特許第5949074号(P5949074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949074
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気系
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/04 20060101AFI20160623BHJP
   F02M 35/104 20060101ALI20160623BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20160623BHJP
   F01L 1/04 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   F02M35/04 A
   F02M35/104 W
   F02M35/16 L
   F02M35/16 M
   F01L1/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-86715(P2012-86715)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217234(P2013-217234A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】尾関 久志
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−185216(JP,A)
【文献】 特開2011−102566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/34 − 1/356
9/00 − 9/04
13/00 − 13/08
F02M 35/00 − 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と前記燃焼室を開閉する吸気バルブを有する内燃機関に燃焼用の空気を供給する内燃機関の吸気系であって、
前記燃焼室が形成されるシリンダブロックと、
前記燃焼室に燃焼用の空気を導入する複数のインテークポートが形成されるシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの上側に配設されるシリンダヘッドカバーと、
前記シリンダヘッドカバーの上側に配設され、前記吸気バルブを駆動する立体カムを軸線方向に移動させるモータと、
前記シリンダヘッドカバーの上側に配設され、前記立体カムの軸線方向位置を検出するカムポジションセンサと、
前記シリンダヘッドカバーと前記モータと前記カムポジションセンサの上側に配設され、燃焼用の空気を外部から取り入れて清浄するエアクリーナと、
を有し、
前記エアクリーナの底壁部には前記インテークポートのそれぞれと空気を流通可能に連通する複数の開口部が形成されるとともに、他の部分よりも深い凹部を形成し、
前記凹部は、複数の前記開口部の配列方向の中心で、かつ、前記モータと前記カムポジションセンサとの間に配設されることを特徴とする内燃機関の吸気系。
【請求項2】
前記モータの回転動力により回転して前記立体カムを軸線方向に移動させるボールスクリューをさらに有し、
前記凹部は、前記ボールスクリューの上方に配設されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気系。
【請求項3】
複数の前記開口部のそれぞれと前記インテークポートのそれぞれとを空気を流通可能に接続するインテークパイプをさらに有し、
前記モータは、前記エアクリーナと前記シリンダヘッドカバーと前記インテークパイプとに囲まれる領域に配設されることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気系。
【請求項4】
複数の前記開口部のそれぞれと前記インテークポートのそれぞれとを空気を流通可能に接続するインテークパイプをさらに有し、
前記カムポジションセンサは、前記エアクリーナと前記シリンダヘッドカバーと前記インテークパイプとに囲まれる領域に配設されることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気系に関する。詳しくは、本発明は、燃焼用の空気を外部から取り入れて清浄して内燃機関に供給する内燃機関の吸気系に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車は、エンジン(内燃機関)に燃焼用の空気を供給するための吸気系(内燃機関の吸気系)を有する。自動二輪車のエンジン(内燃機関)の吸気系には、外部から取り入れた空気を清浄してエンジンの燃焼室に供給するエアクリーナが設けられる。そして、多気筒エンジンの吸気系に設けられるエアクリーナには、外部から取り入れた空気をエンジンの各燃焼室に分配する機能を有するものがある。たとえば、特許文献1には、エアクリーナに複数のインテークパイプが接続される構成が開示されている。そして、特許文献1の構成によれば、これら複数のインテークパイプにより各燃焼室に燃焼用の空気を分配することができる。
【0003】
一般的に、自動二輪車は、インテークポートと燃焼室の間を開閉する動弁装置を有する。一般的な動弁装置は、カムによって駆動する吸気バルブを有し、これにより、インテークポートと燃焼室の間を開閉する。そして、自動二輪車には、吸気バルブを駆動するカムに、立体カムが適用されるものがある。立体カムは、軸線方向に移動することにより、吸気バルブのリフト量とリフトタイミングを無段階に変更することができる。このため、このような構成においては、立体カムを軸線方向に移動させる駆動源と、立体カムの軸線方向位置を検出するカムポジションセンサが、たとえばシリンダヘッドカバーに配設される。この場合には、シリンダヘッドカバーの上側に配設されるエアクリーナと、モータおよびカムポジションセンサとの干渉を避ける必要がある。この干渉を避けるための構成としては、たとえば、エアクリーナをモータおよびカムポジションセンサのさらに上側に配設する構成が考えられる。しかしながらこのような構成とすると、エンジンユニットの高さ方向寸法が増加する。このほか、エアクリーナに、モータおよびカムポジションセンサと干渉しないように、切欠きなどを形成する構成が考えられる。しかしながら、エアクリーナに切欠きなどが形成されると、エアクリーナの内部において空気の流れに偏りが生じ、燃焼室に空気を均等に分配できなくなるおそれがある。さらに、エアクリーナの容量が減少するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−84566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、内燃機関の吸気系において、内燃機関の各燃焼室へ分配される燃焼用空気の量にばらつきが生じることを防止または抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、燃焼室と前記燃焼室を開閉する吸気バルブを有する内燃機関に燃焼用の空気を供給する内燃機関の吸気系であって、前記燃焼室が形成されるシリンダブロックと、前記燃焼室に燃焼用の空気を導入する複数のインテークポートが形成されるシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの上側に配設されるシリンダヘッドカバーと、前記シリンダヘッドカバーの上側に配設され、前記吸気バルブを駆動する立体カムを軸線方向に移動させるモータと、前記シリンダヘッドカバーの上側に配設され、前記立体カムの軸線方向位置を検出するカムポジションセンサと、前記シリンダヘッドカバーと前記モータと前記カムポジションセンサの上側に配設され、燃焼用の空気を外部から取り入れて清浄するエアクリーナと、を有し、前記エアクリーナの底壁部には前記インテークポートのそれぞれと空気を流通可能に連通する複数の開口部が形成されるとともに、他の部分よりも深い凹部を形成し、前記凹部は、複数の前記開口部の配列方向の中心で、かつ、前記モータと前記カムポジションセンサとの間に配設されることを特徴とする。
【0007】
前記エアクリーナの底壁部には前記インテークポートのそれぞれと空気を流通可能に連通する開口部が直列に配列されるように形成されるとともに、前記凹部は、前記複数の開口部の配列方向の中心に形成されることを特徴とする。
【0008】
前記凹部は、前記カムスライド機構の上方に配設されることを特徴とする。
【0009】
前記開口部のそれぞれと前記インテークポートのそれぞれとを空気を流通可能に接続するインテークパイプをさらに有し、前記モータは、前記エアクリーナと前記シリンダヘッドカバーと前記インテークパイプとに囲まれる領域に配設されることを特徴とする。
【0010】
前記開口部のそれぞれと前記インテークポートのそれぞれとを空気を流通可能に接続するインテークパイプをさらに有し、前記カムポジションセンサは、前記エアクリーナと前記シリンダヘッドカバーと前記インテークパイプとに囲まれる領域に配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸気管が配列する方向の中央部の断面積を大きくすることができる。このため、断面形状の偏りを解消することができ、吸気管に供給する空気のばらつきを解消または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系が適用される自動二輪車の構成を模式的に示す右側面図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系が適用されるエンジンユニットのシリンダアセンブリの構成を示す平面図であり、上方から見た図である。
図3図3は、エンジンユニットのシリンダアセンブリに設けられる動弁装置の構成を模式的に示す図であり、図2のIII−III線断面図である。
図4図4は、エンジンユニットのシリンダアセンブリに設けられる動弁装置の構成を模式的に示す図であり、図2および図3のIV−IV線断面図である。
図5図5は、動弁装置のカムスライド機構の構成を模式的に示す図であり、シリンダヘッドからシリンダヘッドカバーが取り外された状態を示す図である。
図6図6(a)は、シリンダアセンブリから動弁装置のカムスライド機構を抽出して上方から見た図であり、図6(b)は、シリンダアセンブリから動弁装置のカムスライド機構を抽出して後方から見た図である。
図7図7は、シリンダアセンブリにエアクリーナが取り付けられた状態を模式的に示す外観斜視図である。
図8図8は、シリンダアセンブリにエアクリーナが取り付けられた状態を模式的に示す平面図である。
図9図9は、動弁装置のカムスライド機構とエアクリーナとの関係を示す図であり、エアクリーナが取り付けられたシリンダアセンブリを前方から見た図である。
図10図10は、動弁装置のカムスライド機構とエアクリーナとの関係を示す図であり、図9のX−X線断面図である。
図11図11は、動弁装置のカムスライド機構とエアクリーナとの関係を示す図であり、図9のXI−XI線断面図である。
図12図12は、動弁装置のカムスライド機構とエアクリーナとの関係を示す図であり、図9のXII−XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9が、自動二輪車1に適用される構成を示す。説明の便宜上、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9および自動二輪車1の各向きは、自動二輪車1に搭乗する運転者の向きを基準とする。各図においては、必要に応じて、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9および自動二輪車1の前方を矢印Frで、後方を矢印Rrで、上方を矢印Tpで、下方を矢印Btで、右方を矢印Rで、左方を矢印Lで示す。
【0014】
まず、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9が適用される自動二輪車1(以下、単に自動二輪車1と称する)の全体的な構成について、図1を参照して説明する。図1は、自動二輪車1の構成を模式的に示す右側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム11と、操舵装置12と、内燃機関としてのエンジンユニット13と、後輪懸架装置14とを有する。そして、エンジンユニット13には、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9が適用される。
【0015】
車体フレーム11は、ステアリングヘッドパイプ111と、左右一対のメインフレーム112と、ピボットブラケット113と、ダウンフレーム114と、シートレール115とを含んで構成される。車体フレーム11は、たとえば鉄系の材料やアルミニウム合金により形成され、溶接などによって一体に接合される。ステアリングヘッドパイプ111は、後傾する管状に形成される。左右一対のメインフレーム112は、ステアリングヘッドパイプ111の後部から、それぞれ、後方斜め右下と後方斜め左下に向かって延伸する。ピボットブラケット113は、左右一対のメインフレーム112のそれぞれの後方に設けられ、略下方に向かって湾曲するように延伸する。左右一対のダウンフレーム114は、ステアリングヘッドパイプ111の後部から左右一対のメインフレーム112の下方に向かって延伸する部分と、これらの部分の下端から略後方に延伸する部分とを有する。そして、左右一対のダウンフレーム114の後端は、それぞれ、ピボットブラケット113に接合される。シートレール115は、ピボットブラケット113の上部から後方斜め上方に向かって延伸する。なお、車体フレーム11の一部は、カバー部材204,205,206に隠れて外部からは見えないため、図1においては破線で示している。
【0016】
操舵装置12は、車体フレーム11の前部に、車体フレーム11に対して回転可能に設けられる。操舵装置12は、前輪121と、ステアリングシャフト122と、左右一対のフロントフォーク123と、ハンドル124とを含んで構成される。
ステアリングシャフト122は、ステアリングヘッドパイプ111に回転可能に支持される。左右一対のフロントフォーク123は、ステアリングシャフト122の左右に配置される。前輪121は、左右一対のフロントフォーク123の下端に回転可能に支持される。前輪121には、ブレーキディスク125が一体に回転するように設けられる。そして左右一対のフロントフォーク123には、ブレーキディスク125に作用するブレーキリム126が設けられる。ハンドル124は、ステアリングシャフト122および左右一対のフロントフォーク123の上端部に設けられる。ハンドル124は、左右のハンドグリップを有する。右側のハンドルグリップには、スロットルグリップと、前輪121のブレーキリム126を操作するブレーキレバーが設けられる。左側のハンドルグリップには、クラッチを操作するクラッチレバーが設けられる。さらに、ハンドル124およびその近傍には、メータユニットや、灯火類を操作するためのスイッチ類(いずれも図略)が設けられる。
【0017】
内燃機関としてのエンジンユニット13は、車体フレーム11のメインフレーム112とダウンフレーム114とピボットブラケット113とに囲まれる領域に配置される。エンジンユニット13は、シリンダアセンブリ131と、クランクケースアセンブリ132とを含む。
シリンダアセンブリ131には、複数の燃焼室311(気筒)と、各燃焼室311に燃料と空気の混合気を導入する複数のインテークポート321と、各燃焼室311から排気ガスを導出する複数のエグゾーストポート322とが形成される。各燃焼室311の内部には、ピストン312が往復動可能に配設される。さらに、シリンダアセンブリ131は、燃焼用の空気を取り入れて清浄するエアクリーナ5と、エアクリーナ5が清浄した空気に燃料を混合して各インテークポート321に供給するインテークパイプ323と、各インテークパイプ323と各燃焼室311との間を開閉する動弁装置35(後述)とを有する。そして、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9は、エアクリーナ5と、インテークパイプ323と、シリンダアセンブリ131に設けられる動弁装置35とにより構成される。このように、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9は、外部から燃焼用の空気を取り入れて清浄し、各燃焼室311に供給する。なお、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9の詳細は後述する。
クランクケースアセンブリ132には、クランクシャフトと、カウンターシャフトと、ドリブンシャフトと、変速機と、クラッチとが設けられる(いずれも、図1においては隠れて見えない)。クランクシャフトと、カウンターシャフトと、ドリブンシャフトとは、クランクケースアセンブリ132の内部に、それぞれ回転可能で、かつ互いに略平行に配設される。クランクシャフトは、コンロッドによって、燃焼室311に配設される各ピストン312に連結される。クランクシャフトとカウンターシャフトとは、クラッチによって回転動力を断続可能に連結される。クランクシャフトとドリブンシャフトとの間には変速機が構成される。クランクケースアセンブリ132の左側後部には、ドリブンシャフトの一端が突出している。そして、ドリブンシャフトの当該一端には、ドライブスプロケットが設けられる。
【0018】
後輪懸架装置14は、スイングアーム141と、ショックアブソーバ(図1においては隠れて見えない)と、後輪142とを含む。後輪懸架装置14は、車体フレーム11のピボットブラケット113の後部に設けられ、ピボットブラケット113に対して上下方向に搖動可能に連結される。ショックアブソーバは、スイングアーム141とピボットブラケット113またはシートレール115との間に設けられ、スイングアーム141からピボットブラケット113またはシートレール115に伝達する振動や衝撃などを吸収や緩和する。後輪142は、スイングアーム141の後端に回転可能に支持される。後輪142の左側には、ドリブンスプロケット143が一体に回転するように設けられる。エンジンユニット13のドライブスプロケットと、後輪142のドリブンスプロケット143とにはチェーン144が巻き掛けられている。そして、エンジンユニット13の回転動力は、チェーン144により後輪142に伝達される。
【0019】
排気装置15は、消音器152と排気管151とを含む。消音器152は、エンジンユニット13の後方であって、後輪142の側方に配置される。排気管151の一方の端部(前端部)は、エンジンユニット13のシリンダアセンブリ131のエグゾーストポート322に接続される。排気管151の他方の端部(後端部)は、消音器152の前側に接続される。そして、排気管151は、エンジンユニット13のシリンダアセンブリ131の前側から前方に向かい、シリンダアセンブリ131の前方において後方に向かって湾曲し、シリンダアセンブリ131の側方または下方を通過し、消音器152の前側に到達する。
【0020】
シートレール115の上側には、運転者が着座するシート201(運転者シート)および同乗者が着座するシート202(タンデムシート)が、着脱可能に取付けられる。シート201,202およびシートレール115には、シート201,202をシートレール115に固定するためのロック機構(図略)が設けられる。左右一対のメインフレーム112の上側であってシート201,202の前側には、燃料タンク203が設けられる。さらに、自動二輪車1には、外側を覆うカバー部材204,205,206が設けられる。カバー部材204,205,206には、自動二輪車1の前部を覆うフロントカバー204と、側方を覆うサイドカバー205と、後部を覆うリヤカバー206とが含まれる。カバー部材204,205,206は、車体フレーム11やフロントフォーク123などの着脱可能に取付けられる。カバー部材204,205,206は、シェル状の部材であり、たとえば合成樹脂材料などにより形成される。そしてカバー部材204,205,206は、自動二輪車1の外側を覆うことによって、自動二輪車1の外観の意匠を構成する。
さらに自動二輪車1には、前輪121の上側を覆うフロントフェンダ210、後輪142の上側を覆うリヤフェンダ211、ヘッドライト212、テールライト213、ウィンカ、バックミラー214などが設けられる。
【0021】
次に、エンジンユニット13のシリンダアセンブリ131の構成について、図2図4を参照して説明する。図2は、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9が適用されるエンジンユニットのシリンダアセンブリ131の構成を示す平面図であり、上方から見た図である。図3は、エンジンユニット13のシリンダアセンブリ131に設けられる動弁装置35の構成を模式的に示す図であり、図2のIII−III線断面図である。図4は、エンジンユニットのシリンダアセンブリ131に設けられる動弁装置35の構成を模式的に示す図であり、図2および図3のIV−IV線断面図である。図2図4に示すように、シリンダアセンブリ131は、シリンダブロック31と、シリンダヘッド32と、シリンダヘッドカバー33と、ボールスクリューハウジング34と、モータ371と、カムポジションセンサ376とを有する。
【0022】
シリンダブロック31の内部には、複数の燃焼室311(気筒)が形成される(特に図3参照)。エンジンユニット13には、たとえばいわゆる直列四気筒のガソリンエンジンが適用される。そして、シリンダブロック31の内部には、4つの燃焼室311が所定の方向(本実施形態では自動二輪車1の左右方向。図3においては紙面に直角な方向)に直列に並ぶように形成される。そして、各燃焼室311の内部において、ピストン312が往復動する(特に図3参照)。なお、エンジンユニット13に形成される燃焼室311の数は一例であり、本発明の適用対象は直列四気筒エンジンに限定されるものではない。
シリンダブロック31の上側には、シリンダヘッド32が取り付けられる。シリンダヘッド32には、1つの燃焼室311ごとに、空気と燃料の混合気を導入する2つのインテークポート321と、排気ガスを導出する2つのエグゾーストポート322とが形成される。そして、シリンダヘッド32には、動弁装置35が設けられる(特に図3および図4参照)。動弁装置35は、各燃焼室311と各インテークポート321との間を開閉する吸気バルブ351と、各燃焼室311と各エグゾーストポート322との間を開閉する排気バルブ352と、これらの吸気バルブ351と排気バルブ352を駆動する駆動機構を有する(詳細は後述)。各インテークポート321には、インテークパイプ323が接続される(特に図2および図3参照)。各インテークパイプ323は、シリンダヘッド32から略上方に向かって延出するパイプ状の構成を有する。各インテークパイプ323には、空気の流量を調整するストットルバルブ324と、燃料を空気に混合する燃料噴射弁325とが設けられる。
シリンダヘッド32の上側には、シリンダヘッドカバー33が着脱可能に取付けられる。シリンダヘッドカバー33には開口部が形成されるとともに、この開口部を塞ぐボールスクリューハウジング34が着脱可能に取付けられる。そして、動弁装置35の駆動機構は、シリンダヘッド32とシリンダヘッドカバー33に囲まれる空間に収容される。なお、この空間は、シリンダヘッドカバー33およびボールスクリューハウジング34によって密閉される。
【0023】
ここで、動弁装置35の構成について説明する。動弁装置35は、吸気バルブ351と、各吸気バルブ351を駆動する吸気側カム353と、各吸気バルブ351が設けられる吸気側カムシャフト354と、排気バルブ352と、各排気バルブ352を駆動する排気側カム355と、各排気バルブ352が設けられる排気側カムシャフト356とを有する(特に図3参照)。本実施形態においては、吸気側カム353に立体カムが適用され、排気側カム355に板カムが適用される構成を示す。このため、動弁装置35は、さらに、吸気側カム353を軸線方向に往復動させるカムスライド機構37(詳細は後述)を有する。なお、排気側カム355にも立体カムが適用される構成であってもよい。この場合には、動弁装置35は、さらに、排気側カム355を軸線方向に往復動させるカムスライド機構37を有することになる。
吸気側カムシャフト354は、吸気バルブ351の上方に、燃焼室311の配列方向(自動二輪車1の左右方向)に平行に設けられる(特に図3および図4参照)。同様に、排気側カムシャフト356は、排気バルブ352の上方に、燃焼室311の配列方向に平行に設けられる(特に図3参照)。そして、吸気側カムシャフト354および排気側カムシャフト356は、それぞれ、ベアリングなどの軸受を介して、シリンダヘッド32およびシリンダヘッドカバー33に回転可能に支持される。
吸気側カムシャフト354には、所定の数の吸気側カム353が設けられる(特に図3および図4参照)。吸気側カム353は、カム曲線の形状が吸気側カムシャフト354の軸線方向に変化する立体カムである。具体的には、吸気側カム353のカム曲線は、吸気側カムシャフト354の軸線方向の一端から他端に向かうにしたがって、カム高さが徐々に大きくなる(または小さくなる)構成を有する。そして、各吸気側カム353(立体カム)は、吸気側カムシャフト354に対して軸線方向に移動できる。ただし、各吸気側カム353は、吸気側カムシャフト354に対して相対的に回転することはできず、吸気側カムシャフト354と一体に回転する。また、各吸気側カム353の軸線方向の一端には、ベアリング357が取り付けられる。各ベアリング357は、各吸気側カム353と一体に軸線方向に移動する。
排気側カムシャフト356には、所定の数の排気側カム355が設けられる。各排気側カム355には、板カムが適用される(特に図3参照)。
吸気バルブ351の上端部(バルブステムの上端部)と各吸気側カム353との間には、たとえばローラ式の吸気側タペット358が配設される(特に図3および図4参照)。これらの吸気側タペット358は、タペットガイド(図略)によって、吸気バルブ351と同じ方向に往復動可能にガイドされる。一方、排気バルブ352の上端部(バルブステムの上端部)と各排気側カム355との間には、たとえば直打式の排気側タペット359が配設される(特に図3参照)。これらの排気側タペット359も、タペットガイド(図略)によって、排気バルブ352と同じ方向に往復動可能にガイドされる。
吸気側カムシャフト354と排気側カムシャフト356のそれぞれの一端には、ドリブンスプロケット380が設けられる(図6参照。排気側カムシャフトについては図略)。そして、これらのドリブンスプロケット380と、クランクシャフトの一端に設けられるドライブスプロケットとには、カムチェーン(図略)が巻き掛けられている。
このような構成によって、吸気側カムシャフト354および排気側カムシャフト356は、クランクシャフトに同期して回転する。そして、吸気側カムシャフト354および排気側カムシャフト356が回転すると、吸気側カム353が吸気側タペット358を介して吸気バルブ351の上端部を所定のタイミングで押下する。同様に排気側カム355が、排気側タペット359を介して排気バルブ352の上端部を所定のタイミングで押下する。なお、吸気側カム353による吸気バルブ351のリフトタイミングおよびリフト量と、排気側カム355による排気バルブ352のリフトタイミングおよびリフト量(すなわち、カム曲線)は、適宜設定される。
【0024】
動弁装置35は、吸気側カム353を吸気側カムシャフト354の軸線方向に移動させるためのカムスライド機構37を有する。ここで、カムスライド機構37について、図5図6などを参照して説明する。図5は、動弁装置35のカムスライド機構37の構成を模式的に示す図であり、シリンダヘッド32からシリンダヘッドカバー33が取り外された状態を示す図である。図6(a)は、シリンダアセンブリ131から動弁装置35のカムスライド機構37を抽出して上方から見た図であり、図6(b)は、シリンダアセンブリ131から動弁装置35のカムスライド機構37を抽出して後方から見た図である。
図5図6(a)(b)に示すように、カムスライド機構37は、駆動源としてのモータ371と、ボールスクリュー372と、スライドナット377と、ベースプレート373と、カムフォークシャフト374と、カムフォーク375とを有する。
駆動源としてのモータ371は、図5に示すように、シリンダヘッドカバー33の上側であって、シリンダヘッドカバー33の左右方向(吸気側カムシャフト354の軸線方向)の一側端またはその近傍に設けられる。たとえば、モータ371は、ボールスクリューハウジング34の左右方向に隣接するように設けられる(図2参照)。さらに、モータ371は、前後方向に関して、インテークポート321(インテークパイプ323)の側(後側)に偏倚した位置に設けられる。
ボールスクリュー372は、吸気側カムシャフト354に平行に配設される。ボールスクリュー372は、ベアリングなどの軸受を介して、シリンダヘッドカバー33とボールスクリューハウジング34とにより回転可能に支持される。ボールスクリュー372は、モータ371の回転動力により回転する。たとえば、ボールスクリュー372の一端に被動ギア378が設けられ、このギアがモータ371の回転軸に設けられる駆動ギア379と噛合する。
スライドナット377は、ボールスクリュー372に噛合している。そしてスライドナット377は、ボールスクリュー372の回転に伴ってボールスクリュー372の軸線方向(左右方向)に移動する。カムフォークシャフト374は、吸気側カムシャフト354に平行に設けられる。カムフォークシャフト374は、シリンダヘッドカバー33に軸線方向に往復動可能に支持される。そして、スライドナット377とカムフォークシャフト374とは、ベースプレート373を介して一体に往復動するように結合される。
カムフォークシャフト374には、カムフォーク375が設けられる(図3参照)。カムフォーク375は、カムフォークシャフト374から各吸気側カム353に向かって突起する腕状または板状の構成を有する。各カムフォーク375の先端部は、各吸気側カム353に設けられるベアリング357の外輪に係合する。たとえば、カムフォーク375の先端部には、各吸気側カム353に設けられるベアリング357の円周方向に延伸する溝が形成される。そして、この溝に各ベアリング357の外輪が嵌まり込む。
カムポジションセンサ376は、各吸気側カム353の軸線方向位置を検出する。カムポジションセンサ376は、シリンダヘッドカバー33の左右方向の他の一側端(吸気側カムシャフト354の軸線方向の他の一側端であって、モータ371が設けられる側の反対側端部)またはその近傍に設けられる。さらに、カムポジションセンサ376は、モータ371と同様に、前後方向に関して、インテークポート321の側に偏倚した位置に設けられる。そして、モータ371とカムポジションセンサ376とは、左右方向からの側面視において、互いに重畳する位置に設けられる。
【0025】
このような構成のカムスライド機構37によれば、モータ371の回転動力によってボールスクリュー372が回転し、ボールスクリュー372の回転に伴ってスライドナット377が軸線方向に移動する。そして、各カムフォーク375は、スライドナット377とベースプレート373とカムフォークシャフト374と一体となって軸線方向に移動する。そうすると、各吸気側カム353は、カムフォーク375によって、吸気側カムシャフト354の軸線方向に移動させられる。このように、カムスライド機構37は、モータ371の駆動力によって、各吸気側カム353を吸気側カムシャフト354の軸線方向に移動させることができる。そして、カムスライド機構37は、各吸気側カム353を軸線方向に移動させることにより、吸気バルブ351のリフトタイミングおよびリフト量を無段階に変更できる。
エンジンユニット13の運転時において、運転者が自動二輪車1のアクセルグリップを操作するとモータ371が作動し、ボールスクリュー372が回転し、スライドナット377が軸線方向に移動する。そして、スライドナット377の移動にともなって、カムフォーク375が移動し、カムフォーク375によって吸気側カム353が移動する。たとえば、エンジンの回転数が低い状態では、吸気側カム353は、カム高さの低い位置が吸気側タペット358に当接している。運転者がアクセルグリップをストットルバルブ324の開度が大きくなるように操作すると、モータ371の駆動力によって吸気側カム353が軸線方向の一方に向かって移動する。そして、吸気側カム353は、カム高さの高い位置が吸気側タペット358に当接する。これにより、リフト量が大きくなる。一方、運転者がアクセルグリップをストットルバルブ324の開度が小さくなるように操作すると、モータ371の駆動力によって吸気側カム353が軸線方向の他方に向かって移動する。そして、吸気側カム353は、カム高さの低い位置が吸気側タペット358に当接する。これにより、リフト量が小さくなる。
【0026】
次に、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9について、図7図12を参照して説明する。本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9は、エアクリーナ5と、インテークパイプ323と、動弁装置35とを有する。図7は、シリンダアセンブリ131にエアクリーナ5が取り付けられた状態を模式的に示す外観斜視図である。図8は、シリンダアセンブリ131にエアクリーナ5が取り付けられた状態を模式的に示す平面図である。図9は、動弁装置35のカムスライド機構37とエアクリーナ5との関係を示す図であり、エアクリーナ5が取り付けられたシリンダアセンブリ131を前方から見た図である。図10は、動弁装置35のカムスライド機構37とエアクリーナ5との関係を示す図であり、図9のX−X線断面図である。図11は、動弁装置35のカムスライド機構37とエアクリーナ5との関係を示す図であり、図9のXI−XI線断面図である。図12は、動弁装置35のカムスライド機構37とエアクリーナ5との関係を示す図であり、図9のXII−XII線断面図である。
【0027】
図7図12に示すように、エアクリーナ5は、本体51と、フィルタエレメント53とを有する。本体51は、内部に空間が形成される箱状の構成を有する。たとえば、本体51は、底壁部54と、底壁部54の外周縁から上側に向かって延出する側壁部55と、本体51の上側を覆う上壁部511とを有する。なお、上壁部511は、本体51と別体の部材であってもよい。図7においては、上壁部511を二点鎖線で示し、エアクリーナ5の内部を実線で示す。本体51の内部にはフィルタエレメント53が配設される。本体51の内部の空間は、フィルタエレメント53によって、前側のダーティサイド室58と後側のクリーンサイド室59に区画される。
ダーティサイド室58の側壁部55の左右方向(燃焼室311の配列方向)の両側には、外部から空気を取り入れるための取入口56が形成される。取入口56は、側壁部55の左右両側から略前方に延伸する筒状の構成を有する。また、左右の取入口56は、左右略対称の位置に設けられる。そして、ダーティサイド室58とその外部とは、取入口56によって空気が流通可能に連通する。
クリーンサイド室59の底壁部54には、空気が流通可能な複数の開口部57が形成される。これら複数の開口部57は、左右方向に直列に並ぶように形成される。そして、クリーンサイド室59の底壁部54には複数のインテークパイプ323が接続され、各開口部57と各インテークパイプ323とが連通する。このように、クリーンサイド室59とインテークポート321とは、インテークパイプ323によって空気が流通可能に接続(連通)される。
【0028】
本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9の機能および動作は、次のとおりである。エアクリーナ5のダーティサイド室58には、取入口56を通じて空気が取り入れられる。ダーティサイド室58に取り入れられた空気は、後側に向かって流れ、フィルタエレメント53を通過してクリーンサイド室59に流入する。空気がフィルタエレメント53を通過する際に濾過され、空気中の異物(塵埃など)が除去される。クリーンサイド室59に流入した空気は、各開口部57を通じて各インテークパイプ323に流入する。そして、インテークパイプ323に設けられる燃料噴射弁325が、空気に燃料を混合する。燃料が混合された空気(混合気)は、各インテークポート321に導かれる。そして、動弁装置35は吸気バルブ351を駆動し、各インテークポート321と各燃焼室311との間を開閉する。この際、カムスライド機構37が吸気側カム353を軸線方向に移動させることによって、吸気バルブ351のリフト量やリフトタイミング(すなわち、吸気量や吸気のタイミング)を変更する。このように、本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9は、燃焼用の空気を、内燃機関としてのエンジンユニット13の各燃焼室311に供給する。
【0029】
次に、エアクリーナ5とシリンダアセンブリ131との関係について説明する。
図2図9などに示すように、シリンダヘッドカバー33の左右方向の一側端にはモータ371が設けられ、反対側の一側端にはカムポジションセンサ376が設けられる。モータ371およびカムポジションセンサ376は、いずれも、シリンダヘッドカバー33から上方に突出するように配設される。そして、ボールスクリュー372およびスライドナット377は、モータ371およびカムポジションセンサ376よりも下側(シリンダヘッド32の上面に近い側)に配設される。したがって、モータ371とカムポジションセンサ376との間には、略下側(シリンダヘッド32の側)に向かって窪む部分が形成される。
また、モータ371およびカムポジションセンサ376は、前後方向については、シリンダヘッドカバー33の中心からインテークポート321の側にずれた位置に配設される。より具体的には、各燃焼室311の軸線方向視において(ピストン312の往復動の方向から見て)、モータ371およびカムポジションセンサ376は、シリンダヘッドカバー33の上面からインテークポート321が形成される側にはみ出すように配設される。そして、左右方向からの側面視(吸気側カムシャフト354の軸線方向視)において、モータ371とカムポジションセンサ376とは重畳する。このように、モータ371とカムポジションセンサ376は、左右方向については離間した位置に配設され、前後方向においては略同じ位置に配設される。
エアクリーナ5は、シリンダヘッドカバー33の上側に配設される。そして、エアクリーナ5の底壁部54の外側の面が、シリンダヘッドカバー33(およびボールスクリューハウジング34)の上面に対向する。エアクリーナ5の底壁部54の内周面には、凹部60が形成される。凹部60は、左右方向(吸気側カムシャフト354の軸線方向)の中間部に形成される。図9図12に示すように、凹部60は、他の部分(特に左右方向の両端部)に比較して深い部分(上下方向寸法が大きい部分)である。凹部60の外側の面(シリンダヘッドカバー33に対向する側の面)は、左右方向の両端部よりも、シリンダヘッドカバー33の側に向かって膨出している。凹部60の外側の膨出している部分は、モータ371とカムポジションセンサ376との間(シリンダヘッド32の側に向かって窪む部分)に入り込んでいる(特に図9参照)。
また、エアクリーナ5は、左右方向(吸気側カムシャフト354の軸線方向)に関して対称の構成を有する(特に図8参照)。具体的には、凹部60は左右方向の中心に形成される。取入口56も、側壁部55の左右両側であって、左右対称の位置に設けられる。さらに、クリーンサイド室59に形成される複数の開口部57も、略左右対称の位置に形成される。このような構成であると、複数の開口部57に流入する空気の量に、左右方向で偏りが生じることを防止できる。すなわち、取入口56は側壁部55の左右対称の位置に形成されるため、取入口56からダーティサイド室58に流入する空気の流量は、左右方向に偏りが生じることが防止または抑制される。そして、ダーティサイド室58に流入した空気は後側に向かって流れる。ダーティサイド室58の底壁部54に形成される凹部60は、他の部分に比較して断面積(ここでは、空気の流動方向に直角な面で切断した断面積)が大きい。このため、凹部60を流れる空気の量は、他の部分に比較して多くなる。そして、凹部60が左右方向の中心に形成されるため、多くの空気がエアクリーナ5の内部の左右方向の中心を流れるため、左右方向で偏りが生じることが防止される。したがって、複数の開口部57に流入する空気の量に、左右方向で偏りが生じることを防止または抑制できる。
【0030】
図10図12に示すように、モータ371とカムポジションセンサ376は、シリンダヘッドカバー33と、インテークパイプ323と、エアクリーナ5とに囲まれる領域に設けられる。具体的には、次のとおりである。
インテークパイプ323は、シリンダヘッド32の後側の面から、斜め上方に向かって(シリンダヘッドカバー33から遠ざかるように)延出する。そして、エアクリーナ5の前部がシリンダヘッドカバー33の上側に位置し、エアクリーナ5の後部(特にクリーンサイド室59が形成される部分)がインテークパイプ323の先端に結合される。このように、エアクリーナ5は、シリンダヘッドカバー33の上側とインテークパイプ323の先端とに跨るように配設される。このため、シリンダヘッドカバー33の上部後側には、左右方向からの側面視において、エアクリーナ5の底壁部54と、シリンダヘッドカバー33の後面上部から上面後部にかけての部分と、インテークパイプ323とに囲まれる領域が形成される。
シリンダヘッド32を燃焼室311の軸線方向から見た平面視において、モータ371の回転軸の中心線は、吸気側カムシャフト354の中心線よりも、インテークポート321の側にずれている。そして、モータ371は、各燃焼室311の軸線(ピストン312の往復方向)方向視において、シリンダヘッドカバー33の上面からインテークポート321が形成される側にはみ出すように配設される。また、カムポジションセンサ376は、シリンダヘッドカバー33の後面上部から上面後部にかけての部分から、斜め後ろ上方に突出するように設けられる。このように、モータ371およびカムポジションセンサ376は、シリンダヘッドカバー33と、インテークパイプ323と、エアクリーナ5とに囲まれる領域に設けられる。
このような構成によれば、(燃焼室311の軸線方向からの平面視において)モータ371の回転軸の中心線と吸気側カムシャフト354の中心線とが一致する構成と比較すると、モータ371がシリンダヘッドカバー33から上方に突出する寸法が小さくなる。同様に、カムポジションセンサ376も、吸気側カムシャフト354の中心線よりも、インテークポート321の側にずれている。このため、(燃焼室311の軸線方向からの平面視において)カムポジションセンサ376が吸気側カムシャフト354の中心線に重畳する構成と比較すると、カムポジションセンサ376がシリンダヘッドカバー33から上方に突出する寸法が小さくなる。このため、図10図12に示すように、エアクリーナ5の左右方向の両端部において、断面積の減少を防止または抑制することができる。この結果、エアクリーナ5の容量の減少を防止または抑制できる。
さらに、このような構成であると、シリンダヘッドカバー33の上側の空間の有効利用を図ることができる。すなわち、モータ371およびカムポジションセンサ376のシリンダヘッドカバー33からの突出寸法が大きくなると、シリンダヘッドカバー33とエアクリーナ5との間の距離も大きくなる。これに対して、モータ371およびカムポジションセンサ376のシリンダヘッドカバー33から上方へ突出する寸法が小さくなると、エアクリーナ5をシリンダヘッドカバー33に接近させて配設できる。したがって、シリンダヘッドカバー33の上側の空間の有効利用を図ることができる。
【0031】
本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系9の構造の作用および効果をまとめると、次のとおりである。
本発明の実施形態によれば、エアクリーナ5の容量の減少を防止または抑制しつつ、エンジンユニット13のコンパクト化を図ることができる。すなわち、カムスライド機構37のモータ371とカムポジションセンサ376とがシリンダヘッドカバー33の上側に配設される構成であると、エアクリーナ5を除いたエンジンユニット13の高さ寸法が大きくなる。そこで、その上側に配設されるエアクリーナ5に凹部60が形成され、この凹部60に対応する膨出部がモータ371およびカムポジションセンサ376との間に配設される構成であれば、エアクリーナ5を含めたエンジンユニット13の高さ方向(燃焼室311の軸線方向)寸法の増加を防止または抑制できる。そして、エアクリーナ5には凹部60が形成されるため、容量の減少(空気が流れる領域の断面積の減少)を防止または抑制できる。したがって、エアクリーナ5の容量の減少を防止または抑制しつつ、エンジンユニット13のコンパクト化を図ることができる。
【0032】
本発明の実施形態によれば、複数のインテークポート321に流入する空気の量にばらつきが生じることを防止または抑制できる。前記のとおり、エアクリーナ5の底壁部54の凹部60は、空気の流動方向に直角な左右方向の中心に形成される。凹部60が形成されることで、エアクリーナ5の内部の左右方向の中心部は、他の部分に比較して断面積が大きくなり、流れる空気の量は、他の部分よりも多くなる。したがって、多くの空気が、エアクリーナ5の内部の左右方向の中心を流れる。そして、複数の開口部57も左右対称に配列される。このため、各開口部57を通じてインテークポート321に流入する空気の量にばらつきが生じることを防止または抑制できる。したがって、本発明の実施形態によれば、燃焼室311間で燃焼の状態のばらつきが生じることを防止できる。そしてその結果、燃焼室311間でノッキングの発生のばらつきの防止や、エンジンユニット13の振動の低減や、エンジンユニット13の性能の向上を図ることができる。
【0033】
本発明の実施形態によれば、シリンダヘッドカバー33の上側およびその近傍の空間の有効利用を図ることができる。モータ371は、シリンダヘッド32の左右方向の一端に配設され、カムポジションセンサ376は、モータ371とは反対側の一端に配設される。ボールスクリュー372およびスライドナット377は、左右方向についてモータ371とカムポジションセンサ376との間に配設される。そして、ボールスクリュー372およびスライドナット377は、モータ371およびカムポジションセンサ376よりも下側(シリンダヘッド32の上面に近い側)に配設される。したがって、モータ371とカムポジションセンサ376との間には、シリンダヘッド32の側に向かって窪む部分が形成される。エアクリーナ5の凹部60が、前記シリンダヘッド32の側に向かって窪む部分に配設される構成であるため、エアクリーナ5とシリンダヘッドカバー33との距離を小さくすることができる。したがって、シリンダヘッドカバー33の上側に不要な領域が形成されることを防止して、シリンダヘッドカバー33の上側の空間の有効利用を図ることができる。そして、シリンダヘッドカバー33の上側の空間の有効利用を図ることができるから、エンジンユニット13の小型化を図ること(または大型化を防止もしくは抑制すること)ができる。
【0034】
本発明の実施形態によれば、エアクリーナ5の容量の減少を防止または抑制できる。シリンダアセンブリ131は、燃焼室311の軸線(ピストン312の往復方向)が前傾した姿勢で自動二輪車1に搭載される。シリンダアセンブリ131のシリンダブロック31には、各燃焼室311からは、斜め上方に向かって延出するインテークパイプ323が接続される。そして、エアクリーナ5は、シリンダヘッドカバー33の上部とインテークパイプ323の先端部とに跨るように配設される。このため、側面視において(燃焼室311の配列方向に平行な方向から見て)、シリンダヘッドカバー33と、インテークパイプ323と、エアクリーナ5とに囲まれる領域が形成される。そして、カムスライド機構37のモータ371およびカムポジションセンサ376は、この領域に配設される(正確には、モータ371およびカムポジションセンサ376は、シリンダヘッドカバー33に設けられ、この領域に向かって突出する)。このような構成によれば、モータ371およびカムポジションセンサ376と、エアクリーナ5との干渉を小さくできるから、エアクリーナ5の容量の減少を防止または抑制できる。
【0035】
以上、本発明の実施形態および実施例を、図面を参照して詳細に説明したが、前記実施形態および実施例は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
例えば、前記実施形態においては、本発明にかかる内燃機関の吸気系がオンロードタイプの自動二輪車に適用される構成を示したが、本発明が適用される自動二輪車の種類は限定されない。前記自動二輪車は、本発明が適用できる自動二輪車の一例を示したに過ぎない。また、本発明は、自動二輪車に限らず、たとえば不整地走行用の三輪車などにも適用できる。さらに、前記実施形態では、直列四気筒の内燃機関を示したが、内燃機関の燃焼室(気筒)の数は限定されない。要は、内燃機関の吸気系が、エアクリーナからエンジンユニットに燃焼用の空気を供給するための複数のインテークポートを有する構成であれば、内燃機関の燃焼室の数にかかわりなく、本発明が適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、内燃機関の吸気系に有効な技術である。たとえば、本発明は、内燃機関としてエンジンユニットを有する自動二輪車や、その他各種の車両の吸気系に適用できる。そして、本発明によれば、内燃機関に燃焼用の空気を供給するための複数のインテークポートへ分配される空気の量にばらつきが生じることを防止または抑制できる。
【符号の説明】
【0038】
1:自動二輪車
13:エンジンユニット
131:シリンダアセンブリ
132:クランクケースアセンブリ
31:シリンダブロック
311:燃焼室
312:ピストン
32:シリンダヘッド
321:インテークポート
322:エグゾーストポート
323:インテークパイプ
324:スロットルバルブ
325:燃料噴射装置
33:シリンダヘッドカバー
34:ボールスクリューハウジング
35:動弁装置
351:吸気バルブ
352:排気バルブ
353:吸気側カム
354:吸気側カムシャフト
355:排気側カム
356:排気側カムシャフト
357:ベアリング
358:吸気側タペット
359:排気側タペット
37:カムスライド機構
371:モータ
372:ボールスクリュー
373:ベースプレート
374:カムフォークシャフト
375:カムフォーク
376:カムポジションセンサ
377:スライドナット
378:被動ギア
379:駆動ギア
5:エアクリーナ
51:本体
511:上壁部
52:蓋体
53:フィルタエレメント
54:底壁部
55:側壁部
56:取入口
57:開口部
58:ダーティサイド室
59:クリーンサイド室
60:凹部
9:本発明の実施形態にかかる内燃機関の吸気系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12