(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0018】
(実施の形態1)
まず本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の構成について説明する。
【0019】
図1を参照して、MOSFET1は炭化珪素基板10を有する。炭化珪素基板10は、n+基板11と、n+SiC層12と、pボディ13と、n+ソース領域14と、p+領域18とを有する。
【0020】
n+基板11は、炭化珪素(SiC)からなる、導電型がn型の基板である。n+基板11は、高濃度のn型不純物(導電型がn型である不純物)、たとえばN(窒素)を含んでいる。
【0021】
n-SiC層12は、SiCからなる、導電型がn型の半導体層である。n-SiC層12は、n+基板11の一方の主面11A上に、たとえば10μm程度の厚みで形成されている。n-SiC層12に含まれるn型不純物は、たとえばN(窒素)であり、n+基板11に含まれるn型不純物よりも低い濃度、たとえば5×10
15cm
-3の濃度で含まれている。
【0022】
一対のpボディ13はp型の導電型を有する。一対のpボディ13は、n-SiC層12において、n+基板11側の主面である第1の主面12Aとは反対側の主面である第2の主面12B(基板面)を含むように互いに分離して形成されている。pボディ13に含まれるp型不純物は、たとえばAl(アルミニウム)、B(ボロン)などであり、n+基板11に含まれるn型不純物よりも低い濃度、たとえば1×10
17cm
-3の濃度で含まれている。
【0023】
n+ソース領域14はn型の導電型を有する。n+ソース領域14は、第2の主面12Bを含み、かつpボディ13に取り囲まれるように、一対のpボディ13のそれぞれの内部に形成されている。n+ソース領域14は、n型不純物、たとえばP(リン)などをn-SiC層12に含まれるn型不純物よりも高い濃度、たとえば1×10
20cm
-3の濃度で含んでいる。
【0024】
p+領域18はp型の導電型を有する。p+領域18は、一対のpボディ13のうち一方のpボディ13の内部に形成されたn+ソース領域14から見て、他方のpボディ13の内部に形成されたn+ソース領域14とは反対側に、第2の主面12Bを含むように形成されている。p+領域18は、p型不純物、たとえばAl、Bなどをpボディ13に含まれるp型不純物よりも高い濃度、たとえば1×10
20cm
-3の濃度で含んでいる。
【0025】
またMOSFET1は、ゲート絶縁膜としてのゲート酸化膜15と、ゲート電極17と、一対のソースコンタクト電極16と、ソース配線19と、ドレイン電極20と、絶縁膜21とを備えている。
【0026】
ゲート酸化膜15は、第2の主面12Bに接触し、一方のn+ソース領域14の上部表面から他方のn+ソース領域14の上部表面にまで延在するようにn-SiC層12の第2の主面12B上に形成されている。ゲート酸化膜15は二酸化珪素からなっている。
【0027】
ゲート電極17は、一方のn+ソース領域14上から他方のn+ソース領域14上にまで延在するように、ゲート酸化膜15に接触して配置されている。また、ゲート電極17は、ポリシリコン、Alなどの導電体からなっている。
【0028】
ソースコンタクト電極16は、一対のn+ソース領域14上の各々から、ゲート酸化膜15から離れる向きにp+領域18上にまで延在するとともに、第2の主面12Bに接触して配置されている。そして、ソースコンタクト電極16は、たとえばチタン(Ti)原子、アルミニウム(Al)原子および珪素(Si)原子を含んでいる。ソースコンタクト電極16の詳細については後述する。
【0029】
ソース配線19aは、ソースコンタクト電極16に接触して形成されており、たとえばTi/Alなどの導電体からなっている。そして、ソース配線19aは、ソースコンタクト電極16を介してn+ソース領域14と電気的に接続されている。ソース配線19aは絶縁膜21を覆うように形成されている。また、ゲートライナー部19bはゲート電極17と接するように形成されている。
【0030】
ドレイン電極20は、n+基板11においてn-SiC層12が形成される側の主面である一方の主面11Aとは反対側の主面である他方の主面11Bに接触して形成されている。このドレイン電極20は、たとえば上記ソースコンタクト電極16と同様の構成を有していてもよいし、Niなど、n+基板11とオーミックコンタクト可能な他の材料からなっていてもよい。これにより、ドレイン電極20はn+基板11と電気的に接続されている。また、ドレイン電極20に接して、たとえばNi/Auからなる裏面パッド電極23が形成されている。
【0031】
絶縁膜21は、ゲート酸化膜15と接し、ゲート電極17を覆うように形成されている。この絶縁膜21は、たとえば二酸化珪素からなっており、ゲート電極17を外部と電気的に絶縁している。また、絶縁膜21上にパシベーション膜(図示せず)が形成されていてもよい。
【0032】
ソースコンタクト電極16として、TiおよびAlを含む電極が使用される。好ましくは、ソースコンタクト電極16として、Ti、Al、およびSiを含有する電極が使用される。ソースコンタクト電極16は、Ti、Al、およびSiを含有するオーミックコンタクト電極であることにより、p型SiC領域およびn型SiC領域のいずれに対しても接触抵抗が十分に低い。ソースコンタクト電極16は、n+ソース領域14に接触する領域からp+領域18に接触する領域にまで延在するように配置されている。
【0033】
図2を参照して、ソースコンタクト電極16とゲート酸化膜15近傍の構成について説明する。
【0034】
本実施の形態におけるMOSFET1のソースコンタクト電極16は、炭化珪素基板10上に設けられおり、二酸化珪素からなるゲート酸化膜15に接している。ソースコンタクト電極16は、
図2に示すように二酸化珪素からなる絶縁膜21に接する領域16Aを有していても構わない。ソースコンタクト電極16はTi原子およびAl原子を含んでいる。好ましくは、ソースコンタクト電極16は、Si原子をさらに含んでいる。
【0035】
ゲート電極17は、ゲート酸化膜15および絶縁膜21各々に接して設けられている。ゲート電極17はたとえばポリシリコンを含んでいる。ゲート電極17およびソースコンタクト電極16はゲート酸化膜15および絶縁膜21によって互いに絶縁されている。言い換えれば、ゲート電極17(第1の電極)およびソースコンタクト電極16(第2の電極)は二酸化珪素膜によって互いに隔てられている。
【0036】
上述のように、Alを含む金属膜をアニールして電極を形成する際に、金属膜に含まれるAlが二酸化珪素膜へ拡散する場合がある。本実施の形態において、ゲート電極17(第1の電極)およびソースコンタクト電極16(第2の電極)の間に位置するゲート酸化膜15にAlが拡散していると仮定する。本実施の形態におけるゲート酸化膜15(二酸化珪素膜)において、原子数比1%以上のAlが存在する領域λは、ゲート電極17(第1の電極)およびソースコンタクト電極16(第2の電極)の距離Dの50%以下である。より好ましくは、原子数比1%以上のAlが存在する領域λは、ゲート電極17(第1の電極)およびソースコンタクト電極16(第2の電極)の距離Dの10%以下である。具体的には、原子数比1%以上のAlが存在する領域λは0.5μm以下であり、好ましくは0.1μm以下である。Alは絶縁膜21の内部に拡散していても構わない。この場合においても、絶縁膜21(二酸化珪素膜)において、原子数比1%以上のAlが存在する領域λは、ゲート電極17(第1の電極)およびソースコンタクト電極16(第2の電極)の距離Dの50%以下である。
【0037】
次にMOSFET1の動作について説明する。ゲート電極17に閾値以下の電圧を与えた状態、すなわちオフ状態では、ゲート酸化膜15の直下に位置するpボディ13とn-SiC層12との間が逆バイアスとなり、非導通状態となる。一方、ゲート電極17に正の電圧を印加していくと、pボディ13のゲート酸化膜15と接触する付近であるチャネル領域13Aにおいて、反転層が形成される。その結果、n+ソース領域14とn-SiC層12とが電気的に接続され、ソース電極22とドレイン電極20との間に電流が流れる。
【0038】
次に、実施の形態1におけるMOSFET1の製造方法について説明する。
図5および
図6を参照して、まず基板準備工程S10(
図3)によって炭化珪素基板10が準備される。
【0039】
具体的には、まずn+SiC基板11上におけるエピタキシャル成長により、n+SiC基板11の一方の主面11A上にn-SiC層12が形成される。エピタキシャル成長は、たとえば原料ガスとしてSiH
4(シラン)とC
3H
8(プロパン)との混合ガスを採用して実施することができる。このとき、n型不純物として、たとえばN(窒素)を導入する。これにより、n+SiC基板11に含まれるn型不純物よりも低い濃度のn型不純物を含むn-SiC層12を形成することができる。
【0040】
次に第2の主面12B上に、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着法)により二酸化珪素からなる酸化膜が形成される。そして、酸化膜の上にレジストが塗布された後、露光および現像が行なわれ、所望のpボディ13の形状に応じた領域に開口を有するレジスト膜が形成される。そして、当該レジスト膜をマスクとして用いて、たとえばRIE(Reactive Ion Etching;反応性イオンエッチング)により酸化膜が部分的に除去されることによって、n-SiC層12上に開口パターンを有する酸化膜からなるマスク層が形成される。その後、上記レジスト膜を除去した上で、このマスク層をマスクとして用いて、Alなどのp型不純物をn-SiC層12に対して矢印の方向にイオン注入することにより、n-SiC層12にpボディ13が形成される。次に、マスクとして使用された上記酸化膜が除去された上で、所望のn+ソース領域14の形状に応じた領域に開口を有するマスク層が形成される。そして、このマスク層をマスクとして用いて、P(リン)などのn型不純物がn-SiC層12にイオン注入により導入されることによりn+ソース領域14が形成される。次に、所望のp+領域18の形状に応じた領域に開口を有するマスク層が形成され、これをマスクとして用いて、Al、Bなどのp型不純物がn-SiC層12にイオン注入により導入されることによりp+領域18が形成される。
【0041】
次に、上記イオン注入によって導入された不純物を活性化させる熱処理が実施される。具体的には、イオン注入が実施されたn-SiC層12が、たとえばAr(アルゴン)雰囲気中において1700℃程度に加熱され、30分間程度保持される。以上により、第2の主面12Bを有する炭化珪素基板10(
図6)が準備される。
【0042】
図7および
図8を参照して、ゲート絶縁膜形成工程S20(
図3)が実施される。具体的には、まず、上記工程S10(
図3)が実施されて所望のイオン注入領域を含むn-SiC層12が形成されたn+基板11が熱酸化される。熱酸化は、たとえば酸素雰囲気中で1300℃程度に加熱し、40分間程度保持することにより実施することができる。これにより第2の主面12B上に、二酸化珪素からなる熱酸化膜15A(たとえば厚み50nm程度)が形成される。
【0043】
次に、
図8を参照して、ゲート電極形成工程S40(
図3)が実施される。この工程では、たとえば導電体であるポリシリコン、Alなどからなるゲート電極17が、一方のn+ソース領域14上から他方のn+ソース領域14上にまで延在するとともに、熱酸化膜15Aに接触するように形成される。ゲート電極17の素材としてポリシリコンを採用する場合、当該ポリシリコンは、Pが1×10
20cm
-3を超える高い濃度で含まれるものとすることができる。
【0044】
次に、
図9を参照して、絶縁膜形成工程S60(
図3)が実施される。この工程では、熱酸化膜15Aと接し、かつゲート電極17を覆うように、たとえば二酸化珪素からなる絶縁膜21がCVDにより形成される。次に、
図10を参照して、ソース電極部の開口部26が形成される。具体的には、p+領域18およびn+ソース領域14の一部が露出するように、絶縁膜21および熱酸化膜15Aの一部が除去される。
【0045】
図11および
図12を参照して、オーミック電極形成工程S80(
図3)が行われる。
具体的には、まず、金属膜形成工程S81(
図4)によって、たとえばSi原子、Ti原子、およびAl原子とを含有する金属膜50が形成される。まず、たとえばp+領域18およびn+ソース領域14の一部が露出するようなレジストパターンを形成し、金属膜50が基板全面にたとえばスパッタリングにより形成される。その後、当該レジストパターンをたとえばリフトオフすることにより、ゲート酸化膜15に接し、かつp+領域18およびn+ソース領域14に接する金属膜50が形成される。なお、金属膜50の形成はドライエッチングなどの他の方法により行われてもよい。
【0046】
好ましくは、金属膜50は、Ti層51と、Al層52と、Si層53とが積層された積層膜である。
図22を参照して、金属膜形成工程S81(
図4)では、Ti層51が二酸化珪素からなるゲート酸化膜15および炭化珪素基板10のn+ソース領域14およびp+領域18と接して形成されてもよい。Al層52はTi層51上に形成されてもよく。Si層53はAl層52上に形成されてもよい。言い換えれば、Al層52は、Ti層51およびSi層53の間に形成されてもよい。
【0047】
好ましくは、Ti層51の膜厚は15nm以上25nm以下であり、Al層52の膜厚は20nm以上60nm以下であり、Si層53の膜厚は15nm以上35nm以下である。なお、金属膜50は、Tiを含む部分と、Alを含む部分と、Siを含む部分とが混合して形成された混合膜であっても構わない。
【0048】
図11を参照して、この工程(S81:
図4)では、SiC基板11と接するようにドレイン電極20も形成される。ドレイン電極20としてたとえばNi電極が用いられる。
【0049】
次に、金属膜加熱工程S82(
図4)が実施される。この工程S82(
図4)において、アニールによって金属膜50と炭化珪素基板10との電気的接続がオーミックとされる。また、この工程S82(
図4)は、Arなどの不活性ガスおよび酸素ガス雰囲気中において行われる。
【0050】
具体的には、
図32を参照して、時間A0から時間A1にかけて金属膜50の温度が温度T0から温度T1にまで第1の温度勾配で昇温される。温度T0は300℃未満の温度であり、たとえば室温である。温度T1は300℃以上450℃以下の温度である。第1の温度勾配は、時間A1における温度T1と時間A0における温度T0との温度差(T1−T0)を金属膜50が温度T0から温度T1になるまでに要した時間(A1−A0)で除した値である。たとえば、金属膜50の温度は室温の温度T0から300℃の温度T1まで2〜10分程度で昇温される。つまり、第1の温度勾配はたとえば毎分30〜150℃程度である。
【0051】
金属膜50の温度が300℃以上450℃以下になった後、金属膜50を300℃以上450℃以下の温度領域内において第2の温度勾配で保持する。金属膜50を300℃以上450℃以下の温度領域内で保持する時間は、たとえば1分以上であり、好ましくは2分以上である。第2の温度勾配は、時間A2における温度T2と時間A1における温度T1との温度差(T2−T1)を金属膜50が温度T1から温度T2になるまでに要した時間(A2−A1)で除した値である。
図32に示すように、第2の温度勾配は、第1の温度勾配よりも小さい。また、金属膜50の温度は300℃以上450℃以下の温度領域内において保持されていればよく、当該温度範囲内であれば、金属膜50の温度が変動しても構わない。好ましくは、
図33に示すように、金属膜50の温度は、時間A1から時間A2の間、300℃以上450℃以下の温度範囲内において一定の温度に維持される。たとえば、金属膜50の温度は300℃で2分間維持される。つまり、第2の温度勾配はたとえば毎分0℃程度である。
【0052】
金属膜50の温度が300℃以上450℃で一定時間保持された後、金属膜50は、300℃以上450℃以下の温度T2から500℃以上の温度T3にまで第3の温度勾配で昇温される。第3の温度勾配は、第2の温度勾配よりも大きい。好ましくは、金属膜50は、300℃以上450℃以下の温度T2から700℃以上の温度T3にまで昇温され、より好ましくは1000℃以上の温度T3まで昇温される。たとえば、金属膜50は、300℃以上450℃以下の温度T2から1000℃の温度T3にまで2分程度で昇温される。つまり、第3の温度勾配はたとえば毎分300℃程度である。これにより、n+ソース領域14およびp+領域18とオーミック接触し、かつ二酸化珪素からなるゲート酸化膜15と接するソースコンタクト電極16(
図12)が完成する。
【0053】
なお、第1の温度勾配、第2の温度勾配および第3の温度勾配は、ある時間帯における始点の温度および終点の温度の差から計算される値である。たとえば、時間A0から時間A1の間において一定の温度勾配で金属膜50が昇温される必要はなく、時間A0から時間A1の間で金属膜50の温度が上下に変動してもよい。
【0054】
金属膜加熱工程S82(
図4)は、金属膜50を300℃以上450℃以下の温度領域内において第2の温度勾配で一定時間保持した後であって、金属膜50の温度を500℃以上の温度T3まで昇温する前に、金属膜50をウェットエッチングすることにより金属膜50からAl(アルミニウム)を除去する工程を有していてもよい。具体的には、金属膜50を300℃以上450℃以下の温度領域内において一定時間保持した後に、金属膜50をアニール装置から取り出す。その後、金属膜50をウェットエッチングすることによりAlを除去する。Alの除去は、たとえばTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)溶液などの弱アルカリ溶液を用いて行うことができる。また、Alの除去は、リン酸、酢酸、硝酸などの酸性溶液やこれらの混合液を用いて行うことができる。当該溶液を用いることにより、Ti、Si、SiO
2はエッチングされず、Alだけが選択的にエッチングされる。
【0055】
次に、
図13を参照して、裏面パッド電極23が形成される。裏面パッド電極23は、ドレイン電極20と接するように形成される。裏面パッド電極23としては、たとえばNi/Auの積層膜が用いられる。裏面パッド電極23形成後、密着性向上のために、たとえば400℃の温度で20分間アニールされる。
【0056】
次に、
図14を参照して、複数のゲート電極17の内、将来ゲートライナー部が形成される絶縁膜21の一部が除去されて開口部27が形成され、ゲート電極17の表面が露出する。また、アッシングや大気中ベークなどが行われることにより、ソースコンタクト電極16およびゲート電極17の表面が酸化する。そこで、
図15を参照して、たとえば、全面RIEや逆スパッタリングによりソースコンタクト電極16およびゲート電極17の表面に形成された酸化膜29が除去される。
【0057】
次に、配線形成工程S110(
図3)によってソース配線19aおよびゲートライナー部19bが形成される。具体的には、たとえば蒸着法により、基板全面にTi/Al層が形成される。その後、たとえばRIEなどによってパターニングされ、ソースコンタクト電極16と接するソース配線19aおよびゲート電極17と接するゲートライナー部19bが形成される。以上により
図1に示すMOSFET1が完成する。
【0058】
次に、本実施の形態に係るMOSFET1の製造方法の作用効果について説明する。
本実施の形態に係るMOSFET1の製造方法によれば、Alを含む金属膜50が300℃以上450℃以下の温度領域内において保持される。これにより、Alのシリサイド化が十分に行われ、未反応のAl(つまりシリサイド化していないAl)が低減する。それゆえ、その後、金属膜を500℃以上に昇温する場合においても、Alがゲート酸化膜15と反応することを抑制することができる。結果として、ゲート酸化膜15の絶縁信頼性を向上させることができる。
【0059】
また本実施の形態に係るMOSFET1の製造方法によれば、金属膜50はSiをさらに含んでもよい。これにより、n+ソース領域およびp+領域の双方に対して低い接触抵抗を有するソースコンタクト電極16を製造することができる。
【0060】
さらに本実施の形態に係るMOSFET1の製造方法によれば、金属膜50を500℃以上の温度まで昇温する工程では、金属膜50は700℃以上の温度まで昇温される。これにより、金属膜50が炭化珪素基板10を構成する炭化珪素と反応しオーミック電極を形成することができる。
【0061】
さらに本実施の形態に係るMOSFET1の製造方法によれば、金属膜50を形成する工程は、炭化珪素基板10および二酸化珪素膜に接するようにTi層51を形成する工程と、Ti層51上にAl層52を形成する工程と、Al層52上にSi層53を形成する工程とを有する。これにより、n+ソース領域14およびp+領域18の双方に対してより低い接触抵抗を実現することができる。
【0062】
さらに本実施の形態に係るMOSFET1の製造方法によれば、金属膜50を加熱する工程は、金属膜50をウェットエッチングすることによりAlを除去する工程をさらに有する。Alを除去する工程は、300℃以上450℃以下の温度領域内において金属膜を保持する工程の後であって、金属膜を500℃以上の温度まで昇温する工程の前に行われる。これにより、Alを効果的に除去することができるので、Alが二酸化珪素と反応することを効果的に抑制することができる。
【0063】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET2の構成について
図21を参照して説明する。
【0064】
図21に示すように、実施の形態2に係るMOSFET2の構成は、ソースコンタクト電極16および絶縁膜21上に接して酸化防止層25が形成されている点において実施の形態1に係るMOSFET1の構成と異なっており、他の点においてMOSFET1の構成と同様である。
【0065】
次に、本発明の実施の形態2に係るMOSFET2の製造方法について、
図16〜
図20を参照して説明する。
【0066】
まず、実施の形態1のMOSFET1と同様に、
図5〜
図12に記載する工程が実施されて、ゲート電極17が絶縁膜21により覆われ、かつソースコンタクト電極16およびドレイン電極20が形成された基板(
図12参照)が準備される。
【0067】
次に、
図16を参照して、絶縁膜21およびソースコンタクト電極1と接するように、基板全面に酸化防止層25が形成される。酸化防止層25としては、たとえばTi/W蒸着膜が使用される。
【0068】
次に、
図17を参照して、裏面パッド電極23が形成される。裏面パッド電極23は、ドレイン電極20と接するように形成される。裏面パッド電極23としては、たとえばNi/Auの積層膜が用いられる。裏面パッド電極23形成後、密着性向上のために、たとえば400℃の温度で20分間アニールされる。
【0069】
次に、
図18を参照して、将来ゲートライナー部を形成するための開口部が形成される絶縁膜21上の酸化防止層25が除去され、ソースコンタクト電極16上の酸化防止層25は残される。なお、ゲートライナー部が形成されない絶縁膜21上には酸化防止層25が残っていても構わない。
【0070】
次に、
図19を参照して、絶縁膜21のゲートライナー部が形成される部分に開口部26が形成される。次に、
図20を参照して、開口部26内にゲートライナー部19bが形成される。ゲートライナー部19bはゲート電極17と接するように形成される。また、ソースコンタクト電極16と接する酸化防止層25と接するようにソース配線19aが形成される。ソース配線19aおよびゲートライナー部19bはたとえばTi/Al層からなる。次に、基板全面に、絶縁膜21、ゲートライナー部19bおよびソース配線19aと接するパシベーション膜28が形成される。その後、ゲートライナー部19bおよびソース配線19aの一部が開口するようにパシベーション膜28がパターニングされる。これにより、
図21に示すMOSFET2が完成する。
【0071】
(実施の形態3)
次に、本実施の形態における炭化珪素半導体装置としてのJFET(Junction Field Effect Transistor)の構成について説明する。
【0072】
図23を参照して、JFET3は、炭化珪素基板30を有する。炭化珪素基板30は、n型基板31と、第1のp型層32と、n型層33と、第2のp型層34とを有する。n型基板31は、SiCからなり、n型の導電型を有する。第1のp型層32はn型基板31上に形成されている。n型層33は第1のp型層32上に形成されている。第2のp型層34はn型層33上に形成されている。第1のp型層32は、たとえば厚み10μm程度、p型不純物の濃度7.5×10
15cm
-3程度、n型層33は、たとえば厚み0.45μm程度、n型不純物の濃度2×10
17cm
-3程度、第2のp型層34は、たとえば厚み0.25μm程度、p型不純物の濃度2×10
17cm
-3程度とすることができる。
【0073】
第2のp型層34およびn型層33には、n型層33よりも高濃度の導電型がn型である不純物(n型不純物)を含む(たとえば1×10
20cm
-3程度)第1のn型領域35および第2のn型領域37が形成されている。また、第2のp型層34およびn型層33には、第1のn型領域35および第2のn型領域37に挟まれるように、第1のp型層32および第2のp型層34よりも高濃度の導電型がp型である不純物(p型不純物)を含む(たとえば1×10
18cm
-3程度)第1のp型領域36が形成されている。すなわち、第1のn型領域35、第1のp型領域36および第2のn型領域37は、それぞれ第2のp型層34を貫通してn型層33に至るように形成されている。また、第1のn型領域35、第1のp型領域36および第2のn型領域37の底部は、第1のp型層32の上部表面(第1のp型層32とn型層33との境界部)から間隔を隔てて配置されている。
【0074】
また、第1のn型領域35から見て第1のp型領域36とは反対側には、第2のp型層34の上部表面34A(n型層33の側とは反対側の主面)から第2のp型層34を貫通してn型層33に至るように、溝部71が形成されている。つまり、溝部71の底面71Aは、第1のp型層32とn型層33との界面から間隔を隔て、n型層33の内部に位置している。さらに、溝部71の底面71Aからn型層33を貫通し、第1のp型層32に至るように、第1のp型層32および第2のp型層34よりも高濃度のp型不純物を含む(たとえば1×10
18cm
-3程度)第2のp型領域43が形成されている。この第2のp型領域43の底部は、n型基板31の上部表面(n型基板31と第1のp型層32との境界部)から間隔を隔てて配置されている。
【0075】
さらに、第1のn型領域35、第1のp型領域36、第2のn型領域37および第2のp型領域43の上部表面に接触するように、オーミックコンタクト電極としてのソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41、ドレインコンタクト電極42および電位保持コンタクト電極44がそれぞれ形成されている。そして、ソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41、ドレインコンタクト電極42および電位保持コンタクト電極44は、実施の形態1におけるソースコンタクト電極16と同様の特徴を有している。
【0076】
オーミックコンタクト電極であるソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41、ドレインコンタクト電極42および電位保持コンタクト電極44と隣接する他のオーミックコンタクト電極との間には、層間絶縁膜としての酸化膜38が形成されている。酸化膜38はたとえば二酸化珪素膜である。より具体的には、層間絶縁膜としての酸化膜38が、第2のp型層34の上部表面34A、溝部71の底面71Aおよび側壁71Bにおいて、ソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41、ドレインコンタクト電極42および電位保持コンタクト電極44が形成されている領域以外の領域全体を覆うように形成されている。これにより、隣り合うオーミックコンタクト電極の間が絶縁されている。
【0077】
さらに、ソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41およびドレインコンタクト電極42の上部表面に接触するように、ソース配線45、ゲート配線46およびドレイン配線47がそれぞれ形成され、各オーミックコンタクト電極と電気的に接続されている。ソース配線45は、電位保持コンタクト電極44の上部表面にも接触し、電位保持コンタクト電極44とも電気的に接続されている。つまり、ソース配線45は、ソースコンタクト電極39の上部表面上から電位保持コンタクト電極44の上部表面上にまで延在するように形成されており、これにより、電位保持コンタクト電極44は、ソースコンタクト電極39と同電位に保持されている。ソース配線45、ゲート配線46およびドレイン配線47は、たとえばAlなどの導電体から構成されている。ソースコンタクト電極39およびソース配線45はソース電極61を構成し、ゲートコンタクト電極41およびゲート配線46はゲート電極62を構成し、ドレインコンタクト電極42およびドレイン配線47はドレイン電極63を構成する。さらに、ソース電極61、ゲート電極62、ドレイン電極63および酸化膜38の上部表面を覆うように、パシベーション膜64が形成されている。このパシベーション膜64は、たとえば二酸化珪素からなっており、ソース電極61、ゲート電極62およびドレイン電極63を外部と電気的に絶縁するとともに、JFET3を保護する機能を有している。
【0078】
図24を参照して、ゲートコンタクト電極41およびドレインコンタクト電極42近傍の構成について説明する。
【0079】
本実施の形態におけるJFET3のゲートコンタクト電極41およびドレインコンタクト電極42は、炭化珪素基板30上に設けられおり、二酸化珪素からなる酸化膜38に接している。ゲートコンタクト電極41およびドレインコンタクト電極42の各々は、Ti原子およびAl原子を含んでいる。好ましくは、ゲートコンタクト電極41およびドレインコンタクト電極42の各々は、Si原子をさらに含んでいる。ゲートコンタクト電極41およびドレインコンタクト電極42は酸化膜38によって互いに絶縁されている。言い換えれば、ゲートコンタクト電極41(第1の電極)およびドレインコンタクト電極42(第2の電極)は二酸化珪素膜によって互いに隔てられている。
【0080】
Alを含む金属膜をアニールして電極を形成する際に、金属膜に含まれるAlが二酸化珪素膜へ拡散する場合がある。本実施の形態において、ゲートコンタクト電極41(第1の電極)およびドレインコンタクト電極42(第2の電極)の間に位置する酸化膜38にAlが拡散していると仮定する。本実施の形態のJFET3において、ゲートコンタクト電極41(第1の電極)から酸化膜38(二酸化珪素膜)に対して、原子数比1%以上のAlが侵入している領域(侵入長λ1)は、ゲートコンタクト電極41(第1の電極)およびドレインコンタクト電極42(第2の電極)の距離Dの25%以下である。また、ドレインコンタクト電極42(第2の電極)から酸化膜38(二酸化珪素膜)に対して、原子数比1%以上のAlが侵入している領域(侵入長λ2)は、ゲートコンタクト電極41(第1の電極)およびドレインコンタクト電極42(第2の電極)の距離Dの25%以下である。つまり、侵入長λ1と侵入長λ2との合計値は距離Dの50%以下である。
【0081】
より好ましくは、侵入長λ1および侵入長λ2の各々は、距離Dの5%以下である。具体的には、侵入長λ1および侵入長λ2の各々は0.25μm以下であり、好ましくは0.05μm以下である。
【0082】
なお、上記ではゲートコンタクト電極41を第1の電極として説明し、ドレインコンタクト電極42を第2の電極として説明したがこれに限られない。たとえば、ドレインコンタクト電極42が第1の電極でありゲートコンタクト電極41を第2の電極であってもよい。また、ソースコンタクト電極39が第1の電極であって、ゲートコンタクト電極41が第2の電極であってもよい。
【0083】
次に、JFET3の動作について説明する。
図23を参照して、ゲート電極62の電圧が0Vの状態では、n型層33において、第1のp型領域36と第2のn型領域37とで挟まれた領域および当該挟まれた領域と第1のp型層32とで挟まれた領域(ドリフト領域)、ならびに第1のp型領域36と第1のp型層32とで挟まれた領域(チャネル領域)は空乏化されておらず、第1のn型領域35と第2のn型領域37とはn型層33を介して電気的に接続された状態となっている。そのため、第1のn型領域35から第2のn型領域37に向かって電子が移動することにより電流が流れる。
【0084】
一方、ゲートコンタクト電極41に負の電圧を印加していくと、上述のチャネル領域およびドリフト領域の空乏化が進行し、第1のn型領域35と第2のn型領域37とは電気的に遮断された状態となる。そのため、第1のn型領域35から第2のn型領域37に向かって電子が移動することができず、電流は流れない。
【0085】
次に、実施の形態3におけるJFET3の製造方法について説明する。
図26〜
図28を参照して、まず基板準備工程S210(
図25)によって炭化珪素基板30が準備される。
【0086】
具体的には、
図26を参照して、まずn型基板31上に、n型基板31の一方の主面上に、SiCからなる第1のp型層32、n型層33および第2のp型層34が順次形成される。この形成には、たとえば気相エピタキシャル成長法が用いられる。気相エピタキシャル成長においては、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH
4)ガスおよびプロパン(C
3H
8)ガスを用い、キャリアガスとして水素(H
2)ガスを採用することができる。また、p型層を形成するためのp型不純物源としては、たとえばジボラン(B
2H
6)やトリメチルアルミニウム(TMA)を、n型層を形成するためのn型不純物としては、たとえば窒素を採用することができる。これにより、Al、Bなどのp型不純物を含む第1のp型層32および第2のp型層34、Nなどのn型不純物を含むn型層33が形成される。
【0087】
次に、
図27を参照して、第2のp型層34の上部表面34Aから第2のp型層34を貫通してn型層33に至るように、溝部71が形成される。溝部71は底面71Aおよび側壁71Bを有する。溝部71の形成は、たとえば所望の溝部71の形成位置に開口を有するマスク層を第2のp型層34の上部表面34A上に形成した後、SF
6ガスを用いたドライエッチングにより実施することができる。
【0088】
次に、
図28を参照して、イオン注入が行われる。具体的には、まず、第2のp型層34の上部表面34Aおよび溝部71の底面上に、たとえばCVDにより二酸化珪素からなる酸化膜が形成される。そして、酸化膜の上にレジストが塗布された後、露光および現像が行なわれ、所望の第1のn型領域35および第2のn型領域37の形状に応じた領域に開口を有するレジスト膜が形成される。そして、当該レジスト膜をマスクとして用いて、たとえばRIEにより酸化膜が部分的に除去されることにより、第2のp型層34の上部表面34A上に開口パターンを有する酸化膜からなるマスク層が形成される。その後、上記レジスト膜を除去した上で、このマスク層をマスクとして用いて、n型層33および第2のp型層34にイオン注入が実施される。注入されるイオン種は、たとえばP(リン)、N(窒素)などとすることができる。これにより、第2のp型層34を貫通してn型層33に至る第1のn型領域35および第2のn型領域37が形成される。
【0089】
さらに、第1のn型領域35および第2のn型領域37の形成に用いられたマスク層が除去された上で、同様の手順により、第2のp型層34の上部表面34Aおよび溝部71の底面71A上に、所望の第1のp型領域36および第2のp型領域43の形状に応じた領域に開口を有するマスク層が形成される。そして、このマスク層をマスクとして用いて、第1のp型層32、n型層33および第2のp型層34にイオン注入が実施される。注入されるイオン種は、たとえばAl(アルミニウム)、B(ホウ素)などとすることができる。これにより、第2のp型層34を貫通してn型層33に至る第1のp型領域36、および溝部71の底面71Aからn型層33を貫通し、第1のp型層32に至る第2のp型領域43が形成される。
【0090】
次に、不純物の活性化のための熱処理が実施される。具体的には、上記イオン注入が完了した第1のp型層32、n型層33および第2のp型層34を有するn型基板31が、たとえばアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で1700℃に加熱され、30分間保持される。これにより不純物が活性化し、n型不純物あるいはp型不純物として機能することが可能となる。
【0091】
以上により、上部表面34Aと底面71Aと側壁71Bとを有する基板面80を有する炭化珪素基板30(
図28)が準備される。
【0092】
図29および
図30を参照して、次に酸化膜形成工程S260(
図25)によって酸化膜38が形成される。
【0093】
具体的には、まず、たとえば酸素雰囲気中で1300℃程度に加熱し、90分間程度保持する熱酸化処理が実施されることにより、第2のp型層34の上部表面34Aと、溝部71の底面71Aおよび側壁71Bを覆う絶縁膜としての酸化膜38(フィールド酸化膜)が形成される。酸化膜38の厚みは、たとえば0.1μm程度である。
【0094】
次に酸化膜38上にレジストが塗布された後、露光および現像が行なわれ、ソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41、ドレインコンタクト電極42および電位保持コンタクト電極44(
図23参照)を形成すべき領域に応じた開口91Aを有するレジスト膜91が形成される。そして、当該レジスト膜91をマスクとして用いて、たとえばRIEにより酸化膜38が部分的に除去される。以上により、基板面80(
図29)の一部を覆う酸化膜38(
図30)が形成される。
【0095】
次に電極形成工程S270(
図25)が行われる。この工程(S270)は、実施の形態1におけるオーミック電極形成工程(S80:
図3)と同様に実施することができる。具体的には、まず実施の形態1の金属膜形成工程(S81:
図4)と同様に、金属膜50が、レジスト膜91上および当該レジスト膜91から露出する領域に形成される。さらに、レジスト膜91が除去されることにより、レジスト膜91上の金属膜50が除去(リフトオフ)されて、第1のn型領域35、第1のp型領域36、第2のn型領域37および第2のp型領域43上に接触するように、金属膜50が残存する。
【0096】
好ましくは、金属膜50は、Ti層51と、Al層52と、Si層53とが積層された積層膜である。金属膜形成工程S81(
図4)では、Ti層51が二酸化珪素からなる酸化膜38および炭化珪素基板30の第1のp型層32と接して形成される。Al層52はTi層51上に形成される。Si層53はAl層52上に形成される。言い換えれば、Al層52は、Ti層51およびSi層53の間に形成される。
【0097】
好ましくは、Tiを含む層51の膜厚は15nm以上25nm以下であり、Alを含む層52の膜厚は20nm以上60nm以下であり、Siを含む層53の膜厚は15nm以上35nm以下である。なお、金属膜50は、Tiを含む部分と、Alを含む部分と、Siを含む部分とが混合して形成された混合膜であっても構わない。
【0098】
さらに
図20を参照して、実施の形態1における金属膜加熱工程S82(
図4)と同様に、アニールによって、金属膜50と炭化珪素基板10との電気的接続がオーミックとされる。金属膜加熱工程S82(
図4)は、第1の温度勾配で300℃未満の温度から300℃以上450℃以下の温度まで金属膜50を昇温する工程と、その後、第2の温度勾配で300℃以上450℃以下の温度領域内において金属膜50を保持する工程と、その後、第3の温度勾配で金属膜50を500℃以上の温度まで昇温する工程とを有している。ここで、第2の温度勾配は第1の温度勾配および第3の温度勾配よりも小さい。金属膜50を500℃以上の温度まで昇温する工程において好ましくは、金属膜50は700以上にまで昇温され、より好ましくは金属膜50は1000℃以上にまで昇温される。これにより、炭化珪素基板30とオーミック接触するソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極およびドレインコンタクト電極42が完成する。
【0099】
その結果、第1のn型領域35、第1のp型領域36、第2のn型領域37および第2のp型領域43の上部表面に接触するように、オーミックコンタクト電極としてのソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41、ドレインコンタクト電極42および電位保持コンタクト電極44がそれぞれ形成される。
【0100】
金属膜加熱工程S82(
図4)は、金属膜50を300℃以上450℃以下の温度領域内において第2の温度勾配で一定時間保持した後であって、金属膜50の温度を500℃以上の温度T3まで昇温する前に、金属膜50をウェットエッチングすることにより金属膜50からAl(アルミニウム)を除去する工程を有していてもよい。具体的には、金属膜50を300℃以上450℃以下の温度領域内において一定時間保持した後に、金属膜50をアニール装置から取り出す。その後、金属膜50をウェットエッチングすることによりAlを除去する。Alの除去は、たとえばTMAH溶液などの弱アルカリ溶液を用いて行うことができる。また、Alの除去は、リン酸、酢酸、硝酸などの酸性溶液やこれらの混合液を用いて行うことができる。当該溶液を用いることにより、Ti、Si、SiO
2はエッチングされず、Alだけが選択的にエッチングされる。
【0101】
その結果、第1のn型領域35、第1のp型領域36、第2のn型領域37および第2のp型領域43の上部表面に接触するように、オーミックコンタクト電極としてのソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41、ドレインコンタクト電極42および電位保持コンタクト電極44がそれぞれ形成される。
【0102】
再び
図23を参照して、配線形成工程S280(
図25)が実施される。具体的には、ソースコンタクト電極39、ゲートコンタクト電極41およびドレインコンタクト電極42の上部表面にそれぞれ接触するソース配線45、ゲート配線46およびドレイン配線47が形成される。ソース配線45、ゲート配線46およびドレイン配線47は、たとえばソース配線45、ゲート配線46およびドレイン配線47を形成すべき所望の領域に開口を有するレジスト層を形成し、Alを蒸着した後、レジスト層とともにレジスト層上のAlを除去すること(リフトオフ)により形成することができる。
【0103】
次にパシベーション膜形成工程S290(
図25)が実施される。具体的には、ソース電極61、ゲート電極62、ドレイン電極63および酸化膜38の上部表面を覆うように、たとえば二酸化珪素からなるパシベーション膜64が形成される。このパシベーション膜64の形成は、たとえばCVDにより実施することができる。以上によりJFET3が完成する。なお、実施の形態3に係るJFET3は、実施の形態1に係るMOSFETと同様の作用効果を奏する。
【0104】
また上記各実施の形態におけるn型とp型とが入れ替えられた構成が用いられてもよい。さらに上記においては、本発明の半導体装置の一例として、MOSFETおよびJFETについて説明したが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、バイポーラトランジスタなど他の半導体装置が製造されてもよい。
【実施例1】
【0105】
まず、金属膜50の組成を決定するために、Ti層、Al層およびSi層の厚みをマトリックス状に変化させて、炭化珪素基板との接触抵抗を調査する実験を行った。Ti層の厚みとして3種類の厚み(15nm、20nmおよび25nm)を選定した。Al層の厚みとして3種類の厚み(20nm、40nmおよび60nm)を選定した。Si層の厚みとして3種類の厚み(15nm、25nmおよび35nm)を選定した。Ti層、Al層およびSi層の厚みをそれぞれ変化させた27種類(Ti層3種類×Al層3種類×Si層3種類)のサンプルを準備した。27種類のサンプルの各々に対してn型炭化珪素基板およびp型炭化珪素基板との接触抵抗をTEG(Test Element Group)によって評価した。
【0106】
上記27種類のサンプルをRTA装置を使用して300℃まで昇温した。その後、サンプルを300℃で3分間保持し、その後、サンプルを1000℃まで約2分で昇温した。その結果、n型炭化珪素基板に対しては、Ti層15nm、Al層60nmおよびSi層25nmである条件Aのサンプルが最も高い接触抵抗率を有していた。また、p型炭化珪素基板に対しては、Ti層25nm、Al層20nmおよびSi層15nmである条件Bのサンプルが最も高い接触抵抗率を有していた。
【0107】
次に、炭化珪素半導体装置のリーク電流、n型接触抵抗およびp型接触抵抗に対する金属層の保持温度および保持時間の影響を調査するために、MOSFETを作製した。
【0108】
まず、n型の炭化珪素基板を準備した。当該n型炭化珪素基板上にn型の炭化珪素エピタキシャル層を成膜した。イオン注入により、当該エピタキシャル層にp型領域およびn型領域を形成した。その後、イオン注入によるダメージを修復するために、活性化アニールを実施した。活性化アニールは1700℃の温度で30分間実施された。
【0109】
次に、CVD法によって、二酸化珪素膜を1μm形成した。P(リン)ドープポリシリコンを形成することによりゲート電極を形成した。二酸化珪素膜をドライエッチングすることにより、二酸化珪素膜に電極形成のためのコンタクトホールを形成した。コンタクトホール内であって、かつ二酸化珪素膜に接するように、Ti/Al/Siの3層からなる金属膜50を形成した。炭化珪素基板の裏面全面にNi電極を1000オングストローム形成した。
【0110】
次に、金属膜50に対する熱処理を実施した。熱処理は、金属膜50をランプアニール炉に入れて300℃の温度で1〜5分間保持することにより行われた。これにより、Ti/Al/Siの3層内でのシリサイド反応はほぼ完了した。その後、金属膜50が形成された炭化珪素基板をランプアニール炉から取り出し、TMAH溶液で10分間エッチングした。TMAH溶液の濃度を2.38%とした。なお、Alは当該TMAH溶液によってエッチングされるが、Ti、SiおよびSiO
2は当該TMAH溶液によってエッチングされない。また、SiやTiと反応したAlも当該TMAH溶液によってエッチングされない。
【0111】
次に、金属膜50が形成された炭化珪素基板をランプアニール炉に入れ、1000℃の温度まで2分で昇温した。その後、金属膜50が形成された炭化珪素基板の温度を1分間保持した後、冷却を行った。以上のようにして、炭化珪素基板の表面および裏面にコンタクト電極が形成された。
【0112】
次に、裏面にTi/Pt/Auからなる裏面電極パッドを形成した。ゲート電極の上部にコンタクトホールを形成し、TiN/Alからなる電極パッドを形成した。その後、表面側にパシベーション膜としてSiNを成膜した。その後、ゲート電極部およびソース電極部の上部に開口を形成した。MOSFETの作製と同時に接触抵抗評価用のTEGも作製した。
【0113】
図34を参照して、n型炭化珪素基板とコンタクト電極(ソースコンタクト電極)との接触抵抗率の保持時間依存性について説明する。
図34に示すように、保持時間が長くなると、n型炭化珪素基板とコンタクト電極(ソースコンタクト電極)との接触抵抗率は少しずつ大きくなった。上限ライン110は、接触抵抗率が5×10
-5Ωcm
2のラインであり、接触抵抗率がこの値より大きいと、デバイス性能の1%以上のオーダーとなるので無視できなくなる。言い換えれば、接触抵抗率が上限ライン110以下であれば、デバイス性能として問題がないレベルである。n型炭化珪素に対する接触抵抗が最も高くなる条件Aのサンプルにおいて、保持時間が3分以下であればデバイス特性として問題がないことが確認された。
【0114】
図35を参照して、p型炭化珪素基板とコンタクト電極(ソースコンタクト電極)との接触抵抗率の保持時間依存性について説明する。
図35に示すように、保持時間が変化しても、p型炭化珪素基板とコンタクト電極との接触抵抗率はあまり影響を受けなかった。上限ライン111は、接触抵抗率が1×10
-2Ωcm
2のラインであり、接触抵抗率がこの値より大きいと、ゲート電極部で遅延が発生し動特性が悪化する。言い換えれば、接触抵抗率が上限ライン111以下であれば、動特性としての問題がないレベルである。p型炭化珪素に対する接触抵抗が最も高くなる条件Bのサンプルにおいて、保持時間によらず動特性として問題がないことが確認された。
【0115】
次に、MOSFET1のゲートソース間におけるリーク電流を測定した。リーク電流は、ゲートソース間に電圧を−5V〜20Vの間で変化させてときの電流の最大値とした。MOSFET1のソース電極を構成するTiAlSiが二酸化珪素と反応すると、ソースゲート電極間において短絡し、ソースゲート電極間におけるリーク電流が増大する。リーク電流値が1μAを超えると、ゲートに電圧がかからないため、MOSFET1として動作しなくなる。一方で、リーク電流が1nA以下であれば、MOSFET1の動作として全く問題のないレベルといえる。つまり、リーク電流の上限ライン112が1μAであり、リーク電流のより好ましい上限ライン113が1nAである。なお、ソースゲート間は1μmである。
【0116】
図36を参照して、リーク電流の保持時間依存性について説明する。保持時間が0分、1分および2分の条件において、条件Aにおける金属膜を使用した場合のリーク電流は条件Bにおける金属膜を使用した場合のリーク電流よりも大きかった。これは、条件Aの金属膜50の方が条件Bの金属膜50よりもAlが多いためであると考えられる。条件Bの金属膜50に関しては、保持時間が0〜1分の場合におけるリーク電流が上限ライン112よりも小さく、保持時間が2分以上の場合におけるリーク電流はより好ましい上限ライン113よりも小さかった。条件Aの金属膜50に関しては、保持時間が1分の場合におけるリーク電流は上限ライン112よりも小さく、保持時間が2分以上の場合におけるリーク電流はより好ましい上限ライン113よりも小さくなった。
【0117】
リーク電流特性測定後、MOSFET1のソースゲート電極間の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)およびEDX(Energy Dispersive X−ray Spectrometry)で観察し、Alが検出された範囲を侵入長とした。
図37に示すように、リーク電流と侵入長には相関があることが確認された。このデータによると、侵入長が0.5μmのときにリーク電流が1μAであり、侵入長が0.1μAのときにリーク電流が1nAであった。言い換えれば、リーク電流の上限ライン112であるリーク電流1μA以下を実現するためには、侵入長を0.5μm以下にすればよく、リーク電流のより好ましい上限ライン113であるリーク電流1nA以下を実現するためには、侵入長を0.1μm以下にすればよいことが確認された。
【実施例2】
【0118】
本実施例では、金属膜の保持時間および保持温度を変化させることにより、好ましい金属膜の保持時間および保持温度を調査した。まず、実施例1で説明した方法と同様の製造方法により、MOSFET1を作製した。金属膜50を加熱する工程における金属膜50を保持する温度(保持温度)および金属膜50を当該保持温度で保持する時間(保持時間)を変化させた。保持温度は、200℃、300℃、400℃、450℃および500℃とした。それぞれの保持温度に対して、保持時間を1分、2分、3分、4分および5分とした。その後、金属膜50を1000℃まで加熱した。
【0119】
【表1】
【0120】
表1を参照して、リーク電流、n型接触抵抗およびp型接触抵抗に対する、金属膜50の保持温度および保持時間の関係を説明する。なお、表1および後述する表2におけるリーク電流に関して、記号「B」はリーク電流が1μAより大きいことを示し、記号「A」はリーク電流が1μA以下であり1nAより大きいことを示し、記号「S」はリーク電流が1nA以下であることを示す。また、n型接触抵抗に関して、記号「A」は接触抵抗率が5×10
-5Ωcm
2より小さいことを示し、記号「B」は接触抵抗率が5×10
-5Ωcm
2以上であることを示す。さらに、p型接触抵抗に関して、記号「A」は接触抵抗率が1×10
-2Ωcm
2よりも小さいことを示し、記号「B」は接触抵抗率が1×10
-2Ωcm
2以上であることを示す。
【0121】
表1に示すように、保持温度が200℃の場合は、AlがSiまたはTiと反応しないためAlが二酸化珪素膜に侵入してリーク電流が上限値を超えた。また保持温度が500℃の場合は、保持時間が1分であればリーク電流は上限値以下であった。しかし、保持時間が2分以上になるとリーク電流は上限値よりも大きくなった。保持時間が300℃以上450℃以下の場合、保持時間にかかわらず、リーク電流は上限値以下であった。以上の結果より、保持時間は300℃以上450℃以下であることが好ましいことが確認された。
【0122】
n型接触抵抗に関しては、300℃以上450℃以下の温度範囲において、保持時間が1分以上3分以下の場合にn型接触抵抗率が上限ライン(5×10
-5Ωcm
2)よりも小さかった。p型接触抵抗に関しては、今回測定された保持温度および保持時間の範囲において、接触抵抗率が1×10
-2Ωcm
2より小さいことが確認された。
【0123】
以上の結果より、リーク電流の観点からは、金属膜50の保持温度が300℃以上450℃以下であること好ましい。また、金属膜50の保持温度が300℃以上450℃以下の温度範囲において、金属膜50の保持時間は2分以上であればリーク電流が1nA以下になり好ましい。さらに、n型接触抵抗の観点からは、金属膜50の保持温度が300℃以上450℃以下の温度範囲において、金属膜50の保持時間は1分以上3分以下であることが好ましい。リーク電流およびn型接触電流の双方を考慮すると、金属膜50の保持温度が300℃以上450℃以下の温度範囲において、金属膜50の保持時間は2分以上3分以下であることが好ましい。
【0124】
【表2】
【0125】
次に、金属膜50をある保持温度である保持時間保持した後であって、金属膜50を1000℃に加熱する前に、金属膜50をアニール炉から取り出し、金属膜50をTMAH溶液などの弱アルカリ溶液や、リン酸、酢酸、硝酸などの酸性溶液やこれらの混合液によりエッチングした結果について説明する。表1は当該エッチングを行っていない結果であり、表2は当該エッチングを行った結果である。
【0126】
表2に示すように、保持温度300℃の保持時間1分の条件および保持温度400℃の保持時間1分の条件において、リーク電流が1nA以下になった。つまり、エッチングを行うことで、リーク電流をさらに低減することができた。エッチングによって未反応のAlが除去されることで、二酸化珪素膜へ侵入するAlを低減できたと考えられる。
【0127】
以上の結果より、金属膜50を300℃以上450℃以下の温度で保持した後にウェットエッチングを行ってAlを除去することにより、リーク電流を低減可能であることが確認された。
【0128】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。