特許第5948940号(P5948940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948940
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20160623BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20160623BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20160623BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20160623BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20160623BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D119:00
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-34140(P2012-34140)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-169865(P2013-169865A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山川 知也
(72)【発明者】
【氏名】本山 聡
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−001175(JP,A)
【文献】 特開平07−228263(JP,A)
【文献】 特開平11−301507(JP,A)
【文献】 特開2011−105274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00−6/10
B62D 101/00、113/00、119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール側の第1シャフトの回転にモータの回転を上乗せして転舵輪側の第2シャフトに伝達することにより、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間の伝達比を可変とする伝達比可変機構と、
前記モータの回転を機械的に規制するロック機構と、
前記第1シャフト又は前記第2シャフトに作用するトルクを検出するトルク検出部と、
その検出トルクの変化速度が所定速度を超えたとき、前記ロック機構により前記モータの回転を規制する制御部と
を備え
前記制御部は、前記モータの駆動力に抗して同モータを正規な回転方向と逆の方向に回転させ得る逆入力トルクの下限値よりも小さい値をトルク判定値として、前記検出トルクの変化速度が前記所定速度を超えたとき、前記検出トルクが前記トルク判定値に達する時間を前記トルクの変化速度に基づき推定し、推定された時間が所定時間以内であることを条件に前記ロック機構により前記モータの回転を規制することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
前記トルク判定値は、逆入力トルクに抗して前記モータが正規な回転方向に回転可能な逆入力トルクの上限値に設定される
請求項に記載の車両用操舵装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出トルクの変化速度とは別に前記検出トルクの変化態様を示すトルクパラメータを求めるとともに、前記検出トルクが前記トルク判定値に達する時間を前記トルクパラメータに基づき推定し、推定された時間が前記所定時間以内であることを条件に前記ロック機構により前記モータの回転を規制する
請求項又はに記載の車両用操舵装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記トルクパラメータとして、前記検出トルクの変化の加速度を求める
請求項に記載の車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールの操作量に対する転舵輪の転舵量を変化させることが可能な伝達比可変機構を備える車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用操舵装置としては、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。特許文献1に記載の車両用操舵装置では、ステアリングシャフトがステアリングホイール側の第1シャフトと転舵輪側の第2シャフトとに分割されている。第1シャフトと第2シャフトの間には、それらの伝達比を可変とする伝達比可変機構が設けられている。なお、伝達比とは、第1シャフトの回転角に対する第2シャフトの回転角の比を示す。このような車両用操舵装置によれば、車両の運転状態に応じて伝達比を変更させることにより、ステアリングホイールの操作量に対する転舵輪の転舵角の変化量を変化させることができる。そのため、車両の操作性が向上する。
【0003】
ところで、このような車両用操舵装置では、例えば車両走行時に転舵輪が縁石に乗り上げて、転舵輪に過大な衝撃荷重が付与されると、この衝撃荷重が転舵系及び第2シャフトを介して伝達比可変機構に逆入力トルクとして伝達される。この逆入力トルクが伝達比可変機構のモータに作用することによりモータの回転軸が第1シャフトに対して相対回転してしまうと、ステアリングホイールの操舵角と転舵輪の転舵角との位置関係にずれが生じるおそれがある。
【0004】
そこで特許文献1では、モータの負荷の状態を監視し、モータが高負荷状態であることが検知された場合には、伝達比可変機構に設けられたロック機構を通じてモータの回転軸の回転を規制することで、伝達比可変機構の動作を規制している。これにより、モータに逆入力トルクが作用することによりモータが高負荷状態になると、伝達比可変機構の動作が規制される。そのため、第1シャフトと第2シャフトとが直結された状態となり、ステアリングホイールの操舵角と転舵輪の転舵角とのずれを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3539468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の車両用操舵装置では、ロック機構の応答遅れにより、モータが高負荷状態であることが検知されてから実際に伝達比可変機構の動作が規制されるまでに若干のタイムラグが生じる。このタイムラグの間にモータの回転軸が第1シャフトに対して相対回転してしまうと、ステアリングホイールの操舵角と転舵輪の転舵角とにずれが生じるおそれがあり、このことが車両の操舵性を悪化させる一つの要因となっている。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の操舵性を向上させることのできる車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステアリングホイール側の第1シャフトの回転にモータの回転を上乗せして転舵輪側の第2シャフトに伝達することにより、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間の伝達比を可変とする伝達比可変機構と、前記モータの回転を機械的に規制するロック機構と、前記第1シャフト又は前記第2シャフトに作用するトルクを検出するトルク検出部と、その検出トルクの変化速度が所定速度を超えたとき、前記ロック機構により前記モータの回転を規制する制御部とを備えることを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、転舵輪に衝撃荷重が付与されることによりステアリングシャフトに逆入力トルクが作用したとき、ステアリングシャフトに作用するトルクの変化速度が所定速度よりも速くなると、ロック機構によりモータの回転が規制される。これにより、実際にモータの回転が規制されるまでにロック機構の応答遅れに起因するタイムラグがあったとしても、伝達比可変機構のモータに過大な逆入力トルクが作用する前にモータの回転を規制することができる。よって、ロック機構の応答遅れに起因するステアリングホイールの操舵角と転舵輪の転舵角とのずれを抑制し、車両の操舵性を向上させることができる。
【0010】
請求項に記載の発明において、前記制御部は、前記モータの駆動力に抗して同モータを正規な回転方向と逆の方向に回転させ得る逆入力トルクの下限値よりも小さい値をトルク判定値として、前記検出トルクの変化速度が前記所定速度を超えたとき、前記検出トルクが前記トルク判定値に達する時間を前記トルクの変化速度に基づき推定し、推定された時間が所定時間以内であることを条件に前記ロック機構により前記モータの回転を規制する
【0011】
同構成によれば、検出トルクがトルク判定値に達する推定時間が所定時間よりも長い場合には、ロック機構が作動しない。これにより、検出トルクの変化速度が瞬間的に速くなっただけで、過大な逆入力トルクがステアリングシャフトに作用する可能性が低い状況等において、ロック機構が誤動作するのを抑制することが可能となる。
【0012】
そして、請求項に記載の車両用操舵装置では、請求項に記載の発明によるように、前記トルク判定値は、逆入力トルクに抗して前記モータが正規な回転方向に回転可能な逆入力トルクの上限値に設定される、といった構成を採用することが有効である。これにより、過大な逆入力トルクがモータに作用する可能性がある状況でロック機構を的確に作動させてモータの回転を規制することができるため、ステアリングホイールの操舵角と転舵輪の転舵角とのずれをより的確に抑制することが可能となる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項又はに記載の車両用操舵装置において、前記制御部は、前記検出トルクの変化速度とは別に前記検出トルクの変化態様を示すトルクパラメータを求めるとともに、前記検出トルクが前記トルク判定値に達する時間を前記トルクパラメータに基づき推定し、推定された時間が前記所定時間以内であることを条件に前記ロック機構により前記モータの回転を規制することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、トルクの変化速度とは別のトルクパラメータにより、検出トルクがトルク判定値に達する時間が所定時間以内であると推定される場合には、ロック機構によりモータの回転が規制される。これにより、トルク判定値を超える逆入力トルクが作用する状況をより的確に捉えてロック機構を作動させることができるため、ステアリングホイールの操舵角と転舵輪の転舵角とのずれをより的確に抑制することができる。よって、車両の操舵性が更に向上する。
【0015】
この場合、請求項に記載の車両用操舵装置では、請求項に記載の発明によるように、前記制御部は、前記トルクパラメータとして、前記検出トルクの変化の加速度を求める、といった構成を採用することが有効である。これにより、トルク判定値を超えるトルクがステアリングシャフトに作用する状況をより的確に検知することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる車両用操舵装置によれば、車両の操舵性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかる車両用操舵装置の第1の実施形態についてその適用対象となる車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を模式的に示す図。
図2】同第1の実施形態の車両用操舵装置についてその伝達比可変機構の断面構造を示す断面図。
図3】同伝達比可変機構のロック機構についてその平面構造を示す平面図。
図4】同第1の実施形態の車両用操舵装置によるロック機構を作動する処理についてその手順を示すフローチャート。
図5】(a)〜(d)は、同第1の実施形態の車両用操舵装置についてその動作例を示すタイミングチャート。
図6】本発明にかかる車両用操舵装置の第2の実施形態によるロック機構を作動する処理についてその手順を示すフローチャート。
図7】同第2の実施形態の車両用操舵装置による到達時間推定処理についてその手順を示すフローチャート。
図8】(a)〜(e)は、同第2の実施形態の車両用操舵装置についてその動作例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる車両用操舵装置を、車両のラック軸にアシスト力を付与することにより運転者によるステアリング操作を補助する、いわゆるラックアシスト型の電動パワーステアリング装置に適用した第1の実施形態について図1図5を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、この電動パワーステアリング装置では、運転者によりステアリングホイール1が操作されると、その操舵力に基づきステアリングシャフト2が回転する。ステアリングシャフト2では、ステアリングホイール1に連結されたコラムシャフト3にインターミディエイトシャフト4及びピニオンシャフト5が順に連結されている。ピニオンシャフト5の下端部には、ステアリングシャフト2の回転をラック軸7の軸方向の直線運動に変換するギアボックス6が連結されている。そして、ラック軸7の直線運動がその両端に連結されたタイロッド(図示略)を介して転舵輪8に伝達されることにより、転舵輪8の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0020】
また、この電動パワーステアリング装置には、ステアリングホイール1の操作量や車両の状態量を検出するための各種センサが設けられている。例えばコラムシャフト3には、ステアリングホイール1の操舵角θsを検出する舵角センサ10が設けられている。ピニオンシャフト5には、ステアリングシャフト2に作用するトルクτを検出するトルクセンサ11が設けられている。車両には、その速度Vcを検出する車速センサ12が設けられている。
【0021】
この電動パワーステアリング装置では、ラック軸7に電動モータ9が設けられており、電動モータ9からラック軸7にトルクが付与されることで運転者の操舵がアシストされる。具体的には、トルクセンサ11を通じて検出されるトルクτ、及び車速センサ12を通じて検出される車両の速度Vcに基づいて目標アシスト力が設定される。そして、電動モータ9からラック軸7に付与されるアシスト力が目標アシスト力となるように電動モータ9に供給される電流がフィードバック制御される。
【0022】
一方、この電動パワーステアリング装置では、インターミディエイトシャフト4が、コラムシャフト3に連結された第1シャフト4aと、ピニオンシャフト5に連結された第2シャフト4bとに分割されている。第1シャフト4a及び第2シャフト4bの間には、それらの伝達比を可変とする伝達比可変機構30が設けられている。
【0023】
図2に示すように、伝達比可変機構30は、略有底円筒状に形成されたハウジング33の内部に差動機構31及びモータ32を収容している。
ハウジング33の上壁部33aには、第1シャフト4aがスプライン結合された連結部33bが形成されている。この連結部33bを介してハウジング33が第1シャフト4aに一体回転可能に連結されている。モータ32は、その回転軸32aがハウジング33の中心軸と同軸となるようにハウジング33に固定されている。
【0024】
差動機構31は、同軸に並設された一対のサーキュラスプライン34,35、サーキュラスプライン34,35の内部においてこれらと噛合されるフレクスプライン36、及びその噛合部を回転させる波動発生器37を備える周知の波動歯車機構である。
【0025】
第1のサーキュラスプライン34は、モータ32の回転軸32aと同軸となるようにハウジング33の内部に固定されている。第2のサーキュラスプライン35は、連結部材38を介して第2シャフト4bに連結されている。なお、第1及び第2のサーキュラスプライン34,35に形成されているそれぞれの内歯は、互いに異なる歯数に設定されている。フレクスプライン36は、楕円状にたわめられた状態でサーキュラスプライン34,35の内側に配置され、その外歯がサーキュラスプライン34,35の内歯とそれぞれ部分的に噛合されている。この差動機構31では、ハウジング33の回転に基づき第1のサーキュラスプライン34が回転すると、第1のサーキュラスプライン34の回転がフレクスプライン36を介して第2のサーキュラスプライン35及び連結部材38に伝達される。これにより、第1シャフト4aの回転が第2シャフト4bに伝達される。
【0026】
また、波動発生器37は、フレクスプライン36の内部に配置され、その中央部がモータ32の回転軸32aに連結されている。このため、モータ32の回転に伴い波動発生器37が回転すると、フレクスプライン36とサーキュラスプライン34,35との間の噛合部分が回転する。このとき、第1のサーキュラスプライン34と第2のサーキュラスプライン35との間の歯数差が反映され、第2のサーキュラスプライン35が第1のサーキュラスプライン34に対して相対回転する。これにより、モータ32の回転が減速されて第2シャフト4bに伝達される。したがって、第1シャフト4aの回転にモータ32の回転が上乗せされて第2シャフト4bに伝達されることで、第1シャフト4aと第2シャフト4bとの間の伝達比が変更される。
【0027】
モータ32の上面には、回転軸32aの回転を機械的に規制することにより伝達比可変機構30の動作を規制するロック機構40が設けられている。
図3に示すように、ロック機構40は、モータ32の回転軸32aの一端に固定された環状のロックホルダ42、及びロックホルダ42の回転をロックするための長尺状のロックバー43を備えている。
【0028】
ロックホルダ42は、その中心軸がモータの回転軸32aと同軸となるように配置されている。ロックホルダ42の外周面42aには、ロックバー43が係合される複数の係合溝41が形成されている。
【0029】
ロックバー43は、ロックホルダ42の径方向外側に配置され、モータ32の上面に固定された回動軸44により回動可能に支持されている。ロックバー43において回動軸44に支持されている部分から先端部43aに延びる部分は、ばね部材45によりロックホルダ42に向かう方向(図中の矢印a1で示す方向)に付勢されている。ロックバー43の基端部43bには、アクチュエータ46の駆動軸46aが連結されている。アクチュエータ46は、通電に基づき駆動軸46aを吸引することにより、ロックホルダ42から離間する方向(矢印a2で示す方向)のトルクをロックバー43に付与する。そして、アクチュエータ46への通電が行われている期間、ロックバー43はばね部材45の付勢力に抗してロックホルダ42から離間した位置で保持される。このとき、モータ32の回転軸32aは回転可能であるため、モータ32の駆動により第1シャフト4aと第2シャフト4bとの間の伝達比を変更することができる。一方、アクチュエータ46への通電が遮断されると、ロックバー43がばね部材45の付勢力により矢印a1で示す方向に回動するため、ロックバー43の先端部43aがロックホルダ42の外周面42aに当接する。このとき、モータの回転軸32aと一体となってロックホルダ42が回転すると、ロックバー43の先端部43aが係合溝41に係合して、ロックホルダ42及び回転軸32aの回転が規制される。これにより、伝達比可変機構30の動作が規制され、第1シャフト4aと第2シャフト4bとが直結された状態となるため、ステアリングホイール1の操舵角と転舵輪8の転舵角とにずれが生じなくなる。
【0030】
図1に示すように、伝達比可変機構30は、モータ32の回転角θtを検出する回転角センサ13を備えている。回転角センサ13の出力は、伝達比可変機構30の駆動を統括的に行う制御装置(制御部)39に取り込まれる。制御装置39には、前述した舵角センサ10、トルクセンサ11、及び車速センサ12の出力も取り込まれる。なお、制御装置39は、メモリ39aなどを有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0031】
制御装置39は、舵角センサ10及び車速センサ12の出力に基づいて伝達比可変機構30のモータ32の駆動を制御する。具体的には、舵角センサ10を通じて検出される操舵角θs、及び車速センサ12を通じて検出される車両の速度Vcに基づいて、第1シャフト4aに上乗せする回転量の目標値であるACT指令角を演算する。また、制御装置39は、回転角センサ13を通じて検出されるモータ32の回転角θtに基づいて、実際に第1シャフト4aに上乗せされている回転量である実ACT角を演算する。そして、制御装置39は、実ACT角をACT指令角に追従させるべく、モータ32を制御する。これにより、第1シャフト4aの回転にモータの回転が上乗せされて第2シャフト4bに伝達され、第1シャフト4aと第2シャフト4bとの間の伝達比が変更される。
【0032】
また、制御装置39は、トルクセンサ11を通じて検出されるトルクτに基づいて伝達比可変機構30のロック機構40の駆動を制御する。具体的には、制御装置39は、通常、アクチュエータ46への通電を行い、トルクセンサ11を通じて検出されるトルクτに基づいて逆入力トルクを検知したとき、アクチュエータ46への通電を遮断する。以下、ロック機構40を作動する処理について詳述する。
【0033】
まず、本実施形態の電動パワーステアリング装置では、例えば車両走行時に転舵輪8が縁石に乗り上げて、転舵輪8に過大な衝撃荷重が付与されると、この衝撃荷重がラック軸7を介してステアリングシャフト2に逆入力トルクとして伝達される。この逆入力トルクは、ピニオンシャフト5、インターミディエイトシャフト4の第2シャフト4bを介して伝達比可変機構30に伝達される。伝達比可変機構30では、図2に示すように、第2シャフト4bに作用する逆入力トルクが連結部材38、第2のサーキュラスプライン35、フレクスプライン36、及び波動発生器37を介してモータ32の回転軸32aに伝達される。このとき、回転軸32aに作用する逆入力トルクの大きさに応じてモータ32は以下の(a1)〜(a3)に示すように動作する。なお、以下の(a1)〜(a3)において、モータ作動限界トルクτm1は、逆入力トルクに抗してモータ32が回転軸32aを正規の指令方向に回転可能な逆入力トルクの上限値を示す。また、モータ限界保持トルクτm2(>τm1)は、モータ32の駆動力に抗して回転軸32aを正規の指令方向と逆の方向に回転させ得る逆入力トルクの下限値を示す。
【0034】
(a1)逆入力トルクがモータ作動限界トルクτm1以下である場合。この場合、回転軸32aはモータ32の駆動力によって正規な方向に回転可能である。
(a2)逆入力トルクがモータ作動限界トルクτm1を超えていて且つ、モータ限界保持トルクτm2未満の場合。この場合、回転軸32aはモータ32の駆動力によって正規な方向に回転することができず、見かけ上、停止する。
【0035】
(a3)逆入力トルクがモータ限界保持トルクτm2以上である場合。この場合、回転軸32aは逆入力トルクによって正規な方向と逆方向に回転させられる。
よって、モータ32の回転軸32aに作用する逆入力トルクがモータ限界保持トルクτm2に達するよりも前に応答遅れを考慮してロック機構40を作動させれば、ステアリングホイール1の操舵角と転舵輪8の転舵角とのずれを抑制することが可能である。
【0036】
次に、図4を参照して、制御装置39を通じて実行されるロック機構40を作動する処理の手順について説明する。なお、図4に示す処理は、ロック機構40のアクチュエータ46が通電されている期間、所定の演算周期Tcをもって繰り返し実行される。
【0037】
図4に示すように、制御装置39は、はじめに、トルクセンサ11を通じてステアリングシャフト2に作用するトルクτを検出し(ステップS1)、検出したトルクτに基づいてその変化速度Vτを演算する(ステップS2)。ステップS2において制御装置39は、例えばステップS1の処理を通じて今回検出されたトルクと、メモリ39aに記憶されている前回検出されたトルクとの差分値を求め、この差分値を演算周期Tcで除算することによりトルクの変化速度Vτを演算する。続くステップS3において制御装置39は、今回検出されたトルクτの値をメモリ39aに記憶する。図4に示す処理では、このステップS3の処理がその都度実行されることで、検出されたトルクτの時系列的なデータがメモリ39aに記憶される。続くステップS4において制御装置39は、検出トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτaを超えているか否かを判断し、検出トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτa以下である場合(ステップS4:NO)、逆入力トルクが発生していないと判断して、処理をステップS1に戻す。
【0038】
一方、検出トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτaを超えている場合(ステップS4:YES)、制御装置39は逆入力トルクが発生したと判断し、トルクの変化速度Vτに基づいて、ステアリングシャフト2に作用するトルクτがトルク判定値τthに達するまでの推定時間Teを演算する(ステップS5)。トルク判定値τthは、上記モータ作動限界トルクτm1に設定されている。また、ステップS5において制御装置39は、具体的には、以下の式(1)に基づいて推定時間Teを演算する。
【0039】
Te=(τth−τ)/Vτ・・・(1)
続くステップS6において制御装置39は、推定時間Teが所定時間Ta以下であるか否かを判断し、推定時間Teが所定時間Ta以下である場合(ステップS6:YES)、ロック機構40を作動する(ステップS7)。一方、推定時間Teが所定時間Taを超えている場合(ステップS6:NO)、制御装置39は処理をステップS1に戻す。なお、所定時間Taは、ロック機構40の応答遅れに対応する時間として予め実験等を通じて設定されている。
【0040】
次に、図5(a)〜(d)を参照して、本実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の動作例(作用)について説明する。
図5(a)に示すように、例えば時刻t0で転舵輪8に過大な衝撃荷重が付与されてステアリングシャフト2に逆入力トルクが作用したとすると、時刻t0以降、ステアリングシャフト2に作用するトルクτが上昇する。そして、図5(b)に示すように、トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτaを超えている場合、制御装置39は逆入力トルクを検知する。また、図5(c)に示すように、制御装置39は、ステアリングシャフト2に作用するトルクτがトルク判定値τthに達するまでの推定時間Teをトルクτの変化速度Vτに基づいて演算する。なお、時刻t0では、演算される推定時間Teは所定時間Taよりも長いため、図5(d)に示すように、ロック機構40は作動しない。
【0041】
その後、図5(c)に示すように、時刻t2で演算される推定時間Teが所定時間Taまで短くなると、図5(d)に示すように、この時点で制御装置39はロック機構40を作動させる指令を出力する。本実施形態では、所定時間Taがロック機構40の応答遅れを考慮して設定されているため、時刻t2から実際にモータ32の回転が規制される時刻t3までにロック機構40の応答遅れに起因する時間Tpのタイムラグが生じたとしても、トルクτがモータ限界保持トルクτm2に達する前にモータ32の回転を規制することができる。具体的には、ステアリングシャフト2に作用するトルクτが、図5(a)に点ハッチングで示す「τth<τ<τm2」の範囲であるときにモータ32の回転を規制することができる。すなわち、モータ32の回転軸32aにモータ限界保持トルクτm2が作用するよりも前にロック機構40を作動させることができる。よって、本実施形態の電動パワーステアリング装置は、ロック機構40の応答遅れに起因するステアリングホイール1の操舵角と転舵輪8の転舵角とのずれを抑制し、車両の操舵性を向上させることができる。
【0042】
一方、図5(a)に二点鎖線で示すように、ステアリングシャフト2に作用するトルクτがトルク判定値τthに達する前に低下すると、図5(b)に二点鎖線で示すように、時刻t1でトルクの変化速度Vτが所定速度Vτa以下になる。この場合、図5(d)に二点鎖線で示すように、制御装置39は、ロック機構40を作動させる指令を出力しない。即ち、検出トルクτの変化速度Vτに基づいて逆入力トルクが検知された場合であっても、モータ32にモータ限界保持トルクτm2が作用することのない状況では、ロック機構40が作動しない。これにより本実施形態の電動パワーステアリング装置は、ロック機構40の誤動作を抑制することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態にかかる電動パワーステアリング装置によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の電動パワーステアリング装置は、ステアリングシャフト2に作用するトルクの変化速度Vτが所定速度Vτaを超えたとき、トルクの変化速度Vτに基づいて、ステアリングシャフト2に作用するトルクがトルク判定値τthに達する時間Teを推定することとした。そして、推定時間Teが所定時間Ta以内であることを条件にロック機構40によりモータ32の回転を規制することとした。この所定時間Taをロック機構40の応答遅れを考慮したものとすることにより、ロック機構40の応答遅れに起因するステアリングホイール1の操舵角と転舵輪8の転舵角とのずれを抑制することができるため、車両の操舵性が向上する。また、モータ32にモータ限界保持トルクτm2が作用することのない状況でロック機構40によりモータ32の回転が規制されないため、ロック機構40の誤動作を抑制することも可能となる。さらに、モータ32にかかる負荷を低減することができるため、モータ32の小型化や低コスト化を図ることも可能となる。
【0044】
(2)トルク判定値τthをモータ作動限界トルクτm1に設定、換言すれば逆入力トルクに抗してモータ32が正規の方向に回転可能な逆入力トルクの上限値に設定することとした。これにより、モータ32にモータ限界保持トルクτm2が作用する前、すなわちモータの回転軸32aが逆入力トルクによって正規の方向と逆の方向に回転する前に、ロック機構40によりモータ32の回転を的確に規制することができる。そのため、ロック機構40の応答遅れに起因するステアリングホイール1の操舵角と転舵輪8の転舵角とのずれをより的確に抑制することが可能となる。
【0045】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の電動パワーステアリング装置も、基本構成は図1に例示した電動パワーステアリング装置と同様である。
【0046】
本実施形態の制御装置39は、トルクセンサ11によって検出されるトルクτの変化速度Vτが所定速度Vτa以下であるとき、トルクτの変化の加速度Aτを求める点で第1の実施形態と相違する。本実施形態では、このトルクτの変化の加速度Aτを、トルクτの変化速度Vτとは別にトルクτの変化態様を示すトルクパラメータとして用いている。そして、トルクτの変化の加速度Aτに基づいてモータ32にモータ作動限界トルクτm1が作用するまでの時間を推定し、この推定時間が所定時間Ta以下である場合にはロック機構40によりモータ32の回転を規制する。以下、その詳細を図6図8を参照して説明する。はじめに、図6を参照して、制御装置39を通じて実行されるロック機構40を作動する処理の手順について説明する。なお、この処理において、図4に例示した処理と同一の処理については同一の符号を付すことによりその説明を割愛し、以下では、両者の相違点を中心に説明する。
【0047】
図6に示すように、制御装置39は、ステアリングシャフト2に作用するトルクτの変化速度Vτを演算した後(ステップS2)、今回検出されたトルクτの値、及び演算されたトルクτの変化速度Vτの値をメモリ39aに記憶する(ステップS8)。図6に示す処理では、このステップS8の処理がその都度実行されることで、トルクτ及びその変化速度Vτのそれぞれの時系列的なデータがメモリ39aに記憶される。続くステップS4において制御装置39は、トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτaを超えているか否かを判断し、トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτa以下である場合(ステップS4:NO)、到達時間推定処理を実行する(ステップS9)。
【0048】
図7に示すように、到達時間推定処理において制御装置39は、まず、ステアリングシャフト2に作用するトルクτの変化の加速度Aτを演算する(ステップS10)。具体的には、以下の式(2)に基づいてステアリングシャフト2に作用するトルクの変化の加速度Aτを演算する。
【0049】
Aτ=(Vτ(n)−Vτ(n−1))/Tc・・・(2)
ただし、(n):今回の値
(n−1):前回の値
続くステップS11において制御装置39は、ステアリングシャフト2に作用するトルクτ、その変化速度Vτ、及びその変化の加速度Aτに基づいて、ステアリングシャフト2に作用するトルクτがトルク判定値τthに達するまでの推定時間Teを演算する。具体的には、以下の式(3)に基づいて推定時間Teが演算される。
【0050】
Te=(τth−τ)/Vτ+f1(τ)+f2(Vτ)+f3(Aτ)・・・(3)
なお、トルクτを変数とする第1の関数f1(τ)、トルクτの変化速度Vτを変数とする第2の関数f2(Vτ)、及びトルクτの変化の加速度Aτを変数とする第3の関数f3(Aτ)は、例えば以下の式(4)〜(6)のように定義することができる。なお、B1,B2,C1,C2,D1,D2は定数であり、ステアリングシャフト2に作用するトルクがトルク判定値τthに達するまでの推定時間Teを演算することができるように予め実験等を通じて設定されている。
【0051】
f1(τ)=B1×τ+B2・・・(4)
f2(Vτ)=C1×Vτ+C2・・・(5)
f3(Aτ)=D1×Aτ+D2・・・(6)
こうして推定時間Teが演算された後、制御装置39は、図6に示すステップS6において、推定時間Teが所定時間Ta以下であるか否かを判断し、推定時間Teが所定時間Ta以下である場合には(ステップS6:YES)、ロック機構40によりモータ32の回転を規制する(ステップS7)。
【0052】
次に、図8(a)〜(e)を参照して、本実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の動作例(作用)について説明する。
図8(a)に示すように、例えば時刻t10で転舵輪8に過大な衝撃荷重が付与されてステアリングシャフト2に逆入力トルクが作用したとき、ステアリングシャフト2に作用するトルクτが経過時間のべき乗に比例するように急激に上昇したとする。この場合、第1の実施形態の制御装置39は、トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτaを超える時刻t12において推定時間Teを演算する。しかし、本実施形態のようにトルクτの上昇が急激な場合、時刻t12において演算された推定時間Teが、この時点で既に所定時間Taを下回っていることが考えられる。この場合、図8(e)に示すように、制御装置39は、時刻t12の時点でロック機構40を作動させる指令を出す。しかし、ロック機構40の応答遅れに起因するタイムラグにより、ロック機構40が実際に作動するのは時刻t12から所定時間Tpが経過した時刻t14の時点である。そのため、ステアリングシャフト2に作用するトルクτの上昇速度に、ロック機構40の応答が追い付かず、モータ32に作用するトルクτがモータ限界保持トルクτm2を超えた後でなければモータ32の回転を規制できないおそれがある。
【0053】
この点、本実施形態の制御装置39は、トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτa以下である期間、すなわち時刻t10から時刻t12までの期間、ステアリングシャフト2に作用するトルクτ、その変化速度Vτ、及びその変化の加速度Aτに基づいて、図8(d)に示すように推定時間Teを演算する。この演算では、第1の実施形態における推定時間Teの演算よりも多くのパラメータが用いられているため、より正確な推定時間Teの推定が可能である。このため、トルクτの変化速度Vτが所定速度Vτaを超えていない時刻t11の時点で推定時間Teが所定時間Taに達すると、図8(e)に示すように、制御装置39はロック機構40を作動させる指令を出力する。これにより、ステアリングシャフト2に作用する逆入力トルクが経過時間のべき乗に比例するように急激に上昇した場合であっても、ステアリングシャフト2に作用するトルクτが図8(a)に点ハッチングで示す「τth<τ<τm2」の範囲であるときにロック機構40を作動させてモータ32の回転を規制することができる。すなわち、モータ32にモータ限界保持トルクτm2が作用するよりも前にロック機構40を実際に作動させてモータ32の回転を規制することができる。よって、ロック機構40の応答遅れに起因するステアリングホイール1の操舵角と転舵輪8の転舵角とのずれをより的確に抑制し、車両の操舵性を更に向上させることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態にかかる電動パワーステアリング装置によれば、第1の実施形態による(1)及び(2)の効果に加え、以下の効果が得られる。
(3)ステアリングシャフト2に作用するトルクτの変化速度Vτが所定速度Vτa以下であるとき、トルクτの変化の加速度Aτを求めることとした。また、求められた加速度Aτに基づいて、トルクτがトルク判定値τthに達する時間Teを推定することとした。そして、この推定時間Teが所定時間Ta以内であることを条件にロック機構40によりモータ32の回転を規制することとした。これにより、ステアリングシャフト2にトルク判定値τthを超える逆入力トルクが作用する状況をより的確に捉えてロック機構40を作動させることができる。そのため、ステアリングホイール1の操舵角と転舵輪8の転舵角とのずれをより的確に抑制し、車両の操舵性を更に向上させることができる。
【0055】
<他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第2の実施形態では、ステアリングシャフト2に作用するトルクτの変化速度Vτとは別にトルクτの変化態様を示すトルクパラメータとして、トルクτの変化の加速度Aτを用いることとした。これに代えて、例えばステアリングシャフト2に作用するトルクτの推移傾向を検出し、これをトルクパラメータとして用いてもよい。この場合、検出されるトルクτの推移傾向と、予め用意された推移パターンとを比較するパターンマッチングを行うことにより、トルクτがトルク判定値τthに達するまでの推定時間を演算する。このような方法でも、トルク判定値τthを超えるトルクがステアリングシャフト2に作用するか否かを適切に検出することが可能である。
【0056】
・上記各実施形態では、トルク判定値τthをモータ作動限界トルクτm1に設定することとしたが、モータ限界保持トルクτm2よりも小さい値であれば、任意の値に設定することが可能である。
【0057】
・ステアリングシャフト2に作用するトルクτの変化速度Vτが所定速度Vτaを超えることを条件に、ロック機構40によりモータ32の回転を規制してもよい。この場合、先の図4に例示した処理において、ステップS5及びS6の処理を割愛すればよい。
【0058】
・上記各実施形態では、ステアリングシャフト2に作用するトルクを検出するトルク検出部として、電動パワーステアリング装置のトルクセンサ11を利用することとしたが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、トルクセンサ11に代えて、新たなトルクセンサを設けてもよいし、トルクセンサ11の配置を適宜変更してもよい。また、電動パワーステアリング装置の電動モータ9の電流値からステアリングシャフトに作用するトルクを推定してもよい。要は、ステアリングシャフト2に作用するトルクを検出することができるものであればよい。
【0059】
・上記実施形態では、伝達比可変装置30をインターミディエイトシャフト4に設けることとしたが、例えばコラムシャフト3やピニオンシャフト5に伝達比可変装置30を設けてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、パワーステアリング装置が、電動モータ9の駆動力をアシスト力として利用する、いわゆる電動パワーステアリング装置であったが、これに代えて、例えば油圧をアシスト力として利用する油圧式のパワーステアリング装置であってもよい。
【0061】
・上記実施形態のパワーステアリング装置は、ラック軸7に電動モータ9のアシスト力を付与する構成であったが、アシスト力の付与は操舵伝達系のいずれの箇所であってもよい。例えばピニオンシャフト5やコラムシャフト3にアシスト力を付与する構成のパワーステアリング装置であってもよい。
【0062】
<付記>
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)前記制御部は、前記トルクパラメータとして、前記ステアリングシャフトに作用するトルクの推移傾向を検出し、検出されたトルクの推移傾向と、予め用意された推移パターンとを比較するパターンマッチングを行うことにより、前記ステアリングシャフトに作用するトルクが前記トルク判定値に達する時間を推定する請求項4に記載の車両用操舵装置。同構成によれば、トルク判定値を超えるトルクがステアリングシャフトに作用する状況をより的確に検知することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、4a…第1シャフト、4b…第2シャフト、8…転舵輪、9…電動モータ、11…トルクセンサ、30…伝達比可変機構、32…モータ、32a…回転軸、39…制御装置、40…ロック機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8