【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるスレッドまたはストライプは、好ましくは有価書類または通貨の基材の中または上へ組み込むためのものであり、配向した磁性または磁化可能な顔料粒子を含む固化したコーティングを担持するプラスチック箔を含み、顔料粒子の配向が図形情報を表すスレッドまたはストライプであって、図形情報が好適な反復長の反復シームレスパターンであることを特徴とするセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプである。
【0013】
「固化した」は、本開示の関連では、光学的に変化する磁性または磁化可能な顔料粒子がコーティング内でそれぞれの位置および配向に定着していることを意味する。
【0014】
「好適な反復長」(周期)は、スレッドまたはストライプを組み込む書類の幅よりも短く、好ましくは半幅よりも短いものを意味する。
【0015】
本発明を具現する好ましい磁性または磁化可能な顔料粒子は、板状粒子または針状粒子である。なぜならば、これらの粒子は磁場中でよく配向し、コーティング中での粒子の配向に応じて光学的に著しい変化を示すからである。
【0016】
さらに好ましいのは光学干渉顔料である。光学干渉顔料は、コーティング中での顔料の配向に応じて多様な反射色または透過色を呈する。
【0017】
本発明を具現する最も好ましい顔料粒子は、米国特許第4,838,648号明細書に開示されているようなA/D/M/D/Aの5層型、および国際公開第02/073250号に開示されているようなA/D/R/M/R/D/Aの7層型の、光学的に変化する磁性薄層干渉顔料である。ここで、Aは吸収体層で、典型的にはクロム層であり、Dは誘電体層で、典型的にはフッ化マグネシウム(MgF
2)または二酸化ケイ素(SiO
2)であり、Mは磁性層で、典型的にはニッケル(Ni)または鉄(Fe)またはコバルト(Co)またはそれらの合金うちの1つであり、Rは反射体層で、典型的にはアルミニウム(Al)である。
【0018】
本開示の関連において、「磁性、磁気(magnetic)」という用語は、それ自体が磁場の源である材料を指す。「磁化可能」という用語は、強磁性またはフェリ磁性という意味での磁場に対して、その源でない状態で反応する材料を指す。
【0019】
配向した磁性または磁化可能な顔料(OVMP)粒子は、本説明の関連では、単純な印刷工程の結果として顔料粒子がとる配向とは異なる配向でコーティング中に存在する顔料粒子を意味する。
【0020】
「図形情報」は、識別印、パターン、画像などの、視覚的に識別できる種類の情報を意味する。
【0021】
本発明によれば、図形情報は、コーティング中に含まれる磁性または磁化可能な顔料粒子を配向させることによってコーティング中に具現される。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態において、固化したコーティングは、識別印の形の構造化したコーティングであり、インクおよび対応する印刷工程を用いて施される。
【0023】
通常、磁気配向が担う図形情報は、構造化したコーティングの、印刷された識別印とは異なるが、同じに選ぶことも可能である。
【0024】
従って、本発明によれば、印刷機での単一走行で、単一の印刷インクを用いて、セキュリティスレッドまたはセキュリティストライプに2つの異なるセキュリティ要素、すなわち印刷された目に見える識別印と磁気配向が担う図形情報とを与えることが可能であり、これにより、高い生産効率を維持したまま、セキュリティスレッドまたはセキュリティストライプのセキュリティレベルが上がる。
【0025】
目に見える、磁気配向が担う図形情報もまた、機械読み取り可能である。なぜならば、印刷され固化されたコーティング組成物中の特別に配置された磁性または磁化可能な粒子は磁場を発生するか磁場と相互作用するので、粒子の局所的な配分および配向を、対応する機器によって検出して利用することができるからである。
【0026】
本発明によるセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプの本質的な特徴は、磁気配向が担う図形情報と、存在する場合は、印刷された目に見える識別印とが、セキュリティスレッドまたはセキュリティストライプの伸長した次元に沿った、好適な反復長(周期)のシームレス反復パターンとして存在するということである。
【0027】
銀行券の製造(すなわち基材製造と印刷)および使用(すなわち自動銀行窓口機におけるセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプの認証)の条件によって課せられた制約を考慮すると、セキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは、基材ウェブ中に縦に組み込まれなければならないが、一般に10cmより短く、典型的には7cmほどである銀行券の幅の端から端まで現れているべきである。従って、反復パターンの周期は、7cmを越えるべきでなく、好ましくは3.5cmを越えるべきでなく、さらに好ましくは2cmを越えるべきでない。
【0028】
このような短い反復長という制約下で、光学的に変化する磁性インクの反復パターンをプラスチック箔にシームレスに印付けするには、特別な製造(すなわち印刷)の手段および技術が必要である。
【0029】
特別に彫り込まれたシームレスグラビアシリンダを用いた輪転グラビア(グラビア)印刷が、磁性または磁化可能な顔料粒子を含有するインク液を平坦なプラスチック基材上に正しく転写するための好適な印刷技術の1つである、ということが分かった。注目すべきことには、グラビアシリンダの輪転グラビアセルは、磁性または磁化可能な顔料粒子の大きな寸法に対応するよう十分に大きくなければならない。磁性または磁化可能な顔料粒子は、特に薄片となる場合もあり、5マイクロメートルないし50マイクロメートルに含まれる直径と、1マイクロメートル程度の厚さとを有する。典型的には顔料粒子の平均径の少なくとも2倍のセル寸法が用いられる。
【0030】
また、(オランダのボクスメールのストークプリント社(Stork Prints BV)から入手できるような)シームレスロータリースクリーンを用いたスクリーン印刷が、磁性または磁化可能な顔料粒子を含有するインクのシームレス反復パターンを短い反復長という制約下でプラスチック箔に印付けするための、もう一つの好適な印刷技術であることが分かった。この場合も、顔料粒子の平均径の少なくとも2倍のスクリーンメッシュ寸法が典型的に用いられる。
【0031】
さらなる工程としては、アニロックスローラ/ドクターブレード・インキングを用いたフレキソ印刷を用いることができる。アニロックスローラは、印付けされる基材にインクを転写する可撓性の活版印刷面であるエンドレスフレキソ凸版上にインク液を計量して供給する輪転グラビアセルを有する。フレキソ印刷は、顔料粒子の寸法が大きくなければうまく機能し、著しく板状になった顔料粒子の場合はあまりうまく機能しない。著しく板状になった顔料粒子は、一方の面から他方の面へ容易には転写しないのである。アニロックスローラには、顔料粒子の平均径の少なくとも2倍のセル寸法が典型的に用いられる。
【0032】
すべての場合において、印刷面は、シームレス反復パターンを表すように構造化されなければならない。言い換えれば、印刷シリンダまたはエンドレスフレキソ凸版の円周が、印刷される反復パターンの反復長(周期)の厳密な倍数になっていなければならない。
【0033】
好ましい実施の形態において、光学的に変化する磁性または磁化可能な顔料粒子を含む固化したコーティングは、有色の、暗い、または金属化された背景コーティングを伴う。上記背景コーティングは、前、後、または別のステップで付けられるか印刷されてよい。
【0034】
プラスチック箔を通してセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプを見るようにする場合は、背景コーティングは、光学的に変化する磁性インクを付け(そして固化させ)た後に、第2のコーティングとして付けなければならない。
【0035】
また、技術的および審美的な必要に応じて、色および/または不透明度を与える着色コーティング、またはスレッドもしくはストライプを有価書類もしくは銀行券の基材の中もしくは上に固定する接着剤コーティングのような、さらなるコーティングを付けてよい。
【0036】
本発明のさらなる特定の実施の形態によれば、セキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは、固化したコーティングを含む積層したスレッドまたはストライプであり、固化したコーティングは、光学的に変化する磁性または磁化可能な顔料粒子を含むインクで生成され、第1のプラスチック箔と第2のプラスチック箔との間に含まれる。
【0037】
さらなる実施の形態において、本発明によるセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは、第1の印を担持する第1のプラスチック箔を、第1の印と相補的な第2の印を担持する第2のプラスチック箔上に位置を合わせて積層することによって得られる、積層したスレッドまたはストライプである。
【0038】
互いに相補的な印を有する2枚の箔を位置を合わせて一緒に積層するには、高精度な印刷・積層機器が必要であり、これにより、そうして製造されたスレッドまたはストライプに高度な耐偽造性が付与される。
【0039】
磁性または磁化可能な顔料粒子を含むインクで生成された固化したコーティングを含む、本発明によるセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは、発光性の染料および顔料と、赤外吸収性の染料および顔料と、金属性、磁性、および干渉性の顔料とからなる群から選択された付加的なセキュリティ材料も含んでよい。さらに、上記の付加的なセキュリティ材料は、上記の同一のコーティングまたは少なくとも1つの別のコーティング層に含まれてもよい。
【0040】
本発明によるセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは、マイクロレンズの層、またはホログラフィック層をさらに含んでよく、後者は、体積ホログラム、または金属化された、脱金属化された、もしくは部分的に脱金属化された(識別印の)表面ホログラムであってよい。
【0041】
本発明によるセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは、セキュリティ基材に接着力を付与するために、当技術分野で知られるような接着剤コーティングをスレッドまたはストライプの表面のうちの少なくとも1面に備えてよい。この目的には、紙の脱水・乾燥工程の最後に紙繊維に接着する熱活性化接着剤が典型的に用いられる。
【0042】
本発明による好ましいセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは、0.5mmないし30mmに含まれる幅を有する。これは、印付けされ、コーティングされ、場合によっては積層されたプラスチック箔のウェブを適切な幅のスレッドへと薄く切り、リールに巻くことによって得られる。
【0043】
さらに開示されるのは、有価書類または通貨の基材の中へ組み込むためのセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプを製造する方法であって、
a)磁性または磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物でプラスチック箔をコーティングするステップと、
b)プラスチック箔上のコーティング中の磁性または磁化可能な顔料粒子を、相応に構造化された磁場の印加により配向させて、顔料粒子の配向が図形情報を表すようにするステップと、
c)光学的に変化する磁性または磁化可能な顔料粒子をそれぞれの位置および配向に定着させるように、配向した磁性または磁化可能な顔料粒子を含むコーティングを固化させるステップと、
y)随意に、プラスチック箔の少なくとも1つの面に接着剤コーティングを施すステップと、
z)配向した光学的に変化する磁性または磁化可能な顔料粒子を含む固化したコーティングを担持するプラスチック箔を、スレッドまたはストライプへと薄く切るステップと、
を含み、図形情報が、好適な反復長の反復シームレス磁場パターンを有する磁気配向シリンダを用いて生成されることを特徴とする方法である。
【0044】
コーティング組成物に含める好ましい磁性または磁化可能な顔料粒子は、板状粒子または針状粒子から選択される。特に好ましいのは磁性光学干渉顔料である。光学干渉顔料は、コーティング中での顔料の配向に応じて多様な反射色または透過色を呈する。そして最も好ましいのは、米国特許第4,838,648号明細書に開示されているような5層型、および国際公開第02/073250号に開示されているような7層型の、光学的に変化する磁性薄層干渉顔料である。上記を参照せよ。
【0045】
プラスチック箔は、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET、ポリエステル)箔である。しかしながら、一軸延伸ポリプロピレンまたは二軸延伸ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、または形状安定型ポリエチレン(PE)のような他のプラスチック材料も同様に用いることができる。
【0046】
磁性または磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物でプラスチック箔に印付けし、続いてコーティング中の顔料粒子を、相応に構造化された磁場の印加により配向させ、印刷され「配向させられた」インクを固化させることは、2つの独立した「情報の層」(印刷された識別印、および磁気配向が担う図形情報)を単一のインクを用いて与えることが可能な、1ステップの生産工程で行うことができる。
【0047】
本方法は、2つ以上の印刷された層を付けることを含んでよい。好ましい実施の形態において、本方法は、d)有色の、暗い、または金属化された背景コーティングを、配向した光学的に変化する磁性または磁化可能な顔料粒子を含むステップc)の固化したコーティング上に施すさらなるステップを含む。
【0048】
上記の背景コーティングは、有色の、または暗い顔料または染料を含むインクでの印付けのような、当業者に知られたさまざまなコーティング法によって施すことができるし、あるいは金属(好ましくはアルミニウム)での高真空コーティングによって施すこともできる。このような高真空コーティングのステップに続けて、随意に選択的な脱金属化ステップを(例えばクレインの米国特許第4,652,015号明細書に従って)行って、金属コーティング中に識別印を生成するようにしてもよい。
【0049】
発光性の染料および顔料と、赤外吸収性の染料および顔料と、金属性、磁性、および干渉性の顔料とからなる群から選択された付加的なセキュリティ材料を、上記と同一のコーティングか、または少なくとも1つの別のコーティング層に付けることができる。
【0050】
マイクロレンズの層、または体積ホログラムと、金属化された、脱金属化された、または部分的に脱金属化された(識別印の)表面ホログラムとのいずれかであってよいホログラフィック層が付けられてもよい。
【0051】
当技術分野で知られるような接着剤コーティングをプラスチック箔の少なくとも1つの表面に施して、スレッドまたはストライプをセキュリティ基材の中または上に組み込む際の接着力をセキュリティ基材に付与するようにしてよい。
【0052】
本方法は、e)コーティングされたプラスチック箔上に第2のプラスチック箔を積層して、配向した光学的に変化する磁性または磁化可能な顔料粒子を含む固化したコーティングが第1のプラスチック箔と第2のプラスチック箔との間に含まれた積層構造を生成する代替または追加のステップをさらに含んでよい。
【0053】
ステップe)は、ステップd)の代わりに、あるいはステップd)に続いて行われてよい。
【0054】
第2のプラスチック箔は、積層工程を容易にするよう、積層面上にコーティングを担持してよい。特に、このコーティングは、有色の、暗い、または金属化された背景コーティングであってよい。
【0055】
本方法の好ましい実施の形態において、第2のプラスチック箔は、第1のプラスチック箔上の第1の印と相補的な第2の印を担持する。相補的とは、第2の印が第1の印を完成させて、両方の印が一緒の時にだけ完全な情報を表示するようにする、ということを意味する。厳密な位置合わせで一緒に積層される2枚の箔に相補的な識別印を別々に印刷するには、高精度な印刷・積層機器が必要であり、その結果、そうして製造されたスレッドまたはストライプの高度な耐偽造性が生じる。
【0056】
本発明による好ましい方法において、磁性または磁化可能な顔料粒子を含むインクでの第1のプラスチック箔の印付けは、シームレス彫り込み印刷シリンダを用いた輪転グラビア印刷と、シームレスロータリースクリーンを用いたスクリーン印刷と、アニロックスローラ/ドクターブレード・インキングユニットを用いたフレキソ印刷とからなる群から選択された印刷工程で行われ、その際、印刷面は、シームレス反復パターンを表す。すなわち、印刷シリンダまたはエンドレスフレキソ凸版の円周が、印刷される反復パターンの反復長(周期)の厳密な倍数になっている。
【0057】
本発明による好ましい方法では、顔料粒子の配向が図形情報を表すように印付けコーティング中の磁性または磁化可能な顔料粒子を配向させることが、国際公開第2005/002866号、および国際公開第2008/046702号に開示されているような、外周面が彫り込み永久磁石板である磁気配向シリンダを用いて行われる。
【0058】
本発明による好ましい方法において、基材上の印付けコーティングの固化は、溶媒蒸発による物理的乾燥と、最も好ましくは電子ビームまたは紫外光の照射による硬化とから選ばれた方法によって行われる。放射線硬化は、ほとんど瞬間的にインクを凝固させ、配向した磁性粒子がインク中で並び変わるのを防ぐ、という利点を有する。
【0059】
特に好ましいのは、磁気配向シリンダへの直接紫外線照射によって硬化させて、コーティング中の磁性または磁化可能な顔料粒子の配向とコーティングの固化の開始とが同時かつ付随的に起こるようにすることである。紫外線照射後、コーティングは1秒未満で凝固する。こうして、磁気配向シリンダへの直接紫外線照射により、磁気配向ステップで与えられる図形情報が最大限に保持される。
【0060】
本方法の最後のステップ(ステップz))において、こうして得られた箔のウェブは、最終的に0.5mmないし30mmに含まれる幅を有するセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプへと薄く切られ、セキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは後の使用のためにリールに巻かれる。
【0061】
セキュリティスレッドまたはセキュリティストライプは、偽造に対して保護されるべきあらゆる種類の基材、特に、通貨、有価書類、本人確認書類、交通機関の切符、または納税印紙を製造するのに用いられる、紙およびポリマーの基材に組み込み、または付けることができる。
【0062】
さらに開示されるのは、セキュリティスレッドまたはセキュリティストライプを製造するのに用いられるプラスチック箔上の印付けされたコーティング中の磁性または磁化可能な顔料粒子を磁気的に配向させるデバイスである。
【0063】
印付けされたコーティング中の磁性または磁化可能な顔料粒子を磁気的に配向させるデバイスは、磁化された外面を有するシリンダであり、ここで磁化は、好適な反復長の反復シームレスパターンを表すように構造化される。言い換えれば、シリンダの円周が、反復パターンの周期(反復長)の厳密な倍数である。
【0064】
磁気配向シリンダは、可撓性の、磁気的に印された永久磁石板(例えば「プラストフェライト」製のもの)を、磁気配向シリンダの周の回りにシームレス反復磁化パターンを生じるように円筒状の支持体に巻き付け、そのような位置で固定することにより製造できる。磁化された永久磁石板は、国際公開第2005/002866号、および国際公開第2008/046702号に開示されているような彫り込み永久磁石板であってよい。
【0065】
好ましい実施の形態では、磁気配向シリンダが、シームレス反復磁化パターンが印された「プラスチック磁石」コーティングでシームレスコーティングされる。あるいは、シームレスコーティングされたシリンダのシリンダ外面にシームレス反復パターンが彫り込まれ、国際公開第2005/002866号に開示されているように磁化されてもよい。
【0066】
このようなシームレスコーティングされた磁気配向シリンダは、磁気配向シリンダと位置を合わせて動作させられる相応なシームレス輪転グラビアシリンダまたはシームレスロータリースクリーンシリンダと組み合わせると、本発明のセキュリティスレッドまたはセキュリティストライプを製造するのに有利であることが分かる。その理由は、シームレスコーティングの機械的安定性と、これにより高速で印刷および配向ができるようになることである。
【0067】
本発明による磁気配向シリンダは、同一出願人の国際公開第2008/046702号に開示された効果を生み出すために、円筒状の支持体の内側に配置された永久磁石または電磁石をさらに備えてよい。特に好ましいのは、磁石間に働く固有の磁力に対抗する位置に機械的に保持された磁石配置である。
【0068】
さらに開示されるのは、シームレスコーティングされた磁気配向シリンダを製造する工程であって、
a)充填材料として高保磁力永久磁石粉を含むポリマー材料で円筒状の支持体をコーティングし、ポリマー材料を固化して、シームレスコーティングされたシリンダを得るステップと、
b)随意に、コーティングされたシリンダの外面を修正して基準のシリンダ径を得るステップと、
c)ステップa)またはステップb)のシリンダ外面を磁化してシリンダ上に反復シームレス磁場パターンを印すステップと、
を特徴とする工程である。
【0069】
上記のコーティングおよび固化は、融解した熱い熱可塑性組成物を付け、冷却して組成物を凝固させることによって、あるいはプラスチゾル前駆体組成物を付け、熱硬化させてプラスチゾルを形成し凝固させることによって行うことができる。
【0070】
ポリマー材料は、ポリエチレンまたはポリアミドのような、「プラスチック磁石」を作るのに一般に用いられる熱可塑性材料から選ぶことができる。低密度ポリエチレン(Low Density Poly-Ethylene、LDPE)は、熱融解性であり、プラスチック磁石組成物を組成するのに用いることができる(H.S. Gokturk et al. ANTEC '92; Annual Technical Conference of the Society of Plastics Engineers, Detroit, MI, May 1992; pages 491-494; Journal of Applied Polymer Science, Vol 50, 1891-1901, (1993))。プラスチック磁石およびゴム磁石は仏国特許第1135734号明細書(M.J. Dedek; 1955)で初めて開示された。特開昭56−000851(A2)号明細書(米野寛、1981)は、熱可塑性ポリアミド樹脂系のプラスチック磁石組成物を開示している。また、H. Stablein, "Hard Ferrites and Plastoferrites", in Ferromagnetic Materials, Vol. 3, ed. E.P. Wohlfarth, North-Holland Publishing company, 1982, chapter 7, pages 441-602も参照されたい。
【0071】
そして、円筒状の支持体のコーティングは、例えばT. Sakai et al., Intern. Polymer Processing, 6, 26-34 (1991)と同様に行うことができる。T. Sakaiらは、熱可塑性結合剤としてナイロン6、高保磁力永久磁石充填材料として粒子寸法が1.1マイクロメートルないし1.2マイクロメートルのストロンチウムヘキサフェライト(SrO・6Fe
2O
3)粉に依存するプラスチック磁石製造工程を開示している。
【0072】
あるいは、円筒状の支持体のコーティングは、米国特許第3,785,286号明細書、米国特許第3,900,595号明細書、および米国特許第4,054,685号明細書に従って行うこともできる。これらはポリ塩化ビニル(PVC)を1つ以上の可塑剤および安定剤と共に用いるプラスチゾルコーティング法を開示している。永久磁石充填材料を含むプラスチゾル組成物が組成されて40℃ないし50℃の温度で円筒状の支持体上に付けられ、200℃ないし250℃の温度で固化させられる。プラスチゾルコーティングは数層重ねて付けられ、それぞれが0.3mmないし1mmの厚さを有しており、最大で合計厚さが2mmないし3.5mmになる。
【0073】
高保磁力永久磁石粉は充填材料として有用であり、高保磁力永久磁石粉の例は、Mを2価の金属イオンとして、ストロンチウムヘキサフェライト(SrO・6Fe
2O
3)またはバリウムヘキサフェライト(BaO・6Fe
2O
3)のような、式MFe
12O
19の「ヘキサフェライト」と、コバルトフェライト(CoFe
2O
4)または磁鉄鉱(Fe
3O
4)のような、式MFe
2O
4の「ハードフェライト」と、それらのイソ構造置換誘導体と、さらに、サマリウムコバルト合金と、REを3価の希土類イオンまたは3価の希土類イオンの混合物として、希土類・鉄・ボロン合金(RE
2Fe
14B、例えば「ネオジム磁石」Nd
2Fe
14B)とである。
【0074】
好ましくは、高保磁力永久磁石粉は、磁石粉粒子の磁気的な集塊を防ぐように、減磁状態の組成物で用いられる。磁性体の減磁(「消磁」)は、当業者に知られた作業である。好ましくは、磁化は、組成物が所定の位置で固化されて初めて施される。
【0075】
随意の修正ステップは、旋盤(a lath)での単純な機械的切除作業である。このステップは、シリンダの円周が反復磁化パターンの周期(反復長)の厳密な倍数となるようにするために、正確な機械的寸法を確立する働きをする。
【0076】
シリンダ表面の構造化された磁化は、当業者に知られているようにして行うことができる。例えば、米国特許第3,011,436号明細書(ベリー)に従って磁気スタイラスを当てることによって、またはベリーの開示の電磁的および機械的な類似で、機械的に駆動される電磁スタイラスで必要な反復磁化パターンを印すことによって行うことができる。
【0077】
本工程の特に好ましい実施の形態において、ステップcは、
c)ステップa)またはステップb)のコーティングされたシリンダの外面に反復シームレスパターンを彫り込み、シリンダを磁化する彫り込みステップ
を含む。
【0078】
シリンダ外面の彫り込みおよび磁化は、国際公開第2005/002866号に開示されているように行うことができる。特に、彫り込みは、機械的切除工具、気体ジェットまたは液体ジェットの切除工具、およびレーザー切除工具を含む群から選択された切除ツールを用いて行うことができる。
【0079】
磁化は、彫り込みステップの前または後に施すことができる。シリンダ表面に直交する磁場、およびシリンダ表面に対して斜めの方向の磁場を印加してもよいし、あるいはシリンダ表面内の方向に印加することさえ可能である。
【0080】
シリンダ外面の磁化はさらに、国際公開第2008/046702号に開示されているように円筒状の支持体の内側へ磁石を配置することと組み合わせてもよい。さらに、上記磁石は永久磁石または電磁石であってよい。
【0081】
以下、本発明について、図面および例示的な実施の形態を参照してさらに説明する。