(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949081
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20160623BHJP
H01R 12/79 20110101ALI20160623BHJP
H01R 12/82 20110101ALI20160623BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
H01R12/79
H01R12/82
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-94094(P2012-94094)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-222624(P2013-222624A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】西山 浩平
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−267427(JP,A)
【文献】
特開2008−153059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
H01R 12/79
H01R 12/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号伝送媒体の辺縁部を挿入接続するための挿入溝が開設されたハウジングと、前記挿入溝に挿入された信号伝送媒体を着脱可能に係止するため前記信号伝送媒体の挿入方向と平行をなす前記挿入溝の内面に出没可能に突設され且つ前記内面の対向面に向かう方向に付勢されたロック部を有するロック部材と、を備え、
前記挿入溝に挿入された信号伝送媒体が前記ロック部で係止されたとき前記信号伝送媒体の下面(前記挿入溝の前記内面側に位置する面)に当接して前記信号伝送媒体を前記対向面に向かって押圧する平面状の押圧部を前記ロック部材に設けたことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ロック部材において前記ロック部の先端部と前記ロック部が出没する前記内面との間の領域に前記押圧部を設けた請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ロック部材が、弾性材がJ字状に折れ曲がった形状の支持部及びロックアーム部と、前記ロックアーム部の先端側に形成された略楔形状のロック部と、前記ロック部に隣接して形成された押圧部と、を有する請求項1または2記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ロック部材に、押圧操作すると当該ロック部材が弾性変形して前記ロック部が前記信号伝送媒体から離脱する解除部を設けた請求項3記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に実装され、FPC(フレキシブル・プリンテッド・サーキット)やFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)などの信号伝送媒体との電気的接続手段として使用される電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
FPCやFFCなどの信号伝送媒体との電気的接続手段として使用される電気コネクタとして、従来、
図15に示すようなものが知られている。
図15に示すように、従来の電気コネクタ150は、FPCやFFCなどの信号伝送媒体151の辺縁部を挿入接続するための挿入溝152が開設されたハウジング153と、挿入溝152に挿入された信号伝送媒体151を着脱可能に係止するため挿入溝152の下面152aに出没可能に突設されたロック部154aを有するロック部材154と、を備えている。
【0003】
ロック部材154は弾性材料で形成され、ロック部154aは下面152aの対向である上面152bに向かって突出する方向に付勢されている。側縁部分に切欠き部151aが設けられた信号伝送媒体151を矢線X方向に沿って挿入溝152に挿入すると、信号伝送媒体151の下面151bがロック部154aに当接して、一旦これを押し下げるが、切欠き部151aがロック部154a上に来たとき、ロック部材154の弾性力によってロック部154aが元の状態に戻り、切欠き部151a内に嵌まり込む。これによって、信号伝送媒体151は挿入溝154内に係止される。
【0004】
そのほか、前述した電気コネクタ150以外にも様々な方式の電気コネクタが提案されているが、本発明と関連する従来の電気コネクタとして、例えば、特許文献1記載の「コネクタ」がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−153059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図15に示すように、従来の電気コネクタ150においては、ロック部154aは挿入溝152の下面152aから、切欠き部151aに係合するのに必要な高さだけ突出した状態に設定されている。このため、挿入溝152に挿入された信号伝送媒体151の厚さ151tが、挿入溝152の下面152aと上面152bとの距離152cより小さい場合、信号伝送媒体151と挿入溝152の上面152bとの間に隙間Gが生じ、信号伝送媒体151が上方に移動した場合、信号伝送部材151の切欠き部151aに対するロック部154aの係止量が少なくなり、信号伝送媒体151の厚さのばらつきによって係止量が変化し、係止状態が不安定となり、接続信頼性が低下することがある。
【0007】
一方、特許文献1記載の「コネクタ」においても接続信頼性の低下を防止する対策が講じられているが、
図15に示す電気コネクタ150における接続信頼性の低下は、特許文献1記載の発明を用いても回避することができない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、信号伝送媒体の厚さにバラつきがあっても信頼性の高い接続状態を得ることができる電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気コネクタは、信号伝送媒体の辺縁部を挿入接続するための挿入溝が開設されたハウジングと、前記挿入溝に挿入された信号伝送媒体を着脱可能に係止するため前記信号伝送媒体の挿入方向と平行をなす前記挿入溝の内面に出没可能に突設され且つ前記内面の対向面に向かう方向に付勢されたロック部を有するロック部材と、を備え、
前記挿入溝に挿入された信号伝送媒体が前記ロック部で係止されたとき前記信号伝送媒体
の下面(前記挿入溝の前記内面側に位置する面)に当接して前記信号伝送媒体を前記対向面に向かって押圧する
平面状の押圧部を前記ロック部材に設けたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、ハウジングの挿入溝に挿入された信号伝送媒体がロック部で係止されたとき、ロック部材の押圧部が信号伝送媒体を前記対向面に向かって押圧するので、信号伝送媒体と挿入溝の対向面との間に隙間が生じることがなく、係止量が一定となる。このため、信号伝送媒体の厚さにバラつきがあっても信頼性の高い接続状態を得ることができる。
【0011】
ここで、前記ロック部材において前記ロック部の先端部と前記ロック部が出没する前記内面との間の領域に前記押圧部を設けることが望ましい。なお、前記ロック部の先端部とは、挿入溝の前記内面に出没可能に突設された当該ロック部において前記内面の対向面に最も接近している部分をいう。
【0012】
このような構成とすれば、挿入溝に挿入される信号伝送媒体の厚さが、挿入溝の前記内面と対向面との距離の範囲内でバラつくことがあっても確実な接続状態を得ることができる。
【0013】
一方、前記ロック部材は、弾性材
がJ字状に折
れ曲
がった形状の支持部及びロックアーム部と、前記ロックアーム部の先端側に形成された略楔形状のロック部と、前記ロック部に隣接して形成された押圧部と、を有するものであることが望ましい。
【0014】
このような構成とすれば、簡素な形状でありながら、信号伝送媒体に対する確実なロック機能及び押圧機能を得ることができ、接続信頼性の向上に有効である。
【0015】
また、前記ロック部材に、押圧操作すると当該ロック部材が弾性変形して前記ロック部が前記信号伝送媒体から離脱する解除部を設けることが望ましい。
【0016】
このような構成とすれば、ロック部材がロック機能及びロック解除機能を兼備したものとなるため、部品点数の増大を回避しつつ、確実なロック機能及びロック解除機能を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、信号伝送媒体の厚さにバラつきがあっても信頼性の高い接続状態を得ることができる電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態である電気コネクタと信号伝送媒体を示す平面図である。
【
図5】
図2中のA−A線における拡大断面図である。
【
図6】
図1に示す電気コネクタを構成するロック部材の斜視図である。
【
図8】
図1に示す電気コネクタ及び信号伝送媒体の斜視図である。
【
図9】
図8に示す電気コネクタと信号伝送媒体とを接続した状態を示す斜視図である。
【
図10】
図8に示す状態における電気コネクタ及び信号伝送媒体の断面図である。
【
図11】
図9に示す状態における電気コネクタ及び信号伝送媒体の断面図である。
【
図12】
図5に示す電気コネクタにその他の信号伝送媒体を接続した状態を示す断面図である。
【
図13】
図11に示す電気コネクタ及び信号伝送媒体においてロック解除した状態を示す断面図である。
【
図14】
図13に示す電気コネクタから信号伝送媒体を抜去する状態を示す断面図である。
【
図15】従来の電気コネクタに信号伝送媒体を接続した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1〜
図14に基づいて、本発明の実施形態である電気コネクタ100について説明する。
図1〜
図5に示すように、電気コネクタ100は、信号伝送媒体200の辺縁部を挿入接続するための挿入溝11が開設された絶縁ハウジング10と、挿入溝11に挿入された信号伝送媒体200を着脱可能に係止するため信号伝送媒体200の挿入方向Cと平行をなす挿入溝11の内面11aに出没可能に突設され且つ内面11aの対向面11bに向かう方向に付勢されたロック部31を有するロック部材30と、を備えている。また、挿入溝11に挿入された信号伝送媒体200がロック部31で係止されたとき、信号伝送媒体200を対向面11bに向かって押圧する押圧部34がロック部材30に設けられている。
【0020】
絶縁ハウジング10には複数のコンタクト12が等間隔に配列され、絶縁ハウシング10の幅方向10wの両側縁寄りの部分にそれぞれロック部材30と一体的に形成された接地部32,33が配置されている。後述するように、ロック部材30には、押圧操作すると当該ロック部材30が弾性変形してロック部31が信号伝送媒体200から離脱する解除部35が一体的に形成されている。左右一対の解除部35は、絶縁ハウジング10上面の幅方向10wの両側縁寄りの部分にそれぞれ突出状に配置されている。
【0021】
図5に示すように、平面状の押圧部34は、ロック部材30においてロック部31の先端部31aとロック部31が出没する内面11aとの間の領域Eに押圧部34が設けられている。即ち、押圧部34はロック部31の先端部31aより低く挿入溝11の内面11aより高い領域Eに位置している。なお、ロック部31の先端部31aとは、挿入溝11の対向面11bに最も接近している部分をいう。
【0022】
ロック部31の先端部31aは平面状をなし、先端部31aから挿入溝11の開口端11cに臨む部分には信号伝送媒体200の挿入方向Cに沿って上り勾配をなす傾斜部36が設けられている。先端部31aと押圧部34との間には起立面37が設けられ、起立面37と押圧部34との境界部分には、押圧部34より低く凹んだ溝部38が形成されている。溝部38の長手方向は、信号伝送媒体200の挿入方向Cと直交した状態で挿入溝11を横断する方向と平行をなすように配置されている。
【0023】
図6,
図7に示すように、ロック部材30は、弾性を有する略帯状の板材をJ字状に折り曲げて形成された支持部39及びロックアーム部40と、ロックアーム部40の先端側に形成された略楔形状のロック部31と、ロック部31に隣接して形成された押圧部34と、を有している。支持部39とロックアーム部40との間にはU字状に湾曲した弾性部41が形成されている。
【0024】
ロック部31及び押圧部34と、解除部35と、はロックアーム部40の長手方向を挟んで板幅方向に対向するように配置され、それぞれ、略帯状の板材においてロックアーム部40の先端寄りの両側縁部分に板幅方向に延設された部分をリブ状に起立するように折り曲げることによって形成されている。また、解除部35を構成する部分の板材は上面が蒲鉾形状をなすように折り曲げられている。
【0025】
図8〜
図11に示すように、両側縁部分に切欠き部201が設けられた信号伝送媒体200を挿入方向Cに沿って電気コネクタ100の挿入溝11に挿入すると、信号伝送媒体200の前縁部202の下面203側がロック部31の傾斜部36に当接して摺動し、ロック部31を押し下げながら、挿入溝11の奥部に向かって進行するが、切欠き部201がロック部31上に到達したとき、ロック部材30の弾性力により、
図11に示すように、ロック部31が元の状態に戻り、切欠き部201内に嵌まり込む。これによって、信号伝送媒体200は挿入溝11内に係止される。
【0026】
図11に示すように、ハウジング10の挿入溝11に挿入された信号伝送媒体200がロック部31で係止されたとき、ロック部材30の押圧部34が信号伝送媒体200の下面203に当接して対向面11bに向かって押圧するので、信号伝送媒体200と挿入溝11の対向面11bとの間に隙間が生じることがなく、係止量が一定となり、信頼性の高い接続状態を得ることができる。
【0027】
一方、
図12に示すように、信号伝送媒体200より厚さの大きな信号伝送媒体300を電気コネクタ100の挿入溝11に挿入した場合、
図11に示す場合よりもロック部31が支持部39側へ接近した状態となるが、ロック部材31の弾性復元力により、押圧部34が信号伝送媒体300の下面303に当接して対向面11bに向かって押圧するので、信号伝送媒体200と挿入溝11の対向面11bとの間に隙間が生じることがなく、係止量が一定となり、信頼性の高い接続状態を得ることができる。
【0028】
従って、信号伝送媒体200,300の厚さにバラつきがあっても信頼性の高い接続状態を得ることができる。即ち、挿入溝11に挿入される信号伝送媒体200,300の厚さが、挿入溝11の内面11aと対向面11bとの距離の範囲内でバラつくことがあっても確実な接続状態を得ることができる。
【0029】
一方、
図9に示すように、電気コネクタ100に挿入接続された信号伝送媒体200を電気コネクタ100から離脱させる場合、絶縁ハウジング10上面の左右両側縁付近に突設されている解除部35をそれぞれ押圧操作すると、
図13に示すように、ロック部31がロックアーム部40とともに下降して、信号伝送媒体200の切欠き部201から離脱するので、信号伝送媒体200を抜去方向Dに引っ張れば、
図14に示すように、信号伝送媒体200を徐々に挿入溝11から引き出すことができる。
【0030】
なお、
図1〜
図14に基づいて説明した前述の実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明の電気コネクタは前述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の電気コネクタは、FPCやFFCなどの信号伝送媒体と配線基板との電気的接続手段として、電気・電子機器産業あるいは自動車産業などの分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 絶縁ハウジング
10w 幅方向
11 挿入溝
11a 内面
11b 対向面
11c 開口端
12 コンタクト
30 ロック部材
31 ロック部
31a 先端部
32,33 接地部
34 押圧部
35 解除部
36 傾斜部
37 起立面
38 溝部
39 支持部
40 ロックアーム部
41 弾性部
100 電気コネクタ
200,300 信号伝送媒体
201,301 切欠き部
202 前縁部
203,303 下面
C 挿入方向
D 抜去方向
E 領域