特許第5948637号(P5948637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東邦亜鉛株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5948637-金属回収方法 図000003
  • 特許5948637-金属回収方法 図000004
  • 特許5948637-金属回収方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948637
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】金属回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 47/00 20060101AFI20160623BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20160623BHJP
   C22B 1/242 20060101ALI20160623BHJP
   C22B 19/30 20060101ALI20160623BHJP
   H01M 6/52 20060101ALI20160623BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20160623BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   C22B47/00ZAB
   C22B7/00 C
   C22B1/242
   C22B19/30
   H01M6/52
   B09B5/00 A
   B09B3/00 Z
   B09B3/00 301F
   B09B3/00 303A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-77922(P2013-77922)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-201784(P2014-201784A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221786
【氏名又は名称】東邦亜鉛株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 英治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−001990(JP,A)
【文献】 特開2004−000871(JP,A)
【文献】 特開2003−130318(JP,A)
【文献】 特開2001−286727(JP,A)
【文献】 特表2010−538417(JP,A)
【文献】 特開昭60−096734(JP,A)
【文献】 特開平07−085897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
H01M 6/52
B09B 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を含む廃乾電池から、マンガンを主成分とする第1混合物を回収する金属回収方法であって、
廃乾電池から、マンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を選別する選別工程と、
選別したマンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を破砕し、破砕物を得る破砕工程と、
破砕物を篩い分けし、粉粒体を得る篩い分け工程と、
粉粒体をか焼することで、前記粉粒体に含まれる亜鉛を還元揮発させ、マンガンを主成分とする第1混合物を得るか焼工程と、
前記第1混合物に、結合剤としてポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルから選択される少なくとも一種を当該第1混合物に対して2〜50質量%混合後、加圧成形して、固形化された第1混合物体を得る固形化工程と、を含む
ことを特徴とする金属回収方法。
【請求項2】
マンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を含む廃乾電池から、マンガンを主成分とする第1混合物、および亜鉛を主成分とする第2混合物を回収する金属回収方法であって、
廃乾電池から、マンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を選別する選別工程と、
選別したマンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を破砕し、破砕物を得る破砕工程と、
破砕物を篩い分けし、粉粒体を得る篩い分け工程と、
粉粒体をか焼することで、前記粉粒体に含まれる亜鉛を還元揮発させて、マンガンを主成分とする第1混合物を得るか焼工程と、
前記か焼工程によって発生したガスを、800℃以上に加熱して200℃以下に冷却した後に前記ガスから亜鉛を主成分とする第2混合物を得るガス処理工程と、を含む
ことを特徴とする金属回収方法。
【請求項3】
前記第1混合物に、結合剤としてポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルから選択される少なくとも一種を当該第1混合物に対して2〜50質量%混合後、加圧成形して、固形化された第1混合物体を得る固形化工程を含む
ことを特徴とする請求項に記載の金属回収方法。
【請求項4】
前記か焼工程において、前記粉粒体を常温から1200℃以上に加熱する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金属回収方法。
【請求項5】
前記か焼工程において残渣を回収して前記第1混合物を得る
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の金属回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄された乾電池(廃乾電池)からマンガンを回収する金属回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃乾電池からマンガン等の金属を回収する方法として、例えば、特許文献1の技術が提案されている。具体的には、廃乾電池からマンガン電池及びアルカリ電池を主体とする部分を選別、破砕、篩い分けし、二酸化マンガンと塩化亜鉛とを分離回収する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような廃乾電池からマンガン等の金属の回収において、回収対象である金属の品位(金属の割合)を高めることは重要である。
【0005】
そこで、本発明は、金属の品位の高い金属回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、マンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を含む廃乾電池から、マンガンを主成分とする第1混合物を回収する金属回収方法であって、廃乾電池から、マンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を選別する選別工程と、選別したマンガン電池及び/又はアルカリマンガン電池を破砕し、破砕物を得る破砕工程と、破砕物を篩い分けし、粉粒体を得る篩い分け工程と、粉粒体をか焼することで、前記粉粒体に含まれる亜鉛を還元揮発させ、マンガンを主成分とする第1混合物を得るか焼工程と、を含み、さらに後記の固形化工程およびガス処理工程の少なくとも1つを含むことを特徴とする金属回収方法である。
【0007】
このような構成によれば、か焼工程において、粉粒体に含まれる亜鉛を還元揮発させることにより、粉粒体から亜鉛を除去できる。これにより、第1混合物において、マンガン(二酸化マンガン)が高品位となる。
【0008】
前記金属回収方法の前記固形化工程は、前記第1混合物に、結合剤としてポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルから選択される少なくとも一種を当該第1混合物に対して2〜50質量%混合後、加圧成形して、固形化された第1混合物体を得る工程である。このような構成によれば、固形化工程により、固形化された第1混合物体を得ることができる
【0009】
前記金属回収方法は、前記か焼工程において、前記粉粒体を常温から1200℃以上に加熱することが好ましい。このような構成によれば、か焼工程において、粉粒体を常温から1200℃以上に加熱することにより、亜鉛還元されて良好に揮発できる。
【0010】
前記金属回収方法の前記ガス処理工程は、前記か焼工程によって発生したガスを、800℃以上に加熱して200℃以下に冷却した後に前記ガスから亜鉛を主成分とする第2混合物を得る工程である
【0011】
このような構成によれば、か焼工程によって発生したガスを、800℃以上に加熱後200℃以下に冷却することにより、亜鉛を主成分とする第2混合物を得ることができる。
【0012】
前記金属回収方法において、前記か焼工程において残渣を回収して前記第1混合物を得ることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、か焼工程において残渣を回収することで、第1混合物を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属の品位の高い金属回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る選別粉砕篩別工程S100(選別工程、破砕工程、篩い分け工程)の工程図である。
図2】本実施形態に係る水洗処理工程S200の工程図である。
図3】本実施形態に係る還元揮発処理工程S300(か焼工程、固形化工程)の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について、図1図3を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る金属回収方法は、廃乾電池からマンガンを主成分とするマンガン・ブリケット(第1混合物体)と、亜鉛を主成分とする亜鉛ダスト(ZnO、第2混合物)とを回収するものである。金属回収方法は、選別粉砕篩別工程S100(選別工程、破砕工程、篩い分け工程、図1参照)と、水洗処理工程S200(図2)と、還元揮発処理工程S300(か焼工程、固形化工程、図3)と、を含む。なお、マンガン・ブリケット(第1混合物体)は、後記するように、マンガン・クリンカー(第1混合物)を、加圧成形して固形化したものである。
【0020】
<廃乾電池>
廃乾電池は、使用済みの乾電池であって、マンガン電池及びアルカリマンガン電池を含むものである。マンガン電池等の大きさは、単1〜単5のいずれでもよい。ただし、マンガン電池又はアルカリマンガン電池を含むものでもよい。
【0021】
マンガン電池は、正極を二酸化マンガン(MnO)、負極を亜鉛(Zn)、電解液を塩化亜鉛(ZnCl)、で構成される。そして、マンガン電池の電池反応式は式(1)で与えられる。
8MnO+8HO+ZnCl+4Zn→8MnO(OH)+ZnCl・4Zn(OH) …(1)
【0022】
アルカリマンガン電池は、正極を二酸化マンガン(MnO)、負極を亜鉛(Zn)、電解液を水酸化カリウム水溶液(KOH)及び酸化亜鉛(ZnCl)、で構成される。そして、アルカリマンガン電池の電池反応式は式(2)で与えられる。
MnO+HO+Zn→Mn(OH)+ZnO …(2)
【0023】
<選別粉砕篩別工程S100>
図1を参照して、選別粉砕篩別工程S100を説明する。
【0024】
ステップS101において、手選別(選別工程)を行う。
具体的には、目視及び手作業にて、廃乾電池からマンガン電池及びアルカリマンガン電池を選別する。言い換えると、廃乾電池から、異物(ごみ等)、異種電池(ボタン電池等)、腐食電池を除去する。
【0025】
ステップS102において、サイズ選別を行う。
具体的には、異物等が除去された廃乾電池(マンガン電池、アルカリマンガン電池)を、単1、単2、単3サイズ、その他電池(角型等)、に選別する。
【0026】
ステップS103において、タイプ(品種)選別を行う。
具体的には、それぞれの電池サイズにおいて、マンガン電池、アルカリマンガン電池、その他電池、に選別する。その他電池は、例えば、ニッケルカドミウム電池(Ni−Cd電池)、ニッケル水素電池(Ni−H電池)である。
【0027】
ステップS104において、粉砕(破砕工程)を行う。
具体的には、適宜な破砕機を使用して、それぞれの電池サイズにおいて破砕し破砕物を得る。
【0028】
ステップS105において、磁選別を行う。
例えば、特開2000−229269号公報に記載される磁選機を使用し、磁選機の磁力によって、鉄等の磁性体からなる鉄皮(鉄スクラップ)を選別し除去する。鉄皮は乾電池の外殻を構成するものである。
【0029】
ステップS106において、篩別(篩い分け工程)を行う。
具体的には、適宜な目開き(例えば3mm)の篩を使用して、鉄皮を除去した粉砕品を、篩上品と、篩下品(粉粒品)と、に分ける。
【0030】
ステップS107において、風力選別を行う。
具体的には、適宜な風力選別機を使用して、篩上品から金属粒等の風選品を選別する。なお、樹脂等が残ることになる。
【0031】
<水洗処理工程S200>
図2を参照して、水洗処理工程S200を説明する。
【0032】
ステップS201において、原料混合を行う。
具体的には、原料混合槽において、図1のステップS106で得た粉粒品と、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム水溶液)とを混合し、混合液(スラリー)を得る。
【0033】
ステップS202において、篩を行う。
具体的には、ステップS201で得た粉粒品である原料と、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)との混合液を、トロンメル(円筒状の篩網)で篩い、混合液から大径の異物を除去する。このように、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)によって、粉粒品をアルカリ洗浄することにより、粉粒品に付着する塩化物を除去できる。よって、後記する還元揮発処理工程S300への塩素分の持込を削減できる。
【0034】
ステップS203において、第1洗浄を行う。
具体的には、ステップS202においてトロンメルを通過した混合液を、第1洗浄槽に投入する。次いで、撹拌羽根を回転させ、第1洗浄槽内で混合液を撹拌混合する。
そうすると、粉粒品に含まれている塩化亜鉛(ZnCl、式(1)参照)が、溶媒である水に溶出する。これにより、粉粒品の脱塩素が進み、洗浄が進む。
なお、第1洗浄及び後記する第2洗浄は、例えば、事前試験等で求められた所定時間にて行われる。また、塩化亜鉛は潮解性があり水溶し易いので、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム水溶液)によるアルカリ洗浄で、塩化亜鉛は水酸化亜鉛としても回収可能となる。
【0035】
ステップS204において、第1沈降を行う。
具体的には、ステップS203での撹拌後の混合液を、第1沈降槽(シックナー)に投入した後、沈降剤を添加し、第1沈降槽のかきとり羽根(レーキ)を低速回転させる。そうすると、二酸化マンガン(MnO、式(1)参照)が、沈降する。
なお、第1沈降及び後記する第2沈降は、例えば、事前試験等で求められた所定時間にて行われる。
【0036】
ステップS205において、第2洗浄を行う。
具体的には、ステップS203における第1沈降槽に沈降し、二酸化マンガン(MnO)を含む沈降物(スラリー、アンダーフロー液)を、第2洗浄槽に投入する。なお、第1沈降槽及び後記する第2沈降槽のオーバーフロー液(上澄み液)は、中和槽に搬送され、希硫酸等の酸によって中和される。
【0037】
次いで、撹拌羽根を回転させ、第2洗浄槽内で沈降物を撹拌混合する。この場合において、脱塩素を進めるために苛性ソーダを添加してもよい。
そうすると、粉粒品(篩下品)に含まれている塩化亜鉛(ZnCl、式(1)参照)が、溶媒である水に溶出する。これにより、粉粒品(篩下品)の脱塩素が進み、洗浄が進む。
このように第1洗浄、第2洗浄の2段階で粉粒品(篩下品)を洗浄することにより、塩素を良好に除去できる。よって、洗浄工程を3段階以上としてもよい。
【0038】
ステップS206において、第2沈降を行う。
具体的には、ステップS205での撹拌後の混合液を、第2沈降槽(シックナー)に投入する。次いで、第2沈降槽のかきとり羽根(レーキ)を低速回転させる。そうすると、粉粒品(篩下品)中の二酸化マンガン(MnO、式(1)参照)が、沈降する。また、ステップS203と同様に、マンガン電池の電解液であって潮解性を有する塩化亜鉛は、水酸化亜鉛としても回収される。
【0039】
ステップS207において、濾布ベルトを備える脱水機を使用して、脱水を行う。
具体的には、不織布等で形成された無端状の濾布ベルトの上面に、ステップS206における第2沈降槽に沈降している沈降物(スラリー、アンダーフロー液)を、搬送する。そして、沈降物中の水分が沈降物から除去され、つまり、脱水され、濾布ベルト上に二酸化マンガン(MnO)を主成分とする洗浄品を得る。
【0040】
なお、無端状の濾布ベルトは、例えば、特許第3711222号公報に記載されるように、脱水機において、複数のロールに案内されながら走行している。濾布ベルトの下面には吸引ポンプに接続する吸引ボックスが配置されており、沈降物中の水分が吸引ボックスに吸引されるようになっている。
また、このような脱水処理は、2機以上の脱水機を使用して、2回以上繰り返すことが好ましい。
【0041】
<還元揮発処理工程S300>
図3を参照して、還元揮発処理工程(か焼工程、固形化工程)を説明する。
【0042】
マンガン及びアルカリ電池の粉砕品、粉粒品及び洗浄品をか焼するか焼工程について説明する。
ステップS301において、原料受入ホッパーに、ステップS105で得た粉砕品、ステップS107で得た風選品、ステップS207で得た洗浄品、を投入する。
【0043】
ステップS302において、コークス受入ホッパーに、還元剤としてのコークス(炭素)を投入する。
【0044】
ステップS303において、原料受入ホッパーの粉砕品、風選品及び洗浄品の混合物と、コークス受入ホッパーのコークスとを、キルン投入ホッパーに投入し、これらが混合してなる配合物(粉粒体)を調製する。
なお、前記混合物において、コークスは、前記配合物に対して、5〜30質量%であることが好ましく、特に10〜20質量%であることが好ましい。
【0045】
ステップS304において、ステップS303におけるキルン投入ホッパーの配合物をロータリーキルンに投入し、配合物を加熱する。なお、ここでは、ロータリーキルンの加熱源は、A重油を燃料とする重油バーナーである。
【0046】
ここで、ロータリーキルンにおいて、配合物を常温から1200℃以上に加熱する。
そうすると、配合物に含まれる亜鉛(Zn(OH)、ZnO、式(1)、(2)参照)が、コークス(炭素)で還元されることで揮発し、配合物がか焼される。つまり、亜鉛が配合物から除去され、亜鉛の品位は0〜0.6%となる(表1参照)。表1において、コークス添加率(%)は、コークス(g)/電池(g)×100、で与えられる。
なお、この配合物(残渣)は、二酸化マンガン(MnO、式(1)、(2)参照)を主成分とする。一方、揮発(ガス化)した亜鉛は排気ガスと共に、後記するステップS311における2次燃焼炉に供給される。
【0047】
【表1】
【0048】
具体的には、配合物に含まれる例えば酸化亜鉛(ZnO)は、コークス(炭素)で還元され、亜鉛ガスと二酸化炭素が生成し(式(3)参照)、亜鉛が除去され、二酸化マンガン(MnO)を主成分とする残渣が残る。そして、亜鉛ガスは、ロータリーキルン内の酸素と反応し再び酸化されて酸化亜鉛(ZnO、亜鉛ダスト)となり(式(4)参照)、二次燃焼炉(S311)に向かう。
【0049】
ZnO(固)+C(固)→Zn(気)+CO(気) …(3)
Zn(気)+1/2O(気)→ZnO(固) …(4)
【0050】
これに対して、加熱温度(焼成温度)を例えば1000℃以下とすると、配合物に含まれる亜鉛が揮発せず、焼成後の配合物である残渣中に、亜鉛が残ってしまう。例えば、焼成前の亜鉛の品位(含有量%)が28%である電池に対して、コークスの添加量を0質量%、10質量%、20質量%と変化させた場合において、加熱温度を800℃としたとき、前記残渣における亜鉛の品位(含有量%)は、30%、27%、25%となるという試験結果を得ている(表1参照)。また、加熱温度を1000℃としたとき、前記残渣における亜鉛の品位(含有量%)は、7%、8%、10%となるという試験結果を得ている(表1参照)。
【0051】
ステップS305において、か焼後の配合物である残渣を回収した後、この残渣をロータリークーラーで冷却し、マンガン・クリンカー(第1混合物)を得る。マンガン・クリンカーは、二酸化マンガン(MnO)を主成分としている(例えば63質量%以上)。一方、前記したように亜鉛は揮発除去されているので、マンガン・クリンカーにおける亜鉛の含有量は、例えば、0.4〜2.1質量%以下となる。
【0052】
マンガン・クリンカーを固形化する固形化工程について説明する。
ステップS306において、ステップS306で得たマンガン・クリンカーをマンガンホッパーに投入する。
【0053】
ステップS307において、結合剤を結合剤ホッパーに投入する。結合剤は、例えば、ポリスチレン(融点:70℃)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等から選択される少なくとも一種を使用できる。
【0054】
ステップS308において、マンガンホッパーのマンガン・クリンカーと、結合剤ホッパーの結合剤とを、固化機に投入する。この場合において、結合剤は、マンガン・クリンカーに対して、2〜50質量%(好ましくは10質量%)とする。なお、固化機は、例えば、特許第3490904号公報に記載されるように、被投入物を混合し加圧成形する装置である。
【0055】
具体的には、固化機において、マンガン・クリンカーと結合剤とを混合した後、この混合物を加圧成形することにより、前記ポリスチレン等からなる結合剤が加圧摩擦熱によって溶融し、マンガン・クリンカーが固形化されてなるマンガン・ブリケット(第1混合物体)を得る。この場合において、マンガン・ブリケット中のマンガンは35質量%以上となり、高品位である。
【0056】
次に、ステップS304におけるロータリーキルンで発生し、揮発した亜鉛を含むガスの処理について説明する。
【0057】
ステップS311において、ステップS304におけるロータリーキルンからのガスを、2次燃焼炉を使用して、800℃以上に加熱する。なお、加熱不足のため生成した微量の亜鉛ダストは、後記するステップS313のバグフィルターで捕集された亜鉛ダストと混合される。
【0058】
ステップS312において、ステップS311における2次燃焼炉からのガスを、ガス冷却塔を使用して、200℃以下に冷却する。
このように、ロータリーキルンからのガスを800℃以上に加熱しダイオキシン粒を分解した後(S311)、200℃以下に急冷するので(S312)、ダイオキシン類の再生成を抑制できる。
【0059】
ステップS313において、ステップS312からのガスを、バグフィルターに通す。そうすると、ガスに含まる亜鉛ダストがバグフィルターの濾布で捕集され、亜鉛ダストを得る。なお、この亜鉛ダスト(ZnO)中の亜鉛は75質量%以上となり、高品位である。
【0060】
ステップS314において、ステップS313のバグフィルターを通過したガスを、NaOH−TCA(Turbulent Contact Absorber、気液接触ガス吸収装置)において、万全を期すため水酸化ナトリウム水溶液と気液接触させ、ダイオキシン類を吸収する。
【0061】
ステップS315において、ステップS314のNaOH−TCAを通過したガスを、更に水−TCAにおいて、水と気液接触させ、ダイオキシン類を吸収する。
【0062】
ステップS316において、ステップS315で処理されたガスを、希釈塔で希釈した後、外部に排気する。
【符号の説明】
【0063】
S100 選別粉砕篩別工程
S200 水洗処理工程
S300 還元揮発処理工程
図1
図2
図3