(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者が運転中にウインカーやハザードの作動状態を切り替えるためには、操舵角が意図するものから外れないようにハンドルの状態に留意しつつ、ウインカースイッチやハザードスイッチを操作する必要がある。運転中のこうした操作は、特に運転に不慣れな運転者にとって煩雑な作業であり、ウインカー等の作動状態を迅速に切り替える際の支障となる。
【0005】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転に不慣れな運転者であってもウインカーやハザードの作動状態を迅速に切り替えることのできる車両用方向指示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決する車両用方向指示装置は、車両を操舵するためのハンドルに作用する外力を検出する検出部を備え、前記検出部によって検出される外力が水平方向に作用する場合にはその外力が第1の閾値以上であるときにウインカーの作動状態を切り替える一方、前記外力がハンドルシャフトの軸方向に作用する場合にはその外力が第2の閾値以上であるときにハザードの作動状態を切り替えるようにしている。
【0007】
上記車両用方向指示装置によれば、運転者がハンドルに所定方向の外力を作用させることによって、ウインカー又はハザードの作動状態を切り替えることができる。そのため、例えばハンドルを所定方向に叩く等の簡易な操作によって迅速にウインカーやハザードの作動状態を切り替えることができる。したがって、運転に不慣れな運転者であっても、迅速にウインカーやハザードの作動状態を切り替えることができるようになる。
【0008】
(2)上記車両用方向指示装置では、前記外力が水平方向における車両前進方向左側に向かって作用する場合には左側のウインカーの作動状態を切り替える一方、前記外力が水平方向における車両前進方向右側に向かって作用する場合には右側のウインカーの作動状態を切り替えるようにするのが望ましい。
【0009】
上記車両用方向指示装置によれば、車両を右左折させる際の車両前進方向と運転者が外力を作用させる方向とが一致するため、運転者の感覚に即したウインカー操作を実行することができるようになる。
【0010】
(3)また、上記車両用方向指示装置において、前記検出部は前記ハンドルシャフトを車体に固定するコラムシャフトの外周に配設することとしてもよい。
上記車両用方向指示装置によれば、運転車のハンドル操作によって回転しない部分であるコラムシャフトに検出部が配設されているため、運転者がハンドル操作を行ったとしても、外力を作用させる方向と検出部で検出される外力の方向とには変化が生じない。したがって、ハンドル操作に伴って検出部が回転する構成とは異なり、操舵角を考慮して外力の作用方向を特定する等、複雑な演算を用いなくても外力の作用方向を検出することができる。
【0011】
(4)こうした車両用方向指示装置において、車両が直進状態にある場合には、車速が高くなるほど前記各閾値の少なくとも一方を低下させるようにするのが望ましい。
ハンドルに外力を作用させたときにハンドルが運転者の意図に反してわずかに回転して操舵角が変化する場合がある。そして、車両が直進しているときには、その車速が高くなるほど、操舵角が変化した際の車両の時間当たりにおける位置変化量が大きくなる。
【0012】
その点、上記車両用方向指示装置によれば、車速が高くなるほど第1の閾値及び第2の閾値の少なくとも一方を低下させるようにしたため、ウインカーやハザードの作動状態を切り替えるために必要な外力を小さくすることができる。そのため、ウインカーやハザードの作動状態を切り替える際に、運転者の意図に反して操舵角が変化してしまうことを抑え、そうした変化に起因する車両位置の変動を抑制することができる。
【0013】
(5)また上記車両用方向指示装置において、車両が旋回状態にある場合には、角速度が大きくなるほど前記各閾値の少なくとも一方を低下させるようにしてもよい。
上述したように、ハンドルに外力を作用させたときにハンドルが運転者の意図に反してわずかに回転して操舵角が変化する場合がある。そして、車両が旋回しているときには、その角速度が大きくなるほど、操舵角が変化した際の車両の時間当たりにおける位置変化量が大きくなる。
【0014】
その点、上記車両用方向指示装置によれば、角速度が大きくなるほど第1の閾値及び第2の閾値の少なくとも一方を低下させるようにしたため、ウインカーやハザードの作動状態を切り替えるために必要な外力を小さくすることができる。そのため、ウインカーやハザードの作動状態を切り替える際に、運転者の意図に反して操舵角が変化してしまうことを抑え、そうした変化に起因する車両位置の変動を抑制することができる。
【0015】
(6)上記車両用方向指示装置において、前記ハンドルの操舵角の変化速度が大きくなるほど前記各閾値の少なくとも一方を増大させるのが望ましい。
運転者がハンドルを回転させているときには、回転させる力の一部がハンドルに対して水平方向や軸方向に作用する場合がある。そして、水平方向に作用する力が第1の閾値を上回った場合や、軸方向に作用する力が第2の閾値を上回った場合には、運転者が意図しないのにもかかわらずウインカーやハザードの作動状態が切り替えられるといった誤動作が生じるおそれがある。また、こうした回転操作に伴って生じる外力は、ハンドルの操舵角の変化速度が大きくなるほど大きくなる。
【0016】
その点、上記車両用方向指示装置によれば、操舵角の変化速度が大きくなるほど第1の閾値及び第2の閾値の少なくとも一方を増大させるようにしたため、運転者がハンドルを回転させるときの外力によって、誤ってウインカーやハザードの作動状態が切り替えられてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる車両用方向指示装置によれば、運転に不慣れな運転者であってもウインカーやハザードの作動状態を迅速に切り替えることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用方向指示装置の一実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。
まず、本実施形態にかかる車両用方向指示装置の構造について説明する。
図1に示すように、車両用方向指示装置は、ハンドル1、ハンドルシャフト2、コラムシャフト3、加速度センサ4、制御部5を備えている。なお、
図1は、ハンドル1、ハンドルシャフト2、コラムシャフト3を上方から見た図である。また以下では、同
図1の右方向を車両前進方向とし、上側を車両前進方向左側、下側を車両前進方向右側とする。また、
図1に示すX方向を水平方向とする。
【0020】
ハンドル1は、その中心部にハンドルシャフト2が接続されている。ハンドル1は、その回転に伴いハンドルシャフト2等を介して操舵輪の向き、すなわち操舵方向を変更する。なお、同
図1では、ハンドルシャフト2の軸方向をZ方向としている。車体に固定されたコラムシャフト3は、ハンドルシャフト2を回転可能に支持している。また、コラムシャフト3の外周には、水平方向においてコラムシャフト3を挟んで対向する位置に一対の加速度センサ4が検出部として設けられている。
【0021】
これら加速度センサ4は、直交する3方向の加速度をそれぞれ検出することができる3軸センサである。ハンドル1に作用した外力がハンドルシャフト2を介してコラムシャフト3に作用し、同コラムシャフト3が振動すると、加速度センサ4はその振動に伴って生じる加速度のX方向及びZ方向の成分を検出する。なお、加速度センサ4は、水平方向における車両前進方向右側に向かって外力が作用した場合にはその出力のX方向成分(以下「X成分」という)が正の値となる。一方、加速度センサ4は、水平方向における車両前進方向左側に向かって外力が作用した場合にはその出力のX成分が負の値となる。また、加速度センサ4の出力のZ方向成分(以下「Z成分」という)とは、ハンドルシャフト2の軸方向に作用する外力に応じた値である。これら加速度センサ4の出力は制御部5に取り込まれる。その他、制御部5には、車速センサ6や操舵角センサ7の信号が取り込まれる。
【0022】
制御部5は、各加速度センサ4からの出力に基づいて方向指示灯8の点滅又は消灯状態を切り替える制御を実行する。こうした制御としては、いずれか一方の方向指示灯8を点滅又は消灯させるウインカー制御や、両方の方向指示灯8を同時に点滅又は消灯させるハザード制御がある。
【0023】
次に、
図2のフローチャートを参照して、本実施形態の車両用方向指示装置におけるウインカー及びハザードの作動状態の切り替え動作ついて詳細に説明する。なお、この処理は、制御部5によって所定の時間ごとに繰り返し実行される。なお、以下では、両加速度センサ4から出力される各出力の平均値を加速度センサ4の出力という。
【0024】
図2に示すように、本処理ではまず、両加速度センサ4の出力を読み込む。そして、加速度センサ4の出力のX成分の絶対値が閾値Tx以上であるか否かを判定する(ステップS1)。そして、ステップS1の処理において、X成分の絶対値が閾値Tx以上であると判断された場合、すなわち水平方向に作用する外力が第1の閾値以上であると判断された場合(ステップS1:YES)には、次にX成分が正の値であるか負の値であるかを判定する(ステップS2)。そして、X成分が正の値である場合(ステップS2:正の値)には、右側(
図1における下側)の方向指示灯8のウインカー制御を実行する。すなわちこの場合、右ウインカーをONとする(ステップS3)。また、ステップS2の処理において、X成分が負の値であると判断された場合(ステップS2:負の値)には、左側(
図1における上側)の方向指示灯8のウインカー制御を実行し、左ウインカーをONとする(ステップS4)。
【0025】
一方、ステップS1において、加速度センサ4の出力のX成分の絶対値が閾値Tx未満と判断された場合(ステップS1:NO)には、加速度センサ4の出力のZ成分が閾値Tz以上であるか否かを判定する(ステップS5)。そして、ステップS5の処理において、Z成分が閾値Tz以上と判断された場合(ステップS5:YES)、すなわちハンドルシャフト2の軸方向に作用する外力が第2の閾値以上であると判断された場合には、ハザード制御を実行し、ハザードをONとする(ステップS6)。このように、本実施形態では、ステップ1においてまずX成分の絶対値が閾値以上であるか否かを判定し、その後ステップS5においてZ成分が閾値Tz以上であるか否かを判定している。そのため、ウインカー制御はハザード制御より優先して実行される。
【0026】
また、ステップS5において否定判定された場合(ステップS5:NO)、すなわち、ハンドル1に対して、水平方向に作用する外力が第1の閾値未満であり、ハンドルシャフト2の軸方向に作用する外力が第2の閾値未満である場合には、後の処理を実行せずに本処理は終了する。
【0027】
次に、左ウインカーON後の処理手順(ステップS4、S7〜S14)について詳述する。
ステップS4において左ウインカーがONとされると、その処理をステップS7に移行する。ステップS7では、再度加速度センサ4の出力を読み込み、そのX成分が閾値Tx以上であるか否かを判定する。そして、X成分が閾値Tx以上であると判断された場合(ステップS7:YES)、すなわち、左ウインカーがONされている状態で右ウインカー制御の実行指示が検知された場合には、左ウインカーをOFFにする(ステップS8)。その後、その処理をステップS3へ移行して、右ウインカーをONとする。
【0028】
また、ステップS7において、X成分が閾値Tx未満であると判断された場合(ステップS7:NO)には、その処理をステップS9へ移行する。
ステップS9では、再度読み込んだ加速度センサ4の出力のZ成分の出力値が閾値Tz以上であるか否かを判定する。そして、Z成分が閾値Tz以上であると判断された場合(ステップS9:YES)、すなわち、左ウインカーがONされている状態で、ハザード制御の実行指示が検知された場合には、左ウインカーをOFFにする(ステップS10)。その後、その処理をステップS6へ移行して、ハザードをONとする。
【0029】
一方、ステップS9において、Z成分が閾値Tz未満であると判断された場合(ステップS9:NO)には、その処理をステップS11に移行する。
ステップS11では、X成分が閾値−Tx以下であるか否かを判定する。なお、閾値−Txは、閾値Txの正負を反転した値であり、加速度センサ4の出力のX成分がこの閾値−Tx以下である場合には、水平方向に第1の閾値以上の外力がハンドル1に作用したこととなる。そして、この処理において、X成分が閾値−Tx以下であると判断された場合(ステップS11:YES)、すなわち、左ウインカーがONされた状態で、再度左ウインカー制御の実行指示が検知された場合には、左ウインカーをOFFにして(ステップS14)、本処理を終了する。したがって、左ウインカーONの状態で運転者がハンドル1に対して車両進行方向左側に再度外力を作用させれば、左ウインカーをOFFにすることができる。
【0030】
また、ステップS11の処理において、X成分が閾値−Txよりも大きいと判断された場合(ステップS11:NO)、すなわち、左ウインカーON後に、ウインカー制御やハザード制御の実行指示が検知されていない場合には、次に、ステップS12にその処理を移行して、ハンドル操作がなされたか否かを判定する。ハンドル操作がなされたか否かは、例えば左ウインカーがONとされたときのハンドル1の操舵角と、その後の操舵角の変更履歴とに基づいて判断することができる。そして、ハンドル操作がなされていないと判断された場合(ステップS12:NO)には、左ウインカーをONとした状態のままで再度ステップS7からその処理を実行する。
【0031】
一方、ステップS12の処理において、ハンドル操作がなされたと判断された場合(ステップS12:YES)には、その処理をステップS13に移行する。ステップS13では、ハンドル1が中立位置か否かを判定する。ハンドル位置が中立位置か否かは、例えば、操舵角センサ7の出力が0となったことに基づいて判断することができる。そして、ステップS13の処理において、ハンドル位置が中立位置にないと判断された場合(ステップS13:NO)には、左ウインカーをONとした状態のままで再度ステップS7からその処理を実行する。
【0032】
一方、ステップS13の処理において、ハンドル位置が中立位置であると判断された場合(ステップS13:YES)には、左ウインカーをOFFにして(ステップS14)、本処理を終了する。こうした処理によって、左ウインカーON後に運転者が車両を旋回させた場合には、その旋回後に自動的に左ウインカーをOFFとすることができる。
【0033】
次に、右ウインカーON後の処理手順(ステップS3、S15〜S22)について詳述する。
ステップS3において右ウインカーがONとされると、その処理をステップS15に移行する。ステップS15では、再度加速度センサ4の出力を読み込み、そのX成分が閾値−Tx以下であるか否かを判定する。そして、X成分が閾値−Tx以下であると判断された場合(ステップS15:YES)、すなわち、右ウインカーがONされている状態で左ウインカー制御の実行指示が検知された場合には、右ウインカーをOFFにする(ステップS16)。その後、その処理をステップS4へ移行して、左ウインカーをONとする。なお、その後の処理手順(ステップS7〜S14)については、上述の通りである。
【0034】
また、ステップS15において、X成分が閾値−Txより大きいと判断された場合(ステップS15:NO)には、その処理をステップS17へ移行する。
ステップS17では、再度読み込んだ加速度センサ4の出力のZ成分の出力値が閾値Tz以上であるか否かを判定する。そして、Z成分が閾値Tz以上であると判断された場合(ステップS17:YES)、すなわち、右ウインカーがONされている状態で、ハザード制御の実行指示が検知された場合には、右ウインカーをOFFにする(ステップS18)。その後、その処理をステップS6へ移行して、ハザードをONとする。
【0035】
一方、ステップS17において、Z成分が閾値Tz未満である場合(ステップS17:NO)には、その処理をステップS19に移行する。
ステップS19では、X成分が閾値Tx以上であるか否かを判定する。そして、この処理において、X成分が閾値Tx以上であると判断された場合(ステップS19:YES)、すなわち、右ウインカーがONされた状態で、再度右ウインカー制御の実行指示が検知された場合には、右ウインカーをOFFにして(ステップS22)、本処理を終了する。したがって、右ウインカーONの状態で運転者がハンドル1に対して車両進行方向右側に再度外力を作用させれば、右ウインカーをOFFにすることができる。
【0036】
また、ステップS19の処理において、X成分が閾値Tx未満であると判断された場合(ステップS19:NO)、すなわち、右ウインカーON後に、ウインカー制御やハザード制御の実行指示が検知されていない場合には、次に、ハンドル操作がなされたか否かを判定する(ステップS20)。そして、ハンドル操作がなされていないと判断された場合(ステップS20:NO)には、右ウインカーをONとした状態のままで再度ステップS15からその処理を実行する。また、ステップS20の処理において、ハンドル操作がなされたと判断された場合(ステップS20:YES)には、その処理をステップS21に移行する。そして、ステップ21において、ハンドル1が中立位置か否かを判定する。ステップS21の処理において、ハンドル位置が中立位置にないと判断された場合(ステップS21:NO)には、右ウインカーをONとした状態のままで再度ステップS15からその処理を実行する。
【0037】
一方、ステップS21においてハンドル位置が中立位置であると判断された場合(ステップS21:YES)には、右ウインカーをOFFにして(ステップS22)、本処理を終了する。こうした処理によって、右ウインカーON後に運転者が車両を旋回させた場合には、その旋回後に自動的に右ウインカーをOFFとすることができる。
【0038】
次に、ハザードON後の処理手順(ステップS6、S23〜S28)について詳述する。
次に、ステップS6、S23〜S28を参照して、ハザードON後の処理手順について詳述する。
【0039】
ステップS6においてハザードがONとされると、その処理をステップS23へ移行する。ステップS23では、再度加速度センサ4の出力を読み込み、そのX成分が閾値−Tx以下であるか否かを判定する。そして、X成分が閾値−Tx以下であると判断された場合(ステップS23:YES)、すなわち、ハザードがONされている状態で左ウインカー制御の実行指示が検知された場合には、ハザードをOFFにする(ステップS24)。その後、その処理をステップS4へ移行して、左ウインカーをONとする。なお、その後の処理手順(ステップS7〜S14)については、上述の通りである。
【0040】
また、ステップS23において、X成分が閾値−Txより大きいと判断された場合(ステップS23:NO)には、その処理をステップS25へ移行する。
ステップS25では、再度読み込んだ加速度センサ4のX成分が閾値Tx以上であるか否かを判定する。そして、X成分が閾値Tx以上であると判断された場合(ステップS25:YES)、すなわち、ハザードがONされている状態で、右ウインカー制御の実行指示が検知された場合には、ハザードをOFFにする(ステップS26)。その後、その処理をステップS3へ移行して、右ウインカーをONとする。なお、その後の処理手順(ステップS15〜S22)については、上述の通りである。
【0041】
このように、ステップS23において加速度センサ4の出力のX成分が閾値−Txより大きいと判断された場合や、ステップS25においてX成分が閾値Tx以上であると判断された場合にはいずれもハザードがOFFされ、左ウインカーまたは右ウインカーがONとされる。
【0042】
また、ステップS25において、X成分が閾値Tx未満であると判断された場合(ステップS25:NO)には、その処理をステップS27へ移行する。
ステップS27では、再度読み込んだ加速度センサ4の出力のZ成分の出力値が閾値Tz以上であるか否かを判定する。そして、Z成分が閾値Tz以上であると判断された場合(ステップS27:YES)、すなわち、ハザードがONされている状態で、再度ハザード制御の実行指示が検知された場合には、ハザードをOFFにして(ステップS28)、本処理を終了する。したがって、ハザードONの状態で運転者がハンドルシャフト2の軸方向に再度外力を作用させれば、ハザードをOFFにすることができる。
【0043】
一方、ステップS27において、Z成分が閾値Tz未満であると判断された場合(ステップS27:NO)には、ハザードをON状態としたままで再度ステップS23からその処理を実行する。これにより、運転者が再度ハザード制御の指示を出すまでは、ハザードONの状態が維持されることとなる。
【0044】
ところで、ウインカーやハザードの作動状態を切り替えようと運転者がハンドル1に外力を作用させたときには、ハンドル1が運転者の意図に反してわずかに回転して操舵角が変化する場合がある。そして、車両が直進しているときには、車速が高くなるほど、操舵角が変化した際の車両の時間当たりにおける位置変化量が大きくなる。また、車両が旋回しているときには、角速度が大きくなるほど、操舵角が変化した際の車両の時間当たりにおける位置変化量が大きくなる。
【0045】
そこで、本実施形態の車両用方向指示装置では、車両の状態に応じて閾値Tx及び閾値Tzを可変設定している。
次に、
図3のフローチャートを参照して、閾値設定処理の手順について説明する。なお、この処理は、制御部5によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0046】
図3に示すように、本処理ではまず、ハンドル位置が中立位置にあるか否かを判定する(ステップS1)。そして、ステップS1の処理において、ハンドル位置が中立位置にあると判断された場合(ステップS1:YES)、すなわち車両が直進状態にある場合には、ステップS2にその処理を移行する。そして、直進時閾値マップに基づいて閾値Tx及び閾値Tzをマップ演算する。
図4に、直進時閾値マップにおける車速と閾値との関係を示している。
【0047】
図4(a)に示すように、車両が直進状態にある場合には、閾値Txは車速が高くなるほど低い値に設定される。また、
図4(b)に示すように、閾値Tzは車速が高くなるほど低い値に設定される。
【0048】
したがって、車速が高く操舵角が変化した際の車両位置の変化量が大きいときほど、ウインカーやハザードの作動状態を切り替えるために必要な外力を小さくすることができる。そのため、外力を作用させた際に操舵角が大きく変化することを抑制して車両位置の変動を低減させることができる。
【0049】
一方、ステップS1の処理において、ハンドル位置が中立位置にないと判断された場合(ステップS1:NO)、すなわち車両が旋回状態にある場合には、ステップS3にその処理を移行する。そして、旋回時閾値マップに基づいて閾値Tx及び閾値Tzをマップ演算する。
【0050】
ここで、運転者がハンドル1を回転させているときには、その回転させる力の一部がハンドル1に対して水平方向や軸方向に作用する場合がある。そして、水平方向に作用する力が第1の閾値を上回った場合や、軸方向に作用する力が第2の閾値を上回った場合には、運転者が意図しないのにもかかわらずウインカーやハザードの作動状態が切り替えられるといった誤動作が生じるおそれがある。そして、こうした回転操作による外力は、ハンドル1の操舵角の変化速度が大きくなるほど大きくなる。
【0051】
そこで、本実施形態の車両用方向指示装置では、車両旋回時には、ハンドル1の操舵角の変化速度に応じても閾値Tx及び閾値Tzを可変としている。
図5(a)に示すように、車両が旋回状態にある場合には、閾値Txは、角速度が大きくなるほど低い値に設定される。なお、角速度は、例えば車速センサ6及び操舵角センサ7に基づいて検出してもよいし、車両に取付けられたヨーレートセンサにより検出してもよい。また、閾値Txは、操舵角センサ7の出力値の変化速度、すなわち、ハンドル操舵角の変化速度が大きくなるほど連続的に増大するように設定される。また、
図5(b)に示すように、閾値Tzは、角速度が大きくなるほど低い値に設定される。また、閾値Tzは、操舵角センサ7の変化速度、すなわち、ハンドル操舵角の変化速度が大きくなるほど連続的に増大するように設定される。
【0052】
したがって、角速度が大きく操舵角が変化した際の車両位置の変化量が大きいときほど、ウインカーやハザードの作動状態を切り替えるために必要な外力を小さくすることができる。そのため、外力を作用させた際に操舵角が大きく変化することを抑制して車両位置の変動を低減させることができる。また、操舵角の変化速度が大きくなるほどウインカーやハザードの作動状態を切り替えるために必要な外力が大きくなるため、運転者がハンドル1を回転させるときの外力によって、誤ってウインカーの作動状態が切り替えられてしまうことを抑制することができる。
【0053】
次に、本実施形態の車両用方向指示装置の作用について説明する。
上述した車両用方向指示装置では、加速度センサ4によって検出される外力が水平方向に作用する場合にはその外力が第1の閾値以上であるときにウインカーの作動状態が切り替えられる。一方、前記外力がハンドルシャフト2の軸方向に作用する場合にはその外力が第2の閾値以上であるときにハザードの作動状態が切り替えられる。
【0054】
本実施形態の車両用方向指示装置は、以下の効果を奏する。
(1)例えばハンドル1を所定方向に叩く等の簡易な操作によって運転に不慣れな運転者であっても迅速にウインカーやハザードの作動状態を切り替えることができる。
【0055】
(2)車両前進方向左側に向かう外力がハンドル1に作用する場合には左側のウインカーの作動状態を切り替える一方、車両前進方向右側に向かう外力がハンドル1に作用する場合には右側のウインカーの作動状態を切り替えるようにした。そのため、車両を右左折させる際の車両前進方向と運転者が外力を作用させる方向とが一致し、運転者の感覚に即したウインカー操作を実行することができる。
【0056】
(3)加速度センサ4は、ハンドルシャフト2を車体に固定するコラムシャフト3の外周に配設している。そのため、運転者がハンドル操作を行ったとしても、外力を作用させる方向と加速度センサ4で検出される外力の方向とには変化が生じない。したがって、ハンドル操作に伴って加速度センサ4が回転する構成とは異なり、操舵角を考慮して外力の作用方向を特定する等、複雑な演算を用いなくても外力の作用方向を検出することができる。
【0057】
(4)車両が直進状態にある場合には、車速が高くなるほど第1の閾値及び第2の閾値を低下させている。そのため、車速が高くなるほどウインカーやハザードの作動状態を切り替えるために必要な外力を小さくすることができ、ウインカーやハザードの作動状態を切り替える際に、運転者の意図に反して操舵角が変化してしまうこと抑え、そうした変化に起因する車両位置の変動を抑制することができる。
【0058】
(5)車両が旋回状態にある場合には、角速度が大きくなるほど第1の閾値及び第2の閾値を低下させている。そのため、角速度が大きくなるほどウインカーやハザードの作動状態を切り替えるために必要な外力を小さくすることができ、ウインカーやハザードの作動状態を切り替える際に、運転者の意図に反して操舵角が変化してしまうことを抑え、そうした変化に起因する車両位置の変動を抑制することができる。
【0059】
(6)ハンドル1の操舵角の変化速度が大きくなるほど第1の閾値及び第2の閾値を増大させている。そのため、運転者がハンドル1を回転させるときの外力によって、誤ってウインカーの作動状態が切り替えられてしまうことを抑制することができる。
【0060】
なお、上記実施形態は、これを変更した以下の形態にて実施することもできる。また以下の変更例及び上記実施形態に記載される構成を適宜組み合わせて実施することもできる。
【0061】
・上記実施形態では、加速度センサ4の負の出力値に対する閾値を、正の出力値に対する閾値Txの正負を反転した値−Txに設定した。しかし、例えば正の出力値に対する閾値を閾値Txに設定するとともに、負の出力値に対する閾値を閾値−Txと異なる値に設定する等、正負の反転関係を有しない異なる値に変更してもよい。あるいは、これら閾値値を運転者により任意の値に変更可能な構成を採用することもできる。
【0062】
・上記実施形態では、加速度センサ4は、車両前進方向右側に向かって外力が作用した場合にはその出力のX成分が正の値となり、車両前進方向左側に向かって外力が作用した場合にはその出力のX成分が負の値となるよう配置したが、例えば、車両前進方向右側に向かって外力が作用した場合にはそのX成分が負の値となり、車両前進方向左側に向かって外力が作用した場合にはX成分が正の値となるよう配置してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、水平方向における車両前進方向右側に外力が作用した場合には、右側のウインカーの作動状態を切り替え、水平方向における車両前進方向左側に外力が作用した場合には、左側のウインカーの作動状態を切り替えるようにしていた。これに代えて、水平方向における車両前進方向右側に外力が作用した場合には、左側のウインカーの作動状態を切り替え、水平方向における車両前進方向左側に外力が作用した場合には、右側のウインカーの作動状態を切り替えるようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、車両が直進状態にあるときには、車速が高くなるほど第1の閾値(閾値Txの絶対値)及び第2の閾値(閾値Tzの絶対値)の両方を低下させるようにしたが、第1の閾値及び第2の閾値のいずれか一方のみを変化させるようにしてもよい。また、これら閾値は、車速に応じて徐々に変化させるのではなく、例えば、車速が低いときには第1の所定の閾値に設定し、車速が高いときには第1の所定の閾値よりも低い第2の所定の閾値に設定するといったように段階的に変化させるようにしてもよい。なお、こうした場合でも、車速が高くなるほど閾値を低下させるようにする。
【0065】
・上記実施形態では、車両が旋回状態にあるときには、角速度が大きくなるほど第1の閾値及び第2の閾値の両方を低下させるようにしたが、第1の閾値及び第2の閾値のいずれか一方のみを変化させるようにしてもよい。また、これら閾値は、角速度に応じて徐々に変化させるのではなく、例えば、角速度が小さいときには第1の所定の閾値に設定し、角速度が大きいときには第1の所定の閾値よりも低い第2の所定の閾値に設定するといったように段階的に変化させるようにしてもよい。なお、こうした場合でも、角速度が大きくなるほど閾値を低下させるようにする。
【0066】
・上記実施形態では、車両が旋回状態にあるときには、ハンドル操舵角の変化速度が大きくなるほど第1の閾値及び第2の閾値の両方を連続的に増大させるようにしていたが、第1の閾値及び第2の閾値のいずれか一方のみを変化させるようにしてもよい。また、閾値をハンドル操舵角の変化速度に応じて段階的に変化させるようにしてもよい。
【0067】
・上記実施形態では、ハンドル操作がなされたか否かを判定し、ハンドル1が操作された後に、ハンドル位置が中立位置であると判断されたときウインカーを自動的にOFFにするようにしたが、例えばハンドル1の操舵角が所定の操舵角以上となった後に、ハンドル操舵角が同所定の操舵角未満となったことに基づいてウインカーを自動的にOFFにするようにしてもよい。
【0068】
・上記実施形態では、ウインカー制御とハザード制御の実行指示が同時になされた場合には、ウインカー制御を優先して実行するようにしたが、ハザード制御を優先して実行するようにしてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、加速度センサ4をコラムシャフト3に配設したが、ハンドル1や、ハンドルシャフト2等に設けてもよい。なお、この場合には、ハンドル1の回転によって加速度センサ4によって検出される加速度の方向とハンドル1に作用する外力の方向との関係が変化するため、こうした関係を操舵角センサ7等によって特定した上で、所定方向に作用する外力の大きさを検出する。
・上記実施形態では、両加速度センサ4から出力される各出力値の平均値を用いてウインカー制御及びハザード制御を実行したが、これら制御を例えば各出力の加算値等に基づいて実行するようにしてもよい。
【0070】
・上記実施形態では、加速度センサ4を2つ設けたが、1つ又は3つ以上の加速度センサ4を設けることとしてもよい。ただし、本実施形態では、加速度センサ4を2つ設けているため、一方の加速度センサ4に異常が生じて本来出力されない出力値が検出された場合には、同加速度センサ4の出力値を無効化し、他方の加速度センサ4からの出力のみに基づいてウインカー制御及びハザード制御を実行することができる。こうした構成によれば、加速度センサ4の一方に異常が生じた場合であっても各制御を実行することができるようになる。
【0071】
・上記実施形態では、3方向の加速度をそれぞれ検出することができる3軸の加速度センサ4を用いたが、例えば1方向の加速度のみを検出する1軸の加速度センサを複数備え、それぞれの方向の加速度を検出するようにしてもよい。
【0072】
・上記実施形態では、検出部として加速度センサ4を用い、コラムシャフト3等に生じる加速度の方向及び大きさに基づきハンドル1に作用する外力を検出するようにしたが、こうした加速度の他、応力、圧力、歪み等に基づいて同外力を検出することもできる。例えば歪みゲージ等の他のセンサをコラムシャフト3等に設け、同センサの出力に基づいてハンドル1に作用する外力を検出するようにしてもよい。
【0073】
・上記実施形態では、ハンドル1に対して第1の閾値以上の外力が水平方向に作用する場合にはウインカーの作動状態を切り替える一方、第2の閾値以上の外力がハンドルシャフト2の軸方向に作用する場合にはハザードの作動状態を切り替えるようにした。こうした構成に加えて、ハンドル1に対して第3の閾値以上の外力が鉛直方向において例えば下向きに作用する場合にヘッドライト等の別の灯火機器や灯火機器以外の車載機器の作動状態を切り替えるようにしてもよい。
【0074】
次に、上記実施形態に適用可能な技術的思想について、その効果とともに以下に追記する。
(イ)ブレーキの踏み込み速度が大きくなるほど前記第2の閾値を大きな値とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用方向指示装置。
【0075】
ブレーキを踏み込んだときには、慣性力によって運転者からハンドルシャフトの軸方向に外力が付与される。そのため、ブレーキを踏み込んだ際に作用する外力が第2の閾値を上回った場合には、運転者が意図しないのにもかかわらずハザードの作動状態が切り替えられるといった誤動作が生じるおそれがある。また、こうしたブレーキ操作により運転者から付与される外力は、その踏み込み速度が大きくなるほど大きくなる。
【0076】
その点、上記車両用方向指示装置によれば、ブレーキの踏み込み速度が大きくなるほど第2の閾値が大きな値とされるため、運転者がブレーキを踏み込んだときに付与される外力によって、誤ってハザードの作動状態が切り替えられてしまうことを抑制することができる。