特許第5949070号(P5949070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特許5949070液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949070
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20160623BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08G73/10
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-84732(P2012-84732)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-213977(P2013-213977A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】内山 克博
(72)【発明者】
【氏名】菅野 尚基
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 Yagoub Mansoori et al.,Novel POBD-Modified Organoclay and its Polyimide Nanocomposites for Removal of the Co(II) Ion,POLYMER COMPOSITES,2011年10月13日,Vol.32, No.11,pp.1862-1873,ISSN: 0272-8397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物と、下記式(1)で表される化合物[B1]を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、Acは、窒素原子を含有する2価の非芳香族複素環基又は芳香族複素環基であり、Acは、窒素原子を含有する1価の芳香族複素環基である。但し、Acは、炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記Acが、窒素原子を含有する2価の非芳香族複素環基である請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記化合物[B1]は、下記式(1−1)で表される化合物である請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【化2】
(式(1−1)中、Acは、窒素原子を含有する1価の芳香族複素環基である。)
【請求項4】
前記Acが、ピリジル基、ピリミジニル基又はピリダジニル基である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記ジアミンとして、カルボキシル基及び2つの1級アミノ基を有する化合物[B2]を更に含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物及び2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物のうちの少なくとも一種を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されており、例えばTN型やSTN型、VA型、面内スイッチング型(IPS型)等の各種液晶表示素子が知られている。これら液晶表示素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。
【0003】
また近年、液晶表示素子は、従来のようにパーソナルコンピュータ等の表示端末に使用されるだけでなく、例えば液晶テレビや、カーナビゲーションシステム、携帯電話、スマートフォン、タブレットPC、インフォメーションディスプレイなど多種の用途で使用されている。こうした多用途化に伴い、液晶表示素子では表示品位の更なる高品質化が求められており、かかる要求を満たすべく種々の液晶配向剤が提供されている(例えば、特許文献1〜4参照)。これら特許文献1〜4には、ピペラジン環を有するジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸又はポリイミドを液晶配向剤の重合体成分として用いることが開示されている。
【0004】
また、液晶表示素子としては、残像現象を低減させる要求から、直流電圧を印加した場合の蓄積電荷が少なく、かつその蓄積した電荷の緩和が速いといった特性が重要となっている。このような蓄積電荷に対する特性を改善するべく、従来、窒素原子を含有する芳香族複素環を有するジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸又はポリイミドを液晶配向剤の重合体成分として用いることが開示されている(例えば、特許文献5〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−194725号公報
【特許文献2】特開2009−175684号公報
【特許文献3】特開2010−2501号公報
【特許文献4】特開2011−28223号公報
【特許文献5】国際公開第2009/093707号
【特許文献6】国際公開第2010/035719号
【特許文献7】特開2011−154100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶表示素子の高性能化に対する要求は更に高まっており、過酷な使用環境にも耐え得る信頼性の高い液晶表示素子が求められている。例えば、液晶表示素子では、長時間の連続駆動が行われたり光ストレス下で駆動されたりする等、従来よりも長時間の光照射を受けることがある。したがって、液晶表示素子としては、表示性能の高品質化の観点から、長時間の光照射後にも電気特性を良好に維持可能(耐光性が良好)であることが求められている。また近年、スマートフォンやタブレットPCなどの静止画を主とする用途では、残像現象の低減に対する要求が一段と厳しくなっており、高温環境のような過酷な使用環境下に置かれた後であっても、直流電圧の印加に伴う蓄積電荷の緩和速度が速く、残像消去時間が短い液晶表示素子が望まれている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、耐光性が良好であり、かつ高温環境下に曝した後でも、直流電圧の印加時において蓄積電荷の緩和が速い液晶表示素子を得ることができる液晶配向剤及び液晶配向剤、並びに耐光性が良好な液晶表示素子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成すべく鋭意検討した結果、液晶配向剤に含有させる重合体成分として、テトラカルボン酸二無水物と、特定構造を有するジアミンとの反応によって得られる重合体を用いることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を解決するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子、並びに新規な重合体及び化合物が提供される。
【0009】
本発明は一つの側面において、テトラカルボン酸二無水物と、下記式(1)で表される化合物[B1]を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤を提供する。
【化1】
(式(1)中、Acは、窒素原子を含有する2価の非芳香族複素環基又は芳香族複素環基であり、Acは、窒素原子を含有する1価の芳香族複素環基である。但し、Acは、炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0010】
本発明の液晶配向剤は、重合体成分として、上記化合物[B1]を用いて合成したポリアミック酸及びポリイミドの少なくともいずれかを含むことにより、長時間の光照射後でも電圧保持率の低下が少なく耐光性が良好であり、かつ高温環境下に曝した後でも、直流電圧の印加時において蓄積電荷の緩和が速い液晶表示素子を得ることができる。
【0011】
本発明において、上記ジアミンとしては、上記化合物[B1]と共に、カルボキシル基を有するジアミンである化合物[B2]を含むことが好ましい。ポリアミック酸又はポリイミドの合成に用いるジアミンとして、上記化合物[B1]及び上記化合物[B2]を含むことにより、液晶表示素子における光照射後の電気特性を良好に維持しつつ、かつ直流電圧の印加に伴う蓄積電荷をより速やかに緩和することができる。
【0012】
本発明は一つの側面において、上記に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜を提供する。さらに、本発明は別の一つの側面において、上記液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供する。本発明の液晶配向膜及び液晶表示素子は、上記液晶配向剤を用いて形成されていることから、耐光性が良好であり、かつ残像に対する特性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する。以下、本発明の液晶配向剤について詳細に説明する。
【0014】
<ポリアミック酸>
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明におけるポリアミック酸を合成するのに用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、
脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物などを用いることができる。
なお、上記テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
ポリアミック酸を合成するのに用いるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであるのが好ましく、中でも、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むものであることが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物としては、中でも特に、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物及び2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物の少なくともいずれか(以下、特定テトラカルボン酸二無水物とも言う。)を含むものであることが好ましく、当該特定テトラカルボン酸二無水物を、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して10モル%以上含むことがより好ましく、20〜100モル%含むことが更に好ましく、50〜100モル%含むことが特に好ましい。
【0016】
[ジアミン]
《化合物[B1]》
本発明におけるポリアミック酸を合成するために使用するジアミンとしては、少なくとも下記式(1)で表される化合物[B1]を含んでいる。
【化2】
(式(1)中、Acは、窒素原子を含有する2価の非芳香族複素環基又は芳香族複素環基であり、Acは、窒素原子を含有する1価の芳香族複素環基である。但し、Acは、炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0017】
上記式(1)におけるAcについて、窒素原子を含有する2価の非芳香族複素環基としては、環構造を構成する元素の少なくとも1つが窒素原子であればよく、その構造は特に限定しない。具体的には、例えばピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピラゾリジン環、キヌクリジン環、イミダゾリジン環などの非芳香族複素環から2つの水素原子を除いた基などが挙げられる。
Acにおける窒素原子を含有する2価の芳香族複素環基としては、環構造を構成する元素の少なくとも1つが窒素原子であればよく、単環でも縮合環でもよい。窒素原子を含有する2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えばピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、チアジアゾール環、ピリダジン環、トリアジン環、トリアゾール環、ピラジン環、オキサジアゾール環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、カルバゾール環、プリン環、ベンゾイミダゾール環、フェナントロリン環、インドール環、キノキサリン環、ベンゾリアゾール環、アクリジン環などの縮合環;等の芳香族複素環から2つの水素原子を除いた基などが挙げられる。
Acは、窒素原子を含有する1価の芳香族複素環基であり、その具体例としては、例えばAcの説明で例示した芳香族複素環から1つの水素原子を除いた基等が挙げられる。Acにおいて、これらの芳香族複素環は炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよく、その置換基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基等が挙げられる。
式(1)における2つの1級アミノ基の結合位置は特に限定せず、例えば結合基「Ac」に対して、2,3−位、2,4−位、2,5−位、2,6−位、3,4−位、3,5−位などが挙げられる。化合物[B1]の合成の容易性や、ポリアミック酸を合成する際のテトラカルボン酸二無水物との反応性の観点から、中でも、2,4−位、2,5−位又は3,5−位であることが好ましい。
【0018】
化合物[B1]としては、これらの中でも、上記式(1)におけるAcが、窒素原子を含有する2価の非芳香族複素環基である化合物が好ましい。また、形成された液晶配向膜において良好な液晶配向性を発現できる観点から、Acにおける非芳香族複素環が5員環又は6員環である化合物がより好ましく、更に液晶表示素子の電気特性を良好にできる観点から、下記式(1−1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化3】
(式(1−1)中、Acは上記式(1)と同義である。)
【0019】
上記式(1)及び式(1−1)におけるAcとしては、液晶表示素子に直流電圧を印加した場合において蓄積電荷の緩和速度を速くできる観点から、中でもピリジル基、ピリミジニル基又はピリダジニル基であることが好ましく、これらの基の具体例としては、例えば2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基などが挙げられる。
このような化合物[B1]の好ましい具体例としては、例えば下記式(B−1)〜(B−16)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
【化4】
【0020】
《その他のジアミン》
上記ポリアミック酸の合成に用いるジアミンとしては、上記化合物[B1]のみを使用してもよいが、化合物[B1]とともにその他のジアミンを併用してもよい。
【0021】
ここで使用することのできるその他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0022】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン、3,5−ジアミノ安息香酸、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノ−N,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、及び下記式(A−1)
【化5】
(式(A−1)中、XI及びXIIは、それぞれ、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rは、炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、nは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0023】
上記式(A−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。
基「−C2c+1」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0024】
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(A−1−1)〜(A−1−3)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
【化6】
【0025】
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いるジアミンとしては、光照射による電圧保持率の低下を好適に抑制できる観点や、直流電圧の印加時における蓄積電荷の緩和速度を速くできる観点から、化合物[B1]の含有比率が、合成に使用するジアミンの全量に対して5モル%以上であることが好ましい。より好ましくは5〜80モル%であり、更に好ましくは10〜40モル%である。
また、ポリアミック酸の合成に用いるジアミンとしては、液晶表示素子の電気特性を良好にする観点から、芳香族ジアミン(アミノ基が芳香環に結合しているジアミン)を、全ジアミンに対して30モル%以上含んでいることが好ましく、50モル%以上含んでいることがより好ましく、80モル%以上含んでいることが更に好ましい。
【0026】
《化合物[B2]》
本発明におけるポリアミック酸を合成する場合、液晶表示素子の耐光性を良好に維持しつつ、高温環境下に曝した場合にも、直流電圧の印加時における蓄積電荷量を低減できる観点から、上記他のジアミンとして、カルボキシル基を有するジアミン(化合物[B2])を用いることが好ましい。
【0027】
化合物[B2]としては、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基と2つの1級アミノ基とを有する限りその構造は限定せず、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを使用することができる。化合物[B2]としては、中でも芳香族ジアミンが好ましく、特に芳香族ジアミンが有する芳香環にカルボキシル基が結合したものが好ましい。
カルボキシル基含有ジアミンの分子内におけるカルボキシル基の数は、1〜4が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0028】
本発明の液晶配向剤に含有されるカルボキシル基含有ジアミンの好ましい具体例としては、例えば下記式(d1−1)で表される化合物、下記式(d1−2)で表される化合物等を挙げることができる。
【化7】
(式(d1−1)及び式(d1−2)中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基であり、Zは、単結合、酸素原子又は炭素数1〜3のアルカンジイル基である。e及びfは、それぞれ独立に1又は2の整数であり、g及びhは、それぞれ独立に0〜2の整数であり、s及びtは、それぞれ独立に、s+t=2を満たす0〜2の整数である。但し、式(d1−2)において、e+g+s≦5かつf+h+t≦5である。g、hが2の場合、複数のRは独立して上記定義を有する。)
【0029】
式(d1−1)及び式(d1−2)について、Rにおける炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、上記炭素数1〜10のアルキル基として挙げた基が酸素原子に結合した基を挙げることができ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
における炭素数1〜3のアルカンジイル基としては、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基などが挙げられる。
g及びhは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0030】
化合物[B2]の具体例としては、下記式(d1−1)で表される化合物として、例えば3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノテレフタル酸などを;
下記式(d1−2)で表される化合物として、例えば4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、3,3’−ジアミノビフェニル−2,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノビフェニル−3−カルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3−カルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエタン−3−カルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル−3−カルボン酸などを;挙げることができる。
【0031】
化合物[B2]の含有比率は、ポリアミック酸の合成に使用するジアミンの全量に対して、10モル%以上であることが好ましく、20〜90モル%がより好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。
【0032】
《プレチルト成分を有するジアミン》
垂直配向型用の液晶配向剤に含有されるポリアミック酸を合成する場合、良好な垂直配向性を付与するべく、上記その他のジアミンとして、プレチルト成分を有するジアミンを用いるとよい。このようなプレチルト成分を有するジアミンの具体例としては、例えばドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、上記式(A−1)で表されるジアミン等を挙げることができる。なお、プレチルト成分を有するジアミンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
プレチルト成分を有するジアミンの含有比率は、その合計量が、全ジアミンに対して5モル%以上含むものであることが好ましく、10モル%以上含むことがより好ましい。
【0033】
[分子量調節剤]
ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0034】
分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0035】
<化合物[B1]の合成>
本発明の化合物[B1]は、従来公知の方法を組み合わせて製造することができる。その一例としては、下記式(1−a)で表されるジニトロ化合物を合成し、その後、得られたジニトロ化合物のニトロ基を還元してアミノ基にすることによって上記化合物[B1]を得る方法が挙げられる。
【化8】
(式(1−a)中、Ac及びAcは、それぞれ上記式(1)と同義である。)
【0036】
上記式(1−a)で表されるジニトロ化合物は、例えばジニトロベンゼンに対して「−Ac−Ac」を結合させる方法などによって得ることができ、例えばハロゲン化ジニトロベンゼンと、「−Ac−Ac」を含む化合物とを、炭酸水素ナトリウムや炭酸カリウム等の塩基の存在下で反応させる方法が挙げられる。ハロゲン化ジニトロベンゼンとしては、例えば2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,5−ジニトロクロロベンゼンなどが挙げられる。また、上記反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は0℃〜180℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
有機溶媒としては、置換反応に際し通常用いられる化合物を使用することができ、具体的には、例えばテトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、アルコールなどを挙げることができる。
【0037】
ジニトロ化合物の還元反応は、例えばパラジウム−炭素、酸化白金、ロジウム−アルミナなどを触媒として用い、テトラヒドロフラン、トルエン、アルコール、酢酸エチル、ジオキサンなどの溶媒中、ヒドラジン、水素ガス、塩化水素などを用いて行うことができる。このときの反応温度は0℃〜180℃が好ましく、20〜120℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜72時間が好ましく、0.5〜48時間がより好ましい。
ただし、化合物[B1]の合成手順は上記の方法に限定されるものではない。
【0038】
<ポリアミック酸の合成>
本発明におけるポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、更に好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度はマイナス20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
【0039】
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを;それぞれ挙げることができる。
【0040】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される一種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
【0041】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0042】
<ポリイミド及びポリイミドの合成>
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドは、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
【0043】
上記ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、45〜99%であることがより好ましく、50〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0044】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0045】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0046】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0047】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られるポリアミック酸及びポリイミドは、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、これらの重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0048】
<その他の添加剤>
本発明の液晶配向剤は、上記の如きポリアミック酸及びポリイミドの少なくともいずれかの重合体(以下、「特定重合体」ともいう。)を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、上記特定重合体以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ基含有化合物」という。)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
【0049】
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性や電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体としては、例えば、化合物[B1]を含まず上記その他のジアミンのみを含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、当該他のポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、該組成物中の全重合体量に対して50重量%以下が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
【0050】
[エポキシ基含有化合物]
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性を向上させるために使用することができる。ここで、エポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン等を好ましいものとして挙げることができる。
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
【0051】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性を向上させるために使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
【0052】
その他、本発明の液晶配向剤が含有してもよい添加剤としては、上記のほか、分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物(以下、「オキセタニル基含有化合物」という)、酸化防止剤などを挙げることができる。
【0053】
<溶剤>
本発明の液晶配向剤は、重合体成分及び必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解されて構成される。
【0054】
使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得にくい。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が低下する。
【0056】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法
による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0057】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、上記の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶表示素子は、IPS型やTN型、STN型、FFS型といった水平配向型の動作モードに適用してもよいし、VA型のような垂直配向型の動作モードに適用してもよい。
【0058】
以下に、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明するとともに、その説明の中で本発明の液晶配向膜の製造方法についても説明する。本発明の液晶表示素子は、例えば以下の(1)〜(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)及び(3)は各動作モードに共通である。
【0059】
[工程(1):塗膜の形成]
先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
【0060】
(1−1)TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0061】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0062】
(1−2)IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。
【0063】
上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜が形成される。このとき、本発明の液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0064】
[工程(2):ラビング処理]
TN型、STN型又はIPS型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を施す。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
一方、VA型液晶表示素子を製造する場合には、工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対しラビング処理を施してもよい。
【0065】
上記のように形成された液晶配向膜に対しては、更に、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0066】
[工程(3):液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板につき、二枚の基板の液晶配向膜のラビング方向が直交又は逆平行となるように間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、二枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面に、偏光板を、その偏光方向が各基板に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致又は直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。
【0067】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0068】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、タブレットPC、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニタ、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0070】
下記重合例における各重合体溶液の溶液粘度及びポリイミドのイミド化率は、以下の方法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調整した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1x)で示される式によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1−A/A×α)×100 …(1x)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0071】
<化合物[B1]の合成>
以下の各合成例は、必要に応じて下記のスケールで繰り返すことにより、以降の重合例における必要量を確保した。
【0072】
[合成例1]
下記スキーム1に従って、ジアミン(B−1)を合成した。
【化9】
【0073】
2,4−ジニトロクロロベンゼン100mmol(20.3g)、1−(2−ピリジル)ピペラジン110mmol(18.0g)、炭酸水素ナトリウム 200mmol(16.8g)、エタノール200mlを混合し、室温で6時間攪拌した。次いで、酢酸エチル 300mlを加え、蒸留水200mlで5回抽出洗浄した。その後、有機層を濃縮して得られた固体をエタノール160mlで再結晶を行い、黄色粉末の目的中間体(B−1−a)90.3mmol(29.7g、収率90.3%)を得た。
次いで、上記中間体(B−1−a)90.3mmol(29.7g)、Pd/C 2.97g、テトラヒドロフラン226ml、エタノール226ml、ヒドラジン一水和物29.7mlを混合し、70℃で6時間加熱攪拌し反応させた。ろ過によりPd/Cを除いた後に濃縮し、得られた固体をヘキサン100ml及び酢酸エチル150mlで再結晶を行い、紫色粉末のジアミン(B−1)80.1mmol(21.6g、収率88.7%)を得た。
【0074】
[合成例2]
下記スキーム2に従って、ジアミン(B−3)を合成した。
【化10】
【0075】
2,4−ジニトロクロロベンゼン90.0mmol(18.2g)、1−(4−ピリジル)ピペラジン99.0、炭酸水素ナトリウム180mmol(15.1g)、エタノール180mlを混合し、室温で5時間攪拌した。次いで、酢酸エチル300mlを加え、蒸留水200mlで5回抽出洗浄した。その後、有機層を濃縮して得られた固体をエタノール140mlで再結晶を行い、黄色粉末の目的中間体(B−3−a)85.1mmol(28.0g、収率94.6%)を得た。
次いで、上記中間体(B−3−a)85.1mmol(28.0g)、Pd/C 2.80g、テトラヒドロフラン213ml、エタノール213ml、ヒドラジン一水和物28.0mlを混合し、70℃で6時間加熱攪拌し反応させた。ろ過によりPd/Cを除いた後に濃縮し、得られた固体をヘキサン110ml及び酢酸エチル160mlで再結晶を行い、紫色粉末のジアミン(B−3)73.2mmol(19.7g、収率86.0%)を得た。
【0076】
[合成例3]
下記スキーム3に従って、ジアミン(B−7)を合成した。
【化11】
【0077】
2,4−ジニトロクロロベンゼン90.0mmol(18.2g)、1−(2−ピリミジル)ピペラジン99.0mmol(16.3g)、炭酸水素ナトリウム180mmol(15.1g)、エタノール180mlを混合し、室温で7時間攪拌した。次いで、酢酸エチル300mlを加え、蒸留水200mlで5回抽出洗浄した。その後、有機層を濃縮して得られた固体をエタノール120mlで再結晶を行い、黄色粉末の目的中間体(B−7−a)83.5mmol(27.6g、収率92.8%)を得た。
次いで、上記中間体(B−7−a)83.5mmol(27.6g)、Pd/C 2.76g、テトラヒドロフラン209ml、エタノール209ml、ヒドラジン一水和物 27.6mlを混合し、70℃で7時間加熱攪拌し反応させた。ろ過によりPd/Cを除いた後、濃縮し、得られた固体をヘキサン100ml及び酢酸エチル100mlで再結晶を行い、紫色粉末のジアミン(B−7)75.6mmol(20.4g、収率90.5%)を得た。
【0078】
<重合体の合成>
[重合例1]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)22.4g(0.1モル)、ジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル(HCDA)10.4g(0.02モル)、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン(HCODA)4.9g(0.01モル)、p−フェニレンジアミン(PDA)6.5g(0.06モル)及びジアミン(B−1)2.7g(0.01モル)、をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)188gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は72mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP436gを追加し、ピリジン11.8g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作によって、脱水閉環反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率65%のポリイミド(PI−1)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は51mPa・sであった。
【0079】
[重合例2]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてHCDA10.5g(0.02モル)、HCODA5.0g(0.01モル)、PDA5.4g(0.05モル)、及びジアミン(B−3)5.4g(0.02モル)、をNMP196gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は70mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP452gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率62%のポリイミド(PI−2)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は49mPa・sであった。
【0080】
[重合例3]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.3g(0.1モル)、ジアミンとしてHCDA10.4g(0.02モル)、HCODA4.9g(0.01モル)、PDA4.3g(0.04モル)、及びジアミン(B−7)8.1g(0.03モル)、をNMP200gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は55mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP465gを追加し、ピリジン11.8g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率61%のポリイミド(PI−3)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は39mPa・sであった。
【0081】
[重合例4]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてHCDA10.5g(0.02モル)、HCODA5.0g(0.01モル)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB)4.6g(0.03モル)、及びジアミン(B−1)10.8g(0.04モル)をNMP213gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は52mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP494gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率59%のポリイミド(PI−4)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は39mPa・sであった。
【0082】
[重合例5]
DABの量を3.8g(0.025モル)に変更し、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン1.4g(0.005モル)を更に加え、NMPの量を216gに変更した以外は、重合例4と同様の方法によりポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は51mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP501gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率59%のポリイミド(PI−5)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は40mPa・sであった。
【0083】
[重合例6]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてHCDA7.8g(0.015モル)、HCODA5.0g(0.01モル)、DAB10.7g(0.07モル)、及びジアミン(B−3)1.3g(0.005モル)、をNMP189gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は55mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP439gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率68%のポリイミド(PI−6)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は41mPa・sであった。
【0084】
[重合例7]
テトラカルボン酸二無水物として2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物(BODA)25.0g(0.1モル)、ジアミンとしてHCDA10.4g(0.02モル)、HCODA4.9g(0.01モル)、DAB7.6g(0.05モル)、及びジアミン(B−3)5.4g(0.02モル)、をNMP213gに溶解し、60℃で12時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は41mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP494gを追加し、ピリジン11.8g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率66%のポリイミド(PI−7)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は35mPa・sであった。
【0085】
[重合例8]
テトラカルボン酸二無水物としてBODA18.7g(0.075モル)、ジアミンとしてHCDA10.4g(0.02モル)、HCODA4.9g(0.01モル)、DAB4.6g(0.03モル)、及びジアミン(B−3)10.7g(0.04モル)、をNMP217gに溶解し、60℃で8時間反応を行った後、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)4.9g(0.025モル)を加えて、更に60℃で2時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は44mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP504gを追加し、ピリジン11.8g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率62%のポリイミド(PI−8)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は35mPa・sであった。
【0086】
[重合例9]
PDA4.3g(0.04モル)をDAB6.1g(0.04モル)に変更し、NMPの量を209gに変更した以外は、重合例3と同様の方法によりポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は51mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP484gを追加し、ピリジン13.5g及び無水酢酸17.4gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率75%のポリイミド(PI−9)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は42mPa・sであった。
【0087】
[比較重合例1]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.5g(0.1モル)、ジアミンとしてHCDA10.5g(0.02モル)、HCODA5.0g(0.01モル)、PDA7.6g(0.07モル)、をNMP182gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は80mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP423gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.4gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率65%のポリイミド(PI−10)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は58mPa・sであった。
【0088】
[比較重合例2]
PDA7.6g(0.07モル)をDAB10.6g(0.07モル)に変更し、NMPの量を193gに変更した以外は、比較重合例1と同様の方法によりポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は50mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP449gを追加し、ピリジン11.8g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率66%のポリイミド(PI−11)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は40mPa・sであった。
【0089】
[比較重合例3]
PDA7.6g(0.07モル)を、DAB6.1g(0.04モル)及び下記式(Y−1)で表されるジアミン7.7g(0.03モル)に変更し、NMPの量を207gに変更した以外は、比較重合例1と同様の方法によりポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は51mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP481gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.4gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率69%のポリイミド(PI−12)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は39mPa・sであった。
【化12】
【0090】
[比較重合例4]
PDA7.6g(0.07モル)を、DAB6.1g(0.04モル)及び下記式(Y−2)で表されるジアミン8.9g(0.03モル)に変更し、NMPの量を211gに変更した以外は、比較重合例1と同様の方法によりポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は49mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP491gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率62%のポリイミド(PI−13)を約20重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は35mPa・sであった。
【化13】
【0091】
[実施例1]
(1)液晶配向剤の調製
合成したポリイミド(PI−1)を含有する溶液に、NMP及びエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC:=60:40(重量比)、固形分濃度3.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルタを用いて濾過することにより液晶配向剤(S−1)を調製した。
(2)液晶表示素子の製造
厚さ1mmのITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に、調製した液晶配向剤(S−1)をスピンナーにより塗布し、ホットプレートにて80℃で1分間プレベークを行った。次いで、210℃にて30分間ポストベークすることにより、膜厚約80nmの液晶配向膜を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。次に、得られた一対の基板の液晶配向膜を有するどちらかの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム玉入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した。その後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より、一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより液晶セルを製造した。本操作を繰り返すことで、以下の評価に必要な個数の液晶セルを作製した。
【0092】
(3)耐光性の評価
上記製造した各液晶セルについて、70℃において3Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、1670ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から1670ミリ秒後の電圧保持率を東陽テクニカ製VHR−1により測定した。この値を初期電圧保持率VHR1[%]とした。次いで、VHR1の測定後の液晶セルに対し、カーボンアークを光源とするウェザーメータを用いて500時間の光照射を行った。光照射後の液晶セルにつき、上記と同様の方法により電圧保持率を測定した。この値を光照射後電圧保持率VHR2[%]とした。光照射の前後における電圧保持率の低下量ΔVHR[%]を下記数式(2x)から求め、ΔVHRにより耐光性を評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価は、ΔVHRが2.5%以下の場合を耐光性「優良」、2.5%よりも大きく5.0%未満の場合を耐光性「良好」、5.0%以上の場合を耐光性「不良」として行った。
ΔVHR[%]=VHR1−VHR2 …(2x)
【0093】
(4)蓄積電荷の緩和性の評価
上記で作製した別の液晶セルを60℃の恒温槽に入れた状態で、直流電圧5Vを10時間印加した後、セルを取り出して室温で放置し、放置してから1分後の蓄積電荷量をフリッカー消去法にて測定した。この測定値の絶対値を「1分後の蓄積電荷量」とした。また、放置してから10分後の蓄積電荷量についても上記と同様に測定し、その測定値の絶対値を「10分後の蓄積電荷量」とした。この10分後の蓄積電荷量が100mV以下の場合を緩和性「優良」、100mVよりも大きく200mV未満の場合を緩和性「良好」、200mV以上の場合を緩和性「不良」として評価した。その結果を下記表1に示す。
【0094】
[実施例2〜9、比較例1〜4]
使用する重合体をそれぞれ下記表1に記載のとおり変更した以外は、上記実施例1と同様の方法により液晶配向剤(S−2)〜(S−13)をそれぞれ調製した。また、液晶配向剤(S−2)〜(S−13)のそれぞれについて、上記実施例1と同様の方法により液晶表示素子を作製するとともに、耐光性及び蓄積電荷の緩和性について評価した。それらの結果を下記表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、実施例の液晶表示素子ではいずれも、光照射下に長時間曝された後であっても電圧保持率の低下が少なく、耐光性に優れていた。また、実施例の液晶表示素子では、高温環境下に長時間曝した後でも、蓄積電荷の緩和性が良好であり、中でも実施例4〜9では蓄積電荷の緩和性が特に良好であった。これらのことから、実施例の液晶配向剤によれば、過酷な使用環境にも耐え得る信頼性の高い液晶配向膜及び液晶表示素子が得られることが分かった。
一方、比較例の液晶表示素子では、いずれも耐光性が不良であった。