特許第5948541号(P5948541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5948541-ポリプロピレン系不織布 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948541
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/007 20120101AFI20160623BHJP
   D04H 3/016 20120101ALI20160623BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20160623BHJP
【FI】
   D04H3/007
   D04H3/016
   D04H3/14
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-536908(P2014-536908)
(86)(22)【出願日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】JP2013075316
(87)【国際公開番号】WO2014046188
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-207221(P2012-207221)
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中東 登志子
(72)【発明者】
【氏名】税所 一哉
(72)【発明者】
【氏名】矢放 正広
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−069820(JP,A)
【文献】 特開平10−001875(JP,A)
【文献】 特開平10−226925(JP,A)
【文献】 特開平09−049122(JP,A)
【文献】 特開2001−146674(JP,A)
【文献】 特開昭54−125773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモポリプロピレンを主成分とする繊維からなる不織布であって、該繊維のMFRが30g/10分以上64g/10分以下であり、該繊維の平均単糸繊度が0.5dtex以上3.5dtex以下であり、該不織布の目付が5g/m2以上40g/m2以下であり、該不織布の熱圧着面積率が5%以上15%以下であり、そして熱板温度136℃の条件で測定される該不織布のヒートシール強力が6N/25mm以上であることを特徴とする不織布。
【請求項2】
前記ホモポリプロピレンを主成分とする繊維が中実繊維である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
親水化剤が付着されている、請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記繊維が柔軟化剤を含有している、請求項1〜のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項5】
前記繊維の紡糸時の温度が205℃以上210℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の不織布の製造方法
【請求項6】
前記繊維の紡糸時の温度が、前記繊維の融点より40℃以上50℃未満高い温度である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の不織布の製造方法
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の不織布を用いてなる衛生材料。
【請求項8】
使い捨てオムツ、生理用ナプキン又は失禁パットの形態にある、請求項7に記載の衛生材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系繊維からなる不織布に関する。より詳細には、本発明は、衛生材料に用いられる吸収性物品のトップシート、バックシート、サイドギャザー部などに適した、ヒートシール性、柔軟性に優れたポリプロピレン系繊維からなるスパンボンド不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使い捨てオムツの普及はめざましく、その生産量も急増してきている。このような環境下における使い捨てオムツとして、その製造ラインでのロスの減少及び品質の安定性が重要である。オムツ製造ラインにおいては、熱によって接合するヒートシールによる貼り合せや、熱ラミネート、ホットメルト剤塗工等により、多種の素材を複合しておむつ製品が製造されている。特にパンツ型おむつに於いては、サイド部をヒートシールにより溶着接合しており、着用時に破れない強度が必要である。従来、着用時に破れない強度を得るために、ヒートシール溶着時の温度を高くし、充分に溶融することで対応していたが、シール部が硬くなってしまう欠点があった。かかる欠点を解決すべく、ポリプロピレン系ポリマーにポリエチレン等の低融点のポリマー繊維を複合し、ヒートシール性を向上させてきた。すなわち、ポリプロピレン系の単一成分では充分なヒートシール性を達成することができなかった。
【0003】
一方、スパンボンド不織布は、原料ポリマーを熱により溶融し、紡口より紡糸して繊維化することによって製造されるため、ポリマーの溶融した状態の粘性が紡糸性に重要な要素となる。溶融状態の粘性は、ポリマーのMFRと紡糸温度との組合せにより決定される。ところが従来の技術では、紡糸して得られた繊維の細さ、強力、及び紡糸時の工程安定性からのみ溶融状態のポリマーの粘性が選定されており、例えば、ポリプロピレン樹脂であれば230℃近辺で紡糸され、使用されるポリマーのMFRにより、紡糸時の繊維の切れにくさの観点から、紡糸温度が決定されていた。例えば、紡糸時の温度を低くすると、溶融状態のポリマーの粘性が高く、繊維が太くなってしまい、目的の細繊度の繊維を得ることができない。また、MFRを大きくしてポリマー粘度を下げるとポリマー分子量が低いため、紡糸された糸の強力が低く、紡糸時に糸切れが多発して充分なスパンボンド不織布を得られない。また、得られたスパンボンド不織布を構成する繊維の強力が弱く、不織布の強力が低いものとなる。このように、従来、紡糸性の観点のみから、ポリマーのMFRと紡糸温度が選定されてきた。
【0004】
即ち、従来、スパンボンド不織布がおむつ等の表面材としておむつ製造工程で使用されるときのヒートシール部の強力、おむつとして着用された際に充分なヒートシール部強力、及びヒートシール部の柔らかさについては全く考慮されておらず、また、ヒートシール性とスパンボンド不織布の紡糸時の温度との関係についても検討されていなかった(例えば、下記特許文献1と2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/091444号パンフレット
【特許文献2】特開2002−105832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、衛生材料に用いられる吸収性物品のトップシート、バックシート、サイドギャザー部などに適した、ヒートシール部の強力が高く、かつ、ヒートシール部の柔軟性に優れたポリプロピレン系繊維からなる不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、ポリプロピレン系スパンボンド不織布の物性を、ポリマーのMFRと紡糸温度により制御することにより、ヒートシール性が高く、かつ、ヒートシール部が硬くならない衛生材料用スパンボンド不織布を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりでのものである。
[1]ホモポリプロピレンを主成分とする繊維からなる不織布であって、該繊維のMFRが30g/10分以上64g/10分以下であり、該繊維の平均単糸繊度が0.5dtex以上3.5dtex以下であり、該不織布の目付が5g/m2以上40g/m2以下であり、該不織布の熱圧着面積率が5%以上15%以下であり、そして熱板温度136℃の条件で測定される該不織布のヒートシール強力が6N/25mm以上であることを特徴とする不織布。
【0009】
[2]前記ホモポリプロピレンを主成分とする繊維が中実繊維である、前記[1]に記載の不織布。
【0010】
[3]親水化剤が付着されている、前記[1]又は[2]に記載の不織布。
【0011】
[4]前記繊維が柔軟化剤を含有している、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の不織布。
【0012】
[5]前記繊維の紡糸時の温度が205℃以上210℃以下である、前記[1]〜[4]4のいずれかに記載の不織布の製造方法
【0013】
[6]前記繊維の紡糸時の温度が、前記繊維の融点より40℃以上50℃未満高い温度である、前記[1]〜[]のいずれかに記載の不織布の製造方法
【0014】
[7]前記[1]〜[]のいずれかに記載の不織布を用いてなる衛生材料。
【0015】
[8]使い捨てオムツ、生理用ナプキン又は失禁パットの形態にある、前記[7]に記載の衛生材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリプロピレン系繊維からなる不織布は、繊維のMFRが30g/10分以上65g/10分以下であり、かつ、低温ヒートシール強力が6N/25mm以上である柔軟なスパンボンド不織布であり、かつ、おむつ表面材として使用された際に、ヒートシール部で破れが発生せず、かつ、該ヒートシール部が柔軟であるので、おむつ・衛生材料の表面材として好適である。本発明のポリプロピレン系不織布は、特に、おむつ表面材料として使用される際に、おむつ製造工程の高速化に追従して、充分なヒートシール強力を保持し、かつ、ヒートシール部が硬くならない、衛生材料用不織布の表面材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ヒートシール強力の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳述する。
本発明の不織布を構成するホモポリプロピレンを主成分とする繊維は、一般的なチーグラナッタ触媒により合成されるポリマーであることができる。また、メタロセンに代表されるシングルサイト活性触媒により合成されたポリマー、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体でもよい。他のα−オレフィンとしては、炭素数3〜10のものであり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキサン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。また、エチレンランダム共重合ポリプロピレンでもよく、エチレン含有量は2%未満、好ましくは1%未満であることができる。これらは1種類単独でも2種類以上を組み合わせてもよい。好ましくは1種類単独で用いることがよい。あるいはポリオレフィン系樹脂を表面層とする芯鞘繊維でもよい。また、その繊維形状も通常の円形繊維のみでなく、捲縮繊維および異形繊維などの特殊形態の繊維であってもよい。但し、強度・寸法安定性の観点から、ホモポリプロピレンを主成分とする繊維であることが必要である。
【0019】
また、ホモポリプロピレンを主成分とする繊維は、MFRとして下限が30g/10分以上、より好ましくは40g/10分以上、さらに好ましくは53g/10分以上であり、上限は65g/10分以下、好ましくは、更に好ましくは60g/10分以下である。MFRがこの範囲にあると樹脂の流動性が良く、不織布として柔軟性が良好であり、細繊度の繊維であっても糸切れなく、不織布を安定に生産することができる。MFRは、JIS−K7210「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」の表1、試験温度230℃、試験荷重2.16kgに準じて測定を行って求めた。
【0020】
本発明の不織布を構成するホモポリプロピレンを主成分とする繊維には、目的に応じて、核剤、難燃剤、無機充填剤、顔料、着色剤、耐熱安定剤、帯電防止剤などを配合してもよい。
ホモポリプロピレンを主成分とする繊維を接合して不織布を製造する際の接合手段としては、部分熱圧着法、熱風法、溶融成分での接合(ホットメルト剤)法、その他各種の方法が挙げられるが、強度の観点から、部分熱圧着法が好ましい。
【0021】
本発明の不織布の部分熱圧着における熱圧着面積率は、強度保持及び柔軟性の点から、5%以上15%以下である。
【0022】
また、本発明の部分熱圧着処理は、超音波法により又は加熱エンボスロール間にウェブを通すことにより行うことができ、これにより、表裏一体化され、例えば、ピンポイント状、楕円形状、ダイヤ形状、矩形状、斜め絣形状等の浮沈模様が不織布全面に散点する。生産性の観点から加熱エンボスロールを用いることが好ましい。
【0023】
ところで、熱による融着接合において、スパンボンド不織布の紡糸時の温度によっては、ヒートシール溶着部で溶着不充分となり、十分な強度が得られない問題がある。また、ヒートシール溶着部で強度を得るために、より高温の熱で溶着すれば、ヒートシール部が硬く柔軟性を損なったり、シール部と非シール部の剛性の差による破断が生じたりする問題がある。
【0024】
本発明者らは、紡糸性の観点から従来選択されてこなかった、ポリマー樹脂の紡糸温度が低い領域で繊維を紡糸し、低温でのヒートシール性が高い値を示すスパンボンド不織布を製造することで驚くべきことに、ヒートシール溶着部の強度を保持しつつ、ヒートシール部が硬くならず、柔軟性を損なわないことを見出し、更に、ポリマーのMFRと紡糸温度を適切に組み合わせることにより、紡糸性と細い繊度と強力とがバランスする領域が存在することを見出し、充分なヒートシール強力を保持し、かつ、ヒートシール部が硬くならない衛生材料用不織布の表面材として好適なスパンボンド不織布を得ることに成功した。また、本発明のスパンボンド不織布は、低温でのヒートシール性が高い値を示すことによりおむつ製造工程の高速化が可能となる。
【0025】
本発明のスパンボンド不織布は、後述する方法で測定したヒートシール強力が6N/25mm以上という優れたヒートシール性を有する。ヒートシール強力が6N/25mm以上であれば、おむつ製造工程の高速化にともなって、よりヒートシール時の熱量が小さい低温・短時間でのヒートシールでも充分なヒートシール強力を保持できるので好ましい。ヒートシール強力は、好ましくは7N/25mm以上である。
このヒートシール強力は、ポリプロピレンからなる繊維のMFRを前述の範囲にコントロールし、かつ、紡糸時の重合体温度を適切な範囲に制御することによって達成される。紡糸時の重合体温度についてはポリプロピレン樹脂を例にとり後述する。
【0026】
本発明においては、原料ポリマーのMFR値と紡糸時のポリプロピレン樹脂温度を適切な範囲に制御することによって、おむつ用途として充分な柔軟性を示すのに必要な細い繊度と、ヒートシールによって接合された際の充分な強力とが両立するスパンボンド不織布を得ることができる。
【0027】
原料ポリマーのMFR値が小さいと、紡糸時に溶融する樹脂温度を高くしないと、溶融状態での粘性が高く、細い繊度を得ることができず、紡糸温度を高くする必要がある。しかしながら、紡糸時に受けた温度が高い為、ヒートシールする際に、紡糸時の温度によって、ヒートシール強力が低下し、特におむつ製造時の高速化に伴って、より低温でヒートシールする場合は、十分な強力を得ることができない。また、紡糸温度を下げると延糸性が悪く、スパンボンド不織布を得ることができない。
また、MFRが高すぎると、紡糸時の紡糸温度を低温にすることができるが、ポリマーの分子量が低いので、スパンボンド不織布を構成する糸の強力が低くなり、ヒートシールされた際に充分な強力を得ることができない。
【0028】
本発明者らは、上記問題を解決する方法を検討した結果、原料ポリマーのMFRが20g/10分以上68g/10分以下のポリマーを用いて、原料ポリマーのMFRを考慮して紡糸温度を適切に制御することによって得られた、繊維のMFRが30g/10分以上65g/10分以下のスパンボンド不織布によって、繊維が細く柔軟でかつヒートシール強力の優れたスパンボンド不織布を得た。
【0029】
本発明の不織布を構成するポリプロピレン系重合体からなる繊維の平均単糸繊度は、0.5dtex以上3.5dtex以下であり、好ましくは0.7dtex以上3.2dtex以下であり、より好ましくは0.9dtex以上2.8dtex以下であり、さらに好ましくは0.9dtex以上2.5dtex以下である。紡糸安定性の観点から、0.5dtex以上であることが好ましく、繊度が細い程、不織布として糸の接着点が多くなるため強度が高く、柔軟性が良好となる。主として衛生材料に使用されるため、不織布の強力の観点から、3.5dtex以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の不織布の目付は、5g/m2以上40g/m2以下であり、好ましくは10g/m2以上30g/m2以下、より好ましくは10g/m2以上25g/m2以下、さらに好ましくは10g/m2以上23g/m2未満であり、最も好ましくは10g/m2以上20g/m2未満である。不織布の目付は薄ければ薄いほど柔軟性が良く、衛生材料として好適に使用することができるが、5g/m2以上であれば衛生材料に使用される不織布に要求される強力要件を満足し、一方、40g/m2以下であれば、衛生材料に使用される不織布の柔軟性を満足し、外観的に厚ぼったい印象を与えない。
【0031】
本発明の不織布の破断伸度は30%以上であることが好ましい。破断伸度が30%より小さい場合は、不織布は硬く柔軟性に劣るものとなる。また破断伸度が50%を超えると、不織布の安定性に劣り、不織布製造時の巻き取り工程やおむつ製造時に工程張力がかかると伸びが生じ、幅入り等の問題を発生することがある。
【0032】
本発明の不織布には、親水化剤を適用してもよい。かかる親水化剤としては、人体への安全性、工程での安全性等を考慮して、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルフェノール等のエチレンオキサイドを付加した非イオン系活性剤、アルキルフォスフェート塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系活性剤等が単独で又は混合物として好ましく用いられる。
【0033】
親水化剤の付与量は、要求される性能によって異なるが、通常は、繊維に対して0.1重量%以上1.0重量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.15重量%以上0.8重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以上0.6重量%以下である。付与量がこの範囲にあると、衛生材料のトップシートとしての親水性能を満足し、加工性も良好となる。
【0034】
親水化剤を塗布する方法としては、通常、希釈した親水化剤を用いて、浸漬法、噴霧法、コーティング(キスコーター、グラビアコーター)法等の既存の方法を採用することができ、必要により予め混合した親水化剤を、水等の溶媒で希釈して塗布することが好ましい。
親水化剤を水等の溶媒で希釈して塗布すると、乾燥工程を必要とする場合がある。その際の乾燥方法としては、対流伝熱、伝導伝熱、放射伝熱等を利用した既知の方法を採用することができ、熱風や赤外線による乾燥や熱接触による乾燥方法等を用いることができる。
【0035】
本発明において、ホモポリプロピレンを主成分とする繊維には、柔軟化剤が添加されていてもよい。かかる柔軟化剤としては、エステル化合物が好ましく、より好ましくは3〜6価のポリオールとモノカルボン酸とのエステル化合物が挙げられる。
【0036】
3〜6価のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価のポリオール、ペンタエリスリトール、グルコース、ソルビタン、ジグリセリン、エチレングリコールジグリセリルエーテル等の4価のポリオール、トリグリセリン、トリメチロールプロパンジグリセリルエーテル等の5価のポリオール、ソルビトール、テトラグリセリン、ジペンタエリスリトール等の6価のポリオール等が挙げられる。
【0037】
モノカルボン酸としては、例えば、オクタン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、オクタデカン酸、ドコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタデセン酸、ドコセン酸、イソオクタデカン酸等のモノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、メチルベンゼンカルボン酸等の芳香族モノカルボン酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシオクタデカン酸、ヒドロキシオクタデセン酸等のヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸、アルキルチオプロピオン酸等の含イオウ脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
エステル化合物は、単一成分である必要はなく、2種以上の混合物であっても、天然物由来の油脂類であってもよい。但し、不飽和脂肪酸を含むエステル化合物は酸化されやすく紡糸時に酸化劣化し易いため、飽和の脂肪族モノカルボン酸又は芳香族モノカルボン酸が好ましい。天然物由来の油脂類は、原料油に比べて、無臭で安定なため、水素添加したエステル化合物が好ましく用いられる。
【0039】
エステル化合物としては、モノカルボン酸の分子量が比較的大きく、親油性が高いものが好ましい。親油性が高いことにより、ポリプロピレン系重合体からなる繊維の非晶部に入り込み、結晶化を阻害して非晶領域が増加するため、曲げ柔軟度がより小さくなる効果が得られる。
かかる効果を得るためには、エステル化合物の融点は70℃以上であることが好ましく、より好ましくは80℃以上150℃以下である。エステル化合物の融点がブロードで、範囲を有する場合には、該融点は平均の融点を意味する。また、エステル化合物には、他の組成物、例えば、融点が70℃未満のエステル化合物やその他の有機化合物が混合されていてもよい。
【0040】
柔軟化剤としてのエステル化合物の含有率は、ポリプロピレン系重合体からなる繊維に対し、0.3重量%以上5.0重量%以下であることが好ましい。エステル化合物は、少量の添加でも曲げ柔軟度や滑り易さが著しく向上し、含有量を増やしても含有量に見合った性能向上は見られない。そのため紡糸性及び発煙性を加味し、5.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上3.5重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上2.0重量%以下である。
【0041】
本発明の不織布はスパンボンド(S)法で製造される。SS、SSS、SSSSと積層することで分散が向上するため、より好ましい。また、目的に応じて、スパンボンド(S)繊維をメルトブローン(M)繊維と積層してもよく、SM、SMS、SMMS、SMSMSと積層した構造であってもよい。
【0042】
本発明のスパンボンドの紡糸温度は、ポリプロピレン樹脂であれば、190℃以上225℃以下、好ましくは200℃以上220℃以下、より好ましくは205℃以上215℃未満、さらに好ましくは205℃以上210℃以下である。紡糸温度が225℃以下であれば、樹脂分解物による紡口表面の汚れが少なく、さらに樹脂の粘度が低くなることによる糸切れの発生を抑制することができる。また、紡糸温度が高いと、作製した不織布は樹脂分解物による影響のため、強度が低くなり、加工時に破断しやすくなる傾向を示す。紡糸温度が190℃以上であれば、樹脂の粘度が高くなることによる糸切れの発生を抑制し、さらに紡糸時の紡口内圧力が高くなることによる樹脂漏れなどを抑制することができる。
【0043】
また、前記繊維の紡糸時の温度が、前記繊維の融点より40℃以上50℃未満高い温度であることが好ましい。
【0044】
本発明者らは、おむつ表面材として使用された際に、着用時に破れない充分な強力を保持し、かつ、ヒートシール部が硬くなって柔軟性を損なってしまうことを防ぐためには、低温ヒートシール時の接着強力が高いことが必要であり、そして低温ヒートシール時の接着強力を向上させるためには、スパンボンド不織布の製造工程での温度履歴を低く制御することが効果的であることを見出した。
低温ヒートシール時の接着強力を向上させるためには、繊維の結晶サイズを小さくし、熱による軟化溶融しやすいことが効果的であるが、反面小さいサイズの結晶が多く存在する場合には繊維全体がヒートシール部の熱に対して収縮を引き起こし、ヒートシール部が収縮したり、硬くなり柔軟性を損なってしまう。一方、結晶子サイズが大きいと結晶部がリジッドに分子の動きを抑制し、収縮を抑制することができるが、低温ヒートシール時には充分な強力を得ることができない。本発明では、これまで着目されてこなかった温度領域で特定の繊維MFRとなるように紡糸することで、適正な結晶性を達成できたものと推定される。
【0045】
本発明のスパンボンド不織布は、衛生材料の製造に好適に使用することができ、衛生材料としては、使い捨てオムツ、生理用ナプキン又は失禁パットが挙げられ、それらの表面のトップシート、外側のバックシート、足回りのサイドギャザー等に好適に使用される。
また、本発明の不織布の用途は前記用途に限られず、例えば、マスク、カイロ、テープ基布、防水シート基布、貼布薬基布、救急絆基布、包装材、ワイプ製品、医療用ガウン、包帯、衣料、スキンケア用シートなどに使用することもできる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において使用した各種特性の評価方法は下記のとおりであり、得られた物性を以下の表1に示す。
【0047】
1.平均単糸繊度(dtex)
製造した不織布の両端10cmを除き、幅方向にほぼ5等分して1cm角の試験片をサンプリングし、顕微鏡で繊維の直径を各20点ずつ測定し、その平均値から平均単糸繊度を算出した。尚、ポリプロピレンの密度は0.91g/cm3とした。
【0048】
2.目付(g/m2
JIS−L1906に準じ、タテ(MD方向)20cm×ヨコ5cmの試験片を任意に5枚採取して質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの重量に換算して求めた。
【0049】
3.破断伸度(%)
JIS L−1906に準じ、不織布の布帛試料の両端10cmを除き、幅方向均等になる様に、幅5cm、長さ20cmの試料を5点切り取り、引張試験機で、つかみ間隔10cm、引張速度30cm/分で測定した。破断時の伸度は、サンプルの破断時の伸度を測定した。タテ方向5点の試料を測定し、測定値を平均してタテ方向の破断伸度とした。
【0050】
4.ヒートシール強力
幅25mm長さ20cmの試料を2枚切り取り、熱板加熱式ヒートシール性試験装置にて、熱板温度136℃、ヒートシール接圧70Kgf/cm2、接着時間1秒の条件で試料の熱シールを実施した。熱シール部分を約5cm(長さ方向)上下方向に剥離し、図1に示したように、定長引張試験機に180度剥離するように取り付け、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分で、剥離強度を測定した。図1において、1はヒートシール試料の上部剥離部であり、2は下部剥離部であり、3はヒートシール部である。測定はタテ方向3カ所測定し最大強度の平均値で示した。
【0051】
5.おむつ着用試験によるヒートシール部強度評価
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、標準体型の男性10人にて、1時間毎に1回着脱動作を行うこととして合計5時間の着用評価を実施した。ヒートシール部で破れが発生した段階で着用試験を中止することとし、着用者10人の最大着脱回数の平均値求めた。
【0052】
6.ヒートシール部の風合い・外観評価
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、ヒートシール部の風合い・外観を官能評価に於いて、風合いが「硬い」又は「柔らかい」の2段階、外観収縮の有無を実施し、評価者10人で同じ評価が2/3以上であった場合、その評価を採用し、それ未満は差なしとした。
【0053】
〔実施例1〕
MFRが60g/10分(JIS−K7210に準じ、温度230℃、荷重2.16kgで測定)のポリプロピレン樹脂をスパンボンド法により、ノズル径0.4mm、単孔吐出量0.56g/min・Hole、紡糸温度205℃で押出し、このフィラメント群をエアジェットによる高速気流牽引装置を使用して牽引し、平均単糸繊度1.5dtexの長繊維ウェブを調製した。
次いで、得られたウェブを、フラットロールとエンボスロール(パターン仕様:直径0.425mm円形、千鳥配列、横ピッチ2.1mm、縦ピッチ1.1mm、圧着面積率6.3%)の間に通して温度135℃と線圧35kgf/cmで繊維同士を接着し、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
【0054】
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、標準体型の男性10人にて、1時間毎に1回着脱動作を行うこととして合計5時間の着用評価を実施した。ヒートシール部で破れが発生した段階で着用試験を中止することとし、着用者10人の最大着脱回数の平均値求めた。評価結果を表1に示す。またヒートシール部の風合い・外観を官能評価に於いて、風合いが「硬い」又は「柔らかい」の2段階、外観収縮の有無を実施し、10人で同じ評価が2/3以上であった場合、その評価を採用し、それ未満は差なしとした。評価結果を表1に示す。
表1に示すように、5回まで着脱動作を実施しても、着用中にヒートシール部で破れが発生することなく、充分な強力を示した。また、ヒートシール部の風合い・外観評価を官能評価に於いて実施し、収縮したり硬くなったりせず、柔軟なおむつを得た。
【0055】
〔実施例2〕
実施例1において吐出量を調整し、平均単糸繊度2.0dtex、目付11g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、着脱5回実施しても、着用中に破れが発生することなく、充分な強力を示した。特に、実施例2に於いては、ヒートシール部でおむつの他の構成部材との接着に於いて、ヒートシール部の接着性が強く剥離しにくいにも拘わらずヒートシール部が柔軟なおむつを得た。
【0056】
〔実施例3〕
実施例1において吐出量を調整し、平均単糸繊度1.1dtex、目付18g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、実施例1と同様の結果を得た。
【0057】
〔実施例4〕
MFRが53g/10分のポリプロピレン樹脂を用い、紡糸の樹脂温度を210℃として実施例1と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度1.1dtex、目付15g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、実施例1と同様に充分な強度のおむつを得た。
【0058】
〔実施例5〕
MFRが60g/10分のポリプロピレン樹脂を用いて実施例4と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、実施例1に比較してヒートシール部の接着性はやや弱いものの。その結果、着用4回までおむつが破れることなく、充分な強度のおむつを得た。
【0059】
〔実施例6〕
MFRが37g/10分のポリプロピレン樹脂を用いて実施例4と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度2.0dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、実施例1と同様の柔軟なおむつを得た。
【0060】
〔実施例7〕
MFRが37g/10分のポリプロピレン樹脂を用い、単孔吐出量を0.3g/min・Holeとし、他の条件は実施例4と同様にして平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、実施例1と同様の柔軟なおむつを得た。
【0061】
〔比較例1〕
MFRが65g/10分のポリプロピレン樹脂を用い、紡糸の樹脂温度を210℃とし、他の条件は実施例1と同様にして平均単糸繊度1.8dtexの長繊維ウェブを得た。次いで、得られたウェブを、フラットロールとエンボスロール(パターン仕様:直径0.425mm円形、千鳥配列、横ピッチ2.1mm、縦ピッチ1.1mm、圧着面積率6.3%)の間に通して温度135℃と線圧15kgf/cmで繊維同士を接着し、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、着脱3回目でヒートシール部に破れが発生した。
【0062】
〔比較例2〕
紡糸の樹脂温度を225℃として比較例1と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度2.0dtex、目付20g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果着脱2回目でヒートシール部に破れが発生した。
【0063】
〔比較例3〕
紡糸の樹脂温度を215℃として実施例1と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、着脱3回目でヒートシール部に破れが発生した。
【0064】
〔比較例4〕
MFRが53g/10分のポリプロピレン樹脂を用いて比較例3と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、着脱1回目でヒートシール部に破れが発生し着用評価が実施できなかった。
【0065】
〔比較例5〕
MFRが37g/10分のポリプロピレン樹脂を用いて比較例3と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度3.8dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、着脱3回目でヒートシール部に破れが発生した。
【0066】
〔比較例6〕
MFRが100g/10分のポリプロピレン樹脂を用い、紡糸の樹脂温度を205℃として比較例1と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、その結果、着脱1回目にてヒートシール部で破れが発生し着用評価が実施できなかった。
【0067】
〔比較例7〕
MFRが37g/10分のポリプロピレン樹脂を用い、紡糸の樹脂温度を260℃、単孔吐出量を0.2g/min・Holeとして、比較例3と同様に実施し、平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、着脱2回目でヒートシール部に破れが発生した。
【0068】
〔比較例8〕
MFRが25g/10分のポリプロピレン樹脂を用い、紡糸の樹脂温度を260℃として比較例1と同様に実施し、吐出量を調整して平均単糸繊度1.1dtex、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の評価結果を製造条件と共に表1に示す。
得られたスパンボンド不織布を用いて大人用パンツ型おむつを作製し、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、着脱2回目でヒートシール部に破れが発生した。
【0069】
〔比較例9〕
MFRが65g/10分のポリプロピレン樹脂を用い、紡糸の樹脂温度を210℃とし、他の条件は実施例1と同様にして平均単糸繊度1.8dtexの長繊維ウェブを得た。次いで、得られたウェブを、フラットロールとエンボスロール(パターン仕様:直径0.425mm円形、千鳥配列、横ピッチ2.1mm、縦ピッチ1.1mm、圧着面積率6.3%)の間に通して温度135℃と線圧15kgf/cmで繊維同士を接着し、目付17g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布を用いて、実施例1の大人用パンツ型おむつ作製条件に於いて、生産速度遅くし、ヒートシール部出力を強くした条件で、実施例1と同様の着用評価を実施した。その結果、着脱5回を繰り返しても破れが発生することは無かったが、ヒートシール部で収縮が発生し、風合いが硬くなった。
【0070】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のスパンボンド不織布は、柔軟でヒートシール強力が高く、かつ、ヒートシール部が硬くならない衛生材料用不織布であるため、衛生材料のトップシート、バックシート、サイドギャザーなどに好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 上部剥離部
2 下部剥離部
3 ヒートシール部
図1