(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
サスペンションアームを支持する左右一対のアーム支持部と、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、上記左右のアーム支持部を連結するように車幅方向に延設されたクロスメンバとを有するフロントサブフレーム構造であって、
上記サイドメンバは、アーム支持部よりも前方側に位置する閉断面形状のサイドメンバ前部と、上記アーム支持部よりも後方側に位置する閉断面形状のサイドメンバ後部とに分割され、かつ上記アーム支持部とクロスメンバとが、車幅方向に延びる閉断面を形成する閉断面構造体を介して相連結され、上記サイドメンバ前部の後端部およびサイドメンバ後部の前端部が上記閉断面構造体にそれぞれ接合されたことを特徴とするフロントサブフレーム構造。
上記クロスメンバは、車幅方向に伸びる閉断面を形成する上部パネルと下部パネルとにより構成され、かつクロスメンバの後端部が上記閉断面構造体の後端部よりも後方側に位置するように該クロスメンバと閉断面構造体とが車両の前後方向にオフセットして配設され、上記クロスメンバの車幅方向中央部からその左右外方側に傾斜しつつ車両の後方側に向けて延びる左右の傾斜部を備えたパイプ状部材が設けられるとともに、該パイプ状部材の左右両側部がフロアトンネルの左右に設置された車体側強度部に連結されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフロントサブフレーム構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に開示されているように平面視U字状をなす一本のパイプ材または左右のサイドパイプからなるフロントサブフレームのサイドメンバを車体の前部左右に配設した場合には、該サイドメンバを厚肉に形成することなく、車両の衝突時に入力された衝突荷重に対する剛性を充分に確保することが可能である。しかし、上記サイドメンバをパイプ状部材により形成した場合には、車両の走行時にサスペンションアームからフロントサブフレームに入力された横力等に応じて上記サイドメンバの壁面部が面振動し易いとともに、該サイドメンバの断面形状が塑性変形し易いという問題がある。このため、上記サイドメンバを構成するパイプ状部材の板厚をある程確保する必要があり、フロントサブフレームを軽量化するという観点で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、フロントサブフレームのサイドメンバを軽量かつ高剛性に形成することができるとともに、車両の走行時にサスペンションアームからフロントサブフレームに入力された横力等を簡単な構成で効果的に支持することができるフロントサブフレーム構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、サスペンションアームを支持する左右一対のアーム支持部と、
車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、上記左右のアーム支持部を連結するように車幅方向に延設されたクロスメンバとを有するフロントサブフレーム構造であって、上記サイドメンバは、アーム支持部よりも前方側に位置する閉断面形状のサイドメンバ前部と、上記アーム支持部よりも後方側に位置する閉断面形状のサイドメンバ後部とに分割され、かつ上記アーム支持部とクロスメンバとが、車幅方向に延びる閉断面を形成する閉断面構造体を介して相連結され
、上記サイドメンバ前部の後端部およびサイドメンバ後部の前端部が上記閉断面構造体にそれぞれ接合されたものである。
【0009】
請求項
2に係る発明は、上記請求項
1に記載のフロントサブフレーム構造において、
上記左右一対のアーム支持部を前側アーム支持部と定義したときに、これら前側アーム支持部とは別に、各サイドメンバ後部に連結された左右一対の後側アーム支持部を有し、上記サイドメンバ前部が、車両の前後方向に延びる稜線と、相隣接する稜線間に設置された平板部を有するパイプ状断面形状に形成され、かつ上記
後側アーム支持部が
連結されたサイドメンバ後部が、上記サイドメンバ前部の平板部に比べて曲率の大きい湾曲面を有するパイプ状断面形状に形成されたものである。
【0010】
請求項
3に係る発明は、上記請求項1
又は2に記載のフロントサブフレーム構造において、上記閉断面構造体は、車体フレームに取り付けられるマウントブラケットからなるものである。
【0011】
請求項
4に係る発明は、上記請求項1〜
3のいずれか1項に記載のフロントサブフレーム構造において、上記閉断面構造体が、サイドメンバ前部およびサイドメンバ後部を構成するパイプ材の板厚よりも厚肉の素材で形成されたものである。
【0012】
請求項
5に係る発明は、上記請求項1〜
4のいずれか1項に記載のフロントサブフレーム構造において、上記閉断面構造体が、上記クロスメンバを構成する板材よりも厚肉の素材により形成されたものである。
【0013】
請求項
6に係る発明は、上記請求項1〜
5のいずれか1項に記載のフロントサブフレーム構造において、上記クロスメンバは、車幅方向に伸びる閉断面を形成する上部パネルと下部パネルとにより構成され、かつクロスメンバの後端部が上記閉断面構造体の後端部よりも後方側に位置するように該クロスメンバと閉断面構造体とが車両の前後方向にオフセットして配設され、上記クロスメンバの車幅方向中央部からその左右外方側に傾斜しつつ車両の後方側に向けて延びる左右の傾斜部を備えたパイプ状部材が設けられるとともに、該パイプ状部材の左右両側部がフロアトンネルの左右に設置された車体側強度部に連結されたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、上記サイドメンバを閉断面形状のサイドメンバ前部とサイドメンバ後部とにより構成したため、該サイドメンバを軽量で高剛性に形成することができる。そして、車両の走行時に、例えば車体の一方側に位置するサスペンションアームから上記アーム支持部に入力された横力等を、上記閉断面構造体からクロスメンバに直接、伝達するとともに、該クロスメンバを介して車体の他方側に伝達することができるため、上記サイドメンバ前部およびサイドメンバ後部の壁面部が上記横力等に応じて振動するのを抑制しつつ、該横力等を安定して支持することができる。
【0015】
また、サイドメンバ前部の後端部およびサイドメンバ後部の前端部を上記閉断面構造体にそれぞれ接合したため、該閉断面構造体に、サイドメンバ前部とサイドメンバ後部との連結部材として機能させることができる。したがって、簡単かつコンパクトな構成で、車両の衝突時に上記サイドメンバ前部に入力された衝突荷重を、上記閉断面構造体を介してサイドメンバ後部および上記クロスメンバに伝達することにより、車体の全体に分散させて効率よく支持できるという利点がある。
【0016】
請求項
2に係る発明では、上記サイドメンバ前部を、車両の前後方向に延びる稜線と、相隣接する稜線間に設置された平板部を有するパイプ状断面形状に形成したため、上記フロントサブフレームを構成するサイドメンバ前部を大型化することなく、車両の衝突時に該サイドメンバ前部に入力された衝突荷重を充分に支持しつつ、上記サイドメンバ後部およびその後方に設けられた車体側強度部材に上記衝突荷重を効果的に伝達することができる。また、上記サイドメンバ後部を、サイドメンバ前部の平板部に比べて曲率の大きい湾曲面を有するパイプ状断面形状に形成したため、車両の走行時にロアアームの後側連結部からサイドメンバ後部に入力された横力に応じてサイドメンバ後部の壁面部が面振動したり、あるいはその断面形状が塑性変形したりするのを効果的に防止することができる。したがって、車両の衝突時に上記サイドメンバ前部に入力された衝突荷重に対する耐力を向上させて該衝突荷重を効果的に吸収できるという効果と、車両の走行時に入力された横力に応じてフロントサブフレームが振動するのを抑制しつつ、上記横力に対する耐力を効果的に向上できるという効果とを両立することができる。
【0017】
請求項
3に係る発明では、上記閉断面構造体を、車体フレームに取り付けられるマウントブラケットにより構成したため、車両の走行時に、上記ロアアームからアーム支持部に入力された横力等を、第2マウントブラケットから上記サイドフレームに伝達することにより、該横力等を、より効率よく車体の全体に分散させて効果的に支持できるという利点がある。
【0018】
請求項
4に係る発明では、上記閉断面構造体を、サイドメンバ前部およびサイドメンバ後部を構成するパイプ材の板厚よりも厚肉の素材で形成したため、上記フロントサブフレームの主要部を構成するサイドメンバを効果的に軽量化しつつ、車両の走行時に、上記サスペンションアームから閉断面構造体に入力された横力等を、上記クロスメンバおよびサイドメンバを介して車体の全体に分散させることにより効果的に支持できるという利点がある。
【0019】
請求項
5に係る発明では、上記閉断面構造体を、上記クロスメンバを構成する板材よりも厚肉の素材により形成したため、上記フロントサブフレームの主要部を構成するクロスメンバを効果的に軽量化しつつ、車両の衝突時に、上記サイドメンバ前部から閉断面構造体に入力された衝突荷重を、上記サイドメンバ後部に伝達することにより安定して支持できるという利点がある。
【0020】
請求項
6に係る発明では、上記クロスメンバを、車幅方向に伸びる閉断面を形成する上部パネルと下部パネルとにより構成し、かつクロスメンバの後端部を上記閉断面構造体の後端部よりも後方側に位置させるように該クロスメンバと閉断面構造体とを車両の前後方向にオフセットさせて配設し、上記クロスメンバの車幅方向中央部からその左右外方側に傾斜しつつ車両の後方側に向けて延びる左右の傾斜部を備えたパイプ状部材を設けるとともに、該パイプ状部材の左右両側部をフロアトンネルの左右に設置された車体側強度部に連結したため、上記クロスメンバの側端部を閉断面構造体とサイドメンバ後部の前方部とに跨るように架設することにより、該閉断面構造体とサイドメンバ後部との連結部を上記クロスメンバにより補強することができ、上記フロントサブフレームの剛性を効果的に向上させることができる。また、上記サスペンションアームからクロスメンバの前方部に入力された横力等を、該クロスメンバからパイプ状部材の車幅方向中央部および左右の傾斜部を介してフロアパネルに設置された車体側強度部材に伝達することにより効果的に支持できるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図5は、本発明の実施形態に係るフロントサブフレーム構造を備えた車両を示している。該車両の前部には、駆動用エンジンまたは駆動用モータ等からなるパワープラント1が配置されるとともに、その後方には、車室とパワープラント1の配設スペース(エンジンルーム)とを区画するダッシュパネル2が設けられている。そして、該ダッシュパネル2の下端部から車両の前方側に延びるように左右一対のサイドフレーム3が設置され、該サイドフレーム3の下方側にフロントサスペンション用のロアアーム4等を支持するフロントサブフレーム5が設置されている。
【0023】
上記サイドフレーム3は、側面視で車両の前後方向に沿って略水平に延びる前方部3aと、その後端部から上記ダッシュパネル2の下端部に向けて後下がりに傾斜しつつ車両の後方側に延びる後方部3bとを有し、該後方部3bの後端部には、後述のフロアフレーム37が連設されている。なお、上記サイドフレーム3の前端部には、金属製の筒状体等からなるクラッシュカン6が車両の前方側に向けて突設されるとともに、その前端部には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント49の側端部が取り付けられている。
【0024】
上記フロントサブフレーム5は、サイドフレーム3の下方に配設されて車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ7と、上記パワープラント1の配置スペースよりも後方側で上記サイドフレーム3の下方側に配設された後述のパイプ状部材からなる第1クロスメンバ8とを有している。また、上記車室の底部を構成するフロアパネル9には、その車幅方向中央部を上方に膨出させたフロアトンネル35が車両の前後方向に延びるように設置されている。
【0025】
上記フロアトンネル35の前部上壁には、後下がりに傾斜した傾斜部35a(
図1参照)が設けられ、該傾斜部35aの後端よりも前方側において、具体的には上記フロアトンネル35の前端部直下において、上記第1クロスメンバ8の左右両側端部を相連結する第2クロスメンバ(リヤクロスメンバ)10が車幅方向に延設されている。さらに、左右サイドメンバ7の前後方向中間部および前部には、第3クロスメンバ(センタクロスメンバ)11および第4クロスメンバ(フロントクロスメンバ)12が、それぞれ車幅方向に沿って略直線状に延設されている。
【0026】
上記サイドメンバ7は、後述する前側アーム支持部18よりも車両の前方側に位置するとともに、側面視(
図1参照)おいて前上がりの傾斜状態で設置されたサイドメンバ前部13と、前側アーム支持部18よりも車両の後方側に位置するとともに、側面視おいて略水平に設置されたサイドメンバ後部14とに分割されている。また、上記サイドメンバ前部13の前端部には、車両の前方に向けて突出する金属製の筒状体等からなるクラッシュカン15が取り付けられている。
【0027】
上記サイドメンバ前部13は、
図6に示すように、車両の前後方向に延びる4本の稜線13aと、相隣接する稜線13a間に配設された4枚の平板部13bとを有する略正方形のパイプ状断面形状に形成されている。また、
図4に示すように平面視で、上記サイドメンバ前部13が、第2マウントブラケット17の前端から車幅方向の外方側に傾斜しつつ、車両の前方側に延びるように設置されている。そして、サイドメンバ前部13の前端部上面には、上端部がサイドフレーム3の前部下面に締結ボルトで締結されることにより取り付けられる第1マウントブラケット16が立設され、その車幅方向内側部には、上記第4クロスメンバ12の側端部が溶接される等により一体に接合されている。
【0028】
上記サイドメンバ後部14は、
図7に示すように、サイドメンバ前部13の平板部13bに比べて曲率の大きい湾曲面を備えた断面形状(当実施形態では丸パイプ状)に構成されている。そして、平面視で
図4に示すように、上記サイドメンバ後部14が、第2マウントブラケット17の後端から車幅方向の内方側に傾斜しつつ車両の後方側に延びるように設置されている。また、上記サイドメンバ前部13とサイドメンバ後部14との間に設置された第2マウントブラケット17の下部外側面には、上記ロアアーム4の基端部に設けられた後述の前側連結部43が支持される前側アーム支持部18が設けられている(
図4および
図10参照)。
【0029】
上記サイドメンバ後部14には、図外のスタビライザーまたはステアリングラック等からなる車両用補機の取付部となる3本の丸パイプ材19が、第2マウントブラケット17の後部近傍およびその後方側に位置する部位に設置されている(
図2等参照)。そして、
図5に示すように、上記サイドメンバ後部14の後端部が、上記第1クロスメンバ8の左右両側端部に設けられたフロアフレーム37に対する接合部20よりも車幅方向内方側に位置する部位、具体的には上記第1第2クロスメンバ10の左右両側方部に設けられた後述のトンネルロアフレーム38に対する固定部34に対向する部位の前面側部に溶接される等により一体に連結されている。
【0030】
上記第3クロスメンバ11からなるセンタクロスメンバは、
図1に示すように、車幅方向に延びる略矩形状の閉断面形状を形成する鋼板材等の上部パネル22と下部パネル23とからなっている。そして、該上部パネル22と下部パネル23の左右両側端部が、上記第2マウントブラケット17の車幅方向内側面部に溶接される等により、左右の第2マウントブラケット17が上記第3クロスメンバ11を介して互いに連結されている(
図4参照)。
【0031】
上記第3クロスメンバ11の後端部は、第2マウントブラケット17の後端部よりも後方側に配設されるとともに、該第3クロスメンバ11の後部外側面が上記サイドメンバ後部14の前部内側面に接合されている。また、上記第3クロスメンバ11の車幅方向中央部には、車両用エンジン等からなるパワープラント1の後部マウント24の導入部となる開口部25と、該後部マウント24を支持するパワープラント支持部26とが設けられるとともに、その後方部には、パイプ状部材からなる第1クロスメンバ8の車幅方向中央部28を支持する支持ブラケット27が設けられている。
【0032】
上記第1クロスメンバ8は、円形の鋼管等を折り曲げることにより形成されたパイプ状部材からなり、車両の幅方向に延びるように設置された車幅方向中央部28と、平面視で該車幅方向中央部28の左右両端部から車両の後方側に向けてハの字状に延びるように設置された左右一対の傾斜部29とを有している。そして、上記第1クロスメンバ8の車幅方向中央部28が第3クロスメンバ11の支持ブラケット27に溶接される等により、上記第1クロスメンバ8と第3クロスメンバ11とがその車幅方向中央部において一体に接続されている。
【0033】
上記傾斜部29の後端部が車幅方向の外方側に延びるように折り曲げられるとともに、その端部が偏平形状に押し潰される等により、下記フロアフレーム37に接合される接合部20が形成されている。また、上記傾斜部29の後部前面に、上記サイドメンバ7の後端部が溶接されることにより、該サイドメンバ7と第1クロスメンバ8とが一体に連結されている。さらに、上記傾斜部29の後部背面側に、上記第2クロスメンバ10の左右両側端部が溶接されることにより、該第2クロスメンバ10を介して上記第1クロスメンバ8の左右両端部が互いに連結されている。
【0034】
上記第1クロスメンバ8の左右両端部には、傾斜部29の後端部に設けられた上記フロアフレーム37に対する接合部20と、上記サイドメンバ後部14の後端部とに跨るように、上下一対のプレート材からなる後側アーム支持部31が架設されている(
図2参照)。そして、後述するようにロアアーム4からなるサスペンションアームの基端部に設けられた後側連結部44が上記後側アーム支持部31に支持されるようになっている。
【0035】
上記第2クロスメンバ10は、車幅方向に延びる略矩形状の閉断面を形成する鋼板材等の上部パネル32と下部パネル33とからなり、該上部パネル32および下部パネル33の側辺部が溶接されて相接合されている。また、上記第2クロスメンバ10の左右両側端部には、その車幅方向中央部に比べて幅広に形成された固定部34が設けられ、該固定部34がトンネルロアフレーム38の前端部にボルト止めされることにより車体に固定されるようになっている。
【0036】
図1に示すように、上記第2クロスメンバ10の上下寸法は、第1クロスメンバ8の上下寸法よりも小さく設定されるとともに、第2クロスメンバ10の前後寸法は、第3クロスメンバ11の前後寸法と同程度に設定されている。これにより、上記第2クロスメンバ10により形成された閉断面の車幅方向中央部における面積が、上記パイプ状部材からなる第1クロスメンバ8の車幅方向中央部28における閉断面の面積よりも小さな値に設定されている。
【0037】
上記車両の車室底部を構成するフロアパネル9の車幅方向中央部には、車室内側(上方側)に膨出するとともに車両の前後方向に延びるフロアトンネル35が設けられている。また、上記フロアパネル9の下面には、
図5に示すように、上記サイドフレーム3の後端部に連続して車両の後方側に延びるフロアフレーム37が、上記フロアトンネル35と所定距離を置いてその車幅方向外方側に設置され、かつ上記該フロアトンネル35の下辺部に沿って左右一対のトンネルロアフレーム38が車両の前後方向に延びるように設置されている。
【0038】
そして、上記第1クロスメンバ8の後端部に設けられた接合部20が、上記フロアフレーム37の前端部に締結ボルトを介して締結されるとともに、上記第2クロスメンバ10の側端部に設けられた固定部34が、上記トンネルロアフレーム38の前端部下面に締結ボルトを介して締結されることにより、上記両サイドメンバ7の後部がそれぞれ左右二個所において車体側強度部材に固定されている。上記フロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38と、これらを連結する上記第1クロスメンバ8の接合部20および第2クロスメンバ10の固定部34とにより、
図8に示すように、正面視でU字状に連続した構造体が構成されるとともに、該構造体と上記フロアパネル9との間に、上記固定部34および接合部20の上下寸法に対応した開口部40が形成されている。
【0039】
また、上記フロアパネル9の左右両側辺部には、サイドシル36が車両の前後方向に延びるように設置され、かつ該サイドシル36の前部と上記フロアフレーム37の前部とを連結するトルクボックス39が設置されている(
図5参照)。該トルクボックス39は、車室の前部に配設されたダッシュパネル2の下方部に沿って車幅方向に延びる前面板と、その下端部から車両の後方側に延びる底面板とを有し、上記前面板およびその下端部に設けられた稜線が、上記接合部20の配設部位に隣接した位置から車幅方向の外方側に向けて延設されている。
【0040】
上記フロントサブフレーム5に支持されるロアアーム4は、
図5および
図9に示すように、先端部42がボールジョイント等を介して図外の車輪支持部材(アクスルハウジング)に連結されるととともに、その車幅方向内側部(基端部)に前後一対の前側連結部43および後側連結部44が設けられた所謂A型アームからなっている。該ロアアーム4の前側連結部43および後側連結部44は、上記フロントサブフレーム5の第1マウントブラケット17に設けられた前側アーム支持部18およびサイドメンバ後部14に設けられた後側アーム支持部31に、それぞれ揺動可能かつ弾性変位可能に支持されるように構成されている。
【0041】
すなわち、上記ロアアーム4の前側連結部43には、車両の前後方向に延びる支持軸45と、該支持軸45を抱持するゴムブッシュ46とが設けられている。そして、上記支持軸45の前後両端に設けられた締結部が、締結ボルトを介して上記第2マウントブラケット17の基端部に設けられた前側アーム支持部18に締結されることにより、上記ロアアーム4の前側連結部43が支持軸45を支点にして回動可能に支持されるとともに、上記ゴムブッシュ46が有する弾力性に応じて弾性変位可能に支持されている。
【0042】
上記サイドメンバ前部13とサイドメンバ後部14との間に設置された第2マウントブラケット17は、
図10および
図11に示すように、第3クロスメンバ11の側端部から斜め上方かつ車幅方向外方側に向けて突設された上部パネル75と、該上部パネル75の下方に配設された下部パネル76と、締結ボルト53を介して上記サイドフレーム3の下面に締結される筒状取付部54とを有している。
【0043】
上記第2マウントブラケット17の上部パネル75は、上記第3クロスメンバ11の側端部上面から斜め上方に延びる上壁板77と、該上壁板77の前後両側端部から下方に延びる一対の側壁板78と、上記上壁板77の車幅方向内側端部から下方に延びる内壁板79とを有し、該上壁板77および側壁板78の先端部(車幅方向外側端部)には、上記筒状取付部54が溶接されることにより固定されている。また、上記側壁板78の先端部には、車両の衝突時に所定の衝突荷重がフロントサブフレーム5に入力された際に、上記筒状取付部54の支持部を変形させることにより、上記サイドフレーム3から第2マウントブラケット17が離脱するのを促進するための脆弱部となる上下一対の切欠き57,58が形成されている。
【0044】
上記第2マウントブラケット17の下部パネル76は、上部パネル75の上壁板77と所定間隔を置いてその下方に設置され、上記下部パネル76の先端部上面に、上記筒状取付部54の下端部が溶接されるようになっている。そして、上記下部パネル76の外周辺部にアッパパネル75の側壁板78および内壁板79の下端部が溶接されることにより、車幅方向に延びる閉断面80を形成する閉断面構造体が上記第2マウントブラケット17によって構成されている。
【0045】
上記第2マウントブラケット17を構成する上部パネル75および下部パネル76は、上記サイドメンバ前部13およびサイドメンバ後部14を構成するパイプ材の板厚よりも厚肉に形成されるとともに、上記第3クロスメンバ11の上部パネル22および下部パネル23を構成する鋼板材よりも厚肉の鋼板材等により形成されている。また、上記サイドメンバ前部13の後端部が、上記第2マウントブラケット17の基端部前面に溶接されるとともに、上記サイドメンバ後部14の前端部が、上記第2マウントブラケット17の基端部後面に溶接されることにより、該第2マウントブラケット17を介して上記サイドメンバ前部13とサイドメンバ後部14とが相連結されている。
【0046】
上記上部パネル22と下部パネル23とにより車幅方向に延びる略矩形状の閉断面を形成する上記第3クロスメンバ11の側端部が、上記第2マウントブラケット17を構成する上部パネル75の内壁板79に接合されるとともに、上記下部パネル76の基端部(下方部)に前側アーム支持部18を構成する前後一対のナット部材が固着されている。そして、上記下部パネル76の基端部に設けられた前側アーム支持部18と、上記上部パネル75の内壁板79に接合された第3クロスメンバ11とが、上記第2マウントブラケット17を介して相連結されている。
【0047】
上記ロアアーム4の後側連結部44には、
図9に示すように、上下方向に延びる支持軸62と、該支持軸62を抱持するゴムブッシュ63とが設けられている。上記支持軸62の上下両端部が、サイドメンバ後部14と第1クロスメンバ8の接合部20とに跨るように架設された上下一対のプレート材からなる上記後側アーム支持部31に固定されることにより、上記ロアアーム4の後側連結部44が、支持軸62を支点にして回動可能に支持されるとともに、上記ゴムブッシュ63が有する弾力性に応じて弾性変位可能に支持されている。
【0048】
上記フロントサブフレーム5は、ロアアーム4を有するフロントサスペンション装置等がサブアッシーされた状態で車両の組立ラインに搬入されるとともに、上記サイドフレーム3の下方から車体の前部に導入される。そして、上記フロントサブフレーム5のサイドメンバ7に設けられた第1,第2マウントブラケット16,17の上端部がサイドフレーム3の下面にボルト止めされることにより、上記サイドメンバ7の前端部および前後方向中央部がそれぞれサイドフレーム3に取り付けられる。
【0049】
また、上記第1クロスメンバ8の後端部に設けられた接合部20が、フロアパネル9の下面に設置されたフロアフレーム37の前端部にボルト止めされるとともに、上記第2クロスメンバ10の左右両端部に設けられた固定部34がフロアトンネル35の下端部に沿って設置されたトンネルロアフレーム38の前端部にボルト止めされることにより、上記フロントサブフレーム5の左右に設けられた両サイドメンバ7の後端部が、それぞれ左右二個所において上記フロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38からなる車体側強度部材に固定される。
【0050】
そして、車両用エンジン等からなるパワープラント1が左右のサイドフレーム3の間に設置され、かつ該パワープラント1の後部マウント24が上記第3クロスメンバ11の前面に形成された開口部25からパワープラント支持部26に導入されてボルト止めされることにより、パワープラント1の後部がフロントサブフレーム5に支持されるように構成されている。
【0051】
上記構成において、車両の走行時に、例えば
図4および
図5の矢印Aに示すように、車体の一方(右側)に位置するロアアーム4の前側連結部43から第2マウントブラケット17に設けられた前側アーム支持部18に横力が入力された場合には、該横力が、矢印Bに示すように上記第3クロスメンバ11を介して他方(左側)のサイドメンバ7に伝達されるとともに、矢印Cに示すように上記第3クロスメンバ8の支持ブラケット27から第1クロスメンバ8の車幅方向中央部28および左側傾斜部29に伝達され、その後方側に位置するフロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38等に伝達されて支持される。
【0052】
また、車両の走行時に、例えば
図4および
図5の矢印Dに示すように、車体の一方(右側)に位置するロアアーム4の後側連結部44からサイドメンバ7に設けられた後側アーム支持部31に入力された横力は、矢印Eに示すように、第1クロスメンバ8の右側傾斜部29からその車幅方向中央部28および第3クロスメンバ11に伝達される。そして、該第3クロスメンバ11に伝達された横力が、矢印Bに示すように他方(左側)のサイドメンバ7に伝達されるとともに、矢印Cに示すように上記第3クロスメンバ8の支持ブラケット27から第1クロスメンバ8の車幅方向中央部28および左側傾斜部29に伝達され、その後方側に位置するフロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38等に伝達されてそれぞれ支持される。
【0053】
一方、車両の衝突時に、例えば
図4および
図5の矢印Fに示すように、車体の左側に位置するサイドメンバ前部13に衝突荷重が入力された場合には、該衝突荷重が、矢印G,Hに示すように、車体の左側に位置する第1クロスメンバ8の後部に配設された接合部20および第2クロスメンバ10の固定部34を介して車体左側のフロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38にそれぞれ伝達され、これらに分散されて支持される。さらに、上記衝突荷重が、矢印I,Jに示すように、車体の右側に位置する第1クロスメンバ8の接合部20および第2クロスメンバ10の固定部34を介してフロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38に伝達され、これらにも分散されてそれぞれ支持される。
【0054】
したがって、上記クラッシュカン15の変形に応じて吸収することができない所定の衝突荷重がフロントサブフレーム5のサイドメンバ7に入力された場合に、上記サイドメンバ後部14が内倒れしたり、サイドメンバ7の後端部が車体側強度部材から離脱したりすること等を効果的に抑制しつつ、上記サイドメンバ前部13に衝突荷重を集中的に作用させて、これを例えば蛇腹状に変形させることにより、車両の衝突時に入力される衝突荷重を効率よく吸収することができる。
【0055】
さらに、車両の衝突時に上記フロントサブフレーム5に支持されたパワープラント1を後退させる方向に大きな衝突荷重が作用した場合には、上記パワープラント1のアクスルシャフトが上記第2マウントブラケット17に当接する等により、上記サイドフレーム3の下面に締結された第2マウントブラケット17の筒状取付部54を後方に押動する荷重が作用することになる。そして、該筒状取付部54の支持部には、上記サイドフレーム3から第2マウントブラケット17が離脱するのを促進する脆弱部、つまり上記側壁板78の切欠き57,58が設けられているため、車両の衝突時に所定の衝突荷重が作用すると、上記筒状取付部54の支持部を大きく変形させてサイドフレーム3から第2マウントブラケット17を離脱させることができる。
【0056】
また、
図1に示すように、側面視で前上がりの傾斜状態で設置されたサイドメンバ前部13には、車両の衝突時に該サイドメンバ前部13を斜め下方に押動する衝突荷重Kが作用するため、上記第1クロスメンバ8の後部に配設された上記接合部20および固定部34からなる二個所の固定部を支点として、上記フロントサブフレーム5が下方に揺動変位することが許容され、該フロントサブフレーム5に保持された上記パワープラント1が下方に誘導されて下降することになる。
【0057】
上記のようにロアアーム4からなるサスペンションアームを支持する前側アーム支持部18と、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ7と、上記左右の前側アーム支持部18を連結するように車幅方向に延設された第3クロスメンバ11からなるセンタクロスメンバとを有するフロントサブフレーム構造において、サイドメンバ7を、上記前側アーム支持部18よりも前方側に位置する閉断面形状のサイドメンバ前部13と、上記前側アーム支持部18よりも後方側に位置する閉断面形状のサイドメンバ後部14とに分割し、かつ上記前側アーム支持部18と第3クロスメンバ11とを、車幅方向に延びる閉断面80を構成する第2マウントブラケット(閉断面構造体)17を介して相連結するように構成した場合には、簡単かつコンパクトな構成で、車両の走行時にロアアーム4からフロントサブフレーム5に入力される横力等を安定して支持できるという利点がある。
【0058】
すなわち、上記サイドメンバ7を閉断面形状のパイプ状体からなるサイドメンバ前部13とサイドメンバ後部14とにより構成したため、該サイドメンバ7を軽量で高剛性に形成することができる。そして、車両の走行時に、例えば車体の一方側に位置するロアアーム4から上記前側アーム支持部18に入力された横力等を、上記第2マウントブラケット17から第3クロスメンバ11に直接、伝達するとともに、該第3クロスメンバ11を介して車体の他方側に伝達することができるため、上記サイドメンバ前部13およびサイドメンバ後部14の壁面部が上記横力等に応じて振動するのを抑制しつつ、該横力等を安定して支持することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、サイドメンバ前部13の後端部およびサイドメンバ後部14の前端部を上記第2マウントブラケット17からなる閉断面構造体にそれぞれ接合するように構成したため、該第2マウントブラケット17を、サイドメンバ前部13とサイドメンバ後部14との連結部材として機能させることができる。したがって、簡単かつコンパクトな構成で、車両の衝突時に上記サイドメンバ前部13に入力された衝突荷重を、上記第2マウントブラケット17を介してサイドメンバ後部14および上記第3クロスメンバ11に伝達することにより、車体の全体に分散させて効率よく支持できるという利点がある。
【0060】
さらに、上記実施形態に示すように、サイドメンバ前部13を、車両の前後方向に延びる複数本の稜線13aと、相隣接する稜線13a間に配設された平板部13bとを備えた角パイプ状等の断面形状とした場合には、上記フロントサブフレーム5を構成するサイドメンバ前部13を大型化することなく、車両の衝突時に該サイドメンバ前部13に入力された衝突荷重を充分に支持しつつ、上記サイドメンバ後部14およびその後方に設けられた車体側強度部材に上記衝突荷重を効果的に伝達することができる。そして、上記サイドメンバ前部13に入力された衝突荷重が一定値以上となった時点で、該サイドメンバ前部13を蛇腹状に塑性変形させる等により上記衝突荷重を効果的に吸収することができるため、該衝突荷重がサイドメンバ後部14および車室内等に及ぶのを効果的に防止できるという利点がある。
【0061】
上記実施形態では、サイドメンバ後部14を、サイドメンバ前部13の平板部13bに比べて曲率の大きい湾曲面を備えた丸パイプ状の断面形状としたため、車両の走行時にロアアーム4の後側連結部44から第2マウントブラケット17を介してサイドメンバ後部14に入力された横力等に応じてサイドメンバ後部14の壁面部が面振動したり、あるいはその断面形状が塑性変形したりするのを効果的に防止することができる。したがって、上記のようにサイドメンバ前部13を角パイプ状の断面形状とするとともに、サイドメンバ後部14を丸パイプ状等の断面形状とすることにより、車両の衝突時に上記サイドメンバ前部13に入力された衝突荷重に対する耐力を向上させて該衝突荷重を効果的に吸収できるという効果と、車両の走行時に入力された横力に応じてフロントサブフレーム5が振動するのを抑制しつつ、上記横力に対する耐力を効果的に向上できるという効果とを両立することができる。
【0062】
なお、上記サイドメンバ前部13を、略正方形以外のパイプ状断面形状、例えば長方形または六角形等からなる複数の稜線と各稜線間に設置された平板部とを備えた角パイプ状の断面形状とし、またサイドメンバ後部14を、上記丸パイプ状以外のパイプ状断面形状、例えばサイドメンバ前部13の平板部13bに比べて曲率の大きい湾曲面を備えた楕円形またハート形等の断面形状としてもよい。このように構成した場合においても、車両の衝突時に上記サイドメンバ前部13に入力された衝突荷重に対する耐力を向上させて該衝突荷重を効果的に吸収することができるという効果と、車両の走行時に入力された横力等に応じてフロントサブフレーム5が振動するのを効果的に防止しつつ、上記横力に対する耐力を効果的に向上させることができるという効果とが同時に得られるという利点がある。
【0063】
また、上記実施形態では、ロアアーム4の前側連結部43を支持する前側アーム支持部18と、左右のサイドメンバ7間に設置された第3クロスメンバ11とを相連結する閉断面構造体を、サイドフレーム3からなる車体フレームの前後方向中央部に取り付けられる第2マウントブラケット17により構成したため、車両の走行時に、上記ロアアーム4から前側アーム支持部18に入力された横力等を、第2マウントブラケット17から上記サイドフレーム3からなる車体フレームに伝達することにより、該横力等を、より効率よく車体の全体に分散させて効果的に支持できるという利点がある。
【0064】
上記実施形態に示すように、第2マウントブラケット17を構成する鋼板材等の板厚を、サイドメンバ前部13およびサイドメンバ後部14を構成するパイプ材の板厚よりも厚肉に形成した場合には、上記フロントサブフレーム5の主要部を構成するサイドメンバ7を効果的に軽量化しつつ、車両の走行時に、上記ロアアーム4から該第2マウントブラケット17に入力された横力等を、上記第3クロスメンバ11およびサイドメンバ7を介して車体の全体に分散させることにより効果的に支持できるという利点がある。
【0065】
また、上記第2マウントブラケット17を構成する鋼板材等の板厚を、上記第3クロスメンバ11を構成する上部パネル22および下部パネル23よりも厚肉に形成した場合には、上記フロントサブフレーム5の主要部を構成する第3クロスメンバ11からなるセンタクロスメンバを効果的に軽量化しつつ、車両の衝突時に、上記サイドメンバ前部13から該第2マウントブラケット17に入力された衝突荷重を、上記サイドメンバ後部14等に伝達することにより安定して支持できるという利点がある。
【0066】
さらに、上記実施形態に示すように、第3クロスメンバ11を、車幅方向に伸びる閉断面を形成する上部パネル22と下部パネル23により構成し、かつ該第3クロスメンバ11の後端部を上記第2マウントブラケット17の後端部よりも後方側に位置させるように、第3クロスメンバ11と第2マウントブラケット17とを車両の前後方向にオフセットさせて配設した場合には、上記第3クロスメンバ11の側端部を第2マウントブラケット17とサイドメンバ後部14の前方部とに跨るように架設することにより、該第2マウントブラケット17とサイドメンバ後部14との連結部を上記第3クロスメンバ11により補強することができるため、上記フロントサブフレーム5の剛性を効果的に向上させることができる。
【0067】
また、上記第3クロスメンバ11の車幅方向中央部28からその左右外方側に傾斜しつつ車両の後方側に向けて延びる左右一対の傾斜部29を備えたパイプ状部材からなる第1クロスメンバ8を設け、該第1クロスメンバ8の左右両側部をフロアトンネル35の左右に設置されたフロアフレーム37からなる車体側強度部に連結するように構成した場合には、上記ロアアーム4の前側連結部43から第3クロスメンバ11の前方部に入力された横力等を、該第3クロスメンバ11から第1クロスメンバ(パイプ状部材)8の車幅方向中央部28および左右の傾斜部29を介してフロアパネル9に設置されたフロアフレーム37等の車体側強度部材に伝達することにより効果的に支持できるという利点がある。
【0068】
しかも、車両の衝突時には、上記サイドメンバ前部13に入力された衝突荷重を、上記第3クロスメンバ11の車幅方向中央部および第1クロスメンバ8の左右傾斜部29からその後方に配設されたフロアフレーム37等に伝達し、これらに分散させてそれぞれ支持することができるため、上記衝突荷重に応じてサイドメンバ後部14が内倒れすること等を第1クロスメンバ8により効果的に抑制しつつ、上記サイドメンバ前部13に衝突荷重を集中的に作用させてこれを例えば蛇腹状等に圧縮変形させることにより、車両の衝突時に入力される衝突荷重を効率よく吸収できるという利点がある。
【0069】
すなわち、上記実施形態では、フロントサブフレーム5に、ロアアーム4からなるサスペンションアームの前側連結部43を支持する前側アーム支持部18およびロアアーム4の後側連結部44を支持する後側アーム支持部31が設けられた左右一対のサイドメンバ7と、該左右のサイドメンバ7の間に配設されて上記前側アーム支持部18の設置部を連結するように車幅方向に延設された第3クロスメンバ(センタクロスメンバ)11とを有するフロントサブフレーム構造において、上記第3クロスメンバ11に設けられた支持ブラケット27に支持される車幅方向中央部28と、その左右両端部から外方側に傾斜しつつ車両の後方側に延設された一対の傾斜部29とを有するパイプ状部材からなる第1クロスメンバ8を設置し、該第1クロスメンバ8の左右両端部に設けられた接合部20をフロアフレーム37からなる車体側強度部材に接合したため、該第1クロスメンバ8の車幅方向中央部28をフロアトンネル35の前部下方に位置させることなく、車両の走行時に上記ロアアーム4の前側連結部43および後側連結部44からフロントサブフレーム5に入力された横力を、上記第3クロスメンバ8および第1クロスメンバ8を介して、フロアパネル9に設置されたフロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38からなる車体側強度部材に伝達することにより安定して支持することができる。
【0070】
したがって、従来例のように大径のU字状パイプ材からなる連結部材の本体部、または車両用サブフレームを構成する後方のクロスパイプがフロアトンネル35の前部下方に設置されることに起因して、該フロアトンネル35内に設置されるエンジンの排気管1aやプロペラシャフト等のレイアウト性が阻害されたり、上記大径のU字状パイプ材等がフロアパネル9の下方に配設されることによりフロアパネル9の地上高が高くなって、車両の乗降性、繰安性および空力特性が悪化したりする等の弊害を生じることなく、車両の走行時に上記ロアアーム4からフロントサブフレーム5に入力された横力等を安定して支持できるという利点がある。
【0071】
また、上記のようにパワープラント配置スペースの側方部に沿って車両の前後方向に延びるように設置されたサイドメンバ7の後端部を、上記フロアフレーム37等の車体側強度部材に対する接合部20よりも車幅方向内方側に位置する第1クロスメンバ8の左右両側部前面に連結したため、車両の衝突時に上記サイドメンバ7に入力された衝突荷重を上記第1クロスメンバ8の左右両側部により受け止めることができる。したがって、上記サイドメンバ7の後端部が屈曲変形するのを効果的に防止しつつ、上記サイドメンバ7に入力された衝突荷重を、第1クロスメンバ8の後部に配設された接合部20からフロアフレーム37等に伝達して効果的に支持することができる。そして、所定の衝突荷重がフロントサブフレーム5のサイドメンバ7に作用した場合に、該衝突荷重を上記サイドメンバ前部13に集中的に作用させて、該サイドメンバ前部13を蛇腹状に変形させる等により、上記衝突荷重を効率よく吸収できるという利点がある。
【0072】
さらに、上記衝突荷重を、
図3および
図4の矢印I,Jに示すように、第3クロスメンバ11の支持ブラケット27から第1クロスメンバ8の傾斜部29を介して車両の斜め後方に伝達し、第1クロスメンバ8の後端部に配設された接合部20および第2クロスメンバ10の固定部34から、上記車体の右側に位置するフロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38に分散させてそれぞれ支持することができる。このため、上記衝突荷重に応じてサイドメンバ後部14が内倒れすること等を第1クロスメンバ8により効果的に抑制しつつ、上記サイドメンバ前部13に衝突荷重を集中的に作用させてこれを例えば蛇腹状等に圧縮変形させることにより、車両の衝突時に入力される衝突荷重を効率よく吸収することができる。
【0073】
また、車両の衝突時に、上記フロントサブフレーム5に支持されたパワープラント1を後退させる方向に作用する衝突荷重に応じ、パワープラント1のアクスルシャフトを上記サイドメンバ7の第2マウントブラケット17に当接させる等により、該第2マウントブラケット17の締結状態を解除し、かつ
図1に示すように、側面視において前上がりの傾斜状態で設置されたサイドメンバ前部13を斜め下方に押動する方向に作用する衝突荷重Kに応じ、上記第1クロスメンバ8の後部に配設された二個所の固定部を支点として、上記フロントサブフレーム5が下方に揺動変位することが許容されるように構成したため、車両の衝突時に該フロントサブフレーム5に保持された上記パワープラント1を下方に誘導して、該パワープラント1がダッシュパネル2に干渉するのを抑制することができ、車室内にパワープラント1が侵入すること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0074】
上記実施形態に示すようにサイドメンバ前部13を、平面視でサイドメンバ後部14の前端近傍から車幅方向の外方側に傾斜させつつ車両の前方側に延びるように設置した場合には、該サイドメンバ前部13の長さを充分に確保してその全体を衝突荷重の吸収部として機能させることができる。また、上記サイドメンバ前部13の後方側において車幅方向の内側寄りに配設された第2マウントブラケット17の車幅方向外側面に前側アーム支持部18を設けたため、該前側アーム支持部18を車幅方向の内方側に位置させることができ、これにより上記ロアアーム4からなるサスペンションアームのアーム長(車幅方向寸法)を充分に確保して、サスペンションジオメトリーを効果的に向上させることができるという利点がある。
【0075】
また、上記実施形態では、サイドメンバ後部14に、図外のスタビライザーまたはステアリングラック等からなる車両用補機の取付部となる3本の丸パイプ材19を設けた構造としたため、上記サイドメンバ後部14を補強する別体の補強部材を設けることなく、上記車両用補機の取付部等を利用してサイドメンバ後部14を簡単な構成で効果的に補強することができる。したがって、上記サイドメンバ後部14および第1クロスメンバ8に入力された車両の衝突荷重および走行時の横力等に対するフロントサブフレーム5の剛性を容易かつ充分に確保し、上記衝突荷重に応じてサイドメンバ後部14が内倒れすること等を効果的に防止できるとともに、車両の走行時にロアアーム4から入力される横力等によりフロントサブフレーム5が変形することを抑制して車両の走行安定性を効果的に向上できるという利点がある。
【0076】
さらに、上記実施形態に示すように、ロアアーム4からなるサスペンションアームの後側連結部44を支持する後側アーム支持部31を、上記パイプ状部材からなる第1クロスメンバ8の側端部に設けられた接合部20と上記サイドメンバ後部14の後端部とに跨るように架設した場合には、該サイドメンバ後部14の後端部を補強するための補強部材を別体に設けることなく、上記後側アーム支持部31を利用してサイドメンバ後部14の後方部分を簡単な構成で効果的に補強することができる。したがって、上記サイドメンバ後部14および第1クロスメンバ8に入力された車両の衝突荷重および走行時の横力等に対する剛性を容易かつ充分に確保し、上記衝突荷重に応じてサイドメンバ後部14が内倒れすること等を効果的に防止できるとともに、車両の走行時にロアアーム4から入力される横力等によりフロントサブフレーム5が変形することを抑制して車両の走行安定性を効果的に向上できるという利点がある。
【0077】
上記実施形態では、フロアトンネル35の前端部直下に配設されて上記第1クロスメンバ8の左右両端部を連結するように車幅方向に延びる第2クロスメンバ(リヤクロスメンバ)10を設け、かつ該第2クロスメンバ10の車幅方向中央部における閉断面の面積を、上記パイプ状部材からなる第1クロスメンバ8の車幅方向中央部28における閉断面の面積よりも小さな値に設定したため、上記フロアトンネル35の前部下方に大型のリヤクロスメンバ等を設けた場合のように、上記フロアトンネル35内に設置されるエンジンの排気管1aまたはプロペラシャフト等からなる各部材のレイアウト性が阻害されること等を抑制しつつ、上記第1クロスメンバ8からトンネルロアフレーム38に入力された車両の衝突荷重および走行時の横力等に対する剛性を効果的に向上できるという利点がある。したがって、簡単かつ軽量な構成で、車両の走行時に上記フロントサブフレーム5の第1クロスメンバ8からトンネルロアフレーム38に入力された横力等に応じてフロアトンネル35が拡縮変形すること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0078】
特に、上記実施形態に示すように、フロアトンネル35の前部上壁に後下がりの傾斜部35aが形成された車両において、該傾斜部35aの後端よりも前方側に第2クロスメンバ10を配設し、かつ該第2クロスメンバ10の車幅方向中央部における上下寸法を上記パイプ状部材からなる第1クロスメンバ8よりも小さな値に設定した場合には、上記フロアトンネル35の上面部(傾斜部35a)と、上記第2クロスメンバ10との間に、上記エンジンの排気管1aまたはプロペラシャフト等を設置するためのスペースを充分に確保しつつ、第2クロスメンバ10によりフロアトンネル35の前部下方を効率よく補強して、その拡縮変形を効果的に防止することができる。
【0079】
なお、フロアトンネル35の前部上壁に形成された後下がりの傾斜部35aの前端よりも前方側に、上記第1クロスメンバ8の左右両端部を連結する第2クロスメンバ10が配設された車両では、該第2クロスメンバ10の車幅方向中央部における上下寸法を上記第1クロスメンバ8よりも大きな値に設定した場合においても、上記第2クロスメンバ10の車幅方向中央部における前後寸法を第1クロスメンバ8よりも小さな値に設定して上記第2クロスメンバ10をなるべく車両の前方側に位置させることにより、上記フロアトンネル35の上面部(傾斜部35a)と、上記第2クロスメンバ10との間に、エンジンの排気管1aまたはプロペラシャフト等を設置するためのスペースを充分に確保することができる。
【0080】
一方、
図12に示すように、上記フロアトンネル35の前部上壁35bが略水平に形成されるとともに、該フロアトンネル35の前端よりも後方側に、上記第1クロスメンバ8の左右両端部を連結する第2クロスメンバ10Aが配設された車両では、該第2クロスメンバ10Aの車幅方向中央部における前後寸法の如何に拘わらず、その上下寸法を上記第1クロスメンバ8の上下寸法よりも小さな値に設定して上記第2クロスメンバ10Aをなるべく車両の下方側に位置させることにより、上記フロアトンネル35の前部上壁35bと、上記第2クロスメンバ10Aとの間に、エンジンの排気管1aまたはプロペラシャフト等を設置するためのスペースを充分に確保することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、第2クロスメンバ10の左右両側方部に設けられた固定部34を、上記フロアフレーム37からなる車体側強度部材と所定間隔を置いた位置でフロアトンネル35の下辺部に沿って配設されたトンネルロアフレーム38からなる他の車体側強度部材に固定している。そして、
図8に示すように、上記フロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38からなる両車体側強度部材と、第1クロスメンバ8の接合部20および第2クロスメンバ10の固定部34とにより、正面視でU字状に連続した構造体を形成したため、上記第1クロスメンバ8および第2クロスメンバ10の支持部における車体の剛性を充分に確保して、上記第1クロスメンバ8に入力された走行時の横力等を、上記接合部20および固定部34からフロアフレーム37およびトンネルロアフレーム38にそれぞれ伝達して効果的に支持することができる。しかも、上記フロアフレーム37とトンネルロアフレーム38との間に沿って配策されたハーネス等を、上記接合部20および固定部34とフロアパネル9との間に形成された開口部40からエンジンルーム内へ容易に導出させることができるという利点がある。