(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属薄膜層とは反対側の光透過層の面に対して垂直方向から観察した場合に、前記印刷層と前記凹凸構造部とは隣接しており、かつ、前記印刷層は前記凹凸構造部の面積の40%以上60%以下であることを特徴とする請求項1記載の画像表示体。
前記凸部または前記凹部の平均中心間距離が異なる前記複数の凹凸構造部によって絵柄、文字、記号等の画像が表示され、前記印刷層によって前記凹凸構造部とは異なる絵柄、文字、記号等の画像が表示されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の画像表示体。
【背景技術】
【0002】
近年、商品券や小切手等の有価証券類、クレジットカードやキャッシュカード、IDカード等のカード類、パスポートや免許証等の証明書類の偽造防止を目的として、通常の印刷物とは異なる視覚効果をもつ画像表示体を転写箔やステッカ等の形態にして、前記証券類やカードなどの証明書類の表面に貼付、圧着するなどして設けることが行われている。また、有価証券類や証明書類以外の物品においても、偽造品の流通が社会問題化しており、そのような物品についても同様の偽造防止技術を適用する機会が多くなってきている。
【0003】
偽造防止技術としては、マイクロ文字、特殊発光インキ、すかし、回折格子、ホログラムなどがある。この偽造防止技術は大きく2つに分けることができる。1つは、簡易な機器や測定装置などを使用して真偽を判別する偽造対策である。もう1つは、肉眼で容易に真偽判定が可能な偽造対策である。
【0004】
近年では、電子線描画装置(EB装置)で様々な微細構造を作製し、目視で類似技術と差別化できるセキュリティデバイスの開発が行われている。最も一般的なセキュリティデバイスとして、表面レリーフタイプのレインボウホログラム(たとえば、特許文献1参照)がある。
【0005】
レインボウホログラムは、普通の印刷物に比べて構造が複雑で、高い微細加工技術を持つ特定の業者でないと作製が困難であり、複製を行うときに大規模な複製装置を必要とするので、小規模な複製が行いにくいという特徴がある。このため、偽造品の作製が困難である。
【0006】
また、照明光を当てた時に、単波長に近い光で再生されるため、虹の七色に対応した明るく鮮やかな色で観察でき、観察条件が変化したときに色や画像パターンが変化するという特徴的な見え方をする。このため、他の部材との違いが目視で容易に判別できる。
【0007】
これらのことから、レインボウホログラムは目視によるセキュリティ用途として優れており、偽造防止用の画像表示体として広く用いられてきている。
【0008】
しかし、レインボウホログラムは、観察条件の変化が僅かであっても再生像の色が大きく変化するので、画像の色の違いを識別するのが難しい。
【0009】
このため、異なる画像が記録されているレインボウホログラムであっても、観察者に類似した印象を与えやすく、ホログラム同士では記録されている画像の違いが判別し難いという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、透過光と反射光で観察した際に異なる画像を表示させることができる画像表示体および物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る画像表示体は、光反射性および光透過性を有する金属薄膜層の上に、光透過性基材と凹凸構造形成層とからなる光透過層および印刷層を形成してなる画像表示体であって、前記凹凸構造形成層に形成され、前記金属薄膜層から前記凹凸構造形成層に向けて300nm以上500nm以下の高さで突出する複数の凸部、または、前記凹凸構造形成層から前記金属薄膜層に向けて300nm以上500nm以下の深さで凹む複数の凹部からなり、かつ、前記凸部または前記凹部が200nm以上500nm以下の平均中心間距離で格子状に配列された複数の凹凸構造部を有し、前記印刷層は、前記凹凸構造形成層が設けられた面と反対側の前記光透過層側、または、前記凹凸構造形成層と前記金属薄膜層との間、または、前記光透過性基材と前記凹凸構造形成層との間のいずれかに前記光透過層と水平方向の面に周期的に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2に係る画像表示体は、前記金属薄膜層とは反対側の光透過層の面に対して垂直方向から観察した場合に、前記印刷層と前記凹凸構造部とは隣接しており、かつ、前記印刷層は前記凹凸構造部の面積の40%以上60%以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3に係る画像表示体は、前記印刷層の周期が3μm以上145μm以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4に係る画像表示体は、前記印刷層の可視光波長における透過率が10%以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5に係る画像表示体は、前記凸部または前記凹部の平均中心間距離が前記複数の凹凸構造部のそれぞれで異なることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項6に係る画像表示体は、前記凸部または前記凹部の平均中心間距離が異なる前記複数の凹凸構造部によって絵柄、文字、記号等の画像が表示され、前記印刷層によって前記凹凸構造部とは異なる絵柄、文字、記号等の画像が表示されることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項7に係る画像表示体は、前記金属薄膜層の平坦面における層厚が30nm以上100nm以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項8に係る物品は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の画像表示体が光透過性を有する接着層を介して支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係る画像表示体によれば、凹凸構造によって光透過性機能を持つ領域と印刷領域(印刷層)を有している。光透過性機能持つ領域は、低反射領域であり、観察方向から光を照明して観察する(反射観察)と、黒色や暗灰色などで表示される。また、観察方向と反対の方向から光を照明して観察する(透過観察)と、透過光を観察することができる。一方、印刷領域は反射観察すると、印刷した色を知覚することができる。しかし、一般的なインクは透過率が低いため透過観察しても透過光は観察しにくい。また、微細な周期性を持つ印刷領域を形成することにより、透過観察と反射観察で異なる画像を表示することができる。
【0022】
本発明の請求項2に係る画像表示体によれば、金属薄膜層とは反対側の光透過層の面から観察した場合に、光透過層の面積に対して凹凸構造部の占める割合は40%以上60%以下である。このように割合を設定することで、透過観察および反射観察の表示画像の双方の解像度を保つことが可能である。
【0023】
本発明の請求項3に係る画像表示体によれば、印刷層の周期を3μm以上145μm以下にすることで肉眼で観察した際に、透過観察および反射観察時に各部形状を観察することが困難である。
【0024】
本発明の請求項4に係る画像表示体によれば、印刷層の透過率が低いことで透過観察時に光透過性機能を持つ領域の透過光が観察しやすくなる。
【0025】
本発明の請求項5に係る画像表示体によれば、凸部または凹部の平均中心間距離が各凹凸構造部で異なることで、透過観察した場合に異なる色を観察することができる。
【0026】
本発明の請求項6に係る画像表示体によれば、凹凸構造部と印刷層の双方で異なる絵柄、文字、記号を表示することで、透過観察と反射観察での表示画像を変化させることできる。よって、アイキャッチ効果(人目を引く効果)を高めることができ、かつ、画像表示体の意匠性を高めることもできる。
【0027】
本発明の請求項7に係る画像表示体によれば、金属薄膜層の平坦面における膜厚が30nm以上100nm以下である。この条件にて金属薄膜層を成形することで、凹凸構造による光透過性機能と低反射性を両立することが可能である。
【0028】
本発明の請求項8に係る物品によれば、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の画像表示体を印刷物やカード、その他の物品に貼りあわせる、または、組み合わせることによって、従来の物品に高い偽造防止効果を付与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像表示体の構成を示す概略図およびA部分の拡大図であり、
図2は、
図1のI−I線に沿った縦断側面図である。画像表示体10は、光透過性基材100と凹凸構造形成層101とからなる光透過層11、印刷層103、および、金属薄膜層102の積層体により構成されている。
図2に示す例では、印刷層103側を前面側(観察者側)とし、金属薄膜層102側を背面側としている。
【0031】
なお、
図2に示す例では、光透過層11の上に印刷層103を形成しているが、
図3に示すように、光透過層11と金属薄膜層102との間に形成していてもよく、また
図4に示すように、光透過性基材100と凹凸構造形成層101との間に形成していてもよい。
【0032】
光透過性基材100は、それ自体を単独で取り扱うことが可能なフィルム、またはシートから形成されている。光透過性基材100の材料としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)などを用いることができる。
【0033】
凹凸構造形成層101は、光透過性基材100の上に形成された層であり、この凹凸構造形成層101の表面には、凹凸構造部が形成されている。この凹凸構造部については、後で詳細に説明する。凹凸構造形成層101に凹凸構造部を形成する方法としては、たとえば、光透過性基材100の上に樹脂を塗布し凹凸構造形成層101を形成して、この凹凸構造形成層101にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させる方法を用いることができる。光透過性基材100の上に塗布される樹脂としては、光透過性を有する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などを使用することができる。
【0034】
金属薄膜層102の材料としては、特に限定されないが、可視光に対し高い反射率を示すアルミニウムなどの金属材料を用いることが好ましい。また、金属薄膜層102は、光学特性から30〜100nm程度が好ましい。反射層を積層する方法として、真空蒸着法およびスパッタリング法などの気相堆積法により、レリーフ構造に追従して、高精度に薄膜にすることができる。
【0035】
印刷層103は、文字や絵柄、記号などの画像を表示するもので、可視光における透過率が10%以下と可視光を透過しにくい特性を有している。透過率が10%を超えると、透過観察時に印刷層103の透過光と凹凸構造の透過光が混在してしまうため、透過率を低くする必要がある。透過率の判別方法としては、印刷層103に単色レーザ光を入射させて、その透過光を光強度測定器などで測定し、入射光と透過光の割合から算出する。
【0036】
また、印刷層103は、
図5に示すように、X−Y平面において、たとえば、ストライプ状(
図5(a))や網点状(
図5(b))、つまり周期的に印刷されており、印刷する色は輝度の高いものが好ましい。周期のピッチは3μm〜145μmである。観察者が自分の眼から500mm離してある位置の画像表示体10の状態を観察すると、一般的に、視力が1.0の人間の眼の分解能は1分であるため、眼の分解能の限界により、145μm以下の構造は分解できない。
【0037】
したがって、周期のピッチを145μm以下とすると、隣接配置した網点同士を分解することはできない。ゆえに、周期のピッチを145μm以下とすることによって、より高品位な画像を表示する画像表示体10を提供することが可能となる。3μm以下である場合には、印刷層103を十分に高い精度で成形することが困難になる。
【0038】
印刷層103の印刷方式に応じて、オフセットインキ、活版インキ、グラビアインキなど様々なインキが用いられている。印刷用に用いられるインキは、樹脂タイプのインキ、油性インキ、水性インキなど組成による分類や、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ、紫外線硬化型インキなど、乾燥方式による分類ができ、基材の種類や印刷方式に応じて適宜選択される。
【0039】
また、帯電性をもったプラスチック粒子に黒鉛、顔料などの色粒子を付着させたトナーを、静電気を利用してポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや紙などの基材に転写させ、加熱し定着させることで印刷層を形成する技術も一般的である。
【0040】
画像表示体10は、接着層、粘着層などの他の層を更に含むことができる。この場合、接着層や粘着層は、金属薄膜層102を被覆するように形成することが望ましい。また、接着層や粘着層は光透過性を有している。画像表示体10が光透過層11と金属薄膜層102の両方を含む場合、通常、金属薄膜層102の表面の形状は光透過層11と金属薄膜層102との界面の形状とほぼ等しい。したがって、上記のように接着層または粘着層を設けると、金属薄膜層102の表面が露出するのを防止できる。それ故、偽造を目的とした凹凸構造の転写による複製を困難とすることができる。
【0041】
次に、凹凸構造形成層101に形成されている凹凸構造部20、22について説明する。
【0042】
凹凸構造部20、22は、金属薄膜層102から凹凸構造形成層101に向けて突出する複数の凸部、または、凹凸構造形成層101から金属薄膜層102に向けて凹む複数の凹部が、200nm〜500nmの平均中心間距離で周期的に配列している。また、凸部の高さまたは凹部の深さは300nm〜500nmである。今後は説明の簡略化のため凸部に特化して説明を行うが、凸部を凹部に置き換えても差し支えない。
【0043】
図6、
図7に可視光の波長未満の平均中心間距離D1で凸部200がX軸およびY軸に平行して周期的に配列している斜視図および平面図を示す。上記には典型的な凸部200を配列した例を示しており、X軸とY軸が45度の角度で交差する直線と平行に配列されていてもよい。
【0044】
凸部200、201は、典型的にはテーパ形状を有している。テーパ形状としては、たとえば、半紡錘形状、円錐および角錐などの錐体形状、切頭円錐および切頭角錐などの切頭錐体形状などが挙げられる。凸部200、201の側面は、傾斜面のみで構成されていてもよく、階段状であってもよい。凸部200、201のテーパ形状は、後述するように凹凸構造部20、22に入射する光の反射率を小さくするのに役立つ。
【0045】
なお、スタンパを利用して凸部200、201を形成する場合、テーパ形状は、硬化した凹凸構造形成層101のスタンパからの取り外しを容易にし、生産性の向上に寄与する。
【0046】
上述したように、凸部200、201はテーパ形状を有している。このような構造を採用した場合、平均中心間距離D1が十分に短ければ、凹凸構造部20、22はZ方向に連続的に変化した屈折率を有していると見なすことができる。
【0047】
したがって、画像表示体10のうち凹凸構造部20、22に対応した部分は、その法線方向から反射観察した場合に、たとえば、黒色または暗灰色を表示する。ここで、反射観察とは、一般に上方に配置した光源から画像表示体10の表面に光を照射し、画像表示体10の表面からの反射光によって画像表示体10の表面の様子を観察する場合のことをいう。
【0048】
なお、ここでの「黒色」は、画像表示体10のうち凹凸構造部20、22に対応した部分に法線方向から光を照射し、正反射光の強度を測定したときに、波長が400nm〜700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が10%以下であることを意味し、「暗灰色」は、画像表示体10のうち凹凸構造部20、22に対応した部分に法線方向から光を照射し、正反射光の強度を測定したときに、波長が可視光の波長である400nm〜700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が約25%以下であることを意味する。
【0049】
上述のように、凹凸構造部20、22は、正面から反射観察した場合に、黒色または暗灰色を表示する。したがって、画像表示体10のうち凹凸構造部20、22に対応した部分は、正面から反射観察した場合に、たとえば、黒色または暗灰色印刷層のように見える。
【0050】
凸部200、201の平均中心間距離D1は200nm〜500nmである。一般的には、凸部200、201の平均中心間距離D1が小さくなるに伴って明度および彩度が低下し、より黒い表示が可能となり、平均中心間距離D1が大きくなるに伴って輝度が上昇し、暗灰色に知覚されるような構造となる。
【0051】
また、凸部200、201の高さが大きいほうがより黒い表示が可能となり、高さが小さくなるに伴って輝度が上昇し、暗灰色に知覚されるようになる。典型的には、凸部200、201の高さは平均中心間距離D1の1/2以上とすることが望ましい。具体的には、平均中心間距離D1が500nmであった場合、凸部200、201の高さを250nm以上とすることで暗灰色の表示が可能となり、さらに、平均中心間距離D1よりも大きい500nm以上の高さとすることでより黒い表示が可能となる。
【0052】
しかし、平均中心間距離D1が短くなる、または、凸部の高さが高くなると、凸部を成形することが困難になるため、平均中心間距離D1を200nm以上、高さを500nm以下としている。また、平均中心間距離D1が長くなる、または、凸部の高さが低くなると、黒色または暗灰色の表示が困難となるため、平均中心間距離D1が500nm以下、凸部の高さが300nm以上としている。
【0053】
図4のように、凸部200、201を周期的に配列すると回折格子としても機能する。代表的な回折光は1次回折光であり、1次回折光の射出角βは、下記式1から算出することができる。
【数1】
【0054】
上記式1において、dは凹部または凸部間の距離(平均中心間距離)を表し、λは入射光および回折光の波長を表し、αは入射角を表している。
【0055】
上記式1から明らかなように、1次回折光の射出角βは、波長λに応じて変化する。すなわち、凸部(または凹部)からなる凹凸構造部は、分光器としての機能を有している。したがって、照明光が白色光である場合に凸部からなる凹凸構造部を観察する際の観察角度を変化させると、観察者が知覚する色が変化する。
【0056】
しかし、上記式1から平均中心間距離D1を200nm未満に設定した場合には、1次回折光を射出する機能は得られなくなる。よって、回折光機能を付加したい場合には、凸部200、201を周期的に配列し、かつ、平均中心間距離D1を200nm以上にする必要がある。
【0057】
次に、複数の凸部200、201が形成された凹凸構造部20、22を透過する光の挙動について説明する。
凹凸構造部20、22は、
図8に示す光学薄膜30による干渉フィルタに類似する作用を有し、反射や干渉を繰り返すことで特定の波長の光を強めたり弱めたりすることが可能である。光学薄膜30に角度θで入射する入射光304の一部は各層の表面で反射し、反射光305となって白色光源302がある側に反射していくが、透過光306となって白色光源302とは反対側の面に進行する光も存在する。
【0058】
光学薄膜30を透過していく光の波面は、光学薄膜30の内部で反射を偶数回繰り返した後に透過していく光の波面を重畳したものとなる。各波面に位相差がないときに、最大の透過光が得られ、その際の光学距離の差は、波長の整数倍となり下記式2が成立する。
mλ=2×TO×cosθ …… (式2)
ここで、mは次数であり、TOは光学的距離である。TOは、物理的な距離に加え、光が伝搬する媒質の屈折率が考慮される。光学薄膜30の膜厚をD、屈折率をnとすると
TO=nD
が成り立つ。
【0059】
このとき、他の波長では各波面で打ち消し合う干渉が起こるため、白色光源302とは反対側の面にはほとんど透過しなくなる。これは、薄膜の光学的距離を制御することで、光源とは反対側の面に透過する光の波長を制御することが可能となることを意味している。
【0060】
凹凸構造部20、22に設ける凸部200、201の平均中心間距離D1を変化させることで、光透過層11や金属薄膜層102の入射光に対する光学的距離を変化させることができるため、凹凸構造部20、22は、光学薄膜30のように、特定の角度からの入射光に対して特定の波長の光を光源とは反対側の面に透過光として射出することが可能となる。すなわち、凹凸構造部20に設ける凸部200の平均中心間距離D1を変化させることで、白色光源302からの入射光304に対し、定点に対して、たとえば赤や緑、青などの特定の波長の光を透過光として射出し得る。
【0061】
次に、凹凸構造部20、21の形成する場所について説明する。ここでは、印刷部21がストライプ状に印刷されている場合について説明する。凹凸構造部20、22は、印刷部21がない部分の全てに形成してあり、凹凸構造部20、22で1つの絵柄を形成するように形成する。また、印刷部21においても、印刷部21で凹凸構造部20、22とは異なる絵柄を形成する。
【0062】
次に、
図1に示す画像表示体10による視覚効果について説明する。
図9は、画像表示体10の正面を画像表示体10からの反射光で観察する(反射観察)場合の一例を示し、
図10は、画像表示体10の正面を画像表示体10からの回折光で観察する場合の一例を示し、
図11は、画像表示体10の正面を画像表示体10からの透過光で観察する(透過観察)場合の一例を示している。
【0063】
図9に示すように、たとえば、観察者303の上方にある太陽や蛍光灯等の白色光源302からの光が画像表示体10に入射し、観察者303が画像表示体10の表面からの反射光305を観察するような観察条件下においては、画像表示体10の凹凸構造部20、22は、その内部に形成されている複数の凸部200、201による反射防止/抑制効果によって反射光305をほとんど射出せず、黒色または暗灰色に観察される。
また、印刷部21に入射した光は、反射されて印刷した色が観察される。
【0064】
一般に、人間の目は明るい方に注意がいき、暗い方には注意がいかない(見えにくい)性質を持っている。つまり、反射光を観察する場合では、輝度の高い印刷部21に人間の目の注意がいくため、輝度の低い凹凸構造部20、22の黒色は観察されにくい。よって、印刷部21の色が主に観察される。
【0065】
図10に示すように、画像表示体10から射出する光によって画像表示体10を反射観察で見る場合には、前記式1の条件を満足する角度で画像表示体10に入射光304が入射するようにし、回折光が射出される角度から画像表示体10を観察することで、凹凸構造部20、22による回折光307を観察することができる。
【0066】
図11に示すように、たとえば、太陽や蛍光灯等の白色光源302が観察者303に対して画像表示体10の裏側にあるような位置関係で画像表示体10を観察すると、白色光源302から射出された画像表示体10への入射光304は、画像表示体10の裏面から入射し、凹凸構造部20、22を透過した光306となって観察者303に到達する。
【0067】
このとき、凹凸構造部20、22を透過する光306の波長は、凹凸構造部20、22の内部に形成されている複数の凸部200、201の平均中心間距離D1に応じて決定されるため、凹凸構造部20、22を透過する光306によって、画像表示体10は例えば青、赤、緑等の固有の色相を表示できる。透過観察では、凹凸構造部20、22は明るく、印刷部21は暗いため、凹凸構造部20、22のみが観察される。また、凹凸構造部20、22は、平均中心間距離D1が異なるため、違う色相を表示することが可能である。
【0068】
凹凸構造部20、22を構成する複数の凸部200、201は、その平均中心間距離D1が200nm以上500nm以下であり、高さが300nm以上500nm以下である。このような凸部200、201によって凹凸構造部20、22を構成すると、
図9に示すように、画像表示体10を反射観察した場合には黒色もしくは暗灰色に見える。そして、
図10のような特定条件下においては、凹凸構造部20は回折光を射出する。さらに、
図11に示すように、画像表示体10を透過観察した場合には、透過光によって固有の色相を表示することが可能となる。
【0069】
このような反射観察と透過観察とで全く異なる特徴的な知覚効果を実現する構造は、他の構造では実現することができず、高い偽造防止効果を発揮する。
また、一般に人間の目は明るい方に注意がいき、暗い方には注意がいかない(見えない)性質を持つ特性を利用して、反射観察と透過観察で絵柄を変化させることが可能であり、高い偽造防止効果を発揮する。