(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ホースクランプの構造に関しては、例えば、複数の油圧ホースの中間部をまとめてクランプしたクランプ部材がある(特許文献1)。
【0003】
このクランプ部材は、旋回フレームに取り付けられた取付側挟持体や、合わせ側挟持体、ゴム材からなる複数のグロメット部材などで構成されている。各グロメット部材に形成された2個ホース嵌着穴にそれぞれ油圧ホースが挿入され、これらグロメット部材の片側部分が取付側挟持体に形成された凹溝に嵌め込まれる。グロメット部材の残りの部分は、合わせ側挟持体の凹溝に嵌め込むことによって、合わせ側挟持体が取付側挟持体に締結固定されている。
【0004】
このクランプ部材の場合、合わせ側挟持体を取付側挟持体に締結固定する際、各グロメット部材は、その片側部分だけが取付側挟持体に支持されているため、取付側挟持体から外れないように各グロメットを押さえ付ける必要がある。従って、このクランプ部材では、油圧ホースの組み付け作業の作業性に難点がある。
【0005】
その作業性を向上できるようにしたホース固定具が提案されている(特許文献2)。
【0006】
このホース固定具は、管状の2本の案内ロッドや、ゴム材料からなる第1〜第3の3個のクランプ、挟持用ブラケット、固定ボルトなどで構成されている。ホース固定具は、旋回フレームの取付板に取り付けられており、6本の油圧ホースを保持している。2本の案内ロッドは、その取付板から右横方向に延びている。
【0007】
各クランプの前後方向の両端側の各々には、案内ロッドを挿入するロッド挿通孔が左右方向に貫通している。第1クランプ及び第2クランプの各々の右側面には、3個のホース嵌合凹部が前後方向に並んで形成されている。第2クランプ及び第3クランプの各々の左側面には、ホース嵌合凹部に無理嵌めされる3個のホース保持凸部が形成されている。
【0008】
ホース固定具への油圧ホースの組み付けは、まず、右方向から第1クランプを案内ロッドに挿入し、取付板側の奥方に第1クランプを配置する。そうして、所定の3本の油圧ホースをホース嵌合凹部に圧入する。同様に、第2クランプを案内ロッドに挿入して第1クランプに押し付け、第1クランプのホース嵌合凹部に第2クランプのホース保持凸部を嵌合させる。それにより、第2クランプは第1クランプに仮止めされる。
【0009】
第2クランプのホース嵌合凹部にも所定の3本の油圧ホースを圧入する。続いて、同様に第3クランプを案内ロッドに挿入しながら第2クランプに押し付ける。最後は、第3クランプに挟持用ブラケットを押し当て、固定ボルトを各案内ロッドに差し込んで締結し、挟持用ブラケットを取付板に固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2のホース固定具の場合、油圧ホースの増設が難しいという問題がある。すなわち、油圧ホースの増設が必要になれば新たにクランプを追加すればよいが、ホース固定具の設置場所の関係上、追加するクランプの設置スペースを確保するのは容易ではない。しかも、クランプを追加すれば、それだけ横方向にホース固定具が延びるため、案内ロッドによる支持が不安定になる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、油圧ホースの増設が容易にできる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る作業機械は、下部走行体の上に機械本体が設置された作業機械である。前記機械本体は、油圧で作動するアタッチメントと、前記アタッチメントに作動油を送るコントロールバルブと、前記アタッチメントと前記コントロールバルブとの間に設けられた一群の油圧ホースと、前記一群の油圧ホースを支持するとともに連結可能なクランプ部材を有するホースクランプとを備える。そして、前記ホースクランプが、前記クランプ部材の連結方向が互いに直交した第1クランプ及び第2クランプを有している。
【0014】
この作業機械によれば、一群の油圧ホースを支持するとともに連結可能なクランプ部材を有するホースクランプが、クランプ部材を互いに直交して連結する第1クランプ及び第2クランプを有している。
【0015】
従って、油圧ホースを増設する際には、前後左右等、直交した方向のいずれの方向にも油圧ホースを支持するクランプ部材が連結できるため、自由度が向上し、油圧ホースの増設が容易にできる。ホースクランプ全体を構造的に強化できるため、油圧ホースも安定して支持できる。
【0016】
具体的には、前記アタッチメントは、前記機械本体の前部に、前後方向に起伏自在に設置されており、前記アタッチメントと左右方向に隣接して側部機械室が設置されている。前記側部機械室を覆う機械室カバーに、前記一群の油圧ホースが通る開口部が開口し、前記開口部を塞ぐように、前記第1クランプの前記クランプ部材は左右方向に連結され、かつ、前記第2クランプの前記クランプ部材は前後方向に連結され、前記第1クランプと前記第2クランプとが前後方向に並んでいる。
【0017】
この場合、機械本体前部のアタッチメントと左右方向に隣接して側部機械室が設置され、その側部機械室を覆う機械室カバーに、一群の油圧ホースが引き出される開口部が開口している。そして、ホースクランプは、その開口部の一部又は全部を塞ぐように設置されている。
【0018】
従って、一群の油圧ホースは、開口部を塞ぐホースクランプに支持された状態で、側部機械室から引き出されるため、油圧ホースを安定して支持でき、美観の向上が図れる。ホースクランプで開口部からの側部機械室内への異物等の浸入も防ぐことができる。
【0019】
更に、クランプ部材の連結方向を、第1クランプは左右に、第2クランプは前後に向けた状態で設置されているので、前後左右のいずれの方向にも油圧ホースの増設ができ、汎用性に優れる。
【0020】
すなわち、アタッチメントは、前後方向に起伏動作するため、その起伏動作に連動して一群の油圧ホースも前後に揺動する。しかも、側部機械室はそれ自体が左右方向に狭く、レイアウト上も増設スペースが確保できないことが多い。
【0021】
それに対し、このホースクランプでは、前後方向にも第2クランプを有しているので、油圧ホースの増設が容易にできる。前後方向であればスペースも比較的確保し易いため、第2クランプをオプションとして設置でき、汎用性に優れる。
【0022】
より具体的には、前記ホースクランプは、前記クランプ部材を挟み込む一対の挟持部材と、前記挟持部材の一方に設けられ、他方に向かって延びる支持棒と、少なくとも1個のホース挿入孔を有する嵌合部材とを有し、前記クランプ部材は、前記嵌合部材が嵌合される少なくとも1個の嵌合凹部と、連結時に互いに重なって前記支持棒が挿入される要素孔とを有しているようにするとよい。
【0023】
そうすれば、油圧ホースは嵌合部材のホース挿入孔に挿入され、その嵌合部材はクランプ部材の嵌合凹部に嵌め込まれ、そのクランプ部材が、支持棒が挿入された状態で一対の挟持部材で挟み込まれる。
【0024】
すなわち、油圧ホースは、嵌合部材を介してクランプ部材に取り付けられる。従って、油圧ホースをクランプ部材に直接取り付けるのに比べて、組み合わせの自由度が向上する。
【0025】
更には、前記嵌合部材が、同一の外形寸法を有する複数の共通嵌合部材を含み、前記嵌合凹部が、前記共通嵌合部材に対応した同一の内形寸法を有する複数の共通嵌合凹部を含むようにするのが好ましい。
【0026】
そうすれば、嵌合部材を共有でき、部材コストの低減や生産性の向上が図れる。
【0027】
より具体的には、前記機械本体は、前記下部走行体に支持された支持ベースと、前記支持ベースに設けられて前後方向に延びる一対の縦板と、を備えている。前記アタッチメントは、前記一対の縦板の前側に設けられた支持部に支持されている。そして、前記開口部が、前記支持部と左右方向に隣接して設置されている。
【0028】
この場合、ホースクランプを設ける開口部が、アタッチメントを支持した支持部と左右方向に隣接しているので、アタッチメントの起伏動作に対して一群の油圧ホースを安定して支持でき、美観も損なわれない。
【0029】
しかしながら、第1クランプの直ぐ隣にはアタッチメントの動作領域が存在するため、反対側に設置された側部機械室の内部に張り出すようにクランプ部材を増設するしかない。しかし、側部機械室の内部は左右のスペースが限られているため、クランプ部材の増設は容易でないし、左右方向に増設できたとしても、増設される油圧ホースはアタッチメントから離れるため、引っ掛かり易くなって障害になり易いうえ、美観も損なわれる。
。それに対し、この作業機械のホースクランプは、前後方向にもクランプ部材が増設できるので、増設しても障害になり難いし美観も損なわれない。油圧ホースの増設も容易にできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の作業機械によれば、美観を保ちながら油圧ホースの増設が容易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、前後、左右、及び上下の方向を示している。特に言及しない限り、説明中の前後等の方向はこれら表示に従うものとする。
【0033】
図1及び
図2に、本発明を適用した油圧ショベル1(作業機械の一例)を示す。この油圧ショベル1では、クローラ式の下部走行体2の上に機械本体3が旋回自在に設置されている。機械本体3には、支持ベース10やアタッチメント20、キャブ30、機械室40などが備えられている。
【0034】
支持ベース10は、機械本体3の底壁を構成しており、下部走行体2に旋回自在に支持されている。支持ベース10は、肉厚な鋼板からなる底板11や、底板11から左右に張り出すサイドデッキ12などで構成されている。
【0035】
底板11の上面には、各々が肉厚な鋼板からなる一対の縦板13,13が立設されている。これら縦板13は左右に対向した状態で前後方向に延びており、その前側には、アタッチメント20を起伏自在に支持する支持部13aが設けられている。
【0036】
アタッチメント20は、ブーム21やアーム22、バケット23、油圧シリンダ24a,24b,24cなどで構成されている。詳しくは、ブーム21は、柱状の強度部材である。ブーム21の基端部は支持部13aに軸支されており、ブーム21は、支持部13aを支点にして前後方向に揺動する。
【0037】
アーム22も、ブーム21と同じく柱状の強度部材である。アーム22の基端部はブーム21の先端部に軸支されており、アーム22は、ブーム21の先端部を支点にして前後方向に揺動する。バケット23は、例えば土砂等を掘削する容器状の部材である。バケット23の基端部はアーム22の先端部に軸支されており、バケット23は、アーム22の先端部を支点にして前後方向に揺動する。
【0038】
ブーム21、アーム22及びバケット23は、それぞれの動作に対応して配置された油圧シリンダ24a,24b,24cによって駆動される。詳しくは、ブーム21を駆動する第1油圧シリンダ24aは、ブーム21の基端部の近傍に設置されている。アーム22を駆動する第2油圧シリンダ24bは、ブーム21の背面に設置されている。バケット23を駆動する第3油圧シリンダ24cは、アーム22の背面に設置されている。
【0039】
ブーム21には、第2油圧シリンダ24b及び第3油圧シリンダ24cから延びる複数の油圧配管25が設置されている。これら油圧配管25の末端25aは、ブーム21の長手方向における右側の中間部位にまとめて配置されている。末端25aの各々には、可撓性を有する油圧ホース50aが接続されている。これら一群の油圧ホース(油圧ホース群50)については、別途後述する。
【0040】
キャブ30は、機械本体3の前部左側に配置された箱形の運転室である。具体的には、キャブ30は、一対の縦板13,13の左側に隣接し、サイドデッキ12の上に設置されている。
【0041】
機械室40は、機械本体3の後部に左右方向に亘って位置する後部機械室41と、機械本体3の前部右側に前後方向に亘って位置する側部機械室42とを有している。後部機械室41及び側部機械室42は連なって一体的に構成されている。後部機械室41には、エンジンや油圧ポンプ等が設置され(図示せず)、側部機械室42には、作動油タンク44やコントロールバルブ45等が設置されている。
【0042】
側部機械室42は、一対の縦板13,13の右側に隣接し、サイドデッキ12の上に設置されている。側部機械室42の左右側面、前面及び上面は、機械室カバー46で覆われている。
【0043】
特に、この機種では、
図2に示すように、機械室カバー46の前面から上面に至る部分に昇降用のステップ46aが設けられている。具体的には、機械室カバー46の上面及び前面の上下2箇所に、階段状に凹むステップ46aが形成されている。
【0044】
そして、機械室カバー46の上部における、上側のステップ46aと機械室カバー46の左側面との間の部分、換言すれば、支持部13aの右側に隣接した部分には、前後方向に延びる矩形の開口部47が開口している。その開口部47を通じて、油圧ホース群50が上方に延びるように引き出されている。
【0045】
開口部47から引き出された油圧ホース群50は、それぞれ対応した油圧配管25に接続されている。油圧ホース群50における開口部47の上側の部分は、後方に向かって凸状に湾曲している(湾曲部51)。
【0046】
図1に示したように、ブーム21の起伏動作に連動して油圧ホース群50は大きく揺動する。その際、油圧ホース群50には力が加わるため、湾曲部51を設けることによって油圧ホース群50の負荷を軽減している。そして、特に強い力が加わる開口部47の部分に、油圧ホース群50を強固に支持するホースクランプ60が設置されている。
【0047】
図3に、側部機械室42の内部を示す。同図では、特に説明を要しない機器や配線等は図示せずに簡略化している。
【0048】
作動油タンク44は、油圧制御に用いられる作動油を貯留する箱形容器である。この機種の作動油タンク44は、側部機械室42の後方寄りに配置されている。コントロールバルブ45は、油圧ポンプと協働して運転操作に応じた油圧制御を行う装置である。第2油圧シリンダ24bや第3油圧シリンダ24cとの間で作動油の送りや戻しを行うため、油圧ホース群50はコントロールバルブ45に接続されている。
【0049】
ホースクランプ60は、これら油圧ホース群50の中間部分をまとめて支持している。ホースクランプ60により、油圧ホース群50の各油圧ホース50aは、上下方向に略平行に延びた姿勢で強固に支持されている。また、ホースクランプ60とカバー板47aとにより、開口部47は塞がれている。
【0050】
図4及び
図5に、ホースクランプ60を示す。図示のホースクランプ60は、支持板61(挟持部材)や押さえ板62(挟持部材)、支持棒63、クランプ部材64、ブッシング65(嵌合部材)などで構成されている。これら支持板61等は、標準装備される油圧ホース群50を支持する標準クランプ60aを構成している(第1クランプ)。
【0051】
支持板61は、所定形状をした板部材からなる取付板部61aと、予備支持板部61bとを有している(予備支持板部61bについては別途後述)。
図3に示したように、取付板部61aは、その板面を左右方向に向けた状態で、側面カバー46bに取り付けられている。側面カバー46bは、機械室カバー46の左側面を構成する部材であり、右側の縦板13に取り付けられている。すなわち、取付板部61aは、側面カバー46bを介して縦板13に取り付けられているため、強固に支持されている。
【0052】
支持棒63は、取付板部61aの右側の板面に2本取り付けられている。これら支持棒63,63は、前後方向に所定間隔離れて配置され、取付板部61aから右方向に向かって平行に延びている。支持棒63の左右方向の長さは、連結されたクランプ部材64の左右方向の長さと略同一である。各支持棒63の突端には、雌ネジ63aが形成されている。
【0053】
押さえ板62は、前後方向に長い板部材からなる。押さえ板62には、支持棒63の配置に対応して、貫通孔62aが2個形成されている。互いに組み付けた時に、押さえ板62の後部がクランプ部材64の後方に突き出るように、押さえ板62の前後寸法はクランプ部材64の前後寸法よりも大きく形成され、貫通孔62aは前寄りに配置されている。
【0054】
クランプ部材64は、剛性に優れた金属部材や樹脂部材であり、前後方向に長い直方体形状の輪郭を有している。本実施形態では同一のクランプ部材64が2個用いられている。各クランプ部材64には、2個の嵌合凹部64a,64aが前後方向に並んで形成されている。各嵌合凹部64aは、クランプ部材64の右側面を、上面から見てU字状に切り欠いたように形成されている。本実施形態の嵌合凹部64aは、いずれも同一の内径寸法を有している(共通嵌合凹部)。
【0055】
クランプ部材64の前後方向の両端部には、支持棒63の配置に対応して、要素孔64bが左右方向に貫通している。クランプ部材64は、左右方向に横並びに連結して用いられる。そのようにクランプ部材64を連結すると、要素孔64bが互いに重なって連通するため、そこに支持棒63が挿入される。
【0056】
ブッシング65は、嵌合凹部64aに嵌合される部材である。ブッシング65は、ゴムや合成樹脂等、弾性を有する素材で形成されており、嵌合凹部64aに圧入される。本実施形態では、3個のブッシング65が用いられている。なお、ブッシング65が嵌合されない嵌合凹部64aは、上方から嵌め込む蓋部材66で塞がれる。
【0057】
ブッシング65は、クランプ部材64よりも僅かに上下寸法が大きく形成されており、ブッシング65の嵌合部位の上下の縁には、それぞれ鍔部65aが張り出している(
図9参照)。従って、クランプ部材64にブッシング65を嵌合すれば、ブッシング65の上下の動きが鍔部65aによって規制される。
【0058】
各ブッシング65には、上下方向に貫通するホース挿入孔65bが少なくとも1個形成されている。これらホース挿入孔65bに、対応した油圧ホース50aが割れ目65cを通じて挿入される。ホース挿入孔65bの内径は、対応する油圧ホース50aの外径よりも僅かに小さく形成されている。従って、ホース挿入孔65bに挿入された油圧ホース50aは、ブッシング65に強固に保持される。
【0059】
各ブッシング65は、いずれも同一の外径寸法を有している(共通嵌合部材)。従って、ホース挿入孔65bの個数や配置等を変えるだけで、様々な仕様に対応でき、部材の共有化が図れる。
【0060】
図5に示すように、嵌合凹部64aの開口側の前後幅寸法h1は、奥方の前後幅寸法h2よりも僅かに大きく形成されている。それにより、複数の油圧ホース50aを保持したブッシング65を嵌合凹部64aに嵌合した場合に、特定の油圧ホース50aに負荷が偏らないようにしている。
【0061】
このホースクランプ60では、例えば次のような方法により、油圧ホース50aを手で押さえたりせずに、容易に組み付けることができる。
【0062】
対応したホース挿入孔65bに油圧ホース50aを挿入する。右方向から前後の要素孔64bに支持棒63を挿入し、1段目のクランプ部材64を、取付板部61aと密着するように配置する。そのクランプ部材64の嵌合凹部64aに、油圧ホース50aを保持したブッシング65を圧入する。取付板部61aへのクランプ部材64の組み付けは、油圧ホース50aを保持したブッシング65を嵌合凹部64aに圧入した後であってもよい。
【0063】
このとき、ブッシング65は、剛性に優れたクランプ部材64で支持されているので、油圧ホース50aに多少大きな力が加わっても容易には外れない。従って、油圧ホース50aを手で押さえることなく作業できる。
【0064】
同様にして、2段目のクランプ部材64を、先に取付板部61aに組み付けたクランプ部材64の右側に重ねるように配置し、両クランプ部材64,64を連結する。2段目のクランプ部材64の嵌合凹部64aにも、油圧ホース50aを保持したブッシング65を圧入する。そして最後に、2段目のクランプ部材64の右側に押さえ板62を重ねて、支持棒63の雌ネジ63aに貫通孔62aを通じてボルトBをねじ込む。それにより、連結したクランプ部材64は、取付板部61aと押さえ板62との間に挟まれ、強固に固定される。
【0065】
この油圧ショベル1では、標準クランプ60aを構成している2個のクランプ部材64を連結することにより、開口部47の前側部分が塞がれるように設計されている。具体的には、クランプ部材64を連結して形成される連結体の左右方向の寸法よりも開口部47の左右幅寸法は小さく形成されている。
【0066】
この油圧ショベル1では、用途に応じて、アタッチメント20の構成変更ができる。例えば、リサイクル現場などでは、解体作業向けに、バケット23を、
図6に示すような圧砕機70に取り替えることができる。
【0067】
この圧砕機70の場合、前後方向の揺動動作に加えて、一対の挟み部71,71の開閉動作や、回動軸72を中心とする回動動作が油圧制御によって行われる。従って、バケット23から圧砕機70に取り替える際には、油圧ホース50aを増設する必要がある。圧砕機70に限らず、アタッチメント20の構成変更に伴い、油圧シリンダ等のアクチュエータが追加される場合には、同様に油圧ホース50aの増設が必要になる。
【0068】
ところが、この種の作業機械では、構造上、開口部47の左右のスペースが制限されている場合が多く、油圧ホース50aの増設に応じてクランプ部材64を増設するのは容易でない。
【0069】
この油圧ショベル1では、開口部47の左側はブーム21の回動領域であるため、右側に増設するしかない。しかし、側部機械室42はそれ自体が左右方向(車幅方向)に狭いうえに、開口部47の右側には、ステップ46aや機器があって、クランプ部材64の増設スペースが確保できない。
【0070】
右側に増設できても、増設される油圧ホース50aはアタッチメント20から離れるため、引っ掛かり易くなって障害になり易いし、美観も損なわれる。
【0071】
そこで、このホースクランプ60では、オプションとして、後方向に油圧ホース50aの増設を可能にする予備クランプ60b(第2クランプ)が備えられている。予備クランプ60bは、カバー板47aの下側に位置している。
【0072】
図7及び
図8に、増設時のホースクランプ60の一例を示す。予備クランプ60bは、予備支持板部61b(挟持部材)や予備押さえ板82(挟持部材)、第2支持棒83、予備クランプ部材84、予備ブッシング85(嵌合部材)などで構成される。なお、予備クランプ60bの各部材の基本構成は、標準クランプ60aと同じである。
【0073】
図5に示したように、予備支持板部61bは、左右方向に長い角柱形状の外観を有し、取付板部61aの右側の板面に取り付けられている。予備支持板部61bは、後側の支持棒63に隣接して配置され、取付板部61aから右方向に向かって支持棒63と平行に延びている。予備支持板部61bの左右方向の長さは、支持棒63の長さと略同一である。
【0074】
取付板部61aに組み付けられた各クランプ部材64の後端面は、予備支持板部61bの前側面に沿うように設計されている。従って、ホースクランプ60に組み付けられた各クランプ部材64は、その左右側面及び後面が予備支持板部61b、取付板部61a及び押さえ板62によって三方が支持されるため、更に構造的に剛性が強化され、ブッシング65をより安定的に支持できる。
【0075】
第2支持棒83は、予備支持板部61bの後側面から後方に向かって延びるように、予備支持板部61bの左右方向の中間部位に1本配置されている。第2支持棒83は、予備支持板部61bに締結固定し、増設の程度に応じて交換可能にするのが好ましい。予備支持板部61bにおける第2支持棒83の左右2箇所には、ボルト締結孔86が形成されている。
【0076】
予備押さえ板82は、左右方向に長い断面L字状の板部材からなる。予備押さえ板82には、ボルト締結孔86の配置に対応して、ボルト挿通孔87が2個形成されている。
【0077】
予備クランプ部材84は、剛性に優れた部材であり、左右方向に長い直方体形状の輪郭を有している。予備クランプ部材84の左右方向の長さは、予備支持板部61bの左右方向の長さと略同一である。本実施形態では1個の予備クランプ部材84が用いられている。予備クランプ部材84には、2個の第2嵌合凹部84a,84aが左右方向に並んで形成されている。各第2嵌合凹部84aは、予備クランプ部材84の後側面を、上面から見てU字状に切り欠いたように形成されている。
【0078】
これら第2嵌合凹部84a,84aの間には、第2支持棒83及びボルト締結孔86の配置に対応して、第2要素孔84b及び第2ボルト挿通孔84cが前後方向に貫通している。予備クランプ部材84が複数用いられる場合は、予備クランプ部材84は後方向に横並びに連結して用いられる。
【0079】
予備ブッシング85は、第2嵌合凹部84aに嵌合される弾性部材であり、第2嵌合凹部84aに圧入される。本実施形態では、同一の予備ブッシング85が2個用いられ、各第2嵌合凹部84aは同一の内径寸法を有している。
【0080】
予備ブッシング85にも、ブッシング65と同様に第2鍔部85aや第2ホース挿入孔85b、第2割れ目85cが形成されている。本実施形態の予備ブッシング85には、第2ホース挿入孔85bが1個形成されている。
【0081】
予備クランプ60bも、標準クランプ60aと同様に油圧ホース50aを手で押さえたりせず、容易に組み付けることができる。
【0082】
まず、開口部47からカバー板47aを取り外し、予備クランプ60bを露出させる。そうして、後方向から第2要素孔84bに第2支持棒83を挿入し、予備クランプ部材84を予備支持板部61bの後面に密着させる。それにより、予備クランプ部材84の三方が、取付板部61a、押さえ板62、及び予備支持板部61bによって支持される。従って、予備クランプ部材84は、ホースクランプ60に安定的に保持される。
【0083】
第2嵌合凹部84aに、増設する油圧ホース50aを保持した予備ブッシング85を圧入する。油圧ホース50aを保持した予備ブッシング85を第2嵌合凹部84aに圧入した後に予備クランプ部材84を組み付けてもよい。本実施形態では、1つの予備クランプ部材84に対し、左右横並びに一対の油圧ホース50aが保持される。
【0084】
通常、アタッチメント20に対して油圧ホース50aを増設する場合には、送り用と戻り用の油圧ホース50aが一対で接続される。従って、その増設数に合わせて予備クランプ部材84を増やせばよく、作業性に優れる。更に、これら油圧ホース50aは左右横並びになるため、前後方向にアタッチメント20が揺動する際、油圧ホース50aが干渉し合うのを抑制できる利点もある。
【0085】
そして最後に、予備クランプ部材84の後側に予備押さえ板82を重ねて、ボルト挿通孔87及び第2ボルト挿通孔84cのそれぞれにボルトBを通してボルト締結孔86にねじ込む。それにより、予備クランプ部材84は、予備支持板部61bと第2押さえ板62との間に挟まれて強固に固定される。
【0086】
また、開口部47の後側部分の一部あるいは全部が、カバー板47aに代わって、予備クランプ60bによって塞がれるように設計されている。具体的には、予備クランプ部材84の左右方向の寸法よりも開口部47の左右幅寸法が小さく形成されている。従って、予備クランプ60bを適宜連結すれば、開口部47の上側全部を予備クランプ60bで塞ぐことができるし、余った隙間はカバー板47aで塞げばよい。
【0087】
このように、ホースクランプ60に、標準クランプ60aの後方に向かって連結する予備クランプ60bを設置すれば、油圧ホース50aの増設が容易にでき、障害になり難いし美観も損なわない。スペースも比較的確保し易いため、予め予備クランプ60bを設置することができ、汎用性に優れる。
【0088】
油圧ホース50aを保持したブッシング65や予備ブッシング85は、変形しないクランプ部材64や予備クランプ部材84によって支持されるため、手で押さえたりせずに油圧ホース50aを組み付けることができ、作業も容易である。
【0089】
標準クランプ60a及び予備クランプ60bが、互いに直交した状態で一体化されるため、ホースクランプ60の全体が構造的に強化され、油圧ホース群50の支持強度も向上する。
【0090】
なお、本発明にかかる作業機械は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0091】
例えば、
図9の(a)や(b)に示すように、ホース挿入孔65bの個数や配置、割れ目65cの入れ方は、仕様に応じて適宜設定できる。ただし、ホース挿入孔65bは、ブッシング65の嵌め込み方向の先端側に偏在して形成するのが好ましい。また、割れ目65cもブッシング65の嵌め込み方向の先端側に配置するのが好ましい。そうすれば、油圧ホース50aを外れ難くできる(第2ホース挿入孔85b等も同様)。
【0092】
支持板61は、縦板13に直接取り付けてもよい。ブッシング65の外径寸法と予備ブッシング85の外径寸法を同じにすれば、更に部材の共有化が図れる。標準クランプ60aと予備クランプ60bも同形同寸法にして、クランプ部材64や予備クランプ部材84等も共有化すれば、更にいっそう部材の共有化が図れる。