(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽や洗面ボウルなどの槽体の内部に生じた排水を処理するため、槽体の底面等に排水口を設け、この排水口に排水装置を接続することで、排水を、排水口から排水装置を介し下水側に排出する方法が従来より広く知られている。一例として、
図20に、特許文献1に記載の槽体と排水装置を示す。この
図20に示した従来の槽体と排水装置は、遠隔操作式排水栓装置と呼ばれる排水装置であって、排水口から離間した場所に設けた操作部に操作を加えることによって、排水口の開閉を行うことができるようにしたものである。
【0003】
図20に図示した第一の従来例の排水装置は、以下に記載した槽体としての浴槽、排水栓本体、弁部材、支持部材、レリースワイヤ、操作部、エルボ部材、ガイド管、より構成されてなる。
浴槽は、上方が開口した箱体であって、底面には排水栓を取り付ける排水栓取付孔を、上方の開口の周縁には操作部を取り付ける操作部取付孔を、それぞれ設けてなる。
排水栓本体は、内部に排水口を形成する略円筒形状の部材であって、その外側面上縁にフランジ部を、フランジ部下方の側面に雄ネジを、内周面に凹凸部を、それぞれ備えてなる。
弁部材は、上記排水口を閉口する円盤状の弁体と、該弁体の下面中央に設けられた嵌合部よりなる。
支持部材は、排水口内に収納固定される部材であって、後述するレリースワイヤの端部を固定した状態で、排水口内の凹凸部と嵌合することで、レリースワイヤ端部を排水栓本体に対して固定する。
レリースワイヤは、側面方向に可撓性を備え軸方向に剛性を備えた中空のアウターチューブと、該アウターチューブ内部に収納され、軸方向に摺動自在に動作するインナーワイヤと、インナーワイヤの一方の端部に備えられ、その先端が上記弁体の嵌合部に嵌合する弁軸部と、インナーワイヤを操作部側に付勢する戻りスプリングと、からなる。
更にこの第一の従来例では、レリースワイヤの弁軸部を備えない側の端部に、スラストロック機構と呼ばれる、操作軸を備え、該操作軸に押し込み操作を加える毎に、操作軸を前進(降下)して固定/固定を解除してレリースワイヤのインナーワイヤに付勢されて後退(上昇)、を繰り返す機構を内蔵した、支持機構部を備えてなる。
エルボ部材は、排水栓本体の雄ネジと螺合する雌ネジを設けた開口部、前記排水口から流れ込む排水を下水側に排出するための排出口、及びレリースワイヤを挿通する挿通口を備えてなる。
操作部は、以下に記載する操作部本体と、ボタン部材からなる。
操作部本体は、略円筒形状にして、操作部取付孔に取り付けられる部材であって、内部にレリースワイヤを挿通した上で、支持機構部を収納した状態で着脱自在に収納固定する。
ボタン部材は、円盤状の部材であって、その外側面の形状は、操作部本体の内側面にほぼ合致すると共に、その下面中央に操作軸の先端と嵌合するように構成されてなる。
ガイド管は、軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えた塩化ビニールからなる長い筒状の部材であって、一端をエルボ部材の挿通口に、他端を操作部本体の下端部分に、それぞれ接続してなる。
【0004】
上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置を槽体である浴槽に取り付ける場合、まず、排水栓本体を浴槽の上方から、浴槽に設けた排水栓取付孔の周縁上面にフランジ部下面が当接するように配置して、更に排水栓本体とエルボ部材を螺合させ、排水栓取付孔に排水栓本体とエルボ部材を取り付け固定する。
次に、浴槽上縁部に設けられた操作部取付孔に、事前にガイド管を取り付けておいた操作部本体を挿通し、操作部本体を操作部取付孔に取り付け固定する。その後、ガイド管の他端を、エルボ管の挿通口に接続する。
更にレリースワイヤを、弁軸部側を先端とし操作部本体に挿入し、操作部本体内に支持機構部を収納固定する。
この時、レリースワイヤの先端は、ガイド管によって案内され、ガイド管を介して、挿通口からエルボ部材内に挿通される。この状態より、ラジオペンチなどの治具を利用しつつ、レリースワイヤの先端部分を排水口内部から浴槽内部側に引き上げる。
更にレリースワイヤの端部を支持部材に接続した後、支持部材を排水口内の凹凸部に嵌合させて取り付け固定する。その後、インナーワイヤ端部の弁軸部を、弁部材の嵌合部に嵌合させる。
更に操作軸の上端に、操作体の操作体嵌合部を嵌合させて、第一の従来例の排水装置の取り付けが完了する。
【0005】
上記第一の従来例の排水装置を使用する場合、まず操作部のボタン部材に押し込み操作を加えて弁体が排水口を閉口した状態、即ちレリースワイヤのインナーワイヤが操作部側に後退し、弁部材が降下した状態とする。この状態よりボタン部材に押し込み操作を加えて、インナーワイヤを排水口側に前進させると、インナーワイヤ先端の弁軸部が上昇して弁部材を押上げ、弁体が上昇して排水口を開口する。この開口状態は、スラストロック機構によって操作軸が降下した状態で固定され、操作軸下端がインナーワイヤ端部を前進させた状態で当接することで維持される。
この状態より操作体に再度押し込み操作を加えてスラストロック機構の操作軸の固定状態を解除すると、弁部材の自重や戻りスプリングの作用により、インナーワイヤが操作部側に後退し、弁軸部が下降するため、弁軸部に押し上げられていた弁部材も降下して弁体が排水口を閉口する。以後この操作を繰り返すことで排水口の開閉を自在に操作することができる。
【0006】
上記のように構成した、第一の従来例の排水装置の問題点として、槽体の底面に設けた開口周縁の上面に、排水装置の排水栓本体のフランジ部下面を載架して固定するため、槽体底面とフランジ部との間に上向きの溝が生じ、この溝に細かな塵芥や毛髪などが嵌って取り出しにくくなり、清掃性が悪化する、またこの溝部分に溜まった塵芥に付着した雑菌が繁殖して不衛生になる、といった問題があった。
また、排水栓本体と浴槽底面の継ぎ目部分の段差や、排水栓本体と浴槽底面との素材の相違による色調・質感等の相違が、意匠性を悪化させる、といった問題があった。
この問題点を解決するため、浴槽、排水栓本体、支持部材について、特許文献2に記載した、排水栓本体と槽体を一体としたような第二の従来例の排水装置が提案されている。
【0007】
図21に図示した第二の従来例の排水装置は、以下に記載した槽体としての浴槽、弁部材、支持部材、レリースワイヤ、操作部、エルボ部材、ガイド管、より構成されてなる。
弁部材は、後述する浴槽の垂下部上縁に当接して、排水口よりも上流となる垂下部の上縁を閉塞する円盤状の弁体と、該弁体の下面に設けられた円筒部よりなる。
支持部材は、排水口内に収納固定される部材であって、後述するレリースワイヤの端部を接続する軸収納部と、第一係止部上に配置される環状縁部と、環状縁部の下方に設けられた、排水口内の第一係止部と係止する、外向きに凹となる、弾性を備えた第二係止部を備えてなる。レリースワイヤを、軸収納部に接続した状態で、第一係止部と第二係止部とが係止することにより、レリースワイヤ端部を排水栓本体に対して固定することができる。
更にこの従来例では、上記軸収納部に、棒状の弁軸部と、スラストロック機構と呼ばれる、インナーワイヤにて下端に押し込み操作を加える毎に、弁軸部を上昇して固定/固定を解除して自重により降下、を繰り返す機械的機構部を備えてなる。
レリースワイヤは、側面方向に可撓性を備え軸方向に剛性を備えた中空のアウターチューブと、該アウターチューブ内部に収納され、軸方向に摺動自在に動作するインナーワイヤと、からなる。
エルボ部材は、浴槽の排水口周縁下方に取り付けられる部材であって、排水口から流れ込む排水を排出するための排出部、及びレリースワイヤを挿通する挿通口を備えてなる。
操作部は、レリースワイヤの動作を操作するための部材であって、ガイド管の一端が接続されると共に、該ガイド管内部を介してレリースワイヤを挿通してなり、操作部に加えた操作を、レリースワイヤを介して排水口側に伝達することで、弁部材を昇降させ、排水口を開閉する。
また、上記各部材からなる遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載したような槽体である浴槽に施工される。
浴槽は、上方が開口した箱体であって、底面には円筒状に垂下する壁面にて形成した垂下部と、垂下部の下端から内側に突出する第一係止部とを設けてなる。
【0008】
上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置を槽体である浴槽に取り付ける場合、
操作部本体とエルボ部材をガイド管を介して接続し、更に操作部本体に接続されたレリースワイヤが、ガイド管内部を介してエルボ部材内部に配置された状態とする。
【0009】
この状態より、レリースワイヤ端部を排水口を介し浴槽内に引き上げ、支持部材に接続し、支持部材の第二係止部を、浴槽の第一係止部と係止固定させる。更に弁部材を円筒部が軸収納部を覆うように配置して、第二の従来例の排水装置の取り付けが完了する。
尚、特許文献2.には、第二の従来例の排水装置の取り付け手順は記載されていない為、上記段落0008の状態とするまでの施工手順は特に記載しないが、
・支持部材の環状縁部を第一係止部上に配置させる
・環状縁部の下方に設けられた第二係止部が弾性を有している
・レリースワイヤが軸収納部の下端に接続されている
という構成上、レリースワイヤを接続した支持部材を、浴槽底面の上方から接続することが明らかなため、レリースワイヤまた支持部材、弁部材を、段落0009に記載の手順で施工することは明らかである。
【0010】
上記第二の従来例の排水装置を使用する場合、まず操作部の操作体に操作を加えて弁体が排水口を閉口した状態、即ちレリースワイヤのインナーワイヤが操作部側に後退し、弁部材が降下した状態とする。この状態より操作部に押し込み操作を加えて、インナーワイヤを排水口側に前進させると、インナーワイヤ先端が弁軸部を上昇させて弁部材を押上げ、弁体も上昇して排水口を開口する。この開口状態は、スラストロック機構によって固定され、維持される。
この状態より操作部に再度押し込み操作を加えてスラストロック機構の弁軸部の固定状態を解除すると、弁部材及び弁軸部が自重により降下し、弁体が垂下部の上縁に接して垂下部上縁ごと排水口を閉塞する。
以後この操作を繰り返すことで排水口の開閉を自在に操作することができる。
【0011】
【特許文献1】特開2002−88853号
【特許文献2】特開2010−1678号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような特許文献1、特許文献2に記載の遠隔操作式排水栓装置の場合、以下に記載するような問題点があった。
1.槽体に取り付けた排水栓本体の凹凸部、または浴槽に設けた第一係合部に上方から支持部材を接続させる、という構成上、少なくとも槽体にエルボ部材等遠隔操作式排水栓装置の一部の部材を取り付けた状態において、排水口からレリースワイヤを引き出して支持部材に接続し、更に支持部材を槽体側に接続する、という手順にて施工を行う必要がある。この作業は、槽体の底面に設けられた排水口に対して行う作業であり、槽体の中に身を乗り出し、更に槽体の開口から一番離れた(つまり視認や作業の困難な場所である、)槽体底面に設けられた、狭隘な排水口内からレリースワイヤを引き出したり、支持部材と接続させたりしなければいけないなど、大変な手間が掛かっていた。また作業手順によっては、槽体の表側(上面又は内面)と、浴槽の裏側(下面又は外面)とを何度も移動したりするなど一層手間が掛かる場合がある。また、作業の困難さから、施工不良が発生してしまう場合があり、製品の品質を悪いものとしてしまう場合があった。これは特に大きな槽体である浴槽の場合において顕著になる問題である。
2.排水口の内部に支持部材を配置するため、この支持部材が排水口を清掃する際邪魔となって排水口内部の清掃をおこなうことが困難になった。特に、特許文献2の遠隔操作式排水栓装置のように、支持部材の中央に軸収納部を、外周に環状縁部を、それぞれ配置し、その間にリブを設けて接続するような構造の支持部材の場合、排水口内面(または垂下部内面)と環状縁部の隙間部分に塵芥が入って汚れたり、雑菌の繁殖などで不衛生になる場合が多い。またリブが障害となって、ブラシなど清掃の為の冶具も使いにくく、やはり清掃性の悪化や不衛生の原因となる場合が多かった。
3.特許文献1に記載の、第一の従来例の排水装置において、前述のように、槽体底面とフランジ部との間に上向きの溝が生じ、この溝に細かな塵芥などが嵌って取り出しにくくなり、清掃性が悪化する、また非衛生になる、といった問題があった。
また、排水栓本体と浴槽底面の継ぎ目部分の段差や、排水栓本体と浴槽底面との素材の相違による色調・質感等の相違が、意匠性を悪化させる、といった問題があった。
また、支持部材に接続されたレリースワイヤは、エルボ部材内部で排水口がある上方から、接続孔がある水平方向乃至180度反転して上方に屈曲する場合が多く、この狭隘な部分での屈曲が、挫屈と呼ばれるレリースワイヤの破損を生じる場合があった。特にレリースワイヤが固定されていない状態であると、エルボ部材内部に大きく曲がるだけの余裕があっても、レリースワイヤがエルボ部材内部において接続箇所の直ぐ下方から小さな曲がり半径で屈曲してしまい、一層挫屈が発生する場合が多くなる、という問題があった。
4.特許文献2に記載の第二の従来例の排水装置において、槽体に設けられた止水面や垂下部等、止水や部材の接続に関する部分は槽体の成型を利用するか、又は槽体の成型後に後加工で処理を行うことで構成している。
しかし、成型によって形状を構成する場合、排水栓本体と比較して槽体は大型部材なので、機能を確保するためには、相当高い精度が必要となる。例えば同じ0.1%の歪みでも、100mmの排水栓本体なら0.1mm程度の歪みですみ、漏水は生じないが、1600mmの浴槽では1.6mmの歪みとなり、漏水の原因になる。従ってこの成型方法で浴槽などの槽体に排水栓本体と同じ程度の機能を持たせることは大変困難であった。
また、後加工で形状を構成する場合でも、槽体は大きな部材で、容易に動かしたり、作業をしやすい状態で固定することは困難な場合がある。例えば、槽体の上面から垂下部に形状加工を行おうとすれば、槽体の奥まった部分に作業者が手を伸ばし、機材を操作しなければならない。このような理由から、形状加工の自由度には限界があり、更には正円や同心円、細やかな凹凸の形成も困難である上、加工に失敗すれば、槽体が丸ごと無駄になる、といった場合もあった。
5.特許文献2に記載の第二の従来例の排水装置において、槽体のような大きな部材を製造する方法やノウハウと、排水装置のような小さな部材を製造する方法やノウハウは全く異なるため、槽体を製造するメーカーと、遠隔操作式排水栓装置の弁部材など各部材を製造するメーカーとは異なる場合が多い。つまり、弁部材と止水面が異なるメーカーによって製造されるため、単一のメーカーにて製造される場合と比べて、弁部材と止水面との合いの品質管理、即ち止水性能の品質管理が困難になる、という問題があった。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、施工が容易であり、また清掃性・意匠性が良く、挫屈等部材の悪化・破損が起こりにくく、更に部材の製造・品質管理が良好な遠隔操作式排水栓装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本発明は、槽体の排水口を遠隔操作的に開閉するための遠隔操作式排水栓装置であって、
槽体の底面に開口した槽体排水口1と、槽体の下方から槽体に取り付けられ
る排水装置に形成され、施工完了時槽体排水口1の周縁よりも内側方向に突出した位置
であって、槽体排水口1の上端よりも下方に配置される止水面2と、止水面2の内部に形成される排水装置排水口3と、槽体排水口1の下方に取り付けられる、施工完了時止水面2に対して定まった高さ位置に配置される筒状の排水栓本体4と、少なくとも排水装置排水口3上を上下動し、降下時に止水面2にて排水装置排水口3を閉塞する弁部材6と、
槽体の近傍に設けられた操作部取付孔7と、操作部取付孔7に槽体の裏側から取り付けられる、弁部材6の動作を操作する操作部本体8と、操作部に加えられた操作を弁部材6に伝達する、一端が操作部本体8に対して、他端が排水栓本体4に対して、それぞれ接続固定されたレリースワイヤ9と、からなる遠隔操作式排水栓装置である。
【0014】
請求項2に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、槽体排水口1の下方に、排水栓本体4との接続を行う接続部材10
が取り付け
られると共に、排水栓本体4
の下方に接続部材10
が接続することを特徴とする、段落0013に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0015】
請求項3に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、止水面2を、排水栓本体4に設けたことを特徴とする、上記段落0013又は段落0014に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0016】
請求項4に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、止水面2を、接続部材10に設けたことを特徴とする、段落0014に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0017】
請求項5に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、排水装置排水口3及び槽体排水口1から槽体内部側に取り出しが可能な大きさで、レリースワイヤ9端部を着脱自在に固定すると共に、排水栓本体4内部に着脱自在に支持固定されるように構成される支持部材11を備えたことを特徴とする、上記段落0013乃至段落0016のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0018】
請求項6に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、排水栓本体4に、レリースワイヤ9端部を着脱自在に固定するホルダー部12を設けたことを特徴とする、上記段落0013乃至段落0016のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0019】
請求項7に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、
排水栓本体4の側面に、レリースワイヤ9が挿入される挿通口20aを設け、レリースワイヤ9が排水栓本体4の側面の挿通口20aから排水栓本体4内に配置されると共に、排水栓本体4内部で排水装置排水口3を設けた上方に向かって屈曲するようにホルダー部12を構成し、更に、挿通口20aから挿入されたレリースワイヤ9が、排水栓本体4内のホルダー部12迄の間部分において円弧を描くように固定される、円弧ガイド部を設けたことを特徴とする、上記段落0018に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0020】
請求項8に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、
排水栓本体4の内部に、レリースワイヤ9に着脱自在に接続され、その一部が弁部材6の下方に配置されると共に、操作部の操作に応じて動作することで弁部材6を昇降させるレバー部材13aを備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置、上記段落0013乃至段落0016のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0021】
請求項9に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、
操作部取付孔7に、操作部本体8を槽体の裏面から接続する為の接続アダプター14を備えたことを特徴とする、上記段落0013乃至段落0020のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0022】
請求項10に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、
排水栓本体4と操作部本体8とにそれぞれレリースワイヤ9端部を接続固定した状態で、
排水栓本体4と操作部本体8とを槽体に取り付ける事を特徴とする、上記段落0013乃至段落0021のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0023】
請求項11に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、
排水栓本体4と操作部本体8との間にレリースワイヤ9を挿通するためのガイド管15を備え、
施工後に、レリースワイヤ9と排水栓本体4及び操作部本体8との接続固定を解除した上で槽体排水口1または操作部取付孔7からレリースワイヤ9を取り出すと共に、
更にレリースワイヤ9取り出し後に再度槽体排水口1または操作部取付孔7のいずれか一方からレリースワイヤ9を挿通し、ガイド管15を介して他方に到達させ、再度レリースワイヤ9と排水栓本体4及び操作部本体8とを接続固定させるように構成した、上記段落0013乃至段落0022のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0024】
請求項12に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、ガイド管15を、軸方向に伸縮可能に構成した事を特徴とする、上記段落0023に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の本発明では、排水装置排水口を閉塞するための止水面を、槽体の下面から取り付け
られる排水装置に形成され、施工完了時槽体排水口1の周縁よりも内側方向に突出した位置であって、槽体排水口1の上端よりも下方に配置されるように構成したことで、同じく槽体の下方から取り付けられる、レリースワイヤ端部を接続固定した排水栓本体が、施工完了時止水面に対して定まった高さ位置に配置することができるようになった。
例えば第一の従来例、第二の従来例では、止水面を槽体の上面に配置してなる。槽体の厚みは製品によってまちまちなため、止水面が槽体上面に配置されると、レリースワイヤ端部も槽体の上面に対して位置決め固定する必要が生じる。
その一方でレリースワイヤ自体は槽体の裏面また下面を通過して配置されるため、施工手順としては、先に槽体に排水栓本体などを取り付け、槽体の裏面また下面から、レリースワイヤを排水口を介して引き上げ、支持部材に接続し、支持部材を槽体の上面に対して位置決めして固定、という方法・手順を採用せざるを得なかった。
これに対し、上述のように、請求項1に記載の本発明では、排水装置排水口を閉塞するための止水面を、槽体の下面から取り付け
られる排水装置に形成され、施工完了時槽体排水口1の周縁よりも内側方向に突出した位置であって、槽体排水口1の上端よりも下方に配置されるように構成し、更にレリースワイヤ端部を接続固定した排水栓本体を同じく槽体の下面から取り付けるように構成したことで、どの様な厚みを有する槽体に接続する場合でも、レリースワイヤ端部が施工完了時止水面に対して定まった高さ位置に配置することができるようになった。
これにより、以下の1.乃至5.に記載したような優れた効果を奏する。
1.止水面を備えた部材及び排水栓本体を槽体の下方から、操作部本体を槽体の裏面側から、それぞれ取り付けるように構成したことで、遠隔操作式排水栓装置の施工作業の内、レリースワイヤを排水栓本体と操作部本体に接続する等の、排水栓本体から操作部本体までの組み立て作業を例えば工場などで事前に行い、槽体への遠隔操作式排水栓装置の取り付けは、単に排水栓本体と操作部本体とを槽体に取り付けるだけで良くなった。即ち、従来の遠隔操作式排水栓装置のように、操作部本体及び排水栓本体を浴槽に取り付けた後、操作部本体から排水栓本体に向かってレリースワイヤを挿通し、更に槽体の中に身を乗り出し、槽体の開口から一番離れた(つまり視認や作業の困難な場所である、)槽体底面に設けられた、狭隘な排水口内からレリースワイヤを引き出して部材の接続を行う、という必要が無くなった。
本発明でも、操作部本体と排水栓本体の間でレリースワイヤを挿通するなどして両者を接続したり、排水装置排水口からレリースワイヤを引き出して部材の接続を行う、という点は従来例と同様であるが、本発明の場合、排水栓本体及び操作部本体を槽体に接続していない状態で、操作部本体と排水栓本体の間でレリースワイヤを挿通するなどして両者を接続したり、排水装置排水口からレリースワイヤを引き出して部材の接続を行うことができる。このため、排水栓本体から操作部本体までの組み立て作業を、工場など作業空間を広く取ることができ、また作業を容易化する作業台などを設置し、また機材の揃った環境で行うことができる。更に、遠隔操作式排水栓装置の事前の組み立て自体も、槽体に接続していないことから、排水栓本体や操作部本体などの、槽体と比べ小型で軽量な部材を、作業者が視認しやすく作業しやすい手元に置き、且つ作業しやすい位置・角度に配置し、必要に応じ移動・回転させて作業を行うことができ、従来例に比較して遙かに遠隔操作式排水栓装置の組み立てを容易とすることができる。尚、止水面を備えた部材は、遠隔操作式排水栓装置側に取り付けておいてから遠隔操作式排水栓装置を槽体に取り付けるように施工しても、槽体側に取り付けておいてから遠隔操作式排水栓装置を槽体に取り付けるように施工しても、どちらでも良い。
2.止水面を備えた部材及び排水栓本体を槽体の下方から取り付けることで、槽体の底面上に排水栓本体の一部が配置されることが無くなり、また上方を向いた溝が形成される事もなくなった(槽体排水口内に止水面を備えた部材及び排水栓本体は露出するが、これは「槽体の底面上」ではない)。
槽体の槽体排水口の下端部分には、止水面を備えた部材や排水栓本体、後述する接続部材等との継ぎ目となる溝が存在するが、これは槽体排水口又は排水装置排水口の中心側を向いて、即ち水平方向を向いて形成されるため、溝が上方を向いて生じる従来例に比べて、塵芥や毛髪などを極めて容易に取り出すことができ、清掃性が遙かに向上する。
3.排水栓本体は弁部材に覆い隠され、また槽体排水口の底面とほぼ同じ高さ位置に配置されて、槽体の内面側からはほとんど見えない、または完全に見えなくなる。
このため、槽体の清掃性が向上し、また排水栓本体と浴槽底面の継ぎ目部分の段差や、排水栓本体と浴槽底面との素材の相違による色調・質感等の相違が意匠性を悪化させる、といった問題も解消することができる。
4.弁部材と当接して槽体内の排水の流出を防止する止水面は、槽体とは別の部材として提供されるため、特許文献2のような、浴槽の成型に特に高い精度が求められる、という事もない。また、槽体への後加工についても、例えば単に丸い開口(槽体排水口)と槽体排水口下面の周縁を平坦且つ水平に形成するだけで済み、槽体排水口内部に凹凸などを設ける必要がない(凹凸が必要な場合は排水栓本体に設ければ良い)。このため、特許文献2に記載の発明と比べ、垂下部や排水口部分の形状の自由度、加工の容易さが飛躍的に高まった。また、加工が容易になったことで、槽体の成型に失敗して浴槽が丸ごと無駄になる、といった問題の発生もほとんど無くなった。
また、排水栓本体など槽体以外の細かな部材は、樹脂成形によって、初めから高い精度で複雑な形状を形成できる。このため、後加工など無くても、槽体排水口に極めて高い精度で正円や同心円、細やかな凹凸を、容易に設けることができるようになった。
5.弁部材と排水栓本体は、槽体と比較して部材の大きさがそれほど変わらないため、通常同じメーカーで製造される。このように、弁部材と止水面を備えた排水栓本体が、同じメーカーにより製造されるため、弁部材と止水面との合いの品質管理、即ち止水性能の品質管理が特許文献2に記載の従来例と比較して極めて容易になった。
請求項2に記載の発明では、接続部材を介して施工を行うことで、接続部材に排水栓本体と簡易且つ確実に接続できるような機構・構造を組み込んでおき、この接続部材を事前に工場などで槽体に取り付けておき、現場では排水栓本体と接続部材を簡易に接続するだけで施工が完了するようにできる。
また、排水栓本体の側面に排出口など突出する構成が設けられている場合、ビス部材などで槽体と排水栓本体を接続しようとしても、この側面に突出した部分が障害となってビス部材が取り付けられない場合がある。このような場合、上記のように接続部材に排水栓本体と簡易且つ確実に接続できるような機構・構造を組み込んでおき、槽体と接続部材とをビス部材で行い、その後接続部材と排水栓本体との接続を接続するようにすれば、排水栓本体に側面方向の突出部分があっても水密において信頼性の高い槽体と排水栓本体との接続を行うことができる。
請求項3、請求項4に記載の本発明では、止水面を有する部材を明確化することができる。
請求項5に記載の発明では、排水栓本体とレリースワイヤ端部とを、着脱自在として接続する構造を具体的に示すことができる。
請求項6に記載の発明では、排水栓本体とレリースワイヤ端部とを、着脱自在として接続する構造を具体的に示すことができる。
また、更にこの請求項6に記載の発明では、弁部材を外したとき、槽体排水口及び排水装置排水口には支持部材は存在せず、中央にホルダー部があるのみであり、槽体排水口及び排水装置排水口内の清掃を行う場合、ほとんど障害物が無い状態で、清掃を極めて容易且つ確実に行うことができる。
請求項7に記載の発明では、円弧ガイド部を設けたことで、排水栓本体内において、レリースワイヤが円弧ガイドに沿って大きく曲がり、レリースワイヤに応力が働いても折れ曲がるような曲がりが生じなくなるため、挫屈などレリースワイヤの破損が生じにくくすることができる。
請求項8に記載の発明では、排水栓本体とレリースワイヤ端部とを、着脱自在として接続する構造を具体的に示すことができる。
また、更にこの請求項8に記載の発明では、弁部材を外したとき、槽体排水口及び排水装置排水口には支持部材等の部材は全く存在しない。従って、槽体排水口及び排水装置排水口内の清掃を行う場合、全く障害物が無い状態で、清掃を極めて容易且つ確実に行うことができる。
また、レリースワイヤは排水栓本体内で屈曲を生じないため、挫屈などレリースワイヤの破損が生じにくくすることができる。
請求項9に記載の発明では、接続アダプターを介して施工を行うことで、接続アダプターに操作部本体と簡易且つ確実に接続できるような機構・構造を組み込んでおき、この接続アダプターを事前に工場などで槽体に取り付けておき、現場では操作部本体と接続アダプターを簡易に接続するだけで施工が完了するようにできる。
請求項10に記載の本発明では、本発明を採用したことによって生じる簡易施工の手順を明確化することができる。
請求項11に記載の本発明では、ガイド管を利用し、槽体の表側からの作業だけで、レリースワイヤを取り出し、また再度取り付けることができる。即ち、レリースワイヤ等一部の部材の破損に対して、槽体の裏側に作業を行わなくてもメンテナンスを行うことができる。
請求項12に記載の発明では、ガイド管を軸方向に伸縮自在としたことで、レリースワイヤの槽体排水口からの引き出し長さを、ガイド管が伸縮しないものよりも長くすることができるようになった。本発明では槽体の底面の下面に接続する排水栓本体にレリースワイヤを接続固定するため、第一の従来例のように、槽体の底面の上面に接続する排水栓本体にレリースワイヤを接続する場合に比べて、レリースワイヤ端部の位置が、槽体排水口からより奥まった位置に配置される場合が多い(後述する第三実施例等は特に顕著である)。当然、レリースワイヤ端部が奥まった位置に配置されるため、槽体排水口から引き出しにくくなっている。
このため、ガイド管を軸方向に伸縮自在とし、レリースワイヤの槽体排水口からの引き出し長さを、より長くすることができるようにした本構成の方が作業が容易に行うことができる。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明の第一実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至
図7に示した、本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、請求項1、請求項3、請求項5、請求項9乃至請求項11に対応する実施例であって、以下に記載する、槽体としての浴槽B、排水栓本体4、支持部材11、弁部材6、レリースワイヤ9、操作部、ガイド管15、から構成される。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、底面には浴槽B内の排水を排出するための、平面視円形を成す槽体排水口1を、槽体排水口1の周縁下面には後述するビス部材16と螺合するビス穴部17(図示せず)を、それぞれ設けてなる。また、浴槽Bの開口周縁に、操作部を取り付けるための操作部取付孔7を備えてなる。
排水栓本体4は、有底略円筒形状を成す部材であって、内部には槽体排水口1からの排水が流入する排水装置排水口3を備えてなる。
また、排水装置排水口3の内部には、支持部材11と嵌合して支持部材11を支持固定する凹凸部5を備えてなる。
また、排水装置排水口3の上縁部分の外周方向には、側面方向に突出した、上面に弁部材6と当接する止水面2を備え、更に該止水面2の外周側に、ビス部材16を挿通するための開口を備えたフランジ部18を備えてなる。尚、
図1等に示したように、この実施例においては、止水面2の外縁の径は槽体排水口1の内径と同じか、小径に形成され、且つ槽体排水口1と止水面2とは同心円状に配置されるため、施工完了時止水面2は、槽体排水口1の内周縁よりも内側方向に突出した位置に配置される。また、排水栓本体4に一体に止水面2が設けられるため、本実施例においては、止水面2に対して定まった高さ位置に排水栓本体4が配置されてなる構成である。
また、排水栓本体4の下方の側面方向には、槽体排水口1及び排水装置排水口3を通過した排水を排出する排出口19と、レリースワイヤ9を挿通する為の挿通口20aを備えた挿通筒20を備えてなる。
支持部材11は、排水装置排水口3内に収納固定される部材であって、後述するレリースワイヤ9の端部を固定した状態で、排水装置排水口3内の凹凸部5と嵌合することで、レリースワイヤ9端部を排水栓本体4に対して固定する。また、該支持部材11は排水装置排水口3内に収まる大きさに構成されているため、排水装置排水口3及びそれよりも大径な槽体排水口1から、浴槽B内部側に取り出すことが可能である。
弁部材6は、上記槽体排水口1の内径よりも若干小径で、止水面2とほぼ同じか若干大径な外径を有する円盤状の弁体6aと、該弁体6aの下面中央に設けられた嵌合部6bよりなる。また、この弁部材6の下面のほぼ外縁部分に、止水面2と当接して排水装置排水口3を閉口する当接部6cを設けてなる。上記のように構成したため、排水装置排水口3が閉口している場合は直上方向から見ない限り、排水栓本体4は浴槽Bの使用者から見ることはできない。また、排水装置排水口3が開口している場合でも、ほとんどの方向視において、槽体排水口1が弁部材6に覆われているため、接続部材10や排水栓本体4は浴槽Bの使用者からほぼ見ることはできない。
レリースワイヤ9は、側面方向に可撓性を備え軸方向に剛性を備えた中空のアウターチューブ9aと、該アウターチューブ9a内部に収納され、軸方向に摺動自在に動作するインナーワイヤ9bと、インナーワイヤ9bの一方の端部に備えられ、その先端が上記弁体6aの嵌合部6bに嵌合する弁軸部9cと、インナーワイヤ9bを操作部側に付勢する戻りスプリング(図示せず)と、からなる。
更にこの実施例では、レリースワイヤ9の弁軸部9cを備えない側の端部に、インナーワイヤ9bに当接する操作軸9eを備えた、支持機構部9dを備えてなる。該支持機構部9d内には、スラストロック機構と呼ばれる、操作軸9eに押し込み操作を加える毎に、操作軸9eを前進(降下)して固定/固定を解除してレリースワイヤ9のインナーワイヤ9bに付勢されて後退(上昇)、を繰り返す機構を内蔵してなる。
操作部は、以下に記載する操作部本体8と、接続アダプター14と、操作部側C字リング21と、ボタン部材22と、からなる。
操作部本体8は、略円筒形状にして、円筒形状の上端部分の外側面には周縁に沿って連続して外側方向に突出した操作部側係合部23を設けてなり、内部にレリースワイヤ9を接続した支持機構部9dを、着脱自在に収納固定する。
接続アダプター14は略円筒形状にして、円筒形状の下端部分の外側面には周縁に沿って連続して外側方向に突出した操作部側係合部23を設けてなり、上縁外周の突出部分とナット部材を利用して、浴槽Bの操作部取付孔7に取り付け固定される。
操作部側C字リング21は断面内向きに開口したコの字を成す、平面視C字形状の部材であって、操作部本体8と接続アダプター14にそれぞれ設けられた操作部側係合部23と係合して、操作部本体8と接続アダプター14とを接続固定する部材である。
ボタン部材22は、接続アダプター14内周面よりも若干小径な外径を有した円板状の部材であって、下面中央にて操作軸9eと着脱自在に嵌合固定され、施工完了時接続アダプター14内部を自在に上下動するように構成されてなる。
ガイド管15は、軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えた塩化ビニールからなる長い筒状の部材であって、一端はエルボ部材の挿通筒20に、他端は操作部本体8の下端部分に、それぞれ接続される。
【0028】
以上のように構成した本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして槽体である浴槽Bに施工・取り付けされる。尚詳述はしないが、部材同士の接続箇所において、水密性が必要とされる部分にはパッキングなどを用いて水密的な接続が行われる。
まず工場等において浴槽Bの操作部取付孔7に、接続アダプター14を取付固定する。
また、同じく工場にて、以下の手順にて、遠隔操作式排水栓装置の一部の組み立てを行う。
まず操作部本体8の挿通筒20と、操作部本体8の下端とを、ガイド管15で接続する。
次に、レリースワイヤ9の弁軸部9cを備えた端部を操作部本体8から挿入し、弁軸部9cが、ガイド管15と挿通筒20を介し、支持機構部9dが操作部本体8内部に収納固定されるまで押し込む。この時、排水栓本体4内部に弁軸部9cが配置される。
更に、排水装置排水口3からレリースワイヤ9の先端を引き上げ、支持部材11に接続固定した上で、排水栓本体4の凹凸部5に支持部材11を嵌合させる。この状態は、排水栓本体4と操作部本体8とにそれぞれレリースワイヤ9端部を接続固定した状態である。
これらの浴槽Bや遠隔操作式排水栓装置に対する作業は工場で行われるため、作業空間を広く取ることができ、また作業を容易化する作業台などを設置し、また機材の揃った環境で行うことができる。更に、遠隔操作式排水栓装置の組み立て自体も、浴槽Bに接続していないことから、排水栓本体4や操作部本体8などの部材を、作業者が視認しやすく作業しやすい手元に置き、且つ作業しやすい位置・角度に配置したり移動・回転させる等しながら作業を行うことができる。このため、この段階までの遠隔操作式排水栓装置の組み立て作業は、従来例に比較して遙かに容易とすることができる。このようにして、第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、
図4の状態まで組み立てられる。
【0029】
次に、上記段落0028の段階まで組み立てられた浴槽B及び遠隔操作式排水栓装置と、その他の部材を、施工現場に搬入する。施工現場では、排水栓本体4側、操作部側にそれぞれ以下のような作業が行われる。
排水栓本体4側では、排水栓本体4を浴槽Bの下方に配置した上で、冶具などを利用し、槽体排水口1と排水装置排水口3とを同心円状に配置し、フランジ部18の開口を介してビス部材16をビス穴部17に螺合させ、排水栓本体4を浴槽Bの下方から取り付け固定する。
操作部側では、操作部本体8の上端の操作部側係合部23と、接続アダプター14下端の操作部側係合部23とを当接させた上で、操作部側C字リング21をそれぞれの操作部側係合部23と係合させ、操作部本体8と接続アダプター14とを接続固定する。
その後、排水栓本体4の排出口19に床下配管への配管を接続した上で、浴槽Bを設置箇所に設置し、弁部材6の嵌合部6bにレリースワイヤ9端部の弁軸部9cを、操作軸9eにボタン部材22を、それぞれ嵌合させて、
図1に示したように、第一実施例の遠隔操作式排水栓装置の施工が完了する。
【0030】
上記のように施工された第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように操作することで、遠隔操作により排水装置排水口3を開閉できる。
まず、
図2のように、弁部材6が降下し、弁部材6の当接部6cが止水面2に当接している状態とする。この状態において操作部のボタン部材22に押し込み操作を加えると、操作軸9eがインナーワイヤ9b側に突出し、それに伴ってインナーワイヤ9bがアウターチューブ9aに対し排水装置排水口3側へ突出し、弁部材6を押し上げて、止水面2から当接部6cが離間され、
図3のように、排水装置排水口3を開口する。スラストロック機構により、この状態にて操作軸9eが固定され、排水装置排水口3の開口状態が維持される。
この状態から再度操作部のボタン部材22に押し込み操作を加えると、スラストロック機構による操作軸9eの固定が解除され、弁部材6の自重及び戻りスプリングの作用によりインナーワイヤ9bが操作部側に後退し、弁部材6が降下して当接部6cと止水面2とが当接し、排水装置排水口3が閉口した
図2の状態に戻る。
以後、同様の操作を繰り返すことで、遠隔操作的に、排水装置排水口3の開口/閉口を行うことができ、開口時には浴槽B内の排水を排出することができる。
【0031】
また、上記のように構成した第一実施例の遠隔操作式排水栓装置において、弁部材6、ボタン部材22、支持部材11、レリースワイヤ9等に破損が生じた場合、以下のような手順で部材を取り外し、破損のない同部品と交換できる。
まず弁部材6及びボタン部材22をレリースワイヤ9より脱着する。次いで、支持部材11と排水栓本体4の凹凸部5との嵌合を解除し、支持部材11を浴槽B内に引き上げてから、支持部材11とレリースワイヤ9の接続を解除する。このようにして、排水栓本体4側は
図5に示したような状態となる。次に、支持機構部9dと操作部本体8の嵌合を解除し、接続アダプター14の上方からレリースワイヤ9を引き上げる。このようにして、操作部側は
図6に示したような状態となる。
これらの手順で部材を取り出し、必要に応じて部材の交換を行った上で、逆の手順により遠隔操作式排水栓装置を再度組み立てる。つまり、レリースワイヤ9を接続アダプター14の上方から挿入し、ガイド管15を介して先端を排水栓本体4内に配置させ、レリースワイヤ9先端を支持部材11に接続した上で排水栓本体4の凹凸部5に嵌合させる。更に弁部材6とボタン部材22をレリースワイヤ9に接続して、遠隔操作式排水栓装置の部材交換が完了する。
これらの作業は、全て浴槽Bの上面からの作業で行うことができ、施工が完了し、容易に浴槽Bの裏面側に対して作業が行えない場合にも支障無く実施することができる。
【0032】
次に、本発明の第二実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図8乃至
図12に示した、本発明の第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、請求項1、請求項2、請求項4、請求項6、請求項7、請求項9乃至請求項11に対応する実施例であって、以下に記載する、槽体としての浴槽B、排水栓本体4、円弧ガイド部材26、キャップ部材27、接続部材10、排水栓側C字リング28、弁部材6、レリースワイヤ9、操作部、ガイド管15、から構成される。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、底面には浴槽B内の排水を排出するための、平面視円形を成す槽体排水口1を、槽体排水口1の周縁下面には後述するビス部材16と螺合するビス穴部17を、それぞれ設けてなる。また、浴槽Bの開口周縁に、操作部を取り付けるための操作部取付孔7を備えてなる。
排水栓本体4は、有底略円筒形状を成す部材であって、上縁には外方向に突出した排水栓側係合部24が備えられてなる。
また、排水栓本体4の下方の側面方向には、槽体排水口1及び排水装置排水口3を通過した排水を排出する排出口19と、レリースワイヤ9を挿通する為の挿通口20aを備えた挿通筒20を備えてなる。
また、排水栓本体4の底面には、上方に向かって、レリースワイヤ9端部を上方を向いた状態で配置固定するホルダー部12が備えられてなる。このホルダー部12には、円を四等分したような円弧部分からなる第一円弧ガイド部25が設けられており、円弧の一端はホルダー部12の上縁に、円弧の他端は挿通口20aに、それぞれ向かって形成されてなる。
円弧ガイド部材26は、ホルダー部12の上方からホルダー部12に覆い被さるように配置される部材であって、施工完了時、ホルダー部12の第一円弧ガイド部25と同心円を成す円弧である第二円弧ガイド部26aを備えてなる。
キャップ部材27は、上面にレリースワイヤ9端部を挿通する開口を備えてなり、施工完了時、ホルダー部12及び円弧ガイド部材26の上端と着脱自在に嵌合した状態で取り付けられる。
施工完了時には、上記ホルダー部12の第一円弧ガイドと、円弧ガイド部材26の第二円弧ガイドとでレリースワイヤ9端部を挟持した状態とし、更にキャップ部材27をホルダー部12と円弧ガイド部材26に嵌合固定することで、円弧ガイド部材26の第二円弧ガイドとでレリースワイヤ9端部を挟持した状態を維持固定する。
接続部材10は、浴槽Bの下面であって、槽体排水口1の近傍に取り付けられる略円筒形状の部材であって、内周部分には排水装置排水口3を形成し、また上縁部分の外周方向には、側面に突出した弁部材6が当接する止水面2と、該止水面2の更に外周側にビス部材16を挿通するための開口を備えたフランジ部18を備えてなる。
また、外側面部分のほぼ中間部分に、外方向に突出したリブからなる排水栓側係合部24を備えてなる。尚、
図8等に示したように、この実施例においては、止水面2の外縁の径は槽体排水口1の内径と同じかそれよりも小径に形成され、且つ槽体排水口1と止水面2とは同心円状に配置されるため、施工完了時止水面2は槽体排水口1の内周縁よりも内側方向に突出した位置に配置される。
排水栓側C字リング28は断面内向きに開口したコの字を成す、平面視C字形状の部材であって、排水栓本体4と接続部材10とにそれぞれ設けられた排水栓側係合部24と係合して、排水栓本体4と接続部材10とを接続固定する部材である。
弁部材6は、上記槽体排水口1の内径よりも若干大径な外径を有する円盤状の弁体6aと、該弁体6aの下面中央に設けられた嵌合部6bよりなる。また、この弁部材6の下面の一部に、止水面2と当接して排水装置排水口3を閉口する当接部6cを設けてなる。上記のように構成したため、排水装置排水口3が閉口している場合は弁部材6に覆われて接続部材10や排水栓本体4は浴槽Bの使用者から見ることはできない。また、排水装置排水口3が開口している場合でも、直上方向など、ほとんどの場合において、槽体排水口1が弁部材6に覆われているため、接続部材10や排水栓本体4は浴槽Bの使用者から見ることはできない。
レリースワイヤ9は、側面方向に可撓性を備え軸方向に剛性を備えた中空のアウターチューブ9aと、該アウターチューブ9a内部に収納され、軸方向に摺動自在に動作するインナーワイヤ9bと、インナーワイヤ9bの一方の端部に備えられ、その先端が上記弁体6aの嵌合部6bに嵌合する弁軸部9cと、インナーワイヤ9bを操作部側に付勢する戻りスプリング(図示せず)と、からなる。
更にこの実施例では、レリースワイヤ9の弁軸部9cを備えない側の端部に、インナーワイヤ9bに当接する操作軸9eを備えた、支持機構部9dを備えてなる。該支持機構部9d内には、スラストロック機構と呼ばれる、操作軸9eに押し込み操作を加える毎に、操作軸9eを前進(降下)して固定/固定を解除してレリースワイヤ9のインナーワイヤ9bに付勢されて後退(上昇)、を繰り返す機構を内蔵してなる。
操作部は、段落0027に記載した第一実施例の操作部本体8、接続アダプター14、操作部側C字リング21、ボタン部材22と同様の部材から構成されてなる。
ガイド管15は、軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えた塩化ビニールからなる長い筒状の部材であって、一端はエルボ部材の挿通筒20に、他端は操作部本体8の下端部分に、それぞれ接続される。
【0033】
以上のように構成した本発明の第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして槽体である浴槽Bに施工・取り付けされる。尚詳述はしないが、部材同士の接続箇所において、水密性が必要とされる部分にはパッキングなどを用いて水密的な接続が行われる。
まず工場等において、槽体排水口1に接続部材10を、浴槽Bの操作部取付孔7に接続アダプター14を、それぞれ取付固定する。槽体排水口1と接続部材10との接続においては、接続部材10を浴槽Bの下方に配置した上で、冶具などを利用し、槽体排水口1と排水装置排水口3とを同心円状に配置し、フランジ部18の開口を介してビス部材16をビス穴部17に螺合させ、接続部材10を浴槽Bの下方から取り付け固定する。
また、同じく工場にて、以下の手順にて、遠隔操作式排水栓装置の一部の組み立てを行う。
まず操作部本体8の挿通筒20と、操作部本体8の下端とを、ガイド管15で接続する。
次に、レリースワイヤ9の弁軸部9cを備えた端部を操作部本体8から挿入し、弁軸部9cが、ガイド管15と挿通筒20を介し、支持機構部9dが操作部本体8内部に収納固定されるまで押し込む。この時、排水栓本体4内部に弁軸部9cが配置される。
この状態より排水装置排水口3からレリースワイヤ9の先端を引き上げ、ホルダー部12の第一円弧ガイド上にレリースワイヤ9を配置する。次に円弧ガイド部材26をホルダー部12に覆い被せるように配置して、第一円弧ガイドと第二円弧ガイドとでレリースワイヤ9を挟持するようにする。更にレリースワイヤ9端部の弁軸部9cにキャップ部材27の開口を挿通させた上で、ホルダー部12及び円弧ガイド部材26の上端に嵌合させて、第一円弧ガイドと第二円弧ガイドとがレリースワイヤ9を挟持した状態で固定する。
この状態は、排水栓本体4と操作部本体8とにそれぞれレリースワイヤ9端部を接続固定した状態である。
これらの浴槽Bや遠隔操作式排水栓装置に対する作業は工場で行われるため、作業空間を広く取ることができ、また作業を容易化する作業台などを設置し、また機材の揃った環境で行うことができる。更に、遠隔操作式排水栓装置の組み立て自体も、浴槽Bに接続していないことから、排水栓本体4や操作部本体8などの部材を、作業者が視認しやすく作業しやすい手元に置き、且つ作業しやすい位置・角度に配置したり移動・回転させる等しながら作業を行うことができる。このため、この段階までの遠隔操作式排水栓装置の組み立て作業は、従来例に比較して遙かに容易とすることができる。このようにして、第二実施例の遠隔操作式排水栓装置の排水栓本体4側は、
図11の状態まで組み立てられる(操作部側は
図4と同様なので略す)。
【0034】
次に、上記段落0033の段階まで組み立てられた浴槽B及び遠隔操作式排水栓装置と、その他の部材を、施工現場に搬入する。施工現場では、排水栓本体4側、操作部側にそれぞれ以下のような作業が行われる。
排水栓本体4側では、排水栓本体4の上面の開口に、接続部材10の下端部分を挿入し、排水栓本体4の排水栓側係合部24と、接続部材10の排水栓側係合部24とを当接させる。更に排水栓側C字リング28を両排水栓側係合部24と係合させ、排水栓本体4と接続部材10とを接続固定する。
このような接続を行う事で、接続部材10と排水栓本体4は高さ方向に対しては常に同じ高さ位置、即ち操作部本体8の操作部側係合部23と、接続アダプター14の操作部側係合部23とが当接した状態となる高さ位置に接続される。このため、接続部材10に設けられた止水面2に対して、排水栓本体4は定まった高さ位置に配置される。
操作部側では、操作部本体8の上端の操作部側係合部23と、接続アダプター14下端の操作部側係合部23とを当接させた上で、操作部側C字リング21をそれぞれの操作部側係合部23と係合させ、操作部本体8と接続アダプター14とを接続固定する。
その後、排水栓本体4の排出口19に床下配管への配管を接続した上で、浴槽Bを設置箇所に設置し、弁部材6の嵌合部6bにレリースワイヤ9端部の弁軸部9cを、操作軸9eにボタン部材22を、それぞれ嵌合させて、第二実施例の遠隔操作式排水栓装置の施工が完了する。
【0035】
上記のように取り付けられた第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、段落0030に記載した第一実施例と同様の操作を行うことで、遠隔操作的に、
図8に示した閉口状態と、
図9に示した開口状態を選択でき、排水装置排水口3の開口/閉口を行うことができ、開口時には浴槽B内の排水を排出することができる。
【0036】
また、本第二実施例では、第一円弧ガイドと、第二円弧ガイドとでレリースワイヤ9端部を挟持した状態としている。第一実施例のように、支持部材11と接続部材10との間に特にガイド機構が無い遠隔操作式排水栓装置の場合、
図7に示したように遠隔操作式排水栓装置の使用等によってレリースワイヤ9に多少とも応力が働くと、レリースワイヤ9が支持部材11との接続部分で折れ曲がり、応力が強いとレリースワイヤ9が破損する「挫屈」と呼ばれる現象を生じることがあるが、本第二実施例の遠隔操作式排水栓装置では、第一円弧ガイドと、第二円弧ガイドとでレリースワイヤ9端部を挟持した状態としているため、レリースワイヤ9には折れ曲がり部分が生じることなく、第一円弧ガイド及び第二円弧ガイドに沿った滑らかな円弧を描くため、第一実施例に比べて遙かに挫屈現象が生じにくくなっている。
【0037】
また、上記のように構成した第二実施例の遠隔操作式排水栓装置において、弁部材6、ボタン部材22、円弧ガイド部材26、レリースワイヤ9等に破損が生じた場合、以下のような手順で部材を取り外し、破損のない同部品と交換できる。
まず弁部材6及びボタン部材22をレリースワイヤ9より脱着する。次いで、キャップ部材27を取り外し、ホルダー部12から円弧ガイド部材26を離間させて、レリースワイヤ9と排水栓本体4との接続を解除する。キャップ部材27、円弧ガイド部材26は、槽体排水口1から浴槽B内に引き上げる。このようにして、排水栓本体4側は
図12に示したような状態となる。
次に、支持機構部9dと操作部本体8の嵌合を解除し、接続アダプター14の上方からレリースワイヤ9を引き上げる。。このようにして、操作部側は
図6に示したような状態となる。
これらの手順で部材を取り出し、必要に応じて部材の交換を行った上で、逆の手順により遠隔操作式排水栓装置を再度組み立てる。つまり、レリースワイヤ9を接続アダプター14の上方から挿入し、ガイド管15を介して先端を排水栓本体4内に配置する。レリースワイヤ9先端を再度ホルダー部12と円弧ガイド部材26にて挟持した状態で、キャップ部材27をホルダー部12と円弧ガイド部材26に嵌合させてレリースワイヤ9端部を排水栓本体4に接続固定する。更に弁部材6とボタン部材22をレリースワイヤ9に接続して、遠隔操作式排水栓装置の部材交換が完了する。
これらの作業は、全て浴槽Bの上面からの作業で行うことができ、施工が完了し、容易に浴槽Bの裏面側に対して作業が行えない場合にも支障無く実施することができる。
【0038】
次に、本発明の第三実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図13乃至
図19に示した、本発明の第三実施例の遠隔操作式排水栓装置は、請求項1、請求項2、請求項4、請求項8乃至請求項12に対応する実施例であって、以下に記載する、槽体としての浴槽B、排水栓本体4、レバー機構部材13、接続部材10、排水栓側C字リング28、弁部材6、レリースワイヤ9、操作部、ガイド管15、から構成される。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、底面には浴槽B内の排水を排出するための、平面視円形を成す槽体排水口1を、また浴槽Bの開口周縁には、操作部を取り付けるための操作部取付孔7を備えてなる。また、槽体排水口1の周縁下面及び操作部取付孔7には後述するビス部材16と螺合するビス穴部17を、それぞれ設けてなる。
排水栓本体4は、有底略円筒形状を成す部材であって、上縁には外方向に突出した排水栓側係合部24が備えられてなる。
また、排水栓本体4の下方の側面方向には、槽体排水口1及び排水装置排水口3を通過した排水を排出する排出口19と、レリースワイヤ9を挿通する為の挿通口20aを備えた挿通筒20を備えてなる。
また、排水栓本体4の底面には、レバー機構部材13とで挟持することで、レリースワイヤ9端部を水平を向いた状態で接続固定する接続固定部29が備えられてなる。
レバー機構部材13は施工完了時排水栓本体4の接続固定部29上にビス部材16にて固定される部材であって、レリースワイヤ9端部を接続固定部29と挟持することで接続固定すると共に、インナーワイヤ9bの進退に応じて回動することで、その先端が上下動するレバー部材13aを備えてなる。
接続部材10は、浴槽Bの下面であって、槽体排水口1の近傍に取り付けられる略円筒形状の部材であって、内周部分には排水装置排水口3を形成し、また上縁部分の外周方向には、側面に突出した弁部材6が当接する止水面2と、該止水面2の更に外周側にビス部材16を挿通するための開口を備えたフランジ部18を備えてなる。
また、外側面部分のほぼ中間部分に、外方向に突出したリブからなる排水栓側係合部24を備えてなる。尚、
図13等に示したように、この実施例においては、止水面2の外縁の径は槽体排水口1の内径と同じかそれよりも小径に形成され、且つ槽体排水口1と止水面2とは同心円状に配置されるため、施工完了時止水面2は槽体排水口1の内周縁よりも内側方向に突出した位置に配置される。
排水栓側C字リング28は断面内向きに開口したコの字を成す、平面視C字形状の部材であって、排水栓本体4と接続部材10にそれぞれ設けられた排水栓側係合部24と係合して、排水栓本体4と接続部材10とを接続固定する部材である。
弁部材6は、上記槽体排水口1の内径よりも若干大径な外径を有する円盤状の弁体6aと、該弁体6aの下面中央より垂下され、レバー部材13a上に配置される弁軸部9cと、弁軸6dと排水装置排水口3の間に配置されて、弁部材6が昇降に際して傾斜しないようにガイドする目皿部材6eと、よりなる。この弁部材6の下面の一部に、止水面2と当接して排水装置排水口3を閉口する当接部6cを設けてなり、このため、排水装置排水口3が閉口している場合は弁部材6に覆われて接続部材10や排水栓本体4は浴槽Bの使用者から見ることはできない。また、排水装置排水口3が開口している場合でも、直上方向など、ほとんどの場合において、槽体排水口1が弁部材6に覆われているため、接続部材10や排水栓本体4は浴槽Bの使用者から見ることはできない。
レリースワイヤ9は、側面方向に可撓性を備え軸方向に剛性を備えた中空のアウターチューブ9aと、該アウターチューブ9a内部に収納され、軸方向に摺動自在に動作するインナーワイヤ9bと、インナーワイヤ9bを操作部側に付勢する戻りスプリング(図示せず)と、からなる。
更にこの実施例では、レリースワイヤ9の一端に、スラストロック機構と呼ばれる、操作軸9eを備え、該操作軸9eに押し込み操作を加える毎に、操作軸9eを前進(降下)して固定/固定を解除してレリースワイヤ9のインナーワイヤ9bに付勢されて後退(上昇)、を繰り返す機構を内蔵した、支持機構部9dを備えてなる。
操作部は、以下に記載する操作部本体8と、接続アダプター14と、操作部側C字リング21と、ボタン部材22と、からなる。
操作部本体8は、略円筒形状にして、円筒形状の上端部分の外側面には周縁に沿って連続して外側方向に突出した操作部側係合部23を設けてなり、内部にレリースワイヤ9を接続した支持機構部9dを、着脱自在に収納固定する。
接続アダプター14は、操作部取付孔7の周縁の下面に取り付けられる略円筒形状の部材であって、上縁部分の外周方向にビス部材16を挿通するための開口を備えた鍔部14aを備えてなる。
また、外側面部分のほぼ中間部分に、外方向に突出したリブからなる操作部側係合部23を備えてなる。
操作部側C字リング21は断面内向きに開口したコの字を成す、平面視C字形状の部材であって、操作部本体8と接続アダプター14にそれぞれ設けられた操作部側係合部23と係合して、操作部本体8と接続アダプター14とを接続固定する部材である。
ボタン部材22は、接続アダプター14内周面よりも若干小径な外径を有した円板状の部材であって、下面中央にて操作軸9eと着脱自在に嵌合固定され、施工完了時接続アダプター14内部を自在に上下動するように構成されてなる。
ガイド管15は、ジャバラ構造とすることで、軸方向に伸縮性を、側面方向に可撓性を備えた塩化ビニールからなる長い筒状の部材であって、一端をエルボ部材の挿通筒20に、他端を操作部本体8の下端部分に、それぞれ接続してなる。
【0039】
以上のように構成した本発明の第三実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして槽体である浴槽Bに施工・取り付けされる。尚詳述はしないが、部材同士の接続箇所において、水密性が必要とされる部分にはパッキングなどを用いて水密的な接続が行われる。
まず工場等において、槽体排水口1に接続部材10を、浴槽Bの操作部取付孔7に接続アダプター14を、それぞれ取付固定する。槽体排水口1と接続部材10との接続においては、接続部材10を浴槽Bの下方に配置した上で、冶具などを利用し、槽体排水口1と排水装置排水口3とを同心円状に配置し、フランジ部18の開口を介してビス部材16をビス穴部17に螺合させ、接続部材10を浴槽Bの下方から取り付け固定する。同様に、操作部取付孔7と接続アダプター14との接続においては、接続アダプター14を操作部取付孔7の下方に配置した上で、冶具などを利用し、操作部取付孔7と接続アダプター14とを同心円状に配置し、鍔部14aの開口を介してビス部材16をビス穴部17に螺合させ、接続アダプター14を浴槽Bの下方から取り付け固定する。
また、同じく工場にて、以下の手順にて、遠隔操作式排水栓装置の一部の組み立てを行う。
まず操作部本体8の挿通筒20と、操作部本体8の下端とを、ガイド管15で接続する。
次に、レリースワイヤ9の支持機構部9dを備えない側の端部を操作部本体8から挿入し、レリースワイヤ9端部を、ガイド管15と挿通筒20を介して押し込む。最終的には、支持機構部9dが接続アダプター14内部に収納固定されるまで押し込むことで、排水栓本体4内部にレリースワイヤ9の端部が配置される。
この状態よりレリースワイヤ9端部を接続固定部29上に配置し、上方からレバー機構部材13を覆い被せるように配置して、接続固定部29とレバー機構部材13とでレリースワイヤ9端部を挟持するようにする。更にレバー機構部材13をビス部材16で排水栓本体4に固定する。
この状態は、排水栓本体4と操作部本体8とにそれぞれレリースワイヤ9端部を接続固定した状態である。
これらの浴槽Bや遠隔操作式排水栓装置に対する作業は工場で行われるため、作業空間を広く取ることができ、また作業を容易化する作業台などを設置し、また機材の揃った環境で行うことができる。更に、遠隔操作式排水栓装置の組み立て自体も、浴槽Bに接続していないことから、排水栓本体4や操作部本体8などの部材を、作業者が視認しやすく作業しやすい手元に置き、且つ作業しやすい位置・角度に配置したり移動・回転させる等しながら作業を行うことができる。このため、この段階までの遠隔操作式排水栓装置の組み立て作業は、従来例に比較して遙かに容易とすることができる。このようにして、第三実施例の遠隔操作式排水栓装置の排水栓本体4側は、
図17の状態まで組み立てられる(操作部側は、一部部材構成・形状は異なるが、
図4とほぼ同様なので略す)。
【0040】
次に、上記段落0039の段階まで組み立てられた浴槽B及び遠隔操作式排水栓装置と、その他の部材を、施工現場に搬入する。施工現場では、排水栓本体4側、操作部側にそれぞれ以下のような作業が行われる。
排水栓本体4側では、排水栓本体4の上面の開口に、接続部材10の下端部分を挿入し、排水栓本体4の排水栓側係合部24と、接続部材10の排水栓側係合部24とを当接させる。更に排水栓側C字リング28を両排水栓側係合部24と係合させ、排水栓本体4と接続部材10とを接続固定する。
このような接続を行う事で、接続部材10と排水栓本体4は高さ方向に対しては常に同じ高さ位置、即ち操作部本体8の操作部側係合部23と、接続アダプター14の操作部側係合部23とが当接した状態となる高さ位置に接続される。このため、接続部材10に設けられた止水面2に対して、排水栓本体4は定まった高さ位置に配置される。
操作部側では、操作部本体8の上端の操作部側係合部23と、接続アダプター14下端の操作部側係合部23とを当接させた上で、操作部側C字リング21をそれぞれの操作部側係合部23と係合させ、操作部本体8と接続アダプター14とを接続固定する。
その後、排水栓本体4の排出口19に床下配管への配管を接続した上で、浴槽Bを設置箇所に設置し、排水装置排水口3a内に目皿部材6e及び弁部材6を配置する。この際は、レバー部材13aの先端上方に、弁軸6dが来るように配置する。また、操作部側においては、操作軸9eにボタン部材22を嵌合させて、
図13に示したように、第三実施例の遠隔操作式排水栓装置の施工が完了する。
【0041】
上記のように取り付けられた第三実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように操作することで、遠隔操作により排水装置排水口3を開閉できる。
まず、
図14のように、弁部材6が降下し、弁部材6の当接部6cが止水面2に当接している状態とする。この状態において操作部のボタン部材22に押し込み操作を加えると、操作軸9eがインナーワイヤ9b側に突出し、それに伴ってインナーワイヤ9bがアウターチューブ9aに対し排水装置排水口3側へ突出し、レバー部材13aの下面に当接する。更にインナーワイヤ9bが突出すると、レバー部材13aの下端がインナーワイヤ9b先端に押し上げられ、レバー部材13aが回動してその先端を上方に移動させる。これにより、レバー部材13aの先端に配置されている弁軸6dが目皿部材6eに沿いつつ上昇して弁部材6を押し上げて、止水面2から当接部6cが離間され、
図15のように、排水装置排水口3を開口する。スラストロック機構により、この状態にて操作軸9eが固定され、排水装置排水口3の開口状態が維持される。
この状態から再度操作部のボタン部材22に押し込み操作を加えると、スラストロック機構による操作軸9eの固定が解除され、弁部材6の自重及び戻りスプリングの作用によりインナーワイヤ9bが操作部側に後退するため、レバー部材13aが開口時とは逆方向に回動してその先端を下方に移動させる。これにより、弁部材6が降下して当接部6cと止水面2とが当接し、排水装置排水口3が閉口した
図14の状態に戻る。
以後、同様の操作を繰り返すことで、遠隔操作的に、排水装置排水口3の開口/閉口を行うことができ、開口時には浴槽B内の排水を排出することができる。
【0042】
また、本第三実施例では、接続固定部29とレバー機構部材13とでレリースワイヤ9端部を水平方向を向いた状態にて挟持固定している。排水栓本体4内において、レリースワイヤ9には曲がり部分が存在しないため、第一実施例及び第二実施例と比べて遙かに挫屈現象が生じにくくなっている。
また、本第三実施例では、接続アダプター14を操作部取付孔7の下方から取り付けることで、浴槽Bの開口周縁に接続アダプター14の一部が配置されることが無くなり、第一実施例又は第二実施例のような段差や溝が形成される事もなくなった。
このため意匠性や清掃性が、第一実施例また第二実施例の遠隔操作式排水栓装置の操作部よりこ向上している。
【0043】
また、上記のように構成した第三実施例の遠隔操作式排水栓装置において、弁部材6、ボタン部材22、レバー機構部材13、レリースワイヤ9等に破損が生じた場合、以下のような手順で部材を取り外し、破損のない同部品と交換できる。
まず弁部材6、目皿部材6e、及びボタン部材22をレリースワイヤ9より脱着する。次いで、排水栓本体4とレバー機構部材13との接続を行っているビス部材16の螺合を解除して、ビス部材16及びレバー部材13aを取り外し、レリースワイヤ9と排水栓本体4との接続を解除する。ビス部材16、レバー機構部材13は、槽体排水口1から浴槽B内に引き上げる。このようにして、排水栓本体4側は
図18に示したような状態となる。
次に、支持機構部9dと操作部本体8の嵌合を解除し、接続アダプター14の上方からレリースワイヤ9を引き上げる。(操作部側は、一部部材構成・形状は異なるが、
図6とほぼ同様な状態となる)。
これらの手順で部材を取り出し、必要に応じて部材の交換を行った上で、逆の手順により遠隔操作式排水栓装置を再度組み立てる。つまり、レリースワイヤ9を接続アダプター14の上方から挿入し、ガイド管15を介して先端を排水栓本体4内に配置する。レリースワイヤ9先端を再度接続固定部29とレバー機構部材13とで挟持し、更にレバー機構部材13をビス部材16で排水栓本体4に固定することで、レリースワイヤ9端部を排水栓本体4に接続固定する。更に弁部材6及び目皿部材6eを排水装置排水口3に配置し、ボタン部材22をレリースワイヤ9に接続して、遠隔操作式排水栓装置の部材交換が完了する。
これらの作業は、全て浴槽Bの上面からの作業で行うことができ、施工が完了し、容易に浴槽Bの裏面側に対して作業が行えない場合にも支障無く実施することができる。
【0044】
また、本第三実施例では、レリースワイヤ9端部は、排水栓本体4の底面に固定される構造であり、例えば第一実施例と比べて、レリースワイヤ9の長さが、排水栓本体4の底面から排水装置排水口3までの長さ分短く構成されている。このため、レリースワイヤ9端部を槽体排水口1から引き上げようとした場合などに、排水栓本体4の底面から排水装置排水口3までの長さ分、第一実施例の遠隔操作式排水栓装置と比べて引き出しにくい構造であると言える。そこで、この第三実施例では、ガイド管15をジャバラ構造とすることで、軸方向に伸縮性を持たせ、ガイド管15を軸方向に縮小させることで、その分レリースワイヤ9の引き出し長さを長くし、段落0039に記載した組み立て時や、段落0043に記載した部材交換時などにおいて、作業性を良好なものとしている。
【0045】
本発明の実施例は以上のようであるが本発明は上記実施例に限定される物ではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、槽体として浴槽Bを採用しているが、本発明はこれに限定される物ではなく、洗面台の洗面ボウルや、流し台のシンク等、他の槽体に本発明の遠隔操作式排水栓装置を採用しても構わない。
また、上記実施例の遠隔操作式排水栓装置では、スラストロック機構と戻りスプリングを使用し、ボタン部材22に押し操作を繰り返すことにより排水装置排水口3を開閉する構成としてなるが、操作部のボタン部材22をツマミに換えて、ツマミの押し引きによりインナーワイヤ9bを進退させ、弁部材6を昇降させるような構成としても構わない。
また、上記実施例では、接続部材10を使用した場合は止水面2を接続部材10に設けてなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、
図19に示したように、接続部材10を採用した場合でも、排水栓本体4側に止水面2を構成しても構わない。
また、弁部材6を昇降させる機能についても、
図19に示した実施例のように、弁軸6dを備えた弁部材6の弁軸6d下端に、傾斜面を備えたレバー部材13aを配置し、これをインナーワイヤ9bに連動して傾斜方向に沿って進退動作させることで、弁部材6の弁軸6dを上下動させ、弁部材6を昇降させることで排水装置排水口3を開閉するように構成しても良い。