(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949099
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】スライドドアの補強構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20160623BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
B60J5/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-101304(P2012-101304)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-226966(P2013-226966A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】三枝 達彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 清治
(72)【発明者】
【氏名】定直 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】桝田 裕之
【審査官】
常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−043405(JP,A)
【文献】
特開2006−037506(JP,A)
【文献】
特開2005−289263(JP,A)
【文献】
特開2009−143294(JP,A)
【文献】
特開2005−335412(JP,A)
【文献】
実開昭57−121321(JP,U)
【文献】
米国特許第06328374(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0101733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたドア開口部の上辺および下辺に、車体の前後方向に沿って上下のガイドレールを配設し、前記ドア開口部後方側側面に、上下方向の中間位置に車体前後方向に中間部ガイドレールを配設し、これらガイドレールに沿って転動するローラを、スライドドアの前端部上下および、後端部中間部に設け、前記スライドドアを車体前後方向に摺動することにより車体側面に設けられたドア開口部を開閉するスライドドアの補強構造において、前記スライドドアを構成するドアアウタパネルとドアインナパネル相互間で、前記スライドドアに設けられた窓部の前後の上端角部に位置する前記ドアパネルに、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したブラケットをそれぞれ設け、これらブラケット相互間を前記窓部の上辺に沿って配設した連結部材で連結し、
前記前後のブラケットは前記ドアアウタパネルもしくはドアインナパネルに結合すると共に、前記ドアアウタパネルもしくはドアインナパネルに結合しない方のドアパネルとの間に閉じ断面を形成したことを特徴とするスライドドアの補強構造。
【請求項2】
前記前後のブラケットは、前側ブラケットと後ろ側ブラケットで構成され、これらブラケットはそれぞれハット形断面に形成されるとともに、このハット形断面と前記ドアアウタパネルもしくはドアインナパネルに結合しない方のドアパネルとの間で前記閉じ断面を形成したことを特徴とする請求項1に記載のスライドドアの補強構造。
【請求項3】
前記前側ブラケットは、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したL字形に形成され、かつ上下方向から前後方向に連続するハット形断面に形成され、前記ドアアウタパネルとの間に閉じ断面を形成するとともに、前記上下方向の部分の下方を前後方向の部分より幅広に形成し、該幅広部分を前記ドアインナパネルに接合し、前記前後方向に向かって伸びる部分に前記連結部材の一端を接合したことを特徴とする請求項2に記載のスライドドアの補強構造。
【請求項4】
前記後ろ側ブラケットは、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したL字形に形成され、かつ上下方向から前後方向に連続するハット形断面に形成され、前記ドアアウタパネルとの間に閉じ断面を形成するとともに、前記上下方向の部分を前後方向の部分より幅広に形成し、該幅広部分を前記ドアインナパネルに接合し、前記前後方向に向かって伸びる部分に前記連結部材の他端を接合したことを特徴とする請求項2または3に記載のスライドドアの補強構造。
【請求項5】
前記窓部の前後方向に向かう前記前側ブラケットの上面部にドア懸架装置の取付部を設けたことを特徴とする請求項3に記載のスライドドアの補強構造。
【請求項6】
前記後ろ側ブラケットの上下方向のハット形断面を形成した縦部分の車体後部側に前記前後方向に形成した横部分の上面より一段低くした段差部を設けたことを特徴とする請求項4に記載のスライドドアの補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアを備えた車両において、車室内に積載された積載物または乗員がスライドドアに当たるなど、車両室内側から室外側へ過大な荷重が加わった場合、これらの荷重によるスライドドアの捩じれなどによって生じるスライドドアとサイドボディ間の隙間を低減させるスライドドアの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体側部に設置されるサイドドアとして、ドア本体を車体前後方向にスライド移動させてドア開口部を開閉するようにしたスライドドアは一般に良く知られており、例えば、所謂ワンボックスタイプの自動車などのサイドドアとして多用されている。
【0003】
かかるスライドドアを備えた車両では、車体側部に車体前後方向へ延びる複数のガイドレールを配設するとともに、スライドドアのドア本体側に前記ガイドレールに沿って転動可能なローラを配設しておき、ドアを開閉する際には、前記ローラがガイドレールに沿って転動することにより、スライドドアが車体前後方向にスライド移動するように構成されている。
【0004】
前記ガイドレールは、ドア開口部の上辺部に、車体前後方向に沿って上部ガイドレールが設けられ、かつ、ドア開口部の下辺部に、車体前後方向に沿って下部ガイドレールが設けられている。また、ドア開口部の後部側の上下方向の中間位置に、中間部ガイドレールが車体前後方向に沿って設けられている。
一方、スライドドアの裏面には、ドア前端部の上部位置に、前記上部ガイドレールに沿って転動する上部ガイドローラが設けられ、かつドア前端部の下部位置に、前記下部ガイドレールに沿って転動する下部ガイドローラが設けられている。また、ドア後端部上下の中間位置に、前記中間部ガイドレールに沿って転動する中間部ガイドローラが設けられている。
スライドドアは、これら上部ガイドローラおよび下部ガイドローラによって前記上部ガイドレールおよび下部ガイドレールに沿って転動され、中間部ガイドローラによって中間部ガイドレールに沿って転動されて摺動するものである。
【0005】
ところで、前記のようなスライドドアを備えた車両では、スライドドアは、ドア前端部の上下位置と、ドア後端部の中間位置との三点で支持され、かつ、スライドドアが閉じられた状態では、スライドドアの前端部および後端部のそれぞれ上下の中間位置に設けられた、フック及びラッチによって、車体側のストライカ等に係合することによってロックされている。こうして、スライドドアが閉じられた状態では、スライドドアの前端部では、上中下の三箇所で保持され、スライドドアの後端部では、上下方向の中間位置で保持されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−143294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、車両の衝突などに際して、車室内に積載された積載物または乗員がスライドドアに当たるなど、車両室内側から室外側へ過大な荷重が加わった場合、スライドドア自体が車体外側に押されることでスライドドアが車体外方に変形あるいは捩じれ作用が働くことがある。スライドドアは、前端部では、上中下の三箇所で支持されるのに対して、後端部では中間位置のみの支持で保持されている。このため、車両室内側から室外側に向けてスライドドアに過大な応力が作用すると、固定されている前端部を支点として後端部に捩じれ作用が働き、前端部に対して後端部の上下の変形が大きくなりスライドドアの上下位置とサイドボディ壁面との間の隙間が広がり、特に、スライドドアの後部側上端部の間隙が大きくなる虞があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決し、スライドドアを備えた車両において、スライドドアが閉じられた状態で車両室内側から車幅方向の外方に、スライドドアに対して荷重が作用してスライドドアが車体外方に押された場合、スライドドアの後部側上端部に働く捩じれ作用を抑制してスライドドアの上下位置とサイドボディ壁面との隙間を低減させることができるスライドドアの補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、車体に設けられたドア開口部の上辺および下辺に、車体の前後方向に沿って上下のガイドレールを配設し、前記ドア開口部後方側側面に、上下方向の中間位置に車体前後方向に中間部ガイドレールを配設し、これらガイドレールに沿って転動するローラを、スライドドアの前端部上下および、後端部中間部に設け、前記スライドドアを車体前後方向に摺動することにより車体側面に設けられたドア開口部を開閉するスライドドアの補強構造において、前記スライドドアを構成するドアアウタパネルとドアインナパネル相互間で、前記スライドドアに設けられた窓部の前後の上端角部に位置する前記ドアパネルに、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したブラケットをそれぞれ設け、これらブラケット相互間を前記窓部の上辺に沿って配設した連結部材で連結し、
前記前後のブラケットは前記ドアアウタパネルもしくはドアインナパネルに結合すると共に、前記ドアアウタパネルもしくはドアインナパネルに結合しない方のドアパネルとの間に閉じ断面を形成したことにある。
さらに、本発明は、前記前後のブラケットは、前側ブラケットと後ろ側ブラケットで構成され、これらブラケットはそれぞれハット形断面に形成されるとともに、このハット形断面と前記ドアアウタパネルもしくはドアインナパネルに結合しない方のドアパネルとの間で前記閉じ断面を形成したことにある。
またさらに本発明は、前記前側ブラケットは、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したL字形に形成され、かつ上下方向から前後方向に連続するハット形断面に形成され、前記ドアアウタパネルとの間に閉じ断面を形成するとともに、前記上下方向の部分の下方を前後方向の部分より幅広に形成し、該幅広部分を前記ドアインナパネルに接合し、前記前後方向に向かって伸びる部分に前記連結部材の一端を接合したことにある。
また本発明は、前記後ろ側ブラケットは、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したL字形に形成され、かつ上下方向から前後方向に連続するハット形断面に形成され、前記ドアアウタパネルとの間に閉じ断面を形成するとともに、前記上下方向の部分を前後方向の部分より幅広に形成し、該幅広部分を前記ドアインナパネルに接合し、前記前後方向に向かって伸びる部分に前記連結部材の他端を接合したことにある。
さらに、本発明は、前記窓部の前後方向に向かう前記前側ブラケットの上面部にドア懸架装置の取付部を設けたことにある。
またさらに、前記後ろ側ブラケットの上下方向のハット形断面を形成した縦部分の車体後部側に前記前後方向に形成した横部分の上面より一段低くした段差部を設けたことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
第1の発明によれば、スライドドアを構成するドアアウタパネルとドアインナパネル相互間で、前記スライドドアに設けられた窓部の前後の上端角部に位置する前記ドアパネルに、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したブラケットをそれぞれ設け、これらブラケット相互間を前記窓部の上辺に沿って配設した連結部材で連結したので、室内側から加わる荷重に対してスライドドア上部の捩じれを低減できることから、スライドドアの上下位置とサイドボディ壁面との間の隙間の発生を最小限に抑えることができる。
また、前後のブラケットは前記ドアアウタパネルもしくはドアインナパネルに結合すると共に、前記ドアアウタパネルもしくはドアインナパネルに結合しない方のドアパネルとの間に閉じ断面を形成したので、ドアパネル上部の剛性を向上することができる。
第
2の発明によれば、前記ブラケットは、前側ブラケットと後ろ側ブラケットで構成され、これらブラケットはそれぞれハット形断面に形成され、前記ドアアウタパネルとの間に閉じ断面を形成したので、ドアパネル上部の剛性を向上することができる。
第
3の発明によれば、前側ブラケットは、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したL字形に形成され、かつ上下方向から前後方向に連続するハット形断面に形成され、ドアアウタパネルとの間に閉じ断面を形成するとともに、上下方向の部分の下方を前後方向の部分より幅広に形成し、該幅広部分を前記ドアインナパネルに接合し、前後方向に向かって伸びる部分に連結部材の一端を接合したので、窓部の上下方向から前後方向にかけての剛性を向上し、連結部材によって前側部分に対して後ろ側部分の捩じれを抑制できることから、スライドドアの上下位置とサイドボディ壁面との間の隙間の発生を最小限に抑えることができる。
第
4の発明によれば、後ろ側ブラケットは、窓部の上下方向から前後方向にかけて曲折したL字形に形成され、かつ上下方向から前後方向に連続するハット形断面に形成され、ドアアウタパネルとの間に閉じ断面を形成するとともに、上下方向の部分を前後方向の部分より幅広に形成し、該幅広部分をドアインナパネルに接合し、前後方向に向かって伸びる部分に連結部材の他端を接合したので、窓部の上下方向から前後方向にかけての剛性を向上し、連結部材によって前側部分に対して後ろ側部分の捩じれを抑制できることから、スライドドアの上下位置とサイドボディ壁面との間の隙間の発生を最小限に抑えることができる。
第
5の発明によれば、窓部の前後方向に向かう前側ブラケットの上面部にドア懸架装置の取付部を設けたので、ドア懸架装置の取付部の剛性を向上することができる。
第
6の発明によれば、後ろ側ブラケットの上下方向のハット形断面を形成した縦部分の車体後部側に前記前後方向に形成した横部分の上面より一段低くした段差部を設けたので、後ろ側ブラケットの剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態によるスライドドアの補強構造を示す側面図である。
【
図2】
図1のスライドドアの背面をインナパネルを外して補強部材を示す斜視図である。
【
図3】
図2の補強部材を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図3の補強部材の前側ブラケットの背面を示す概念図である。
【
図5】
図3の補強部材の後ろ側ブラケットの背面を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
スライドドアの補強構造を
図1および
図2で示し、補強部材を
図3ないし
図5に示している。
【0013】
図1ないし
図5において、1は、ワンボックスカーの車体である。この車体1の左右両側側面2に設けられたサイドボディ3には、前後に乗降口となるドア開口部3a,3bがそれぞれ形成され、前部側ドア開口部3aを仕切るフロントピラー部A、クウォータピラー部B、このクウォータピラー部Bとともに後部側ドア開口部3bを仕切るリヤピラー部Cが設けられている。
【0014】
前記サイドボディ3の前部側開口部3aには、前記フロントピラー部Aにヒンジ機構(図示せず)を介して車体外側に回動可能に支持されたパネル式のフロントドア4が設けられている。また、サイドボディ3の後部側開口部3bには、車体1の前後方向に摺動してドア開口部3bを開閉するスライド式のスライドドア5が設けられている。ドア開口部3bの上辺、下辺位置およびドア開口部3b後方側の上下方向中間位置のサイドボディ3の側面には、前後方向に沿ってスライドレール31a、31b、31cがそれぞれ設けられている。一方、スライドドア5には、上記スライドレール31a、31b、31cにそれぞれ係合する上部ローラ51a、下部ローラ51b、中間部ローラ51cが、それぞれ設けられている。前記上部ローラ51a、下部ローラ51b、中間部ローラ51cは、それぞれ上部アーム52a、下部アーム52b、中間部アーム52cに軸支されており、これら上部アーム52a、下部アーム52b、中間部アーム52cを介して前記スライドドア5の裏面前部の上下、および裏面後部の中間部にそれぞれ設けられている。
【0015】
前記後部側ピラー部Cの開口側の縦壁面には、上下方向の中間位置に、スライドドア5の閉じ位置の後部であって、スライドドア5を閉じた際に、該スライドドア5の後部の上下方向の中間位置に設けられたドアラッチ(図示せず)に係合して該スライドドア5を固定する固定機構としてのストライカ(図示せず)が設けられている。該スライドドア5の前部の上下方向の中間位置には、フック(図示せず)が設けられ、このフックに係合するストライカ(図示せず)がクウォータピラー部Bの後面側に設けられている。スライドドア5は、開口部3bの閉じ位置では、前端部側の上下、中間部を、上部ローラ51a、下部ローラ51b、およびフックによってサイドボディ3に保持され、後端部の中間部を、中間部ローラ51cおよびドアラッチによってサイドボディ3に保持されている。
図1の5Aおよび5Bは、スライドドア5に設けられているフックの取付位置、およびドアラッチの取付位置を示している。
【0016】
前記スライドドア5は、
図2および
図3に示すように、ドアアウタパネル6とドアインナパネル7で構成され、上部側に窓枠8Aに囲まれた四角形の窓部8を形成し、下部側前後端部にフックあるいはドアラッチが組付けられている。前記スライドドア5のドアアウタパネル6の窓枠6Aとドアインナパネル7の窓枠7A相互間には、前記窓部8の窓枠8Aの上辺部窓枠部8bに沿って前部側窓枠部8aと後部側窓枠部8cを連結する補強部材9が配設されている。この補強部材9は、前側ブラケット10と、後ろ側ブラケット11と、これら前側ブラケット10と、後ろ側ブラケット11を連結したパイプ状の連結部材12とで構成されている。
【0017】
前記前側ブラケット10は、前記スライドドア5の窓枠8Aの前端側上端角部81のドアインナパネル7の窓枠部7Aの前端側上端角部71にスポット溶接wにより接合して設けられたものである。この前側ブラケット10は、縦部分10aと横部分10bからなり、窓部8の前部側窓枠部8aから上辺部窓枠部8bにかけて配設された略L字状の金具で、このブラケット10は、窓枠8Aの前後方向から上下方向に直角に折り曲げて形成されている。このブラケット10は、ドアアウタパネル6の面に対して横断面ハット形の突面形状10cを成すように形成され、この突面形状10cの空間部を窓枠8Aの前後方向から上下方向に連続するように形成されている。そして、ブラケット10は、上下方向の縦部分10aから、前後方向に延出された横部分10bの先に前記連結部材12の一端部をアーク溶接wによって接合している。
【0018】
前記前側ブラケット10は、
図4に示すように横部分10bの上辺部10dに、上部ローラ51aの上部アーム52aを取り付けるローラ取付部13が設けられている。このローラ取付部13は、上部アーム52aの2か所の取付孔(図示せず)と、ドアインナパネル7のパネル面に形成された2か所の取付孔(図示せず)と、前側ブラケット10の上辺部10dに形成された2か所の取付孔(図示せず)により構成され、これら取付孔に通された2本のボルト14を、上辺部10dの裏側に設けられた2個のナット14aに螺合することにより上部アーム52aが固定されている。前記ナット14aは、予め、前側ブラケット10の上辺部10dに形成された取付孔(図示せず)の位置に溶接等により固着されている。
【0019】
前記パイプ状の連結部材12は、前記前側ブラケット10のローラ取付部13が設けられた2個のナット14aの間、少なくとも2個のナット14aの中間部より奥側に、連結部材12の先端が位置するようにアーク溶接wされている。
【0020】
前記後ろ側ブラケット11は、
図2および
図4に示すように、前記スライドドア5の窓枠8Aの後端側上端角部82のドアインナパネル7の窓枠部7Aの後端側上端角部72にスポット溶接wにより接合して設けられたものである。この後ろ側ブラケット11は、幅広の縦部分11aと横部分11bからなり、窓部8の後部側窓枠部8cから上辺部窓枠部8bにかけて配設された略L字状の後部金具で、このブラケット11は、窓枠8Aの上下方向から前後方向に直角に折り曲げて形成されている。この後ろ側ブラケット11は、ドアアウタパネル6の面に対して横断面ハット形の突面形状11cを成すように形成され、この突面形状10cの空間部を窓枠8Aの上下方向から前後方向に連続するように形成されている。幅広の縦部分11aは、突面形状11cの外側に幅を広げる延長部11dが形成されており、この延長部11dは、突面形状11cよりも突出幅を低く形成され、かつ突面形状11cの上端部よりも一段低くなる段差部11eを形成している。前記パイプ状の連結部材12は、他端部を前記後ろ側ブラケット11の前記横部分11bにアーク溶接wにより接合されている。
【0021】
前記スライドドア5には、窓枠8Aの下部側に、車体前後方向に沿って、内部に帯状のリンフォースメンバ15が配設され、かつリンフォースメンバ15の中間部から下部側に向けて帯状のリンフォースメンバ16が配設されている。
【0022】
そして、組付けに際しては、前側ブラケット10と、後ろ側ブラケット11相互間に、一定の長さの連結部材12を配置し、連結部材12の一端部を前側ブラケット10の横部分10bにアーク溶接wにより接合する。連結部材12の一端部は、2個のナット14aの間に先端が来るようにして接合する。一方、連結部材12の他端部を後ろ側ブラケット11の横部分11bに配置してアーク溶接wにより接合する。こうして補強部材9を形成し、スライドドア5の製造に際して補強部材9を窓枠8Aの上辺部に組み付ける。
補強部材9の組付けに際しては、前側ブラケット10と、後ろ側ブラケット11が、窓枠8Aの上辺部窓枠部8bの両端角部に配置されるように組付けて補強部材9を配設する。前側ブラケット10は、ドアインナパネル7の窓枠部7Aの前端側上端角部71にスポット溶接wにより接合し、後ろ側ブラケット11は、ドアインナパネル7の窓枠部7Aの後端側上端角部72にスポット溶接wにより接合する。
【0023】
前側ブラケット10は、上下方向に突面形状10cを成すように形成された縦部分10aの下部側に形成された幅広部分10eの側面を窓枠部7Aの側面にスポット溶接wし、突面形状10cの裏面とドアインナパネル7の窓枠部7Aの壁面をスポット溶接wして接合している。
後ろ側ブラケット11は、幅広の縦部分11aの横に設けられた延長部11dの側面を窓枠部7Aの側面にスポット溶接wし、突面形状11cの裏面とドアインナパネル7の窓枠部7Aの壁面をスポット溶接wして接合している。
【0024】
次に、衝突等によって車室内からスライドドア5に外向きの過大な衝撃が加わった場合、スライドドア5は、開口部3bの閉じ位置では、前端部側の上下、中間部を、上部ローラ51a、下部ローラ51b、およびフックによってサイドボディ3に保持され、後端部の中間部を、中間部ローラ51cおよびドアラッチによってサイドボディ3に保持されている。そして、衝撃に伴って、窓枠8Aに、捩じれ作用が働くと、窓枠8Aの固定されている前部側窓枠部8a側を支点として、固定されていない後部側窓枠部8cには、上辺部窓枠部8bを介して捩じれ作用が働く。しかしながら、窓枠8Aの上辺部窓枠部8bには、補強部材9が配設されているので、前部側窓枠部8aと後部側窓枠部8cとの間に働く捩じれ作用は補強部材9によって伝達されるので、前部側窓枠部8aの動きに後部側窓枠部8cが追従するので、捩じれ作用を吸収するように働く。したがって、窓枠8Aには、大きな捩じれ作用は働かないので、スライドドア5の後部側窓枠部8cとサイドボディ3との間の間隙が生じるのを制限することができる。
【0025】
このように、上記実施の形態によれば、窓枠8Aの前後の角部に設けられた前側ブラケット10と後ろ側ブラケット11を連結部材12で連結した補強部材9を窓枠8Aの上辺部に配設したので、窓枠8Aの捩じれ作用を防ぎ、スライドドア5とサイドボディ3との間の間隙が生じるのを制限することができる。特に、前側ブラケット10は、ドアアウタパネル6の面に対して横断面ハット形の突面形状10cを成すように形成され、この突面形状10cの空間部を窓枠8Aの前後方向から上下方向に連続するように形成されていることから、ドアアウタパネル6の面に対して閉じ断面が形成されるので、窓枠8Aの剛性を向上することができる。また、後ろ側ブラケット11は、ドアアウタパネル6の面に対して横断面ハット形の突面形状11cを成すように形成され、この突面形状10cの空間部を窓枠8Aの上下方向から前後方向に連続するように形成されていることから、ドアアウタパネル6の面に対して閉じ断面が形成されるので、窓枠8Aの剛性を向上することができる。このように前部側窓枠部8aの動きに後部側窓枠部8cが追従するので、窓枠8A全体で捩じれ作用を吸収するように働く。したがって、窓枠8Aには、大きな捩じれ作用は働かないので、スライドドア5の後部側窓枠部8cとサイドボディ3との間の間隙が生じるのを制限することができる。
さらに、スライドドア5の窓部8の下部にはリンフォースメンバ15が配設されているので、補強部材9と協働して、窓枠8Aに働く捩じれ作用を低減することができる。またさらに、前側ブラケット10には、上辺部10dにローラ取付部13を設けているので、上部ローラ51aを取り付けた上部アーム52aの剛性を向上することができる。また、補強部材9は、前側ブラケット10と後ろ側ブラケット11をパイプ状の連結部材12で連結したので、補強部材9の剛性を向上することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、前側ブラケット10と後ろ側ブラケット11の形状は、閉じ断面を形成することができる略L字形状のものであれば、幅、長さは任意に設定することができる。また、前側ブラケット10と後ろ側ブラケット11をドアインナパネル7に固定するスポット溶接の箇所は必要に応じて変更したり、溶接の箇所の数も増減することができる。等、その他、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 車体
2 側面
3 サイドボディ
3a,3b ドア開口部
31a、31b、31c スライドレール
4 フロントドア
5 スライドドア
51a 上部ローラ
51b 下部ローラ
51c 中間部ローラ
6 ドアアウタパネル
7 ドアインナパネル
8 窓部
8A 窓枠
9 補強部材
10 前側ブラケット
10d 上辺部
11 後ろ側ブラケット
11e 段差部
12 連結部材
13 ローラ取付部
A フロントピラー部
B クウォータピラー部
C リヤピラー部