特許第5948639号(P5948639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5948639酸性水相または有機相に存在するアメリシウムを他の金属元素から分離する方法及びそのアプリケーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948639
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】酸性水相または有機相に存在するアメリシウムを他の金属元素から分離する方法及びそのアプリケーション
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/46 20060101AFI20160623BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20160623BHJP
   C07D 213/79 20060101ALN20160623BHJP
【FI】
   G21C19/46 M
   G21F9/06 581H
   !C07D213/79
【請求項の数】26
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-540356(P2013-540356)
(86)(22)【出願日】2011年11月24日
(65)【公表番号】特表2014-504359(P2014-504359A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】EP2011070909
(87)【国際公開番号】WO2012069573
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】1059749
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】508313895
【氏名又は名称】アレヴァ・エヌセー
【氏名又は名称原語表記】AREVA NC
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】エレ グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ビュルデ ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ボリーニ ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】デュシェーヌ マリー−テレーズ
(72)【発明者】
【氏名】マザンティ マリネラ
(72)【発明者】
【氏名】ベルニエ ジル
(72)【発明者】
【氏名】ペレ−ロステン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ファレ−レジロン アラン
(72)【発明者】
【氏名】ルメール マルク
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−040751(JP,A)
【文献】 特開2010−189339(JP,A)
【文献】 特開2010−189340(JP,A)
【文献】 特開2010−189341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/46
G21F 9/06
C07D 213/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アメリシウムを、相P1に存在する他の金属元素から分離するプロセスであって、前記相P1と前記P1とは混ざらない相P2との接触と、前記相P2からの前記相P1の分離とをそれぞれ含む、一つ以上の工程を含み、前記相P1及び前記相P2の一方が、酸性水相であり、前記P1及び前記相P2の他方が、少なくとも一つの抽出剤を有機希釈剤中に含む有機相であって、前記酸性水相が、以下の一般式(I)に適合するエチレンジアミン誘導体を含み、
ここで、同一のまたは異なるA1、A2、A3及びA4が、以下の一般式(II)のグループを表し、
ここで、Xは窒素原子を表し、この場合、R1、R2及びR4の一つが、選択肢グループ:-COOH, -SO3H, -PO3H2, -CONH2 及び -CON(CH3)2から選択される錯化剤グループを表し、他のR1、R2及びR4が、互いに独立して、水素原子または選択肢グループ:-OH, -NH2, -N(CH3)2, -COOH, -COOCH3, -CONH2, -CON(CH3)2, -SO3H, -SO3CH3, -PO3H2, -PO(OCH3)2, -O(CH2CH2)n-OH 及び -O(CH2CH2)n-OCH3から選択されるグループを表し、ここで、nは1以上の整数であり、
または、Xは、水素原子またはグループR3を担持する炭素原子を表し、この場合、R1、R2、R3及びR4の一つが、選択肢グループ:-COOH, -SO3H, -PO3H2, -CONH2 及び -CON(CH3)2から選択される錯化剤グループを表し、他のR1、R2、R3及びR4が、互いに独立して、水素原子または選択肢グループ:-OH, -NH2, -N(CH3)2, -COOH, -COOCH3, -CONH2, -CON(CH3)2, -SO3H, -SO3CH3, -PO3H2, -PO(OCH3)2, -O(CH2CH2)n-OH 及び -O(CH2CH2)n-OCH3から選択されるグループを表し、ここで、nは1以上の整数であり、
または、前記酸性水相が、前記エチレンジアミン誘導体の塩を含むこと、
を特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記一般式(I)において、A1、A2、A3及びA4が、全て、前記一般式(II)のグループを表し、Xが、窒素原子、または、水素原子、グループ-OH、または、グループ-O(CH2CH2)n-OHを担持する炭素原子を表し、nが1以上の整数であること、
を特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記一般式(II)において、R1、R2及びR4の少なくとも一つが、錯化剤グループ-COOHを表すこと、
を特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記一般式(II)において、他のR1、R2及びR4が、水素原子を表すこと、
を特徴とする請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記一般式(I)において、A1、A2、A3及びA4が、互いに同じであること、
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記一般式(I)の前記エチレンジアミン誘導体が、
N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシ-ピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミン、
N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシ-4-ヒドロキシピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミン、
N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシ-4-ポリエチレングリコールピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミン、及び、
N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシピラジン-2-イル)メチル]エチレンジアミン、
から選択されること、
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記酸性水相が、0.001から3 mol/Lの硝酸を含む硝酸水相であること、
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記一般式(I)の前記エチレンジアミン誘導体またはその塩が、10-5から10-1 mol/Lの濃度範囲で、前記酸性水相中に存在すること、
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記有機相に存在する前記抽出剤が、溶媒抽出剤及びカチオン交換抽出剤から選択されること、
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記抽出剤が、マロンアミド、N,N,N',N'-テトラアルキル-3, 6-ジオキサオクタン-ジアミド、親油性ジグリコールアミド、アルキルホスフィン酸化物、カルバモイルホスフィン酸化物、カルバモイルリン酸、ジアルキルスルフィド、置換ピリジン、2,2'-ジベンズイミダゾール、ビスフェニルホスホン酸アルキルエステル、アルキルホスホン酸、アルキルホスホン酸塩、アルキルホスフィン酸、親油性カルボン酸、スルホン酸、チオリン酸、チオホスホン酸、チオホスフィン酸、チオ亜リン酸、親油性ヒドロキシオキシム、及び、親油性β-ジケトンから選択されること、
を特徴とする請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記有機相が、さらに、少なくとも一つの相変性剤を含むこと、
を特徴とする請求項1から1のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
アメリシウムに加えて他の金属元素を含む酸性水相に存在するアメリシウムの選択的回収プロセスであって、
請求項1から1のいずれか1項に記載のプロセスの実行を含むこと、
を特徴とするプロセス。
【請求項13】
前記酸性水相が、アメリシウム以外の金属元素として、少なくとも、キュリウム、及びランタノイドを含む核分裂生成物を含むが、ウラニウム、プルトニウム、及びネプツニウムは含まず、または、これらの三つの元素を微量含むだけの、硝酸水相であること、
を特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記硝酸水相が、使用済み核燃料を処理するプロセスPUREXまたはCOEX(商標)の第一の精製サイクルから生じる抽出残液であること、
を特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
少なくとも以下のステップ:
a)アメリシウム、及び、第一の酸性水相である前記酸性水相中に存在する前記他の金属元素の全部または一部を抽出するステップであり、この抽出は、前記第一の酸性水相が、前記第一の酸性水相とは非混和性で、有機溶媒中に少なくとも一つの抽出剤を含む、有機相と接触し、続いてこの有機相から分離される、少なくとも一つの工程を含むステップ、
b)前記ステップa)に由来する前記有機相に存在する前記アメリシウムを選択的に除去するステップであり、この除去は、この有機相が、前記一般式(I)のエチレンジアミン誘導体またはその塩を含む第二の酸性水相と接触し、続いて前記第二の酸性水相から分離される、少なくとも一つの工程を含むステップ、
を含むこと、
を特徴とする請求項1から1のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ステップa)を受ける前記第一の酸性水相が、少なくとも一つの錯化剤を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
−ステップa)が、前記有機相と前記第一の酸性水相の分離後に、前記有機相を第三の酸性水相で洗浄する少なくとも一つの工程をさらに含み、及び/または、
−ステップb)が、前記有機相と前記第二の酸性水相の分離後に、前記第二の酸性水相を前記ステップa)で用いられるものと同じ組成を有する有機相で洗浄する少なくとも一つの工程をさらに含むこと、
を特徴とする請求項1または1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ステップb)に由来する前記有機相に存在する金属元素を除去するステップであり、この除去は、この有機相が、第4の酸性水相に接触し、続いてこの第4の酸性水相から分離される、少なくとも一つの工程を含む、ステップc)をさらに含むこと、
を特徴とする請求項1から1のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ステップa)で用いられる前記有機相が、マロンアミド抽出剤とアルキルホスホン酸抽出剤の混合物質、または、ジグリコールアミド抽出剤を含むこと、
を特徴とする請求項1から1のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
第一の酸性水相である前記酸性水相に存在するアメリシウム以外のすべての金属元素を選択的に抽出する少なくとも一つのステップa)を含み、この抽出は、前記第一の酸性水相が、前記第一の酸性水相と非混和性で少なくとも一つの抽出剤を有機溶媒中に含む有機相と接触し、続いてこの有機相から分離される、少なくとも一つの工程を含み、前記一般式(I)の少なくとも一つのエチレンジアミン誘導体またはその塩の前記第一の酸性水相への添加の後に、または同時に、行われること、
を特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記ステップa)が、前記有機相と前記第一の酸性水相の分離後に、この有機相を前の工程で用いられたものと同じ前記一般式(I)のエチレンジアミン誘導体を含む第二の酸性水相に接触させることにより、前記有機相を洗浄する、少なくとも一つの工程をさらに含むこと、
を特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項22】
プロセスが、前記ステップa)に由来する前記有機相に存在する金属元素を除去するステップb)をさらに含み、この除去が、この前記有機相が第三の酸性水相と接触し、続いてこの第三の酸性水相から分離される、少なくとも一つの工程を含むこと、
を特徴とする請求項2又は2に記載のプロセス。
【請求項23】
前記ステップb)で用いられる前記第三の酸性水相が、少なくとも一つの錯化剤を含むこと、
を特徴とする請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ステップa)で用いられる前記有機相が、相変性剤と混合されるアルキルホスホン酸抽出剤、または、ジグリコールアミド抽出剤を含むこと、
を特徴とする請求項2から2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記一般式(I)の前記エチレンジアミン誘導体が、N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンであること、
を特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記一般式(I)の前記エチレンジアミン誘導体またはその塩が、10-4から10-2 mol/Lの範囲で前記酸性水相中に存在すること、
を特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性水相または有機相に存在するアメリシウムを、同じ相で見られる他の金属元素から分離可能とするプロセスに関する。
【0002】
また、アメリシウムに加えて、他の金属元素をも含む、酸性水相からの、アメリシウムの選択的な回収プロセスにも関し、これは、この分離プロセスのアプリケーションを含む。
【0003】
本発明は、照射済み核燃料の処理及びリサイクルの分野で利用可能であり、該分野では、PUREXまたはCOEX(商標)プロセスの第一の精製サイクルからの抽出残液のような高い活量を備える水溶液で、アメリシウム、キュリウム、場合によってはカリフォルニウムと、ランタノイドを含む核分裂生成物とを含む一方、ウラニウム、プルトニウム、及びネプツニウムは含まず、または、これら三つの元素を微量含む、水溶液からの、アメリシウムの回収に、特に大きな関心が持たれている。
【背景技術】
【0004】
PUREXプロセス(照射済み核燃料の処理プラントで現在用いられている)、及び、COEX(商標)プロセス(特許文献1に記載されている)等の、照射済み核燃料の溶解液に存在するウラニウム及びプルトニウムの抽出及び精製を可能とするプロセスは、抽出残液(ラフィネート)という名前が与えられる廃液を生じる。
【0005】
これらの抽出残液は、通常2から5Mの、強い硝酸性の水溶液であり、アメリシウム、キュリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジウム、サマリウム及びユーロピウム等のランタノイド、モリブデン、ジルコニウム、ルビジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、及びイットリウム等のランタノイド以外の核分裂生成物と、鉄等の腐食生成物と、を含む。
【0006】
それらの処理は、現在、それらを最大限に濃縮し、最終的な貯蔵の前の一時的な貯蔵を目的として、それらをガラス性の母材に封入することで構成されている。
【0007】
アメリシウムは、300年後の、抽出残液の封入から得られる廃棄物の残留放射能の主たる要因である。図のように、この放射能が、核燃料を作るために用いられる天然のウラニウムのレベルと同じオーダーのレベルに戻るのに必要な時間は、約10,000年である。
【0008】
従って、抽出残液がガラス固化に送られる前の、抽出残液に存在するアメリシウムの選択的な回収は、ガラス固化される廃棄物と、それによる貯蔵範囲の熱負荷の大幅な低減を可能とする。
【0009】
また、放射性廃棄物に存在するキュリウムの主たる同位体であるキュリウム244は、重大な放射能の強力な中性子放射源である。
【0010】
従って、キュリウムを含まないアメリシウムの回収は、アメリシウムを含む変成燃料のアセンブリの製造、処理、及び運搬を容易にする。
【0011】
液体−液体抽出での利用が提案されている、大部分の抽出剤が、キュリウム、ランタノイド、及びイットリウムに対するアメリシウムへの明確な選択性を持たず、または選択性を全く持たないことが判明している。これは、これらの元素の物理化学的特性の間に存在する、強い類似性に起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
その結果、現在、液体−液体抽出による、一方ではキュリウムからのアメリシウムの分離と、他方ではランタノイド及びイットリウムからのアメリシウムの分離は、非常に困難であり、これらの分離は、可能である場合に、十分な分離性能を得るために、非常に多くの段階の利用を必要とし、これは、工業的視点から、デメリットである。
【0013】
ここで、本発明者は、本発明の範囲内で、以下のことに偶然気付いた。
−ランタノイドのリガンドとして記述され、医学的用途の蛍光ランタノイド錯体を作るために提供される(特許文献2参照)、エチレンジアミンの水溶性の誘導体が、酸性水溶液中にある場合に、予想外に、アメリシウムの錯体化能力を有し、その能力が、キュリウム、ランタノイド、及びイットリウムを含む一定数の他の核分裂生成物へのものよりも、はるかに大きいこと、
−アメリシウムの錯体化能力が、アメリシウムが他の元素と共に存在する酸性水溶液からのアメリシウムの選択的な回収に対して、特に利用可能であること。
【0014】
本発明は、これらの観察に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
まず、本発明の目的は、アメリシウムを、相P1に存在する他の金属元素から分離するプロセスであって、このプロセスは、
−相P1と該相P1とは混ざらない相P2との接触と、相P2からの相P1の分離とをそれぞれ含む、一つ以上の工程を含み、相P1及び相P2の一方が、酸性水相であり、相P1及び相P2の相の他方が、少なくとも一つの抽出剤を有機希釈剤中に含む有機相であって、
−酸性水相が、以下の一般式(I)に適合するエチレンジアミン誘導体を含み、
ここで、同一のまたは異なるA1、A2、A3及びA4が、以下の一般式(II)のグループを表し、
ここで、Xは窒素原子を表し、この場合、R1、R2及びR4の一つが、選択肢グループ:-COOH, -SO3H, -PO3H2, -CONH2 及び -CON(CH3)2から選択される錯化剤グループを表し、他のR1、R2及びR4が、互いに独立して、水素原子または選択肢グループ:-OH, -NH2, -N(CH3)2, -COOH, -COOCH3, -CONH2, -CON(CH3)2, -SO3H, -SO3CH3, -PO3H2, -PO(OCH3)2, -O(CH2CH2)n-OH 及び -O(CH2CH2)n -OCH3から選択されるグループを表し、ここで、nは1以上の整数であり、
または、Xは、水素原子またはグループR3を担持する炭素原子を表し、この場合、R1、R2、R3及びR4の一つが、選択肢グループ:-COOH, -SO3H, -PO3H2, -CONH2 及び -CON(CH3)2から選択される錯化剤グループを表し、他のR1、R2、R3及びR4が、互いに独立して、水素原子または選択肢グループ:-OH, -NH2, -N(CH3)2, -COOH, -COOCH3, -CONH2, -CON(CH3)2, -SO3H, -SO3CH3, -PO3H2, -PO(OCH3)2, -O(CH2CH2)n -OH 及び -O(CH2CH2)n -OCH3から選択されるグループを表し、ここで、nは1以上の整数であり、
または、酸性水相が、エチレンジアミン誘導体の塩を含むこと、を特徴とするプロセスである。
【0016】
本発明の範囲では、前述したように、一般式(I)において、A1、A2、A3及びA4が、すべて、一般式(II)のグループを表し、Xが、窒素原子、または、水素原子、または、エチレンジアミン誘導体の水への溶解性を促進可能なグループ、例えば、-OHグループ、または-O(CH2CH2)n-OHグループを担持する炭素原子を表し、nが1以上の整数であること、が好ましい。
【0018】
また、一般式(II)において、R1、R2及びR4の少なくとも一つが、錯化剤グループ-COOHを表すこと、が好ましい。
【0019】
この場合、他のR1、R2及びR4が、水素原子を表すことが、最も好ましい。
【0020】
さらに、一般式(I)において、A1、A2、A3及びA4が、互いに同じであること、が好ましく、エチレンジアミンの合成をより一層促進する。
【0021】
これらのすべての好適条件に適合するエチレンジアミン誘導体は、例えば、
−N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンであり、以下の一般式(Ia)に適合し、
−N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシ-4-ヒドロキシピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンであり、以下の一般式(Ib)に適合し、
−N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシ-4-ポリエチレングリコールピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンであり、以下の特定式(Ic)に適合し、
ここで、nは1から12に含まれ、好ましくは、1、2、4、6、8、10及び12であり、
−N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシピラジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンであり、以下の特定式(Id)に適合する。
【0022】
これらのエチレンジアミン誘導体において、N,N,N',N'-テトラキス[(6-カルボキシピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンが最も好ましく、以下では、より簡単に、H4TPAENと記す。
【0023】
実際に、この誘導体は、アメリシウムに対する特有の興味深い親和性に加えて、僅かな酸性度、すなわち、実際には1オーダーのpH(硝酸水相の場合では0.1mol/Lオーダーの硝酸濃度に相当)の水相においても、この元素の錯体化の能力を有することが判明している。
【0024】
この最後の特徴は、とりわけ酸性水相のpHの安定化のためのバッファー系を利用することのない実行可能性をもたらすため、非常に有利であり、アメリシウムを他の金属元素から分離するために従来技術で提案され、1.5以上のpHで行われる、二相系には当てはまらない。
【0025】
従って、酸性水相は、望まれる場合、特に特定式(Id)のエチレンジアミン誘導体と、酸及び水とからのみ構成されてもよい。
【0026】
前に述べたように、一般式(I)のエチレンジアミン誘導体は、その酸性形態で、または、ナトリウム塩またはカリウム塩型等のアルカリ金属塩のような塩の形態で、または、マグネシウム塩またはカルシウム塩型等のアルカリ土類金属塩のような塩の形態で、または、ヒドロキシルアミン塩型等の有機塩のような塩の形態で、水相に存在してもよい。
【0027】
本発明の範囲内で、酸性水相は、硝酸濃度が好ましくは0.001から3 mol/L、より良好には、0.01から1 mol/L、より好ましくは0.01から0.3 mol/Lの範囲である、硝酸水相であることが好ましい。
【0028】
また、一般式(I)のエチレンジアミン誘導体またはその塩は、10-5から10-1 mol/L、好ましくは10-4から10-2 mol/L、より良好には、10-3から5×10-2mol/Lの濃度範囲で、酸性水相中に存在することが有利である。
【0029】
有機相に存在する抽出剤は、溶媒抽出剤及びカチオン交換抽出剤から特に選択されてもよい。
【0030】
適した溶媒抽出剤の例としては、以下が挙げられる。
・N,N'-ジメチル- N,N'-ジブチルテトラデシル-マロンアミド(またはDMDBTDMA)、N,N'-ジメチル- N,N'-ジオクチルヘキシルエトキシマロンアミド(またはDMDOHEMA)、N,N'-ジメチル- N,N'-ジオクチルオクチルマロンアミド(またはDMDOOMA)、N,N'-ジメチル- N,N'-ジオクチルヘキシルマロンアミド(またはDMDOHxMA)、N,N'-ジメチル- N,N'-ジオクチルヘプチルマロンアミド(またはDMDOHpMA)、または、N,N'-ジメチル- N,N'-ジブチルドデシルマロンアミド(またはDMDBDDEMA)等のマロンアミド、
・N,N,N’,N’-テトラオクチル-3,6-ジオキサオクタンジアミド(またはDOODA-C8)、N,N,N’,N’-テトラドデシル-3,6-ジオキサオクタンジアミド(またはDOODA-C12)等の四座N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタンジアミド抽出剤、
・N,N,N’,N’-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(またはTODGA)、N,N,N’,N’-テトラデシル-3-オキサペンタンジアミド(またはTDDGA)、または、N,N,N’,N’-テトラ-2-エチルヘキシル-3-オキサペンタンジアミド(またはTEHDGA)等の親油性ジグリコールアミド(すなわち炭素原子の相和が24より大きい)、
・トリオクチルホスフィン酸化物(またはTOPO)、トリブチルホスフィン酸化物(またはTBPO)、または、略称TRPOで知られるトリアルキルホスフィンの混合物等のアルキルホスフィン酸化物、
・オクチルフェニル-N,N-ジイソブチル-カルバモイルメチルホスフィン(またはCMPO)等のカルバモイルホスフィン酸化物、
・ジヘキシル-N,N-ジエチルカルバモイル-メチルホスホン酸塩(またはDHDECMP)等のカルバモイルホスホン酸塩、
・ジヘキシル硫化物等のジアルキル硫化物、
・ビストリアジニル-1,2,4-ピリジン(またはBTP)等の置換ピリジン、
・2,2’-ジベンズイミダゾール、及び、
・ビスフェニルホスホン酸アルキルエステル。
【0031】
適したカチオン交換抽出剤の例としては、以下が挙げられる。
*ジ(2-エチルヘキシル)リン酸(またはHDEHP)、ジヘキシルリン酸(またはHDHP)、ビス-(1,3-ジメチルブチル)リン酸(またはHBDMBP)、または、ジイソデシルリン酸(またはDIDPA)等のアルキルリン酸、
*p-2-エチルヘキシル-o-2-エチルヘキシルハイドロゲン-ホスホン酸塩(またはPC88A)、p-プロピル-o-ヘプチルハイドロゲンホスホン酸塩、p-ブチル-o-オクチル-ハイドロゲンホスホン酸塩、または、p-ペンチル-o-ヘキシルハイドロゲンホスホン酸塩等のアルキルホスホン酸塩、
*ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸(またはシアネックス272)等のアルキルホスフィン酸、
*デカン酸またはシアノデカン酸等の親油性カルボン酸、
*ジノニルナフタレンスルホン酸(またはHDNNS)等のスルホン酸、
*ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ジチオホスフィン酸(またはシアネックス301)、チオ亜リン酸、親油性ヒドロキシオキシム等のチオリン酸、チオホスホン酸、チオホシフィン酸、及び、3-フェニル-4-ベンゾイル-5-イソオキサゾロン(またはHPBI)等の親油性β-ジケトン。
【0032】
有機希釈剤としては、トルエン、キシレン、t-ブチルベンゼン、ジ-またはトリ-イソプロピルベンゼン、ケロシン、n-ドデカンまたは水素化テトラプロピレン(またはTPH)等の直線または分岐ドデカン、isane(登録商標)、正常なパラフィン炭化水素(またはNPH)、メタニトロベンゾトリフルオリド、5,5’-[オキシビス(メチレンオキシ)]ビス(1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタン)、1-オクタノール等のアルコール、及びそれらの混合物質等の、照射済み核燃料処理の分野において液体−液体抽出を実現するために利用が提案された、すべての極性または脂肪族有機希釈剤から選択されてもよい。
【0033】
有機相は、偏析により第三の相を形成することなく、この相の負荷能力、すなわち、この相が含む金属元素の最大濃度を増すことができる、一つ以上の相変性剤をさらに含んでもよい。
【0034】
この場合、これらの相変性剤は、トリ-n-ブチルリン酸塩(またはTBP)、または、トリ-n-ヘキシルリン酸塩(またはTHP)等のアルキルリン酸塩、1-オクタノール、1-デカノール、または、イソデカノール等のアルコール、N,N-ジヘキシルオクタンアミド(またはDHOA)、N,N-ジブチルデカンアミド(またはDBDA)、N,N-ジ(エチルヘキシル)アセトアミド(またはD2EHAA)、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)プロピオンアミド(またはD2EHPRA)、N,N -ジ(2-エチルメチル)イソブチルアミド(またはD2EHiBA)、または、N,N -ジヘキルデカンアミド(またはDHDA)等のモノアミド、及び、DMDBTDMA、DMDOHEMA、DMDOOMA、DMDOHxMA、DMDOHpMA、または、DMDBDDEMA等のマロンアミド等から特に選択されてもよい。
【0035】
従って、有機相は、液体−液体抽出により、酸性水相から、選択的に、またはランタノイドと共に、アクチニド(III)を回収することを目的とする、先行技術のプロセスで用いられるものと同じタイプのもの、及び、以下を用いるものと同じタイプのものであってよい。
−ジグリコールアミド抽出剤(非特許文献1及び非特許文献5)、
−ジアミド四座抽出剤N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタンジアミド(非特許文献6)、
−マロンアミド抽出剤(非特許文献7及び非特許文献8)、
−マロンアミド抽出剤とアルキルリン酸抽出剤の混合物質(DIAMEX-SANEXプロセス、特許文献3及び非特許文献9)、
−アルキルリン酸抽出剤とカルバモイルホスフィン酸化物抽出剤の混合物質(非特許文献10)、
−アルキルリン酸抽出剤(TALSPEAKプロセス及びその代替、非特許文献11〜非特許文献13;DIDPAプロセス、非特許文献14及び非特許文献15)、
−ビスフェニルホスフィン酸アルキルエステル抽出剤(非特許文献16)、
−アルキルホスホン酸塩抽出剤(非特許文献17)、
−β-ジケトン抽出剤(非特許文献18及び非特許文献19)、
−カルバモイルホスフィン抽出剤(SEFTICSプロセス、特許文献4及び非特許文献20;TRUEXプロセス、非特許文献21及び非特許文献22)、
−アルキルホスフィン酸化物抽出剤(非特許文献23〜非特許文献25)、
−置換ピリジン抽出剤(特許文献5及び非特許文献26)、
−チオホスホン酸抽出剤(非特許文献27〜非特許文献30)。
【0036】
その結果、このプロセスは、先行技術で提案された、液体−液体抽出により、酸性水相からアクチニド(III)を回収するためのプロセスに対して、一ステップとしてそれらのプロセスに統合され、または、補助的なステップとして、すなわち、それらのステップから下流で用いられることで、適用されてもよく、これは、本発明によるアメリシウムの分離プロセスの多数の利点の一つである。
【0037】
従って、酸性水相からアメリシウムを選択的に回収するために、先行技術のこれらのプロセスを用いることができる。
【0038】
従って、本発明の目的は、また、アメリシウムに加えて他の金属元素を含む酸性水相に存在するアメリシウムの選択的な回収プロセスであって、前述したようにアメリシウムを分離するプロセスの実行を含むことを特徴とする。
【0039】
本発明の範囲内で、この酸性水相は、他の金属元素として、少なくとも、キュリウム、及びランタノイドを含む核分裂生成物を含むが、ウラニウム、プルトニウム、及びネプツニウムは含まず、または、これらの三つの元素を微量含むだけの硝酸水相であることが好ましい。そのような硝酸水相は、特に、PUREXまたはCOEX(商標)プロセスの第一の精製サイクルから生じる抽出残液であってもよい。
【0040】
このアメリシウムの選択的な回収プロセスの好ましい第一の実施形態では、プロセスは、少なくとも以下のステップ:
a)アメリシウム、及び、第一の酸性水相である酸性水相中に存在する他の金属元素の全部または一部を抽出するステップであり、この抽出は、この第一の酸性水相が、第一の酸性水相とは非混和性で、有機溶媒中に少なくとも一つの抽出剤を含む、有機相と接触し、続いてこの有機相から分離される、少なくとも一つの工程を含むステップ、
b)ステップa)からの有機相に存在するアメリシウムを選択的に除去するステップであり、この除去は、この有機相が、一般式(I)のエチレンジアミン誘導体またはその塩を含む第二の酸性水相と接触し、続いてこの第二の酸性水相から分離される、少なくとも一つの工程を含むステップ、
を含む。
【0041】
従って、この第一の実施形態では、本発明によるアメリシウムの分離プロセスは、有機相からのアメリシウムの選択的な除去に用いられ、このプロセスでは、アメリシウムが他の金属元素の全部または一部と共に事前に抽出される。従って、相P1に相当するのはこの有機相であり、アメリシウムの選択的除去を実現するために用いられる酸性水相が、相P2に相当する。
【0042】
知られているように、ステップa)を受ける第一の酸性水相は、ある金属元素の抽出を回避できる、または少なくとも制限できる、一つ以上の錯化剤を含んでもよく、ステップa)からの有機相におけるその存在は、ステップb)におけるアメリシウムの選択的除去を妨げることができる。
【0043】
この場合、この錯化剤は、特に、以下から選択されてもよい。
−N,N,N’,N’-テトラメチルジグリコールアミド(またはTMDGA)、N,N,N’,N’-テトラエチルジグリコールアミド(またはTEDGA)、N,N,N’,N’-テトラプロピルジグリコールアミド(またはTPDGA)、または、N,N,N’,N’-テトラ(2-エチルヘキシル)ジグリコールアミド(またはTEHDGA)、等の親水性ジグリコールアミド(すなわち、炭素原子の総数が24を超えない)、
−シュウ酸、マロン酸、または、メソキサル酸(オキソマロン酸としても知られる)等のカルボン酸、
−N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(またはHEDTA)、ニトリロ三酢酸(またはNTA)、または、ジエチレントリアミン五酢酸(またはDTPA)等のポリアミノカルボン酸、
−ジピコリン酸(またはDPA、2,6-ピリジンジカルボン酸として知られる)等のピリジンポリカルボン酸、
−グリコール酸、クエン酸、または、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸、
−アミン、1個から8個の炭素原子を含むアルキル鎖が接続されたポリアジン、親水性ヒドロキシオキシム、スルホン酸、ヒドロキサム酸、及び、新水性β-ジケトン、
これは、一方では、有機相に存在する抽出剤に依存し、他方では、抽出を回避または制限する金属元素に依存する。
【0044】
この第一の実施形態の好ましい第一の応用によれば、
−ステップa)が、有機相と第一の酸性水相の分離後に、この有機相を、ステップa)を受ける第一の酸性水相に存在するものと同じ錯化剤を可能であれば含む第三の酸性水相で洗浄する、少なくとも一つの工程をさらに含み、及び/または、
−ステップb)が、有機相と第二の酸性水相の分離後に、第二の酸性水相をステップa)で用いられるものと同じ組成を有する有機相で洗浄する少なくとも一つの工程をさらに含む。
【0045】
第一の実施形態の好ましい他の応用によれば、アメリシウムの選択的な回収プロセスは、ステップb)に由来する有機相に存在する金属元素を除去するステップであり、この除去は、この有機相が、第四の酸性水相に接触し、続いてこの第四の酸性水相から分離される、少なくとも一つの工程を含む、ステップc)をさらに含む。
【0046】
また、この除去に用いられる第四の酸性水相は、ある金属元素の水相への移動を促進可能な一つ以上の錯化剤を含んでもよい。この場合、この錯化剤は、特に、前述した錯化剤から選択されてもよい。
【0047】
この第一の実施形態の好ましいさらに他の応用によれば、ステップa)で用いられる有機相は、DMDOHEMAとHDEHPの混合物質等の、マロンアミド抽出剤とアルキルホスホン酸抽出剤の混合物質、または、TODGA等のジグリコールアミド抽出剤を含む。
【0048】
本発明によるアメリシウムの選択的な回収プロセスの好ましい第二の実施形態では、このプロセスは、第一の酸性水相である酸性水相に存在するアメリシウム以外のすべての金属元素を選択的に抽出する少なくとも一つのステップa)を含み、この抽出は、この第一の酸性水相が、第一の酸性水相と非混和性で少なくとも一つの抽出剤を有機溶媒中に含む有機相と接触し、続いてこの有機相から分離される、少なくとも一つの工程を含み、一般式(I)の少なくとも一つのエチレンジアミン誘導体またはその塩の第一の酸性水相への添加の後に、または同時に、行われる。
【0049】
従って、第二の実施形態では、本発明によるアメリシウムの分離プロセスは、アメリシウムを除くすべての金属元素を、アメリシウム及び他の金属元素が最初に存在する第一の酸性水相から、選択的に除去するために用いられる。従って、この第一の酸性水相が相P1に相当し、アメリシウムを除くすべての金属元素の選択的抽出を実現するために用いられる有機相が、相P2に相当する。
【0050】
この第二の実施形態における好ましい第一の応用によれば、ステップa)は、有機相と第一の酸性水相の分離後に、この有機相を前の工程で用いられたものと同じ一般式(I)のエチレンジアミン誘導体を含む第二の酸性水相に接触させることにより、有機相を洗浄する、少なくとも一つの工程をさらに含む。
【0051】
この第二の実施形態における好ましい応用によれば、プロセスが、ステップa)に由来する有機相に存在する金属元素を除去するステップb)をさらに含み、この除去が、この有機相が第三の酸性水相と接触し、続いてこの第三の酸性水相から分離される、少なくとも一つの工程を含む。
【0052】
また、この除去で用いられる第三の酸性水相は、ある金属元素の第三の酸性水相への移動を促進可能な、少なくとも一つの錯化剤を含んでもよく、この場合、この錯化剤は、特に、前述した錯化剤から選択されてもよい。
【0053】
この第二の実施形態のさらなる好ましい応用によれば、有機相は、TBPまたはDMDOHEMA等の相変性剤と混合される、例えばHDEHP等のアルキルホスホン酸抽出剤、または、TODGA等のジグリコールアミド抽出剤を含む。
【0054】
アメリシウムの選択的な回収プロセスがどのように実施されるかに関わらず、一般式(I)のエチレンジアミン誘導体は、好ましくは10-4から10-2 mol/L、より良好には10-3から5×10-2 mol/Lの範囲の濃度で用いられる、H4TPAENであることが好ましい。
【0055】
本発明によるアメリシウムの選択的な回収プロセスは、多くの利点を有する。特に、
−プロセスは、以下の実施例で示すように、酸性水相に最初に存在するアメリシウムの99%以上を、この酸性水相に最初に存在する他の金属元素の1%以下の付随で、回収可能であり、
−プロセスは、アメリシウムまたは他の金属元素の酸化−還元反応を生じず、従って、そのような反応に関する障害を含まず、
−プロセスは、有機相として、液体−液体抽出により、酸性水相から、選択的に、またはランタノイドと共に、アクチニド(III)を回収することを目的とする、先行技術からのプロセスにおいて利用が提案された有機相を、どのような有機相でも利用でき、従って、これらのプロセスの代わりに、または、これらのプロセスに加えて、簡単に利用可能であり、
−プロセスは、0.1から3 mol/Lの硝酸を通常含む、高い硝酸濃度を有する水相の処理に、これらの水相の酸性度を低減する必要なく、適用可能である。
【0056】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明によるアメリシウムの選択的な回収プロセスの典型的な実施形態と、これらの例の検証を認められた実験的試験とに従い、また関連する、さらなる記述から明らかになるであろう。
【0057】
これらの例は、本発明の目的の図として示されているだけであり、この目的を限定するものとして理解されるものではないことは、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明によるアメリシウムの選択的な回収プロセスの典型的な第一の実施形態のブロック図であり、本発明によるアメリシウムの分離プロセスのDIAMEX-SANEXプロセスへの適用に相当する。
図2】本発明によるアメリシウムの選択的な回収プロセスの典型的な第一の実施形態のブロック図であり、本発明によるアメリシウムの分離プロセスのTODGAプロセスへの適用に相当する。
図3】ピリジン-2,6-ジカルボン酸からの、H4TPAENの合成に対する反応機構図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1及び図2において、1から6と記される矩形は、照射済み核燃料の処理で従来使用されているものと同様の多段抽出器(ミキサー−セトラー抽出器、パルスカラム抽出器、遠心分離抽出器)を示す。
【0060】
これらの抽出器に流入及び流出する有機相は、二重線で示され、これらの抽出器に流入及び流出する水相は、実線で示される。
実施例1:本発明によるアメリシウムの分離プロセスのDIAMEX-SANEXプロセスへの適用
【0061】
まず、本発明によるアメリシウムの選択的な回収プロセスの典型的な第一の実施形態を概略的に図示し、本発明によるアメリシウムの分離プロセスのDIAMEX-SANEXプロセスへの適用に相当する、図1を参照されたい。
【0062】
DIAMEX-SANEXプロセスは、PUREXプロセスの第一の精製サイクルから生じる抽出残液に存在するアクチニド(III)をランタノイドから分離するために、最初に提案され、異なる化学領域で作用する二つの抽出剤、一つはマロンアミドであり、他の一つはアルキルリン酸、の利用に基づくことを想起されたい。
【0063】
また、PUREXプロセスの第一の精製サイクルから生じる抽出残液は、通常2から5Mの、強い硝酸性の水溶液であり、アメリシウム、キュリウム、ランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、…)、ランタノイド以外(Mo、Zr、Ru、Rd、Pa、Y、…)の核分裂生成物と、鉄等の腐食生成物と、を含むことを想起されたい。また、この溶液は、ウラニウム、プルトニウム、及び、ネプツニウムを含まず、または、これらの元素が存在する場合、微量、すなわち、0.3%を超えない質量含有量しか存在しない。
【0064】
図1で確認できるように、本発明によるアメリシウムの選択的な回収プロセスは、本図では“抽出”と記される、第一のステップを含み、そこでは、まず、抽出残液が、第一の抽出器(図1において符号1で示される)において、有機希釈剤中に溶解されたマロンアミド及びアルキルリン酸を含む有機相に対する逆方向の流れとして、循環される。
【0065】
DIAMEX-SANEXプロセスと同様に、マロンアミドは、通常0.5から0.7 mol/L、例えば0.6 mol/Lの濃度で用いられる、DMDOHEMAであることが好ましく、アルキルリン酸は、通常0.1から0.5 mol/L、例えば0.3 mol/Lの濃度で用いられる、HDEHPであることが好ましい。
【0066】
それに対する有機希釈剤は、TPHである。
【0067】
抽出器1への導入前後で、抽出残液の硝酸含有量は、必要であれば、例えば、5 mol/Lの硝酸を加えることにより、好ましくは3から5 mol/L、例えば4 mol/Lであるように、精留されてもよい。
【0068】
また、抽出残液には、少なくとも一つの錯化剤、例えば、通常0.01から0.1 mol/L、例えば0.05 mol/Lの濃度の、HEDTA等のポリアミノカルボン酸が加えられ、その機能は、有機相によるパラジウムの抽出を抑制することである。
【0069】
図1で“洗浄”と呼ばれる第二のステップでは、抽出器1から流出する有機相は、第二の抽出器(図1において符号2で示される)を、水相に対する逆方向の流れとして循環し、水相は、0.01から0.5 mol/L、例えば0.05 mol/Lの硝酸と、抽出残液に加えられたものと同じ濃度範囲の同じ錯化剤とを、好ましくは含む。
【0070】
従って、アメリシウム、キュリウム、ランタノイド、イットリウム、モリブデン、ジルコニウム、及び、鉄を含み、プロセスの第三のステップ、すなわち、この有機相からのアメリシウムの選択的な除去が行われる第三の抽出器(図1において符号3で示される)に向かう有機相が、これらの最初の二つのステップで得られる。
【0071】
図1において“Am除去”と記されるこの除去は、本発明によるアメリシウムの分離プロセスを適用することにより、すなわち、抽出器2から流出する有機相(この場合、相P1に相当)を、好ましくは10-2から0.3 mol/L、例えば0.1 mol/Lの硝酸と、好ましくは10-4から10-2 mol/L、例えば10-3 mol/Lの濃度で用いられる、H4TPAEN等の一般式(I)のエチレンジアミン誘導体とを含む水相(従って、相P2に相当)に対する逆方向の流れとして循環させることにより、達成される。
【0072】
図1で確認できるように、この除去は、本図で“Cm/FP洗浄”と呼ばれる第四のステップで達成されることが有利であり、この第四のステップは、抽出器3から流出する水相を、第一のステップで用いられるものと同じ組成の“新鮮な”有機相に対する逆方向の流れとして、第四の抽出器へ循環させることで成り立ち、これは、有機相において、水相へのアメリシウムに付随する可能性のある微量のキュリウム及び核分裂生成物を除去中に回収して、この除去の選択性を高めるためである。
【0073】
従って、第三及び第四のステップ後に、アメリシウムのみを含み、またはほぼアメリシウムのみを含み、従って、循環を離れる水相と、アメリシウムを全く含まず、またはほぼ含まず、第一のステップにおいて抽出された、キュリウム、ランタノイド、イットリウム、モリブデン、ジルコニウム、及び鉄を依然として含む、有機相とが得られる。
【0074】
続いて、この有機相は、第五の抽出器(図1の抽出器5)へ向けられ、そこでは、第五のステップ、すなわち、この相に依然として存在するすべての金属元素の除去が行われる。
【0075】
図1において“他の元素の除去”と記されるこの除去は、抽出器3を流出する有機相を、水相に対する逆方向の流れとして循環させることにより、達成され、この水相は、0.5から1.5 mol/L、例えば1 mol/Lの硝酸と、通常0.01から0.5 mol/L、例えば0.2 mol/Lの濃度で用いられる、TEDGAのような水溶性のジグリコールアミド等の一つ以上の錯化剤と、通常0.05から0.8 mol/L、例えば0.5 mol/Lの濃度で用いられる、シュウ酸等のカルボン酸とを好ましくは含む。
【0076】
従って、この第五のステップ後に、第一のステップで抽出された金属元素をもはや含まず、マロンアミド抽出剤及びアルキルリン酸抽出剤に加えて、前のステップで蓄積された、特に放射性分解からの一定数の不純物及び分解産物を含む、有機相が得られる。
【0077】
従って、図1で確認できるように、この有機相は、pHが8以上の、0.1から0.3 Mの炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムの溶液等の強塩基の水相での、一回以上の洗浄と、沈殿物を含む場合は、補助的な一回以上のろ過による精製のために、第六の抽出器(図1の抽出器6)に向けられる。
【0078】
これにより、精製された有機相が、新たな処理サイクルを適用するために、抽出器1及び4に向けて戻される。
実施例2:本発明によるアメリシウムの分離プロセスのTODGAプロセスへの適用
【0079】
本発明によるアメリシウムの選択的な回収プロセスの典型的な第二の実施形態を概略的に図示し、本発明によるアメリシウムの分離プロセスのTODGAプロセスへの適用に相当する、図2を参照されたい。
【0080】
TODGAプロセスは、PUREXプロセスの第一精製サイクルからの抽出残液に存在するアクチニド(III)とランタノイドとを共に回収するために、最初に提案された。
【0081】
このプロセスは、ジグリコールアミド抽出剤、この場合は、強酸性でDMDOHEMAよりもより強力な、TODGAの利用に基づいている。
【0082】
また、この典型的な実施形態では、本発明によるアメリシウムの選択的な回収は、図2では“抽出”と記される第一のステップを含み、抽出残液が、第一の抽出器(図2において符号1で示される)において、有機希釈剤、例えばTPHに溶解された、通常0.1から0.2 mol/L濃度のTODGAを含む有機相に対する逆方向の流れとして、循環される。
【0083】
また、有機相には、溶媒抽出剤として少なくとも親油性であるDHOA等のジアルキルモノアミド、または、TBP等のアルキルリン酸塩が、この相の負荷能力を増すために、例えば0.5 mol/Lの濃度で、存在してもよい。
【0084】
実施例1のように、抽出残液の硝酸含有量は、必要であれば、抽出器1への導入前または導入中に、例えば5 mol/Lの硝酸を加えることにより、好ましくは3から5 mol/L、例えば4 mol/Lであるように、精留される。
【0085】
この抽出残液には、さらに、少なくとも二つの錯化剤が加えられ、その一方は、パラジウムの抽出を抑制する機能を有し、他方は、ジルコニウム及び鉄の抽出を抑制する機能を有する。従って、これらの錯化剤の一つ目は、実施例1と同じように、例えばHEDTAであり、二つ目は、例えば、通常0.5 mol/Lの濃度で用いられるシュウ酸等のカルボン酸である。
【0086】
図2で“洗浄”と記される第二のステップでは、抽出器1から流出する有機相は、第二の抽出器(図において符号2で示される)において、好ましくは1から4 mol/L、例えば3 mol/Lの硝酸と、抽出残液に加えられたものと同じで、同じ濃度範囲の錯化剤とを含む、第一の水相に対する逆方向の流れとして循環し、続いて、第一の水相より酸性が弱い、例えば0.5 mol/Lの硝酸を含む、第二の水相に対する逆方向の流れとして循環する。
【0087】
従って、これらの二つの第一のステップの後に、アメリシウム、キュリウム、カリフォルニウム、ランタノイド及びイットリウムを含み、プロセスの第三のステップ、すなわち、この有機相からのアメリシウムの選択的除去が行われる第三の抽出器(図2において符号3で示される)に向けられる、有機相が得られる。
【0088】
図2において“Am除去”と示されるこの除去は、本発明によるアメリシウムの分離プロセスを適用することにより、すなわち、抽出器2から流出する有機相(この場合、相P1に相当)を、0.03から0.14 mol/L、例えば0.1 mol/Lの硝酸と、好ましくは10-4から10-2 mol/L、例えば10-3 mol/Lの濃度で用いられるH4TPAEN等の一般式(I)のエチレンジアミン誘導体と、通常0.1から3 mol/L、例えば1 mol/Lの濃度で用いられる、ナトリウム、リチウム、または硝酸ヒドロキシルアミン等の補助的な脱塩を行う塩と、を好ましくは含む水相に対する逆方向の流れ(従って、相P2に相当)として循環させることにより、達成される。
【0089】
図2で確認できるように、この除去は、本図で“Cm洗浄”と呼ばれる第四のステップで達成されることが有利であり、この第四のステップは、第四の抽出器(図の抽出器4)において、抽出器3から流出する水相を、第一のステップで用いられるものと同じ組成の“新鮮な”有機相を通じて、循環させることで成り立ち、これは、有機相において、アメリシウムの除去中に水相へのアメリシウムに付随する可能性のある微量のキュリウム、カリフォルニウム、核分裂生成物、及び腐食生成物を回収して、この除去の選択性を高めるためである。
【0090】
従って、第三及び第四のステップ後に、アメリシウムのみを含み、またはほぼアメリシウムのみを含み、従って、循環を離れる水相と、アメリシウムを全く含まず、またはほぼ含まず、第一のステップにおいて抽出された、キュリウム、カリフォルニウム、ランタノイド、及び、イットリウムを依然として含む、有機相とが得られる。
【0091】
この有機相は、第五の抽出器(図2の抽出器5)へ向けられ、そこでは、第五のステップ、すなわち、この相に依然として存在するすべての金属元素の除去が行われる。
【0092】
図2において“他の元素の除去”と記されるこの除去は、抽出器3を流出する有機相を、水相に対する逆方向の流れとして循環させることにより、達成され、この水相は、0.005から0.05 mol/L、例えば0.01 mol/Lの硝酸を好ましくは含み、錯化剤を含まないことが有利である。
【0093】
実施例1と同様に、抽出器5を流出する有機相は、新たな処理サイクルを適用するために抽出器1及び4に戻される前に、精製されるように、第六の抽出器(図の抽出器6)に向けられる。
実施例3:実施例1及び2で説明したプロセスの実験的検証
【0094】
実施例1及び2で説明したプロセスの有効性を検証する実験的試験が、一般式(I)のエチレンジアミン誘導体としてH4TPAENを用いて行われる。
【0095】
このテストの需要に対して、ピリジン-2,6-ジカルボン酸を出発物質として用い、特許文献2で提案されるものとは実質的に異なる手続きに従って、H4TPAENが合成された。
【0096】
この合成を、以降に説明し、図3に図式化する。
1)H4TPAENの合成
*ピリジン-2,6-ジカルボン酸からのジメチル 2,6-ピリジン カルボン酸塩の合成
【0097】
図3において符号1と記される、5.2 g(3.1×10-2 mol)のピリジン-2,6-ジカルボン酸が、20 mLの無水メタノールに懸濁される。容積900 μLの97%硫酸が加えられ、混合液が、16時間還流される。冷却後、メタノールは真空蒸発され、白色固体が得られる。飽和重炭酸ナトリウムが、pH=7まで、すなわち、約200 mL加えられる。続いて、等しい容量のジクロロメタンが、第一の抽出を行うために用いられる。水相は、100 mLのジクロロメタンで、再抽出される。有機相は回収され、50 mLの飽和塩化ナトリウムで洗浄される。最終的な有機相は、無水硫酸ナトリウムで乾燥される。溶媒は、真空蒸発される。
【0098】
従って、図3において符号2と記す、5.3 gのジメチル 2,6-ピリジン カルボン酸塩が、収率90%で白色固体として得られる。
【0099】
この化合物のプロトンNMR分析は、以下の通りである。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz, 298K), δ (ppm): 8.25 (d, J = 7.3 Hz, 2H); 7.97 (t, J = 7.3 Hz, 1H); 3.96 (s, 6H, CH3)
*ジメチル 2,6-ピリジン カルボン酸塩からのメチル 6-ヒドロキシメチル-2-ピリジン カルボン酸塩の合成
【0100】
2 g(10-2 mol)のジメチル 2,6-ピリジンカルボン酸塩が、90 mLのメタノールに懸濁される。その媒体は、0℃に冷却され、続いて590 mg(1.56×10-2 mol)の水素化ホウ酸ナトリウムが、三回この温度で加えられる。輸液は透明になり、媒体は、室温で24時間攪拌される。pHは、37%塩酸で3となる。溶媒は、蒸発され、pH7を得るために、固体が100 mLの水及び飽和重炭酸ナトリウムで再懸濁される。有機相における生成物質の抽出は、100 mLのジクロロメタンで行われる。水相は、同じ量の溶媒で、再抽出される。有機相は、グループ化され、無水硫酸ナトリウムで乾燥される。
【0101】
これにより、図3において符号3で記される、1.41 gのメチル 6-ヒドロキシメチル-2-ピリジン カルボン酸塩が、白色固体として、収率82%で得られる。
【0102】
この化合物のプロトンNMR分析及びカーボン13NMR分析は、以下の通りである。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz, 298K), δ (ppm): 8.04 (dt, J = 7.7 Hz, J = 0.6 Hz, 1H); 7.86 (t, J = 7.7 Hz, 1H); 7.57 (dt, J = 7.7 Hz, J = 0.6 Hz, 1H); 4.88 (s, 2H, CH2OH); 3.99 (s, 6H, CH3)
13C NMR, DEPT 135, (CDCl3, 300 MHz, 298K), δ (ppm): 138.1; 124.5; 124.2; 65.1 (CH2OH); 53.3 (CH3)
*メチル 6-ヒドロキシメチル-2-ピリジン カルボン酸塩からのメチル 6-クロロメチル-2-ピリジン カルボン酸塩の合成
【0103】
2.25 g(1.28×10-2 mol)のメチル 6-ヒドロキシメチル-2-ピリジン カルボン酸塩が、0℃で、試薬及び溶媒の双方として用いられる、4.5 mL(6.1×10-2 mol; 4.5 equiv.)の塩化チオニルで反応される。反応は、0℃で、1時間生じる。過剰な塩化チオニルは、室温で、真空蒸発され、ガス放出がなくなるまで、メタノールが加えられる。5分後、溶液は、真空蒸発される。黄色油が、100 mLのトルエンで取り出され、50 mLの冷たい10%重炭酸ナトリウムで二回洗浄される。水相は、100 mLのトルエンで、再抽出される。有機相は、グループ化され、飽和塩化ナトリウムで洗浄及び乾燥される。
【0104】
従って、図3において符号4で記される、2.32 gのメチル 6-クロロメチル-2-ピリジン カルボン酸塩が、結晶化する黄色油として、収率90%で得られる。
【0105】
この化合物のプロトンNMR分析及びカーボン13NMR分析は、以下の通りである。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz, 298K), δ (ppm): 8.10 (d, J=7.7 1Hz, 1H); 7.92 (t, J=7.71Hz, 1H); 7.75 (d, J=7.71Hz, 1H); 4.79 (s, 2H, CH2Cl); 4.03 (s, 6H, CH3)
13C NMR, DEPT 135, (CDCl3, 300 MHz, 298K), δ (ppm): 138.6; 126.6; 124.9; 53.5 (CH3); 40.7 (CH2Cl)
*メチル 6-クロロメチル-2-ピリジン カルボン酸塩からのN,N,N’,N’-テトラキス[(6-カルボキシメチル-ピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンの合成
【0106】
2 g(1.08×10-2 mol)のメチル 6-クロロメチル-2-ピリジン カルボン酸塩が、反応炉に導入され、アルゴン流での一掃により、周囲が浄化される。36 mLの容積の無水アセトニトリルが加えられ、続いて、生成物質の溶解後に、175 μL(2.63×10-3 mol)のエチレンジアミンと、続いて1.49 g(1.08×10-2 mol)の炭酸カリウムとが、加えられる。この混合物質は、14時間還流され、溶液はオレンジ色になる。溶媒は、結晶化する油を得るために、蒸発される。この油は、100 mLのジクロロメタンで吸収される。有機相は、40 mLの水で二回洗浄され、続いて、無水硫酸ナトリウムで乾燥され、イソプロパノールから再結晶化される、2.48 gのオレンジ色の固体を得る可能性をもたらす。
【0107】
こうして、図3において符号5と記される、700 mgの精製されたN,N,N’,N’-テトラキス[(6-カルボキシメチル-ピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンが、ベージュ色の固体として、収率40%で回収される。
【0108】
この化合物のプロトンNMR分析は、以下の通りである。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz, 298K), δ (ppm): 7.97 (dd, J = 6.96 Hz, J = 1.68 Hz, 1H); 7.71 (massive, 2H); 3.98 (s, 12H, CH3); 3.89 (s, 8H, PyCH2N); 2.78 (s, 4H, NCH2CH2)
*N,N,N’,N’-テトラキス[(6-カルボキシメチル-ピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンからの、H4TPAENの合成
【0109】
825 mgのN,N,N’,N’-テトラキス[(6-カルボキシメチル-ピリジン-2-イル)メチル]エチレンジアミンが、4.5 mLの6 M塩酸に懸濁される。この混合物質は、14時間還流され、室温で茶色の沈殿物が出現する。この固体は濾過され、2 mLの水で二回洗浄され、続いて、室温で14時間真空乾燥される。
【0110】
こうして、690 mgのH4TPAENが、ベージュ色の粉末として、収率80%で得られる。
【0111】
この化合物のプロトンNMR分析は、以下の通りである。
1H NMR (DMSOd6, 300 MHz, 298K), δ (ppm): 7.91 (massive, 2H); 7.67 (massive, 1H); 4.51 (s, 8H, PyCH2N); 3.70 (s, 4H, NCH2CH2)
2)実施例1で説明したプロセスの実験的検証
*抽出/洗浄
【0112】
試験管テストが、以下を用いて行われる。
*微量にしか存在しないアメリシウム241及びキュリウム244については除く、PUREXプロセスによりUOX3タイプの照射済み核燃料の処理から生じる抽出残液をシミュレートする水相、
*0.6 mol/LのDMDOHEMA及び0.3 mol/LのHDEHPをTPH中に含む有機相、及び、
*パラジウムの抽出を抑制せず、アメリシウムの選択的除去の後続ステップにおいてその反応を観察することができるように、任意で錯化剤を含まない、洗浄用の蒸留水。
【0113】
抽出残液をシミュレートする水相の硝酸性は、4 mol/Lである。
【0114】
下記の表Iに、金属元素の質的及び量的な組成を示す。これらの元素すべては、硝酸塩として溶解されている。
【0115】
【表1】
【0116】
抽出残液をシミュレートする有機相及び水相は、まず、同じ容積で互いに接触され、一定温度25℃で10分間攪拌される。
【0117】
水相からの有機相のデカンテーション及び分離後に、アメリシウム241及びキュリウム244の活量が、これらの各相において、α分光分析法により、計測され、他の金属元素の濃度が、略称ICP-AESとしても知られる、誘導結合プラズマ原子発光分光分析法により、水相のみで計測される。
【0118】
アメリシウム241及びキュリウム244の分配係数は、(有機相における活量)/(水相における活量)の比の計算により確定され、他の金属元素の分配係数は、((初期濃度−最終濃度)/初期濃度)の比の計算により確定される。
【0119】
次に、有機相が、容積1の有機相に対して容積8の蒸留水で、蒸留水に接触され、全体が、一定温度25℃で10分間攪拌される。
【0120】
有機相と水相のデカンテーション及び分離後に、アメリシウム241及びキュリウム244の活量が、これらの各相において、α分光分析法により、計測され、他の金属元素の濃度が、ICP-AESにより、水相のみで計測される。
【0121】
アメリシウム241、キュリウム244、及び他の金属元素の分配係数は、前述の方法と同様に確定される。
【0122】
下記の表IIに、分配係数(DM)と、それにより得られる分離係数(FSAm/M)を示す。硝酸の分配係数も、この表に示されている。
【0123】
【表2】
【0124】
この表は、抽出ステップが、抽出残液に存在する金属元素の主要な部分の抽出を可能とすることを示しており、これは、これらの元素の分配係数が、すべて3より大きいからである。また、工業規模で、8段の抽出器と、1以上のO/A(有機相/水生相)流速比を用いることにより、有機相において、抽出残液に当初存在する金属元素の99.9%以上を抽出することができる。
【0125】
洗浄ステップは、金属元素と共に抽出可能な硝酸を、水相に戻す目的を有する。
【0126】
ここで、表IIで示される硝酸の分配係数は、この酸が、DMDOHEMA/HDEHPの混合物質では、抽出し難いことを示している。洗浄ステップの終わりに、有機相の硝酸濃度は、5×10-3 mol/L以下であり、これは無視できる。
【0127】
一方、金属元素の分配係数は、すべて2より大きく、これは、これらの元素の大部分が、有機相に残ることを示している。
*アメリシウムの選択的除去
【0128】
試験管テストが、以下を用いて行われる。
*事前に行われ、従って241Am、244Cm、Ce、Eu、Fe、Gd、La、Mo、Nd、Pd、Pr、Sm、Y及びZrを含む、洗浄の試験処理からの有機相、及び、
*0.1 mol/Lの硝酸及び0.001 mol/LのH4TPAENを含む水相。
【0129】
これらの相双方は、同じ容積で互いに接触され、一定温度25℃で10分間攪拌される。
【0130】
有機相及び水相のデカンテーション及び分離後に、アメリシウム241及びキュリウム244の活量が、これらの各相において、α分光分析法により、計測され、他の金属元素の濃度が、ICP-AESにより、水相のみで計測される。
【0131】
アメリシウム241及びキュリウム244の分配係数は、(有機相における活量)/(水相における活量)の比の計算により確定される。
【0132】
他の金属元素の分配係数は、(有機相における濃度)/(水相における濃度)の比の計算により確定され、有機相における濃度は、強錯化性の硝酸水相におけるこれらの元素の除去(HNO3=1 mol/L;TEDGA=0.2 mol/L;シュウ酸=0.5 mol/L;容積1の水相に対して容積1の有機相;攪拌期間=10分;温度=25℃)と、この除去に由来する水相での該元素の濃度のICP-AESによる計測とにより、推定される。
【0133】
下記の表IIIに、分配係数(DM)と、それにより得られる分離係数(FSAm/M)とを示す。
【0134】
【表3】
【0135】
この表は、アメリシウム241と他の元素との間の分離係数が、アメリシウムよりも良好に有機相から除去されるパラジウムを除き、すべて2.5より大きいことを示している。
【0136】
従って、除去されるアメリシウムのパラジウムによる汚染を防ぐ場合、パラジウムの抽出を抑制する可能性をもたらす錯化剤、例えば、前述した実施例1で説明したHEDTAを、アメリシウムの選択的除去に先立つ抽出及び洗浄ステップで用いる必要がある。
【0137】
HEDTAによるパラジウムの錯体形成は、非特許文献11における高活性の実在溶液で、既に検証されている。
【0138】
また、表IIIは、パラジウムを除くと、ランタノイド及びキュリウム244が、アメリシウムから分離し難いことを示している。
【0139】
これが、以下を用いる付加的な試験が行われる理由である。
−0.001 mol/LのH4TPAENと、硝酸塩の形態で溶解される、Ce、Eu、Gd、La、Nd、Pr、Sm及びYとを含み、pHが1に調整される、第一の硝酸水相S1、
−相S1とはpHが2に調整されている点でのみ異なる、第二の硝酸水相S2、
−0.6 mol/LのDMDOHEMA及び0.3 mol/LのHDEHPをTPHに含み、4 mol/Lの硝酸を含む水相
からアメリシウム241、キュリウム244、セリウム139及びユーロピウム152を抽出するために用いられ、この抽出の最後に蒸留水で洗浄された、有機相。この洗浄の最後にγ分光分析法で計測された、この有機相のカチオン濃度は、次の通りである。
[152Eu]=10-3mg/L
[139Ce]=2.7×10-6mg/L
[241Am]=9.5×10-2mg/L
[244Cm]=1.3×10-3mg/L
【0140】
下記の表IVに、ICP-AESにより確定される相S1及びS2における金属元素の初期濃度を示す。
【0141】
【表4】
【0142】
相S1及びS2は、有機相の一部と共に、同じ容積で並行に接触され、一定の温度25℃で15分間それと共に攪拌される。
【0143】
有機相と水相のデカンテーション及び分離後に、アメリシウム241、キュリウム244、セリウム139及びユーロピウム152の活量が、これらの各相において、α及びγ分光分析法により、計測され、他の金属元素(Ce、Eu、Gd、La、Nd、Pr、Sm、Y)の濃度が、ICP-AESにより、水相のみで計測される。
【0144】
アメリシウム241、キュリウム244、セリウム139及びユーロピウム152の分配係数は、(有機相における活量)/(水相における活量)の比の計算により確定される。
【0145】
他の金属元素の分配係数は、(有機相における濃度)/(水相における濃度)の比の計算により確定され、有機相における濃度は、強錯化性の硝酸水相におけるこれらの元素の除去(HNO3=1 mol/L;TEDGA=0.2 mol/L;シュウ酸=0.5 mol/L;容積1の水相に対して容積1の有機相;攪拌期間=10分;温度=25℃)と、この除去に由来する水相での該元素の濃度のICP-AESによる計測とにより、推定される。
【0146】
下記の表Vに、各相S1及びS2に対する、分配係数(DM)と、それにより得られる分離係数(FSAm/M)とを示す。
【0147】
【表5】
【0148】
この表は、有機相において最初に存在するセリウム139及びユーロピウム152の分配係数が、水相において最初に存在するセリウム及びユーロピウムのものと等しいことを示している。これは、H4TPAENの存在下では、ランタノイドの抽出と除去との間で、可逆性が存在することを意味する。従って、これらの結果は、前述の表IIIに示され、有機相において最初に存在した元素に対して得られた結果と、比較可能である。
【0149】
この追試験は、0.001 mol/LのH4TPAENを含む硝酸水相により、アメリシウムを、キュリウムから、ランタノイドから、及び、イットリウムから、分離可能であることを裏付ける。また、この試験で用いられる分析条件下で、アメリシウムの分配係数は、0.4以下であることも、示している。
【0150】
従って、pH1から1.5で、0.001 mol/LのH4TPAENを含み、O/A流速比が1から2の硝酸水溶液を32段階で用いる、アメリシウムの選択的除去のステップの工業規模での適用は、1%以下のキュリウムを伴う抽出されたアメリシウム及び抽出されたランタノイドの99%以上の回収を可能とする。
*他の金属元素の除去
【0151】
試験管テストが、以下を用いて行われる。
*事前に行われ、従って244Cm、Ce、Eu、Fe、Gd、La、Mo、Nd、Pr、Sm、Y及びZrを含む、アメリシウムの除去の試験処理からの有機相、
*1 mol/Lの硝酸、0.2 mol/LのTEDGA及び0.8 mol/Lのシュウ酸を含む水相。
【0152】
これらの相双方は、同じ容積で互いに接触され、全体が、一定の温度25℃で10分間攪拌される。
【0153】
有機相と水相のデカンテーション及び分離後に、キュリウム244の活量が、これらの各相において、α分光分析法により、計測され、他の金属元素の濃度が、ICP-AESにより、水相のみで計測される。
【0154】
キュリウム244の分配係数は、(有機相における活量)/(水相における活量)の比の計算により確定され、他の金属元素の分配係数は、(有機相における濃度)/(水相における濃度)の比の計算により確定され、有機相における濃度は、強錯化性の硝酸水相におけるこれらの元素の除去(HNO3=1 mol/L;TEDGA=0.2 mol/L;シュウ酸=0.5 mol/L;容積1の水相に対して容積1の有機相;攪拌期間=10分;温度=25℃)と、この除去に由来する水相での濃度のICP-AESによる計測とにより、推定される。
【0155】
下記の表VIに、これにより得られる分配係数(DM)を示す。
【0156】
【表6】
【0157】
この表は、すべての金属の分配係数が、0.1よりはるかに小さいことを示している。これは、1 mol/Lの硝酸と、0.2 mol/LのTEDGAと、0.8 mol/Lのシュウ酸とを含み、O/A流速比が10のオーダーの水溶液を、わずか4段階で用いることにより、これらすべての元素の定量的な除去が、工業規模で、達成可能であることを意味している。
3)実施例2で説明したプロセスの実験的検証
【0158】
遠心分離抽出器(非特許文献7)での実施により既に検証され、ここで試験が報告される、実施例2で説明した、第一、第二及び第五のステップは、このプロセスにおけるH4TPAENでの錯体形成による、アメリシウムの選択的除去の達成可能性の検証のみを目的としている。
【0159】
二つの試験が行われ、一方は、アメリシウム、キュリウム、ランタン、及びユーロピウムの反応の試験であり、他方は、アメリシウム/カリフォルニウムの分離効率の計測である。
*キュリウム、ランタン及びユーロピウムに対するアメリシウムの分離の選択性
【0160】
この試験は、TPH中に0.1 mol/LのTODGAを含む有機相を用いて、行われる。
【0161】
この有機相は、まず、同じ容積で、以下の組成の水相と接触される。
[Eu]=6.5×10-5 mol/L
[La]=5.8×10-5 mol/L
微量の241Am、244Cm及び152Eu
[NaNO3]=3 mol/L
【0162】
ユーロピウム及びランタンは、硝酸塩の形態でこの相に溶解され、それらの濃度は、ICP-AESにより計測される。
【0163】
pHは、NaOHを加えることで、2に調整される。
【0164】
有機相及び水相は、一定の温度25℃で、15分間攪拌される。
【0165】
有機相と水相のデカンテーション及び分離後に、アメリシウム241、キュリウム244、及びユーロピウム152の活量が、それぞれこれらの各相において、α及びγ分光分析法により、計測される。併せて、他の金属元素の濃度が、ICP-AESにより、水相のみで計測される。
【0166】
得られた結果は、これらの金属元素の主要な部分が、有機相へ抽出されることを示している。
【0167】
TPH中の0.1 mol/LのTODGAと、微量の241Am、244Cm及び152Euと、5×10-5 mol/Lのユーロピウム(不活性)と、5.8×10-5 mol/Lのランタンとを含む有機相が、0.03から0.045のモル濃度範囲の硝酸中に6.5×10-4 mol/LのH4TPAENと、3 mol/LのNaNO3とを含む水相と、同じ容積で、接触される。
【0168】
有機相及び硝酸相は、一定の温度25℃で、15分間攪拌される。
【0169】
有機相と水相のデカンテーション及び分離後に、アメリシウム241、キュリウム244、及びユーロピウム152の活量が、それぞれこれらの各相において、α及びγ分光分析法により、計測され、ランタン及びユーロピウム(不活性)の濃度が、ICP-AESにより、水相のみで計測される。
【0170】
キュリウム244及びユーロピウム152の分配係数は、(有機相における活量)/(水相における活量)の比の計算により確定され、ランタン及びユーロピウム(不活性)の分配係数は、(初期濃度−最終濃度)/(初期濃度)の比の計算により確定される。
【0171】
下記の表VIIに、アメリシウムの除去の終わりに水相により示される硝酸濃度に応じた、分配係数(DM)と、それにより得られる分離係数(FSM/Am)とを示す。
【0172】
【表7】
【0173】
この表は、TODGAプロセスの範囲内で、キュリウム244が、アメリシウム241からの分離に最も難しいことを裏付けている。
【0174】
しかしながら、キュリウムとアメリシウムとの間の分離係数は、3.5より大きく、この水相の酸性度に関わらず、99%以上のアメリシウムを、少なくとも30段階の抽出器で、他の元素から選択的に回収することができる。
*カリフォルニウムに対するアメリシウムの除去の選択性
【0175】
この試験は、TPH中に0.2 mol/LのTODGAと0.5 mol/LのTBPとを含む有機相を用いて行われる。TBPは、相変性剤として用いられる。
【0176】
第一のフェーズでは、この有機相は、同じ容積で、以下の組成の水相と接触される。
249Cf=8,500 kBq/L=2.4×10-2 mg/L
241Am=10,000 kBq/L=7.9×10-2 mg/L
152Eu=11,300 kBq/L=1.8×10-3 mg/L
[HNO3]=3 mol/L
そして、全体が、一定の温度25℃で、30分間攪拌される。この工程は、有機相における放射性トレーサーを抽出する目的を有している。
【0177】
次に、有機相と水相のデカンテーション及び分離後に、有機相が、同じ容積で、0.01 mol/Lの硝酸を含む水相と接触され、全体が、一定の温度25℃で、30分間攪拌される。この工程は、前の工程で抽出された可能性のある硝酸の除去を目的としている。
【0178】
有機相と水相のデカンテーション及び分離後に、アメリシウム241、カリフォルニウム249、及びユーロピウム152の活量が、それぞれこれらの各相において、α及びγ分光分析法により、計測される。
【0179】
得られた結果は、これらの放射性トレーサーの主要な部分が、有機相へ抽出されたことを示している。
【0180】
これにより得られた、微量の241Am、249Cf及び152Euを含む有機相は、同じ容積で、0.1 mol/Lの硝酸と、0.001 mol/LのH4TPAENとを含む水相と接触され、全体が、一定の温度25℃で、30分間攪拌される。
【0181】
有機相と水相のデカンテーション及び分離後に、アメリシウム241、カリフォルニウム249、及びユーロピウム152の活量が、それぞれこれらの各相において、α及びγ分光分析法により、計測され、それらの分配係数が、(有機相における活量)/(水相における活量)の比の計算により確定される。
【0182】
下記の表VIIIに、分配係数(DM)と、それにより得られる分離係数(FSM/Am)とを示す。
【0183】
【表8】
【0184】
この表は、0.001 mol/LのH4TPAENを含み、0.14 mol/Lの硝酸度の水相により、アメリシウムを、カリフォルニウムから分離できることを示している。
【0185】
そのような酸性度の利用が可能である利点は、二つある。すなわち、
−除去に用いる水相のpHを安定化するためにバッファー系を用いる必要性を無くすこと、及び、
−アメリシウムの選択的除去の際に、除去の必要がない元素の分配係数を増すことが可能な、硝酸ナトリウム等の脱塩を行う塩を用いる必要性を無くすこと。
【0186】
従って、水相は、H4TPAEN、硝酸及び水のみで構成されてもよい。
【0187】
アメリシウムの分配係数は、0.1以下であり、カリフォルニウムとアメリシウムとの間の分離係数は、40より大きい。
【0188】
従って、pH1から1.5で、0.001 mol/LのH4TPAENを含み、O/A流速比が3に近い、硝酸水溶液を、12段階で用いる、アメリシウムの選択的除去のステップの、工業規模での適用は、0.1%以下の抽出されたカリフォルニウムを伴う抽出されたアメリシウムの99.9%の回収の可能性をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0189】
【特許文献1】WO 2007/135178
【特許文献2】FR 2 890 657
【特許文献3】FR 2 845 616
【特許文献4】FR 2 738 663
【特許文献5】DE 198 10 895
【非特許文献】
【0190】
【非特許文献1】R.B. Gujar, S.A. Ansari, M.S. Murali, P.K. Mohapatra, V.K. Manchanda, J. Radioanal. Nucl. Chem. 284, 377-385 (2010)
【非特許文献2】R.B. Gujar, S.A. Ansari, P.K. Mohapatra, V.K. Manchanda, Solv. Ext. Ion Exch., 28, 350-366 (2010)
【非特許文献3】S.A. Ansari, P.N. Pathak, V.K. Manchanda, M. Husain, A.K. Prasad, V.S. Parmar, Solv. Ext. Ion Exch., 23, 463-479 (2005)
【非特許文献4】S. Tachimori, S. Susuki, Y. Sasaki, A. Apichaibukol, Solv. Ext. Ion Exch., 21(5), 707-715 (2003)
【非特許文献5】G. Modolo, H. Asp, H. Vijgen, R. Malmbeck, D. Magnusson, C. Sorel, Solv. Ext. Ion Exch., 26, 62-76 (2008)
【非特許文献6】Y. Sasaki, Y. Morita, Y. Kitatsuji, T. Kimura, Solv. Ext. Ion Exch., 28, 335-349 (2010)
【非特許文献7】M.C. Charbonnel, C. Nicol, L. Berthon, P. Baron, Proceedings of the International Conference GLOBAL’97, Yokohama, Japan (1997).
【非特許文献8】L. Spjuth, J.O. Liljenzin, M. Skalberg, M.J. Hudson, G.Y.S. Chan, M.G.B. Drew, M. Feaviour, P.B. Iveson, C. Madic, Radiochimica Acta, 78, 39-46 (1997)
【非特許文献9】P. Baron, X. Heres, M. Lecomte, M. Masson, ≪ Separation of the Minor Actinides: the DIAMEX-SANEX Concept ≫, Proceedings of the International Conference GLOBAL'01, Paris, France (2001)
【非特許文献10】P.S. Dhami, R.R. Chitnis, V. Gopalakrishnan, P.K. Wattal, A. Ramnujam, A.K. Bauri, Sep. Sci. Technol., 36(2), 325-335 (2001)
【非特許文献11】B. Weaver, F.A. Kappelmann, ≪ TALSPEAK: A New Process of Separating Americium and Curium from the Lanthanides by Extraction from an Aqueous Solution of Aminopolyacetic Acid Complex with a Monoacidic Organophosphate or Phosphonate ≫, Rapport ORNL-3559 (1964)
【非特許文献12】M. Kubota, Y. Morita, R. Tatsugae, T. Fujiwara, Y. Kondo, ≪ Development of Partitioning Process at JAERI ≫, Third International Information Exchange Meeting on Actinide and Fission Product Partitioning and Transmutation, Cadarache, France (1994).
【非特許文献13】S. Tachimori, A. Sato, H. Nakamura, J. Nucl. Sci. Technol., 16(6), 434 (1979)
【非特許文献14】M. Kubota, Y. Morita, ≪ Preliminary assessment on four group partitioning process developed in JAERI ≫, Proceedings of the International Conference GLOBAL'97, Yokohama, Japan (1997)
【非特許文献15】Y. Morita, J.P. Glatz, M. Kubota, L. Koch, G. Pagliosa, K. Roemer, A. Nicholl, Solv. Ext. Ion Exch., 14(3), 385-400 (1996)
【非特許文献16】J. Yamagawa, M. Goto, F. Nakashio, Solv. Ext. and Res. Dev., 4, 12-22 (1997)
【非特許文献17】S.D. Chaudhary, P.S. Dhami, V. Gopalakrishnan, A. Ramanujam, J.N. Mathur, ≪ Solvent extraction of trivalent actinides and lanthanides from various aqueous media using KSM-17 ≫, NUCAR 97: Nuclear and Radiochemistry Symposium. Department of Atomic Energy, Bombay, India (1997)
【非特許文献18】P.N. Pathak, R. Veeraraghavan, P.K. Mohapatra, V.K. Manchanda, ≪ Use of 3-phenyl-4-benzoyl-5-isoxazolone for the recovery of americium(III) from simulated nuclear waste solution ≫, NUCAR 97: Nuclear and Radiochemistry Symposium, Department of Atomic Energy, Bombay, India (1997)
【非特許文献19】M.L.P. Reddy, R. L. Varma, T.R. Ramamohan, T.P. Rao, C.S.P. Iyer, A.D. Damodaran, J.N. Mathur, M.S. Murali, R.H. Iyer, Radiochimica Acta, 69, 55-60 (1995)
【非特許文献20】Y. Koma, M. Watanabe, S. Nemoto, Y. Tanaka, J. Nucl. Sci. Technol., 35(2), 130-136 (1998)
【非特許文献21】J.D. Law, T. G. Garn,D. H. Meikrantz, J. Warburton, Sep. Sci. Technol., 45, 1769-1775 (2010)
【非特許文献22】K. Arai, M. Yamashita, M. Hatta, Nucl. Sci. Techn., 34(5), 521-526 (1997)
【非特許文献23】Y. Zhu, C. Song, Nucl. Technol., 108, 361 (1994)
【非特許文献24】E.M. Bond, U. Engelhardt, T.P Deere, B.M. Rapko, R.T. Paine, J.R. FitzPatrick, Solv. Ext. Ion Exch., 16(4), 967-983 (1998)
【非特許文献25】L. Rao, Y. Xia, B.M. Rapko, P.F. Martin, Solv. Ext. Ion Exch., 16(4), 913-929 (1998)
【非特許文献26】D. Magnusson, B. Christiansen, R. S. Foreman, A. Geist, J.P. Glatz, R. Malmbeck, G. Modolo, D. Serrano-Purroy, C. Sorel, Solv. Ext. Ion Exch., 27(2), 97-106 (2009)
【非特許文献27】B. Christiansen, C. Apostolidis, R. Carlos, O. Courson, J.P. Glatz, R. Malmbeck, G. Pagliosa, K. Romer, D. Serrano-Purroy, Radiochim. Acta, 92, 475-480 (2004)
【非特許文献28】G. Modolo, S. Nabet, Solv. Ext. Ion Exch., 23(3), 359-373 (2005)
【非特許文献29】J. Chen, R. Jiao, Y. Zhu, Radiochimica Acta, 76, 129-130 (1997)
【非特許文献30】D.R. Peterman, M.R. Greenhalgh, R.D. Tillotson, J.R. Klaehn, M.K. Harrup, T.A. Luther, J.D. Law, Sep. Sci. Technol., 45(12), 1711-1717 (2010)
図1
図2
図3