(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
路車間通信が可能となる第一通信期間と車車間通信が可能となる第二通信期間とが時分割されて無線通信が行われる通信システムに含まれる路側通信機が行う通信方法であって、
前記路側通信機に割り当てられた前記第一通信期間に、路車間通信の他に路路間通信が可能であり、
前記路側通信機は、路路間通信における送信と受信とのうちの少なくとも一方のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信のためのアンテナ指向角よりも、小さくすることが可能であり、
前記路側通信機は、路路間通信の時間帯を含む前記第一通信期間中に、路路間通信における受信のためのアンテナ指向角を小さくすることを特徴とする通信方法。
路車間通信が可能となる第一通信期間と車車間通信が可能となる第二通信期間とが時分割されて無線通信が行われる通信システムに含まれる路側通信機が行う通信方法であって、
前記路側通信機に割り当てられた前記第一通信期間に、路車間通信の他に路路間通信が可能であり、
前記路側通信機は、路路間通信における送信と受信とのうちの少なくとも一方のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信のためのアンテナ指向角よりも、小さくすることが可能であり、
前記路側通信機は、前記第一通信期間の開始と共に、路路間通信における受信のためのアンテナ指向角を小さくし、当該第一通信期間の間、継続してアンテナ指向角を小さい状態とすることを特徴とする通信方法。
路車間通信が可能となる第一通信期間と車車間通信が可能となる第二通信期間とが時分割されて無線通信が行われる通信システムに含まれる路側通信機が行う通信方法であって、
前記路側通信機に割り当てられた前記第一通信期間に、路車間通信の他に路路間通信が可能であり、
前記路側通信機は、路路間通信における送信と受信とのうちの少なくとも一方のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信のためのアンテナ指向角よりも、小さくすることが可能であり、
前記路側通信機は、当該路側通信機に割り当てられた前記第一通信期間において、動的情報及び静的情報を含むダウンリンクデータを車両に対して送信する制御を行うことができると共に、前記静的情報に替えて、路路間通信用の情報を前記ダウンリンクデータに含めて送信することを特徴とする通信方法。
路車間通信が可能となる第一通信期間と車車間通信が可能となる第二通信期間とが時分割されて無線通信が行われる通信システムに含まれる路側通信機が行う通信方法であって、
前記路側通信機に割り当てられた前記第一通信期間に、路車間通信の他に路路間通信が可能であり、
前記路側通信機は、路路間通信における送信と受信とのうちの少なくとも一方のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信のためのアンテナ指向角よりも、小さくすることが可能であり、
前記路側通信機は、当該路側通信機が無線送信を行わないで車車間通信が可能となる前記第二通信期間から、当該路側通信機による無線送信が許容される前記第一通信期間へと切り替わるタイミング以後に、路路間通信における送信のためのアンテナ指向角を小さくすることを特徴とする通信方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記高度道路交通システムにおいては、使用可能な周波数帯域(たとえば、10MHz程度)が限られているため、路路間通信のための帯域を確保することは困難である。
そこで、路車間通信と路路間通信との双方を行う路側通信機のために、路車間通信用の通信期間とは別に、路路間通信のための専用の通信期間を新たに確保することが考えられる。
【0007】
しかし、この場合、前記高度道路交通システムの規格によれば、車載通信機は、路側通信機のために割り当てられている通信期間では、車車間通信を行うことができないことから、路路間通信のための専用の通信期間が新たに確保されると、車車間通信を行う機会が減少し、特に交通量が多い地域では車車間通信を満足に行えなくなる可能性がある。
そこで、本発明者は、路側通信機(自機)に割り当てられた通信期間において、路車間通信の他に、路路間通信を行うという着想を得た。
【0008】
このようにして路路間通信を行うためには、路側通信機(自機)から送信する電波を、通信相手となる路側通信機(例えば、隣りの交差点に設置されている路側通信機)まで到達させる必要がある。つまり、路路間通信を行うためには、路側通信機から送信される電波の到達距離を、路車間通信の場合に比べて大きく設定する必要がある。
しかし、このように電波の到達距離が大きくなると、この電波による干渉が生じやすくなる(干渉を与える範囲が大きくなる)ことから、自機と、自機とは関係の無い路路間通信を行う近隣の路側通信機とは、異なる通信期間(異なるタイムスロット)において路路間通信を行うことが望ましい。
【0009】
路側通信機が路車間通信の他に路路間通信を更に行う場合、複数の路側通信機及び複数の車載通信機が、干渉することなく各種の通信を行うためには、これらの路側通信機に割り当てるために必要となる通信期間の長さや数を増加させる方法が考えられるが、車車間や路車間通信用の通信期間の時間が短縮されてしまうため、路側通信機及び車載通信機それぞれに対して、充分な通信機会が与えられなくなるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、路車間通信の他に路路間通信を更に行う場合に、必要となる通信期間の数の増加を抑制し、車載通信機の通信機会の削減を軽減することを可能とする路側通信機、及び、通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、路車間通信が可能となる第一通信期間と車車間通信が可能となる第二通信期間とが時分割されて無線通信が行われる通信システムに含まれる路側通信機であって、自機に割り当てられた第一通信期間に、路車間通信の他に路路間通信を可能とする制御を行う制御部を備え、前記制御部は、路路間通信における送信と受信とのうちの少なくとも一方のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信のためのアンテナ指向角よりも、小さくする制御を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、路路間通信における送信のためのアンテナ指向角を小さくすることにより、特定の方向に電波を送信することが可能となり、つまり、電波が届きにくい方向を得ることが可能となり、自機とは関係の無い通信を行っている近隣の路側通信機に対する干渉を低減することができる。
また、路路間通信における受信のためのアンテナ指向角を小さくすることにより、特定の方向以外からの電波を受信しにくくすることが可能となり、自機とは関係の無い通信を行っている近隣の路側通信機が送信した電波によって、自機が受ける干渉を低減することができる。
したがって、自機及びその近隣の路側通信機はそれぞれ同じ通信期間に路路間通信を行うことが可能となり、この結果、必要となる通信期間の数が増加するのを抑制し、各通信機の通信機会が減るのを防ぐことが可能となる。
【0013】
(2)また、前記制御部は、路路間通信以外の通信から路路間通信へと切り替わるタイミング以後に、路路間通信における送信のためのアンテナ指向角を小さくすることができる。
この場合、路路間通信の時間帯で、送信のためのアンテナ指向角を小さくすることができ、特定の方向に電波を送信することが可能となり、自機とは関係の無い路路間通信を行っている近隣の路側通信機に対する干渉を低減することができる。
このとき、指向性アンテナに切り替えた場合に、特定の方向にある自機の通信相手に対して充分な強度の電波を届けることができる場合は、指向性アンテナへの切り替えに加えて送信電力を抑制してもよい(落としてもよい)。こうすることにより、所望の通信相手に対して十分な強度の電波を届けつつ、自機とは関係の無い路側通信機に対する干渉を、指向性アンテナの切り替えのみを行う場合よりもさらに低減することができる。
【0014】
(3)また、前記制御部は、路路間通信の時間帯を含む第一通信期間中に、路路間通信における受信のためのアンテナ指向角を小さくすることができる。
この場合、路路間通信の時間帯で、受信のためのアンテナ指向角を小さくすることができ、特定の方向以外からの電波を受信しにくくすることが可能となり、自機とは関係の無い路路間通信を行っている近隣の路側通信機が送信した電波によって、自機が受ける干渉を低減することができる。
【0015】
(4)また、前記制御部は、前記第一通信期間の開始と共に、路路間通信における受信のためのアンテナ指向角を小さくし、当該第一通信期間の間、継続してアンテナ指向角を小さい状態とする制御を行うことができる。
この場合、第一通信期間のどのようなタイミングで路車間通信から路路間通信へと切り替わっても、特定の方向からの路路間通信のための電波を受信することが可能となり、そして、この特定の方向以外からの電波を受信しにくくすることが可能となり、自機とは関係の無い路路間通信を行っている近隣の路側通信機が送信した電波によって、自機が受ける干渉を低減することができる。
【0016】
(5)また、前記制御部は、自機に割り当てられた第一通信期間において、動的情報及び静的情報を含む路車間通信のダウンリンクデータを車両に対して送信する制御を行うことができると共に、前記静的情報に替えて、路路間通信用の情報を前記ダウンリンクデータに含めて送信する制御を行うことができる構成とするのが好ましい。
ここで、静的情報は、情報の内容の変動頻度が動的情報よりも低い情報であり、事例については後述する。
この場合、自機に割り当てられた第一通信期間において、静的情報と、路路間通信用の情報とが択一的に送信される。
【0017】
(6)また、前記通信システムでは、前記第一通信期間及び前記第二通信期間の他に、路路間通信が可能となる第三通信期間が時分割で割り当てされており、前記制御部は、前記第三通信期間で、路路間通信を行うように制御されるのが好ましい。
この場合、第三通信期間を、自機を含む複数の路側通信機により共用することができる。
【0018】
(7)また、前記制御部は、自機に割り当てられた第一通信期間において路路間通信を行う際に、路車間通信で用いる変調方式よりも多値数が低い変調方式に替える制御を行うのが好ましい。
この場合、路路間通信を行う際に送信電力を下げることが可能となり、干渉の影響をより一層防ぐことが可能となる。
なお、このような変調方式の切り替えは、第三通信期間で行うようにしてもよい。
【0019】
(8)また、本発明は、路車間通信が可能となる第一通信期間と車車間通信が可能となる第二通信期間とが時分割されて無線通信が行われる通信システムに含まれる路側通信機が行う通信方法であって、前記路側通信機に割り当てられた第一通信期間に、路車間通信の他に路路間通信が可能であり、前記路側通信機は、路路間通信における送信と受信とのうちの少なくとも一方のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信のためのアンテナ指向角よりも、小さくすることを特徴とする。
本発明によれば、前記(1)に記載の路側通信機と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、自機(路側通信機)及びその近隣の路側通信機はそれぞれ同じ通信期間に路路間通信を行うことが可能となり、必要となる通信期間の数が増加するのを抑制し、各通信機の通信機会が減るのを防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔1. システムの全体構成〕
図1は、本発明の路側通信機を含む高度道路交通システムの全体構成を示す概略斜視図である。なお、本実施形態では、道路構造の一例として、南北方向と東西方向の複数の道路が互いに交差した碁盤目構造を想定している。
図1に示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号機1、路側通信機(無線機)2、車載通信機(無線機)3、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、車両感知器や監視カメラ等よりなる路側センサ6を含む。
【0023】
交通信号機1と路側通信機2は、複数の交差点A1〜A5,B1〜B5、C1〜C5,D1〜D5のそれぞれに設置されており、電話回線等の有線通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄するエリアの交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置されていてもよい。
【0024】
この高度道路交通システムは、無線通信システムを備えており、この無線通信システムを構成する路側通信機2は、その周囲を走行する車両の車載通信機3との間で無線通信(路車間通信)が可能である。また、各路側通信機2は、自己の送信波が到達する所定範囲内に位置する他の路側通信機2とも無線通信(路路間通信)が可能である。本実施形態では、隣りの交差点に設置されている路側通信機2と路路間通信が可能となる。
路車間通信は、自機に割り当てられた通信期間(タイムスロット)で、周囲の車載通信機3(車両5)に対して注意喚起等の同報通信を行うが、路路間通信では、注意喚起等のような同報通信は必ずしも必要ではない。
【0025】
また、同じく無線通信システムを構成する車載通信機(無線機)3は、路側通信機2との間で無線通信(路車間通信)を行うとともに、キャリアセンス方式で他の車載通信機3と無線通信(車車間通信)が可能である。車車間通信では、周囲の他の車載通信機3(車両5)に対して同報通信が行われる。
【0026】
路側通信機2は、
図2に示すように、無線通信のためのアンテナ20,21が接続されている無線通信部(送受信部)22と、通信制御などの処理を行う制御部23とを備えている。無線通信部22は、使用するアンテナを切り替えるスイッチ22aと、高周波処理部22bと、ベースバンド処理部22cとを有し、制御部23は、MAC部23aと、伝送制御部23bとを有している。
制御部23は、例えばCPU及び内部メモリを有するマイコンからなり、CPUによって実行される機能部として、タイミング調整部24を有している。タイミング調整部24は、送信用(TX用)と受信用(RX)とを有している。この制御部23(タイミング調整部24)の機能は、後に説明する。
【0027】
本実施形態の路側通信機2は、無指向性アンテナ20と指向性アンテナ21とを備えている。無指向性アンテナ20の水平面におけるアンテナ指向角は360°であるのに対し、指向性アンテナの水平面におけるアンテナ指向角は360°未満であり、無指向性アンテナ20よりも指向角が小さい。なお、水平面におけるアンテナ指向角が小さいことは、水平面におけるビームの照射幅が小さいことを意味する。
【0028】
〔2. 無線通信の方式等〕
図3(a)は、無線通信システムにおいて用いられる無線フレームを示している。この無線フレームは、その時間軸方向の長さ(フレーム長)が100ミリ秒に設定されている。つまり、1秒間に10フレームが発生する。フレームは、例えば、路側通信機2が有するGPS受信機(図示省略)によって受信したGPS信号に含まれる1PPS(1秒周期の信号)に基づいて生成される。
【0029】
図3(b)は、一つの無線フレーム内部の構造(一部)を示している。一つの無線フレームは、第一スロットSL1と、第二スロットSL2とを含んで構成されている。
第一スロットSL1は、路側通信機2に割り当てられるタイムスロット(第一通信期間)であり、この第一スロットSL1では、路側通信機2による無線送信が許容され、路車間通信が可能となる。
一方、第二スロットSL2は、車載通信機3用のタイムスロット(第二通信期間)であり、車載通信機3による無線送信用として開放するため、路側通信機2は第二スロットSL2では無線送信を行わない。
【0030】
第一スロットSL1と第二スロットSL2とは、時間軸方向に沿って交互に配置されている。第一スロットSL1には、それぞれスロット番号i(i=1,2,3・・・)が付されている。
このように、本実施形態に係る無線通信システムでは、路車間通信が可能となる第一スロットSL1(第一通信期間)と、車車間通信が可能となる第二スロットSL2(第二通信期間)とが、時分割されて無線通信が行われる。
そして、本実施形態では、第一スロットSL1において、路側通信機2による無線送信が許容されていることから、路車間通信の他に、路路間通信も可能となる。
【0031】
路側通信機2には、複数の第一スロットSL1(例えば、16個の第一スロット)の内の一つ又は複数のスロットが割り当てられる。路側通信機2(制御部23)はスロット番号iによっていずれのスロットが自機に割り当てられるかを認識する。
一つの路側通信機2に対して、無線フレームに含まれる複数の第一スロットSL1の内の一つのスロットを割り当てる場合、例えば、
図3(b)に示すように、無線フレームに含まれるi=1の第一スロットSL1には、交差点A2,B5,C3,D1の路側通信機2に割り当てられ、i=2の第一スロットSL1には、交差点A3,B1,C4,D2の路側通信機2に割り当てられ、i=3の第一スロットSL1には、交差点A4,B2,C5,D3の路側通信機2に割り当てられ、i=4の第一スロットSL1には、交差点A5,B3,C1,D4の路側通信機2に割り当てられ、i=5の第一スロットSL1には、交差点A1,B4,C2,D5の路側通信機2に割り当てられる。
【0032】
図4は、
図1に示す複数の路側通信機2に対する、
図3に従った第一スロットSL1の割り当て方を示している。
図4において、各交差点の丸内の数字は、スロット番号iを示している。各路側通信機2は、自機2に割り当てられたスロット番号iの第一スロットSL1において、路車間通信を(スロットによっては路路間通信も)行う。
【0033】
隣接する交差点の路側通信機2に対して同一の第一スロットSL1が割り当てられていると、隣接する交差点間にいる車両5は、双方の路側通信機2からのダウンリンクデータを受け、干渉が生じる。そこで、
図3(b)に示すように、第一スロットSL1を分散させて各路側通信機2に割り当てることで、各路側通信機2による路車間通信の際の干渉を防止している。
【0034】
〔3. スロット数の検討〕
スロット割り当てに関して、路車間通信だけを考慮すると、
図4に示すように適切であるが、路路間通信も考慮すると適切でなくなり、路路間通信では、電波干渉が起こるおそれがある。
例えば、
図4の交差点C2の路側通信機2と交差点D5の路側通信機2は、路車間通信の電波干渉が互いになく、ともにスロット番号i=5の第一スロットが割り当てられている。それは、交差点C2とD5との間は、道路以外の部分の建物を考慮すれば、直接、電波が届きにくい状態であるためである。交差点C2付近の車両(交差点C2の路側通信機2のサービスエリア内の車両)は、同じタイミングで路車間通信のための電波を発信する交差点D5の路側通信機2からの干渉をほとんど受けることなく、交差点C2の路側通信機2からのダウンリンクデータを受信することができるからである。
【0035】
しかし、
図4の路側通信機の配置で、交差点C2の路側通信機2と交差点D5の路側通信機2とが同じスロットで路車間通信に加えて路路間通信を行った場合、交差点D5の路側通信機2が交差点C5の路側通信機2に対して路路間通信のデータを送信すると、交差点C2の路側通信機2が送信した路車間通信または路路間通信のデータが干渉波となって交差点C5にも直接到達することになる。
【0036】
このため、交差点C5の路側通信機2は、交差点D5の路側通信機2からの路路間通信のデータを正しく受信できない可能性がある。なお、同一のスロットに、複数の路側通信機2を割り当てることが可能となるための条件は、非希望波(U波)と希望波(D波)との比(DUR)が、所要量以上となることである。例えば、本発明者らによる論文「路車間通信における無線リソースの最小化に関する検討」<http://ci.nii.ac.jp/naid/110008682590>の値を引用した場合、この比(DUR)の値は、21.4dBとなる。
【0037】
このように、路車間通信と路路間通信とでは、通信エリア(電波の到達距離)が異なるため、路車間通信と路路間通信とでは、必要となるスロット数は異なり、路路間通信の方が多くの所要スロット数を要する可能性がある。例えば、路車間通信では、5個のスロットで干渉を回避した割り当てが可能である道路構造において、路路間通信では、10個のスロットが必要となる場合がある。つまり、路路間通信では、路車間通信に比べて、およそ2倍程度のスロットが必要となる場合がある。
そこで、必要となるスロットの数が増えるのを防ぐために、本実施形態の制御部23(
図2参照)は、路路間通信の際に、路路間通信で用いるアンテナの指向角を小さくする制御を行う。この制御の詳細及び作用については、後に説明する。
【0038】
〔4. 路側通信機による通信制御〕
路側通信機2の制御部23は、自機2に割り当てられた第一スロットSL1において、車両5(車載通信機3)に対してダウンリンクデータを無線送信する制御を行う。つまり、制御部23は、自機2に割り当てられた第一スロットSL1で、路車間通信を行わせる制御を行う。さらに、制御部23は、この自機2に割り当てられた第一スロットSL1において、路車間通信の他に、路路間通信を可能とする制御を行う。
【0039】
図5は、本実施形態の無線通信システムで用いられる無線フレーム中のスロットの構造の説明図である。
第一スロットSL1において、路車間通信により路側通信機2から送信されるダウンリンクデータには、例えば
図5の矢印G3のスロットに示すように、静的情報と動的情報とが含まれており、第一スロットSL1は、動的情報用の時間帯Tdと静的情報用の時間帯Tsとに区分されている。
【0040】
静的情報は、道路構造(道路の勾配や曲率)等を表す道路線形情報又は交通規制の内容・期間などを示す規制情報等の、短時間では情報の内容が変化しない情報をいう。
動的情報は、交通信号機の灯色の情報を示す信号情報又は路側センサ6による検知結果を示すセンサ情報などの、時々刻々と情報の内容が変化し得る情報をいう。つまり、動的情報は、時間の経過とともに情報の内容が変動する頻度が静的情報よりも高い情報である。
そして、制御部23は、自機2に割り当てられた第一スロットSL1において、動的情報及び静的情報を含むダウンリンクデータを車両5(車載通信機3)に対して送信する制御を行う。
【0041】
また、
図5に示すように、第一スロットSL1には、路車間通信のみを行うスロットと、路車間通信と路路間通信との双方を行うスロットとが含まれる(
図5の矢印G2のスロットを参照)。また、第一スロットSL1において路路間通信を行う場合、制御部23は、路車間通信の後に、路路間通信を行う制御を行う。
【0042】
ここで、静的情報は、情報の内容の変動頻度が動的情報よりも低い情報であり、また、この静的情報を含むダウンリンクデータを送信する路側通信機2は、その設置位置が変更されないことから、路車間通信では、動的情報についてはダウンリンクデータに含めて第一スロットSL1毎に送信する必要性は高いが、静的情報については第一スロットSL1毎に送信する必要性は低い。
【0043】
そこで、本実施形態では、第一スロットSL1毎に静的情報を提供するのを止めて、静的情報を送信するための時間帯Tsに、路路間通信を行うように、各路側通信機2の制御部23は制御する。つまり、各路側通信機2の制御部23は、自機2に割り当てられた第一スロットSL1において、静的情報に替えて、路路間通信用の情報をダウンリンクデータに含めて送信する制御を行う。
このように、各路側通信機2の制御部23は、自機2に割り当てられた第一スロットSL1において、静的情報と、路路間通信用の情報とを択一的に送信する制御を行う。
【0044】
〔5. 制御部によるアンテナの切り替え制御〕
本実施形態では、制御部23は、路路間通信が行われる第一スロットSL1において、路車間通信のために無指向性アンテナ20を用いてダウンリンクデータの送信を行うが、その後の路路間通信に切り替わる際、路路間通信のために指向性アンテナ21に切り替えて通信相手となる他の路側通信機2に対して情報(路路間情報)の送信を行う制御を行う。すなわち、制御部23は、路路間通信が行われる第一スロットSL1において、路路間通信のために、通信相手となる他の路側通信機2に対する情報の「送信」のためのアンテナ指向角を、路車間通信のためのアンテナ指向角よりも、小さくする制御を行う。
このとき、通信相手となる他の路側通信機2に過剰な強度の電波が届く場合は、アンテナの切り替えに加えて、送信電力を低くするように制御してもよい。
【0045】
さらに、制御部23は、路路間通信が行われる第一スロットSL1において、路車間通信のために無指向性アンテナ20を用いて車載通信機3からのアップリンクデータの受信を行うが、その後の路路間通信に切り替わる際、路路間通信のために指向性アンテナ21に切り替えて通信相手となる他の路側通信機2からの情報(路路間情報)の受信を行う制御を行う。すなわち、制御部23は、路路間通信が行われる第一スロットSL1において、路路間通信のために、通信相手となる他の路側通信機2に対する情報の「受信」のためのアンテナ指向角を、この路車間通信のためのアンテナ指向角よりも、小さくする制御を行う。
【0046】
この制御部23によるアンテナの切り替え制御の具他的な手段について説明する。
制御部23が有している前記タイミング調整部24(
図2参照)は、スロットの切り替わりタイミング及び第一スロットSL1における前記時間帯(
図5の時間帯Td,Ts)などの時間管理を行う。
そして、タイミング調整部24は、路路間通信に切り替わるタイミングを示すタイミング情報を生成し、この生成したタイミング情報に基づいて、スイッチ22aによって、無線通信に使用するアンテナを無指向性アンテナ20から指向性アンテナ21へと切り替える制御を行う。
【0047】
図6は、隣接する四つの路側通信機2−1,2−2,2−3,2−4の斜視図である。これら路側通信機それぞれは、第二スロットSL2(
図5参照)では無線送信を行わず、車両5の車載通信機3による無線送信用(車車間通信用)として開放している。そして、この第二スロットSL2(
図5の矢印G1で示すスロット)の次の第一スロットSL1(
図5の矢印G2で示すスロット)では、これら路側通信機それぞれは、無指向性アンテナ20を用いて、つまり、広いビーム幅で、周囲の車載通信機3と路車間通信を行う。
【0048】
さらに、この第一スロットSL1において、路路間通信の時間帯T2(
図5参照)になると、中央の路側通信機2−3では、右側の路側通信機2−4との間で、指向性アンテナ21を用いて路路間通信を行う。この路側通信機2−3の指向性アンテナ21による通信エリアには、右側の路側通信機2−4を含むが、左側の路側通信機2−2を含まれない。
そして、これと同じ第一スロットSL1(時間帯T2)において、左側の路側通信機2−2は、さらに別の(
図6では左上の)路側通信機2−1との間で、指向性アンテナ21を用いて路路間通信を行う。この路側通信機2−2の指向性アンテナ21による通信エリアには、左上の路側通信機2−1を含むが、中央の路側通信機2−3を含まない。
【0049】
このため、中央の路側通信機2−3と右側の路側通信機2−4とによる路路間通信と、左側の路側通信機2−2と左上の路側通信機2−1とによる路路間通信とが、同じ第一スロットSL1において同時に行われていても、各路側通信機において干渉の発生を防止することが可能となる。
【0050】
このように、路側通信機2−3は、無指向性アンテナ20から指向性アンテナ21に切り替えて、路路間通信における「送信」のためのアンテナ指向角を小さくすることにより、特定の方向(通信相手となる路側通信機2−4)に電波を送信することが可能となる。つまり、路側通信機2−3から見て、路側通信機2−2の方向を、電波が届きにくい方向とすることが可能となり、自機2−3とは関係の無い路路間通信を行っている近隣の路側通信機2−2に対する干渉を低減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、アンテナ指向角を小さくする無線通信は「送信」のみならず、「受信」においても行う。つまり、路側通信機2−3では、無指向性アンテナ20から指向性アンテナ21に切り替えて、路路間通信における「受信」のためのアンテナ指向角を小さくすることにより、特定の方向以外(通信相手となる路側通信機2−4の設置方向以外)からの電波を受信しにくくすることが可能となる。このため、自機2−3とは関係の無い路路間通信を行っている近隣の路側通信機2−2が送信した電波によって、自機が受ける干渉を低減することができる。
【0052】
この結果、自機2−3及びその近隣の路側通信機2−2は、それぞれ同じ第一スロットSL1において路路間通信を行うことが可能となり、路路間通信のために必要となるスロットの数が増加するのを抑制し、各通信機の通信機会が減るのを防ぐことが可能となる。
以上のように、本実施形態に係る無線通信システムによれば、路側通信機2及び車載通信機3が、同一周波数帯を用いることによる干渉を抑制しつつ、無線リソースの使用効率を高めることができる。
【0053】
図6に示す実施形態は、路路間通信の通信相手が、一つの路側通信機2である場合について説明している。そこで、次に、路路間通信の通信相手が複数となる場合について説明する。
図7(A)は、無線通信システムに用いられるスロットの配置を示しており、i=4の第一スロットSL1は、中央の路側通信機(自機)2−1(
図8参照)に割り当てられており、i=8,10,12,14の第一スロットSL1は、それぞれ別の路側通信機2−2,2−3,2−4,2−5(
図8参照)に割り当てられている。
図8は、これら路側通信機2−1,2−2,2−3,2−4,2−5が設置されている交差点を含む道路の模式図である。
図8において、各交差点の丸内の数字は、割り当てられているスロット番号iを示している。これら路側通信機それぞれは、割り当てられたスロット番号iの第一スロットSL1において、路車間通信及び路路間通信を行う。
【0054】
路側通信機(自機)2−1は、周囲の四つの路側通信機2−2,2−3,2−4,2−5それぞれの設置位置に指向性(指向面)が向けられた四つの指向性アンテナ21a,21b,21c,21dを備えている。
【0055】
スロット番号i=4の第一スロットSL1では、自機2−1は、
図7(B)に示すように、無指向性アンテナから指向性アンテナ(例えば21a)へと切り替えて、別の路側通信機(2−2)へ情報を送信する。
スロット番号i=8の第一スロットSL1では、自機2−1は、
図7(C)に示すように、無指向性アンテナから指向性アンテナ21aへと切り替えて、路側通信機2−2からの情報を受信する。
そして、スロット番号i=10の第一スロットSL1では、自機2−1は、
図7(D)に示すように、無指向性アンテナから指向性アンテナ21bへと切り替えて、路側通信機2−3からの情報を受信する。
以下同様に、スロット番号i=12,14で、自機2−1は、
図7(E)(F)に示すように、無指向性アンテナから指向性アンテナ21c,21dへとそれぞれ切り替えて、路側通信機2−4,2−5からの情報を受信する。
【0056】
このように、路路間通信の通信相手が複数となる場合、指向性アンテナ(指向方向)を切り替えて用いる。そして、路路間通信のためにスロットの数を増やさなくても、
図8の場合、路側通信機(自機)2−1は、四方向の別の路側通信機とそれぞれ路路間通信を行うことができ、これら路路間通信のそれぞれでは、通信相手となる別の路側通信機に指向性を向けた指向性アンテナを用いていることから、別の路路間通信を行う路側通信機との間の干渉は防止される。
【0057】
〔6. アンテナ指向性の変更タイミング〕
アンテナ指向性の変更についてさらに説明する。
〔6.1 その1〕
図9は、路側通信機(自機)2における、送信のためのアンテナ指向性を説明する説明図であり、(A)は、スロットの配置を示し、(B)は使用するアンテナを示している。
図9(A)では、スロット番号i,i+1の第一スロットSL1が、自機2に割り当てられている。
【0058】
スロット番号iの第一スロットSL1では、動的情報を含むダウンリンクデータを送信する路車間通信が行われ、その後、静的情報を含むダウンリンクデータを送信する路車間通信が行われる。
次のスロット番号i+1の第一スロットSL1では、動的情報を含むダウンリンクデータを送信する路車間通信が行われ、その後、路路間通信が行われる。
【0059】
この場合、自機2の制御部23は、この路路間通信のために、
図9(B)に示すように、路車間通信(動的)から路路間通信へと切り替わるタイミング(
図9の矢印X1)と同時に、無指向性アンテナ20から指向性アンテナ21へと切り替え、「送信」のためのアンテナ指向角を小さくしている。つまり、路車間通信における「送信」のためのアンテナ指向性よりも、小さい状態に変更している。なお、切り替える指向性アンテナ21は、路路間通信の通信相手となる別の路側通信機2の方向に指向性(試行面)が向けられたアンテナである。
これにより、スロット番号i+1の第一スロットSL1に含まれる、路路間通信の時間帯Tsにおいて、通信相手となる別の路側通信機2の方向に電波を送信することが可能となり、それ以外の方向へは電波が届きにくくなり、自機2とは関係の無い路路間通信を行っている近隣の路側通信機に対する干渉を低減することができる。このとき、通信相手となる別の路側通信機2に過剰な強度の電波が届く場合は、アンテナの切り替えに加えて、送信電力を低くするように制御してもよい。
【0060】
なお、制御部23は、路車間通信から路路間通信へと切り替わるタイミング(
図9の矢印X1)以後に、路路間通信における送信のためのアンテナ指向角を小さくしている。つまり、路車間通信における「送信」のためのアンテナ指向性よりも、小さい状態に変更してもよく、例えば、
図9の矢印X2のタイミングで、変更する制御を行ってもよい。
【0061】
〔6.2 その2〕
図10は、
図9の変形例を示す説明図である。
図10に示す例では、スロット番号i+1のスロットの全期間にわたって路路間通信が行われており、この点で
図9の例と異なる。
この場合、制御部23は、路路間通信以外の通信である車車間通信から、この路路間通信へと切り替わるタイミング(
図10の矢印X3)と同時に(又はこのタイミング以後であってもよい)、路路間通信における送信のためのアンテナ指向角を、車車間通信における送信のためのアンテナ指向性よりも、小さい状態に変更すればよい。このとき、通信相手となる別の路側通信機2に過剰な強度の電波が届く場合は、アンテナの切り替えに加えて、送信電力を低くするように制御してもよい。
【0062】
この
図10に示す例の無線通信システムでは、第一スロットSL1及び第二スロットSL2の他に、路路間通信のみが可能となる第三スロットSL3が、時分割されていると言える。そして、この第三スロットSL3は、路路間通信を行う専用のスロットであり、自機2の他にも、別の路側通信機2にも割り当てられている。
つまり、この場合、制御部23は、別の路側通信機2に割り当てられている第三スロットSL3の間で、路路間通信を行う制御を行っており、自機2を含む複数の路側通信機2によりこの第三スロットSL3を共用することができる。
【0063】
〔6.3 その3〕
図11は、路側通信機(自機)2における、受信のためのアンテナ指向性を説明する説明図であり、(A)は、スロットの配置を示し、(B)は使用するアンテナを示している。
図11(A)では、スロット番号i,i+1の第一スロットSL1が、自機2とは別である路側通信機(他機)2に割り当てられている。この路側通信機(他機)2は、自機2と路路間通信を行う通信相手である。
【0064】
他機2において、スロット番号iの第一スロットSL1では、動的情報を含むダウンリンクデータを送信する路車間通信が行われ、その後、静的情報を含むダウンリンクデータを送信する路車間通信が行われる。
そして、次のスロット番号i+1の第一スロットSL1では、動的情報を含むダウンリンクデータを送信する路車間通信が行われ、その後、自機2との間で路路間通信が行われる。
【0065】
この場合、自機2の制御部23は、この路路間通信のために、
図11(B)に示すように、この路路間通信の時間帯Tsを含む第一スロットSL1中に、無指向性アンテナ20から指向性アンテナ21へと切り替え、「受信」のためのアンテナ指向角を小さい状態に変更している。
特に
図11の例では、自機2の制御部23は、路車間通信(動的)から路路間通信へと切り替わるタイミング(
図11の矢印X4)と同時に、「受信」のためのアンテナ指向角を、路車間通信における受信のためのアンテナ指向性よりも、小さい状態に変更する制御を行っている。なお、切り替える指向性アンテナ21は、路路間通信の通信相手となる別の路側通信機2の方向に指向性(指向面)が向けられたアンテナである。
これにより、路路間通信の時間帯Tsで、特定の方向(他機2の方向)以外からの電波を受信しにくくすることが可能となり、自機2とは関係の無い路路間通信を行っている近隣の路側通信機が送信した電波によって、自機が受ける干渉を低減することができる。
【0066】
なお、
図11の例では、路車間通信(動的)から路路間通信へと切り替わるタイミングと同時に、「受信」のためのアンテナ指向角を小さくする制御を行っているが、路車間通信から路路間通信へと切り替わるタイミングより前に、又は、このタイミングよりも少し後に、アンテナ指向角を小さくする制御を行ってもよい。
【0067】
〔6.4 その4〕
図12は、
図11の変形例を示す説明図である。
図12(A)に示すように、スロットの形態は
図11(A)と同じである。
図12の例では、制御部23は、(B)に示すように、路路間通信が行われるスロット番号i+1の第一スロットSL1の開始と共に、「受信」のためのアンテナ指向角を、路車間通信における送信のためのアンテナ指向性よりも、小さい状態に変更し、この第一スロットSL1の間、継続してアンテナ指向角を小さい状態とする制御を行っている。なお、切り替える指向性アンテナ21は、路路間通信の通信相手となる別の路側通信機2の方向に指向性(試行面)が向けられたアンテナである。
【0068】
この場合、第一スロットSL1のどのようなタイミングで路車間通信から路路間通信へと切り替わっても、特定の方向(他機2の方向)からの電波を受信することが可能となり、そして、この特定の方向(他機2の方向)以外からの電波を受信しにくくすることが可能となる。このため、自機2とは関係の無い路路間通信を行っている近隣の路側通信機が送信した電波によって、自機が受ける干渉を低減することができる。
【0069】
前記の各例において、第二スロットSL2では、無指向性のアンテナが機能する状態としている。これは、第二スロットSL2は車車間通信のためのスロットであるが、路側通信機2は、車車間通信の情報を取得しやすくするためである。
【0070】
〔7. 路路間通信における変調方式について〕
制御部23は、路車間通信及び路路間通信を行うための制御を行うが、その制御には、無線通信のための変調方式及び符号化率の制御が含まれる。例えば、路車間通信では、16値直交振幅変調(16QAM符号化率3/4)で変調を行い、路路間通信では、4相位相変調(QPSK符号化率1/2)で変調を行うための制御が、制御部23によって行われる。
この場合、制御部23は、自機2に割り当てられた第一スロットSL1において路車間通信の後に路路間通信を行う際に、路車間通信で用いる変調方式よりも多値数が低い変調方式に替える制御を行う。
【0071】
このように、変調方式をQPSK符号化率1/2に替えて路路間通信を行うことにより、受信側の路側通信機2では、受信信号の大きさに多少の変動が生じていても誤り率への影響が小さいことから、許容される誤り率を維持しつつ、送信電力を下げることができ、干渉の影響をより一層防ぐことが可能となる。
なお、変調方式及び符号化率の制御は、静的(予め設定)でも、動的(自律的に制御)でもよく、路路間通信の頻度や送信データ量、第一通信期間の占有率などの無線環境に基づいて決めるのが望ましい。
【0072】
〔8. アンテナ指向角の変更について〕
前記各実施形態では、路側通信機2において、路路間通信における送信と受信のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信(路車間通信、車車間通信)のためのアンテナ指向角よりも、小さくするために、無指向性アンテナ20と指向性アンテナ21との組み合わせから、使用するアンテナを、指向性のものに選択する場合について説明した。
しかし、路路間通信における送信と受信のためのアンテナ指向角を小さくするための制御を、アレイアンテナ19(
図13参照)によるビームシェイプで実現してもよい。
【0073】
すなわち、路車間通信を行う際には、水平ビーム幅を広くするためにアンテナ指向角を大きくし、路路間通信を行うタイミングで、水平ビーム幅を狭くするためにアンテナ指向角を狭くする制御を、アレイアンテナ19(
図13参照)を用いて制御部23が行う。
また、
図7と
図8とで説明したように、複数方向に設置されている複数の別の路側通信機2それぞれと路路間通信を行う場合においても、このアレイアンテナ19によって、通信相手となる別の路側通信機2の方向に指向面を向けて送受信を行うことができる。
【0074】
〔9. その他〕
今回開示した実施形態(上述の各変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、制御部23は、路路間通信における「送信」と「受信」との双方のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信(路車間通信、車車間通信)のためのアンテナ指向角よりも、小さくする制御を行う場合について説明した。しかし、本発明では、制御部23によって、路路間通信における送信と受信とのうちの少なくとも一方のためのアンテナ指向角を、路路間通信以外の通信(路車間通信、車車間通信)のためのアンテナ指向角よりも、小さくする制御が行われればよい。
【0075】
また、参考として説明する路側通信機は、路車間通信が可能となる第一スロット(第一通信期間)と車車間通信が可能となる第二スロット(第二通信期間)とが時分割されて無線通信が行われる通信システムに含まれる路側通信機であって、
自機に割り当てられた第一スロットに、路車間通信の他に(路車間通信の後に)路路間通信を可能とする制御を行う制御部を備えており、
前記制御部は、路車間通信と路路間通信とで変調方式を変更する制御を行うことができる。
特に、この制御部は、自機に割り当てられた第一スロットにおいて路路間通信を行う際に、路車間通信で用いる変調方式よりも多値数が低い変調方式に替える制御を行うのが好ましい。
この路側通信機によれば、前記〔7. 路路間通信における変調方式について〕で説明したように、変調方式をQPSK符号化率1/2に替えて路路間通信を行うことにより、受信信号の大きさに多少の誤差が生じていても影響が小さいことから、許容される誤り率を維持しつつ、送信電力を下げることができ、干渉の影響を防ぐことが可能となる。