(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]化合物を必須成分として含有し、[C]硬化剤及び[D]化合物を好適成分として含有する。また、当該熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
【0019】
<[A]重合体>
[A]重合体は、(a1)化合物を含む単量体を重合してなる。また、[A]重合体は、(a1)化合物に加えて(a2)化合物を含む単量体を重合してなる重合体、即ち(a1)化合物と(a2)化合物の共重合体であることが好ましい。なお、[A]重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、(a1)化合物及び(a2)化合物に加えてその他の化合物を含む単量体を重合してなる重合体であってもよい。以下、各化合物について詳述する。
【0020】
[(a1)化合物]
上記(a1)エポキシ基含有不飽和化合物は、エポキシ基を有し、かつ重合反応性の不飽和結合を有するものである限り、特に限定されるものではない。(a1)化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、α−エチルアクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3−メチル−3−(メタ)アクロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクロイルオキシメチルオキセタン等が挙げられる。
【0021】
これらのエポキシ基含有不飽和化合物のうち、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3−メチル−3−(メタ)アクロイロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクロイロキシメチルオキセタンが、共重合体を形成する際の反応性が高く、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される表示素子用保護膜の耐熱性等が優れている点から好ましい。なお、(a1)化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0022】
[A]重合体における(a1)化合物に由来する構造単位の含有率は、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましい。(a1)化合物に由来する構造単位の含有率を上記範囲とすることで、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される表示素子用保護膜は、耐熱性、耐アルカリ性等に優れる。
【0023】
[(a2)化合物]
(a2)化合物は、不飽和カルボン酸及び不飽和多価カルボン酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。[A]重合体の合成において単量体として(a1)化合物に加えて(a2)化合物を用いることにより共重合反応性を向上させることができるため、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される表示素子用保護膜は耐熱性、耐熱変色性により優れる。
【0024】
上記不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−エチルアクリル酸、α−n−プロピルアクリル酸、α−n−ブチルアクリル酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸等が挙げられる。
【0025】
不飽和多価カルボン酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
【0026】
これらのうち、(a2)化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0027】
[A]重合体における(a2)化合物に由来する構造単位の含有率としては、5質量%以上60質量%以下が好ましく、7質量%以上50質量%以下がより好ましく、8質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。(a2)化合物に由来する構造単位の含有率を上記範囲とすることにより、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される保護膜の耐熱性等の諸特性をより高いレベルで最適化することができる。
【0028】
[その他の化合物]
[A]重合体は、(a1)化合物及び(a2)化合物に加えて、その他の化合物を共重合してなる重合体であってもよい。このようなその他の化合物としては、例えば連鎖的なラジカル重合を起こすことが可能な不飽和結合を有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸直鎖状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸分岐鎖状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸脂環式アルキルエステル、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、ビニル芳香族化合物、共役ジエン、カルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸の1−アルキルシクロアルキルエステル構造又はカルボン酸のt−ブチルエステル構造を有する重合性不飽和化合物等が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル酸直鎖状アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、1−エトキシエチルメタクリレート等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、1−エトキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル酸分岐鎖状アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソデシル等が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸脂環式アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル(以下、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルを「ジシクロペンタニル」と称することもある。)、(メタ)アクリル酸−2−ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。これらのうち、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルが好ましい。
【0032】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2,3−ジヒドロキシプロピル等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルが好ましい。
【0033】
(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0034】
不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、例えばマレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。
【0035】
ビシクロ不飽和化合物としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−t−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(t−ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
【0036】
マレイミド化合物としては、例えばN−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート等が挙げられる。これらのうち、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
【0037】
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン、p−メトキシスチレンが好ましい。
【0038】
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0039】
カルボン酸のアセタールエステル構造を有する重合性不飽和化合物としては、例えば1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル(メタ)アクリレート、1−(シクロヘキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(2−メチルプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(1,1−ジメチル−エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(シクロヘキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルメタクリレート、1−(シクロヘキシルオキシ)エチルメタクリレート、1−(2−メチルプロポキシ)エチルメタクリレート、1−(1,1−ジメチル−エトキシ)エチルメタクリレートが好ましい。
【0040】
カルボン酸の1−アルキルシクロアルキルエステル構造を有する重合性不飽和化合物としては、例えば1−メチルシクロプロピル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロブチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘプチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロプロピル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロブチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
カルボン酸のt−ブチルエステル構造を有する重合性不飽和化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。なお、これらのその他の成分は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
その他の化合物としてこれらの化合物を用いることによって、(a1)化合物及び(a2)化合物に対する共重合反応性を向上させると共に、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される表示素子用保護膜の耐熱性等を改善することができる。
【0043】
[A]重合体における、その他の化合物に由来する構造単位の含有率は、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、7質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。その他の化合物に由来する構造単位の含有率を上記範囲とすることによって、[A]重合体を合成する際の共重合反応性が高められると共に、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される表示素子用保護膜の耐熱性等を向上させることができる。
【0044】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体を製造するための重合方法について以下に説明する。[A]重合体は、適当な溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で上記(a1)化合物、(a2)化合物、その他の化合物等を含む単量体を共重合することにより製造することができる。共重合反応に用いられる溶媒としては、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルコキシプロピオン酸アルキル、酢酸エステル等が好ましい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
共重合反応に用いられるラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4―シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましい。共重合体の重量平均分子量を2,000〜100,000とすることにより、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される表示素子用保護膜の耐熱性等の諸特性を良好に保つことができる。
【0047】
<[B]化合物>
[B]化合物は、上記式(1)で表されるイソシアヌル骨格を有する多官能化合物である。当該熱硬化性樹脂組成物は、[B]化合物を含有することによって、平坦性が高く、密着性に優れると共に、熱重量減少が少ない表示素子用保護膜を形成することが可能となる。
【0048】
上記式式(1)中、R
1〜R
3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基である。但し、R
1〜R
3の少なくとも1つは、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、シアノ基、イソシアネート基及び(メタ)アリル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する有機基である。
【0049】
上記R
1〜R
3で表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0050】
上記R
1〜R
3で表される1価の有機基としては、例えば炭素数1〜20の直鎖状又は分岐上の炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。なお、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0051】
上記炭素数1〜20の直鎖状又は分岐上の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖状アルキル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐上の炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0052】
上記炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル、シクロオクチル、ボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0053】
上記炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、単環でもよく、単環が連結した構造であってもよく、縮合環であってもよい。上記炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0054】
また、上記R
1〜R
3で表される1価の有機基としては、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、イソシアネート基、(メタ)アリル基も挙げられる。
【0055】
上記炭化水素基が置換されていてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、シアノ基、イソシアネート基、(メタ)アリル基等が挙げられる。これらのうち、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、シアノ基、イソシアネート基、(メタ)アリル基が好ましく、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、(メタ)アリル基がより好ましく、アクリル基がさらに好ましい。
【0056】
R
1〜R
3の少なくとも1つは、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、シアノ基、イソシアネート基及び(メタ)アリル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する有機基であるが、R
1〜R
3の2つ以上が上記基を有する有機基であることが好ましく、R
1〜R
3の全てが上記基を有する有機基であることがより好ましい。[B]化合物がこのように2つ又は3つの官能基を有する有機基を含むことで、当該熱硬化性樹脂組成物の平担性をより向上させることができると共に、熱処理による保護膜の熱重量減少が少なくすることができる。
【0057】
[B]化合物としては、例えばイソシアヌル酸ジ(2−カルボキシエチル)、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジル、イソシアヌル酸ジアルキルアミノ、イソシアヌル酸トリアルキルアミノ、イソシアヌル酸ジアルキル(メタ)アリル、イソシアヌル酸トリアルキル(メタ)アリル、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジグリシジル、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリグリシジル等が挙げられる。これらのうち、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレートが好ましい。このような化合物の市販品としては、例えばI0428(東京化成工業株式会社製)、アロニックスM−313、同M−215、同M−315(以上東邦化学工業株式会社製)等が挙げられる。なお、当該熱硬化性樹脂組成物において[B]化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
当該熱硬化性樹脂組成物における[B]化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、50質量部以上300質量部以下であり、80質量部以上250質量部以下が好ましく、100質量部以上200質量部以下がより好ましい。[B]化合物の含有量を上記範囲とすることにより、当該熱効果性樹脂組成物から形成される表示素子用保護膜は平坦性に優れると共に熱処理による熱重量減少をより少なくすことができる。
【0059】
<[C]硬化剤>
当該熱硬化性樹脂組成物は、[C]硬化剤を含有することで、耐熱性により優れる表示素子用保護膜を形成することができる。また、[C]硬化剤は、上記の[A]重合体及び[B]化合物を含む第1液とは別の第2液に含有させ、2液硬化型の熱硬化性樹脂組成物として使用することもできる。このように、硬化剤を含有する第2液を、熱硬化性樹脂を含む第1液と分離して2液硬化型の組成物とすることにより、組成物の保存の利便性及び安定性が改善されると共に、より耐熱性に優れる表示素子用保護膜を得ることが可能となる。なお、上記第2液においては通常[C]硬化剤は有機溶媒に溶解させて保存される。
【0060】
[C]硬化剤としては、酸無水物基を有する重合性不飽和化合物とオレフィン性不飽和化合物との共重合体、多価カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0061】
上記酸無水物基を有する重合性不飽和化合物としては、例えば無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水マレイン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
【0062】
上記オレフィン性不飽和化合物としては、例えばスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、メチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、フェニルマレイミド、シクロヘキセン等が挙げられる。
【0063】
酸無水物基を有する重合性不飽和化合物とオレフィン性不飽和化合物との共重合体の好ましい例としては、無水マレイン酸共重合体/スチレン共重合体、無水シトラコン酸/メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル共重合体等が挙げられる。
【0064】
酸無水物基を有する重合性不飽和化合物とオレフィン性不飽和化合物との共重合反応における両者の使用割合(質量比)としては、1:99〜80:20が好ましく、10:90〜60:40がより好ましい。酸無水物基を有する重合性不飽和化合物とオレフィン性不飽和化合物との使用割合(質量比)を1:99〜80:20として形成された共重合体を[C]硬化剤として用いることにより、平坦性により優れた表示素子用保護膜を得ることができる。
【0065】
酸無水物基を有する重合性不飽和化合物とオレフィン性不飽和化合物との共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量としては、500〜50,000が好ましく、500〜10,000がより好ましい。このような範囲の重量平均分子量を有する共重合体を[C]硬化剤として使用することにより、当該熱硬化性樹脂組成物は、平坦性により優れる保護膜を形成することが可能となる。
【0066】
上記多価カルボン酸無水物としては、例えば無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸等の脂肪族ジカルボン酸無水物;
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環族多価カルボン酸二無水物;
無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等の芳香族多価カルボン酸無水物;
エチレングリコールビス無水トリメリテート、グリセリントリス無水トリメリテート等のエステル基含有酸無水物を等が挙げられる。これらの多価カルボン酸無水物の中でも、耐熱性の高い保護膜が得られるという観点から芳香族多価カルボン酸無水物が好ましく、無水トリメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸がより好ましい。なお、当該熱硬化性樹脂組成物においてこれらの[C]硬化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0067】
当該熱硬化性樹脂組成物における[C]硬化剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下が好ましく、1質量部以上30質量部以下がより好ましい。[C]硬化剤の含有量を上記範囲とすることにより、当該熱硬化性樹脂組成物の耐熱性及び耐溶剤性を向上させることができる。
【0068】
<[D]化合物>
[D]化合物は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する[A]重合体以外の化合物である。[D]化合物は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物であるため、当該熱硬化性樹脂組成物の架橋反応性を高めることができ、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される表示素子用保護膜の密着性をより向上させることができる。
【0069】
[D]化合物としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールADジグリシジルエーテル等のビスフェノールのポリグリシジルエーテル類;
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールの脂肪族ポリグリシジルエーテル類;
分子内に2個以上の3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する化合物;
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;
ポリフェノール型エポキシ樹脂;
環状脂肪族エポキシ樹脂;
脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;
高級脂肪酸のグリシジルエステル類;
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等を挙げることができる。[D]化合物としては、これらのうち、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びポリフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0070】
上記分子内に2個以上の3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。なお、当該熱硬化性樹脂組成物において[D]化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0071】
[D]化合物の市販品としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂として、エピコート1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上ジャパンエポキシレジン製);ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、エピコート807(ジャパンエポキシレジン製);フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等)として、エピコート152、同154、同157S65(以上ジャパンエポキシレジン製)、EPPN201、同202(以上日本化薬製);クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、EOCN102、同103S、同104S、1020、1025、1027(以上日本化薬製)、エピコート180S75(ジャパンエポキシレジン製);ポリフェノール型エポキシ樹脂として、エピコート1032H60、同XY−4000(以上ジャパンエポキシレジン製);環状脂肪族エポキシ樹脂として、CY−175、同177、同179、アラルダイトCY−182、同192、184(以上チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ERL−4234、4299、4221、4206(以上U.C.C社製)、ショーダイン509(昭和電工製)、エピクロン200、同400(以上大日本インキ製)、エピコート871、同872(以上ジャパンエポキシレジン製)、ED−5661、同5662(以上セラニーズコーティング社製);脂肪族ポリグリシジルエーテルとして、エポライト100MF(共栄社化学製)、エピオールTMP(日本油脂製)が挙げられる。
【0072】
当該熱硬化性樹脂組成物における[D]化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、2質量部以上40質量部以下が好ましく、5質量部以上30質量部以下がより好ましい。[D]化合物の含有量を上記範囲とすることで、当該熱硬化性樹脂組成物の架橋反応性を向上させると共に、形成される保護膜の基板等に対する密着性を高度なレベルに保つことができる。
【0073】
<その他の任意成分>
当該熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、[A]重合体、[B]化合物、[C]硬化剤、[D]化合物以外にその他の任意成分を含有することができる。このようなその他の任意成分としては、例えば[B]化合物及び[D]化合物以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」ともいう)、密着助剤、界面活性剤、硬化促進剤、溶媒等が挙げられる。以下、各成分について説明する。なお、当該熱硬化性樹脂組成物においては、各成分を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0074】
[その他の重合性化合物]
当該熱硬化性樹脂組成物に含有されるその他の重合性化合物としては、[B]化合物及び[D]化合物以外の化合物であって、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物であれば特に限定されないが、例えばω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0075】
その他の重合性化合物の市販品としては、例えばアロニックスM−400、同M−402、同M−403、同M−405、同M−450、同M−1310、同M−1600、同M−1960、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−8530、同M−8560、同M−9050、アロニックスTO−1450、同TO−1382(以上、東亞合成社);KAYARAD DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同MAX−3510(以上、日本化薬社);ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業社);ウレタンアクリレート系化合物として、ニューフロンティア R−1150(第一工業製薬社);KAYARAD DPHA−40H、UX−5000(以上、日本化薬社);UN−9000H(根上工業社);アロニックスM−5300、同M−5600、同M−5700、M−210、同M−220、同M−240、同M−270、同M−6200、同M−305、同M−309、同M−310、同M−315(以上、東亞合成社);KAYARAD HDDA、KAYARAD HX−220、同HX−620、同R−526、同R−167、同R−604、同R−684、同R−551、同R−712、UX−2201、UX−2301、UX−3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、UX−8101、UX−0937、MU−2100、MU−4001(以上、日本化薬社);アートレジンUN−9000PEP、同UN−9200A、同UN−7600、同UN−333、同UN−1003、同UN−1255、同UN−6060PTM、同UN−6060P(以上、根上工業社);SH−500Bビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業社)等が挙げられる。
【0076】
当該熱硬化性樹脂組成物におけるその他の重合性化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、1質量部〜100質量部が好ましく、5質量部〜50質量部がより好ましい。その他の重合性化合物の含有量を上記特定範囲とすることで、当該熱硬化性樹脂組成物は密着性に優れる。
【0077】
[密着助剤]
当該熱硬化性樹脂組成物は密着助剤を含有することで、形成される保護膜と基板等との密着性を向上させることができる。このような密着助剤としては、例えば、カルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0078】
上記シランカップリング剤としては、例えばトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0079】
当該熱硬化性樹脂組成物における密着助剤の含有量は、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上25質量部以下がより好ましい。密着助剤の含有量を上記範囲とすることで、当該熱硬化性樹脂組成物から形成される保護膜の耐熱性を十分高いレベルに保つことができる。
【0080】
[界面活性剤]
当該熱硬化性樹脂組成物は界面活性剤を含有することで基板等への塗布性を向上させることができる。上記界面活性剤の好ましい例としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0081】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上BM CHIMID社製);メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183、メガファックR08−MH(以上大日本インキ化学工業製);フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430、フロラードFC−431(以上住友スリーエム製);フタージェント250、同251、同222F、FTX−218(以上ネオス社製)、ポリフローKL600、同KL800(以上共栄社化学製)等が挙げられる。
【0082】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えばSH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57、DC−190(以上東レ・ダウコーニング・シリコーン製);KP341(信越化学工業製);エフトップDF301、エフトップDF303、エフトップDF352(以上新秋田化成製)等が挙げられる。
【0083】
さらに、他の界面活性剤の市販品としては、例えば(メタ)アクリル酸系共重合体であるポリフローNo.57、ポリフローNo.90(以上共栄社化学製)等が挙げられる。
【0084】
当該熱硬化性樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましい。界面活性剤の配合量を上記範囲とすることで、当該熱硬化性樹脂組成物の基板等への塗布性を向上させることができる。
【0085】
[硬化促進剤]
当該熱硬化性樹脂組成物は硬化促進剤を含有することで、硬化をさらに促進することができる。硬化促進剤としては、例えば2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリルウンデシルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−S−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0086】
当該熱硬化性樹脂組成物における硬化促進剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対し、通常0.0001質量部以上10質量部以下であり、0.001質量部以上1質量部以下が好ましい。硬化促進剤の含有量を上記範囲とすることで、当該熱硬化性樹脂組成物の硬化を効果的に促進すると共に、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性や、形成される保護膜の耐熱性を最適化することができる。
【0087】
[溶媒]
当該熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは、上記の各成分を適当な溶媒中に均一に溶解又は分散することにより調製される。使用される溶媒としては、当該熱硬化性樹脂組成物の各成分を溶解又は分散し、各成分との反応性を有しないものが好ましい。
【0088】
このような溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、ケトン類等が挙げられる。
【0089】
上記ジエチレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなど;エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとして、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等;
上記ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等;
上記プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等;
上記プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとしては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等;
ケトン類としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、メチルイソアミルケトン、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。
【0090】
これらの溶媒のうち、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルアセテートが好ましく、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メチル−3−メトキシプロピオネートがより好ましい。
【0091】
当該熱硬化性樹脂組成物における溶媒の使用量としては、当該熱硬化性樹脂組成物中の全固形分の量(溶媒を含む組成物の総量から溶媒を除いた量)が1質量%以上50質量%以下となる量であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下となる量であることがより好ましい。当該熱硬化性樹脂組成物において用いる溶媒の量を上記範囲とすることで、塗膜形成時の塗工性が良好に保たれる。
【0092】
上記の溶媒と共に高沸点溶媒を併用することができる。ここで併用できる高沸点溶媒としては、例えばN−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。高沸点溶媒を併用する際の使用量としては、全溶媒量に対して1質量%以上40質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下がより好ましい。全溶媒量に対する高沸点溶媒の使用量を上記範囲とすることによって、塗膜形成時の塗工性をさらに良好にすることができる。
【0093】
溶媒を加えて調製された熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは孔径0.2μm〜3.0μm程度、より好ましくは孔径0.2μm〜0.5μm程度のミリポアフィルタなどを用いて濾別した後、使用に供することもできる。
【0094】
また、当該熱硬化性樹脂組成物はその他の任意成分として、本発明の効果を損なわない範囲で[B]化合物以外の多官能化合物を使用してもよい。
【0095】
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
当該熱硬化性樹脂組成物は、上記溶媒に必須成分である[A]重合体及び[B]化合物、好適成分である[C]硬化剤及び[D]化合物、並びにその他の任意成分を上記溶媒中に所定の割合で混合することによって溶解又は分散させた状態に調製される。また、[A]重合体及び[B]化合物を含有する第1液と、[C]硬化剤を含有する第2液とを別々に調製した2液硬化型の熱硬化性樹脂組成物とすることもできる。上記2液硬化型の熱硬化性樹脂組成物とした場合には、使用する直前に第1液と第2液とを混合して用いられる。このように、硬化剤を含有する第2液を、熱硬化性樹脂を含む第1液と分離して2液硬化型の組成物とすることにより、組成物の保存の利便性及び安定性が改善されると共に、より耐熱性に優れる表示素子用保護膜を得ることが可能となる。なお、2液硬化型の熱硬化性樹脂組成物とする場合には[D]化合物、その他の任意成分は、第1液、第2液のどちらに混合して用いてもよいが、[D]化合物は第1液中に含有させることが好ましい。
【0096】
<表示素子用保護膜の形成方法>
当該表示素子用保護膜の形成方法は、
(1)本発明の熱硬化性樹脂組成物を用い、塗膜を形成する工程(以下、「(1)工程」ともいう)と、
(2)この塗膜を加熱処理する工程(以下、「(2)工程」ともいう)と
を含む。これらの工程を経ることで、平担性に優れ、熱重量減少が少ない表示素子用保護膜を基板上に形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0097】
[(1)工程]
本工程は当該熱硬化性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する工程である。この工程においては、当該熱硬化性樹脂組成物を、例えば表示素子におけるカラーフィルタを備えるカラーフィルタ基板上に塗布し、プレベーク等により溶媒等を除去することにより塗膜を形成することができる。
【0098】
上記基板としては、例えばガラス、石英、シリコン、樹脂等が挙げられる。この樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。本発明においては、これらの基板上にを配置したカラーフィルタ基板を用いることが好ましい。
【0099】
当該熱硬化性樹脂組成物の基板への塗布方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法、インクジェット法等の方法を採用することができる。例えば、コーターとして、スピンコーター、スピンレスコーター、又はスリットダイコーターを用いることによって塗布作業を容易に行うことができる。
【0100】
上記プレベークの条件としては、各成分の種類や配合割合などによっても異なるが、70〜100℃で1分〜15分間程度の条件を採用することができる。形成される塗膜の厚みとしては、0.15μm〜8.5μmが好ましく、0.15μm〜6.5μmがより好ましく、0.15μm〜4.5μmがさらに好ましい。なお、ここでいう塗膜の厚みは、溶媒除去後の厚みである。
【0101】
[(2)工程]
本工程は、上記塗膜を加熱処理する工程である。この加熱処理は、ホットプレート、クリーンオーブン等の適当な加熱装置により実施することができる。処理温度としては、150〜250℃程度が好ましく、加熱時間としてはホットプレート使用の場合は5分〜30分程度、クリーンオーブン使用の場合は30分〜90分程度が好ましい。
【0102】
上記加熱処理に加えて、さらに二次的な加熱処理を行ってもよい。この二次的な加熱温度としては150〜250℃程度が好ましく、加熱装置としては、上記と同様にホットプレート、クリーンオーブン等の適当な装置を使用することができる。また、この際の加熱時間としても、ホットプレート使用の場合は5分〜30分程度、クリーンオーブン使用の場合は30分〜90分程度が好ましい。
【0103】
<表示素子用保護膜>
本発明の表示素子用保護膜は、上記形成方法により形成することができる。その膜厚としては、0.1μm〜8μmが好ましく、0.1μm〜6μmがより好ましく、0.1μm〜4μmがさらに好ましい。なお、保護膜がカラーフィルタの段差を有するカラーフィルタ基板上に形成される場合には、その膜厚は、カラーフィルタの最上部からの厚みを意味する。
【0104】
本発明の熱硬化性樹脂組成物から形成された表示素子用保護膜は、基板に対する密着性、耐熱性、耐熱変色性、耐アルカリ性などの諸特性に優れていると共に、下地の基板上に形成されたカラーフィルタの段差を平坦化する性能に優れ、さらには熱処理による熱重量減少も少ない。そのため、当該表示素子用保護膜は、液晶表示装置や電荷結合素子の表示素子用保護膜として好適である。
【実施例】
【0105】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
以下の各合成例から得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の仕様によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
装置:GPC−101(昭和電工社製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804(昭和電工社製)を結合したもの
移動相:リン酸0.5質量%を含むテトラヒドロフラン
【0107】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続き、(a1)化合物としてのメタクリル酸グリシジル40質量部、(a2)化合物としてのメタクリル酸20質量部、並びにその他の化合物としてのスチレン20質量部及びN−シクロヘキシルマレイミド20質量部を仕込み、窒素置換した後ゆるやかに撹拌を始めた。溶液温度が70℃になるまで加熱し、この温度を7時間保持することによって、重合体(A−1)を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は33.2質量%であった。なお、ここで固形分濃度とは、重合体溶液中の重合体の質量の重合体溶液全質量に占める割合をいう。得られた重合体(A−1)の数平均分子量(Mn)は9,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0108】
[合成例2]
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続き、(a1)化合物としてのメタクリル酸グリシジル30質量部、(a2)化合物としてのメタクリル酸10質量部及びトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルメタクリレート30質量部、並びにその他の化合物としてのスチレン30質量部を仕込み、窒素置換した後ゆるやかに撹拌を始めた。溶液温度が70℃になるまで加熱し、この温度を7時間保持することにより、重合体(A−2)を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は36.3質量%であった。得られた重合体(A−2)の数平均分子量(Mn)は9,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0109】
[合成例3]
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続き、(a1)化合物としてのメタクリル酸グリシジル80質量部、及びその他の化合物としてのスチレン20質量部を仕込み、窒素置換した後ゆるやかに撹拌を始めた。溶液温度が90℃になるまで加熱し、この温度を4時間保持することにより、重合体(A−3)を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は32.9質量%であった。得られた重合体(A−3)の数平均分子量(Mn)は、6,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0110】
<熱硬化性樹脂組成物の調製及び表示素子用保護膜の形成>
[実施例1]
[A]重合体としての重合体(A−1)を含む溶液(固形分換算で重合体(A−1)100質量部に相当する量)に、[B]化合物としての(B−1)イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ及びトリ(メタ)アクリレート(東邦化学工業株式会社製、M−315)150質量部、[C]硬化剤としての(C−1)無水トリメット酸5質量部、[D]化合物としての(D−1)ノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社、エピコート152)15質量部、及び密着助剤としてのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン20質量部を加え、固形分濃度が25.4質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加した後、孔径0.5μmのミリポアフィルタで濾過して熱硬化性樹脂組成物を調製した。この熱硬化性樹脂組成物を、スピンナーを用いてSiO
2ディップガラス基板に塗布した後、ホットプレート上で80℃、2分間プレベークして塗膜を形成した。次いで、この塗膜が形成された基板をクリーンオーブン中で230℃にて30分間加熱処理し、膜厚1.5μmの保護膜を形成した。なお、後述の密着性の試験の一部ではSiO
2ディップガラス基板の替わりにCr基板を用い、平坦性の試験ではカラーフィルタが形成されたSiO
2ディップガラス基板を用いた。
【0111】
[実施例2〜18及び比較例1〜7]
各成分の種類及び量を表1に記載の通りとした他は、実施例1と同様に操作して熱硬化性樹脂組成物を調製した。次いで、このように調製した熱硬化性樹脂組成物を使用し、実施例1と同様にして保護膜を形成した。
【0112】
実施例及び比較例において用いた[B]化合物、[C]硬化剤、[D]化合物、密着助剤、その他の重合性化合物を以下に示す。
【0113】
<[B]化合物>
B−1:イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成製、アロニックスM−313)、ジアクリレート体の含有量が30〜40質量%
B−2:イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亜合成製、アロニックスM−215)、ジアクリレート体の含有量が3〜13質量%
B−3:イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成製、アロニックスM−315)
【0114】
<その他の重合性化合物>
b−1:ペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(東亜合成製、アロニックスM−403)
b−2:コハク酸変性ペンタエリスリトールペンタアクリレート(東亜合成製、アロニックスTO−1382)
b−3:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成製、アロニックスM−309)
【0115】
<[C]硬化剤>
C−1:無水トリメリット酸
【0116】
<[D]化合物>
D−1:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、エピコート152)
D−2:ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、エピコート157S65)
【0117】
<密着助剤>
E−1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
E−2:3−メタクロリキシプロピルトリメトキシシラン
【0118】
<物性評価>
実施例1〜18及び比較例1〜7の熱硬化性樹脂組成物及び保護膜の各種物性を以下の方法により評価した。結果は表1に示す。
【0119】
[耐熱性(加熱時の膜厚安定性)]
各実施例及び比較例にて上記のように形成した保護膜を有する基板について、クリーンオーブン中にて250℃で1時間加熱し、加熱前後の保護膜の膜厚を測定した。下記式に従って膜厚安定性(%)を算出した。この値が95%以上のとき、保護膜の耐熱性は良好であると言える。
加熱時の膜厚安定性=(加熱後の膜厚)/(加熱前の膜厚)×100(%)
【0120】
[耐熱変色性]
各実施例及び比較例にて上記のように形成した保護膜を有する基板について、クリーンオーブン中にて250℃で1時間加熱し、加熱前後の波長400〜800nmの光線透過率を、分光光度計(日立製作所製、150−20型ダブルビーム)を用いて測定した。波長400〜800nmの光線透過率(%)の最小値を、加熱前後それぞれの光線透過率(%)とし、下記式に従って耐熱変色性(%)を算出した。この値が5%以下のとき、保護膜の耐熱変色性は良好であると言える。
耐熱変色性=加熱前の光線透過率−加熱後の光線透過率(%)
【0121】
[密着性]
各実施例及び比較例にて上記のように形成した保護膜を有する基板について、プレッシャークッカー試験(120℃、湿度100%、2時間)を行った後、JIS K−5400−1990の8.5.3付着性碁盤目テープ法を行い、碁盤目100個中で残った碁盤目の数を求め、保護膜の密着性(SiO
2に対する密着性)の評価を行った。また、SiO
2ディップガラス基板の替わりにCr基板を用い、上記同様の碁盤目テープ法を行い、Crに対する密着性を評価した。
【0122】
[平坦性]
SiO
2ディップガラス基板上に、顔料系カラーレジスト(JSR製、JCR GREEN 861−8)を用いて、以下のように、緑のストライプ状カラーフィルタを形成した。すなわち、スピンナーを用いて、上記カラーレジストをSiO
2ディップガラス基板に塗布し、ホットプレート上で80℃、120秒間プレベークして塗膜を形成した。その後、所定のパターンマスクを介して、100mJ/m
2の露光量にて照射し、次いで0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて現像し、超純水にて60秒間リンスした。続いて、更にオーブン中で220℃にて30分間加熱処理することにより、ストライプ状カラーフィルタを形成した。
【0123】
測定長3,000μm、測定範囲3,000μm角、測定方向をストライプライン短軸方向とし、測定点数n=5にて、カラーフィルタ基板の表面の凹凸を、接触式膜厚測定装置(ケーエルエー・テンコール製、、α−ステップ)で測定したところ、0.9μmであった。このカラーフィルタが形成された基板に、各熱硬化性樹脂組成物をスピンナーにて塗布した後、ホットプレート上において80℃にて2分間プレベークして塗膜を形成した後、更にクリーンオーブン中において230℃にて30分間ポストベークすることにより、カラーフィルタの上面からの膜厚が約1.5μmの保護膜を形成した。
【0124】
このように形成したカラーフィルタ上に保護膜を有する基板について、接触式膜厚測定装置(ケーエルエー・テンコール製、α−ステップ)にて、保護膜の表面の凹凸を測定した。この測定は、測定長3,000μm、測定範囲3,000μm角、測定方向をストライプライン短軸とし、測定点数n=5で行い、各測定ごとの最高部と最底部の高低差(nm)の5回の平均値を求め、保護膜の平坦性の評価として表1に示した。この値が100nm以下のとき、保護膜の平坦性は良好であると言える。
【0125】
[耐アルカリ性(アルカリ浸漬時の膜厚安定性)]
各実施例及び比較例にて上記のように形成した保護膜を有する基板について、30℃にて5%NaOH中に30分間浸漬させた後、水分を除去した後の膜厚を測定した。下記式にしたがって算出したアルカリ浸漬時の膜厚安定性(%)を、耐アルカリ性の評価として表1に示した。この値が95%以上のとき、耐アルカリ性は良好であると言える。
耐アルカリ性=(水分除去後の膜厚)/(浸漬前の膜厚)×100(%)
【0126】
[保護膜の熱重量減少量の測定]
各実施例及び比較例にて上記のように形成した保護膜を有する基板について、1cm角に切断し、昇温脱離分析装置(電気科学製 TDS1200)にて230℃に加熱し、30分間保持した際に発生したガス量を測定した。イソシアヌル骨格を持たない化合物を用いた組成物よりできる硬化膜(比較例2)から発生するガス量を100とした時の相対的な値で示す。この値が50以下のとき、発ガス量は少ないと言え、発生するガス量が少ない場合、熱重量減少が少ないと判断できる。
【0127】
【表1】
【0128】
表1に示された結果から明らかなように、本発明による実施例の熱硬化性樹脂組成物は、比較例の組成物と比べて、平坦性に優れると共に熱重量減少も少なかった。さらに、実施例の熱硬化性樹脂組成物は比較例の組成物に比べ、耐熱性、耐熱変色性、耐アルカリ性及び密着性にも優れる保護膜を形成することができた。