特許第5949105号(P5949105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949105
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】姿勢制御構造及び射出試験装置
(51)【国際特許分類】
   F41F 7/00 20060101AFI20160623BHJP
   G01N 3/313 20060101ALI20160623BHJP
   F42B 14/06 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   F41F7/00
   G01N3/313
   F42B14/06
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-103558(P2012-103558)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-231548(P2013-231548A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】島村 和夫
(72)【発明者】
【氏名】福重 進也
(72)【発明者】
【氏名】北川 潤一
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04022053(US,A)
【文献】 特開2011−064670(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0178729(US,A1)
【文献】 特開2004−271216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41F 7/00
F42B 14/06
G01N 3/00− 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出された飛翔体の姿勢変化を抑制する姿勢制御構造において、
前記飛翔体の軌道を囲繞するように設けられ、前記飛翔体の姿勢を拘束しつつその軌道を強制するガイドレールと、
前記ガイドレールで囲繞された部分の内径が可変となるように、前記ガイドレールを動径方向に可動自在に支持する支持機構と、
を備え
前記ガイドレールは、前記ガイドレールで囲繞された部分の内径が射出方向先端側に先細りとなるように支持されることを特徴とする姿勢制御構造。
【請求項2】
前記支持機構は、
前記ガイドレールを束ねる支持枠と、
前記支持枠の外側から内側に向かって進退自在に挿入され、前記支持枠の内側に位置する先端部に前記ガイドレールが取り付けられる棒状部材と、
を備える請求項1に記載の姿勢制御構造。
【請求項3】
前記棒状部材はネジ構造によって進退自在とされる請求項2に記載の姿勢制御構造。
【請求項4】
前記棒状部材は弾性部材によって進退自在とされる請求項2に記載の姿勢制御構造。
【請求項5】
前記ガイドレールは、前記飛翔体に比べて柔らかい材料からなる請求項1〜のいずれかに記載の姿勢制御構造。
【請求項6】
前記ガイドレールは、前記飛翔体に比べて硬い材料からなる請求項1〜のいずれかに記載の姿勢制御構造。
【請求項7】
飛翔体を保持したサボを射出方向後端に収容し、前記サボを圧縮ガスや爆薬のエネルギを利用して射出するための発射管と、
前記発射管の射出方向先端側に設けられ、前記発射管から射出された前記飛翔体を衝突させる標的と、
前記飛翔体と前記サボとを分離させて前記飛翔体を前記標的に衝突させるための分離板と、
を備え、
前記分離板の射出方向先端側には、前記飛翔体の軌道を囲繞するように設けられ、前記飛翔体の姿勢を拘束しつつその軌道を強制するガイドレールと、前記ガイドレールで囲繞された部分の内径が可変となるように、前記ガイドレールを動径方向に可動自在に支持する支持機構と、を備え、前記射出された飛翔体の姿勢変化を抑制する姿勢制御構造が設けられることを特徴とする射出試験装置。
【請求項8】
前記分離板は、前記サボから分離された前記飛翔体を前記姿勢制御構造のガイドレールで囲繞された部分に誘導する、射出方向先端側に先細りのガイド孔を備える請求項に記載の射出試験装置。
【請求項9】
前記サボは、
前記発射管の内径と同じ大きさの外径に形成されたサボ本体と、
前記サボ本体内に形成された中空部に収容される緩衝材と、
を備える請求項又はに記載の射出試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体を標的に衝突させてその飛翔体や標的の材料特性を調査する射出試験用の姿勢制御構造及び射出試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速変形下における材料特性を調査するための試験として、圧縮ガスや爆薬のエネルギを利用して飛翔体を射出し、射出された飛翔体を標的に衝突させる射出試験(テイラー衝撃試験)がある。
【0003】
射出試験の再現性を向上させるためには、飛翔体を標的に対して、毎回、略同じ姿勢で衝突させる必要がある。
【0004】
飛翔体の姿勢を安定させる方法としては、飛翔体の直径よりも僅かに大きい内径を有する専用の加速管を用いて、飛翔体をその姿勢を保持しつつ加速する方法(例えば、非特許文献1参照)、飛翔体を専用のカートリッジに入れてその姿勢を保持したまま射出し、標的の手前でカートリッジから飛翔体を分離させ、飛翔体だけを標的に衝突させる方法(例えば、非特許文献2参照)、又はサボと呼ばれる入れ物に飛翔体を入れてその姿勢を保持したまま射出し、空気抵抗を利用して飛翔体とサボとを分離させ、飛翔体だけを標的に衝突させる方法(例えば、非特許文献3参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−64670号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】B. Wang et al., Taylor impact test for ductile porous materials - Part 2: experiments, Int. J. of Impact Engineering, 28 (2003) 499-511
【非特許文献2】J. W. House, Taylor Impact Testing, AFATL-TR-89-41, 1989
【非特許文献3】D. F. T. Winter, The penetration of targets by long rod projectiles, AD 595793, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、専用の加速管を用いる方法では、飛翔体の加速中の姿勢安定性に優れているものの、飛翔体の寸法ごとに異なる内径の加速管を準備する必要があり、経済的な観点等から実現性に乏しい。同様に、カートリッジを用いる方法も飛翔体の寸法の制約を受ける。
【0008】
また、サボを用いる方法では、空気抵抗を利用して飛翔体とサボとを分離させるため、飛翔体とサボとを分離させるのに十分な距離の分離区間を確保する必要があり、射出試験装置が大型化してしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、射出試験装置の小型化を実現することができ、且つ、射出された飛翔体の姿勢を保持して再現性の良い射出試験を低価格で行える姿勢制御構造及び射出試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために創案された本発明は、射出された飛翔体の姿勢変化を抑制する姿勢制御構造において、前記飛翔体の軌道を囲繞するように設けられ、前記飛翔体の姿勢を拘束しつつその軌道を強制するガイドレールと、前記ガイドレールで囲繞された部分の内径が可変となるように、前記ガイドレールを動径方向に可動自在に支持する支持機構と、を備え、前記ガイドレールは、前記ガイドレールで囲繞された部分の内径が射出方向先端側に先細りとなるように支持される姿勢制御構造である。
【0011】
前記支持機構は、前記ガイドレールを束ねる支持枠と、前記支持枠の外側から内側に向かって進退自在に挿入され、前記支持枠の内側に位置する先端部に前記ガイドレールが取り付けられる棒状部材と、を備えると良い。
【0012】
前記棒状部材はネジ構造によって進退自在とされると良い。
【0013】
前記棒状部材は弾性部材によって進退自在とされても良い。
【0015】
前記ガイドレールは、前記飛翔体に比べて柔らかい材料からなると良い。
【0016】
前記ガイドレールは、前記飛翔体に比べて硬い材料からなっても良い。
【0017】
また、本発明は、飛翔体を保持したサボを射出方向後端に収容し、前記サボを圧縮ガスや爆薬のエネルギを利用して射出するための発射管と、前記発射管の射出方向先端側に設けられ、前記発射管から射出された前記飛翔体を衝突させる標的と、前記飛翔体と前記サボとを分離させて前記飛翔体を前記標的に衝突させるための分離板と、を備え、前記分離板の射出方向先端側には、前記飛翔体の軌道を囲繞するように設けられ、前記飛翔体の姿勢を拘束しつつその軌道を強制するガイドレールと、前記ガイドレールで囲繞された部分の内径が可変となるように、前記ガイドレールを動径方向に可動自在に支持する支持機構と、を備え、前記射出された飛翔体の姿勢変化を抑制する姿勢制御構造が設けられる射出試験装置である。
【0018】
前記分離板は、前記サボから分離された前記飛翔体を前記姿勢制御構造のガイドレールで囲繞された部分に誘導する、射出方向先端側に先細りのガイド孔を備えると良い。
【0019】
前記サボは、前記発射管の内径と同じ大きさの外径に形成されたサボ本体と、前記サボ本体内に形成された中空部に収容される緩衝材と、を備えると良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、射出試験装置の小型化を実現することができ、且つ、射出された飛翔体の姿勢を保持して再現性の良い射出試験を低価格で行える姿勢制御構造及び射出試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る射出試験装置を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は真空チャンバ内の部分断面図である。
図2図1の射出試験装置におけるサボを示す概略図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。
図3図1の射出試験装置における姿勢制御構造を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)はA−A線断面図である。
図4図1の射出試験装置における姿勢制御構造を示すA−A線断面図であり、(a)は角棒の幅Wが広い場合の断面図、(b)は角棒の幅Wが狭い場合の断面図である。
図5図3の姿勢制御構造における支持機構を示す概略図であり、(a)はネジ構造を利用した場合の部分断面図、(b)は弾性部材を利用した場合の部分断面図である。
図6図1の射出試験装置を用いた射出試験の様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0023】
図1(a)、(b)に示すように、射出試験装置10は、飛翔体11を保持したサボ12を射出方向後端(図示左端)に収容し、サボ12を圧縮ガスや爆薬等のエネルギ(以下、加速エネルギと言う)を利用して射出するための発射管13と、発射管13の射出方向先端側(図示右端側)に設けられ、発射管13から射出された飛翔体11を衝突させる標的14と、飛翔体11とサボ12とを分離させて飛翔体11を標的14に衝突させるための分離板15と、を備える。
【0024】
本実施の形態では、一例として、加速エネルギとして圧縮ガスを用いる場合を説明する。
【0025】
飛翔体11としては、例えば、鳥やそれを模したゼラチン、又は金属片等様々なものを用いることができる。
【0026】
本実施の形態では、一例として、長さ100mm程度、直径10mm程度の先端が尖った細長い金属棒(ロングロッド)からなる飛翔体11を用いる。
【0027】
サボ12は、射出された飛翔体11の姿勢を保持しつつ分離板15を通して飛翔体11を標的14に衝突させ、且つ、分離板15で飛翔体11と分離されるものである。
【0028】
図2に示すように、サボ12は、発射管13の内径と同じ大きさ(厳密には若干小さい)の外径に形成されたカップ状のサボ本体16と、サボ本体16内に形成された中空部17に収容される緩衝材18と、を備える。
【0029】
サボ本体16の外径が発射管13の内径と同じ大きさに形成されることで、飛翔体11の大きさによらず同一口径の発射管13を用いて射出試験を行うことができるため、射出試験を低価格で行えるようになる。
【0030】
サボ本体16は、例えば、ポリエチレンのような軽く、摩擦が小さく、加工が容易な高分子材料からなる。
【0031】
高分子材料は破断伸びが大きく、分離板15に衝突しても壊れにくいため、サボ12が破壊されてその破片が意図せず飛散してしまう現象を抑制することができる。
【0032】
緩衝材18は、例えば、発泡ポリスチレンや発泡スチロール等の発泡樹脂からなる。また、緩衝材18は、飛翔体11をその姿勢を崩さず確実に保持することができるように、適度な硬さを有することが好ましい。
【0033】
緩衝材18に飛翔体11を保持させるには、緩衝材18に飛翔体11の大きさに応じた溝19を加工し、この溝19に飛翔体11を嵌め込むようにする。
【0034】
緩衝材18は、発泡樹脂を熱線や研削により加工して形成するため、飛翔体11の大きさに対応したものを容易且つ安価に作製することができる。
【0035】
このように、飛翔体11は緩衝材18を介して中空部17内に保持されるため、飛翔体11の大きさによらず同じ寸法のサボ12を利用することができ、射出試験装置のランニングコストを低減することができる。
【0036】
換言すれば、サボ12の飛翔体11を保持する部分が別部材で形成されているため、容易且つ安価に作製することができる緩衝材18以外の部分の形状を共通化することができ、サボ12の加工コストを下げることができる。
【0037】
また、緩衝材18を形成する発泡樹脂は、多孔質であり、サボ本体16を形成する高分子材料と比べて低密度である(質量が小さい)。
【0038】
そのため、中空部17を緩衝材18で満たすことで、サボ12を全て高分子材料で形成した場合に比べて、サボ12が分離板15に衝突した際に分離板15に与える衝撃を小さくすることができる。
【0039】
特に、本実施の形態のように、細長い形状の飛翔体11を用いる場合には、これを確実に保持させるため、射出方向に長尺化した大型のサボ12を用いる必要があり、衝突の際に分離板15に与える衝撃も大きくなる。
【0040】
しかし、サボ12の大部分を緩衝材18で形成することにより、サボ12の質量を小さくすることができ、衝突の際に分離板15に与える衝撃を小さくして、分離板15の損傷を防止することができる。
【0041】
なお、サボ12の全体積のうち緩衝材18が占める割合を増やすほど、衝突の際に分離板15に与える衝撃が小さくなり、分離板15の損傷を効果的に防止することができる。
【0042】
そのため、サボ本体16の強度を保つことができる程度に中空部17を大きく形成し、その中空部17内を緩衝材18で満たした構成とすることが好ましい。
【0043】
再び図1を参照し、発射管13は、その長手方向に沿って複数(図1(a)では、3つ)のサポート柱20に支持されており、その中心が略一直線上になるようにされる。発射管13の射出方向後端には、加速エネルギ供給系21が接続される。
【0044】
加速エネルギ供給系21は、ガスを蓄圧するための蓄圧容器22と、蓄圧容器22にガスを供給するガスボンベ23と、発射管13の射出方向後端に接続されるバルブ24と、からなる。
【0045】
蓄圧容器22に供給するガスとしては、例えばヘリウム(He)や窒素(N2)を用いる。不活性ガスでは分子量の小さいヘリウムが最も加速しやすいため好適である。
【0046】
バルブ24は、例えば、電磁バルブからなる。蓄圧容器22内にガスを蓄圧した後、電磁バルブを一気に開放することにより、発射管13の射出方向後端に収容されたサボ12が加速される。
【0047】
加速エネルギ供給系21と発射管13とはフランジ部25を介して接続される。
【0048】
発射管13の射出方向後端に飛翔体11を保持したサボ12を設置する際には、フランジ部25を境に加速エネルギ供給系21と発射管13とを分離させ、発射管13の射出方向後端の飛翔体設置部26にサボ12を設置する。そのため、加速エネルギ供給系21は、図示左右方向に移動可能にされる。
【0049】
発射管13の射出方向先端と標的14は、より少ない加速エネルギで飛翔体11を射出するために、空気抵抗のない真空チャンバ27内に収容される。
【0050】
真空チャンバ27の外側にはレーザや高速度カメラ等、衝突現象を捉えるための機器が設置されている。更に、真空チャンバ27の側壁には、観測用の窓28が設けられる。
【0051】
また、発射管13の射出方向先端部にはシール部(例えば、パッキン等)を有するシールフランジ29が形成されている。
【0052】
発射管13の射出方向先端を真空チャンバ27の側壁に形成された挿入孔に挿入すると共に、シールフランジ29を側壁にネジ止めすることにより、発射管13の射出方向先端は真空チャンバ27内に密閉されて収容される。
【0053】
これにより、発射管13内も真空引きされ、発射管13内で飛翔体11を保持したサボ12が十分に加速されるようになる。
【0054】
本実施の形態では、一例として、細長い金属棒からなる飛翔体11を真っ直ぐに射出し、これを標的14に高速で打ち込んで衝突させ、飛翔体11の貫通性能や標的14の耐貫通性能を調査するための試験を対象とする。
【0055】
飛翔体11として、細長い金属棒を用いるのは、標的14を貫通させるためには高密度材料からなる飛翔体11を用いるのが有効であるからである。
【0056】
飛翔体11とサボ12とを分離するための分離板15には、サボ12よりも小さく飛翔体11が通過することができるような大きさの貫通孔30が形成される。
【0057】
そのため、加速されたサボ12は貫通孔30の外周部分に衝突し、サボ12から飛翔体11が分離されて標的14に衝突する。
【0058】
分離板15は、サボ12の衝撃力に対し健全性を有する材料及び設計にて形成される。
【0059】
さて、本実施の形態に係る射出試験装置10は、射出試験装置の小型化を実現することができ、且つ、射出された飛翔体の姿勢を保持して再現性の良い射出試験を低価格で行えるものである。
【0060】
そのために、射出試験装置10は、分離板15でサボ12と分離された後の飛翔体11の姿勢変化を抑制する姿勢制御構造31を備える。姿勢制御構造31は、分離板15の射出方向先端側に設けられる。
【0061】
分離板15は、サボ12から分離された飛翔体11を、後述する姿勢制御構造31のガイドレール33で囲繞された部分34に誘導する、射出方向先端側に先細りのガイド孔32(貫通孔30と兼用)を備えることが好ましい。
【0062】
これにより、飛翔体11とサボ12との分離時に飛翔体11の姿勢に多少の傾きがある場合でも、飛翔体11を姿勢制御構造31にスムーズに誘導することができる。
【0063】
また、サボ12を受けてサボ12から飛翔体11を分離させるために、ガイド孔32の射出方向後端側の径は、サボ12の外径よりも小さく、且つ、飛翔体11の外径よりも大きく形成される。
【0064】
図3(a)、(b)に示すように、姿勢制御構造31は、飛翔体11の軌道Xを囲繞するように設けられ、飛翔体11の姿勢を拘束しつつその軌道Xを強制するガイドレール33と、ガイドレール33で囲繞された部分34の内径が可変となるように、ガイドレール33を動径方向に可動自在で、任意の半径方向位置で角棒36を半径方向及び円周方向に固定支持する支持機構35と、を備える。
【0065】
ガイドレール33は、少なくとも3本(図3では4本)の角棒36を飛翔体11の軌道Xを囲繞するように組んで構成される。
【0066】
このとき、角棒36の幅Wを広くすることで(図4(a))、角棒36の幅Wを狭くした場合に比べて(図4(b))、飛翔体11が角棒36の隙間37から外れにくくなる。
【0067】
つまり、角棒36の幅Wを広くすることで、飛翔体11がガイドレール33の途中で本来想定した軌道から逸れるような事態を防止することができる。
【0068】
また、飛翔体11と角棒36とが面接触するような場合には、即ち飛翔体11が断面多角形状等である場合には、角棒36の角部で飛翔体11を拘束するようにするとガイドレール33と飛翔体11との接触面積を小さくすることができ、ガイドレール33と飛翔体11との接触による加速効率の低下を防止することができる。
【0069】
なお、ガイドレール33は角棒36で構成されたものに限定されず、例えば、少なくとも3本の丸棒を用いて飛翔体11の姿勢を拘束しつつその軌道Xを強制するようにしても良い。
【0070】
このように、ガイドレール33を丸棒で構成することにより、飛翔体11の断面形状が円形であっても多角形状であっても、ガイドレール33と飛翔体11との接触面積を小さくすることが可能になり、ガイドレール33と飛翔体11とが接触することによる加速効率の低下を防止することができる。
【0071】
つまり、ガイドレール33は、飛翔体11の加速効率を低下させないような構成であれば、どのようなものでも構わない。
【0072】
なお、飛翔体11の加速効率を低下させないという観点から考えれば、飛翔体11と接触するガイドレール33の内面には、摩擦係数を低下させるためにフッ素樹脂加工等が施されていることが好ましい。
【0073】
また、ガイドレール33を角棒36や丸棒で構成することにより、ガイドレール33に隙間37が形成され、その隙間37からガイドレール33内を視認することができるようになるため、射出試験中に飛翔体11がガイドレール33内で停止した場合等においても、目視により原因を迅速に究明することができる。
【0074】
なお、射出試験では飛翔体11の速度等を計測するためのトリガとして、射出された飛翔体11によって断線されるトリガ線を設けることがあるが、角棒36や丸棒で構成したガイドレール33は隙間37があるため、その隙間37にトリガ線を配線することが可能になる。
【0075】
また、外周に羽根が形成されているような矢羽根形状の飛翔体11を射出する場合であっても、その羽根がガイドレール33の隙間37の位置に一致するように射出すれば、飛翔体11を回転させることなく、毎回、略同じ姿勢で飛翔体11を標的14に衝突させることができる。
【0076】
ガイドレール33の長さは、飛翔体11の長さの2倍から3倍以上あることが望ましい。ガイドレール33の長さが飛翔体11の長さに比べて短い場合や、飛翔体11の長さと同程度であると、飛翔体11の姿勢を十分に拘束することができず、所期の目的を達成することができなくなるためである。
【0077】
また、ガイドレール33の射出方向先端から標的14までの距離が短い方が衝突の直前まで飛翔体11を拘束することができるため、この距離はなるべく小さい方が好ましい。
【0078】
但し、ガイドレール33の射出方向先端が標的14に近づき過ぎると、飛翔体11が衝突後にガイドレール33に跳ね返ってガイドレール33が損傷したり、飛翔体11が標的14に衝突した後に姿勢を変えた場合にガイドレール33と干渉したり、また衝突時の様子の撮影が困難になったりする虞があるため、ガイドレール33の射出方向における位置は飛翔体11の長さ以上で試験環境に応じて適宜調整する必要がある。
【0079】
ガイドレール33は、飛翔体11に比べて柔らかい材料からなるか、又は飛翔体11に比べて硬い材料からなる。
【0080】
飛翔体11の姿勢を確実に保持するためには、飛翔体11に比べて硬い材料からなるガイドレール33を用いることが好ましいが、飛翔体11が柔らかい材料からなり、ガイドレール33との接触によって飛翔体11に変形が生じる場合等は、射出試験の再現性を向上させるために、飛翔体11に比べて柔らかい材料からなるガイドレール33を用いることが望ましい。
【0081】
支持機構35は、ガイドレール33を束ねる支持枠38と、支持枠38の外側から内側に向かって進退自在に挿入され、支持枠38の内側に位置する先端部39にガイドレール33が取り付けられる棒状部材40と、を備える。
【0082】
支持枠38は、棒状部材40を介してガイドレール33を支持するものであり、ガイドレール33の長手方向に亘って少なくとも2つ(図3では3つ)設けられる。これにより、ガイドレール33を全長に亘って支持することができる。
【0083】
本実施の形態では、ガイドレール33が4本の角棒36で構成されているため、これら角棒36が支持枠38に進退自在に挿入されて取り付けられた4つの棒状部材40で支持され、これによってガイドレール33が全体として支持枠38に支持されることになる。
【0084】
なお、支持枠38の設置数を多くすると、ガイドレール33をより多くの箇所で支持することができるようになるため、ガイドレール33で囲繞された部分34の内径を全長に亘ってより細かく調整することが可能になる。
【0085】
但し、支持枠38の設置数を増やし過ぎると、調整箇所が増えて調整が煩雑になるため、支持枠38の設置数は求められる試験精度によって適宜調整することが好ましい。
【0086】
図5(a)に示すように、棒状部材40はネジ構造41によって進退自在とされる。ネジ構造41は、棒状部材40に形成された雄ネジ部42と、支持枠38に形成された雌ネジ部43と、を備える。
【0087】
この場合には、棒状部材40の先端部39が角棒36に対して回転自在であり、且つ任意の半径方向位置で角棒36を半径方向及び円周方向に固定できるように取り付けられる。
【0088】
また、図5(a)において、棒状部材40を半径方向に移動させるためには棒状部材40を回転させねばならないので、角棒36と棒状部材40の先端部39は回転に対して抵抗できないように連結されている必要がある。
【0089】
ネジ構造41を用いた構成によれば、棒状部材40を回転させることで、棒状部材40が支持枠38に対して進退され、それに伴って角棒36を動径方向に可動させることができる。
【0090】
特に、この構造では、ネジ構造41により棒状部材40と角棒36とが一体に可動するため、ガイドレール33で囲繞された部分34の内径を正確に微調整することが可能になる。
【0091】
また、図5(b)に示すように、棒状部材40は弾性部材44によって進退自在とされても良い。
【0092】
この場合には、締結部材45、46が支持枠38を内側と外側から挟み込むように棒状部材40に締結され、支持枠38の内側に位置する締結部材45と支持枠38の内周面との間に弾性部材44が設けられる。
【0093】
そして、この弾性部材44によって締結部材45が支持枠38の内側に付勢され、更に角棒36が支持枠38の内側に付勢される。
【0094】
また、支持枠38には、先に述べたような雌ネジ部43は形成されておらず、単にキリ孔47が形成されている。そして、棒状部材40の先端部39は角棒36に固定して取り付けられる。
【0095】
締結部材45、46と弾性部材44とを用いた構造によれば、締結部材45、46を回転させることで、棒状部材40は回転することなく支持枠38に対して進退され、それに伴って角棒36を動径方向に可動させることができる。
【0096】
通常、ガイドレール33で囲繞された部分34の内径は、飛翔体11の直径と同等又はそれよりも若干大きくされるが、弾性部材44を用いた構造では、飛翔体11が通過する際にガイドレール33で囲繞された部分34の内径が飛翔体11の直径に合わせて変化するため、飛翔体11の直径よりも若干小さくしておくと良い。
【0097】
ガイドレール33は、ガイドレール33で囲繞された部分34の内径が射出方向先端側に先細りとなるように支持されることが好ましい。これにより、飛翔体11がスムーズに本来想定した軌道に誘導される。
【0098】
なお、弾性部材44を用いた構造を採用する場合には、弾性部材44のばね定数を射出方向後端側から射出方向先端側にかけて徐々に大きくし、射出方向先端側に行くほど飛翔体11を拘束する力を大きくさせることでも、ガイドレール33で囲繞された部分34の内径を射出方向先端側に先細りとなるようにした場合と同様の効果を得ることができる。
【0099】
この射出試験装置10を用いた射出試験を説明する。
【0100】
先ず、試験前に、フランジ部25を境に発射管13と加速エネルギ供給系21とを分離させ、発射管13の射出方向後端の飛翔体設置部26に飛翔体11を保持したサボ12を収容して設置する。
【0101】
その後、真空チャンバ27内を所望の真空度に真空引きし、またガスボンベ23から蓄圧容器22にガスを供給する。真空引きにより、真空チャンバ27内及びバルブ24までの発射管13内が真空にされる。
【0102】
蓄圧容器22内にサボ12を所望の速度で加速するのに十分なガスが充填されたら、バルブ24を一気に開放して、充填されたガスにて発射管13の射出方向後端に収容されたサボ12を加速する。
【0103】
つまり、試験環境に応じて、蓄圧容器22内の圧力や、真空チャンバ27内及びバルブ24までの発射管13内の真空度等を適宜調整することにより、サボ12を所望の速度で加速することができる。
【0104】
発射管13内で加速されたサボ12は、飛翔体11を保持した状態で発射管13から射出された後、分離板15に衝突して止められ、サボ12から飛翔体11が分離される。
【0105】
このとき、図6(a)に示すように、飛翔体11の軌道Xが本来想定した軌道X0とズレている場合でも、図6(b)に示すように、分離板15のガイド孔32によって飛翔体11の軌道Xが本来想定した軌道X0に誘導される。
【0106】
また、飛翔体11とサボ12とを分離させるときに、緩衝材18が分離板15により剪断され、その剪断された緩衝材18の一部が飛翔体11と共に標的14側に飛行してくる場合もあるが、緩衝材18は密度が極めて小さいため、飛翔体11の射出試験にはほとんど影響を与えることはない。
【0107】
そして、ガイド孔32を通じてガイドレール33内に誘導された飛翔体11は、ガイドレール33で周囲を拘束されつつ飛行する。この拘束によってガイドレール33の脱出後も飛翔体11の姿勢が保持され、この状態のまま標的14に衝突する。
【0108】
その衝突後の飛翔体11及び標的14、又はレーザや高速度カメラ等の各種機器から得られた情報を元に飛翔体11の貫通性能や標的14の耐貫通性能等を調査する。
【0109】
繰り返し試験を行う場合には、分離板15で停止されて真空チャンバ27内に残留したサボ12や緩衝材18を除去し、再び発射管13と加速エネルギ供給系21とを分離させ、発射管13の射出方向後端の飛翔体設置部26に飛翔体11を保持した新たなサボ12を収容した後、試験を行う。
【0110】
このように、本発明によれば、飛翔体11の寸法によらず、同一の部材で構成された射出試験装置10を利用することができ、また分離板15を用いて飛翔体11とサボ12とを分離させているため、飛翔体11とサボ12とを分離させるための分離区間を確保する必要がなく、射出試験装置10の小型化を実現することができ、且つ、射出された飛翔体11の姿勢を保持して再現性の良い射出試験を低価格で行える姿勢制御構造31及び射出試験装置10を提供することができる。
【0111】
なお、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0112】
例えば、姿勢制御構造31の強度によっては、図1(b)や図6(a)、(b)に示すように、姿勢制御構造31を支持する柱48を設けても良い。
【符号の説明】
【0113】
10 射出試験装置
11 飛翔体
12 サボ
13 発射管
14 標的
15 分離板
16 サボ本体
17 中空部
18 緩衝材
19 溝
20 サポート柱
21 加速エネルギ供給系
22 蓄圧容器
23 ガスボンベ
24 バルブ
25 フランジ部
26 飛翔体設置部
27 真空チャンバ
28 窓
29 シールフランジ
30 貫通孔
31 姿勢制御構造
32 ガイド孔
33 ガイドレール
34 ガイドレールで囲繞された部分
35 支持機構
36 角棒
37 隙間
38 支持枠
39 棒状部材の先端部
40 棒状部材
41 ネジ構造
42 雄ネジ部
43 雌ネジ部
44 弾性部材
45 締結部材
46 締結部材
47 キリ孔
48 柱
X 飛翔体の軌道
0 本来想定した軌道
W 角棒の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6