【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性の評価方法は下記のとおりである。
1.平均単糸繊度(dtex)
生産された不織布の両端10cmを除き、幅方向にほぼ5等分して1cm角の試験片をサンプリングし、顕微鏡で繊維の直径を各20点ずつ測定し、その平均値から繊度を算出した。
【0034】
2.目付(g/m
2)
JIS−L1906に準じ、タテ20cm×ヨコ5cmの試験片を任意に5枚採取して質量を測定し、その平均値を単位面積あたりの重量に換算して求めた。
【0035】
3.MFR(g/10分)
メルトインデクサー(東洋精機社製:MELT INDEXER S−101)溶融流量装置を用い、オリフィス径2.095mm、オリフィス長0.8mm、荷重2160g、測定温度230℃の条件で一定体積分を吐出するのに要する時間から10分間当たりの溶融ポリマー吐出量(g)を算出して求めた。
【0036】
4.曲げ柔軟度(mm)
図1は曲げ柔軟度の測定方法を説明した図である。
製品から幅10cm、長さ30cmの試験片を任意に5枚採取し(タテ方向を測定する場合はタテ方向が30cm)、
図1の(1)に示したように、平らな台の上に置き、試験片の中央部に長手方向に直交するようにステンレス製の定規をのせる。定規は幅2.5cm、測定目盛30cmのものが好ましい。次いで、
図1の(2)に示したように、試験片の一方の端を持ち上げてステンレス製の定規を境にした反対側の試験片の上に折り目をつけず、ループを形成させた状態でゆっくりと重ねる。次に、
図1の(3)に示したように、ステンレス製の定規を折り重ねて生じたループの方向へ、長手方向に直交した状態でゆっくりとスライドさせ、
図1の(4)に示したように、試料の反発力でループが伸びて折り重ねが無くなったときの状態を終点とし、試験片の端と定規間の距離(L)をスケールで読む。表裏タテ方向、ヨコ方向のn=5の平均値で表す。短いものほど柔軟であることを示す。
【0037】
5.結晶化度(%)
TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC2920を用い、昇温速度を10℃/分で、30℃から200℃に昇温して結晶融解熱量ΔHm(J/g)を測定した。結晶化度(%)は下記式により求める。
結晶化度(%)=ΔHm/164.9(J/g)×100
(式中の164.9(J/g)はポリプロピレンの完全結晶の融解熱量である。)
【0038】
6.摩擦係数
JIS−K7125に準じ、タテ(MD方向)20cm×ヨコ(CD方向)8cmに切り取った試料に、摩擦子に共布を摩擦方向がタテになるようにセットした接触面積40cm
2(一辺の長さ63mm)の正方形で質量200gのすべり片を乗せ、速度100mm/分で引っ張ったときの動摩擦力を測定した。タテ(MD)方向を3回測定し、下記式から算出した平均値を摩擦係数とした。数値が小さい方が、摩擦抵抗が少ないことを意味する。
摩擦係数=動摩擦力(N)/滑り片の質量によって生じる法線力(=1.96N)
【0039】
〔実施例1〕
MFRが33g/10分のポリプロピレン樹脂、MFRが33g/10分ポリプロピレン樹脂と融点が86〜90℃(平均融点88℃)のオクタデカン酸のグリセリド(水添動植物油脂)とからなるマスターバッチおよび融点が104℃でMFRが18g/10分の低融点ポリプロピレン樹脂(Exxon mobil社製 Vistamaxx6202)を低融点ポリプロピレン樹脂が20wt%となるように混合し、スパンボンド法により、吐出量0.56g/分・Hole、紡糸温度255℃で、フィラメント群を移動捕集面に向けて押し出し、長繊維ウェブを調整した(紡糸速度5000m/分、平均単糸繊度1.1dtex)。
次いで、得られたウェブを、フラットロールとエンボスロール(パターン仕様:直径0.425mm円形、千鳥配列、横ピッチ2.1mm、縦ピッチ1.1mm、圧着率6.3%)の間に通して熱と圧力を温度と線圧で調整して繊維同士を接着し、オクタデカン酸のグリセリドを1.25wt%含有した目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。
得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0040】
〔実施例2〕
低融点ポリプロピレン樹脂の含有率を10wt%としたことを除いて実施例1と同様にして、平均単糸繊度1.5dtex、目付18g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0041】
〔実施例3〕
オクタデカン酸のグリセリドの含有率を3.5wt%としたことを除いて実施例1と同様にして、平均単糸繊度1.2dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0042】
〔実施例4〕
低融点ポリプロピレン樹脂の含有率を10wt%としたこと以外は実施例3と同様にして、平均単糸繊度1.0dtex、目付20g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0043】
〔実施例5〕
実施例1で得た長繊維不織布を、1辺0.9mm、線幅0.1mmの連続線状ハニカム形状柄(亀甲凹柄)(押付面積率:12.5%、柄ピッチ:タテ2.8mm、ヨコ3.2mm、深さ:0.7mm)のエンボスロール(80℃)と表面硬度60度(JIA−A硬度)のゴムロールとの間に通し、2kg/cm
2の圧力で柄を押し付けた。亀甲周辺が押し付けられ高密度域を持ち、中央部が盛り上がった柔軟な長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0044】
〔実施例6〕
融点84℃でMFRが25g/10分の低融点ポリプロピレン樹脂(Dow Chemical社製 DP 4200.02)としたこと以外は実施例1と同様にして、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0045】
〔実施例7〕
低融点ポリプロピレン樹脂の含有率を10wt%としたこと以外は実施例6と同様にして、平均単糸繊度1.5dtex、目付18g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0046】
〔実施例8〕
オクタデカン酸のグリセリドの含有率を3.5wt%としたこと以外は実施例6と同様にして、平均単糸繊度1.2dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0047】
〔実施例9〕
低融点ポリプロピレン樹脂の含有率を10wt%としたこと以外は実施例8と同様にして、平均単糸繊度1.0dtex、目付20g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0048】
〔実施例10〕
実施例6で得た長繊維不織布を用いたこと以外は実施例5と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0049】
〔比較例1〕
オクタデカン酸のグリセリドと低融点ポリプロピレン樹脂を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0050】
〔比較例2〕
オクタデカン酸のグリセリドを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。
【0051】
〔比較例3〕
オクタデカン酸のグリセリドを添加しなかった以外は実施例6と同様の方法で、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0052】
〔比較例4〕
低融点ポリプロピレン樹脂を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0053】
〔比較例5〕
低融点ポリプロピレン樹脂の含有率を3wt%としたこと以外は実施例1と同様の方法で、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0054】
〔比較例6〕
低融点ポリプロピレン樹脂の含有率を3wt%としたこと以外は実施例6と同様の方法で、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0055】
〔比較例7〕
オクタデカン酸のグリセリドと低融点ポリプロピレン樹脂を添加しなかったこと以外は実施例5と同様の方法で、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m
2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布の物性を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から以下のことがわかる。
本発明の長繊維不織布は、繊維径を特定範囲とし、特定温度の融点を有するエステル化合物により摩擦係数を小さくすることで不織布表面のすべすべ感を発現し、更に特定温度の融点を有し特定MFRを有するポリオレフィン系熱可塑性樹脂によりポリオレフィン系繊維の結晶化を抑制することで繊維自体の柔らかさを発現させる。更にこれら相乗効果によってポリオレフィン系繊維によって増加した非晶領域にエステル化合物が更に入り込みやすくなり、曲げ柔らかさを高めた、柔軟性、風合い、肌触り性に優れるポリオレフィン系長繊維不織布を得ることができ、特に吸収性物品の肌に触れる部分に好適に用いることができる。