(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空気導入手段により導入される空気の流れの前記流路切替手段よりも上流に配置され、前記空気を除湿する除湿手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【背景技術】
【0002】
デシカント空調システムは、除湿剤であるデシカント材(デシカント部材)を用いて空調を行なうシステムである。
図8は、従来技術にかかるデシカント空調システムの構成を示す説明図である。従来技術にかかるデシカント空調システム800には、屋外から導入された空気が通る空気導入流路810aと、空調対象室内から屋外へと空気が排出される空気排出通路810bとが設けられている。
【0003】
空気導入流路810aと再生用流路810bとには、屋外に近い方から順にデシカントローター801および顕熱交換ローター802が設けられている。デシカントローター801と顕熱交換ローター802とは常時回転し、空気導入流路810aを通過する空気および再生用流路810bを通過する空気と交互に接するようになっている。
【0004】
ブロアファン803aの作用によって屋外から導入された空気は、空気導入流路810aにおいてデシカントローター801と接して、空気中の湿度が除去される。除湿された空気は、顕熱交換ローター802と接して所望の温度に調整され、快適空気として空調対象室内に供給される。
【0005】
一方、空調対象室内からの還気は、ブロアファン803bの作用によって再生用流路810bに導入される。空調対象室内からの還気は、再生用流路810bにおいて顕熱交換ローター802と接して顕熱交換ローター802と熱交換を行なう。熱交換された空気は、空気加熱器803によって加熱される。空気加熱器803は、各種の排熱や太陽熱などを熱源として利用することができる。空気加熱器803によって加熱された空気は、デシカントローター801と接してデシカントローター801内の水分を除去し(デシカントローターの再生を行ない)、屋外へと排出される。
【0006】
たとえば、下記特許文献1および2は、従来技術にかかるデシカント空調システムを車両用空調装置に適用したものであり、車室内への空気導入用となる空気導入径路と車外への空気排出用となる再生用径路とに跨って、吸湿ローターが回転可能に配設される。吸湿ローターは、表面に吸湿材が塗布されるとともに空気が通過可能とされている。第1ファンによって空気導入径路内に導入された空気が、吸湿ローターを通過するときに除湿され、この後冷却用熱交換器、暖房用熱交換器を通って適温とされた後、車室内に導入される。第2ファンによって再生用径路内に導入された空気が、加熱用熱交換器を通って加温され、この後吸湿ローターを通過するときに吸湿している水分を奪った後,車外に排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来技術にかかるデシカント空調システムは、デシカントローターの再生を行なう必要があることから、空気導入流路および再生用流路の2つの流路が必要となる。また、この2つの流路は隣接して設けられる必要がある。このため、デシカント空調システムを車両用空調装置に適用しようとすると、車外から車内へと空気を導入する空気導入流路と、車内から車外へと空気を排出する空気排出流路とを隣接して設ける必要がある。
【0009】
しかしながら、このような構造を実現するためには、車両のHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)構造が複雑になるとともに、HVAC構造が大型となってしまうという問題点がある。車両のスペースは限られており、このような大型なHVAC構造の導入は現実的ではない。また、HVAC構造が複雑になると車両の製造コストが増大するため、やはりデシカント空調システムの車両用空調装置への適用が現実的ではなくなってしまう。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、再生経路を必要としないデシカント空調システムを適用した車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる車両用空調装置は、車外の空気を車室内に導入する空気導入手段と、前記空気を加温する加温手段と、前記空気導入手段によって導入された前記空気の流路を、前記加温手段を経由して前記車室内に至る第1の流路または前記加温手段を経由せずに前記車室内に至る第2の流路のいずれかに切り替える流路切替手段と、除湿部材を、前記第1の流路の前記加温手段の上流、前記第1の流路の前記加温手段の下流、前記第2の流路中のいずれかの位置に切り替える除湿部材切替手段と、前記流路切替手段による前記流路の切替および前記除湿部材切替手段による前記除湿部材の位置の切替を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記車室内において暖房を行なう場合は前記流路切替手段により前記空気の流路を前記第1の流路に切り替えるとともに前記除湿部材切替手段により前記除湿部材の位置を前記第1の流路の前記加温手段の上流に切り替え、前記車室内において冷房を行なう場合は前記流路切替手段により前記空気の流路を前記第2の流路に切り替えるとともに前記除湿部材切替手段により前記除湿部材の位置を前記第2の流路中に切り替え、前記除湿部材の再生を行なう場合は前記流路切替手段により前記空気の流路を前記第
1の流路に切り替えるとともに前記除湿部材切替手段により前記除湿部材の位置を前記第1の流路の前記加温手段の下流に切り替えることを特徴とする。
また、請求項2の発明にかかる車両用空調装置は、前記空気導入手段により導入される空気の流れの前記流路切替手段よりも上流に配置され、前記空気を除湿する除湿手段をさらに備えることを特徴とする。
また、請求項3の発明にかかる車両用空調装置は、前記除湿部材の再生は、前記車両用空調装置が搭載された車両の停車中に行なわれることを特徴とする。
また、請求項4の発明にかかる車両用空調装置は、前記車両用空調装置が搭載された車両は、動力の少なくとも一部に電力を用いて走行する電動車であり、前記除湿部材の再生は、前記電動車の充電中に行なわれることを特徴とする。
また、請求項5の発明にかかる車両用空調装置は、前記車両用空調装置は、さらにハウジングを備え、前記流路切替手段は、前記ハウジング内に移動可能に配置されたエアミックスダンパーを含んで構成され、前記第1の流路と前記第2の流路とは、前記エアミックスダンパーの移動位置が切り替えられることにより前記ハウジング内に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、制御手段によって流路の切り替えおよび除湿部材の位置の切り替えを行なうことによって、車両用空調装置における暖房運転、冷房運転および再生運転を行なう。これにより、除湿部材を用いた空調システムにおいて、再生用の流路を設ける必要がなくなり、設置スペースに限りがある車両用空調装置に対しても除湿部材を用いた空調システム(デシカント空調システム)が適用可能となる。
請求項2の発明によれば、除湿性能がある除湿部材に加えて除湿手段を備えたので、車両用空調装置の空調能力をより一層向上させることができる。
請求項3の発明によれば、車両用空調装置が搭載された車両の停車中に除湿部材の再生(再生運転)を行なうので、ユーザが乗車していない可能性が高いときに再生運転を行なうことができ、再生運転で生じる多湿空気にユーザが接触することを避けることができる。
請求項4の発明によれば、車両用空調装置が搭載された車両が電動車である場合、再生運転は、電動車の充電中に行なう。充電終了までの時間は車両を使用しない可能性が高いので、ユーザが乗車していない可能性が高いときに再生運転を行なうことができるとともに、再生運転に十分な時間が確保することができる。また、再生運転を車両の充電中に行なうことによって、再生運転に必要な電力を確保しやすくすることができる。
請求項5の発明によれば、第1の流路と第2の流路とは、エアミックスダンパーの移動位置が切り替えられることによりハウジング内に形成されるので、従来の車両の空調システムの構成を流用することができ、デシカント空調システムを車両用空調装置に適用するに際して、設計等の変更の度合いを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる車両用空調装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる車両用空調装置100の構成を示すブロック図である。実施の形態にかかる車両用空調装置100は、ブロアファン(空気導入手段)101、ヒーターコア(加温手段)102、エアミックスダンパー(流路切替手段)103、デシカント部材(除湿部材)104、デシカント部材切替手段104M、エバポレータ(除湿手段)105、風向調整用ダンパー106、制御手段107、操作手段108、温度湿度計109によって構成される。
【0016】
ブロアファン101、ヒーターコア102、エアミックスダンパー103、デシカント部材切替手段104M、エバポレータ105、風向調整用ダンパー106、操作手段108は、それぞれ制御手段107と接続されている。制御手段107は、操作手段108を介して入力された空調設定(たとえば温度設定など)および温度湿度計109によって測定された測定値に基づいて、ブロアファン101、ヒーターコア102、エアミックスダンパー103、デシカント部材切替手段104Mエバポレータ105、風向調整用ダンパー106を制御する。
【0017】
図2は、実施の形態にかかる車両用空調装置100の構造を示す説明図である。また、
図3は、比較例にかかる車両用空調装置200の構成を示す説明図である。比較例にかかる車両用空調装置200は、ブロアファン201、ヒーターコア202、エアミックスダンパー203、エバポレータ205、風向調整用ダンパー206(第1の風向調整用ダンパー206a、第2の風向調整用ダンパー206b)、図示しない制御手段によって構成される。
【0018】
図2および
図3を比較すると、実施の形態にかかる車両用空調装置100では、比較例にかかる車両用空調装置200におけるエアミックスダンパー203の位置にデシカント部材104が設けられるとともに、デシカント部材104の上流側に2つのエアミックスダンパー103(第1のエアミックスダンパー103a、第2のエアミックスダンパー103b)が設けられている。この他の構成は、実施の形態にかかる車両用空調装置100と、比較例にかかる車両用空調装置200とで共通である。各構成部どうし(たとえば、ブロアファン101とブロアファン201)の機能についても、実施の形態にかかる車両用空調装置100と、比較例にかかる車両用空調装置200とで共通である。
【0019】
なお、比較例にかかる車両用空調装置200では、暖房時にはエアミックスダンパー203を位置Sf1に移動させ、ブロアファン201の作用によって供給された空気(外気)がヒーターコア202を通過するようにする。このヒーターコア202を通過した空気が車室内に供給されることによって、車室内の暖房を行なう。冷房時には、エアミックスダンパー203を位置Sf2に移動させ、ブロアファン201の作用によって供給された空気(外気)がエバポレータ205で除湿された後、ヒーターコア202を通過せずに車室内に供給されるようにする。これにより、車室内の冷房を行なう。
【0020】
図2に示した実施の形態にかかる車両用空調装置100の構造について、さらに詳細に説明する。
車両用空調装置100は、ハウジング110を備え、ブロアファン101は、車外の空気をハウジング110を介して車室内に導入する。より詳細には、ブロアファン101は、羽を回転させることによって、ダクト内で車外方向から車室内方向へと空気の流れを発生させ、車両の外部に設けられた空気取り入れ口(図示なし)からハウジング110内へと空気を導入する。ハウジング110内へと導入された空気は、さらにブロアファン101によって発生された流れに沿って、車室内方向へと送られる。ブロアファン101の回転は、たとえば制御手段107(
図1参照)によって制御される。
【0021】
ヒーターコア102は、空気を加温する。より詳細には、ヒーターコア102には、エンジンまたはヒーターなどで暖められた冷媒(または冷却水)が循環されている。ヒーターコア102では、この冷媒から、ブロアファン101の作用によってヒーターコア102内を通過する空気に対して熱を供給することによって空気を加温する。本実施の形態では、ヒーターコア102はハウジング110の上面の略中央部に設置されている。
【0022】
ハウジング110には、ブロアファン101(空気導入手段)によって導入された空気の流路を、空気導入口110aからヒーターコア202を経由して空気排出口110bに至らせ、外気を車室内に至らせる第1の流路F1と、空気導入口110aからヒーターコア202を経由せずに空気排出口110bに至らせ、外気を車室内に至らせる第2の流路F2とが設けられる。
【0023】
流路切替手段は、ブロアファン101(空気導入手段)によって導入された空気の流路を、ヒーターコア102(加温手段)を経由して車室内に至る第1の流路またはヒーターコア102(加温手段)を経由せずに車室内に至る第2の流路のいずれかに切り替える。流路切替手段は、ハウジング110内に移動可能に配置されたエアミックスダンパー103を含んで構成され、第1の流路F1と第2の流路F2とは、エアミックスダンパー103の移動位置が切り替えられることによりハウジング110内に形成される。エアミックスダンパー103は、第1のエアミックスダンパー103aと第2のエアミックスダンパー103bとを有している。
【0024】
第1のエアミックスダンパー103aは支軸103axを中心として揺動可能で、後述する
図5および
図7に示すように、第1流路F1を形成する際に起立位置Sa2とされ、
図6に示すように、第2流路F2を形成する際に倒伏位置Sa1とされる。第2のエアミックスダンパー103bは支軸103bxを中心として揺動可能で、
図5および
図7に示すように、第1流路F1を形成する際にハウジングに合わされた倒伏位置Sb1とされ、
図6に示すように、第2流路F2を形成する際にヒーターコア102の前方に突出した起立位置Sb2とされる。
【0025】
第1のエアミックスダンパー103aおよび第2のエアミックスダンパー103bを揺動させるアクチュエータとして、モータやソレノイドなどの従来公知の様々なアクチュエータが使用可能である。
【0026】
デシカント部材切替手段104M(除湿部材部材切替手段)は、デシカント部材104(除湿部材)を、第1の流路F1のヒーターコア102(加温手段)の上流である第1位置Sd1、第1の流路F1のヒーターコア102(加温手段)の下流である第2位置Sd2、第2の流路F2中の位置である第3位置Sd3のいずれかの位置に切り替える。
【0027】
デシカント部材104は、支軸104xを中心として揺動可能であり、デシカント部材104を揺動させ第1位置Sd1、第2位置Sd2、第3位置Sd3に位置させるアクチュエータとして、モータやソレノイドなどの従来公知の様々なアクチュエータが使用可能である。本実施の形態において、デシカント部材104は、ヒーターコア102の略直下に位置している。
【0028】
図4は、デシカント部材104の構造を示す説明図である。デシカント部材104は、ハニカム構造H内に空気が通過する際に、その空気から湿度(水蒸気)を除去する。空気から除去された湿度はデシカント部材104内に蓄積され、デシカント部材104の除湿性能は使用期間の経過とともに低下するが、後述する再生運転時に高温の空気がデシカント部材104内に供給される際に、デシカント部材104内に蓄積された湿度を奪うことによって、デシカント部材104の除湿性能は回復する。デシカント部材104は、たとえばシリカゲルやゼオライトなどの吸湿剤で形成されており、
図4に示すようなハニカム状の構造Hをしている。
【0029】
エバポレータ105は、エアミックスダンパー103の上流に設けられ、空気を除湿する。より詳細には、エバポレータ105は、冷媒の気化熱を利用して空気を冷却し、空気中に含まれる水蒸気を除去する。本実施の形態では、エバポレータ105はハウジング110の入口に設けられており、エアミックスダンパー103は、エバポレータ105によって除湿された空気の流路を第1の流路F1または第2の流路F2のいずれかに切り替える。なお、デシカント部材104の除湿性能が十分高い場合は、エバポレータ105を設けなくてもよい。
【0030】
風向調整用ダンパー106(第1の風向調整用ダンパー106a、第2の風向調整用ダンパー106b)は、ハウジング110内における熱交換処理が行なわれた空気を、車室内の所望の箇所から排出するための手段である。風向調整用ダンパー106の移動方向は、搭乗者による空調設定などに合わせて制御手段107によって制御される。本実施の形態では、ハウジング110の空気排出口110bの外側に、第1の風向調整用ダンパー106aと第2の風向調整用ダンパー106bとを設けている。また、ハウジング110の空気排出口110bの外側には、車室内のフロントガラス周辺に曇り取り用の空調済み空気を供給する流路111a(DEF)、車室内の搭乗者の上半身付近に空調済み空気を供給する流路111b(FACE)、車室内の搭乗者の下半身付近に空調済み空気を供給する流路111c(FOOT)の3つの流路が設けられている。
【0031】
第1の風向調整用ダンパー106aが位置Sc1の位置に移動すると、流路111a(DEF)への空調済み空気の供給は中断され、車室内のフロントガラス周辺からは空調済み空気の排出が行なわれない。また、第1の風向調整用ダンパー106aが位置Sc2の位置に移動すると、流路111b(FACE)および流路111c(FOOT)への空調済み空気の供給は中断され、車室内の搭乗者の上半身付近および下半身付近には空調済み空気の排出が行なわれない。
【0032】
また、第2の風向調整用ダンパー106bが位置Se1の位置に移動すると、流路111b(FACE)への空調済み空気の供給は中断され、車室内の搭乗者の上半身付近には空調済み空気の排出が行なわれない。また、第2の風向調整用ダンパー106aが位置Se2の位置に移動すると、流路111c(FOOT)への空調済み空気の供給は中断され、車室内の搭乗者の下半身付近には空調済み空気の排出が行なわれない。
【0033】
なお、上述したエアミックスダンパー103、デシカント部材104、風向調整用ダンパー106の移動可能領域やハウジング110の形状等は一例であり、本願発明が目的とする空気の流れを実現することができれば、これに限られるものではない。
【0034】
制御手段107(
図1参照)は、エアミックスダンパー103(流路切替手段)による流路の切替およびデシカント部材切替手段104M(除湿部材切替手段)によるデシカント部材104(除湿部材)の位置の切替を制御する。
制御手段107は、たとえば、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるECU(図示なし)が、前記CPUにより前記制御プログラムを実行することによって実現する。
【0035】
より詳細には、制御手段107は、車室内において暖房を行なう場合はエアミックスダンパー103(流路切替手段)により空気の流路を第1の流路F1に切り替えるとともにデシカント部材切替手段104M(除湿部材切替手段)によりデシカント部材104(除湿部材)の位置を第1の流路F1のヒーターコア102(加温手段)の上流である位置Sd1に切り替える。また、制御手段107は、車室内において冷房を行なう場合はエアミックスダンパー103(流路切替手段)により空気の流路を第2の流路F2に切り替えるとともにデシカント部材切替手段104M(除湿部材切替手段)によりデシカント部材104(除湿部材)の位置を第2の流路中である位置Sd3に切り替える。また、制御手段107は、デシカント部材104(除湿部材)の再生を行なう場合はエアミックスダンパー103(流路切替手段)により空気の流路を第2の流路F2に切り替えるとともにデシカント部材切替手段104M(除湿部材切替手段)によりデシカント部材104(除湿部材)の位置を第1の流路F1のヒーターコア102(加温手段)の下流である位置Sd2に切り替える。
【0036】
図5は、暖房時における車両用空調装置100の各構成の配置を示す説明図である。車室内において暖房を行なう場合、制御手段107は、空気の流路を第1の流路F1とするようにエアミックスダンパー103を切り替える。すなわち、制御手段107は、第1のエアミックスダンパー103aを起立位置Sa2、第2のエアミックスダンパー103bを倒伏位置Sb1に位置させて、車外側から流れてきた空気をヒーターコア102側に送る。また、制御手段107は、デシカント部材104の位置を第1の流路F1のヒーターコア102の上流に移動させる。すなわち、制御手段107は、デシカント部材104をヒーターコア102の空気導入口110a側の平面側である位置Sd1に移動させる。
【0037】
これにより、ブロアファン101の作用によって供給された空気が、エバポレータ105、デシカント部材104、ヒーターコア102の順に車両用空調装置100を通過する。エバポレータ105およびデシカント部材104で除湿された空気は、ヒーターコア102によって加温され、適温空気として車室内に供給される。なお、暖房時においては、エバポレータ105をオフにしてもよい。
【0038】
図6は、冷房時における車両用空調装置100の各構成の配置を示す説明図である。車室内において冷房を行なう場合、制御手段107は、空気の流路を第2の流路F2とするようにエアミックスダンパー103を切り替える。すなわち、制御手段107は、第1のエアミックスダンパー103aを倒伏位置Sa1に、第2のエアミックスダンパー103bを起立位置Sb2に位置させて、車外側から流れてきた空気をヒーターコア102側に送らないようにする。また、制御手段107は、デシカント部材104を第2の流路F2に移動させる。すなわち、制御手段107は、デシカント部材104をハウジング110の底面に対して鉛直方向である位置Sd3に移動させる。
【0039】
これにより、ブロアファン101の作用によって供給された空気が、エバポレータ105、デシカント部材104の順に車両用空調装置100を通過する。エバポレータ105およびデシカント部材104で除湿され、体感温度が低くなった空気は、適温空気として車室内に供給される。
【0040】
なお、
図5に示した暖房時における配置および
図6に示した冷房時における配置は、それぞれ最も暖房または冷房の出力を上げているとき(いわゆるMAX_HOTやMAX_COOL)の配置であり、その時々に要求される出力に応じて、エアミックスダンパー103の角度が制御される。
【0041】
図7は、再生運転時における車両用空調装置100の各構成の配置を示す説明図である。上述のように、デシカント部材104は、空気から除去した湿度を蓄積するため、使用期間の経過とともに除湿性能が低下する。再生運転では、高温の空気をデシカント部材104内に供給して、デシカント部材104内に蓄積された湿度を奪うことによって、デシカント部材104の除湿性能を回復させる。
【0042】
再生運転を行なう場合、制御手段107は、空気の流路を第1の流路F1とするようにエアミックスダンパー103を切り替える。すなわち、制御手段107は、第1のエアミックスダンパー103aを起立位置Sa2、第2のエアミックスダンパー103bを倒伏位置Sb1に位置させて、車外側から流れてきた空気をヒーターコア102側に送る。また、制御手段107は、デシカント部材104を第1の流路F1のヒーターコア102の下流に移動させる。すなわち、制御手段107は、デシカント部材104をヒーターコア102の空気排出口110b側の平面側である位置Sd2に移動させる。
【0043】
これにより、ブロアファン101の作用によって供給された空気が、エバポレータ105、ヒーターコア102、デシカント部材104の順に車両用空調装置100を通過する。ヒーターコア102によって加温された空気がデシカント部材104を通過することによって、デシカント部材104内に蓄積された湿度が奪われ、デシカント部材104の除湿性能が回復する。
【0044】
なお、デシカント部材104を通過した空気は、デシカント部材104に蓄積されていた湿度を大量に含んだ多湿空気である。この多湿空気は、たとえばアウトレットと呼ばれる換気用のダクトから排出する。このため、再生運転終了後も、ブロアファン101によって車外の空気を導入して排気を促すようにする。アウトレットの位置は車種によって異なるが、たとえば後席側に設けられたアウトレットから多湿空気を排出させるようにする。
【0045】
また、デシカント部材の再生(再生運転)は、たとえば車両用空調装置100が搭載された車両の停車中に行なうようにする。車両の停車中、すなわちユーザが乗車していないときに再生運転を行なうことによって、再生運転で生じる多湿空気にユーザが接触することを避けることができる。また、たとえばユーザがあらかじめ車両の走行開始時間を指定して、その時間までに車内を所望の空調状態にしておく、いわゆる「お迎え空調機能」を有する車両においては、お迎え空調機能の稼働中(または稼働開始前)に再生運転を行なってもよい。これにより、ユーザが確実に乗車していない時間帯に再生運転を行なうことができ、再生運転で生じる多湿空気にユーザが接触する可能性をより低減させることができる。
【0046】
また、車両用空調装置100が搭載された車両が、動力の少なくとも一部に電力を用いて走行する電動車である場合、再生運転は、電動車の充電中に行なうようにしてもよい。充電中であれば、充電終了までの時間は車両を使用しない可能性が高く、再生運転に十分な時間が確保できる可能性が高いためである。また、再生運転を車両の充電中に行なうようにすれば、再生運転に必要な電力を確保しやすくすることができる。充電終了予定時間に合わせて、再生運転を行なってもよい。
【0047】
以上説明したように、実施の形態にかかる車両用空調装置100によれば、制御手段107によってエアミックスダンパー103およびデシカント部材104の位置を切り替えることによって、暖房運転、冷房運転および再生運転を行なう。これにより、デシカント部材104を用いた空調システムにおいて、再生用の流路を設ける必要がなくなり、設置スペースに限りがある車両用空調装置100に対してもデシカント部材を用いた空調システムが適用可能となる。
【0048】
また、車両用空調装置100によれば、従来の車両の空調システムの構成(
図3参照)をほとんどそのまま流用することができ、デシカント部材104を用いた空調システムを、車両用に適用するに際して、設計等の変更の度合いを低減することができる。
【0049】
また、車両用空調装置100によれば、除湿性能があるデシカント部材104に加えてエバポレータ105を備えたので、車両用空調装置の空調能力をより一層向上させることができる。また、従来の車両の空調システムと比較してエバポレータ105の出力を低減させることができるので、空調に必要なエネルギー量を低減させることができる。
【0050】
また、車両用空調装置100によれば、車両の停車中にデシカント部材104の再生(再生運転)を行なうので、ユーザが乗車していない可能性が高いときに再生運転を行なうことができ、再生運転で生じる多湿空気にユーザが接触することを避けることができる。車両用空調装置100が搭載された車両が電動車である場合、再生運転を電動車の充電中に行なうようにすれば、充電終了までの時間は車両を使用しない可能性が高いので、ユーザが乗車していない可能性が高いときに再生運転を行なうことができるとともに、再生運転に十分な時間が確保することができる。また、再生運転を車両の充電中に行なうことによって、再生運転に必要な電力を確保しやすくすることができる。