特許第5949069号(P5949069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5949069-低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949069
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/48 20060101AFI20160623BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20160623BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20160623BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20160623BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20160623BHJP
   C07C 15/24 20060101ALI20160623BHJP
   C07C 2/10 20060101ALI20160623BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160623BHJP
【FI】
   B01J29/48 Z
   B01J37/04 101
   C07C15/04
   C07C15/06
   C07C15/08
   C07C15/24
   C07C2/10
   !C07B61/00 300
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-84495(P2012-84495)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-212469(P2013-212469A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】馬 洪涛
(72)【発明者】
【氏名】山本 陽
【審査官】 大城 公孝
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−501286(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/090121(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07C 2/10
C07C 15/00−15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンまたは炭素数が2〜6の飽和または不飽和炭化水素を接触反応させて芳香族炭化水素を生成する低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法であって、
顕微鏡観察下で無作為抽出して一方向粒子径を計測し、計測した粒子径の平均をとった平均粒子径が1.0μm以上5.0μm以下であり、アルミナ(Al23)に対するシリカ(SiO2)のモル比が10〜100であるZSM−5にモリブデンが担持された第1のメタロシリケートと、前記平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下であり、アルミナ(Al23)に対するシリカ(SiO2)のモル比が10〜100であるZSM−5にモリブデンが担持された第2のメタロシリケートと、の混合粉末であり、前記低級炭化水素芳香族化触媒に対して80〜20質量%の第1のメタロシリケートを含有し、前記第2のメタロシリケートの平均粒子径が、前記第1のメタロシリケートの平均粒子径の5分の1以下である混合粉末を加圧成型する
ことを特徴とする低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低級炭化水素を接触反応させて芳香族炭化水素を生成する触媒及びこの触媒の製造方法に関する。特に、メタンを主成分とする天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートの高度利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートは、地球温暖化対策として最も効果的なエネルギー資源と考えられ、その利用技術に関心が高まっている。メタン資源は、そのクリーン性を活かして、次世代の新しい有機資源、燃料電池用の水素資源として注目されている。
【0003】
メタンからベンゼンなどの芳香族炭化水素と水素を製造する方法としては、例えば非特許文献1のように、触媒の存在下でメタンを反応させる方法が知られている。この際の触媒としては、ZSM−5に担持されたモリブデンが有効とされている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、これらの触媒を使用した場合でも、炭素析出が多いことやメタンの転化率が低いという問題がある。
【0005】
上記従来技術を改善するために、芳香族炭化水素の原料ガスである低級炭化水素(反応ガス)と、触媒活性の維持若しくは触媒活性の再生のためのガスである水素含有ガスまたは水素ガス(再生ガス)とを周期的にかつ交互に切り替えて、触媒と接触反応させている(例えば、特許文献2)。このように、反応ガスと再生ガスを交互に触媒に接触反応させることにより、触媒の経時劣化を抑えつつ触媒反応を持続させている。
【0006】
また、触媒との接触反応における反応温度を規定することで、高い触媒活性で、かつ長期間の触媒安定性を両立する技術が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−272366号公報
【特許文献2】特開2003−26613号公報
【特許文献3】特開2010−209057号公報
【特許文献4】特開2010−125342号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JOURNAL OF CATALYSIS、1997、Volume165、p.150−161
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら触媒を長期間使用に耐えうるようにするためには、触媒の化学的な活性を長期間にわたって維持することだけでなく、触媒の物理的耐久性を長期間にわたって維持することも重要となる。
【0010】
一般的には、触媒の物理的耐久性を維持するために、酸化ケイ素(SiO2)や酸化アルミニウム(Al23)などを無機結合剤として使用する。しかし、これら無機結合剤を触媒に介在させると、触媒反応に関係ない副生成物が生成したり、コーキングが発生したりするなど、触媒の機能を低下させる要因が増加するおそれがあった。
【0011】
これに対して、無機結合剤を添加することなく、触媒粒子を加圧成型する技術が提案されており、一定の触媒活性を得ている(例えば、特許文献4)。この方法では、触媒の成型が容易にできるため、触媒開発において重要な触媒活性評価に要する期間の短縮に大きな効果があった。その一方で、触媒に用いるメタロシリケートの粒子径の大きさによっては、メタロシリケート同士の固着強度が弱く、触媒の成型が難しくなるおそれがあった。
【0012】
触媒金属を担持するメタロシリケートは、触媒の反応効率の観点からは、メタロシリケートの特徴である細孔構造を持つ結晶構造の安定性に優れ、反応に有効な活性点が多くなる粒子径の大きいメタロシリケートが望ましい。しかしながら、メタロシリケートの粒子径を大きくすると、成型性が悪くなり、長期間の使用中に成型体が崩壊し、安定した触媒反応を行うことが困難となるおそれがある。これに対して、メタロシリケートの粒子径を小さくすると、メタロシリケートの成型性が向上するが、粒子径の大きいメタロシリケートと比較して反応初期の触媒活性が低下する。
【0013】
上記事情に鑑み、本発明は、低級炭化水素を接触反応させて芳香族化合物を生成する低級炭化水素芳香族化触媒の触媒活性の向上とこの触媒の成型性の向上に貢献する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明の低級炭化水素芳香族化触媒の一態様は、触媒金属が担持された第1のメタロシリケートと、前記第1のメタロシリケートの粒子径より小さい粒子径を有する第2のメタロシリケートに前記触媒金属を担持した触媒担持メタロシリケートの混合物を加圧成型して形成することを特徴としている。
【0015】
また、上記目的を達成する本発明の低級炭化水素芳香族化触媒の他の態様は、上記低級炭化水素芳香族化触媒において、前記第2のメタロシリケートの粒子径は、前記第1のメタロシリケートの粒子径の5分の1以下であることを特徴としている。
【0016】
また、上記目的を達成する本発明の低級炭化水素芳香族化触媒の他の態様は、上記低級炭化水素芳香族化触媒において、前記第1のメタロシリケートの粒子径は、1.0μm以上5.0μm以下であることを特徴としている。
【0017】
また、上記目的を達成する本発明の低級炭化水素芳香族化触媒の他の態様は、上記低級炭化水素芳香族化触媒において、前記第2のメタロシリケートの粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることを特徴としている。
【0018】
また、上記目的を達成する本発明の低級炭化水素芳香族化触媒の他の態様は、上記低級炭化水素芳香族化触媒において、前記第2のメタロシリケートを、前記混合物の質量に対して20%以上80%以下添加することを特徴としている。
【0019】
また、上記目的を達成する本発明の低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法の一態様は、低級炭化水素を接触反応させて芳香族化合物を生成する低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法であって、触媒金属が担持される第1のメタロシリケートと、当該第1のメタロシリケートの粒子径より小さい粒子径を有する第2のメタロシリケートとを混合し、混合して得られた混合物に、前記触媒金属を担持し、この触媒金属が担持された混合物を加圧成型することを特徴としている。
【0020】
また、上記目的を達成する本発明の低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法の他の態様は、低級炭化水素を接触反応させて芳香族化合物を生成する低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法であって、触媒金属が担持される第1のメタロシリケートに、当該触媒金属を担持し、前記第1のメタロシリケートの粒子径より小さい粒子径を有する第2のメタロシリケートに前記触媒金属を担持し、前記触媒金属が担持された第1のメタロシリケートと第2のメタロシリケートとを混合し、混合して得られた混合物を加圧成型することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
以上の発明によれば、低級炭化水素を接触反応させて芳香族化合物を生成する低級炭化水素芳香族化触媒の触媒活性の向上と触媒の成型性の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る低級炭化水素芳香族化触媒の触媒活性評価に用いた反応装置の概略図である。
図2】本発明の実施例に係る低級炭化水素芳香族化触媒の反応時間に対する触媒活性の変化を示す特性図である。
図3】比較例に係る低級炭化水素芳香族化触媒の反応時間に対する触媒活性の変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、低級炭化水素を接触反応させてベンゼン及びナフタレン類を主成分とする芳香族炭化水素と高純度の水素ガスを製造する低級炭化水素芳香族化触媒(以下、「触媒」と省略する)及びこの触媒の製造方法に関する発明である。
【0024】
本発明の実施形態に係る触媒は、例えば、メタロシリケートに触媒金属が担持された形態が挙げられる。
【0025】
触媒金属が担持されるメタロシリケートとしては、例えばアルミノシリケートの場合、シリカ及びアルミナから成り多孔質体であるモレキュラーシーブ5A、フォジャサイト(NaY及びNaX)、ZSM−5、MCM−22が挙げられる。また、リン酸を主成分とする多孔質体でALPO−5、VPI−5などの6〜13オングストロームのミクロ細孔やチャンネルからなることを特徴とするゼオライト担体や、シリカを主成分とし一部アルミナを成分として含むメゾ細孔(10〜1000オングストローム)の筒状細孔(チャンネル)で特徴付けられるFSM−16やMCM−41などのメゾ細孔多孔質担体などが例示できる。さらに、前記アルミノシリケートの他に、シリカ及びチタニアからなるメタロシリケートなども触媒として用いることができる。
【0026】
また、本発明で使用するメタロシリケートは、表面積が200〜1000m2/gであり、そのミクロ及びメゾ細孔は5〜100オングストロームの範囲内のものが望ましい。また、メタロシリケートが例えばアルミノシリケートである場合、そのシリカとアルミナの含有比(シリカ/アルミナ)が通常入手し得る多孔質体と同様にシリカ/アルミナ=1〜8000のものを用いることができるが、本発明の低級炭化水素の芳香族化反応を、実用的な低級炭化水素の転化率及び芳香族炭化水素への選択率で実施するためには、シリカ/アルミナ=10〜100の範囲内とすることがより好ましい。
【0027】
メタロシリケートは、通常プロトン交換型(H型)のものが用いられる。また、プロトンの一部がNa、K、Liなどのアルカリ金属、Mg、Ca、Srなどのアルカリ土類元素、Fe、Co、Ni、Zn、Ru、Pd、Pt、Zr、Tiなどの遷移金属元素から選ばれた少なくとも一種のカチオンで交換されていてもよい。また、メタロシリケートが、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、Th、Cu、Agなどを適量含有していてもよい。
【0028】
そして、触媒金属としてはモリブデンを用いることが好ましいが、レニウム、タングステン、鉄、コバルトを用いても良い。これらの触媒金属を組み合わせてメタロシリケートに担持してもよい。さらに、これらの触媒金属に、Mgなどのアルカリ土類元素またはNi、Zn、Ru、Pd、Pt、Zr、Tiなどの遷移金属元素から選ばれた少なくとも一種の元素をメタロシリケートに共担持してもよい。
【0029】
触媒金属(を含む前駆体)をメタロシリケートに担持させる場合、担体の質量に対する触媒金属の割合は0.001〜50%、好ましくは0.01〜40%の範囲で行う。また、メタロシリケートへ担持させる方法としては、触媒金属の前駆体の水溶液、あるいはアルコールなどの有機溶媒の溶液からメタロシリケート担体に含浸担持あるいはイオン交換方法により担持させた後、不活性ガスあるいは酸素ガス雰囲気下で加熱処理する方法がある。例えば、触媒金属の1つであるモリブデンを含む前駆体の例としては、パラモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸アンモニウム、12系モリブデン酸の他に、モリブデンの、塩化物、臭化物などのハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの鉱酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩などのカルボン酸塩などを挙げることができる。
【0030】
ここでメタロシリケートに触媒金属を担持する方法を触媒金属としてモリブデンを用いた場合を例示して説明する。まず、メタロシリケート担体にモリブデン酸アンモニウム塩の水溶液を含浸担持させる。次に、その担持体を減圧乾燥して溶媒を除いた後、窒素含有酸素気流中または純酸素気流中にて温度250〜800℃(好ましくは350〜600℃)で加熱処理する。このようにして得られた触媒金属を担持したメタロシリケートは、加圧してペレットなどの形状に成型される。成型圧力は、通常100〜400kgf/cm2である。
【0031】
なお、本発明において、低級炭化水素とはメタンや炭素数が2〜6の飽和または不飽和炭化水素を意味する。これら炭素数が2〜6の飽和または不飽和炭化水素の例として、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン、n−ブテン及びイソブテンなどを挙げることができる。
【0032】
以下、本発明に係る低級炭化水素芳香族化触媒の具体的な実施例を示して、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒及び低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法についてより詳細に説明する。
【0033】
(実施例1)
メタロシリケート担体として、次の(1),(2)に示す粒子径の異なる2種類のメタロシリケートを用いて触媒を製造した。(1),(2)では、メタロシリケートの粒子径を平均粒子径で表現している。これは、メタロシリケートの粒子径には、ある程度の誤差が含まれるからである。一般的に、ほとんどのメタロシリケートの粒子径は、平均粒子径に近い値となっているので、平均粒子径の値をメタロシリケートの粒子径とみなすことができる。実施例では、凝集粒子の影響を排除するために、顕微鏡観察下で20個の粒子を無作為抽出して一方向粒子径を計測し、その平均をとって平均粒子径を算出した。なお、平均粒子径の算出方法は、この実施例に限定されるものではなく、適宜周知の方法で平均粒子径を算出すればよい。
(1)H型ZSM−5ゼオライト(平均粒子径=約4μm、SiO2/Al23=25〜70)(以後、第1のメタロシリケート(ZSM5A)とする)
(2)H型ZSM−5ゼオライト(平均粒子径=約0.8μm、SiO2/Al23=25〜70)(以後、第2のメタロシリケート(ZSM5B)とする)
まず、第1のメタロシリケート75重量部に対して、第2のメタロシリケート25重量部を均一に混合して混合物を得た。得られた混合物に触媒金属としてモリブデンを担持した。そして、モリブデンを担持した混合物(以下、触媒粉体とする)を加圧成型して実施例1の触媒を製造した。ここで、触媒金属担持方法及び触媒粉体の加圧成型方法について詳細に説明する。
【0034】
(触媒金属担持方法)
水にモリブデン酸アンモニウム((NH46Mo724)を、0.05mol/L溶解させた含浸水溶液を調製し、この含浸水溶液に第1のメタロシリケートと第2のメタロシリケートの混合物を加えて攪拌し、第1のメタロシリケート及び第2のメタロシリケートにモリブデンを含浸させた。
【0035】
その後、モリブデンを含浸させた混合物を乾燥し、550℃で8時間焼成して、モリブデンを担持した混合物(触媒粉体)を得た。この触媒粉体に対するモリブデン担持量は、触媒全体に対して6重量%であった。
【0036】
(加圧成型方法)
上記の触媒金属担持方法で得られた触媒粉体を真空押出成型機を使用して、棒状(φ2.4mm×L5mm)に成型した。この成型時の押出圧力は、100kgf/cm2であった。
【0037】
(実施例2)
実施例2の触媒は、第1のメタロシリケートと第2のメタロシリケートの混合比が異なること以外は、実施例1の触媒と同様の方法により製造した。
【0038】
まず、第1のメタロシリケート50重量部に対して第2のメタロシリケート50重量部を均一に混合して混合物を得た。次に、得られた混合物に、実施例1と同様の触媒金属担持方法によりモリブデンを担持し、モリブデンを担持して得られた触媒粉体を実施例1と同様の加圧成型方法で加圧成型し、実施例2の触媒を製造した。実施例2の触媒のモリブデン担持量は、触媒全体に対して6重量%であった。
【0039】
(実施例3)
実施例3の触媒は、第1のメタロシリケートと第2のメタロシリケートの混合比が異なること以外は、実施例1の触媒と同様の方法により製造した。
【0040】
まず、第1のメタロシリケート25重量部に対して第2のメタロシリケート75重量部を均一に混合して混合物を得た。次に、得られた混合物に、実施例1と同様の触媒金属担持方法によりモリブデンを担持し、モリブデンを担持して得られた触媒粉体を実施例1と同様の加圧成型方法で加圧成型し、実施例3の触媒を製造した。実施例3の触媒のモリブデン担持量は、触媒全体に対して6重量%であった。
【0041】
(比較例1)
比較例1の触媒は、第1のメタロシリケートを用いて、実施例1の触媒と同様の方法により触媒を製造した。なお、第1のメタロシリケートは、粒子径が大きいので400kgf/cm2の押出圧力で成型した。
【0042】
まず、実施例1と同様の触媒金属担持方法により、第1のメタロシリケートにモリブデンを担持した触媒粉体を得て、得られた触媒粉体を実施例1と同様の加圧成型方法(押出圧力は、400kgf/cm2)で加圧成型し、比較例1の触媒を製造した。比較例1の触媒のモリブデン担持量は、触媒全体に対して6重量%であった。
【0043】
(比較例2)
比較例2の触媒は、第2のメタロシリケートを用いて、実施例1の触媒と同様の方法により触媒を製造した。
【0044】
まず、実施例1と同様の触媒金属担持方法により、第2のメタロシリケートにモリブデンを担持した触媒粉体を得て、得られた触媒粉体を実施例1と同様の加圧成型方法で加圧成型し、比較例2の触媒を製造した。比較例2の触媒のモリブデン担持量は、触媒全体に対して6重量%であった。
【0045】
(比較例3)
比較例3の触媒は、比較例1の触媒に一般的に無機結合剤として用いられる酸化ケイ素を添加して、加圧成型したものである。
【0046】
まず、実施例1と同様の触媒金属担持方法により、第1のメタロシリケートにモリブデンを担持した触媒粉体を得て、得られた触媒粉体に酸化ケイ素を添加して実施例1と同様の加圧成型方法で加圧成型し、比較例3の触媒を製造した。比較例3の触媒のモリブデン担持量は、触媒全体に対して6重量%であった。
【0047】
(比較例4)
比較例4は、酸化ケイ素の粉体を実施例1と同様の加圧成型方法で加圧成型したものである。
【0048】
(触媒安定性の評価)
実施例1〜3の触媒及び比較例1,2の触媒に圧力をかけて、各触媒の崩壊が始まる圧力を測定した。そして、比較例1の触媒の崩壊が始まる圧力に対する、各触媒(実施例1〜3及び比較例2)の崩壊が始まる圧力の大きさを圧縮強度として算出した。圧縮強度の算出結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、比較例1の触媒が最も圧縮強度が低く、容易に崩壊することがわかる。そして、触媒全体に対する第2のメタロシリケートの割合が増加するほど、触媒の圧縮強度が高くなり、第2のメタロシリケートのみからなる触媒(比較例2)で最も圧縮強度が高くなり、比較例2の触媒の物理的な安定性が高いことがわかる。
【0051】
表1に示す結果から、第2のメタロシリケートの添加量を増加させることで、第1のメタロシリケートのみからなる触媒(比較例1)より、触媒の物理的な安定性を向上させることができることが確認された。
【0052】
(触媒活性評価)
上記実施例1〜3の触媒及び比較例1〜4の触媒を、図1に示す反応装置1の石英管2(内径18mm)に充填し、充填した触媒3にメタンを接触反応させて各触媒3の触媒活性の評価を行った。触媒活性を評価した反応条件を以下に示す。
【0053】
(反応条件)
原料ガス:メタン90体積%−アルゴン10体積%
反応温度:800℃
原料ガス供給速度(触媒1g当たりの空間速度):10000ml/g/h
原料ガスを各触媒と接触反応させる前に、触媒の前処理を行った。触媒の前処理は、触媒を空気気流下550℃まで昇温し、2時間維持した後、メタン20%:水素80%の前処理ガスに切り替えて、700℃まで昇温し、1時間維持した。その後、原料ガスに切り替えて所定の温度(800℃)まで昇温し触媒の評価を行った。反応後のガス中の成分の分析は、水素、アルゴン、メタンをTCD−GCで分析し、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素をFID−GCで分析した。
【0054】
触媒活性の評価は、触媒と接触反応させた後の反応ガス100μl中のベンゼン濃度で評価した。
【0055】
(測定結果)
実施例1〜3の触媒及び比較例1,2の触媒を用いて、原料ガス(メタン+アルゴン)を接触反応させたときの、反応ガス中のベンゼン濃度の時間変化を図2に示す。また、比較例1,3,4の触媒を用いて、原料ガスを接触反応させたときの、反応ガス中のベンゼン濃度の時間変化を図3に示す。
【0056】
図2から明らかなように、実施例1の触媒は、反応開始から反応後40分のすべての反応時間にわたって、比較例1の触媒より高い触媒活性を有した。また、実施例2の触媒は、反応時間が30分以降では、すべての触媒の中で最も活性が高くなっており、優れた触媒安定性を有することがわかる。なお、実施例2,3の触媒は、反応開始時には、比較例1の触媒より触媒活性が低いものの、反応開始後およそ10分後には、比較例1の触媒よりも高い触媒活性となっていることがわかる。
【0057】
比較例1の触媒と比較例2の触媒とを比較すると、反応開始から30分間は、比較例1の触媒の方が比較例2の触媒より高い触媒活性を示している。また、反応時間が30分を超えると、比較例2の触媒の方が比較例1より高い触媒活性を有している。つまり、第1のメタロシリケートは、第2のメタロシリケートと比較して、反応初期の触媒活性が高く、触媒活性安定性が低いことがわかる。
【0058】
つまり、粒子径の大きいメタロシリケートを担体とする触媒は、メタロシリケート結晶の結晶構造が安定で、触媒反応の基点となる酸点も多い。そのため、一時的な反応活性が著しく高くなっているものと考えられる。しかしながら、メタロシリケートの粒子径が大きいと、メタロシリケート結晶内部での反応により生成した生成物が結晶外に拡散するときに時間がかかるため、メタロシリケートが有する細孔が閉塞され、触媒反応の長期安定性が次第に損なわれるものと考えられる。
【0059】
これに対して、粒子径の小さいメタロシリケートを担体とする触媒は、メタロシリケート結晶サイズが小さいため、結晶中での原料ガスの拡散が容易で、触媒反応によって生成した生成物も結晶外に速やかに拡散すると考えられる。したがって、粒子径の小さいメタロシリケートを担体とする触媒は、粒子径の大きいメタロシリケートを担体とする触媒と比較して、反応初期における触媒活性が劣るものの、触媒活性の長期安定性に優れるものと考えられる。
【0060】
なお、触媒の物理的安定性を向上させるために、従来技術において、酸化ケイ素などの無機結合剤が用いられているが、無機結合剤を添加すると、触媒の物理的安定性は向上するものの、触媒の活性が低下してしまう。例えば、図3に示すように、比較例1の触媒に一般的な無機結合剤である酸化ケイ素を添加して、加圧成型した触媒(比較例3の触媒)は、触媒の物理的な安定性が向上するものの、触媒活性は、比較例1の触媒より低くなる。これは、酸化ケイ素(比較例4の触媒)が低級炭化水素の芳香族化反応に対する触媒活性を有さないため、酸化ケイ素を添加することで、触媒反応を行う表面積の減少など、比較例1の触媒反応が阻害される要因が増大したことによるものと考えられる。
【0061】
以上のように、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒によれば、触媒金属を担持したメタロシリケートを加圧成型して得られる触媒の物理的な安定性が向上するだけでなく、低級炭化水素芳香族化触媒の反応初期における触媒活性を向上させ、触媒活性安定性を向上させることができる。
【0062】
つまり、触媒金属を担持したメタロシリケートを加圧成型して触媒を製造する際に、結合剤として、このメタロシリケートの粒子径よりも小さい粒子径のメタロシリケートに触媒金属を担持したものを添加して加圧成型することで、メタロシリケートの物理的な安定性を向上させることができる。
【0063】
このように触媒を製造することで、単に触媒の物理的な安定性が向上するだけでなく、粒子径の大きいメタロシリケートや粒子径の小さいメタロシリケートを単独で加圧成型して得られる触媒よりも高い触媒活性・高い触媒安定性を有する触媒を得ることができる。つまり、粒子径の大きいメタロシリケートの特性(反応初期における高い触媒活性)と、粒子径の小さいメタロシリケートの特性(高い触媒活性安定性と高い成型性)とが、相補的、相乗的に作用することで、粒子径の大きいメタロシリケートや粒子径の小さいメタロシリケートを単独で加圧成型した触媒よりも高い触媒活性や触媒活性安定性を有する触媒を得ることができる。
【0064】
また、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法によれば、バインダレスで、高い触媒反応活性と高い触媒活性安定性を有し、かつ高強度な低級炭化水素芳香族化触媒を得ることができる。
【0065】
以上、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒及び低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法の説明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明は、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明白なことである。したがって、このような変形及び修正がなされた形態も、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒及び低級炭化水素芳香族化触媒の製造方法に属することは当然のことである。
【0066】
例えば、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒において、メタロシリケートと触媒金属の組合せは、実施形態に限定されるものではなく、適宜周知のメタロシリケートと触媒金属とを組み合わせて製造すればよい。また、実施形態の説明では、粒子径の大きいメタロシリケートと粒子径の小さいメタロシリケートは、同じメタロシリケートと触媒金属を用いる例を挙げて説明しているが、必ずしも同じ組合せとする必要はない。
【0067】
また、実施例では、第1のメタロシリケートと第2のメタロシリケートを混合した後に、触媒金属を担持しているが、第1のメタロシリケートと第2のメタロシリケートそれぞれに触媒金属を担持した後に、触媒金属が担持された第1のメタロシリケートと第2のメタロシリケートを混合し、得られた混合物を加圧成形してもよい。
【0068】
また、粒子径の大きいメタロシリケートと粒子径の小さいメタロシリケートの組合せは、実施形態に限定されるものではなく、反応初期に高い触媒活性を得ることができる粒子径を有する触媒と、高い触媒安定性を得ることができる粒子径を有する触媒との組合せを適宜選択して用いれば、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒と同様の効果を得ることができる。例えば、反応初期に高い触媒活性を得ることができる粒子径を有するメタロシリケートに対して、このメタロシリケートの粒子径の1/5以下の粒子径を有するメタロシリケートを混合して、加圧成型することで、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒と同様の効果を得ることができる。
【0069】
一般的に入手可能なメタロシリケートの粒子径の範囲は、およそ0.1μm〜5.0μmである。より粒子径の大きいメタロシリケートを合成するためには、安定した温度条件で長時間反応させなければならない。これに対して、粒子径の小さなメタロシリケートは、比較的容易に合成することができるが、メタロシリケートの粒子径が小さくなる(例えば、粒子径が0.1μm以下となる)と、メタロシリケートの結晶性(結晶構造の均一度)が損なわれるおそれが生じる。特に、ZSM−5に代表されるゼオライトでは、長周期の結晶構造を持つため、安定して一定の結晶構造を維持するためには、ある程度の粒子径(結晶子径)が必要となる。また、既存のメタロシリケートを粉砕して、小さな粒子径を有するメタロシリケートを得ることは可能であるが、この場合も粉砕の過程で結晶構造が崩壊して、得られる触媒の触媒活性が低下するおそれがある。
【0070】
粒子径の大きなメタロシリケート(粒子径が1.0μm以上5.0μm以下、より好ましくは、4.0μm以上5.0μm以下)は、結晶性が高く反応に有効な活性点が多くなるため、反応初期の触媒活性が高い。しかし、反応の長期安定性が粒子径の小さいメタロシリケートと比較して低く、触媒反応時間の経過にともなって、触媒活性が次第に低下していく。また、粒子径の大きなメタロシリケート(例えば、粒子径が5.0μm以上のメタロシリケート)は、加圧成型性が低く、400kgf/cm2の圧力で成型した場合にも、ペレット状に成型することが困難な場合がある。これに対して、粒子径の小さいメタロシリケート(粒子径が0.1μm以上1.0μm以下のメタロシリケート、より好ましくは、粒子径が0.2μm以上0.8μm以下のメタロシリケート)は、結晶性が低く、反応初期の触媒活性が粒子径の大きなメタロシリケートと比較して低いものの、触媒活性の長期安定性は優れている。そして、粒子径の小さいメタロシリケート(例えば、粒子径が1.0μm以下のメタロシリケート)は、成型性に優れ、100kgf/cm2の圧力で容易に成型することができる。
【0071】
ゆえに、本発明の低級炭化水素芳香族化触媒において、メタロシリケートの粒子径の大きさを1.0μm以上5.0μm以下(より好ましくは、粒子径が4.0μm以上5.0μm以下)とすることで、反応初期に高い触媒活性を有するメタロシリケート(第1のメタロシリケート)を得ることができる。そして、メタロシリケートの粒子径の大きさを、0.1μm以上1.0μm以下(より好ましくは、粒子径が0.2μm以上0.8μm以下)とすることで、容易に成型可能であり、かつ結晶性(結晶構造の均一度)を維持したメタロシリケート(第2のメタロシリケート)を得ることができる。
【0072】
また、粒子径の大きいメタロシリケートと、粒子径の小さいメタロシリケートとの混合割合は、粒子径の大きいメタロシリケートの割合が多いほど反応初期において高い触媒活性を有し、粒子径が小さいメタロシリケートの割合が多いほど、高い触媒活性安定性と高い物理的安定性を示す。よって、低級炭化水素芳香族化触媒全体の質量(触媒金属の質量を除く)に対する粒子径の大きいメタロシリケートの質量の割合は、80〜20%、より好ましくは、75〜25%、より好ましくは、75〜50%とすることで、反応初期における高い触媒活性、高い触媒活性安定性及び高い物理的安定性を有する低級炭化水素芳香族化触媒を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…反応装置
2…石英管
3…触媒(低級炭化水素芳香族化触媒)
4…検出器
図1
図2
図3