(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の第1の基板部を有する第1のマザー基板と複数の第2の基板部を有する第2のマザー基板とを用いて、前記第1の基板部と前記第2の基板部とが貼り合わせられた貼り合わせ基板を製造する製造方法であって、
端子を有する前記第1の基板部を前記第1のマザー基板に形成するステップと、
前記第1のマザー基板の前記端子が設けられた第1の面に、テーパ状の第1の溝を形成するステップと、
前記第1の溝の底部に、前記第1の溝の最大幅よりも幅狭の切込み溝を形成するステップと、
前記第1の基板部、及び前記第2の基板部の少なくとも一方に接着材を設けるステップと、
前記第1の面が前記第2のマザー基板側に配置され、前記端子が前記接着材の外側に配置された状態となるように、前記第1のマザー基板を前記接着材によって前記第2のマザー基板に貼り合わせるステップと、
前記第1のマザー基板の前記第1の面と反対側の第2の面の前記第1の溝に対応する位置に、テーパ状の第2の溝を形成するステップと、
前記第2の溝から前記切込み溝に向かって前記第1のマザー基板を切断して、各前記第1の基板部を分離するステップと、
前記第2のマザー基板の前記第1の基板部と反対側の面にスクライブ溝を設けるステップと、
前記第2のマザー基板を前記スクライブ溝に沿って切断して、各前記第2の基板部を分離するステップと、を備える製造方法。
前記第1の溝の前記第1の基板部の厚さ方向における深さと前記第2の溝の前記第1の基板部の厚さ方向における深さとは異なることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
前記第1の面取部の前記第1の基板の厚さ方向における深さが、前記第2の面取部の前記第1の基板の厚さ方向における深さよりも大きくなっている請求項5に記載の貼り合わせ基板。
前記第1の面取部の前記第1の基板の厚さ方向における深さが、前記第2の面取部の前記第1の基板の厚さ方向における深さよりも小さくなっている請求項5に記載の貼り合わせ基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、基板を貼り合わせる前に、ベース基板を切断している。したがって、個片基板毎に貼り合わせる必要があるため、生産性を高くすることが困難である。第1及び第2のマザー基板を貼り合わせた後に、切断を行う製造方法の問題点について、以下、
図11、
図12を用いて説明する。
図11、及び
図12は液晶表示素子の製造工程断面図である。
【0007】
図11に示すように、半導体ウエハ110とマザーガラス基板120とが、シール材130で貼り合わされている。半導体ウエハ110は、複数の半導体基板100を有している。ここでは、半導体ウエハ110が、2つの半導体基板100を有する構成を示している。マザーガラス基板120は、複数の対向基板101を有している。ここでは、マザーガラス基板120が2つの対向基板101を有する構成を示している。半導体基板100と対向基板101とが貼り合わされた貼り合わせ基板とが、液晶表示素子となる。シール材130は個々の液晶表示素子毎に設けられている。
【0008】
半導体基板100と対向基板101とシール材130とで形成される空間には液晶140が封入されている。半導体基板100には、液晶140を駆動するための端子113、画素電極111が形成されている。まず、半導体ウエハ110とマザーガラス基板120とを貼り合わせた状態で、半導体ウエハ110を切断する。すなわち、隣接する半導体基板100の間に切込み溝150を形成する。
【0009】
次に、マザーガラス基板120の半導体ウエハ110と反対側の面にスクライブ溝160を形成する。
図12に示すように、硬質ウレタンからなるブレーカステージ170の上に、貼り合わせ構造体を配置する。スクライブ溝160の直上に、ブレーカスキージ171を配置して、ブレーカスキージ171をマザーガラス基板120の方向に押し込む。こうすることで、マザーガラス基板120を切断することができる。
【0010】
しかしながら、ブレーカスキージ171を半導体基板100に押し込んだ際に、ブレーカステージ170にマザーガラス基板120が押し込まれる。このとき、
図12に示すように、ブレーカステージ170が変形する。半導体基板100がマザーガラス基板120に接触して、半導体基板100の角部や対向基板101が破損するおそれがある(
図12中の接触箇所181)。また、隣接する半導体基板100が接触して、半導体基板100の角部が破損するおそれがある(
図12中の接触箇所180)。このように、半導体基板100や対向基板101が破損してしまうと、破片が端子113やその周辺の回路に影響を与えてしまう。したがって、回路の不良や接続端子の接点不良となる場合がある。よって、歩留まりが低下して、生産性が低下してしまう恐れがある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑み、生産性の高い貼り合わせ基板とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様にかかる製造方法は、複数の第1の基板部(半導体基板100)を有する第1のマザー基板(半導体ウエハ110)と複数の第2の基板部(対向基板101)を有する第2のマザー基板(マザーガラス基板120)とを用いて、前記第1の基板部(半導体基板100)と前記第2の基板部(対向基板101)とが貼り合わせられた貼り合わせ基板を製造する製造方法であって、端子(113)を有する前記第1の基板部(半導体基板100)を前記第1のマザー基板に形成するステップ(ステップS2)と、前記第1のマザー基板(半導体ウエハ110)の前記端子(113)が設けられた第1の面に、テーパ状の第1の溝(151)を形成するステップ(ステップS4)と、前記第1の溝(151)の底部に、前記第1の溝(151)の最大幅よりも幅狭の切込み溝(152)を形成するステップ(ステップS4)と、前記第1の基板部(半導体基板100)、及び前記第2の基板部(対向基板101)の少なくとも一方に接着材(シール材130)を形成するステップ(ステップS6)と、前記第1の面が前記第2のマザー基板(マザーガラス基板120)側に配置され、前記端子が前記接着材の外側に配置された状態となるように、前記第1のマザー基板を前記接着材(シール材130)によって前記第2のマザー基板(マザーガラス基板120)に貼り合わせるステップ(ステップS9)と、前記第1のマザー基板(半導体ウエハ110)の前記第1の面と反対側の第2の面の前記第1の溝(151)に対応する位置に、テーパ状の第2の溝(153)を形成するステップ(ステップS10)と、前記第2の溝(153)から前記切込み溝(152)に向かって前記第1のマザー基板(半導体ウエハ110)を切断して、各前記第1の基板部(半導体基板100)を分離するステップ(ステップS11)と、前記第2のマザー基板(マザーガラス基板120)の前記第1の基板部(半導体基板100)と反対側の面にスクライブ溝(160)を設けるステップ(ステップS12)と、前記第2のマザー基板(マザーガラス基板120)を前記スクライブ溝(160)に沿って切断して、各前記第2の基板部(対向基板101)を分離するステップ(ステップS12)と、を備えるものである。
上記の製造方法において、前記第1の溝の前記第1の基板部の厚さ方向における深さと前記第2の溝の前記第1の基板部の厚さ方向における深さとは異なっていてもよい。
上記の製造方法において、前記第1の溝(151)の深さが前記第2の溝(153)の深さよりも深くなっていてもよい。
上記の製造方法において、前記第2の溝(153)の深さが前記第1の溝(151)の深さよりも深くなっていてもよい。
本実施の形態にかかる貼り合わせ基板は、第1の基板(半導体基板100)と、前記第1の基板(半導体基板100)の第1の面側に対向配置された第2の基板(対向基板101)と、前記第1の基板(半導体基板100)と前記第2の基板(対向基板101)との間に配置され、前記第1の基板(半導体基板100)と前記第2の基板(対向基板101)を貼り合わせる接着材(シール材130)と、前記第1の基板(半導体基板100)の前記第1の面側に形成され、前記接着材(シール材130)の外側に配置された端子と、を備え、前記第1の基板(半導体基板100)の側端面において、前記第1の面側に設けられた第1の面取部(161)と、前記第1の面側と反対側の第2の面側に設けられ、前記第1の基板(半導体基板100)の厚さ方向における深さが前記第1の面取部と異なる第2の面取部(163)と、前記第1の面取部と前記第2の面取部との間に配置された切断面(164)と、を備えるものである。こうすることで、生産性を高い貼り合わせ基板を得ることができる。
上記の貼り合わせ基板において、前記第1の面取部(161)の前記第1の基板(半導体基板100)の厚さ方向における深さが、前記第2の面取部の前記第1の基板(半導体基板100)の厚さ方向における深さよりも大きくなっていてもよい。
上記の貼り合わせ基板において、前記第1の面取部(161)の前記第1の基板(半導体基板100)の厚さ方向における深さが、前記第2の面取部の前記第1の基板(半導体基板100)の厚さ方向における深さよりも小さくなっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生産性の高い貼り合わせ基板とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、本実施の形態にかかる貼り合わせ基板が、液晶表示素子であるとして説明する。もちろん、本実施の形態にかかる貼り合わせ基板は、液晶表示素子に限られるものではない。液晶表示素子以外の表示素子、光学素子、半導体基板などであってもよく、これら以外のものであってもよい。すなわち、第1の基板と第2の基板とが接着材によって貼り合わされた構造を有する貼り合わせ基板に適用することができる。第1の基板と第2の基板の材質は特に限定されるものではないが、一方の基板をスクライブブレークによって切断する貼り合わせ基板に好適である。
【0016】
第1の基板部である半導体基板を複数有する半導体ウエハを用意する。アクティブマトリクス型液晶表示素子の場合、半導体基板はTFTアレイ基板となる。同様に、第2の基板部である対向基板を複数有するマザーガラス基板を用意する。
【0017】
本実施の形態では、半導体ウエハとマザーガラス基板とを貼り合わせた後に、半導体ウエハを素子サイズに切断する。第1のマザー基板である半導体ウエハを切断することで、半導体ウエハに設けられた複数の半導体基板が個片に分離される。そして、半導体ウエハを切断した後、マザーガラス基板を素子サイズに切断する。第2のマザー基板であるマザーガラス基板を切断することで、マザーガラス基板に設けられた複数の対向基板が個片に分離される。これにより、半導体基板と対向基板とを備えた液晶表示素子を製造することができる。切断前のマザー基板の状態でシール材の硬化、液晶の滴下等を行うことができるため、生産性を向上することができる。
【0018】
反射型の液晶表示素子を製造する場合、半導体ウエハとしてシリコンウエハを用いることができる。そして、半導体ウエハには、アルミニウム膜などの反射画素電極が設けられている。もちろん、反射型の液晶表示素子以外についても、下記の製造方法は適用可能である。すなわち、透過型の液晶表示素子についても適用可能である。対向配置された一対の基板のうち、一方の基板をスクライブブレークする構成であればよい。
【0019】
本実施の形態にかかる貼り合わせ基板とその製造方法について、図を参照して説明する。
図1は、製造方法を示すフローチャートである。適宜、
図2〜
図9を参照しつつ、
図1に示した製造フローを説明する。なお、
図2は、複数の半導体基板を有する半導体ウエハの構成を示す平面図であり、
図3〜
図9は、それぞれ製造途中における工程断面図を示している。なお、以下の示す製造工程の順番は、適宜変更することができる。
【0020】
(ステップS1:駆動回路形成)
まず、半導体ウエハ110側の製造工程について説明する。半導体ウエハ110は、例えば、8インチのシリコンウエハである。半導体ウエハ110の表面付近に、所定の半導体プロセスを用いて、駆動回路(不図示)を形成する。駆動回路は、液晶を駆動するための回路であり、TFTなどを有している。駆動回路は、所定の領域ごとに形成される。ここで、所定の領域とは、1つの液晶表示素子に対応する領域である。即ち、半導体基板100表面には駆動回路が液晶表示素子(所定の領域)ごとに形成される。
【0021】
図2に示すように、半導体ウエハ110は、マトリクス状に配列された複数の半導体基板100を有している。後述する工程で、半導体ウエハ110を分割ライン32、33に沿って切断することで、半導体基板100が個片に分断される。したがって、液晶表示素子は一つの半導体基板100を有している。各半導体基板100に駆動回路が形成される。アクティブマトリクス型液晶表示素子の場合、半導体基板100は、TFTがマトリクス状に配置されたTFTアレイ基板となる。
【0022】
(ステップS2:画素電極及び端子群形成工程)
半導体ウエハ110の表面100a上に、マトリクス状に複数配置された画素電極111と、端子113とを所定の領域ごとに形成する(
図3参照)。画素電極111及び端子113は、各半導体基板100に複数設けられる。
図3では、半導体ウエハ110に設けられた複数の半導体基板100のうちの2つを示しており、それぞれの半導体基板100に画素電極111と端子113が形成されている。
【0023】
各半導体基板100において、画素電極111が設けられた領域が表示領域となる。画素電極111は、複数の画素のそれぞれに設けられているが、図では、簡略化して示している。端子113は外部と接続される接続端子であり、表示領域の外側の周辺領域に形成される。さらに端子113からは各種配線が延在している。端子113も、入力する信号数などに応じて、複数設けられているが、図では簡略化して示している。端子113は、通常、半導体基板100の端辺に沿って配列される。
【0024】
ここで、半導体ウエハ110、及び半導体基板100の画素電極111及び端子113が形成された面を表面100aとし、その反対側の面を裏面100bとする。すなわち、画素電極111及び端子113が形成された第1の面が表面100aとなり、第1の面の反対側の第2の面が裏面100bとなる。
【0025】
本実施形態では、スパッタ法によって、厚さ0.2μmのアルミニウム膜を形成する。その後、フォトリソグラフィ法を用いてレジストパターンを形成する。レジストパターンをマスクとして、アルミニウム膜をエッチングすることにより、画素電極111及び端子113となる導電膜のパターンを形成することができる。画素電極111は光を反射する反射画素電極である。
【0026】
(ステップS3:裏面加工基準ライン形成工程)
半導体ウエハ110に加工基準ライン30、31を形成する。
図2に示すように、半導体ウエハ110におけるパターン領域の左端からオフセット量Xaの位置をダイシングする。こうすることで、Y方向に沿った加工基準ライン30を形成することができる。同様に、パターン領域の上端からオフセット量Yaの位置をダイシングする。こうすることにより、X方向に沿った加工基準ライン31を形成することができる。
【0027】
なお、パターン領域は、半導体基板100の表面100aのパターンが形成される領域であり、半導体基板100が形成されている領域となる。パターン領域を基準として、半導体ウエハ110の端部を切断することで、半導体ウエハ110の端部に加工基準ライン30、31が形成される。加工基準ライン30、31は、円形の半導体ウエハ110の端部を切断した時の切断線となる。加工基準ライン30、31は、後の工程(S4,S10、S11)で、半導体ウエハ110を加工する際のアラインメントに使用される基準ラインとなる。
【0028】
もちろん、加工基準ライン30と加工基準ライン31を形成する順番は特に限定されるものではない。なお、半導体ウエハ110の一端にのみ加工基準ライン30、31を設けているが、半導体ウエハ110の両端に加工基準ライン30、31を設けてもよい。この場合、半導体ウエハ110の左右両端に加工基準ライン30が形成され、半導体ウエハ110の上下両端に加工基準ライン31が形成される。
【0029】
(ステップS4:分割ラインの溝形成工程)
半導体ウエハ110の分割ライン32、33上に、第1の溝151を形成する。
図3に示すように、半導体ウエハ110の表面100a上に、第1の溝151を形成する。本実施の形態では、貼り合わせ工程(ステップS9)の前に、第1の溝151を形成する。第1の溝151は、テーパ形状を有している。なお、テーパ形状とは、表面100a側が最も幅広になっており、深くなるにつれて幅狭になる断面形状である。ここでは、
図3に示すように、第1の溝151は、断面V字形状になっている。すなわち、第1の溝151はV溝となっている。例えば、V溝の底部の角度は60度以上90度以下となっている。
【0030】
第1の溝151は、隣接する半導体基板100の境界である分割ライン32、33上に形成される(
図2)。分割ライン32は、Y方向に沿って形成され、分割ライン33は、X方向に沿って形成されている。したがって、第1の溝151は所定のピッチで格子状に形成される。
【0031】
第1の溝151は半導体ウエハ110の端子113と、隣接する半導体基板100の画素電極111との間に形成される。そして、後の切断工程(S11)では第1の溝151の位置でダイシングが行われることで、半導体基板100が個片に分割される。半導体ウエハ110をダイシングした後は、第1の溝151が面取部となる。
【0032】
第1の溝151の形状は使用するダイシングブレードの形状と切込み深さでコントロールすることができる。例えば、ダイシングブレードのブレード先端をV型とし、第1の溝151の角度に合わせて、ブレード先端のV字角度を60度から90度とする。より具体的には、ブレード先端のV字角度が60度のダイシングブレードを用意して、第1の溝151を形成していく。第1の溝151を複数形成するためにブレードを繰り返し使用すると、ブレード先端が摩耗していく。第1の溝151を形成していくにしたがって、ブレード先端角度が広くなっていく。ブレード先端角度が90度になる程度で新しいブレードに交換する。こうすることで、第1の溝151のV字角度を60度〜90度の範囲に規定することができる。もちろん、ブレード先端角度、及び第1の溝151の角度は上記の値に限定されるものではない。
【0033】
表面100aにおける第1の溝151のカーフ幅は80〜200μmとすることができる。なお、第1の溝151のカーフ幅とは、表面100aにおける第1の溝151の幅を示しており、カーフ幅がテーパ状の第1の溝151の最大幅となる。カーフ幅はV型ブレードの高さにより制御する。すなわち、V型のブレード先端での掘り込みを深くするほどカーフ幅を広くすることができる。また、ブレードの厚みを200μmとすることで、第1の溝151の最大幅を200μm以下とすることができる。なお、第1の溝151の形状は後の分断工程(S12)で半導体ウエハ110の端面がマザーガラス基板120に接触しないものとする。
【0034】
さらに、
図4に示すように、第1の溝151の底部に切込み溝152を形成する。すなわち、第1の溝151の底部をさらにダイシングブレードで切り込んでいくことで、切込み溝152が形成される。第1の溝151と切込み溝152とで、半導体ウエハ110をハーフカットする。切込み溝152の幅は、第1の溝151のカーフ幅よりも幅狭にする。換言すると、切込み溝152の幅は、第1の溝151の最大幅よりも狭くなっている。
【0035】
第1の溝151はV字角度とカーフ幅によりある程度幅を持っているため、第1の溝151のカーフ幅よりも薄いブレードで切込み溝152を形成する。例えば、50μm幅のブレードで、半導体ウエハ110の表面100aから約200μmの深さまで切り込んで、表面100aからの切込み深さを規定している。第1の溝151と切込み溝152との合計深さを200μmとしている。このように、幅の異なるダイシングブレードを用いることで、第1の溝151と切込み溝152が所望の形状となるように制御することができる。
【0036】
また、第1の溝151が端子113に達しないように、第1の溝151の角度、及び深さを制御する。すなわち、第1の溝151の角度を大きくしすぎると、第1の溝151のカーフ幅が広くなって、端子113まで達してしまう。分割ライン32、33の中心から端子113までの距離に応じて、第1の溝151のカーフ幅を設定する。すなわち、端子113までの距離に応じて、切込み深さと溝角度を決定する。
さらに、ブレードの角度に応じて、第1の溝151の溝深さを変えるようにしてもよい。例えば、ブレードが摩耗して角度が広くなるにつれて、溝深さを浅くする。こうすることで、ブレードが摩耗していった場合でも、第1の溝151のカーフ幅を一定に保つことができる。第1の溝151の溝深さが浅くなった分、切込み溝152の切込み深さを制御することで、第1の溝151と切込み溝152の合計深さを一定にすることができる。
【0037】
後の切断工程(S11)で切込み溝152に達するまで、裏面100b側から切込みを形成する。このとき、第1の溝151と切込み溝152は、半導体ウエハ110およびマザーガラス基板120の厚みの公差、ブレード先端形状の影響を受けることなく、かつマザーガラス基板120表面に接触しないものとしている。また、切込み溝152を深くしすぎると、半導体ウエハ110のハンドリングが難しくなるため、半導体ウエハ110が割れやすくなる。したがって、マザーガラス基板120に貼り合せるまでの工程で破損してしまう可能性がある。すなわち、切込み溝152が深くなるほど、搬送時に半導体ウエハ110が破損しやすくなる。したがって、搬送中に半導体ウエハ110が破損しない程度の切込み溝152の深さとすればよい。
【0038】
(ステップS5:画素電極側配向膜形成工程)
次に、画素電極側の配向膜を形成する。そのため、まず、切込み溝152が形成された半導体ウエハ110を超純水によって、超音波洗浄する。洗浄後、画素電極111を覆うように、半導体ウエハ110の表面100a上に配向膜(不図示)を形成する。配向膜は、半導体基板100ごとに形成される。配向膜は、少なくとも表示領域に形成される。配向膜は上記の加工基準ライン30および加工基準ライン31を基準にして形成される。
【0039】
斜方蒸着法によって、厚さ0.1μmのSiO
2膜を形成することで、配向膜を設けることができる。さらに、配向膜が端子113を覆わないように、選択的に配向膜を形成するマスクを用いる。すなわち、端子113がマスクされた状態で、配向膜を蒸着する。これにより、端子113が配向膜で覆われるのを防ぐことができる。なお、画素電極111及び端子113を形成する際に配向膜を位置合わせ形成するための位置合わせパターンを形成しておいてもよい。
【0040】
(ステップS6:シールパターンおよび液晶形成工程)
次にシール材130のパターンと、液晶を形成する。そのため、まず、上述のステップS1〜S5を経た半導体ウエハ110の表面100a上に、シール材130を塗布する(
図5参照)。シール材130は、各半導体基板100の画素電極111を囲うように、枠状に形成される。例えば、表示領域が矩形の場合、シール材130は矩形枠状に塗布される。
【0041】
シール材130で囲われた領域が表示領域となる。端子113は、シール材130の外側の周辺領域に配置される。シール材130は所定の直径を有する球状のスペーサ(不図示)が樹脂に分散したものである。例えば、スペーサの粒径は液晶層の厚みに合わせて1〜3μmとすることができる。このスペーサの直径によって基板間ギャップが規定される。樹脂は、光硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂である。
【0042】
次に、液晶140をシール材130で囲われた領域内に滴下する。すなわち、半導体基板100毎に、画素電極111が形成されている表示領域に、液晶140が滴下される。液晶140は、半導体ウエハ110の表面100aに設けられた配向膜によって、所定の方向に配向する。シール材130と液晶140は、半導体ウエハ110側ではなく、マザーガラス基板120側に形成してもよい。すなわち、半導体ウエハ110及びマザーガラス基板120の少なくとも一方に、シール材130を形成して、シール材130で囲まれた領域に液晶140を滴下すればよい。
【0043】
(ステップS7:透明電極及び反射防止膜形成工程)
次に、対向基板101の製造工程について説明する。対向基板101は上述したステップS1〜S5の製造工程と並行して製造することができる。まず、透明なマザーガラス基板120を用意する。マザーガラス基板120は、半導体ウエハ110と同程度の大きさを有する円形状となっている。そして、マザーガラス基板120の一面側に透明電極(不図示)を形成し、他面側に反射防止膜(不図示)を形成する。ここでは、厚さ0.08μmのITO膜を透明電極として用いている。ITO膜は、スパッタリング法を用いて、マザーガラス基板120の全面に形成される。厚さ0.3μmのNb
2O
2とSiO
2の積層膜を反射防止膜とすることができる。例えば、真空蒸着法を用いて、ガラス基板の他面側に積層膜を形成することで、反射防止膜を設ける。
【0044】
(ステップS8:透明電極側配向膜形成工程)
次に、透明電極側の配向膜を形成する。そのため、まず、上記工程を経たマザーガラス基板120を超純水によって超音波洗浄する。洗浄後、透明電極上に配向膜(不図示)を形成する。ここでは、ステップS5と同様の方法により配向膜を形成することができる。すなわち、選択的に配向膜を形成するマスクを用いて、厚さ0.1μmのSiO
2膜を成膜する。SiO
2膜は斜方蒸着法を用いて成膜される。こうすることで、マザーガラス基板120の一面に配向膜を形成することができる。
【0045】
(ステップS9:貼り合わせ構造体形成工程)
その後、半導体ウエハ110とマザーガラス基板120とを貼り合わせて、貼り合わせ構造体を作製する。そのため、減圧環境下で、配向膜が互いに向き合うようにして半導体ウエハ110とマザーガラス基板120とを対向配置する。すなわち、半導体ウエハ110の表面100aがマザーガラス基板120側になり、第1の溝151がマザーガラス基板120側に配置される。さらに、半導体基板100とマザーガラス基板120との相対位置を位置合わせした後、半導体ウエハ110とマザーガラス基板120とを貼り合わせ、シール材130にUV照射および熱を加えることにより硬化して接着させる。こうすることで、
図5に示す構成となる。
【0046】
ここでは半導体基板100と対向基板101毎にシール材130が設けられているため、半導体基板100のそれぞれが対向基板101と貼り合わせられる。半導体ウエハ110とマザーガラス基板120が貼り合わされた貼り合わせ構造体103を得ることができる。半導体ウエハ110とマザーガラス基板120とがシール材130によって所定の間隙を有して、対向配置している。貼り合わせ構造体103では、半導体基板100と対向基板101とシール材130とで形成された空間に液晶140が充填されている。すなわち、貼り合わせ構造体103は複数の液晶表示素子を有している。
【0047】
(ステップS10:半導体基板裏面分割ラインの溝形成工程)
次に、半導体ウエハ110の裏面100bに第2の溝153を形成する。これにより、
図6に示す構成となる。具体的には、加工基準ライン30を基準にして、加工基準ライン30と平行に複数の第2の溝153を所定のピッチで形成する。また、加工基準ライン31を基準として、加工基準ライン31と平行に複数の第2の溝153を所定のピッチで形成する。ステップS4では、表面100aのパターンを基準に加工基準ライン30、31を形成しているので、裏面100bからの位置出しが可能である。
【0048】
第2の溝153は半導体基板100の裏面100bに格子状に形成される。XY平面視において、第2の溝153は、第1の溝151に対応する位置に形成される。第2の溝153は、隣接する半導体ウエハ110の境界である分割ライン32、33上に形成される(
図2)。第2の溝153の位置は、加工基準ライン30及び加工基準ライン31を基準として位置合わせされている。すなわち、加工基準ライン30を基準として、Y方向に沿った分割ライン32上に第2の溝153が形成され、加工基準ライン31を基準として、X方向に沿った分割ライン33上に第2の溝153が形成される。このように、半導体ウエハ110の端辺の加工基準ライン30、31を基準とすることで、不透明なシリコン基板である半導体ウエハ110を確実にアラインメントすることができる。こうすることで、第2の溝153が、第1の溝151と略同じ位置に形成される。
【0049】
第2の溝153は、テーパ形状を有している。なお、テーパ形状とは、裏面100b側が最も幅広になっており、深くなるにつれて幅狭になる断面形状である。ここでは、
図6に示すように、第2の溝153は、断面V字形状になっている。すなわち、第2の溝153はV溝となっている。例えば、V溝の底部の角度は60度以上90度以下となっている。
【0050】
第2の溝153の形状は使用するダイシングブレードの形状と切込み深さでコントロールすることができる。例えば、ダイシングブレードのブレード先端をV型とし、第2の溝153の角度に合わせて、ブレード先端のV字角度を60度から90度とする。より具体的には、ブレード先端のV字角度が60度のダイシングブレードを用意して、第2の溝153を形成していく。第2の溝153を複数形成するためにブレードを繰り返し使用すると、ブレード先端が摩耗していく。第2の溝153を形成していくにしたがって、ブレード先端角度が広くなっていく。ブレード先端角度が90度になる程度で新しいブレードに交換する。こうすることで、第2の溝153のV字角度を60度〜90度の範囲に規定することができる。もちろん、ブレード先端角度、及び第2の溝153の角度は上記の値に限定されるものではない。なお、第2の溝153を形成するためのダイシングブレードは、第1の溝151のダイシングブレードと同じものとすることが可能である。
【0051】
裏面100bにおける第2の溝153のカーフ幅は70〜180μmとすることが好ましく、150〜160μmとすることがより好ましい。第2の溝153のカーフ幅は、裏面100bにおける第2の溝153の表面幅である。カーフ幅はV型ブレードの高さにより制御する。すなわち、V型のブレード先端での掘り込みを深くするほどカーフ幅を広くすることができる。なお、第2の溝153の形状は後の分断工程(S12)で半導体基板100の端面が隣接する半導体基板100と接触しないものとする。第2の溝153が切込み溝152に到達しないように、半導体ウエハ110をハーフカットする。
【0052】
(ステップS11:半導体ウエハの分断工程)
次に、
図7に示すように、半導体ウエハ110を素子サイズに分断する。そのため、貼り合わせ構造体103の半導体ウエハ110に切込み溝154を形成する。第2の溝153の底部をさらにダイシングブレードで切り込んでいくことで、切込み溝154が形成される。換言すると、第2の溝153から切込み溝152に向かって半導体ウエハ110を切断していく。具体的には、半導体ウエハ110の裏面100b側から第2の溝153の位置にダイシングブレードを当接させて、第2の溝153の底部をさらに切り込んでいく。そして、切込み溝154が切込み溝152に達して、半導体ウエハ110をダイシングする。半導体ウエハ110がフルカットされ、半導体基板100が隣接する半導体基板100から分断する。
【0053】
切込み溝154を形成する際のアラインメントは、加工基準ライン30、31を基準とする。加工基準ライン30を基準にして、加工基準ライン30と平行に複数の切込み溝154を所定のピッチで形成する。また、加工基準ライン31を基準にして、加工基準ライン31と平行に複数の切込み溝154を所定のピッチで形成する。したがって、第2の溝153と同様に高い位置精度で、切込み溝154のXY位置を、第1の溝151及び切込み溝152のXY位置に一致させることができる。
【0054】
切込み溝154の幅は、第2の溝153の裏面100bの表面における最大幅よりも幅狭にする。換言すると、切込み溝154の幅は、第2の溝153のカーフ幅よりも狭くなっている。切り込み溝154はブレード幅が50μmのブレードでダイシングすることによって形成することができる。半導体ウエハ110の厚み、及びマザーガラス基板120の厚みは公差を考慮して、また切込み加工に使用するダイシングブレード先端のR形状も考慮して加工高さを設定することで半導体ウエハ110をフルカットする。半導体基板100はシール材130によってマザーガラス基板120に固定されているため、半導体ウエハ110をフルカットしても脱落することはない。切込み溝152のダイシングブレード同様のブレードで、切込み溝154を形成してもよい。
【0055】
なお、第1の溝151を形成する工程で、半導体基板100の表面100aに形成された配線の一部を切断するようにしてもよい。例えば、分割ライン32、33の位置にまたぐように、検査用の配線が形成されていることがある。具体的には、分割ライン32、33の位置に、複数の信号配線を導通するショートリング配線が形成されているとする。半導体基板100の信号検査を行う場合、ショートリング配線を介して複数の信号配線に検査信号を供給する。そして、半導体基板100状態で検査を行った後、ステップS4で検査用の配線が切断される。
【0056】
(ステップS12:マザーガラス基板の分断工程)
次に、マザーガラス基板120を素子サイズに分断する。マザーガラス基板120、透明電極、反射防止膜,及び配向膜はいずれも透明なので、貼り合わせ構造体103の状態でも、マザーガラス基板120を介して半導体基板100のスクライブラインの位置を検出することができる。マザーガラス基板120の半導体ウエハ110側と反対側の面にスクライブ溝160を形成する。
【0057】
マザーガラス基板120のスクライブは半導体基板100のスクライブラインをアラインメントしてスクライブ位置を決定する。半導体基板100の端子113のある側は、端子113表面を露出する必要がある。このため、
図8に示すように、切込み溝152、154に対してオフセットした位置にスクライブ溝160を形成する。Y方向に沿ったスクライブ溝160は、第2の溝153の位置からX方向にオフセットしている。X方向において、スクライブク溝160は端子113とシール材130の間に形成される。ここでは、オフセット量は0.7〜1.5mmとしている。
【0058】
一方、直交する端子113の無い側は半導体基板100のスクライブラインと同じ位置にマザーガラス基板120のスクライブ溝160を形成する。例えば、X方向に沿ったスクライブ溝160は、第2の溝153の位置に形成される。スクライブ溝160の深さはマザーガラス基板120の厚さの半分以上となっている。スクライブ溝160を形成することで、
図7に示す構成となる。
【0059】
本実施形態では、スクライブの刃の形状、切込み深さ、切込圧力などのスクライブ条件を最適化している。また、マザーガラス基板120表面に対して垂直なクラックをスクライブ溝160として形成している。次にスクライブ溝160を形成した貼り合わせ構造体103をブレーカステージ170上に真空吸着固定する(
図8参照)。ここでは、マザーガラス基板120のスクライブ溝160が形成された面が、ブレーカステージ170に接するよう、貼り合わせ構造体103がブレーカステージ170上に載置される。ブレーカステージ170は、変形可能な材料、例えば、硬質のウレタンによって形成されている。
【0060】
ブレーカスキージ171の先端を半導体基板100裏面の切込み溝154の位置に合わせて、上側から半導体基板100の裏面100bに当接させる。これにより、ブレーカスキージ171の先端が、第2の溝153に挿入され、第2の溝153のテーパ面と当接する。そして、所定の押込み量と下降速度で、ブレーカスキージ171をマザーガラス基板120側に押し込む。これにより、
図8に示すように、ブレーカステージ170が変形して、マザーガラス基板120がへき開する。したがって、貼り合わせ構造体103が分断して、貼り合わせ基板104を得ることができる。
【0061】
なお、ブレーカスキージ171は、先鋭形状を有している。本実施形態では、ブレーカスキージ171の先端をV形状として、先端角度を135度としている。ブレーカスキージ171の先端の角度は第2の溝153の角度より大きくしている。こうすることで、ブレーカスキージ171の先端を第2の溝153に当接したときに、
図9に示すように、横方向(X方向)に開く力190が加わるようになる。すなわち、ブレーカスキージ171が半導体ウエハ110をマザーガラス基板120側に押し込むためのZ方向の力が、第2の溝153のテーパ面で、X方向の力190に変換される。そして、半導体ウエハ110に横方向の力190が加わることで、シール材130で接続されているマザーガラス基板120にも横方向の力191が加わる。横方向の力191はスクライブ溝160が開く方向になるので、マザーガラス基板120が縦方向にたわむ量を抑えることができる。これにより、ブレーカステージ170の変形量が小さくなるため、隣り合う半導体基板100同士が接触すること、及び半導体基板100とマザーガラス基板120が接触することを抑制できる利点がある。基板欠けの量を低減することができ、回路不良や端子の接触不良を抑制することができる。歩留まりを改善することができ、生産性を向上することができる。
【0062】
このように、テーパ形状の第2の溝153の位置で、ブレーカスキージ171をマザーガラス基板120側に押し込む。こうすることで、ブレーカスキージ171から加わる厚さ方向(Z方向)の力が横方向(
図9ではX方向)の力190、191に変換される。よって、ブレーカステージ170の変形量を小さくすることができる。これにより、基板欠けの量を低減することができ、生産性を向上することができる。ブレーカスキージ171の先端角度を第2の溝153の角度よりも大きくすることで、容易に横方向の力190を発生させることができる。また、マザーガラス基板120をへき開する際に、半導体基板100の角部がマザーガラス基板120と接触しないような押込み量と下降速度でブレーカスキージ171を押し込む。これにより、基板の損傷を防ぐことができ、接続不良、及び回路不良を防ぐことができる。よって、歩留まりを改善することができ、生産性を向上することができる。
【0063】
この分断工程により、1つの貼り合わせ構造体103から、複数の貼り合わせ基板104を得ることができる。貼り合わせ構造体103から貼り合わせ基板104を分離すると、第1の溝151、第2の溝153が半導体基板100の面取部となる。すなわち、半導体基板100の側端面の角が面取りされたテーパ面となる。なお、ブレーカスキージ171の先端は、V字形状に限られるものではない。
【0064】
さらに、半導体基板100の表面100aには、第1の溝151が形成されている。したがって、ブレーカスキージ171を押し込んで、マザーガラス基板120をスクライブするときに、半導体基板100の角部がマザーガラス基板120の表面に当たるのを防ぐことができる。また、半導体基板100の裏面100bには、第2の溝153が形成されている。したがって、ブレーカスキージ171を押し込んで、マザーガラス基板120をスクライブするときに、隣接する半導体基板100の角部が当たるのを防ぐことができる。これにより、半導体基板100や対向基板101の角部が欠けて、その破片が、端子113やその周辺の回路などを損傷するのを防ぐことができる。これにより、接続不良や回路不良の発生を抑制することができ、歩留まりを改善することができる。よって、生産性を向上することができる。
【0065】
ここでは、ブレーカスキージ171の押込み量を40〜100μm、下降速度を140〜160m/秒としている。すなわち、ブレーカスキージ171の押込み量が40〜100μmで、マザーガラス基板120がへき開するように、スクライブ溝160を設けている。スクライブ溝160を深くすることで、押し込み量を小さくすることができる。よって、ブレーカステージ170の変形量を小さくすることができる。こうすることで、半導体基板100の角部がマザーガラス基板120の表面等に当たるのを防ぐことができる。よって、半導体基板100及び対向基板101の破損を防ぐことができ、生産性を向上することができる。
【0066】
上記のように製造された貼り合わせ基板104が液晶表示素子となる。貼り合わせ基板104の端子113に外部の制御装置などをワイヤボンディングや異方性導電膜などによって接続する。これにより、画素電極に供給された電圧に応じて、液晶140が駆動する。外部から対向基板101及び液晶140を通過した光は、画素電極111で反射される。液晶140の状態に応じて、画素電極111で反射されて外部に出射する光の光量が変化する。外部制御装置からの制御信号に応じて所望の画像を表示することができる。このような反射型の液晶表示素子は、画像を投影するプロジェクタに好適であり、さらには、自動車などの乗り物に搭載されるヘッドアップディスプレイに利用することが可能である。
【0067】
(構成例)
ここで、貼り合わせ構造体103の構成について、
図10を用いて説明する。
図10は貼り合わせ構造体103の構成の具体例を説明するための図であり、スクライブ溝160を形成する前の構成を示す断面図である。もちろん、以下に示す寸法例は、液晶表示素子の一例を示す寸法であり、この値に限定されるものではない。
【0068】
半導体基板100の裏面100bに設けられた第2の溝153のカーフ幅Aは、70〜180μmである。ブレーカスキージ171の先端を挿入しやすくするために、第2の溝153のカーフ幅Aを大きくする。半導体基板100の表面100aに設けられた第1の溝151のカーフ幅Bは、80〜200μmである。第1の溝151のカーフ幅Bの上限値は、第1の溝151が端子113に達しないように制限される。第1の溝151のカーフ幅Bを第2の溝153のカーフ幅Aよりも大きくするようにしてもよい。切込み溝152、154の幅Cは、40〜50μmである。
【0069】
第1の溝151の角度Jは、上記のように60度〜90度である。第2の溝153の角度Iは上記のように、60度〜90度である。切込み溝154を形成して、半導体基板100を分離した後は、第1の溝151が面取部161となり、第2の溝153が面取部163となる。面取部161は半導体基板100の表面100a側に形成されたテーパ状の斜面であり、面取部163は半導体基板100の裏面100b側に形成されたテーパ状の斜面である。面取部161、163によって、半導体基板100の角部が面取りされている。また、切込み溝154に対応する部分を切断面164とする。切断面164は、半導体基板100の表面100a、及び裏面100bに対して実質的に垂直に形成される。そして、半導体基板100の側端面において、切断面164が面取部161と面取部163との間に設けられる。
【0070】
第1の溝151の角度Jと第2の溝153の角度Iによって、半導体基板100の角部の面取部161、163の形状が決まる。第1の溝151の角度Jと第2の溝153の角度Iの角度を大きくするほど、面取部161、163のテーパ形状をなだらかにすることができる。
【0071】
面取部161の半導体基板100の厚さ方向における深さHは15〜140μmであり、表面幅Lは15〜80μmである。例えば、第1の溝151のカーフ幅Bの下限を80μmで、切込み溝152の幅Cが50μmとすると、面取部161の表面幅Lは、(80−50)/2で15μmとなる。面取部161の表面幅Lが15μmで、第1の溝151の角度Jが90度の時、面取部161の深さHは、下限値15μmとなる。第1の溝151のカーフ幅Bの上限を200μmで、切込み溝152の幅Cが40μmとすると、面取部161の表面幅Lは、(200−40)/2で80μmとなる。面取部161の表面幅Lが80μmで、第1の溝151の角度Jが60度の時、面取部161の深さHは、上限値140μmとなる。面取部163の半導体基板100の厚さ方向における深さGは10〜110μmであり、表面幅Kは10〜70μmである。
【0072】
半導体基板100の厚さDは725μmであり、その公差は±25μmである。液晶140の厚さE、及びシール材130の高さは、1〜3μmである。マザーガラス基板120の厚さFは925μmであり、その公差は±25μmである。半導体基板100の大きさMは12.0mmである。対向基板101の大きさNは12.0mmである。
【0073】
完成された貼り合わせ基板104において、面取部161の深さHは、面取部163の深さGと異なっている。第2の溝153は、ブレーカスキージ171の先端が挿入できる幅を有していればよいので、第1の溝151ほど厳密に形成しなくてもよい。第2の溝153の形成時に、溝幅及び溝深さの厳密な制御が不要になり、製造工程が簡素化される。
半導体基板100の破損を防ぐためには、第1の溝151のカーフ幅B、面取部161の深さH、面取部161の表面幅Lは、大きくすることが好ましい。すなわち、
図8に示す切断時において、半導体基板100の角部がマザーガラス基板120と接触しないように、第1の溝151を形成する。したがって、半導体基板100の破損を防ぐという観点からは、面取部161の深さHは、面取部163の深さGよりも大きくすることが好ましい。換言すると、第1の溝151の深さを第2の溝153の深さよりも深くする。こうすることで、
図8に示す切断時において、半導体基板100の角部がマザーガラス基板120と接触するのを防ぐことができる。なお、第1の溝151のカーフ幅B及び面取部161の深さHは、第1の溝151が端子113まで達しないようにするという制約がある。
また、第2の溝153のカーフ幅Aを大きくすることで、第2の溝153内にブレーカスキージ171を容易に差し込むことができるようになる。したがって、第2の溝153内にブレーカスキージ171を挿入するという観点からは、第2の溝153のカーフ幅Aを150〜180μmとすることが好ましい。また、第2の溝153のカーフ幅Aを大きくする場合、面取部163の深さGを面取部161の深さHよりも深くする。換言すると、第2の溝153の深さを第1の溝151の深さよりも深くする。こうすることで、半導体基板100同士が当たらずに分離できる。
【0074】
ステップS4の後、ステップS10の前の間に、配向膜を形成している。したがって、完成された貼り合わせ基板104において、面取部161のテーパ面に配向膜が残存している構成となる。分割ライン32、33を乗り越えて配向膜を形成した場合、面取部161で、配向膜が残る構成となる。また、配向膜の形成後に、切込み溝154を形成しているため、切断面164には配向膜が除去されている。
【0075】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。