特許第5948543号(P5948543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948543
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/029 20060101AFI20160623BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20160623BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20160623BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20160623BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20160623BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   G03F7/029
   G03F7/004 501
   G03F7/033
   G03F7/027 502
   G03F7/004 512
   H05K3/18 D
   H05K3/06 H
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-121880(P2012-121880)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-246387(P2013-246387A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】栗田 英徹
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−039978(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/099655(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/129589(WO,A1)
【文献】 特開2004−302049(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/074929(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)〜(E)の各成分、
(A)アルカリ可溶性高分子、
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)増感剤、及び
(E)添加剤
からなり、
前記(C)成分が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物を、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分の総量基準で0.01〜10質量%含み、
前記(D)成分が、ビスベンゾオキサゾリルチオフェン及びその誘導体若しくはビスベンゾオキサゾリルナフタレン及びその誘導体又はこれらの両者を、総量で、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分の総量基準で0.01〜1質量%含み、
前記(E)成分が、カルボキシルベンゾトリアゾール類を、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分の総量基準で0.01〜5質量%含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、以下の(a−1)及び(a−2)からなる群から選択される1種以上の成分:
(a−1)スチレン15〜60質量%と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上のアクリル単量体とを含む重合成分に由来するアクリル共重合体;
(a−2)ベンジルメタクリレート20〜85質量%と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びベンジルメタクリレート以外のメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上のアクリル単量体とを含む重合成分に由来するアクリル共重合体;
を、総量で、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分の総量基準で30〜60質量%含む、請求項1に記載の前記感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、一分子中に2個を超える(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物より成る感光性樹脂層が支持体に積層された、感光性樹脂積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像する工程を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項6】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像し、めっきする工程を含む、回路基板の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像し、エッチングする工程を含む、回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記露光を、描画パターンの直接描画により行う、請求項6又は7に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載のレジストパターン形成方法によって、基材としての半導体パッケージ用基板上にレジストパターンを形成する工程、及び前記レジストパターンが形成された半導体パッケージ用基板をエッチングするか又はめっきする工程を含む、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物、等に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン又は携帯電話等の電子機器には、部品又は半導体等の実装用としてプリント配線板等が用いられる。プリント配線板等の製造用レジストとしては、従来、支持フィルム上に感光性樹脂層を積層し、さらに該感光性樹脂層上に必要に応じて保護フィルムを積層してなる感光性樹脂積層体、いわゆるドライフィルムレジスト(以下、DFと呼ぶこともある)が用いられている。
【0003】
ここで用いられる感光性樹脂層としては、現在、現像液として弱アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のものが一般的である。DFを用いてプリント配線板等を作製するには、保護フィルムが有る場合には、まず保護フィルムを剥離した後、銅張積層板又はフレキシブル基板等の永久回路作製用基板上にラミネーター等を用いDFをラミネートし、配線パターンマスクフィルム等を通し露光を行う。次に必要に応じて支持フィルムを剥離し、現像液により未露光部分(ネガ型の場合)の感光性樹脂層を溶解、若しくは分散除去し、基板上に硬化レジストパターン(以下、単にレジストパターンと呼ぶこともある)を形成させる。
【0004】
レジストパターン形成後回路を形成させるプロセスは、大きく2つの方法に分かれる。第一の方法は、レジストパターンによって覆われていない基板表面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチング除去した後、レジストパターン部分を現像液よりも強いアルカリ水溶液で除去する方法(エッチング法)である。第二の方法は同上の上記基板表面に銅、半田、ニッケル又は錫等のメッキ処理を行った後、同様にレジストパターン部分の除去、さらに現れた基板表面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチングする方法(メッキ法)である。エッチングには塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体等の溶液等が用いられる。
【0005】
さて、このような製造工程において、生産性向上の観点から高感度化が求められている。一方で、露光方式も用途に応じ多様化しており、レーザーによる直接描画によりフォトマスクを不要とする、マスクレス露光が近年急激な広がりを見せている。マスクレス露光の光源としては波長350〜410nmの光、特にi線又はh線(405nm)が用いられる場合が多い。従って、これらの波長域、特にh線の光源に対して高感度、かつ高解像度のレジストパターンを形成できることが重要視されている。更に、電子機器の小型化、軽量化に伴い、プリント配線板の微細化、高密度化が進んでおり、解像性等に優れた高性能DFが求められている。
【0006】
このような高感度と高解像性を実現させる感光性樹脂組成物として、特許文献1には、青紫色レーザー感光性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4337485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術は、解像度、基板の赤面防止、硫酸銅めっきに用いるためのレジストとしての性能、等を同時に満足するものではなく、なお改良の余地を有するものであった。特に、DFを基板にラミネートした後に、基板表面に付着した有機物に起因して基板が赤面するという問題、及びめっき工程において硫酸銅めっき液を用いる場合にコンタミネーションが生じるという問題のいずれも、上記特許文献1は考慮していない。
【0009】
従って、本発明は、解像度、基板の赤面防止性、及び硫酸銅めっき液使用時の耐コンタミネーション性に優れた感光性樹脂組成物、等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、以下の技術的手段により係る課題を解決することができることを見出した。
【0011】
すなわち、以下の通りのものである。
【0012】
[1] 以下の(A)〜(E)の各成分、
(A)アルカリ可溶性高分子、
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)増感剤、及び
(E)添加剤
からなり、
前記(C)成分が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物を、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分の総量基準で0.01〜10質量%含み、
前記(D)成分が、ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体若しくはビスベンゾオキサゾリルナフタレン誘導体又はこれらの両者を、総量で、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分の総量基準で0.01〜1質量%含み、
前記(E)成分が、カルボキシルベンゾトリアゾール類を、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分の総量基準で0.01〜5質量%含む、感光性樹脂組成物。
[2] 前記(A)成分が、以下の(a−1)及び(a−2)からなる群から選択される1種以上の成分:
(a−1)スチレン15〜60質量%と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上のアクリル単量体とを含む重合成分に由来するアクリル共重合体;
(a−2)ベンジルメタクリレート20〜85質量%と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びベンジルメタクリレート以外のメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上のアクリル単量体とを含む重合成分に由来するアクリル共重合体;
を、総量で、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分の総量基準で30〜60質量%含む、上記[1]に記載の前記感光性樹脂組成物。
[3] 前記(B)成分が、一分子中に2個を超える(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物より成る感光性樹脂層が支持体に積層された、感光性樹脂積層体。
[5] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像する工程を含む、レジストパターン形成方法。
[6] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像し、めっきする工程を含む、回路基板の製造方法。
[7] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像し、エッチングする工程を含む、回路基板の製造方法。
[8] 前記露光を、描画パターンの直接描画により行う、上記[6]又は[7]に記載の回路基板の製造方法。
[9] 上記[5]に記載のレジストパターン形成方法によって、基材としての半導体パッケージ用基板上にレジストパターンを形成する工程、及び前記レジストパターンが形成された半導体パッケージ用基板をエッチングするか又はめっきする工程を含む、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、解像度、基板の赤面防止性、及び硫酸銅めっき液使用時の耐コンタミネーション性に優れた感光性樹脂組成物、等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための例示の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
<感光性樹脂組成物>
実施の形態では、感光性樹脂組成物は、以下の(A)〜(E)の各成分:(A)アルカリ可溶性高分子(本開示で(A)成分ともいう)、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(本開示で(B)成分ともいう)、(C)光重合開始剤(本開示で(C)成分ともいう)、(D)増感剤(本開示で(D)成分ともいう)、及び(E)添加剤(本開示で(E)成分ともいう)からなる。以下、各成分を順に説明する。
【0016】
(A)アルカリ可溶性高分子
(A)アルカリ可溶性高分子はアルカリ物質に溶け易い高分子であり、具体的には、アルカリ可溶性に寄与する官能基(例えばカルボキシル基)を、所望のアルカリ物質に溶解するのに十分な量で有する高分子である。また、典型的には、(A)アルカリ可溶性高分子に含まれるカルボキシル基の量は、酸当量で100〜600であり、好ましくは250〜450である。酸当量とは、その分子中に1当量のカルボキシル基を有する線状重合体の質量(単位:グラム)を言う。(A)アルカリ可溶性高分子中のカルボキシル基は、感光性樹脂層にアルカリ水溶液に対する現像性及び剥離性を与えるために必要である。酸当量を100以上にすることは、現像耐性、解像性及び密着性を向上させる観点から好ましく、そして酸当量を250以上にすることが好ましい。一方で、酸当量を600以下にすることは、現像性及び剥離性を向上させる観点から好ましく、そして酸当量を450以下にすることが好ましい。
【0017】
(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000である。重量平均分子量を500,000以下にすることは、解像性及び現像性を向上させる観点から好ましく、重量平均分子量を300,000以下にすることがより好ましく、200,000以下にすることが更に好ましい。一方で、重量平均分子量を5,000以上にすることは、現像凝集物の性状、並びに感光性樹脂積層体のエッジフューズ性及びカットチップ性等の未露光膜の性状を制御する観点から好ましく、重量平均分子量を10,000以上にすることがより好ましく、20,000以上にすることが更に好ましい。エッジフューズ性とは、感光性樹脂積層体としてロール状に巻き取った場合にロールの端面から感光性樹脂層がはみ出す現象をいう。カットチップ性とは未露光膜をカッターで切断した場合にチップが飛ぶ現象をいう。このチップが感光性樹脂積層体の上面等に付着すると、後の露光工程等でチップがマスクに転写して不良品の原因となる。
【0018】
(A)アルカリ可溶性高分子の分散度(分子量分布と呼ぶこともある)は1〜6程度でよく、好ましくは1〜4である。分散度は、重量平均分子量と数平均分子量との比で表され、(分散度)=(重量平均分子量)/(数平均分子量)である。重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算により測定される値である。
【0019】
(A)アルカリ可溶性高分子は、後述する第一の単量体の少なくとも1種及び後述する第二の単量体の少なくとも1種から得られる共重合体であることが好ましい。
【0020】
第一の単量体は、分子中に重合性不飽和基を1個有するカルボン酸又は酸無水物である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。特に(メタ)アクリル酸が好ましい。本明細書では、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを示す。以下同様である。
【0021】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルアルコールのエステル類、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、及びスチレン誘導体が挙げられる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。レジストパターンの解像性及び密着性を向上させる観点からは、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
第一の単量体及び第二の単量体の共重合割合は、(A)アルカリ可溶性高分子のアルカリ溶解性の調整の観点から、第一の単量体が10〜60質量%であり、かつ第二の単量体が40〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは第一の単量体が15〜35質量%であり、かつ第二の単量体が65〜85質量%である。
【0023】
(A)アルカリ可溶性高分子の合成は、第一の単量体と第二の単量体との混合物を、アセトン、メチルエチルケトン、又はイソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより行われることが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0024】
(A)アルカリ可溶性高分子(複数種のアルカリ可溶性高分子を混合して使用する場合には、その混合物)が、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の総量(以下、(A)成分〜(E)成分の総量ということもある)中に占める割合としては、好ましくは10〜90質量%の範囲であり、より好ましくは30〜70質量%であり、更に好ましくは40〜60質量%である。(A)成分〜(E)成分の総量に対する(A)成分の割合を90質量%以下にすることは現像時間を制御する観点から好ましく、一方で、(A)成分〜(E)成分の総量に対する(A)成分の割合を10質量%以上にすることはエッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
【0025】
特に、感光性樹脂組成物は、(A)成分として、以下の(a−1)及び(a−2)からなる群から選択される1種以上の成分:
(a−1)スチレン15〜60質量%と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上のアクリル単量体とを含む重合成分に由来するアクリル共重合体;
(a−2)ベンジルメタクリレート20〜85質量%と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びベンジルメタクリレート以外のメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上のアクリル単量体とを含む重合成分に由来するアクリル共重合体;
を含むことが、高解像性を発現する上で好ましい。(a−1)成分及び(a−2)成分の総量の、(A)成分〜(E)成分の総量中に占める割合としては、10〜60質量%が、高解像性を発現する上で好ましい。上記割合は解像性の観点から好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、カットチップ性の観点から好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0026】
(a−1)における重合成分は、スチレン及び上記のアクリル単量体のみからなるものでもよいし、他の単量体を更に含んでもよい。また(a−2)における重合成分は、ベンジルメタクリレート及び上記のアクリル単量体のみからなるものでもよいし、他の単量体を更に含んでもよい。重合成分の組合せの特に好ましい例としては、スチレンが15〜60質量%に対してメタクリル酸が20〜35質量%、残りがメチルメタクリレートの組合せ、スチレンが30〜50質量%に対してメタクリル酸が20〜40質量%、2−エチルヘキシルアクリレートが10〜20質量%、残りが2−ヒドロキシエチルメタクリレートの組合せ、ベンジルメタクリレートが20〜60質量%に対して、スチレンが10〜30質量%、残りがメタクリル酸の組合せ、ベンジルメタクリレートが60〜85質量%に対して、2−エチルヘキシルアクリレートが0〜15質量%、残りがメタクリル酸の組合せ等が挙げられる。
【0027】
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、硬化性及び(A)アルカリ可溶性高分子との相溶性の観点から分子内にアクリロイル基を有する化合物を含むことが好ましい。分子内にアクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ポリアルキレンオキシドの片方の末端に(メタ)アクリル酸を付加した化合物又は、片方の末端に(メタ)アクリル酸を付加し、他方の末端をアルキルエーテル化又はアリルエーテル化したもの等を挙げることができる。
【0028】
このような化合物としては、ポリエチレングリコールをフェニル基に付加した化合物の(メタ)アクリレートであるフェノキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート又は、平均2モルのプロピレンオキシド(以下、POと略することもある)を付加したポリプロピレングリコールと平均7モルのエチレンオキシド(以下、EOと略することもある)を付加したポリエチレングリコールをノニルフェノールに付加した化合物の(メタ)アクリレートである4−ノルマルノニルフェノキシヘプタエチレングリコールジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、平均1モルのプロピレンオキシドを付加したポリプロピレングリコールと平均5モルのエチレンオキシドを付加したポリエチレングリコールをノニルフェノールに付加した化合物の(メタ)アクリレートである4−ノルマルノニルフェノキシペンタエチレングリコールモノプロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。平均8モルのエチレンオキシドを付加したポリエチレングリコールをノニルフェノールに付加した化合物のアクリレートである4−ノルマルノニルフェノキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート(例えば東亞合成(株)製、M−114)も挙げられる。
【0029】
例えば、アルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又はエチレンオキシド鎖とプロピレンオキシド鎖とがランダム若しくはブロックで結合したアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を挙げることができる。
【0030】
このような化合物としては、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘプタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、12モルのエチレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物等のポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、ポリプロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリブチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト等を挙げることができる。化合物中にエチレンオキシド基とプロピレンオキシド基とを含むポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、平均12モルのプロピレンオキシドを付加したポリプロピレングリコールにエチレンオキシドをさらに両端にそれぞれ平均3モル付加したグリコールのジメタクリレート、平均18モルのプロピレンオキシドを付加したポリプロピレングリコールにエチレンオキシドをさらに両端にそれぞれ平均15モル付加したグリコールのジメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、ビスフェノールAをアルキレンオキシド変性し、両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が解像性及び密着性の観点では好ましい。アルキレンオキシド変性にはエチレンオキシド変性、プロピレンオキシド変性、ブチレンオキシド変性、ペンチレンオキシド変性、へキシレンオキシド変性等がある。また解像性及び密着性の観点から、ビスフェノールAをエチレンオキシド変性し、両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が特に好ましい。
【0032】
このような化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(例えば新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−200)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(例えば新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−500)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等の2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。さらに、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのプロピレンオキシドと平均6モルのエチレンオキシドを付加したポリアルキレングリコールのジ(メタ)クリレート又は、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのプロピレンオキシドと平均15モルのエチレンオキシドを付加したポリアルキレングリコールのジ(メタ)クリレート等、エチレンオキシド変性及びプロピレンオキシド変性した化合物も、解像性及び密着性の観点から好ましい。これらビスフェノールAをアルキレンオキシド変性し両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物中の、ビスフェノールA 1モルに対するエチレンオキシドのモル数は、解像性、密着性及び柔軟性を向上させる観点から、合計で10モル以上30モル以下が好ましい。
【0033】
本実施の形態においては、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、一分子中に2個を超える(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことが、高解像性を発現する上で好ましい。一分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、より好ましくは3個以上である。一分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、剥離性の観点から好ましくは6個以下、より好ましくは4個以下である。一分子中に2個を超える(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、中心骨格として分子内にアルキレンオキシド基を付加させることができる基を3モル以上(すなわち中心骨格1つ当たり3つ以上)有し、これにエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基又はブチレンオキシド基等のアルキレンオキシド基が付加されたアルコールと、(メタ)アクリル酸とから(メタ)アクリレートを形成することで得られる。中心骨格がアルコールであれば、直接(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートを形成することでも得られる。中心骨格になることができる化合物としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌレート環等を挙げることができる。
【0034】
このような化合物としては、トリメチロールプロパンのEO3モル変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンのEO6モル変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンのEO9モル変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンのEO12モル変性トリアクリレート、グリセリンのEO3モル変性トリアクリレート(例えば新中村化学工業(株)製A−GLY−3E)、グリセリンのEO9モル変性トリアクリレート(例えば新中村化学工業(株)製A−GLY−9E)、グリセリンのEO6モルPO6モル変性トリアクリレート(A−GLY−0606PE)、グリセリンのEO9モルPO9モル変性トリアクリレート(A−GLY−0909PE)、ペンタエリスリトールの4EO変性テトラアクリレート(例えばサートマージャパン(株)社製SR−494)、ペンタエリスリトールの35EO変性テトラアクリレート(例えば新中村化学工業(株)社製NKエステルATM−35E)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、等を挙げることができる。
【0035】
中でも好ましい(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の例は、室温よりも融点が低く、保存時に容易に固化しないものが、取り扱い性の観点から好ましく、特にトリメチロールプロパンのEO3モル変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールの4EO変性テトラアクリレートが好ましい。
【0036】
一分子中に2個を超える(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量としては、前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の50〜100質量%であることが好ましい。該含有量は、解像度の観点から好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。該含有量は、100質量%であってもよいが、剥離性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下であってもよい。
【0037】
(B)成分は、前記した化合物以外にも、例えば以下に挙げる化合物を適宜含むことができる。例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロキシポリプロピレンオキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロキシポリブチレンオキシ)フェニル]プロパン、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(アクリロイルキシ)プロピルフタレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに以下のようなウレタン化合物も挙げられる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート又はジイソシアネート化合物(例えば、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート)と、一分子中にヒドロキシル基と(メタ)アクリル基を有する化合物、例えば、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、オリゴプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化合物が挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレート(例えば日本油脂(株)製、ブレンマーPP1000)との反応生成物がある。また、ポリプロピレングリコール又はポリカプロラクトンにより変性したイソシアヌル酸エステルのジ又はトリ(メタ)アクリレート等も挙げられる。また、例えばジイソシアネートとポリオールとの重付加物として得られるウレタン化合物の末端とエチレン性不飽和二重結合及びヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタンオリゴマー等も挙げることができる。
【0038】
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の前記(A)成分〜(E)成分の総量に対する割合は、5〜70質量%であることが好ましい。この割合を5質量%以上にすることは、感度、解像性及び密着性の観点から好ましく、この割合はより好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。一方で、この割合を70質量%以下にすることは、エッジフューズ及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から好ましく、この割合はより好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0039】
(C)光重合開始剤
(C)光重合開始剤は、感度と解像度を得る観点からヘキサアリールビイミダゾール化合物を含む。
【0040】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,2’,5−トリス−(o−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4’,5’−ジフェニルビイミダゾール、2,4−ビス−(o−クロロフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリス−(o−クロロフェニル)−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−ビス−4,5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,3−ジフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,5−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,3,4−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,3,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,3,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、及び2,2’−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール等が挙げられる。中でも、感度と解像度の観点から2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が好ましい。
【0041】
(C)成分としてヘキサアリールビイミダゾール化合物以外に含有してもよい光重合開始剤としては、N−アリール−α−アミノ酸化合物、キノン類、芳香族ケトン類、アセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン又はベンゾインエーテル類、ジアルキルケタール類、チオキサントン類、ジアルキルアミノ安息香酸エステル類、オキシムエステル類、アクリジン類、ピラゾリン誘導体、N−アリールアミノ酸のエステル化合物、及びハロゲン化合物等が挙げられる。
【0042】
N−アリール−α−アミノ酸化合物の例としては、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等が挙げられる。特にN−フェニルグリシンは増感効果が高く好ましい。
【0043】
キノン類としては、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン等を挙げることができる。
【0044】
芳香族ケトン類としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノンを挙げることができる。
【0045】
アセトフェノン類としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1を挙げることができる。市販品としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、及びイルガキュアー379を挙げることができる。
【0046】
アシルフォスフィンオキサイド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフォンオキサイド等が挙げられる。市販品としてはBASF社製のルシリンTPO、及びチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819が挙げられる。
【0047】
ベンゾイン又はベンゾインエーテル類としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾインを挙げることができる。
【0048】
ジアルキルケタール類としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、及びベンジルジエチルケタールを挙げることができる。
【0049】
チオキサントン類としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、及び2−クロルチオキサントンを挙げることができる。
【0050】
ジアルキルアミノ安息香酸エステル類としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジエチルアミノ安息香酸エチル、エチル−p−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート等を挙げることができる。
【0051】
オキシムエステル類としては、例えば、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のCGI−325、イルガキュアーOXE01、及びイルガキュアーOXE02が挙げられる。
【0052】
アクリジン類としては、例えば、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン、9−フェニルアクリジン、9−メチルアクリジン、9−エチルアクリジン、9−クロロエチルアクリジン、9−メトキシアクリジン、9−エトキシアクリジン、9−(4−メチルフェニル)アクリジン、9−(4−エチルフェニル)アクリジン、9−(4−n−プロピルフェニル)アクリジン、9−(4−n−ブチルフェニル)アクリジン、9−(4−tert−ブチルフェニル)アクリジン、9−(4−メトキシフェニル)アクリジン、9−(4−エトキシフェニル)アクリジン、9−(4−アセチルフェニル)アクリジン、9−(4−ジメチルアミノフェニル)アクリジン、9−(4−クロロフェニル)アクリジン、9−(4−ブロモフェニル)アクリジン、9−(3−メチルフェニル)アクリジン、9−(3−tert−ブチルフェニル)アクリジン、9−(3−アセチルフェニル)アクリジン、9−(3−ジメチルアミノフェニル)アクリジン、9−(3−ジエチルアミノフェニル)アクリジン、9−(3−クロロフェニル)アクリジン、9−(3−ブロモフェニル)アクリジン、9−(2−ピリジル)アクリジン、9−(3−ピリジル)アクリジン、及び9−(4−ピリジル)アクリジンを挙げることができる。
【0053】
ピラゾリン誘導体としては、例えば、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−エトキシ−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチニル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(2,4−ジブチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(2,6−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(2,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジ−n−ブチル−スチリル)−5−(2,6−ジ−n−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(3,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−フェニル−ピラゾリン、1−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(4−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−tert−オクチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−tert−オクチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−ドデシル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−ドデシル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−ドデシル−スチニル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−tert−オクチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−ドデシル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−ドデシル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(5−tert−オクチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(4,6−ジブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチルスチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(2,6−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(2,6−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(2,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(2,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(2,6−ジ−n−ブチル−スチリル)−5−(2,6−ジ−n−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(4,6−ジ−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−(5,7−ジ−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−(5−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−(4,6−ジ−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−アミノ−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−N−エチル−フェニル)−ピラゾリン、及び1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−N,N−ジエチル−フェニル)−ピラゾリンが挙げられる。
【0054】
更に、例えば、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−n−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−イソブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−n−ペンチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−イソペンチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−ネオペンチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−ヘキシル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−ヘプチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−n−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−ノニル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−デシル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−ウンデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリンが挙げられる。中でも、密着性とレジストパターンの矩形性の観点から、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン及び1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリンが好ましい。
【0055】
N−アリールアミノ酸のエステル化合物としては、例えば、N−フェニルグリシンのメチルエステル、N−フェニルグリシンのエチルエステル、N−フェニルグリシンのn−プロピルエステル、N−フェニルグリシンのイソプロピルエステル、N−フェニルグリシンの1−ブチルエステル、N−フェニルグリシンの2−ブチルエステル、N−フェニルグリシンのtertブチルエステル、N−フェニルグリシンのペンチルエステル、N−フェニルグリシンのヘキシルエステル、N−フェニルグリシンのペンチルエステル、N−フェニルグリシンのオクチルエステル等が挙げられる。
【0056】
ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンジル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、クロル化トリアジン化合物、ジアリルヨードニウム化合物等が挙げられ、とりわけトリブロモメチルフェニルスルフォンが好ましい。感光性樹脂組成物中のハロゲン化合物の含有量は、感度の観点から前記(A)成分〜(E)成分の総量に対して0.01〜3質量%であることが好ましい。
【0057】
これらの光重合開始剤は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。
【0058】
(C)光重合開始剤の前記(A)成分〜(E)成分の総量に対する割合は、0.1〜20質量%が好ましい。この割合を0.1質量%以上にすることは充分な感度を得る観点から好ましく、この割合を0.2質量%以上にすることがより好ましく、0.5質量%以上にすることが更に好ましい。一方で、この割合を20質量%以下にすることは高い解像性を得て、かつ現像液中での凝集性を抑制する観点から好ましく、この割合を10質量%以下にすることがより好ましい。
【0059】
また、(C)光重合開始剤としてのヘキサアリールビイミダゾール化合物の配合量は、前記(A)成分〜(E)成分の総量に対して0.01〜10質量%である。この配合量を0.01質量%以上にすることは、充分な感度を得るという観点から必要であり、この配合量を1質量%以上にすることが好ましく、3質量%以上にすることがより好ましい。一方で、この配合量を10質量%以下にすることは、高い解像性を得て、かつ現像液中での凝集性を抑制する観点から必要であり、この配合量を8質量%以下にすることが好ましく、6質量%以下にすることがより好ましい。
【0060】
ここで、ヘキサアリールビイミダゾール化合物の存在下、本開示の(D)成分と(E)成分とを組み合わせることで、感度、解像度、基板の赤面防止性、及び硫酸銅めっき液使用時の耐コンタミネーション性に優れた感光性樹脂組成物が実現されるメカニズムについて、その詳細は詳らかではないが、以下の様に推察される。
【0061】
即ち、露光機から照射された光を(D)成分のビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体又はビスベンゾオキサゾリルナフタレン誘導体が吸収し、ヘキサアリールビイミダゾール化合物に電子又はエネルギーを供与する。電子又はエネルギーを受け取ったヘキサアリールビイミダゾールが開裂してトリアリールイミダゾールラジカルが発生する。このトリアリールイミダゾールラジカルが(B)成分のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と反応して、ラジカル重合を開始する。この光ラジカル重合を効率よく開始させる、すなわち高感度であるために、ヘキサアリールビイミダゾール化合物と(D)成分のビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体又はビスベンゾオキサゾリルナフタレン誘導体の組合せが有効であるものと考えられる。
【0062】
また、めっき用のレジストに用いる場合、基板の赤面防止と硫酸銅めっき液使用時の耐コンタミネーション性は重要であり、ヘキサアリールビイミダゾールと(D)成分のビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体又はビスベンゾオキサゾリルナフタレン誘導体、更にカルボキシルベンゾトリアゾール類の組み合わせが、高感度を維持したまま、赤面防止性と硫酸銅めっき液使用時の耐コンタミネーション性の向上に有効であるものと考えられる。
【0063】
(D)増感剤
(D)増感剤は、感度および硫酸銅めっき液への耐コンタミネーション性の観点から、ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体若しくはビスベンゾオキサゾリルナフタレン誘導体又はこれらの両者を含む。
【0064】
ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体は、チオフェンの2位と5位の炭素に2つのベンズオキサゾリル基が結合した骨格を有する化合物であり、下記式(I)で示される骨格を有する化合物である。
【化1】
【0065】
ビスベンゾオキサゾリルナフタレン誘導体は、ナフタレンの1位と4位の炭素に2つのベンゾオキサゾリル基が結合した骨格を有する化合物であり、下記式(II)で示される骨格を有する化合物である。
【化2】
【0066】
ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体の具体例としては、2,5−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス(5−エチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス(5−tertブチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス(5−フェニル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス(5−tertオクチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン等が挙げられる。2つのベンゾオキサゾリル基についている置換基は、同一であっても異なっていても良い。中でも、感度と有機溶剤への溶解性の観点から2,5−ビス(5−tertブチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェンが好ましい。
【0067】
ビスベンゾオキサゾリルナフタレン誘導体としては、1,4−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン、1,4−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン、1,4−ビス(5−エチル−2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン、1,4−ビス(5−tertブチル−2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン、1,4−ビス(5−フェニル−2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン、1,4−ビス(5−tertオクチル−2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン、等が挙げられる。2つのベンゾオキサゾリル基についている置換基は、同一であっても異なっていても良い。中でも、感度と有機溶剤への溶解性の観点から1,4−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレンが好ましい。
【0068】
(D)増感剤の前記(A)成分〜(E)成分の総量に対する割合は、0.01〜1質量%が好ましい。この割合を0.01質量%以上にすることは充分な感度を得る観点から好ましく、この割合を0.05質量%以上にすることがより好ましく、0.1質量%以上にすることが更に好ましい。一方で、この割合を1質量%以下にすることは高い解像性を得る観点から好ましく、この割合を0.8質量%以下にすることがより好ましく、0.5質量%以下にすることが更に好ましい。
【0069】
ビスベンゾオキサゾリルチオフェン誘導体及びビスベンゾオキサゾリルナフタレン誘導体の合計配合量は、前記(A)成分〜(E)成分の総量に対して0.01〜1質量%である。この配合量を0.01質量%以上にすることは、充分な感度を得るという観点から必要であり、この配合量を0.05質量%以上にすることが好ましく、0.1質量%以上にすることがより好ましい。一方で、この配合量を1質量%以下にすることは、高い解像性を得る観点から必要であり、この配合量を0.8質量%以下にすることが好ましく、0.5質量%以下にすることがより好ましい。
【0070】
(E)添加剤
本開示で「(E)添加剤」とは、感光性樹脂組成物に所望の機能を与えるために配合される成分であって上述の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分以外のものを包含する。
【0071】
(E)添加剤は、基板の赤面を防止する観点から、カルボキシルベンゾトリアゾール類を含む。カルボキシルベンゾトリアゾール類を前記(A)成分〜(E)成分の総量に対して0.01〜5質量%含む。この配合量を0.01質量%以上にすることは、感光性樹脂積層体を銅張積層板等の基板にラミネートし、時間が経ってから現像したときの基板の赤面を防止するという観点から必要であり、この配合量を0.03質量%以上にすることが好ましく、0.05質量%以上にすることがより好ましい。一方で、この配合量を5質量%以下にすることは、高い解像性を得る観点から必要であり、この配合量を3質量%以下にすることが好ましく、1質量%以下にすることが更に好ましい。
【0072】
カルボキシルベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、置換されていてもよいアミノメチル基を含有している1−〔N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル〕−5−カルボキシルベンゾトリアゾール、1−〔N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル〕−4−カルボキシルベンゾトリアゾール、1−〔N,N−ビス(イソプロピル)アミノメチル〕−5−カルボキシルベンゾトリアゾール、1−〔N−ヒドロ−N−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1−プロピルアミノメチル〕−5−カルボキシルベンゾリアゾール、1−〔N,N−ビス(1−オクチル)アミノメチル〕−5−カルボキシルベンゾトリアゾール、1−〔N,N−ビス(2−ヒドロオキシプロピル)アミノメチル〕−5−カルボキシルベンゾトリアゾール、1−〔N,N−ビス(1−ブチル)アミノメチル〕−5−カルボキシルベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらの中では、赤面防止の性能の観点から1−〔N,N−ビス(1−ブチル)アミノメチル〕−5−カルボキシルベンゾトリアゾールが好ましい。カルボキシル基の置換位置は、合成過程で5位と6位が混在することがあるが、そのいずれも好ましく、例えば5位置換体と6位置換体との0.5:1.5〜1.5:0.5(質量比)の混合物、特に1:1(質量比)混合物が使用できる。単に「1−N−ジブチルアミノメチルカルボキシルベンゾトリアゾール」と記述して5位置換体と6位置換体の混合物を指すこともある。カルボキシルベンゾトリアゾールとして、例えば特開2008−175957号公報に記載の化合物も使用できる。
【0073】
上述した感光性樹脂組成物に、(E)成分として加えても良いその他の添加剤としては、着色剤、ラジカル重合禁止剤、カルボキシルベンゾトリアゾール類以外のベンゾトリアゾール類、ビスフェノールAのエポキシ化合物類、可塑剤、等が挙げられる。
【0074】
着色剤としては、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、パラマジェンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(例えば保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(例えば保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)、1,4−ビス(4−メチルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン(例えばオリエント化学工業(株)製、OPLAS GREEN533)、1,4−ビス(ブチルアミノ)アントラキノン(例えばオリエント化学工業(株)製、OIL BLUE 2N)、1,4−ビス(イソプロピルアミノ)−9,10−アントラキノン(例えばオリエント化学工業(株)製、OIL BLUE 630)等が挙げられる。
【0075】
なお、着色剤の前記(A)成分〜(E)成分の総量に対する割合は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%、特に好ましくは0.5〜1質量%である。
【0076】
着色剤としては、例えば、ロイコ染料、又はフルオラン染料を含有してもよい。これらを含有することにより感光性樹脂層の露光部分が発色するので視認性の点で好ましく、また、検査機等が露光のための位置合わせマーカーを読み取る場合、露光部と未露光部のコントラストが大きい方が認識し易くなるため、有利である。
【0077】
ロイコ染料としては、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。とりわけ、コントラストが良好となる観点から、ロイコ染料としては、ロイコクリスタルバイオレットを用いることが好ましい。感光性樹脂組成物中のロイコ染料の含有量は、前記(A)成分〜(E)成分の総量に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。この含有量を0.1質量%以上にすることは、露光部分と未露光部分のコントラストを良好にする観点から好ましく、この含有量を0.2質量%以上にすることがより好ましく、0.4質量%以上にすることが特に好ましい。一方で、この含有量を10質量%以下にすることが保存安定性を維持するという観点から好ましく、この含有量を2質量%以下にすることがより好ましく、1質量%以下にすることが特に好ましい。
【0078】
また、感光性樹脂組成物中にロイコ染料とハロゲン化合物を組み合わせて用いることは、密着性及びコントラストを最適化する観点から好ましい。ハロゲン化合物は、(C)成分として前述した有機ハロゲン化合物に由来することができ、特にトリブロモメチルフェニルスルフォンが好ましい。
【0079】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感光性樹脂組成物の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩が好ましい。
【0080】
カルボキシルベンゾトリアゾール類以外のベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、ビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0081】
ビスフェノールAのエポキシ化合物類としては、ビスフェノールAをポリプロピレングリコールで修飾し末端をエポキシ化した化合物等が挙げられる。
【0082】
なお、ラジカル重合禁止剤、カルボキシルベンゾトリアゾール類以外のベンゾトリアゾール類、カルボキシルベンゾトリアゾール類、及びビスフェノールAのエポキシ化合物類の合計含有量は、前記(A)成分〜(E)成分の総量に対して、好ましくは0.001〜3質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%である。当該含有量を0.001質量%以上にすることは、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与するという観点から好ましく、一方で、当該含有量を3質量%以下にすることは、感光性樹脂組成物の感度を維持し、かつ染料の脱色及び発色を抑える観点から好ましい。
【0083】
可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルホン酸アミド、p−トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエ−テル、ポリプロプレンレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。また、アデカノールSDX−1569、アデカノールSDX−1570、アデカノールSDX−1571、アデカノールSDX−479(以上旭電化(株)製)、ニューポールBP−23P、ニューポールBP−3P、ニューポールBP−5P、ニューポールBPE−20T、ニューポールBPE−60、ニューポールBPE−100、ニューポールBPE−180(以上三洋化成(株)製)、ユニオールDB−400、ユニオールDAB−800、ユニオールDA−350F、ユニオールDA−400、ユニオールDA−700 (以上日本油脂(株)製)、BA−P4Uグリコール、BA−P8グリコール(以上日本乳化剤(株)製)等のビスフェノール骨格を有する化合物も挙げられる。
【0084】
前記(A)成分〜(E)成分の総量に対する可塑剤の含有量は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは1〜30質量%である。該含有量を1質量%以上にすることは、現像時間の遅延を抑え、かつ硬化膜に柔軟性を付与するという観点から好ましく、一方で、該含有量を50質量%以下にすることは、硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から好ましい。
【0085】
<感光性樹脂積層体>
別の実施の形態は、上記のような感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層が支持体上に積層された感光性樹脂積層体を提供する。必要により、感光性樹脂積層体は、感光性樹脂層の支持体側とは反対側の表面に保護層を有してもよい。
【0086】
支持体は通常支持フィルムである。支持フィルムとしては、露光光源から放射される光を透過する透明なものが好ましい。このような支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じて延伸されたものも使用可能であり、ヘーズ5以下のものであることが好ましい。フィルムの厚みは、薄いほど画像形成性及び経済性を向上させるため有利であるが、感光性樹脂積層体の強度を維持するために10〜30μmのものが好ましく用いられる。
【0087】
感光性樹脂積層体に用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について支持体よりも保護層の方が充分小さく、容易に剥離できることである。例えば、ポリエチレンフィルム、又はポリプロピレンフィルムが保護層として好ましく使用できる。また、例えば特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることもできる。保護層の膜厚は10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0088】
保護層にポリエチレンを用いた場合は、ポリエチレンフィルム表面にフィッシュアイと呼ばれるゲルがあり、これが感光性樹脂層に転写することがある。フィッシュアイが感光性樹脂層に転写するとラミネート時に空気を巻き込んで空隙になることがあり、レジストパターンの欠損につながる。フィッシュアイを防ぐ観点から、保護層の材質は延伸ポリプロピレンが好ましい。具体例としては王子製紙(株)製アルファンE−200Aを挙げることができる。
【0089】
感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚さは、用途において異なるが、好ましくは5μm〜100μm、より好ましくは7μm〜60μmであり、薄いほど解像度は向上し、また厚いほど膜強度が向上する。
【0090】
感光性樹脂積層体の製造方法について説明する。支持体、感光性樹脂層、及び必要により保護層を順次積層し感光性樹脂積層体を作製する方法としては、既知の方法を採用することができる。例えば、感光性樹脂層に用いる感光性樹脂組成物を、これらを溶解する溶剤と混ぜ合わせ均一な溶液にし、まず支持フィルム上にバーコーター又はロールコーターを用いて塗布し、次いで乾燥して支持フィルム上に感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層を積層する。次いで必要により、感光性樹脂層上に保護層をラミネートすることにより感光性樹脂積層体を作製することができる。
【0091】
なお、溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、メタノール、エタノール又はイソプロパノールに代表されるアルコール類等が挙げられる。当該溶剤は、支持フィルム上に塗布する感光性樹脂組成物の溶液の粘度が25℃で500〜4000mPa・sとなるように、感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0092】
<レジストパターン形成方法>
別の態様は、上述した感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像する工程を含む、レジストパターン形成方法を提供する。以下に、本実施の形態の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを形成する方法の一例を説明する。レジストパターンとしては、回路基板(プリント配線板)、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF(チップオンフィルム)用基板、半導体パッケージ用基板、液晶パネル用透明電極、液晶パネル用TFT配線、有機ELディスプレイ用配線、PDP(プラズマディスプレイパネル)用電極等において形成されるレジストパターンが挙げられる。
【0093】
レジストパターンは、以下の各工程を経て形成できる。
(1)ラミネート工程
感光性樹脂層の保護層を剥がしながら、銅張積層板、フレキシブル基板等の基板上にホットロールラミネーターを用いて感光性樹脂積層体を密着させる。ラミネート条件は従来公知の条件で適宜設定すればよい。
【0094】
(2)露光工程
所望のパターン(例えば配線パターン)を有するマスクフィルムを感光性樹脂積層体の支持体上に密着させて活性光源を用いて露光するか、又は所望のパターンに対応する描画パターンを直接描画によって露光する。露光波長としては、i線、h線、g線、これらの混合等を適宜使用できるが、本実施の形態の感光性樹脂組成物は、i線又はh線、特にh線での露光において高感度及び高解像度を実現できる点で有利である。またこれにより、本実施の形態の感光性樹脂組成物は、特に直接描画において有用である。露光条件は従来公知の条件で適宜設定すればよい。
【0095】
(3)現像工程
露光後、感光性樹脂層上の支持体を剥離し、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去してレジストパターンを基板上に形成する。アルカリ水溶液としては、Na2CO3又はK2CO3の水溶液を用いる。アルカリ水溶液は、感光性樹脂層の特性に合わせて適宜選択されるが、約0.2〜2質量%の濃度、かつ約20〜40℃のNa2CO3水溶液が一般的である。
【0096】
上記の各工程を経てレジストパターンを得ることができるが、場合により、さらに約100〜300℃の加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、更なる耐薬品性向上が可能となる。加熱には熱風、赤外線、又は遠赤外線の方式の加熱炉を用いることができる。
【0097】
別の態様は、上述の感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像し、めっきする工程を含む、回路基板の製造方法、及び、上述の感光性樹脂積層体を基材にラミネートし、露光し、現像し、エッチングする工程を含む、回路基板の製造方法を提供する。回路基板は、レジストパターン形成方法について上述したような手順でレジストパターンが形成された基材を、更にエッチング又はめっきすることにより製造できる。特に、回路基板の製造において露光を描画パターンの直接描画により行うことは、マスクの作製が不要であるため、生産性の観点から有利である。エッチング及びめっきは、それぞれ以下のように実施できる。
【0098】
(4)エッチング工程又はめっき工程
上述の現像により露出した基材の表面(例えば銅張積層板の場合の銅面)をエッチング又はめっきし、導体パターンを形成する。エッチング及びめっきの方法はそれぞれ従来公知の方法を適宜使用できる。
【0099】
(5)剥離工程
その後、レジストパターンを現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液により基板から剥離する。剥離用のアルカリ水溶液についても特に制限はないが、濃度約2〜5質量%、かつ約40〜70℃の温度のNaOH又はKOHの水溶液が一般に用いられる。剥離液に、少量の水溶性溶媒を加えることもできる。
上記のような手順で、回路基板を製造できる。
【0100】
また、別の態様は、上述したレジストパターン形成方法によって基材としての半導体パッケージ用基板上にレジストパターンを形成する工程、及び該レジストパターンが形成された半導体パッケージ用基板をエッチングするか又はめっきする工程を含む、半導体パッケージの製造方法を提供する。半導体パッケージ用基板、及び半導体パッケージの構成は、従来公知の任意のものを適宜採用できる。またレジストパターンの形成、及びエッチング又はめっきは、上述したような手順でそれぞれ実施できる。
【0101】
本実施の形態の感光性樹脂積層体は、回路基板(プリント配線板)、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF(チップオンフィルム)用基板、半導体パッケージ用基板、液晶パネル用透明電極、液晶パネル用TFT配線、有機ELディスプレイ用配線、PDP(プラズマディスプレイパネル)用電極等の導体パターンの製造に適した感光性樹脂積層体である。
【0102】
上述の通り、本実施の形態によれば、h線の露光においても、高感度で高解像度であり、基板へのラミネート後に基板が赤面しにくく、硫酸銅めっき液へのコンタミネーションが無い感光性樹脂積層体を提供すること、並びに該感光性樹脂積層体を用いたレジストパターンの形成方法及び導体パターンの形成方法を提供することができる。
【0103】
なお、上述した各種パラメータについては特に断りの無い限り、後述の実施例における測定方法に準じて測定される。
【実施例】
【0104】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨から逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、上記の発明を実施するための形態及び後述の実施例における物性は以下の方法により測定した。
【0105】
<感度評価>
まず、35μm圧延銅箔を積層した0.4mm厚の銅張積層板を、スプレー圧0.2MPaで研削材(日本カーリット(株)製、サクランダムR(登録商標#220))を用いてジェットスクラブ研磨した。
【0106】
次に、感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、60℃に予熱した銅張積層板に、ホットロールラミネーター(旭化成(株)社製、AL−700)により、感光性樹脂積層体をロール温度105℃でラミネートした。エアー圧はシリンダ圧で0.35MPaとし、積層板の横幅は20cmとし、ラミネート速度は1.5m/分とした。
【0107】
次に、直接描画式露光装置(日立ビアメカニクス(株)製、DE−1DH、光源:GaN青紫ダイオード、主波長405±5nm)により、ストーファー21段ステップタブレットをマスクとして、80mWで40mJ/cm2の露光量で露光した。
【0108】
更に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用いて30℃の1質量%Na2CO3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を最小現像時間の2倍の時間で溶解除去した。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を最小現像時間とした。実際の現像時間は最小現像時間の2倍で現像し、硬化レジストパターンを得た。
【0109】
現像後の残膜段数について、残膜面積がマスクの設計値の90%以上残っているものの段数を、その露光量における残膜段数とした。
【0110】
<解像性評価>
感度評価手順と同様に基板整面及びラミネートを行い、露光部と未露光部との幅が1:1の比率のラインパターンを、描画データを用いて40mJ/cm2の露光量で露光した。その後、最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスク幅を解像度の値とし、解像性を下記のようにランク分けした。
○:解像度の値が16μm以下;
△:解像度の値が16μmを超え、20μm以下;
×:解像度の値が20μmを超える。
【0111】
<硫酸銅めっき液コンタミネーション性評価>
30cm×60cm×厚み25μmの感光性樹脂積層体を、ポリエチレンテレフタレートフィルム側から40mJ/cm2の露光量で露光し、ポリエチレンフィルムを剥がして、ポリチレンテレフタレートフィルム側を下にして、ガラスエポキシ基板に貼り付け、30℃の1質量%Na2CO3水溶液を最小現像時間の2倍の時間、感光性樹脂層側にスプレーした。その後、水洗し、乾燥した感光性樹脂積層体のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、300mLの硫酸銅めっき液(カパーグリーム125浴、メルテックス社製)に浸漬して室温で3日間放置した。その後、めっき液から感光性樹脂を取り除き、硫酸銅めっきハルセル容器(山本鍍金試験器)に267mL入れ、陽極に含燐銅、陰極に黄銅板を用い、全電流2Aで10分間通電して硫酸銅めっきを施した。硫酸銅めっきにおいては液中をエアーバブリングし、陰極の黄銅板はあらかじめ10%硫酸に浸し洗浄したものを用いた。硫酸銅めっき終了後、黄銅板サンプルを水洗し、すぐにエアーで乾燥し、高電流密度側のめっき外観において「曇り」「やけ」「光沢の有無」について判定し、光沢があるものを○、光沢が無く、「曇り」又は「やけ」が見られるものを×とした。
【0112】
<赤面評価>
感度評価手順と同様に基板整面及びラミネートを行った後、この感光性樹脂積層体付き基板を、紫外線並びに可視光線が当たらないように遮光して、23℃50%の温度と湿度のコントロールされた室内で、72時間放置した。放置後の感光性樹脂積層体付き基板のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、感度評価手順と同様にアルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用いて30℃の1質量%Na2CO3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層を最小現像時間の2倍の時間で溶解除去した。感光性樹脂層が除去された基板の銅表面を観察し、赤く変色しているものを×、変色が見られないものを○とした。赤面は、一般的には基板表面に付着した有機物によって基板が赤色に見えるものであり、赤面した基板に硫酸銅めっきを施した場合には、めっき載り不良やめっき剥がれにつながることがある。
【0113】
<重量平均分子量、分散度>
日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)[ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)による検量線使用]によりポリスチレン換算として重量平均分子量、及び分散度を求めた。
【0114】
<アルカリ可溶性高分子の酸当量>
平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定法により酸当量を測定した。
【0115】
[実施例1〜10及び比較例1〜3]
表1及び表2に示す組成(但し、各成分の数字は固形分としての配合量(質量部)を示す。)の感光性樹脂組成物及び溶媒を十分に攪拌、混合して固形分量60質量%の感光性樹脂組成物調合液を得た。支持体として16μm厚のポリエチレンテレフタラートフィルム(三菱樹脂(株)製R340G16)を用意して、そのフィルムの表面に、バーコーターを用いて感光性樹脂組成物調合液を均一に塗布し、95℃の乾燥器中で2分30秒間乾燥して感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは25μmであった。
【0116】
次いで、感光性樹脂層のポリエチレンテレフタラートフィルムを積層していない表面上に、保護層として19μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製GF−818)を貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。得られた感光性樹脂積層体につき、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
表1及び2の結果から、以下の内容が読み取れる。
【0120】
まず、実施例と比較例との対比により、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いれば、h線露光に対して高感度・高解像度で、耐めっきコンタミネーション性が良好で基板が赤面しないという特性を発現できることが分かる。
【0121】
次に、実施例1、5、6及び7と実施例8との対比により、アルカリ可溶性高分子において、スチレン又はベンジルメタクリレートを共重合成分に含む場合、h線露光に対して特に高解像度を発現する感光性樹脂積層体を得ることができることが分かる。
【0122】
次に、実施例1及び9と実施例10との対比により、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が、一分子中に3個又は4個の(すなわち2個を超える)(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む場合、h線露光に対して特に高解像度を発現する感光性樹脂積層体を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本実施の形態の感光性樹脂積層体は、その高感度及び高解像度のために、回路基板(プリント配線板)、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF(チップオンフィルム)用基板、半導体パッケージ用基板、液晶パネル用透明電極、液晶パネル用TFT配線、有機ELディスプレイ用配線、PDP(プラズマディスプレイパネル)用電極等における導体パターンの製造に好適に利用することができる。