特許第5949350号(P5949350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949350
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/00 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
   F01M11/00 N
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-195507(P2012-195507)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-51900(P2014-51900A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】葛西 歩
(72)【発明者】
【氏名】松井 幸治
(72)【発明者】
【氏名】保科 亮宏
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−122718(JP,U)
【文献】 実開平05−061410(JP,U)
【文献】 特開平05−340302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00−13/06
F02F 1/00− 1/42、 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振装置を備えたオイルパンを有する内燃機関において、
前記制振装置が、温度の変化により移動又は変形する作動部材と、前記作動部材に設置した制振ゴムを有しており、
前記オイルパン内のオイルの温度が予め定めた温度以下になった場合に、前記作動部材が、前記制振ゴムを前記オイルパンに接触させるように構成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記作動部材の少なくとも一部がバイメタルで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記作動部材が、前記制振ゴムを2つの作動部材で両側から挟むとともに、前記2つの作動部材の他端側が前記オイルパンに直接又は間接で固定されている構成を有することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記オイルパン内のオイルの温度が予め定めた温度よりも高くなった場合に、前記作動部材が、前記制振ゴムを前記オイルパンから離間させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の従来の内燃機関(以下、エンジンという)は、エンジンオイル(以下、オイルという)を溜めるオイルパンから発生する騒音を抑制するために、制振オイルパンを有している。例えば、オイルパンの内側底面に、可撓性及び自己粘着性を有する合成樹脂を貼り付けた制振オイルパンが開示されている(例えば特許文献1参照)。この構成により、オイルパンの振動を抑制することができる。
【0003】
また、オイルパンの内側にインナパンを配置し、このオイルパンとインナパンの間のオイルを加圧して、このオイルによりオイルパンの振動を減衰する制振オイルパンが開示されている(例えば特許文献2参照)。この構成により、エンジンが運転され、オイルが高温の際には、オイルパンの振動を減衰することができていた。更に、この制振オイルパンは、エンジン始動前等でオイルが低温の際には、感温ストッパにより、インナパンがオイルパンに固定される構成を有している。この構成により、オイルが低温の際に、オイルパンとインナパンの接触により発生する干渉音を抑制することができる。
【0004】
以上のように、前述の制振オイルパンは、エンジン運転時にオイルパンから発生する騒音を抑制することができる。
【0005】
しかしながら、前述の制振オイルパンは、エンジン始動時等でオイルが低温の際に、オイルパンから発生するうなり音を抑制することができないという問題を有している。このうなり音は、オイルストレーナでオイルパンからオイルを吸い上げる際に、脈動が生じ、この脈動がオイルパンを加振して発生する騒音である。このオイルの脈動は、オイルが低温で高粘度である場合に発生する。
【0006】
例えば、前述の合成樹脂を貼り付けた制振オイルパンの場合は、エンジン等の連続的で且つ振幅の小さい振動に対して、オイルパンの共振を抑制することができる。しかし、脈動のような振幅の大きい振動を抑制することができない。したがって、この制振オイルパンは、オイルパンから発生するうなり音を抑制することができない。
【0007】
また、前述のインナパンを利用した制振オイルパンの場合は、上記と同様に、脈動のような振幅の大きい振動を抑制することができない。また、オイルの脈動が発生する低温時には、インナパンがオイルパンに固定された状態となるため、この制振オイルパンは、オイルパンの振動を抑制する機能を発揮できない状態となっている。したがって、この制振オイルパンは、オイルパンから発生するうなり音を抑制することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−63031号公報
【特許文献2】特開平7−293328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、オイルパンに発生する不必要な応力を抑制し、且つエンジンオイルが低温で高粘度である場合に、オイルパン
から発生するうなり音を抑制することのできる内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係る内燃機関は、制振装置を備えたオイルパンを有する内燃機関において、前記制振装置が、温度の変化により移動又は変形する作動部材と、前記作動部材に設置した制振ゴムを有しており、前記オイルパン内のオイルの温度が予め定めた温度以下になった場合に、前記作動部材が、前記制振ゴムを前記オイルパンに接触させるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成により、オイルの温度が低く、粘度が高い場合に、オイルパンから発生するうなり音を抑制することができる。
【0012】
上記の内燃機関において、前記作動部材の少なくとも一部がバイメタルで構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成により、オイルパンに制振ゴムを接触させる際のオイルの温度を、精密に決定することができる。また、作動部材を低コストで構成することができる。
【0014】
上記の内燃機関において、前記作動部材が、前記制振ゴムを2つの作動部材で両側から挟むとともに、前記2つの作動部材の他端側が前記オイルパンに直接又は間接で固定されている構成を有することを特徴とする。
【0015】
この構成により、オイルパンから発生するうなり音を更に抑制することができる。これは、制振ゴムをオイルパンに押し付ける力が増加できるからである。
【0016】
上記の内燃機関において、前記オイルパン内のオイルの温度が予め定めた温度よりも高くなった場合に、前記作動部材が、前記制振ゴムを前記オイルパンから離間させるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成により、制振ゴムの耐久性を向上し、且つ、オイルパンに発生する不必要な応力を抑制することができる。これは、必要な場合にのみ、制振ゴムをオイルパンに押し付けることができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る内燃機関によれば、オイルパンに発生する不必要な応力を抑制し、且つエンジンオイルが低温で高粘度である場合に、オイルパンから発生するうなり音を抑制することのできる内燃機関を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る実施の形態の内燃機関の概略を示した図である。
図2】本発明に係る実施の形態の内燃機関のオイルパンの概略を示した図である。
図3】本発明に係る実施の形態の内燃機関のオイルパンの概略を示した図である。
図4】本発明に係る異なる実施の形態の内燃機関のオイルパンの概略を示した図である。
図5】本発明に係る異なる実施の形態の内燃機関のオイルパンの概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態の内燃機関(以下、エンジンという)1の概略を示す。こ
のエンジン1は、制振装置3を備えたオイルパン2を有している。また、エンジン1は、オイルパン2に溜められたエンジンオイルEOを吸い上げるオイルストレーナ4を有している。
【0021】
図2に、本発明に係る実施の形態のエンジン1の高温時のオイルパン2の概略を示す。オイルパン2に設置された制振装置3は、温度の変化により移動又は変形する作動部材11と、作動部材11に設置した制振ゴム12を有している。この作動部材11は、例えば、一方をオイルパン2の側壁部に固定されたバイメタルで構成することができる。このバイメタルは、2種の膨張率の異なる金属を張り合わせ、その膨張率の違いから、温度変化に伴い湾曲するように構成された材料である。
【0022】
次に、制振装置3の作動について説明する。エンジン1が運転され、オイルパン2内のオイルEOの温度が予め定めた温度よりも高くなった場合(高温時)に、バイメタルで構成された作動部材11が、制振ゴム12をオイルパン2から離間させるように湾曲する。つまり、制振ゴム12とオイルパン2は接触しない。ここで高温時とは、うなり音が発生しない状態であり、例えばオイルEOの温度が50℃以上の場合とする。ただし、この温度は、オイルの物性により変化する。
【0023】
図3に、本発明に係る実施の形態のエンジン1の低温時のオイルパン2の概略を示す。エンジン1の始動前等で、オイルEOの温度が予め定めた温度以下になった場合(低温時)に、作動部材11が、制振ゴム12をオイルパン2に接触させるように湾曲する。このとき、作動部材11は、制振ゴム12をオイルパン2に押し付け、制振ゴム12に圧縮力が発生している状態を維持するように構成されることが望ましい。ここで低温時とは、うなり音が発生し得る状態であり、例えばオイルEOの温度が50℃未満の場合とする。ただし、この温度は、オイルの物性により変化する。
【0024】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、オイルEOの温度が低く、粘度が高い場合(低温時)に、オイルパン2から発生するうなり音を抑制することができる。これは、作動部材11の作動により、制振ゴム12がオイルパンに押し付けられ、オイルパン2の振動を抑制することができるからである。
【0025】
第2に、オイルパン2に制振ゴム12を接触させる際のオイルEOの温度を、精密に決定することができる。また、作動部材11を低コストで製造することができる。これは、作動部材11にバイメタルを利用したからである。
【0026】
第3に、制振ゴム12の耐久性を向上し、且つ、オイルパン2に発生する不必要な応力を抑制することができる。これは、必要な場合にのみ、制振ゴム12をオイルパン2に押し付けることができるからである。
【0027】
なお、本発明は、オイルパン2の内側底面等に、エンジン運転時にオイルパン2から発生する騒音を抑制するために、合成樹脂製の制振部材を貼り付ける等、従来の制振オイルパンに組み合わせて利用することができる。この構成により、オイルEOが低温の際に発生するうなり音や、エンジン1の振動にオイルパン2が共振して発生する騒音を共に抑制することができる。
【0028】
また、エンジン1の製造コストは上昇するが、作動部材11を、駆動装置及び温度センサ等の制御により、制振ゴム12を移動させる構成とすることもできる。
【0029】
図4に、本発明に係る異なる実施の形態のエンジンの高温時のオイルパン2Aの概略を示す。オイルパン2Aは、制振装置3Aを有している。この制振装置3Aの作動部材(バ
イメタル)11Aは、制振ゴム12Aを2つの作動部材11Aで両側から挟むとともに、2つの作動部材11Aの他端側がオイルパン2Aに、支持部材13を介して間接的に固定されている構成を有している。なお、作動部材11Aは、オイルパン2Aに直接固定するように構成してもよい。
【0030】
次に、制振装置3Aの作動について説明する。オイルEOの温度が予め定めた温度よりも高くなった場合(高温時)に、バイメタルで構成された2つの作動部材11Aが、制振ゴム12Aをオイルパン2Aから離間させるように湾曲する。つまり、制振ゴム12Aとオイルパン2Aは接触しない。
【0031】
図5に、本発明に係る異なる実施の形態のエンジンの低温時のオイルパン2Aの概略を示す。オイルEOの温度が予め定めた温度よりも低くなった場合(低温時)に、バイメタルで構成された2つの作動部材11Aが、制振ゴム12Aをオイルパン2Aに接触させるように湾曲する。
【0032】
この構成により、オイルパン2Aから発生するうなり音を更に抑制することができる。これは、制振ゴム12Aをオイルパン2Aに押し付ける力が、制振ゴム12Aの両側に配置したバイメタルにより大きくなるからである。
【0033】
なお、制振装置3、3Aをエンジン1のオイルパン2、2Aに設置した例について説明したが、この制振装置は、ミッションオイル等、他のオイルを溜めるオイルパンにも適用することができる。ここで、オイルEOの物性が異なる場合は、作動部材11、11Aに採用するバイメタルの材料を変更することが望ましい。
【符号の説明】
【0034】
1 内燃機関(エンジン)
2、2A オイルパン
3、3A 制振装置
11、11A 作動部材
12、12A 制振ゴム
EO オイル(エンジンオイル)
図1
図2
図3
図4
図5