特許第5948824号(P5948824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948824
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G04B 43/00 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
   G04B43/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-263167(P2011-263167)
(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公開番号】特開2013-113825(P2013-113825A)
(43)【公開日】2013年6月10日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川岡 裕康
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−137702(JP,A)
【文献】 特開2007−78504(JP,A)
【文献】 特開昭51−24241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00−99/00
G04C 1/00−99/00
G04G 3/00−99/00
H01H13/00−13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器モジュールと、
前記機器モジュールを収納する外装部と、
前記外装部に設けられた、シャフトを備えた操作子と、
前記機器モジュール側に設けられた第1の電気接点部材と、
基端が前記機器モジュールに固定され、自由端側に前記第1の電気接点部材に対し接離可能な第2の電気接点部材が設けられている導電性弾性部材と、
前記導電性弾性部材のうち、前記第2の電気接点部材と前記操作子のシャフトとの間に配置され、前記シャフトと前記導電性弾性部材との擦れにより発生する削れ粉を捕獲する粘着性の捕獲層と、
を備え
前記捕獲層は、前記シャフトと前記導電性弾性部材との接触を可能とする開口部を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記捕獲層は、前記導電性弾性部材のうち、前記シャフトと対向する部分を覆っていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記捕獲層は、基体層の両側に粘着層が設けられた三層構造で構成されていることを特徴とする請求項または請求項に記載の電子機器。
【請求項4】
前記捕獲層は、単層構造の粘着層で構成されていることを特徴とする請求項または請求項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作子によるスイッチ機能を備えた時計等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計ケースに押しボタンと称されている操作子が設けられ、内部に時計モジュールが配置され、時計モジュールが、ハウジングと、側端部に第1の電気接点部材が形成された回路基板と、ハウジングに係合するフック部とを備え、フック部には、先端部に第2の電気接点部材が形成された弾性部材が設けられた時計が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−78504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、時計等の電子機器における機能向上、多機能化の一環として、過酷な環境においても使用できる耐衝撃性に優れた製品づくりが求められている。一方、外的環境の中でも特に「振動」への対策も非常に重要である。振動は瞬間的に加速度が加わる落下衝撃よりも継続的な加速度が長時間加わるため、電子機器への影響は非常に大きい。時計が振動を受ける例としては、使用者が時計を装着し、自動車やバイクでアウトドア走行をしたり、削岩機を操作したりする場合等が挙げられる。
【0005】
このような持続的な振動が加わることで、金属同士が接触している部分が擦れて削られてしまい、内部で飛散した金属粉によって時計内部の電気回路がショートして、うまく正常に動作しなくなったり、時計の文字板等の外観部分に飛散した金属粉が露出して、外観的に問題となったりするという不具合が発生するおそれがある。時計は金属同士がどうしても接触している部分が多く、非常に精巧に作られているため、金属粉の発生や飛散は当然避けなくてはならない。
【0006】
しかしながら、例えば時計において、耐衝撃性を追求するために、時計モジュールを外殻たる時計ケースから独立した内部構造にするといった技術開発により耐衝撃性を向上させることは時計モジュールと時計ケースとの間に隙間を積極的に作ることを意味する。また、そのような耐衝撃性とは関係なしに、時計ケースと時計モジュールの間に隙間がないと組み立てできないという事実も存在する。その場合に、内部で発生し、飛散するおそれのある金属粉が時計の文字板等の外観部分に露出してしまうことを防止することとは相反する事象であるという課題が存在していた。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、金属同士の擦れにより発生する削れ粉の内部飛散を防止することができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、
機器モジュールと、
前記機器モジュールを収納する外装部と、
前記外装部に設けられた、シャフトを備えた操作子と、
前記機器モジュール側に設けられた第1の電気接点部材と、
基端が前記機器モジュールに固定され、自由端側に前記第1の電気接点部材に対し接離可能な第2の電気接点部材が設けられている導電性弾性部材と、
前記導電性弾性部材のうち、前記第2の電気接点部材と前記操作子のシャフトとの間に配置され、前記シャフトと前記導電性弾性部材との擦れにより発生する削れ粉を捕獲する粘着性の捕獲層と、
を備え
前記捕獲層は、前記シャフトと前記導電性弾性部材との接触を可能とする開口部を有することを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従うと、操作子のシャフトと電気接点部材との擦れにより発生する削れ粉の飛散を防止することができる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電子時計の正面図である。
図2図1の電子時計の裏蓋を外した状態の要部を拡大して示す底面図である。
図3図1の電子時計の回路押え部材を示した図である。
図4図3の電子時計の回路押え部材の斜視図である。
図5図4の回路押え部材に設けられている捕獲層の先端部分を示す要部斜視図である。
図6】捕獲層における開口部内に操作子のシャフトを挿入した状態を示す断面図である。
図7】(A)〜(H)は捕獲層における開口部の各種の形状を示す断面図である。
図8】(A)〜(C)は捕獲層の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は電子時計100の正面図である。この電子時計100は時計ケース1を備えている。この時計ケース1は、全体がほぼ円形状に形成されており、上面部には時計ガラス2が取り付けられている。また、時計ケース1の側壁部の12時側位置および6時側位置には、それぞれバンド取付け部3、3が設けられている。さらに、時計ケース1の側壁部の3時側位置には操作子4、5が設けられ、9時側位置には操作子6,7が設けられている。これら操作子4、5、6、7は、モード切替えスイッチ、時刻修正スイッチなどの各種スイッチに用いられる操作子である。
【0013】
図2は、図1の電子時計100の裏蓋を外した状態の要部を拡大して示す底面図である。
時計ケース1の内部は円形状の空間に形成されており、図2に示すように、その内部空間に時計モジュール8が収納されている。この時計モジュール8は回路押え部材9、ハウジング10および回路基板11を備えている。操作子5は、時計ケース1の内外に挿通自在に設けられ、操作子5のシャフト5aの先端が時計モジュール8に近接して配置されている。そして、外部操作を時計モジュールに伝達する役割を有する。操作子4、6、7も操作子5と同様に、時計ケース1の内外に挿通自在に設けられ、それらのシャフトの先端が時計モジュール8に近接して配置されている。また、20は、文字板の脚部である。
【0014】
図3は、図1の電子時計100の回路押え部材9を示した図である。図4は、図3の回路押え部材9の斜視図である。
回路押え部材9は、金属(例えばステンレス材)からなり回路基板11のGNDに繋がれている。この回路押え部材9は、図3図4に示すように、4つの操作子4〜7に対応して、4ケ所の位置で上方に屈曲されて起立するフック部9aを備えている。フック部9aには係止孔9cが形成されている。そして、このフック部9aが、後述するように、ハウジング10の外周面から突出する爪10dに係合することで、回路押え部材9はハウジング10に取り付けられる。
【0015】
これらのフック部9aには、ハウジング10の周方向に延びる導電性弾性部材9bが設けられている。この導電性弾性部材9bは前述のように金属(例えばステンレス材)であり、導電性を有している。これらの弾性部材9bは、操作子4〜7のいずれか、例えば操作子5が押し込まれた際に、そのシャフト5aによって回路基板11側へ押されて弾性変形するようになっている。
すなわち、導電性である弾性部材9bは、その基端が時計モジュールの構成要素である回路基板のフック部に固定される一方、他端は自由端になっている。各弾性部材9bは自由端側に電気接点部材9dを有している。各電気接点部材9dは、対応する操作子に向かって凹、回路基板11に向かって凸となる曲げ部9Aを備えている。
【0016】
図2に戻り、ハウジング10には、フック部9aの係止孔9cに係合する爪10dが形成されている。そして、フック部9aの係止孔9cにハウジング10の爪10dを係合させることによって回路押え部材9はハウジング10に取り付けられる。ハウジング10は、回路基板9を挟んでいる。
【0017】
回路基板11には各種回路や導電パターンが設けられている。そして、回路基板11の側端部には操作子4〜7に対応して例えば金メッキからなる電気接点部材11aが形成されている。回路基板11の電気接点部材11aは、図2に示すように弾性部材9bの電気接点部材9dに対応している。そして、操作子(例えば押しボタン5)を使用者が押込むと、シャフト5aの押込みによる押圧により弾性部材9bは弾性変形を受け、その曲げ部9Aの電気接点部材9dは回路基板11の電気接点部材11aと電気接続されるように構成されている。すなわち、弾性部材9bの電気接点部材9dは、電気接点部材11aに対し接触可能に構成されている。
【0018】
また、それぞれの弾性部材9bの時計ケース1側の側面、すなわち、電気接点部材9dと反対側の、弾性部材の面には、粘着性を有する捕獲層21が設けられている。捕獲層21の厚みは、例えば弾性部材9bの厚み0.4〜0.5mmに対し、0.1〜1mmの範囲で選択される。捕獲層21の短手方向の寸法は、対応する弾性部材9bの幅とほぼ同じであり、捕獲層21の長手方向は、弾性部材9bの根本から曲げ部9Aの先端までを覆っている。そして、図2および図4で示されるように、部分的に捕獲層の無い領域が形成されている。この領域はほぼ丸孔に近く、捕獲層21の曲げ部9A側端面の一部が開いている円形状の切り欠きである。部分的に捕獲層の無い領域を、ここでは、開口部21aと称する。この開口部21aの形状および寸法は、例えば操作子5が押されてシャフト5aが変位した際に、シャフト5aと弾性部材9bとが接触可能にし、捕獲層21に接触しないような大きさに設定されている。
【0019】
図5は、図4の回路押え部材に設けられている捕獲層の先端部分を示す要部斜視図である。捕獲層21は、粘着層、基体層、粘着層からなる3層構造(基体層の両側に粘着層が設けられた三層構造)を有している。また開口部21aの形状は、円形状の切り欠きであり、捕獲層21の曲げ部9A側端面の一部が開いている。
【0020】
次に、捕獲層21の形成方法について説明する。捕獲層21は、例えば、両面テープを用いて形成される。両面テープとは、帯状の基材の両面に粘着剤が塗布されており、巻かれた時に外になる側に両面剥離紙が貼り付けられて、例えば巻物状に巻かれているものである。両面テープの使用方法は、まず巻物状のテープから外側の剥離紙と内側の両面テープを一体のまま引っ張り、適当な長さで切り取る。これの粘着面を被着物にしっかりと貼り付けたあとに剥離紙を剥がす。そうすると、三層構造である粘着層、基体層、粘着層の粘着層21が形成される。また、弾性部材9bに貼り付ける前の両面テープに開口部21aに対応する例えば切り欠きを形成しておくことで、開口部21aを設けることができる。
【0021】
両面テープの基材には、アクリルフォーム(アクリル合成樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡状(フォーム)に成形されたもの)や発泡ポリオレフィン、PETフィルム等を用いることができる。また、粘着層にはアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤等の粘着剤を用いることができる。
【0022】
次に、本実施形態に係る電子時計100動作について説明する。これ以降、4つの操作子とそのシャフトの代表として、操作子5およびそのシャフト5aで説明する。
【0023】
使用者がモード切替えや時刻修正等の目的で電子時計100の操作子5を押し込むと、押し込まれた操作子5のシャフト5aは弾性部材9bを押し込んで、弾性部材9bを回路基板11側へ弾性変形させる。弾性部材9bは操作子5aのシャフトの押圧を直接受ける。そして、GND電位である弾性部材9bの電気接点部材9dは、回路基板11の電気接点部材11aと電気接続する。そのようにして、操作子5は外部操作を時計モジュールに伝達する役割を有する。
【0024】
このような通常の使用の他に、使用者が電子時計100を装着し、自動車やバイクでアウトドア走行をしたり、削岩機を操作したりするような使用の場合が有る。その際、持続的な振動により操作子5が振動し、シャフト5aと弾性部材9bとが擦れあう。その結果、シャフト5aや弾性部材9bが擦れて削られた削れ粉が発生する。操作子5のシャフト5aの軸と弾性部材9bの面とが直角に配置されていれば、シャフト5aはその先端が平行に削れ、操作子5のシャフト5aの軸と弾性部材9bの面とが斜めに配置されていれば、弾性部材9bに対してシャフト5aがズレながら当たることで、シャフト5aはその先端が斜めに削れるという現象が発生する。
【0025】
本実施形態においては、シャフト5aと弾性部材9bとが擦れあう部分の近傍に設けられた粘着性を有する捕獲層21によって、擦れて削られた削れ粉である金属粉を捕獲する。図6は、捕獲層における開口部内に操作子のシャフトを挿入した状態を示す断面図である。図6では、シャフト5aの軸と弾性部材9bの面とが直角に配置されており、開口部21aの形状は円形状の切り欠きであり、捕獲層21の曲げ部9A側端面の一部が開いている。
【0026】
先ず、シャフト5aの先端と弾性部材9bとが接触して擦れ合うと、その部分から金属粉が発生する。発生した金属粉は、飛散するが、その方向は片側がシャフト5a、片側に弾性部材9bが配置されているため、捕獲層21の断面(丸孔の側面)方向に最も高い確率で飛散する。すると、金属粉は捕獲層21の断面でほぼ捕獲され、断面を越えた一部の金属粉は捕獲層21の表面で捕獲される。このようにして、発生した金属粉は捕獲層21により効果的に捕獲される。
【0027】
また、開口部21を設けているのは、捕獲層21である粘着剤の削れによる粘着性のゴミを発生させないためである。
【0028】
次に、開口部21aの形状は種々のものを適用することができる。図7の(A)〜(H)は、捕獲層21における開口部21aの形状を説明するための図である。
【0029】
図7のうち、(A)(B)(E)(F)は、シャフト5aの軸と弾性部材9bの面とが直角に配置されている場合を、図7のうち、(C)(D)(G)(H)の場合は、シャフト5aの軸と弾性部材9bの面とが斜めに配置されている場合を想定している。
【0030】
図7(A)は、図2図4に示された捕獲層21と同じものを表しており、その捕獲層21の開口部21aの形状は円形状の切り欠きであり、捕獲層21の曲げ部9A側端面の一部が開いている。図7(B)では、捕獲層21の開口部21aは閉じた丸孔である。これらの場合、開口部21aの円形の直径(D)は、シャフト5aの直径をdとした場合に例えば、D=1.1d〜1.5dに設定されることが望ましい。Dが小さすぎると、捕獲領域21とシャフト5aが接触し、Dが大きすぎると捕獲能力の低減を引き起こす。
【0031】
図7(C)では、捕獲層21の開口部21aは長円形の切り欠きであり、捕獲層21の曲げ部9A側端面の一部が開いている。図7(D)では、捕獲層21の開口部21aは長円形の孔である。図7(E)では、捕獲層21の開口部21aは4隅が丸くされた正方形の切り欠きであり、捕獲層21の曲げ部9A側端面の一部が開いている。図7(F)では、捕獲層21の開口部21aは4隅が丸くされた正方形の孔である。図7(G)では、捕獲層21の開口部21aは4隅が丸くされた長方形の切り欠きであり、捕獲層21の曲げ部9A側端面の一部が開いている。図7(H)では、捕獲層21の開口部21aは4隅が丸くされた長方形の孔である。これらの場合、図に示すように、弾性部材9bの幅方向に対応する開口部21aの幅(W)は、シャフト5aの直径をdとした場合に例えば、D=1.1d〜1.5dに設定されることが望ましい。
【0032】
[変形例]
以上説明した実施形態の電子時計100における捕獲層21の構造は、三層構造の粘着層、基体層、粘着層であり、開口部21aが設けられているが、これに限られない。捕獲層21のそれ以外の構造について、変形例として、以下に説明する。
【0033】
図8の(A)〜(C)は、捕獲層21の他の例を示す図である。図8(A)は、回路押え部材9の弾性部材9bのシャフト5a側の側面に単層の粘着層からなる捕獲層21を設けた例を示す図である。単層構造の捕獲層21の厚みは、0.1〜1mmの範囲で選択することができる。また捕獲層2のシャフト5aに対向する部分には開口部21aが形成されている。開口部21aの寸法・厚みは、実施形態に係る三層構造の捕獲層21の場合と同様である。
【0034】
単層構造の捕獲層21の作成は、芯となる基材がなく、粘着剤のみを両面剥離紙に乗せた構造の両面テープ(基材レス両面テープ)を用いることで可能である。また、炭層構造の捕獲層21は、弾性部材9bに所定のマスクを設け、粘着剤を吹き付け等で成膜した後、マスクを剥がすような製法で作成することもできる。
【0035】
図8(B)は、回路押え部材9の弾性部材9bのシャフト4a、5a側の側面に三層構造の粘着層、基体層、粘着層からなる捕獲層を設け、かつ、開口部21aを設けない例である。開口部21aを設けない点以外の項目(寸法、厚み)は、実施形態に係る捕獲層21と同様である。
【0036】
図8(C)は、回路押え部材9の弾性部材9bのシャフト4a、5a側の側面に単層の粘着層からなる捕獲層を設け、開口部21aを設けない例である。開口部21aを設けない点以外の項目(寸法、厚み)はそれぞれ、図8(A)の場合と同様である。
【0037】
次に、変形例における操作子5や弾性部材9bの動作について説明する。先ず、図8(A)で説明した単層の粘着層からなる捕獲層21を設けた例では、実施形態に係る捕獲層21の場合と同様である。
【0038】
次に、図8(B)、(C)の場合、すなわち、捕獲層21に開口部21aが無い場合の動作について説明する。捕獲層21の開口部21aがないので、弾性部材9bは、シャフト5aの押圧を捕獲層21を介して受け、金属同士の接触がない。したがって、例えばシャフト5aや弾性部材9bは、擦れによる金属粉の発生がない。シャフト5aや弾性部材9b近傍の捕獲層21の部分が仮に摩滅した後は、シャフト5aや弾性部材9bは擦れて金属粉が発生するが、発生した金属粉は、捕獲層21により効果的に捕獲される。
【0039】
以上、本実施形態に係る電子時計、およびその変形例について説明したが、本発明は、かかる実施形態、変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
この実施の形態の場合、シャフト5aと弾性部材9bとの擦れにより金属粉が発生した際の金属粉を捕獲層21により捕獲するようにしているが、非金属製のシャフトと弾性部材との擦れにより削れ粉が発生した際の削れ粉を捕獲層により捕獲するようにしてもよい。
また、この実施の形態の場合、電子時計100に適用しているが、これだけでなく、携帯電話、電子辞書などの各種の電子機器に適用することができる。
【0040】
以上のように、電子時計100等の電子機器において、時計モジュール8等の機器モジュールと、機器モジュールを収納する時計ケース1等の外装部と、外装部の内外に挿通自在に設けられ、外部操作を機器モジュールに伝達するシャフト付き操作子5と、機器モジュールに設けられた第1の電気接点部材11aと、基端が機器モジュールに固定される一方、自由端側に第2の電気接点部材9dが設けられ、第2の電気接点部材9dが第1の電気接点部材11aに対し接触可能に構成されている導電性弾性部材9bとを備え、導電性弾性部材9bの自由端側における第2の電気接点部材9dと反対側の面が、操作子5のシャフト5aと対向し、該シャフトの押圧により弾性変形を受け、導電性弾性部材9bの第2の電気接点部材9dが機器モジュールに設けられた第1の電気接点部材11aと接触するように構成され、第2の電気接点部材9dと反対側の、導電性弾性部材9bの面に、シャフト5aと導電性弾性部材9bの擦れにより発生する金属粉を捕獲する粘着性の捕獲層21が設けられていることにより、振動等による金属部分同士の接触・擦れで削られて発生するおそれのある金属粉が、捕獲層21により捕獲され、時計ケース1等の外装部内に飛散してしまうことがないという効果を奏する。したがって、金属粉が例えば時計ケース1内部に飛散せず、機器の接点不良やショートを防止することができる。金属粉の飛散を抑えることで、例えば、電子時計100においては、時刻ずれや針ずれ、歯車の停止を防ぐことができる。
【0041】
また、上記の構成において、捕獲層21は、シャフト5aと導電性弾性部材9bとが接触可能にするための開口部21aを有し、導電性弾性部材9bは操作子5のシャフト5aの押圧を直接受けることを特徴とする場合には、捕獲層21である粘着層の削れによる粘着性のゴミが発生することがない。
【0042】
また、上記の構成において、捕獲層21は、少なくともシャフト5aと接触可能な導電性弾性部材9bの部分を覆っており、導電性弾性部材9bは操作子5のシャフト5aの押圧を捕獲層21を介して受けることを特徴とする場合には、開口部21aを設ける場合よりも量産性がより高いので、安価に金属飛散防止を図ることができる。
【0043】
また、上記の構成および双方の場合において、捕獲層21は、基体層の両側に粘着層が設けられた三層構造で構成されていることを特徴とするので確実に捕獲層21を設けることができる。
【0044】
また、上記の構成および双方の場合において、捕獲層21は単層構造の粘着層で構成されていることを特徴とするので確実に捕獲層21を設けることができる。
【0045】
本発明の実施形態とその変形例を説明したが、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記]
<請求項1>
機器モジュールと、
前記機器モジュールを収納する外装部と、
前記外装部に設けられた、シャフトを備えた操作子と、
前記機器モジュール側に設けられた第1の電気接点部材と、
基端が前記機器モジュールに固定され、自由端側に前記第1の電気接点部材に対し接離可能な第2の電気接点部材が設けられている導電性弾性部材と、
前記導電性弾性部材のうち、前記第2の電気接点部材と前記操作子のシャフトとの間に配置され、前記シャフトと前記導電性弾性部材との擦れにより発生する削れ粉を捕獲する粘着性の捕獲層と、
備えていることを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記捕獲層は、前記シャフトと前記導電性弾性部材との接触を可能とする開口部を有することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
<請求項3>
前記捕獲層は、前記導電性弾性部材のうち、前記シャフトと対向する部分を覆っていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
<請求項4>
前記捕獲層は、基体層の両側に粘着層が設けられた三層構造で構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子機器。
<請求項5>
前記捕獲層は、単層構造の粘着層で構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0046】
1 時計ケース(外装部)
2 時計ガラス
3 バンド取付部
4、5、6、7 操作子
5a シャフト
8 時計モジュール(機器モジュール)
9 回路押え部材
9A 曲げ部
9a フック部
9b 導電性弾性部材
9d 第2の電気接点部材
10 ハウジング
10d 爪
11 回路基板
11a 第1の電気接点部材
20 脚部
21 捕獲層
21a 開口部
100 電子時計(電子機器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8