特許第5948650号(P5948650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948650
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】光接続部品の製造方法、及び光接続部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/38 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
   G02B6/38
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-269517(P2011-269517)
(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-120364(P2013-120364A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】中園 晃充
(72)【発明者】
【氏名】若林 知敬
【審査官】 佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−184794(JP,A)
【文献】 特開平03−036507(JP,A)
【文献】 特開平09−311246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255−6/27
6/30−6/34
6/36−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆付き光ファイバを挿通する太径部と、被覆を剥離した光ファイバを挿通する細径部と、該太径部の先端から前記細径部の後端部に連続させるテーパ部とからなる挿入孔が貫通形成されると共に、上面に前記太径部と連通する開口部が形成され、前記挿入孔の軸に対して直交する方向の平滑な先端面に下面にかけて真っ直ぐにのびるように溝が形成されてなるフェルールと、当接面の前記細径部の先端部開口部に対向した位置に凹部が形成される凸部成型部材とを用い、
前記フェルールの挿入孔に被覆付き光ファイバを挿入し、
前記フェルールの開口部から硬化時に透明性のある接着剤を充填し、挿入孔の太径部からテーパ部を通り細径部にかけて前記接着剤で覆い、該接着剤によって前記光ファイバの先端部に前記フェルールの先端面よりも突出する凸部を形成する
ことを特徴とする光接続部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光接続部品において、
前記凸部の突出先端面をフィジカルコンタクト部として形成する
ことを特徴とする光接続部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光接続部品において、
前記凸部の前記突出先端面を断面円弧状となる形状に形成する
ことを特徴とする光接続部品の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光接続部品において、
押圧すると変形可能な状態に前記凸部を形成する
ことを特徴とする光接続部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載の光接続部品において、
前記フェルールの前記挿入孔に充填された前記接着剤を前記光ファイバの前記先端部で押し出すようにして前記凸部を形成する
ことを特徴とする光接続部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5に記載の光接続部品において、
前記溝は、前記開口部から注入する前記接着剤や空気を逃がすものである
ことを特徴とする光接続部品の製造方法。
【請求項7】
光ファイバの先端をフィジカルコンタクト接続することにより、光ファイバ同士を接続するものであって、
被覆付き光ファイバと、該被覆付き光ファイバの端末部を収容固定するフェルールと、該フェルールの先端面よりも外側に突出する前記被覆付き光ファイバの凸部とを備え、
前記フェルールは、前記被覆付き光ファイバを挿通する挿入孔が貫通形成されており、該挿入孔には、前記被覆付き光ファイバを挿通する太径部と、前記被覆を剥離した光ファイバを挿通する細径部と、前記太径部の先端から前記細径部の後端部に連続させるテーパ部とが形成され、前記フェルールの先端面に前記細径部が開口し、前記フェルールの後端面に前記太径部が開口するように配置されてなり、
前記フェルールの上面に開口され、前記太径部に連通し、接着剤を注入する開口部が形成されており、該フェルールの先端には前記挿入孔の軸に対して直交する方向の平滑な該先端面に溝が前記細径部から前記フェルールの下面にかけて真っ直ぐにのびるように形成されてなる
とを特徴とする光接続部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバとフェルールとを含む光接続部品の製造方法、及び光接続部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ同士を接続するためとして光接続部品が用いられている。一般的な光接続部品の組立ては、光ファイバをフェルールに接着固定後、フェルールの先端面から突き出した光ファイバを切断し、そして、先端面が円弧状となるように研磨加工をする。研磨加工後は、円弧状の先端面を接触させて押圧するフィジカルコンタクト接続により光ファイバ同士の低損失接続を実現する。ところで、上記研磨加工に関しては複数工程が必要で尚かつ時間を要することから、組立て工程の簡素化や低コスト化が難しいという問題点を有している。
【0003】
光ファイバを切断するだけで上記先端面の研磨加工が不要な光接続部品の組立て方法としては幾つか提案(例えば下記特許文献1、2、3参照)されているが、提案内容を見ると、光ファイバ端面形状が平面のため、光ファイバ同士の接続では、光ファイバ間の空気層によるフレネル反射によって低損失接続を実現することが難しくなってしまうという問題点を有している。尚、屈折率整合剤を充填して上記空気層を取り除く方法が考えられるが、ゴミ付着の虞や端面清掃が容易でないという問題点が生じてしまう。
【0004】
上記先端面の研磨加工が不要な光接続部品の組立てにあっては、光ファイバをフェルールに挿入し、この後に接着剤を充填するという方法が採用されている。このような方法であるため、光ファイバの先端部近傍まで接着剤を充填させることは難しく、接着不足や温度変化により光ファイバがフェルールの先端面から突き出したり凹んだりするピストニングが発生してしまうという虞を有している。
【0005】
以下、特許文献3を例に挙げて従来例を説明する。図8(a)において、引用符号1は被覆付き光ファイバを示している。この被覆付き光ファイバ1は、端末部の被覆2が除去されて光ファイバ3が露出するように加工されている。また、引用符号4はフェルールを示している。このフェルール4には、挿入孔5が形成されている。挿入孔5は、被覆付き光ファイバ1に対するファイバ穴であって、細径部6と太径部7とを有している。引用符号8はフェルール4の外面を開口させて太径部7に連通する開口部を示している。
【0006】
引用符号9はフェルール4の先端面を示しており、引用符号10は先端面9に対しフェルール本体側に傾く傾斜面を示している。傾斜面10は、先端面9に開口する細径部6に連通するように形成されている。引用符号11は先端面9に接するシート材を示している。
【0007】
図8(b)において、光ファイバ3が露出した被覆付き光ファイバ1をフェルール4の挿入孔5に挿入する。この時の挿入量は、光ファイバ3の先端部とシート材11とが所定の間隔Sとなるように調整をする。調整後は、図8(c)に示すように開口部8を介して接着剤12を挿入孔5に充填する。また、図8(d)に示すように傾斜面10側からも接着剤12を充填し、細径部6を接着剤12で埋める。
【0008】
接着剤12を硬化させ、シート材11を取り外すと、図8(e)に示すように硬化した接着剤12からなる接続端面13が光ファイバ3の先端部に形成される。このような接続端面13には、フェルール4の先端面9に対し同一平面となる平滑な平面が形成される。接続端面13は、シート材11により平滑な平面が形成されることから、鏡面にする研磨処理は不要になっている。以上により光接続部品14の組立てが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−258662号公報
【特許文献2】特開2006−53482号公報
【特許文献3】特開2006−184794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図8に示すような光接続部品14を用いて光ファイバ3同士を接続するにあたっては、平面に形成された接続端面13同士が接触しない構造の接続になることから、次のような問題点を有している。すなわち、接続端面13同士が接触しない構造の接続では、光ファイバ3の先端部に形成された接続端面13同士の間に空気層が生じてしまうことから、低損失接続を実現することが困難になってしまうという問題点を有している。
【0011】
また、光接続部品14を用いる場合には、上記の研磨加工が不要になることから、組立てが容易且つ低コストになる反面、低損失接続の実現が困難になってしまうという問題点を有している。
【0012】
尚、接続端面13同士の間に生じる空気層を取り除くためとして屈折率整合剤を充填する方法が挙げられるが、この方法は上記の如くゴミ付着の虞や端面清掃が容易でないという問題点を有することから、新たな方法を見いだす必要があるといえる。
【0013】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、組立てが容易且つ低コストであるとともに低損失接続を実現することが可能な光接続部品の製造方法、及び光接続部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の光接続部品は、被覆付き光ファイバを挿通する太径部と、被覆を剥離した光ファイバを挿通する細径部と、該太径部の先端から前記細径部の後端部に連続させるテーパ部とからなる挿入孔が貫通形成されると共に、上面に前記太径部と連通する開口部が形成され、前記挿入孔の軸に対して直交する方向の平滑な先端面に下面にかけて真っ直ぐにのびるように溝が形成されてなるフェルールと、当接面の前記細径部の先端部開口部に対向した位置に凹部が形成される凸部成型部材とを用い、
前記フェルールの挿入孔に被覆付き光ファイバを挿入し、
前記フェルールの開口部から硬化時に透明性のある接着剤を充填し、挿入孔の太径部からテーパ部を通り細径部にかけて前記接着剤で覆い、該接着剤によって前記光ファイバの先端部に前記フェルールの先端面よりも突出する凸部を形成することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の本発明の光接続部品は、請求項1に記載の光接続部品に係り、前記凸部の突出先端面をフィジカルコンタクト部として形成することを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の本発明の光接続部品は、請求項2に記載の光接続部品に係り、前記凸部の前記突出先端面を断面円弧状となる形状に形成することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の本発明の光接続部品は、請求項3に記載の光接続部品に係り、押圧すると変形可能な状態に前記凸部を形成することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の本発明の光接続部品は、請求項1、2、3又は4に記載の光接続部品に係り、前記フェルールの前記挿入孔に充填された前記接着剤を前記光ファイバの前記先端部で押し出すようにして前記凸部を形成することを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の本発明の光接続部品は、請求項1、2、3、4又は5に記載の光接続部品に係り、前記溝は、前記開口部から注入する前記接着剤や空気を逃がすものであることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の本発明の光接続部品は、光ファイバの先端をフィジカルコンタクト接続することにより、光ファイバ同士を接続するものであって、
被覆付き光ファイバと、該被覆付き光ファイバの端末部を収容固定するフェルールと、該フェルールの先端面よりも外側に突出する前記被覆付き光ファイバの凸部とを備え、
前記フェルールは、前記被覆付き光ファイバを挿通する挿入孔が貫通形成されており、該挿入孔には、前記被覆付き光ファイバを挿通する太径部と、前記被覆を剥離した光ファイバを挿通する細径部と、前記太径部の先端から前記細径部の後端部に連続させるテーパ部とが形成され、前記フェルールの先端面に前記細径部が開口し、前記フェルールの後端面に前記太径部が開口するように配置されてなり、
前記フェルールの上面に開口され、前記太径部に連通し、接着剤を注入する開口部が形成されており、該フェルールの先端には前記挿入孔の軸に対して直交する方向の平滑な該先端面に溝が前記細径部から前記フェルールの下面にかけて真っ直ぐにのびるように形成されてなることを特徴とする。
【0021】
尚、請求項1に記載の光接続部品の特徴に係り、凸部にミラー部分、レンズ部分、又は反射防止膜部分を形成することを付加すれば、より有用な特徴にもなる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載された本発明によれば、光ファイバの先端部にフェルールの先端面よりも突出する凸部を、硬化させた接着剤にて形成することから、このような凸部を用いることにより従来よりも低損失となる接続を実現することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、先端面の研磨加工を不要とすることから、組立て工程の簡素化や低コスト化を図ることができるという効果を奏する。すなわち、組立てが容易且つ低コストな光接続部品の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0023】
請求項2に記載された本発明によれば、凸部の突出先端面をフィジカルコンタクト部とすることから、光ファイバ同士の接続時において凸部間に空気層を生じさせず、以て低損失接続を実現することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、空気層を生じさせないことから、屈折率整合剤を不要として部材費を削減できることや、端面清掃を容易にすることができるという効果を奏する。すなわち、低コストな光接続部品の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0024】
請求項3に記載された本発明によれば、凸部の突出先端面を断面円弧状となる形状に形成することから、より良いフィジカルコンタクト部とすることができるという効果を奏する。
【0025】
請求項4に記載された本発明によれば、押圧すると変形可能な状態に凸部を形成することから、より良いフィジカルコンタクト部とすることができるという効果を奏する。
【0026】
請求項5に記載された本発明によれば、凸部を形成することに係り、フェルールの挿入孔に充填された接着剤を光ファイバの先端部で押し出すようにすることから、光ファイバの先端部まで接着剤を充填することができ、以て光ファイバとフェルールとを堅牢に固着することができるという効果を奏する。これにより、ピストニングの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0027】
請求項6に記載された本発明によれば、フェルールの挿入孔に連続する溝をフェルールの先端面に形成することから、余分な接着剤や空気を溝を介して逃がすことができるという効果を奏する。これにより凸部の形成状態を向上させて、より良い低損失接続を実現することができるという効果を奏する。
【0028】
請求項7に記載された本発明によれば、光ファイバの先端部にフェルールの先端面よりも突出する凸部を、硬化させた接着剤にて形成することから、このような凸部を用いることにより従来よりも低損失となる接続を実現することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、先端面の研磨加工を不要とすることから、組立て工程の簡素化や低コスト化を図ることができるという効果を奏する。すなわち、組立てが容易且つ低コストな光接続部品を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の光接続部品同士の結合を示す断面図と光接続部品の凸部の拡大図(凸部同士の接触前の拡大図)である。
図2】光接続部品を構成する部材の図であり、(a)は被覆付き光ファイバの断面図、(b)はフェルールの断面図、(c)は凸部成型部材の断面図である。
図3】光接続部品の製造に係る第一工程の説明図である。
図4】光接続部品の製造に係る第二工程の説明図である。
図5】光接続部品の製造に係る第三工程の説明図である。
図6】光接続部品の製造に係る第四工程の説明図である。
図7】他の例となる光接続部品の断面図である。
図8】従来例の光接続部品の構成及び製造に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
光接続部品は、硬化時に透明性のある接着剤をフェルールの挿入孔に充填するとともに挿入孔に光ファイバを挿入し、光ファイバの先端部にフェルールの先端面よりも突出する凸部を接着剤にて形成する。凸部の突出先端面は、断面円弧状の形状に形成するとともに、フィジカルコンタクト部として形成する。
【実施例1】
【0031】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明の光接続部品同士の結合を示す断面図と光接続部品の凸部の拡大図である。また、図2は光接続部品を構成する部材の断面図、図3図6は光接続部品の製造に係る各工程の説明図である。
【0032】
以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができるものとする。
【0033】
図1において、引用符号21は光ファイバ22同士の低損失接続を実現するためとして用いられる光接続部品を示している。光接続部品21は、光ファイバ22を含む被覆付き光ファイバ23と、この被覆付き光ファイバ23の端末部を収容固定するフェルール24と、フェルール24の後述する先端面36よりも外側に突出する凸部25と、図示しないハウジングとを備えて構成されている。光接続部品21は、凸部25を用いてこれをフィジカルコンタクト接続することにより、光ファイバ22同士の低損失接続を実現できるように構成されている。先ず、上記各構成部材について説明をする。
【0034】
図1及び図2において、被覆付き光ファイバ23は、コア26及びクラッド27を有する光ファイバ22と、この光ファイバ22を覆う被覆28とを備えて構成されている。被覆付き光ファイバ23は、公知のものが用いられており、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
【0035】
被覆付き光ファイバ23の端末部は、所定長さで被覆28が皮剥されて光ファイバ22が露出するように加工されている。この加工に関しては、従来から行われている公知の加工方法が採用されるものとする。所定長さで露出した光ファイバ22の先端部29(先端面)は、切断のみで平滑化されている。尚、平滑に切断できない場合であっても、光ファイバ22の先端部29に後述する接着剤44が付着することから、端面での光散乱を抑えることができるようになっている。すなわち、平滑に切断できない場合であっても問題はない。
【0036】
フェルール24は、本実施例において樹脂成型品であって、後述する接着剤44との接着性が良好なものになっている。このようなフェルール24には、挿入孔30が貫通形成されている。挿入孔30は、被覆付き光ファイバ23に対するファイバ穴であって、細径部31と、太径部32と、これらを連続させるテーパ部33とが形成されている。
【0037】
また、フェルール24には、この上面34を開口させて太径部32に連通する開口部35が形成されている。挿入孔30は、フェルール24の先端面36に細径部31が開口するように、また、フェルール24の後端面37に太径部32が開口するような配置で形成されている。
【0038】
挿入孔30は、この細径部31が光ファイバ22の外径よりも僅かに大きな内径となるように形成されている。また、挿入孔30は、太径部32が被覆付き光ファイバ23の被覆28の外径よりも大きな内径となるように形成されている。挿入孔30のテーパ部33は、光ファイバ22を細径部31へと案内する部分として形成されている。テーパ部33は、被覆付き光ファイバ23の被覆28の端部位置に合わせて配置形成されている。また、テーパ部33は、本実施例において開口部35の近傍となる位置に合わせて配置形成されている。
【0039】
開口部35は、後述する接着剤44の注入部分(充填開始部分)として形成されている。また、開口部35は、接着剤44を所定量溜めることのできる容積に形成されている。
【0040】
フェルール24の先端面36は、挿入孔30の軸に対して直交する方向の平面として形成されている。また、先端面36は、平滑な面として形成されている。さらに、先端面36は、後述する凸部成型部材41の被当接面38として形成されている。このような先端面36(被当接面38)には、溝39が形成されている。
【0041】
溝39は、後述する接着剤44や空気を逃がす部分として形成されている。溝39は、先端面36に開口する細径部31からフェルール24の下面40にかけて真っ直ぐにのびるように形成されている。尚、溝39の深さ及び幅等に関しては、接着剤44や空気を逃がすことができる形状であれば特に限定されないものとする。
【0042】
凸部成型部材41は、光ファイバ22の先端部29に設けられる凸部25を成型するための部材であって、本実施例においては略ブロック状となる形状に形成されている。凸部成型部材41は、後述する接着剤44との接着性がない材料を用いている。このような凸部成型部材41には、フェルール24の先端面36(被当接面38)に当接する当接面42が形成されている。当接面42は、平滑な平面として形成されている。このような当接面42には、凹部43が形成されている。
【0043】
凸部成型部材41は、例えばナノインプリント技術で使用されるPDMS(Polydimethylsiloxane)が採用されている。
【0044】
凹部43は、後述する接着剤44にて凸部25を成型する凹み部分として形成されている。凹部43は、フェルール24の細径部31の位置に合わせて配置形成されている。また、細径部31の内径に合わせて開口(又は光ファイバ22の径に合わせて開口)するように形成されている。凹部43は、凸部25の厚み(突出高さ)が例えば0.01mm〜1mm程度になるように形成されている。凹部43は、本実施例において断面円弧状となる凹み形状に形成されている。
【0045】
凹部43が形成される当接面42は、上記の如くフェルール24の先端面36(被当接面38)に当接するように形成されている。従って、このような当接面42を凹ませて形成される凹部43により成型される凸部25は、先端面36から突出するような凸形状に形成されている。また、凸部25は、凹部43の凹みが断面円弧状となる形状であることから、これに合わせて突出先端面が断面円弧状となる形状に形成されている。
【0046】
接着剤44は、硬化時において透明性のあるものが用いられている。また、接着剤44は、熱により硬化するものやUV照射により硬化するものが用いられている。さらに、接着剤44は、光ファイバ22とフェルール24の細径部31との間に生じる隙間に充填することができるものが用いられている。さらにまた、接着剤44は、硬化時において押圧すると若干変形可能なものが用いられている。
【0047】
次に、光接続部品21の組立てに係る一例について説明をする。ここでは、以下の第一工程から第四工程を順に経ることにより光接続部品21の組立てが完了するような製造方法が採用されるものとする。
【0048】
図3において、第一工程では、フェルール24の先端面36(被当接面38)に凸部成型部材41の当接面42を当接する作業を行う。また、十分に気泡を除去した接着剤44をフェルール24の開口部35に注入することができる状態に準備する作業を行う。さらには、フェルール24の後端面37を介して被覆付き光ファイバ23の端末部を挿入孔30に挿入することができる状態に被覆付き光ファイバ23の端末部を加工する作業を行う。
【0049】
図4において、第二工程では、フェルール24の開口部35を介して接着剤44を注入し、開口部35の近傍に位置するフェルール24の挿入孔30に接着剤44を充填する作業を行う。
【0050】
図5において、第三工程では、フェルール24の後端面37を介して被覆付き光ファイバ23の端末部を挿入孔30に挿入する作業を行う。第三工程においては、被覆付き光ファイバ23の端末部を挿入孔30に挿入すると(本実施例においては光ファイバ22の先端部29がフェルール24の先端面36の位置に来るまで挿入すると)、この挿入に伴って光ファイバ22の先端部29が接着剤44を押し出し、これによって凸部成型部材41の凹部43にも接着剤44が充填される。
【0051】
接着剤44は、光ファイバ22の周囲を埋めるようにして挿入孔30の細径部31に充填されるとともに、余分な接着剤44や空気がある場合には、溝39に逃がされるようになる。
【0052】
また、第三工程では、充填済みとなった接着剤44に対しこれを硬化させる作業を行う。被覆付き光ファイバ23の端末部は、接着剤44の硬化によりフェルール24に対し堅牢に固着される。
【0053】
図6において、第四工程では、凸部成型部材41をフェルール24の先端面36から取り外す作業を行う。凸部成型部材41を取り外すと、光ファイバ22の先端部29には、フェルール24の先端面36よりも外側へ突出し且つ突出先端面の形状が断面円弧状となる凸部25が形成される。凸部25は、フィジカルコンタクト部45として形成される。
【0054】
図1において、光接続部品21の相互接続により凸部25同士が接触し、これらは押圧により変形して平坦化される。このため、光ファイバ22間(凸部25間)に空気層がなくなるようになり、光ファイバ22同士の接続にあっては低損失接続を実現することができる。
【0055】
以上、図1ないし図6を参照しながら説明してきたように、光接続部品21によれば、光ファイバ22の先端部29にフェルール24の先端面36よりも突出する凸部25を接着剤44にて形成することから、このような凸部25を用いることにより従来よりも低損失となる接続を実現することができるという効果を奏する。また、光接続部品21によれば、先端面の研磨加工を不要とすることから、組立て工程の簡素化や低コスト化を図ることができるという効果を奏する。すなわち、組立てが容易且つ低コストな光接続部品21を提供することができるという効果を奏する。
【0056】
また、光接続部品21によれば、凸部25の突出先端面をフィジカルコンタクト部45とすることから、光ファイバ22同士の接続時において凸部25間に空気層を生じさせず、以て低損失接続を実現することができるという効果を奏する。また、光接続部品21によれば、上記の如く空気層を生じさせないことから、屈折率整合剤を不要として部材費を削減できることや、端面清掃を容易にすることができるという効果を奏する。すなわち、低コストな光接続部品21を提供することができるという効果を奏する。
【0057】
また、光接続部品21によれば、フェルール24の先端面36を凸部成型部材41の当接面42とすることから、また、凸部成型部材41に凸部25を成型するための凹部43を形成することから、簡単な構造で凸部25を形成することができ、以て組立て工程の簡素化や低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0058】
また、光接続部品21によれば、接着剤44を充填してから被覆付き光ファイバ23の端末部を挿入孔30に挿入する作業手順を採用することから、光ファイバ22の先端部29まで接着剤44を充填させることができ、以てフェルール24に対し被覆付き光ファイバ23の端末部を堅牢に固着することができるという効果を奏する。これにより、ピストニングの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【実施例2】
【0059】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。図7は他の例となる光接続部品の断面図である。尚、上記実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
図7において、光接続部品51における光ファイバ22の先端部29には、フェルール24の先端面36よりも外側へ突出する凸部52が接着剤44により形成されている。凸部52は、図示しない凸部成型部材に断面直角三角形状の凹部を形成し、この凹部に充填された接着剤44を硬化させることにより形成されている。凸部52は、本実施例において45度ミラー53を有している。
【0061】
45度ミラー53を有する凸部52は、光路を90度折り曲げることができることから、水平方向に配置された被覆付き光ファイバ23(光ファイバ22)と図示しない基板に面実装された受発光素子(光素子)とを光学的に接続する際に有用な部分になっている。
【0062】
尚、特に図示しないが、凸部に集光レンズやコリメートレンズを形成してもよいものとする。上記集光レンズは、受発光素子との光学的な接続に、また、コリメートレンズは45度ミラー53と組み合わせて面実装された受発光素子との光学的な接続に有効であるものとする。以上のようなレンズにより、光ファイバ22と受発光素子とを低損失に接続することができるのは勿論である。
【0063】
この他、実施例1で挙げたナノインプリント技術を用いると、光ファイバ22の先端部29に形成される凸部に、ナノ構造による反射防止膜を形成することが可能である。反射防止膜を形成すれば、端面損失を低減することができるという効果を奏する。
【0064】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
21…光接続部品、 22…光ファイバ、 23…被覆付き光ファイバ、 24…フェルール、 25…凸部、 26…コア、 27…クラッド、 28…被覆、 29…先端部、 30…挿入孔、 31…細径部、 32…太径部、 33…テーパ部、 34…上面、 35…開口部、 36…先端面、 37…後端面、 38…被当接面、 39…溝、 40…下面、 41…凸部成型部材、 42…当接面、 43…凹部、 44…接着剤、 45…フィジカルコンタクト部、 51…光接続部品、 52…凸部、 53…45度ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8