特許第5948579号(P5948579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5948579ホットスタンピング部品の溶接性改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948579
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】ホットスタンピング部品の溶接性改善方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/34 20060101AFI20160623BHJP
   B23K 11/14 20060101ALI20160623BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20160623BHJP
   B23K 11/16 20060101ALI20160623BHJP
   B62D 25/04 20060101ALN20160623BHJP
【FI】
   B23K11/34
   B23K11/14
   B23K11/00 570
   B23K11/16 101
   !B62D25/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-517170(P2015-517170)
(86)(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公表番号】特表2015-520679(P2015-520679A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】KR2013004392
(87)【国際公開番号】WO2014185574
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2014年5月13日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0053887
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100109128
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 功
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(74)【代理人】
【識別番号】100100608
【弁理士】
【氏名又は名称】森島 なるみ
(74)【代理人】
【識別番号】100142099
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 真一
(74)【代理人】
【識別番号】100152803
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100123548
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 晃二
(74)【代理人】
【識別番号】100169535
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】ナム、スン‐マン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン‐チョル
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−291088(JP,A)
【文献】 特開2007−270258(JP,A)
【文献】 特開2002−224849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 − 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットスタンピング部品内の溶接部位を選定する溶接部位の選定段階;
前記溶接部位の表面酸化層を除去する表面酸化層の除去段階;及び
前記表面酸化層が除去されたホットスタンピング部品の溶接部位に溶接を実施する溶接段階;を含み、
前記ホットスタンピング部品はAl―Si系めっき鋼板を素材とし、
前記溶接部位には、プロジェクション溶接によって溶接が実施され、
前記表面酸化層の除去段階では、グラインダーまたはレーザー研磨を用いる、ホットスタンピング部品の溶接性改善方法。
【請求項2】
ホットスタンピング部品内の溶接部位を選定する溶接部位の選定段階;
前記溶接部位の表面酸化層を除去する表面酸化層の除去段階;
前記溶接部位の酸化層の残部とめっき層の一部を除去する酸化層及びめっき層の一部の除去段階;及び
前記酸化層及びめっき層の一部が除去されたホットスタンピング部品の溶接部位に溶接を実施する溶接段階;を含み、
前記ホットスタンピング部品はAl―Si系めっき鋼板を素材とし、
前記溶接部位には、プロジェクション溶接によって溶接が実施され、
前記表面酸化層の除去段階及び前記酸化層及びめっき層の一部の除去段階では、グラインダーまたはレーザー研磨を用いる、ホットスタンピング部品の溶接性改善方法。
【請求項3】
ホットスタンピング部品内の溶接部位を選定する溶接部位の選定段階;
前記溶接部位の表面酸化層を除去する表面酸化層の除去段階;
前記溶接部位の酸化層の残部とめっき層の一部を除去する酸化層及びめっき層の一部の除去段階;
前記溶接部位のめっき層を全部除去するめっき層の全部の除去段階;及び
前記酸化層及びめっき層の全部が除去されたホットスタンピング部品の溶接部位に溶接を実施する溶接段階;を含み、
前記ホットスタンピング部品はAl―Si系めっき鋼板を素材とし、
前記溶接部位には、プロジェクション溶接によって溶接が実施され、
前記表面酸化層の除去段階、前記酸化層及びめっき層の一部の除去段階及び前記めっき層の全部の除去段階では、グラインダーまたはレーザー研磨を用いる、ホットスタンピング部品の溶接性改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング部品の溶接性改善方法に関し、より詳細には、表面酸化物によって溶接性が低下していたAlめっきされたホットスタンピング部品の溶接性を向上させ得るホットスタンピング部品の溶接性改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットスタンピング技術は、既存のプレス成形が冷間状態で行われるのとは異なって、高温で行われる。
【0003】
高温でホットスタンピングを行う場合、素材の延伸率が大幅に増加するので、成形性に特別な制約を受けなく、また、熱処理効果によって超高強度を達成できるという長所がある。
【0004】
ところが、ホットスタンピングは、ほとんどが900℃以上の高温で行われるので、素材の高温安全性が非常に重要であり、このために、一般にめっき鋼板を使用して行う。
【0005】
現在、ほとんどのホットスタンピング用素材としてはAl―Si系めっき鋼板が用いられており、最近になって、これより低価のGAめっき鋼板を用いるための研究が活発に進められているが、高温でのめっき層の蒸発、酸化皮膜の発生などの技術的限界によって多くの制約が伴う。
【0006】
しかし、Al―Si系めっき鋼板を用いたホットスタンピング部品の場合、表面酸化物によって表面溶接性が低下するという問題がある。
【0007】
図1は、ホットスタンピング部品として車両のセンターピラー(center―pillar)を例示的に示した図である。図示したセンターピラー10は、Al―Siめっきされたホットスタンピング部品であって、センターピラー10内の設定された各位置Pに多数のナットが溶接される。そして、このときのナット溶接は、プロジェクション溶接(projection welding)方式に従う。
【0008】
そして、図2は、ホットスタンピング部品として車両のセンターピラーを通じたナットのプロジェクション溶接が行われる状態を示した図である。図示したように、プロジェクション溶接装置20内の対面する一対の溶接電極21、23間にホットスタンピング部品、すなわち、センターピラー10を置いた後、ナットNを挟んだ状態で電流を印加する。これによって、ホットスタンピング部品とナットとの間の抵抗溶接(resistance welding)が実施される。
【0009】
ところが、このような方式によって溶接されたナットNの場合、ホットスタンピング部品から容易に分離する現象が頻繁に発生していた。そして、このような溶接不良は、Al―Siめっきされたホットスタンピング部品の表面酸化物が表面溶接性を低下させることによって発生するという事実を確認することができた。
【0010】
関連した先行技術としては、大韓民国登録特許公報第760152号(2007.09.18.公告)があり、前記先行文献には、ホットスタンピングを用いて亜鉛めっき鋼板で高強度の自動車用部品を製造する方法に関する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、表面酸化物によってナット溶接性が低下したホットスタンピング部品の溶接性を改善できるホットスタンピング部品の溶接性改善方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、ホットスタンピング部品内の溶接部位を選定する溶接部位の選定段階;前記溶接部位の表面酸化層を除去する表面酸化層の除去段階;及び前記表面酸化層が除去されたホットスタンピング部品の溶接部位に溶接を実施するホットスタンピング部品の溶接段階;を含む。
【0013】
また、本発明の一実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、ホットスタンピング部品内の溶接部位を選定する溶接部位の選定段階;前記溶接部位の表面酸化層を除去する表面酸化層の除去段階;前記溶接部位の酸化層の残部とめっき層の一部を除去する酸化層及びめっき層の一部の除去段階;及び前記酸化層及びめっき層の一部が除去されたホットスタンピング部品の溶接部位に溶接を実施する溶接段階;を含む。
【0014】
また、本発明の一実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、ホットスタンピング部品内の溶接部位を選定する溶接部位の選定段階;前記溶接部位の表面酸化層を除去する表面酸化層の除去段階;前記溶接部位の酸化層の残部とめっき層の一部を除去する酸化層及びめっき層の一部の除去段階;前記溶接部位のめっき層を全部除去するめっき層の全部の除去段階;及び前記酸化層及びめっき層の全部が除去されたホットスタンピング部品の溶接部位に溶接を実施する溶接段階;を含む。
【0015】
前記ホットスタンピング部品は、Al―Si系めっき鋼板を素材とする。
【0016】
前記ホットスタンピング部品は、Al―Si系めっき鋼板を素材とし、前記溶接部位には、プロジェクション溶接によって溶接を実施することができる。
【0017】
前記ホットスタンピング部品は、Al―Si系めっき鋼板を素材とし、前記溶接段階では、プロジェクション溶接によって溶接が実施され、前記表面酸化層の除去段階、前記酸化層及びめっき層の一部の除去段階及び前記めっき層の全部の除去段階では、グラインダーまたはレーザー研磨を用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施例によると、Al―Si系めっき鋼板を用いたホットスタンピング部品に溶接(例:ナット溶接)が必要である場合、予め溶接される部位に対する局部的な酸化層及び/またはめっき層の除去作業を実施し、ホットスタンピング部品の溶接性を向上させることができる。
【0019】
そして、ホットスタンピング部品の溶接部位に対する局部的な酸化物及び/またはめっき層の除去作業を実施するにおいて、グラインダー装置またはレーザー装置を用いることができる。
【0020】
特に、溶接(例:ナット溶接)前に、ホットスタンピング部品の溶接部位に対して局部的に表面酸化層のみを除去する場合、溶接性改善効果は小さいが、めっき層がそのまま残存するので高い耐食性を確保することができる。
【0021】
このようなホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、相対的に高い耐食性が要求されるホットスタンピング部品(または該当部品の特定部位)の作業に活用することができる。
【0022】
また、ホットスタンピング部品の溶接部位に対して局部的に酸化層とめっき層の一部を除去する場合、耐食性を一定の水準まで確保しながらも高い溶接性改善効果を示すことができる。
【0023】
また、ホットスタンピング部品の溶接部位に対して局部的に酸化層とめっき層の全部を除去する場合、溶接性改善効果は極大化できるが、耐食性は比較的低下する。
【0024】
このようなホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、相対的に低い耐食性が要求されるホットスタンピング部品(または該当部品の特定部位)の作業に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ホットスタンピング部品として車両のセンターピラーを例示的に簡略に示した図である。
図2図1のセンターピラーにナットのプロジェクション溶接が行われる状態を簡略に示した図である。
図3】本発明の各実施例に係るホットスタンピング部品の断面図である。
図4】本発明の第1の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法のフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法を通じて表面酸化層のみが除去された状態を示した断面図である。
図6】本発明の第2の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法のフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法を通じて表面酸化層とめっき層の一部が除去された状態を示した断面図である。
図8】本発明の第3の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法のフローチャートである。
図9】本発明の第3の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法を通じて表面酸化層とめっき層の全部が除去された状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならなく、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。また、本明細書に記載した実施例と図面に示した構成は、本発明の最も望ましい一つの実施例に過ぎないもので、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点において、これらに取って代わる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0027】
ホットスタンピング技術は、既存のプレス成形が冷間状態で行われるのとは異なって、高温で行われる。高温でホットスタンピングを行う場合、素材の延伸率が大幅に増加するので、成形性に特別な制約を受けず、また、熱処理効果によって超高強度を達成できるという長所がある。ところが、ホットスタンピングは、ほとんどが900℃以上の高温で行われるので、素材の高温安全性が非常に重要であり、このために、主にAl―Si系めっき鋼板を用いて行われる。
【0028】
ところが、Al―Si系めっき鋼板を用いたホットスタンピング部品は、表面酸化物によって溶接性が低下するという問題がある。本発明の各実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、前記のような問題を解決するための発明に該当する。
【0029】
図3は、本発明の各実施例に係る溶接性が改善される前のホットスタンピング部品の簡略な断面図である。
【0030】
図3を参照すると、Al―Si系めっき鋼板を素材としたホットスタンピング部品は、下側から上側に向かってFe(マルテンサイト)、FeAl及びFeAl、FeAl、FeAl(Si)、FeAlが積層され、その表面に約5nmないし約100nmの厚さでAl表面酸化層が形成されている。ところが、前記表面酸化層は、Al―Si系めっき鋼板を素材としたホットスタンピング部品の溶接性を低下させる。
【0031】
特に、Al―Si系めっき鋼板を素材としたホットスタンピング部品のうち、センターピラー(図1の10)を例に挙げることができる。
【0032】
センターピラーは、車両の部品であって、内部に設定された各位置に多数のナットがプロジェクション溶接を通じて接合される。ところが、Al―Si系めっき鋼板がホットスタンピング工程を通じて提供されたセンターピラーの表面には前記のような表面酸化層が存在し、これに溶接されたナットが容易に分離するという現象が頻繁に表れる。
【0033】
以下、添付の図面を参照して、本発明の各実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法について詳細に説明する。
【0034】
第1の実施例
図4は、本発明の第1の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法のフローチャートである。
【0035】
本発明の第1の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、溶接部位の選定段階(S110)、表面酸化層の除去段階(S120)及び溶接段階(S130)を経て達成することができる。
【0036】
溶接部位の選定段階(S110)は、Al―Si系めっき鋼板を素材として成形・製作されたホットスタンピング部品上の溶接部位を選定する段階である。
【0037】
具体的な例として、図1に示したホットスタンピング部品の例であるセンターピラー(図1の10)を参照することができる。
【0038】
センターピラー(図1の10)の内部には、多数のナット(図示せず)が溶接されるべき位置Pが定められており、このような位置を周辺に限定して溶接部位が選定される。
【0039】
但し、このような溶接部位は、ホットスタンピング部品の種類、サイズなどに応じて少しずつ変わり、該当部品の特徴に応じて異なる形態に選定することができる。
【0040】
ところが、Al―Si系めっき鋼板を素材としたホットスタンピング部品の場合、表面にAl酸化層(これを‘表面酸化層'という)が形成され、この表面酸化層は部品の溶接性を阻害する原因になる。したがって、後述する表面酸化層の除去段階(S120)でこれを除去する。
【0041】
表面酸化層の除去段階(S120)は、ホットスタンピング部品の溶接部位の表面酸化層を除去する段階である。
【0042】
この段階において、表面酸化層は、グラインダーを用いて機械式で除去することができる。
【0043】
また、レーザー装備を用いて表面酸化層を除去することができる。
【0044】
グラインダー及びレーザー装備を用いた研磨方式は、慣用的に知られている技術であるので、これについての説明は省略する。
【0045】
表面酸化層の除去段階(S120)を通じて、Al―Si系めっき鋼板を素材とするホットスタンピング部品の表面に形成されたAl酸化層は効果的に除去されるが、表面酸化層の厚さは約5nmないし約100nmである。
【0046】
前記表面酸化層が除去されたホットスタンピング部品の概略的な断面形状は、図5を参照して確認することができる。
【0047】
図5に示したように、ホットスタンピング部品の表面酸化層は除去され、断面を通じては、Fe(マルテンサイト)、FeAl及びFeAl、FeAl、FeAl(Si)、FeAlのみが示されている。
【0048】
溶接段階(S130)は、以前の段階で表面酸化層が除去されたホットスタンピング部品の溶接部位に溶接が実施される段階である。
【0049】
ホットスタンピング部品の具体的な例として、図1に示したセンターピラー(図1の10)を参照すると、センターピラーの内部を通じて多数のナットが溶接される位置(P)、すなわち、溶接部位を通じて表面酸化層が除去された後、センターピラーとナットとの間のプロジェクション溶接が実施される。
【0050】
このように、上述した方法によってホットスタンピング部品の溶接部位に対する表面酸化層のみを除去した後、溶接を行うと、溶接性改善効果は、後述する実施例に比べて相対的に小さいが、相対的に高い耐食性を確保することができる。
【0051】
したがって、前記第1の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、相対的に高い耐食性が要求されるホットスタンピング部品(または該当部品の特定部位)の作業に活用することができる。
【0052】
第2の実施例
図6は、本発明の第2の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法のフローチャートである。
【0053】
本発明の第2の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、溶接部位の選定段階(S210)、表面酸化層の除去段階(S220)、酸化層及びめっき層の一部の除去段階(S230)及び溶接段階(S240)を経て達成することができる。
【0054】
溶接部位の選定段階(S210)は、Al―Si系めっき鋼板を素材として成形・製作されたホットスタンピング部品上の溶接部位を選定する段階である。
【0055】
具体的な例として、図1に示したホットスタンピング部品の例であるセンターピラー(図1の10)を参照することができる。センターピラー(図1の10)の内部には、多数のナット(図示せず)が溶接されるべき位置Pが定められており、このような位置を周辺に限定して溶接部位が選定される。
【0056】
このような溶接部位の選定段階(S210)は、上述した本発明の第1の実施例の溶接部位の選定段階(図4のS110)と同一であるので、重複する説明は省略する。
【0057】
表面酸化層の除去段階(S220)は、ホットスタンピング部品の溶接部位の表面酸化層を除去する段階である。
【0058】
この段階において、Al―Si系めっき鋼板を素材とするホットスタンピング部品の表面に形成されたAl酸化層は除去され、このときに除去される表面酸化層の厚さは約5nmないし約100nmの範囲内である。
【0059】
酸化層及びめっき層の一部の除去段階(S230)は、上述した表面酸化層の除去段階(S220)と共に、またはこれと順次的に行われる段階である。
【0060】
これら表面酸化層の除去段階(S220)及び酸化層及びめっき層の一部の除去段階(S230)は、グラインダーまたはレーザー装備を用いて行うことができる。
【0061】
そして、この段階を経て表面酸化層の下部に形成された残りの酸化層(FeAl、FeAl(Si))と、その下部のFeAl及びFeAlのめっき層の一部を除去することができる。
【0062】
表面酸化層を始めとして、酸化層及びめっき層の一部が除去されたホットスタンピング部品の概略的な断面形状は、図7を参照して確認することができる。すなわち、図示したホットスタンピング部品の断面を通じては、Fe(マルテンサイト)、FeAl及びFeAlのめっき層のみが存在する。
【0063】
溶接段階(S240)は、以前の段階で表面酸化層を始めとして、残りの酸化層の全部とめっき層の一部が除去されたホットスタンピング部品の溶接部位に溶接が実施される段階である。
【0064】
上述した段階を通じて行われる溶接性改善方法によると、酸化層の全部とめっき層の一部が除去されることによって、耐食性を確保しながらも高い溶接性改善効果を有することができる。
【0065】
第3の実施例
図8は、本発明の第3の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法のフローチャートである。
【0066】
本発明の第3の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、溶接部位の選定段階(S310)、表面酸化層の除去段階(S320)、酸化層及びめっき層の一部の除去段階(S330)、めっき層の全部の除去段階(S340)及び溶接段階(S350)を経て達成することができる。
【0067】
溶接部位の選定段階(S310)は、Al―Si系めっき鋼板を素材として成形・製作されたホットスタンピング部品上の溶接部位を選定する段階である。
【0068】
具体的な例として、図1に示したホットスタンピング部品の例であるセンターピラー(図1の10)を参照することができる。センターピラー(図1の10)の内部には、多数のナット(図示せず)が溶接されるべき位置Pが定められており、このような位置を周辺に限定して溶接部位が選定される。
【0069】
このような溶接部位の選定段階(S310)は、上述した本発明の第1及び第2の実施例の溶接部位の選定段階と同一であるので、重複する説明は省略する。
【0070】
表面酸化層の除去段階(S320)は、ホットスタンピング部品の溶接部位の表面酸化層を除去する段階である。この段階において、Al―Si系めっき鋼板を素材とするホットスタンピング部品の表面に形成されたAl酸化層は除去され、このときに除去される表面酸化層の厚さは約5nmないし約100nmの範囲内である。
【0071】
酸化層及びめっき層の一部の除去段階(S330)は、上述した表面酸化層の除去段階(S320)と共に、またはこれと順次的に実施することができる。
【0072】
めっき層の全部の除去段階(S340)は、上述した第2の実施例と異なって、ホットスタンピング部品の溶接部位に残っているめっき層を全部除去する段階である。この段階を通じて、表面酸化層(Al酸化層)とその下部に形成された残りの酸化層(FeAl、FeAl(Si))はもちろん、めっき層(FeAl及びFeAl)が全て除去される。
【0073】
めっき層の全部の除去段階(S340)を経た後のホットスタンピング部品の概略的な断面形状は、図9を通じて確認することができる。図9を参照すると、Fe(マルテンサイト)のみが残っている。
【0074】
溶接段階(S350)は、図9に示したFe(マルテンサイト)のみが残っているホットスタンピング部品の溶接部位に溶接が実施される段階である。
【0075】
このように、上述した方法によってホットスタンピング部品の溶接部位に対して局部的に酸化層とめっき層の全部を除去する場合、溶接性改善効果は極大化できるが、耐食性は比較的低下する。
【0076】
したがって、前記第3の実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法の場合、相対的に低い耐食性が要求されるホットスタンピング部品(または該当部品の特定部位)の作業を活用することができる。
【0077】
上述したように、本発明の一実施例よると、Al―Si系めっき鋼板を用いたホットスタンピング部品に溶接(例:ナット溶接)が必要である場合、予め溶接される部位に対する局部的な酸化層及び/またはめっき層の除去作業を実施し、ホットスタンピング部品の溶接性を向上させることができる。
【0078】
そして、ホットスタンピング部品の溶接部位に対する局部的な酸化物及び/またはめっき層の除去作業を実施するにおいて、グラインダー装置またはレーザー装置を用いることができる。
【0079】
特に、溶接(例:ナット溶接)前に、ホットスタンピング部品の溶接部位に対して局部的に表面酸化層のみを除去する場合、溶接性改善効果は小さいが、めっき層がそのまま残存するので高い耐食性を確保することができる。
【0080】
このようなホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、相対的に高い耐食性が要求されるホットスタンピング部品(または該当部品の特定部位)の作業に活用することができる。
【0081】
また、ホットスタンピング部品の溶接部位に対して局部的に酸化層とめっき層の一部を除去する場合、耐食性を一定の水準まで確保しながらも高い溶接性改善効果を示すことができる。
【0082】
また、ホットスタンピング部品の溶接部位に対して局部的に酸化層とめっき層の全部を除去する場合、溶接性改善効果は極大化できるが、耐食性は比較的低下する。
【0083】
このようなホットスタンピング部品の溶接性改善方法は、相対的に低い耐食性が要求されるホットスタンピング部品(または該当部品の特定部位)の作業に活用することができる。
【0084】
以上では、本発明の望ましい一実施例に係るホットスタンピング部品の溶接性改善方法について説明した。
【0085】
上述した実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないと理解しなければならなく、本発明の範囲は、上述した詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示されるだろう。そして、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲はもちろん、その等価概念から導出される全ての変更及び変形可能な形態が本発明の範囲に含まれると解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9