rは、本明細書に定義するOArである。
【0092】
、R、R、RおよびRは、好ましくは、それぞれ、1〜20個の炭素原子を有し、より好ましくは、それぞれ10個以下の炭素原子を有する。
【0093】
好ましくは、R、R、R、RおよびRは、ヘテロ原子を一切含まない。
【0094】
好ましくは、R、R、R、RおよびRは、水素原子または脂肪族ヒドロカルビル基であり、より好ましくは、アルキル基である。さらにより好ましくは、R、RおよびRの少なくとも1つはアルキル基であり、より好ましくは、1個〜4個の炭素原子を有し、より好ましくは、メチル基またはtert−ブチル基である。さらにより好ましくは、RおよびRは、水素原子である。
【0095】
特に好ましい実施形態においては、R、RおよびRの少なくとも2つはtert−ブチル基であり、好ましくは、RおよびRはtert−ブチル基である。
【0096】
さらに好ましくは、R、R、R、RおよびRは、P(OAr)−基において同一であり、好ましい実施形態においては、Rは、本明細書に定義するOArである。
【0097】
特に好ましい酸化防止剤(B)は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos 168)である。
【0098】
式(II)に従う酸化防止剤が存在する場合、ポリオレフィン組成物中における式(II)に従う酸化防止剤の総量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは0.025〜0.300重量%、より好ましくは0.050〜0.225重量%、さらにより好ましくは0.075〜0.175重量%である。
【0099】
酸化防止剤C:
式(III)に従う酸化防止剤(C)の無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基R11、R12、R13、R14および/またはR15中に存在することができるヘテロ原子は、酸素、硫黄、窒素、リン等とすることができる。しかしながら、好ましくは、R11、R12、R13、R14またはR15は、より好ましくは、R11、R12、R13、R14およびR15は、ヘテロ原子を含まない、すなわち無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基のみであるか、または上述したようにHである。
【0100】
さらに好ましくは、R12、R13、R14またはR15は、より好ましくは、R12、R13、R14およびR15は、Hであるかまたは1〜5個の炭素原子を有する飽和脂肪族ヒドロカルビル基であり、さらにより好ましくはR12、R13、R14またはR15は、より好ましくはR12、R13、R14およびR15は、Hまたはメチル基である。
【0101】
さらに、他の残基R12〜R14の性質に関わらず、R15は、好ましくはメチル基である。
【0102】
特に好ましい実施形態においては、R14およびR15はメチル基であり、R12およびR13はHまたはメチル基である。
【0103】
最も好ましくは、R12、R13、R14およびR15は、全てメチル基である。
【0104】
さらにより好ましくは、R11は5〜50個の炭素原子を有する無置換または置換された脂肪族または芳香族ヒドロカルビル基であり、より好ましくは、R11は、5〜50個、より好ましくは10〜30個の炭素原子を含む無置換または置換された脂肪族ヒドロカルビル基であり、最も好ましくは、Rは、4,8,12−トリメチル−トリデシル基である。
【0105】
さらにより好ましくは、酸化防止剤(C)は、2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール(Irganox(登録商標)E201またはビタミンE)である。
【0106】
式(III)に従う酸化防止剤が存在する場合、ポリオレフィン組成物中における式(III)に従う酸化防止剤の総量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは0.010〜0.200重量%、より好ましくは0.015〜0.100重量%、さらにより好ましくは0.020〜0.075重量%である。
【0107】
酸化防止剤D:
好ましくは、化合物(D)の式(IV)において、R21およびR22は、それぞれ同一であるかまたは異なる残基であり、好ましくは少なくとも10個のC原子を含む。
【0108】
好ましくは、R21およびR22は、それぞれ100個以下の炭素原子を有し、より好ましくは、R21およびR22は、それぞれ50個以下の炭素原子を有し、最も好ましくは、R21およびR22は、それぞれ30個以下の炭素原子を有する。
【0109】
好ましくは、式(IV)において、R21および/またはR22はR23−O−であり、この酸素原子は、式(IV)のリン原子に結合しており、より好ましくは、R21およびR22は、R23−O−であり、この酸素原子は式(IV)のリン原子に結合している。好ましくは、R23は、少なくとも6個の炭素原子を有し、より好ましくは少なくとも10個の炭素原子を有する。好ましくは、R23は、それぞれ100個以下の炭素原子を有する。
【0110】
好ましくは、R21、R22および/またはR23は、少なくとも1種のアリール基を有する。
【0111】
本発明の特に好ましい実施形態においては、化合物(D)は、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト(Doverphos S−9228 CT)またはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチル−ジホスファイト(ADK STAB PEP−36)である。
【0112】
式(IV)に従う酸化防止剤が存在する場合、ポリオレフィン組成物中における式(IV)に従う酸化防止剤の総量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは0.025〜0.300重量%、より好ましくは0.050〜0.225重量%、さらにより好ましくは0.075〜0.175重量%である。
【0113】
ポリオレフィン組成物中における酸化防止剤の総量は、好ましくは、組成物の総重量を基準として、少なくとも0.20重量%、より好ましくは少なくとも0.30重量%、最も好ましくは少なくとも0.40重量%である。
【0114】
好ましくは、ポリオレフィン組成物中における酸化防止剤の総量は、好ましくは、組成物の総重量を基準として、1.0重量%以下、より好ましくは0.75重量%以下、最も好ましくは0.50重量%以下である。
【0115】
式(I)、(II)、(III)および(IV)に従う化合物とは異なる酸化防止剤が存在する場合、通常、これらは、組成物の総重量を基準として0.25重量%の量で存在する。
【0116】
しかしながら、通常および好ましくは、ポリオレフィン組成物中には、式(I)、(II)、(III)および(IV)に従う酸化防止剤のみが存在する。
【0117】
好ましくは、少なくとも2種類の酸化防止剤が使用され、より好ましくは、式(I)に従う少なくとも1種の酸化防止剤(A)が使用されると同時に、式(II)、(III)および/または(IV)に従う酸化防止剤から選択される少なくとも1種の酸化防止剤が使用される。通常、ポリオレフィン組成物中に存在する異なる式(I)、(II)、(III)および(IV)に従う酸化防止剤は4種類を超えず、好ましくは、ポリオレフィン組成物中には、3種以下の異なる式(I)、(II)、(III)および(IV)に従う酸化防止剤が存在する。式(I)、(II)、(III)および(IV)に従わない酸化防止剤がポリオレフィン組成物中に存在する場合、通常、このような酸化防止剤は2種類以下でポリオレフィン組成物中に存在する。好ましい実施形態においては、式(I)、(II)、(III)または(IV)に従う酸化防止剤のみが使用される。
【0118】
通常は、式(I)に従う1種類のみの酸化防止剤(A)が存在する。しかしながら、式(I)に従う1種類を超える酸化防止剤(A)が存在する場合は、好ましくは、式(I)に従う酸化防止剤(A)は全て、少なくとも1個のエステル基を含む(A1)であるかまたは式(I)に従う酸化防止剤(A)は全てエステル基を含まない(A2)である。
【0119】
さらに、存在する場合は、通常、式(II)に従う酸化防止剤(酸化防止剤B)または式(IV)に従う酸化防止剤(酸化防止剤D)のいずれかがポリオレフィン組成物中に存在する。したがって、酸化防止剤(B)が存在する場合は、好ましくは酸化防止剤(D)はポリオレフィン組成物中には存在せず、酸化防止剤(D)が存在する場合は、好ましくは酸化防止剤(B)はポリオレフィン組成物中には存在しない。
【0120】
特に好ましい酸化防止剤の組合せは、1種または複数種の酸化防止剤(B)および1種または複数種の酸化防止剤(A2)、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos 168)および1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン(Irganox 1330)である。
【0121】
他の特に好ましい酸化防止剤の組合せは、1種または複数種の酸化防止剤(C)および1種または複数種の酸化防止剤(A1)、例えば、2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール(Irganox(登録商標)E201またはビタミンE)およびペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(Irganox 1010)である。
【0122】
「ベース樹脂」という語は、本発明によるポリオレフィン組成物のポリマー成分全体を指し、通常はポリオレフィン組成物全体の少なくとも90重量%を構成する。
【0123】
本発明による酸化防止剤の好ましい効果は、使用されるポリオレフィンベース樹脂の種類に影響されない。したがって、ベース樹脂は任意のポリオレフィンまたはポリオレフィン組成物とすることができる。
【0124】
しかしながら、好ましくは、ベース樹脂は、2〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のオレフィンを含むオレフィンポリマーを含む。少なくとも1種のエチレンホモポリマーもしくはコポリマーまたはプロピレンホモポリマーもしくはコポリマーが特に好ましい。好ましくは、コモノマーは、エチレン、プロピレンおよび4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンから選択される。さらにより好ましくは、エチレン、プロピレンまたは1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンから選択されるアルファ−オレフィンがコモノマーとして使用される。
【0125】
ベース樹脂中におけるコモノマーの量は、好ましくは0.1mol%〜7.0mol%である。
【0126】
特に好ましくは、ベース樹脂は、エチレンホモポリマーもしくはコポリマーまたはプロピレンホモポリマーもしくはコポリマーを含み、より好ましくは、エチレンホモポリマーもしくはコポリマーおよびプロピレンホモポリマーもしくはコポリマーの総量は、ベース樹脂の少なくとも80重量%であり、さらにより好ましくは、ベース樹脂の少なくとも90重量%であり、最も好ましくは、ベース樹脂はエチレンホモポリマーもしくはコポリマーまたはプロピレンホモポリマーもしくはコポリマーからなる。
【0127】
本発明の一実施形態においては、ベース樹脂は、2種以上のポリオレフィンを含み、より好ましくは、重量平均分子量が異なるポリエチレン画分を含む。この種の樹脂は、通常、多峰型樹脂と称される。
【0128】
ポリオレフィン、特に単峰型樹脂または多峰型樹脂または架橋樹脂を含むポリエチレン組成物は、好ましい物理的および化学的性質、例えば、機械強度、耐腐食性および長期安定性を有するので、例えば、管および継手の製造に使用される場合が多い。この種の組成物は、例えば、欧州特許出願公開第0739937号明細書および国際公開第02/102891号パンフレットに記載されている。本明細書において用いられる分子量という語は、一般に、重量平均分子量Mを指す。
【0129】
上述したように、通常、異なる重合条件下で製造され、画分ごとに異なる重量平均分子量を有する少なくとも2種のポリエチレン画分を含むポリエチレン組成物を「多峰」と称する。接頭辞である「多」は、組成物を構成する複数種の異なるポリマー画分に関連する語である。したがって、例えば、2種類のみの画分からなる組成物は「二峰」と称する。
【0130】
多峰ポリエチレン等の分子量分布曲線の形状、すなわち、ポリマーの分子量に対する重量分率のグラフの形状は、2個以上の極大点を示すかまたは少なくとも個々の画分の曲線と比較して明らかに幅が広がっている。
【0131】
例えば、ポリマーの製造を、連続的に連結された反応器を利用して、各反応器で異なる条件を用いて逐次多段プロセスで行う場合、異なる反応器で生成するポリマー画分は、それぞれ独自の分子量分布および重量平均分子量を有することになる。このようなポリマーの分子量分布曲線を記録すると、これらの個々の画分に由来する曲線を重ね合わせたものが、結果として得られるポリマー生成物全体の分子量分布曲線となり、通常は2個以上の明確な極大点を有する曲線となる。
【0132】
ベース樹脂が2種のポリエチレン画分からなる好ましい実施形態においては、重量平均分子量が低い方の画分をLMW(低分子量画分)と称し、他方をHMW(高分子量画分)と称する。
【0133】
LMWは、好ましくはエチレンホモポリマーである。
【0134】
HMWは、好ましくはエチレンコポリマーであり、好ましくは少なくとも1種のアルファ−オレフィンコモノマーを少なくとも0.1mol%含む。コモノマーの量は好ましくは最大で14mol%である。
【0135】
好ましい実施形態においては、ポリオレフィン組成物は、ポリエチレン組成物であり、ポリエチレン組成物のベース樹脂は、好ましくは少なくとも1種のアルファ−オレフィンコモノマーを少なくとも0.1mol%、より好ましくは少なくとも0.3mol%、さらにより好ましくは少なくとも0.7mol%含む。コモノマーの量は、好ましくは最大で7.0mol%、より好ましくは最大で6.0mol%、さらにより好ましくは最大で5.0mol%である。
【0136】
アルファ−オレフィンコモノマーとしては、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンが使用される。さらにより好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンから選択されるアルファ−オレフィンが使用される。
【0137】
ポリオレフィンベース樹脂は、好ましくは、MFR(190℃、5kg)が0.01〜5.0g/10分、より好ましくは0.1〜2.0g/10分、さらにより好ましくは0.2〜1.5g/10分、最も好ましくは0.5〜1.0g/10分である。
【0138】
ベース樹脂の密度は、好ましくは920〜960kg/m、より好ましくは930〜958kg/m、最も好ましくは936〜955kg/mである。
【0139】
ベース樹脂および酸化防止剤に加えて、ポリオレフィンに通常利用されている、顔料(例えばカーボンブラック)、安定剤、帯電防止剤および助剤(utilization agent)(加工助剤等)等の添加剤もポリオレフィン組成物中に存在させることができる。
【0140】
この種の添加剤の量は、通常は10重量%以下である。
【0141】
カーボンブラックは、一般に顔料として使用され、UV吸収剤としても作用する。通常、カーボンブラックは、最終的な量が0.5〜5重量%、好ましくは1.5〜3.0重量%となるように使用される。好ましくは、カーボンブラックは、マスターバッチすなわちカーボンブラックマスターバッチ(CBMB)として添加され、これは、ポリマー、好ましくはポリエチレンと、例えば実施例に示すような特定の量で混合されている。
【0142】
ベース樹脂を製造するための重合触媒としては、チーグラー・ナッタ(ZN)、メタロセン、非メタロセン、Cr触媒等の遷移金属の配位触媒が挙げられる。触媒は、例えば、シリカ、Al含有担体および二塩化マグネシウム系担体等の従来の担体上に担持することができる。好ましくは、触媒は、ZN触媒、より好ましくは、触媒は、シリカに担持されていないZN触媒、最も好ましくは、MgCl担持型ZN触媒である。
【0143】
チーグラー・ナッタ触媒は、さらに好ましくは、第4族(新IUPAC方式に準拠した族の番号表記に従う)金属化合物、好ましくはチタン、二塩化マグネシウムおよびアルミニウムを含む。
【0144】
触媒は、市販されているものであってもよいし、あるいは文献に従う方法または類似の方法により製造してもよい。本発明に使用することができる好ましい触媒を調製するためには、Borealisによる国際公開第2004/055068号パンフレットおよび国際公開第2004/055069号パンフレットならびに欧州特許出願公開第0810235号明細書を参照する。これらの文書の内容全体、特に、当該明細書に記載されている触媒の一般的な実施形態および全ての好ましい実施形態に関する部分に加えて、触媒を製造するための方法を、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。特に好ましいチーグラー・ナッタ触媒は欧州特許出願公開第0810235号明細書に記載されている。
【0145】
本組成物は、好ましくは、通常は反応器から粉体として得られるベース樹脂を、酸捕捉剤および任意選択的に酸化防止剤(A)〜(D)および/または他の添加剤と一緒に押出機で押出すことにより本発明による組成物を生成するコンパウンディングステップを含むプロセスにより製造される。
【0146】
勿論、本発明の組成物が使用される場合、その加工性および表面性を改善するために、安定剤、改質剤、フィラー、鉱物および潤滑剤等の従来の添加剤から選択されるさらなる化合物を添加することができる。
【0147】
本発明による使用は、管、テープ、フィルム、シート、継手または貯蔵容器に特に好適である。この使用は、ポリオレフィン組成物を含む飲料水配水系統用の管、継手または貯蔵容器に特に好適である。
【0148】
したがって、好ましくは、酸捕捉剤は、本発明に関し記載されているポリオレフィン組成物を含む、飲料水配水系統に使用される管、継手または貯蔵容器の、二酸化塩素含有水に対する耐性を高めるために使用される。
【0149】
好ましい実施形態においては、本発明は、ポリオレフィン組成物の二酸化塩素含有水に対する耐性を高めるための、次式に従う化合物:
[MII1−xIII(OH)x+(An−x/n・yH
( MIIは、Mg2+、Ca2+またはZn2+から選択され;
IIIは、Al3+であり;
n−は、Cl、CO2−およびNOから選択される陰イオンであり、
yは、0.25〜4の範囲、好ましくは0.5〜1.0の範囲にあり、
xは、0.10〜0.38の範囲、好ましくは0.10〜0.33の範囲にある)である層状複水酸化物(LDH)の使用を対象とし、
より好ましくは、層状複水酸化物(LDH)は、
合成ハイドロタルサイト
Mg4.5Al(OH)13(CO)・3.5HO(CAS no.11097−59−9)
または
ハイドロタルサイト
MgAl(OH)16(CO)・4H
から選択され、
ここで、本発明によるポリオレフィン組成物(「ベース樹脂」)のポリマー成分全体は、ポリオレフィン組成物全体の少なくとも90重量%を構成し、ベース樹脂は、上に定義したエチレンホモポリマーもしくはコポリマーまたはプロピレンホモポリマーもしくはコポリマーを含む。
【0150】
さらに本発明は、二酸化塩素を含む水を輸送するための方法であって、ポリオレフィン組成物を含む管を介して水を搬送するステップを含み、ポリオレフィン組成物が酸捕捉剤を含む、方法に関する。
【0151】
酸捕捉剤は、実験部分に詳述されている逆曲げ戻し試験(reverse bend back test)(RBBT)の結果からも分かるように、殺菌剤、特に二酸化塩素に対する耐性を改善する。
【0152】
この試験においては、管の内面を光学顕微鏡で観察する。亀裂および細かいひびの数は管内面の劣化の程度を示している。
【実施例】
【0153】
ここで、以下に記載する非限定的な実施例により本発明を説明する。
【0154】
<測定方法>
耐二酸化塩素性
試験に供する組成物をPE材料用Battenfeld押出機で外径25mm、肉厚2.3mm、長さ1メートルの管に成形する。
【0155】
押出縮合を次のようにした。溶融温度213℃、トルク42〜45%、スクリュー回転数27rpm、処理量19kg/h。
【0156】
管の押出成形には次に示す温度プロファイルを適用した。
【0157】
【表1】
【0158】
二酸化塩素含有水(濃度1mg/l±0.05)に、圧力0.6MPa、温度40℃で管を曝露する。水の流量は200リットル/hとした。測定中は二酸化塩素の濃度を監視して制御を行った。
【0159】
逆曲げ戻し試験(RBBT)
本試験においては、次に示す手順で供試管を270日間上述の二酸化塩素試験に付した。
【0160】
逆曲げ戻し試験は、使用中の管の劣化状態を現場で検知するために設計された管の特性評価方法である。これは、ASTM D 2513標準のガイドラインに準拠して、管の劣化状態に関するより多くの情報を得るために半割管試験プログラム(semi−pipe testing program)を元にして最近考案されたものである。
【0161】
次に示すように試験片を作製する。
【0162】
管から長さ20mmの輪状体を流れ方向に対し垂直に切り出す。次いで、得られた輪状体から240°の扇状体を切り出す。次いでこの240°扇状体の内面が外向きになるように変形させる。曲げ前後の試験片の形状を図3に示す。
【0163】
管の内面(図3に矢印で示す)を光学顕微鏡で観察する。曲げられた内面の形態から劣化状態の深刻さに関する情報が得られる。
【0164】
密度
EN ISO 1872−2(2007年2月)に準拠して圧縮成形により作製した試験片についてISO 1183−1:2004(方法A)に従い密度を測定する。結果をkg/m単位で表す。
【0165】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)をISO 1133に従い測定し、g/10分単位で示す。MFRは、ポリマーの流動性、したがって加工性の指標である。メルトフローレートが高いほどポリマーの粘度は低い。MFRは、ポリエチレンの場合は、190℃で5.00kg(MFR)の荷重を用いて測定される。
【0166】
加圧試験:基準点(control point)(ISO 1167)
ノッチを有しない長さ350mm、25mm×2.3mmの管を、内側および外側が水となる環境で加圧試験に付す。エンドキャップを使用した。基準時間を時間単位で決定する。フープ応力を4.0MPaとし、温度を80℃とした。開発した材料が管加圧試験の基準点を超えるか否かを確認する。
【0167】
管の最小肉厚をISO 3126に従い測定する。
【0168】
使用したポリマー
コンパウンディングに使用したPE樹脂の嵩密度は951kg/mであり、MFR(ISO 1133、190℃、5.0kg)は0.85g/10分である。
Irganox 1010:ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート)
Irganox 1330:1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン
Irgafos 168:トリス(2,4−ジ−tertブチルフェニル)ホスファイト
Irganox E201:2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)−クロマン−6−オール(ビタミンE)
ステアリン酸Ca:Faciより入手
カーボンブラックマスターバッチ(CBMB):カーボンブラック(Elftex TP、Cabot提供)39.5重量%と、MFR(2.16kg、190℃、ISO 1133)が30g/10分であり、密度が959kg/mであるエチレン−ブチレンコポリマー(コモノマー含有率1.7重量%)60.4重量%とを含むマスターバッチを使用した。
ハイドロタルサイト:Sasolより入手したPural MG63HT
【0169】
コンパウンディング
下の表1に示す含有率の組成物を同方向回転二軸押出機Coperion ZSK40(L/D 43)を用いて調製した。スクリュー回転数は150〜200rpmの間に設定することができ、トルクは80〜85%であり、処理量は約50〜55kg/hとした。温度プロファイルを190〜200℃に設定した。
【0170】
【表2】
【0171】
各材料を耐二酸化塩素性に関する上述した試験に付した。結果を表2に示す。
【0172】
【表3】
【0173】
各管につき2個ずつの共試体を上述した逆曲げ戻し試験(RBBT)に付した。結果を図1および図2に示す。
【0174】
1aおよび1bは、二酸化塩素試験に付す前の比較例1の2個の供試管を示すものであり、1cおよび1dは、試験から270日経過した後の2個の供試管1aおよび1bをそれぞれ示すものである。
【0175】
2aおよび2bは、二酸化塩素試験に付す前の比較例2の2個の供試管を示すものであり、2cおよび2dは、試験から270日経過した後の2個の供試管2aおよび2bをそれぞれ示すものである。
【0176】
3aおよび3bは、二酸化塩素試験に付す前の本発明による実施例3の2個の供試管を示すものであり、3cおよび3dは、試験から270日経過した後の2個の供試管3aおよび3bをそれぞれ示すものである。
【0177】
4aおよび4bは、二酸化塩素試験に付す前の本発明による実施例4の2個の供試管を示すものであり、4cおよび4dは、試験から270日経過した後の2個の供試管4aおよび4bをそれぞれ示すものである。
【0178】
この図から分かるように、二酸化塩素含有水に曝露する前の管の内面には亀裂も細かいひびも存在しなかった。
【0179】
さらに、図1c/1dを図3c/3dと比較し、図2c/2dを図4c/4dと比較すると分かるように、本発明の安定剤を用いることにより安定性が大幅に改善される。
【0180】
さらに、上記実施例の2種類の管(外径24.9m)のそれぞれについて、上述したようにISO 1167に準拠して、温度80℃、フープ応力4MPaで加圧試験に付した。破損が認められなかったため、表3に示した時間が経過した後、測定を終了した。
【0181】
管加圧試験の結果から、PE材料に酸捕捉剤を添加しても耐圧性に影響がないことが分かる。
【0182】
【表4】
図1
図2
図3a
図3b