特許第5948663号(P5948663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5948663電析材料組成物、それを用いた電析塗膜および電析塗膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948663
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】電析材料組成物、それを用いた電析塗膜および電析塗膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/00 20060101AFI20160623BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20160623BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160623BHJP
   C25D 13/06 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   C09D167/00
   C09D5/44 A
   C09D7/12
   C25D13/06 C
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-35920(P2012-35920)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-170240(P2013-170240A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516018810
【氏名又は名称】NT&I株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰
(72)【発明者】
【氏名】細尾 昇平
(72)【発明者】
【氏名】花井 嘉忠
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 伸
(72)【発明者】
【氏名】藤森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩紀
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−179176(JP,A)
【文献】 特開平05−281741(JP,A)
【文献】 特開昭48−095422(JP,A)
【文献】 特開昭47−011685(JP,A)
【文献】 特開昭48−026825(JP,A)
【文献】 特開昭61−005069(JP,A)
【文献】 特公昭50−024987(JP,B1)
【文献】 特公昭49−048658(JP,B1)
【文献】 第42回中部化学関係学協会支部連合秋季大会講演予稿集, ,2011年11月 5日, Page.141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜C09D201/10
B05D1/00〜B05D7/26
C25D1/00〜C25D21/22
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてスルホン酸ナトリウム基含有ポリエステルおよび芳香族アミンを構成する原子の一部若しくは全部を含む電析塗膜を製造するための組成物であって、
少なくとも、スルホン酸ナトリウム基含有ポリエステル樹脂水分散体と、芳香族アミンとを含むことを特徴とする電析材料組成物。
【請求項2】
前記芳香族アミンは、ピリジン環、イミダゾール環あるいはアニリン骨格を有することを特徴とする請求項1に記載の電析材料組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電析材料組成物を用いて成膜される電析塗膜。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電析材料組成物を用いて成膜される電析塗膜を製造する方法であって、
少なくともスルホン酸ナトリウム基含有ポリエステル樹脂水分散体と芳香族アミンとを含む電析材料組成物の水溶液中に一部若しくは全部を浸漬した少なくとも表面に導電体を有する被着体と、当該被着体と対極となる陰極との間に通電して樹脂を析出させる析出工程と、
上記析出工程後の膜を加温する加温工程と、
を含むことを特徴とする電析塗膜の製造方法。
【請求項5】
前記芳香族アミンは、ピリジン環、イミダゾール環あるいはアニリン骨格を有することを特徴とする請求項4に記載の電析塗膜の製造方法。
【請求項6】
前記加温工程は、前記膜を40〜100℃の範囲の温度で乾燥する工程であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電析塗膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電析材料組成物、それを用いた電析塗膜および電析塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解析出法は、複雑な形状を持つ部品に均一な厚さにてコーティングすることによって付加価値を高める膜形成方法として、従来から知られている。電解析出方法によれば、イオン性官能基を有する樹脂の水分散体に被着体およびこれと対極になる電極を浸漬させ、通電を行うことにより、被着体の表面に樹脂を析出させ、これを焼き付け乾燥することにより、被着体の表面に成膜することができる。電解析出法は、工業用部品、自動車部品、建材部品等の広範な分野において、防食、防傷、絶縁等を目的として利用されている。
【0003】
塗膜には、目的及び環境に応じて、硬度、平滑性、エッジカバー特性、低温成膜性、耐候性、あるいは耐水性などに優れることが要求される。例えば、金属メッキされた樹脂が被膜体となる場合、樹脂の溶融を避けるべく高温で焼き付け乾燥できないことが多いため、比較的低温にて、透明であってかつ高硬度の被膜が要求される。かかる要求に応えるべく、低温での加熱により硬化可能な電析材料組成物が開発されている(例えば、特許文献1,2を参照)。また、電析後に紫外線を照射して高硬度の塗膜を製造する方法も知られている(例えば、特許文献3,4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−188048号公報
【特許文献2】特開2006−028434号公報
【特許文献3】特開平5−263026号公報
【特許文献4】特開2010−083933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に開示される電析材料組成物を用いる場合、従来よりも低温で成膜できるとはいえ、120〜170℃の焼き付け温度を要するため、100℃を超える温度で軟化する耐熱性の低い材料を被着体に用いる場合には使用できない。加えて、かかる温度での焼き付け乾燥によって透明度が低下する。一方、特許文献3および特許文献4に開示される電析材料組成物は、電解析出後に紫外線で硬化させるため、耐熱性の低い被着体への成膜にも使用できるが、被着体が複雑形状を有する場合には、紫外線の照射が困難な箇所があるため、硬化不十分な部位が生じる可能性が高い。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、被着体の形状を問わず、低温で成膜でき、透明かつ高硬度の塗膜を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一形態に係る電析材料組成物は、少なくとも、ポリエステル樹脂水分散体と、芳香族アミンとを含む。
【0008】
本発明の別の形態に係る電析材料組成物は、さらに、ピリジン環、イミダゾール環あるいはアニリン骨格を有する芳香族アミンを含む。
【0009】
本発明の一形態に係る電析塗膜は、上記いずれかの電析材料組成物を用いて成膜される塗膜である。
【0010】
本発明の一形態に係る電析塗膜の製造方法は、少なくともポリエステル樹脂水分散体と芳香族アミンとを含む電析材料組成物の水溶液中に一部若しくは全部を浸漬した少なくとも表面に導電体を有する被着体と、当該被着体と対極となる陰極との間に通電して樹脂を析出させる析出工程と、その析出工程後の膜を加温する加温工程とを含む。
【0011】
本発明の別の形態に係る電析塗膜の製造方法は、さらに、ピリジン環、イミダゾール環あるいはアニリン骨格を有する芳香族アミンを用いる。
【0012】
本発明の別の形態に係る電析塗膜の製造方法は、さらに、加温工程として、膜を40〜100℃の範囲の温度で乾燥する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被着体の形状を問わず、低温で成膜でき、透明かつ高硬度の塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る電析材料組成物、それを用いた電析塗膜および電析塗膜の製造方法の各実施の形態について説明する。
【0015】
「1.電析材料組成物の実施の形態」
この実施の形態に係る電析材料組成物は、少なくとも、(A)ポリエステル樹脂水分散体と、(B)芳香族アミンとを含み、好適には、上記(A)および上記(B)に加えて(C)有機溶剤を含む。
【0016】
(A)ポリエステル樹脂水分散体
ポリエステル樹脂水分散体は、ポリエステル樹脂を水媒体中に含有する樹脂と水の混合物である。樹脂粒子が水中において分散しやすくするために、ポリエステル樹脂水分散体は、好ましくは、エマルジョン化されている。好適なポリエステル樹脂水分散体は、スルホン酸ナトリウム基含有飽和ポリエステルあるいはスルホン酸ナトリウム基含有不飽和ポリエステルから成る樹脂粒子を含む。
【0017】
スルホン酸ナトリウム基含有飽和ポリエステルあるいはスルホン酸ナトリウム基含有不飽和ポリエステルは、飽和ポリエステルあるいは不飽和ポリエステルの一部を、少なくとも1つのスルホン酸ナトリウム基にてアニオン修飾したものをいう。ここで、飽和ポリエステルとは、多価カルボン酸若しくは酸無水物(またはその低級アルキルエステル)と、グリコール(または二価フェノール)とを重縮合させて得られ、多価カルボン酸等の成分とグリコール等の成分とを構成成分とする線状ポリエステルであって、グリコール等の成分中に不飽和結合を有さないものをいう。また、不飽和ポリエステルとは、上記線状ポリエステルであって、グリコール等の成分中に不飽和結合を有するものをいう。多価カルボン酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などの二塩基酸又はその無水物; これら二塩基酸の低級アルキルエステル; トリメリット酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸を挙げることができる。グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールAなどのジオール類; グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類; ペンタエリスリトール、α−メチルグルコキシドなどのテトロール類; ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどのヘキソール類; シュークロースなどのオクトール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオールを挙げることができる。上記多価カルボン酸等と上記グリコールとを重縮合して得られる好適な飽和ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)を挙げることができる。
【0018】
スルホン酸ナトリウム基含有飽和ポリエステルから成る樹脂粒子の大きさは、0.5μm以下、好ましくは、0.001〜0.2μm(1〜200nm)、より好ましくは、0.001〜0.1μm(1〜100nm)である。また、スルホン酸ナトリウム基含有飽和ポリエステルの重量平均分子量(Mw)については、比較的小さいのが好ましく、3000〜30000の範囲が好ましい。
【0019】
ポリエステル樹脂水分散体は、その樹脂固形分が電析溶液に対して3〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは7〜25質量%の範囲で占める量にて用いる。ポリエステル樹脂水分散体は、1種あるいは2種上の混合にて用いることができる。
【0020】
(B)芳香族アミン
芳香族アミンとしては、ピリジンとその誘導体、ビピリジンとその誘導体、アニリンとその誘導体、イミダゾールとその誘導体、サレンとその誘導体、ピラゾールとその誘導体などを例示できる。芳香族アミンとして、ピリジン環、イミダゾール環あるいはアニリン骨格を有する方が好ましい。
【0021】
ピリジンの誘導体としては、4−アセチルピリジン、アクリジン、3−アセトキシピリジン、4−アセトアミドピリジン、4−アニリノピリジン、ベンゾ[f]キノリン、ベンゾ[h]キノリン、2−ベンゾイルピリジン、3−ベンゾイルピリジン、4−ベンゾイルピリジン、2−ベンジルピリジン、4−ベンジルピリジン、2,2’−ビキノリン、3−ベンジルピリジン、4−シアノピリジン、炭酸ジ−2−ピリジル、1,2−ジ(4−ピリジル)エチレン、ジ−2−ピリジルケトン、2,6−ジフェニルピリジン、4−エチルピリジン、3−フルオロピリジン、4−ヒドロキシピリジン、イソニコチンアミド、イソニコチン酸メチル、イソニコチン酸エチル、ニコチン酸フェニル、4−イソプロピルピリジン、イソキノリン、ピリジン−4−カルボン酸、2,6−ルチジン、2−メトキシピリジン、6−メトキシキノリン、3−メチル−5−フェニルピリジン、6−キノリンカルボン酸メチル、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸フェニル、1,8−ナフチリジン、4−フェニルピリジン、4−(3−フェニルプロピル)ピリジン、4−プロピルピリジン、3−フェニルピリジン、フェナントリジン、2,6−ピリジンジカルボン酸ジエチル、4−フェノキシピリジン、1,10−フェナントロリン一水和物、2−メチルキノリン、キノリン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパンなどを好適に例示できる。
【0022】
ビピリジンの誘導体としては、2,2’−ビピリジン、2,3’−ビピリジン、2,4’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、6−メチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジン、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジオール、2−(2−ピリジル)キノリン、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−5,5’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルバルデヒド、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジンなどを好適に例示できる。
【0023】
アニリンの誘導体としては、2−メチルアニリン、2−オクチルアニリン、2−イソブチルアニリン、3−イソブチルアニリン等のアルキルアニリン; アニリン−2−スルホン酸(オルタニル酸)、アニリン−3−スルホン酸(メタニル酸)、アニリン−4−スルホン酸(スルファニル酸)等のスルホ基含有アニリンを例示でき、さらには、フェニレンジアミン、1,5−ジフェニルカルボノヒドラジド、カルバゾール、イミノスチルベンなども好適に例示できる。その内、フェニレンジアミンとしては、2−アミノジフェニルアミン、4−ブロモ−1,2−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノクロロベンゼン、4−ニトロ−1,2−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノナフタレン、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノベンゾフェノン、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,2−フェニレンジアミン、4−フルオロ−1,2−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノトルエン、1,2−フェニレンジアミンなどを好適に例示できる。
【0024】
イミダゾールの誘導体としては、N−アセチルイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、1−アリルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、N−tert−ブトキシカルボニルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、(2−ベンゾイミダゾリル)アセトニトリル、2−ブチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,1’−カルボニルジイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾール、1−(4−シアノフェニル)イミダゾール、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、1,2−ジメチルベンゾイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−(3−ヒドロキシプロピル)ベンゾイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、イミダゾール−4,5−ジカルボキサミド、1H−イミダゾール−4,5−ジカルボン酸ジメチル、イミダゾ(1,5−a)ピリジン、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、5−メチルベンゾイミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−(4−ピリジル)ベンゾイミダゾール、3−フェニルイミダゾ(1,5−a)ピリジン、2−ウンデシルイミダゾールなどを好適に例示できる。
【0025】
ピラゾールの誘導体としては、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−メチルピラゾール、3,4−ジメチルピラゾール、3,4,5−トリメチルピラゾール、3−エチルピラゾール、4−エチルピラゾール、3,4−ジエチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール、3,4,5−トリエチルピラゾール、3−n−プロピルピラゾール、4−n−プロピルピラゾール、3,4−ジ−n−プロピルピラゾール、3,5−ジ−n−プロピルピラゾール、3,4,5−トリ−n−プロピルピラゾール、3−イソプロピルピラゾール、4−イソプロピルピラゾール、3,4−ジイソプロピルピラゾール、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3,4,5−トリイソプロピルピラゾール、3−n−ブチルピラゾール、4−n−ブチルピラゾール、3,4−ジ−n−ブチルピラゾール、3,5−ジ−n−ブチルピラゾール、3,4,5−トリ−n−ブチルピラゾール、3−イソブチルピラゾール、4−イソブチルピラゾール、3,4−ジイソブチルピラゾール、3,5−ジイソブチルピラゾール、3−t−ブチルピラゾール、4−t−ブチルピラゾール、3,5−ジ−t−ブチルピラゾール、3−フェニルピラゾール、4−フェニルピラゾール、3,5−ジフェニルピラゾールなどを好適に例示できる。
【0026】
芳香族アミンは、電析溶液に対して0.2〜15質量%、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲で占める量にて用いる。芳香族アミンは、1種あるいは2種上の混合にて用いることができる。
【0027】
(C)有機溶剤
有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール等のアルカノール類; エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類; ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリグリコール類; ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチルグリセリルエーテル、2−メチルグリセリルエーテル、1,3−ジメチルグリセリルエーテル、1−エチルグリセリルエーテル、1,3−ジエチルグリセリルエーテル、トリエチルグリセリルエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル類; 2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類; シクロヘキサン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類; 安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類; 2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類を好適に例示できる。
【0028】
有機溶剤は、電析溶液に対して、1〜30質量%、好ましくは3〜15質量%、より好ましくは5〜10質量%の範囲で占める量にて用いる。有機溶剤は、1種あるいは2種上の混合にて用いることができる。
【0029】
「2.電析塗膜の製造方法の実施の形態」
2.1 電析工程
電析溶液中に陽極と陰極を挿入して、好ましくは50V以下の印加電圧にて、陽極に製膜する。製膜対象となる陽極の材料については、導電性材料であって、かつ水に不溶性若しくは難溶性であれば特に制限無く対象になるが、銅、鉄、アルミニウム、マグネシウム合金、チタニウム、ニッケル、モリブデン、銀、錫、クロミウム、白金、金および亜鉛等の金属が好ましい。製膜時の液温は、10〜40℃、さらには、15〜30℃の範囲が好ましい。
【0030】
2.2 加温工程
電析完了後、陽極を水槽から引き上げ、30〜220℃、好ましくは40〜180℃にて1〜60分間加温するのが好ましい。加温手法としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱等の如何なる手法でも良い。電析材料組成物に、窒素含有配位子の一種である芳香族アミンを含む場合には、芳香族アミンを加えない場合と比較して、加温工程時の温度を低くすることができるという特徴が有る。具体的には、芳香族アミンを加えない場合には、120℃以上の温度で加温しないと、透明性に優れる電析塗膜を得ることができないが、芳香族アミンを加える場合には、100℃以下、例えば、30℃であっても透明性に優れる電析塗膜を得ることができる。加温工程時の温度が高いほど、高硬度の塗膜が得られることを考慮すると、鉛筆硬度にてH以上の硬度を有し、かつ透明性に優れる塗膜を得るには、60℃以上の温度にて加温するのが好ましい。加えて、耐熱性の低い被着体への製膜を実現する上では、60〜100℃の温度域で加温するのが好ましい。
【0031】
「3.電析塗膜の実施の形態」
電析塗膜は、上記製造方法によって形成される塗膜であり、主として、スルホン酸ナトリウム基含有飽和ポリエステル、および芳香族アミンを構成する原子の一部若しくは全部を含む。芳香族アミンを含む電析塗膜組成物を用いて製膜された電析塗膜かについては、例えば、NMR分析によって芳香族アミンを検出することにより判断可能である。
【実施例】
【0032】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0033】
1.塗膜原料
1.1 ポリエステル樹脂水分散体
ポリエステル樹脂水分散体としては、スルホン酸ナトリウム基含有飽和ポリエステル水分散体を用いた。スルホン酸ナトリウム基含有飽和ポリエステル水分散体としては、ペスレジンA(高松油脂株式会社製)、バイロナールMD(東洋紡績株式会社製)、ポリエスターWR(日本合成化学工業株式会社製)、プラスコートZ(互応化学工業株式会社製)およびポリエチレンナフタレート(PEN)骨格ポリエステル水分散体を用いた。
【0034】
1.2 芳香族アミン
芳香族アミンとしては、
キノリン(以後、適宜、「Q」と称する)、
イソキノリン(以後、適宜、「IQ」と称する)、
2−メチルキノリン(以後、適宜、「MQ」と称する)、
ベンゾ[h]キノリン(以後、適宜、「BQ」と称する)、
6−キノリンカルボン酸メチル(以後、適宜、「MQC」と称する)、
4−(3−フェニルプロピル)ピリジン(以後、適宜、「PPP」と称する)、
4−フェノキシピリジン(以後、適宜、「PoP」と称する)、
4−ベンゾイルピリジン(以後、適宜、「BP」と称する)、
ニコチン酸フェニル(以後、適宜、「PN」と称する)、
2,2’−ビピリジン(以後、適宜、「bpy」と称する)、
4,4’−ビピリジル(以後、適宜、「4bpy」と称する)、
1,10−フェナントロリン一水和物(以後、適宜、「PhT」と称する)、
1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン(以後、適宜、「DPP」と称する)、
ニコチン酸メチル(以後、適宜、「MN」と称する)、
イソニコチン酸エチル(以後、適宜、「EIN」と称する)、
2−フェニルイミダゾール(以後、適宜、「PI」と称する)、
ベンゾイミダゾール(以後、適宜、「BI」と称する)、
1−フェニルピペラジン(以後、適宜、「PhP」と称する)、および
1,2−フェニレンジアミン(以後、適宜、「PhDA」と称する)を用いた。
【0035】
また、比較として、非芳香族アミンに属する
トリエチルアミン(以後、適宜、「TEA」と称する)、
N,N’−ジメチルピペラジン(以後、適宜、「DMP」と称する)、
1−エチルピペラジン(以後、適宜、「EP」と称する)、
ピペラジン無水物(以後、適宜、「PA」と称する)、
1−ピペラジンエタノール(以後、適宜、「PE」と称する)、
N−エチルモルホリン(以後、適宜、「EM」と称する)、および
アセチルアセトン(以後、適宜、「AA」と称する)を用いた。
【0036】
1.3 有機溶剤
有機溶剤には、安息香酸メチルの他、ベンジルアルコールと1−プロパノールの混合有機溶剤も用いた。
【0037】
1.4 水
水には、蒸留水を用いた。
【0038】
2.評価方法
2.1 透明性
目視にて、透明度の高い順に、「透明」、「半透明」および「不透明」の3段階の評価を行った。
2.2 膜厚
膜厚は、マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。
2.3 硬度評価
JIS K5600に準拠し、鉛筆硬度試験により塗膜の硬度を評価した。
2.4 平滑性
目視にて、平滑性の高い順に、「光沢有」および「光沢なし」の2段階の評価を行った。
2.5 密着性評価
JIS K5600に準拠し、碁盤目試験(クロスカット法)により、塗膜の密着性を評価した。
2.6 被膜状態評価
Mg合金(AZ31)、Al、Ti、Fe、Ni、Cu、Mo、Ag、Sn、Cr、Pt、AuおよびZnの各種基板から選択された1以上の基板に成膜後、被膜の状態を目視にて観察し、水性溶解しやすいかどうか、透明性、色、ピンホールの有無および多少、クラックの有無、剥離の有無、気泡の有無および多少などを評価した。
2.7 耐温水性
製膜試料を、60℃の温水に24時間浸漬後、膜の外観が変化するか否かを調べた。
【0039】
3.実験1
上記19種の芳香族アミン、上記7種の非芳香族アミンをそれぞれ用いて水性電析材料を作製し、製膜の可否と製膜後の評価とを行った。また、芳香族アミンおよび非芳香族アミンなどの配位子を全く加えずに作製した水性電析材料も作製し、製膜および評価に用いた(実施例1〜19、比較例1〜7)。
【0040】
3.1 水性電析材料の作製条件
ポリエステル樹脂水分散体中の樹脂固形分が水性電析材料に対して21〜23wt%となる量のペスレジンAと、水性電析材料に対して0〜3.8wt%の芳香族アミン若しくは非芳香族アミンと、水性電析材料に対して2.6〜3.4wt%の安息香酸メチルと、残部を占める水とを混合して、各種の水性電析材料を作製した。
【0041】
3.2 製膜条件
各水性電析材料を水槽に入れて、そこに陽極と陰極を挿入して所定印加電圧の下、製膜を実施した。陽極の材料には、アルミニウム(Al)および銅(Cu)の2種類の金属を用いた。陰極の材料には、各実施例および各比較例ともに、SUS304を用いた。陽極と陰極間の印加電圧(CV)は30Vとした。製膜は、液温を25℃に保持し、攪拌しながら、1分間行った。電析終了後、陽極を水槽から引き上げ、陽極を80℃または100℃にて30分間乾燥した。
【0042】
3.3 結果
表1に、実験1の製膜条件および被膜の評価を示す。表中、被膜状態の項目におけるカッコ内の数値は、膜厚(単位:μm)を示し、以後の表においても同様である。また、表中、配位子の項目におけるバー(−)は、配合していないことを意味する。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、芳香族アミンを用いて作製した水性電析材料(実施例1〜19)は、AlまたはCuの少なくともいずれか1種の陽極にて、透明性および硬度に優れる(H以上)被膜を形成した。一方、非芳香族アミンを用いて作製した水性電析材料(比較例2〜7)と、芳香族アミンも非芳香族アミンも用いないで作製した水性電析材料(比較例1)は、AlおよびCuのいずれを陽極とした場合でも透明な被膜を形成せず、かつ硬度の評価が可能なサンプルであっても低硬度(B、および6B以下)であった。
【0045】
4.実験2
ペスレジンAの固形分濃度を実験1の条件よりも低くするとともに、有機溶媒の種類を実験1から変更した。芳香族アミンとして2,2’−ビピリジン、1,2−フェニレンジアミンおよびベンゾイミダゾールをそれぞれ用いて水性電析材料を作製するとともに、非芳香族アミンとしてアセチルアセトンを用いて水性電析材料を作製し、製膜の可否と製膜後の評価とを行った。また、配位子を全く用いないで作製した水性電析材料も作製し、製膜および評価に用いた(実施例20〜22、比較例8,9)。
【0046】
4.1 水性電析材料の作製条件
ポリエステル樹脂水分散体中の樹脂固形分が水性電析材料に対して10wt%となる量のペスレジンAと、水性電析材料に対して2.8wt%の芳香族アミン若しくは非芳香族アミンと、水性電析材料に対して2.1wt%のベンジルアルコールと6.9wt%の1−プロパノールの混合溶媒と、残部を占める水とを混合して、各種の水性電析材料を作製した。
【0047】
4.2 製膜条件
各水性電析材料を水槽に入れて、そこに陽極と陰極を挿入して所定印加電圧の下、製膜を実施した。陽極の材料には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)および鉄(Fe)の3種類の金属を用いた。陰極の材料には、各実施例および各比較例ともに、SUS304を用いた。陽極と陰極間の印加電圧(CV)は30Vとした。製膜は、液温を25℃に保持し、攪拌しながら、1分間行った。電析終了後、陽極を水槽から引き上げ、陽極を80℃または100℃にて30分間乾燥した。
【0048】
4.3 結果
表2に、実験2の製膜条件および被膜の評価を示す。表中、平滑性、表面硬度および密着性の各項目におけるカッコ内の文字は、各評価に供した陽極の種類を意味し、以後の表においても同様である。また、表中、配位子の項目におけるバー(−)は配合していないことを、平滑性、表面硬度および密着性の各項目におけるバー(−)は評価不可であることを、それぞれ意味する。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、ポリエステル樹脂水分散体中の樹脂固形分が低くても、芳香族アミンを用いて作製した水性電析材料(実施例20〜22)は、Al、CuおよびFeのいずれの陽極においても、透明性に優れる被膜を形成した。また、被膜は、光沢性に優れており、鉛筆硬度がH以上の硬度を有していた。さらに、膜と陽極との密着性も、クロスカット法にて分類0に属するほどに良好であった。一方、非芳香族アミンを用いて作製した水性電析材料(比較例9)と、芳香族アミンも非芳香族アミンも用いないで作製した水性電析材料(比較例8)は、Al、CuおよびFeのいずれを陽極とした場合でも透明な被膜を形成しなかった。また、被膜状態が悪く、その結果、比較例8,9において、膜の評価はできなかった。
【0051】
5.実験3
ペスレジンAの固形分濃度を実験2と同一とし、芳香族アミンに2,2’−ビピリジンを用いて、加温工程における乾燥温度を変化させたときの膜の特性を調べた(実施例23〜27)。
【0052】
5.1 水性電析材料の作製条件
ポリエステル樹脂水分散体中の樹脂固形分が水性電析材料に対して10wt%となる量のペスレジンAと、水性電析材料に対して2.8wt%の2,2’−ビピリジンと、水性電析材料に対して2.1wt%のベンジルアルコールと6.9wt%の1−プロパノールの混合溶媒と、残部を占める水とを混合して、各種の水性電析材料を作製した。
【0053】
5.2 製膜条件
各水性電析材料を水槽に入れて、そこに陽極と陰極を挿入して所定印加電圧の下、製膜を実施した。陽極の材料には、銅(Cu)を用いた。陰極の材料にはSUS304を用いた。陽極と陰極間の印加電圧(CV)は30Vとした。製膜は、液温を25℃に保持し、攪拌しながら、1分間行った。電析終了後、各条件で製膜した陽極を水槽から引き上げ、各陽極を40〜180℃の範囲にて30分間乾燥した。
【0054】
5.3 結果
表3に、実験3の製膜条件および被膜の評価を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示すように、40〜180℃の範囲のいずれの温度でも、透明性に優れる被膜が得られた。膜の硬度は、乾燥温度が40℃では比較的低いものの(硬度:F)、乾燥温度が60℃以上になると、十分に高い硬度(硬度:2H以上)を持つ膜が得られた。
【0057】
6.実験4
ポリエステル樹脂水分散体の種類を変え、その固形分濃度を実験2と同一とし、芳香族アミンに2,2’−ビピリジンを用いて、乾燥温度を80℃若しくは100℃としたときの膜の特性を調べた(実施例28〜32)。
【0058】
6.1 水性電析材料の作製条件
ポリエステル樹脂水分散体中の樹脂固形分が水性電析材料に対して10wt%となる量のペスレジンA、バイロナールMD、プラスコートZ、ポリエスターWRおよびPEN骨格ポリエステル水分散体それぞれに、水性電析材料に対して2.8wt%の2,2’−ビピリジン、水性電析材料に対して2.1wt%のベンジルアルコールと6.9wt%の1−プロパノールの混合溶媒、残部を占める水を混合して、各種の水性電析材料を作製した。
【0059】
6.2 製膜条件
各水性電析材料を水槽に入れて、そこに陽極と陰極を挿入して所定印加電圧の下、製膜を実施した。陽極の材料には、アルミニウム(Al)を用いた。陰極の材料にはSUS304を用いた。陽極と陰極間の印加電圧(CV)は30Vとした。製膜は、液温を25℃に保持し、攪拌しながら、1分間行った。電析終了後、各条件で製膜した陽極を水槽から引き上げ、各陽極を80℃または100℃にて30分間乾燥した。
【0060】
6.3 結果
表4に、実験4の製膜条件および被膜の評価を示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表4に示すように、いずれのポリエステル樹脂水分散体を用いても、透明性、平滑性、硬度および密着性に優れる膜が得られた。特に、ポリエステル樹脂水分散体として、ペスレジンAおよびPEN骨格ポリエステル水分散体を用いると、耐温水性により優れた膜が得られた。
【0063】
7.実験5
塗膜の被着体である基板の種類を増やして、各塗膜の透明性および平滑性を評価した(実施例33〜42、比較例10〜22)。
【0064】
7.1 水性電析材料の作製条件
ポリエステル樹脂水分散体、芳香族アミン、有機溶媒および水を、実験3と同じ条件とした。比較として、非芳香族アミンであるトリエチルアミン2.1wt%を用いて製膜および評価を行った。
【0065】
7.2 製膜条件
上記水性電析材料を水槽に入れて、そこに陽極と陰極を挿入して所定印加電圧の下、製膜を実施した。陽極の材料には、Mg合金AZ31、アルミニウム(Al)、チタニウム(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、スズ(Sn)、クロミウム(Cr)、白金(Pt)および金(Au)を用いた。陰極の材料にはSUS304を用いた。陽極と陰極間の印加電圧(CV)は30Vまたは10Vとし、通電時間を1分間とした。製膜は、液温を25℃に保持し、攪拌しながら、1分間行った。電析終了後、各条件で製膜した陽極を水槽から引き上げ、各陽極を80℃にて30分間乾燥した。
【0066】
7.3 結果
表5に、実験5の製膜条件および被膜の評価を示す。比較として、実施例20も示す。
【0067】
【表5】
【0068】
表5に示すように、2,2’−ビピリジンを用いた実施例では、用いた全ての基板に対して透明で、かつ光沢のある塗膜が得られた。これに対して、トリエチルアミンを用いた比較例では、用いた全ての基板に対して、被膜状態が悪く、かつ光沢のない塗膜しか得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば、工業用部品、自動車用品、医療機器、食品加工機器、建材等に電析塗膜を形成するのに利用可能である。