(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施形態について、半導体発光素子を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、これらの実施形態に限定されるものではない。また、後述する各半導体発光素子の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってももちろん構わない。そして、それぞれの図における断面構造を、概念的に示すこととした。例えば、各層の厚みは、実際の厚みを示しているわけではない。
【0021】
(第1の実施形態)
1.半導体発光素子
図1は、本実施形態の発光素子100を示す平面図である。
図2は、
図1のAA断面を概略的に示す断面図である。発光素子100は、フェイスアップ型の半導体発光素子である。そして、絶縁層160上に沿って配線電極170が形成されている。発光素子100は、基板110と、n型層120と、発光層130と、p型層140と、透明導電性金属酸化物膜150と、絶縁層160と、配線電極170と、絶縁膜180と、配線電極190と、を有している。
【0022】
図1に示すように、発光素子100では、p側の配線電極170と、n側の配線電極190とが、串歯状に噛み合っている。そして、配線電極170は、透明導電性金属酸化物膜150にコンタクト部171で接触している。配線電極190は、n型層120のn型コンタクト層にコンタクト部191で接触している。配線電極170、190は、絶縁膜180に覆われている。しかし、配線電極170、190は、それぞれ、露出部P1、N1の箇所で露出している。露出部P1、N1は、それぞれ、配線電極170、190の一部である。
【0023】
基板110は、n型層120等の半導体層を支持するための支持基板である。また、n型層120等を成長させるための成長基板でもある。基板110の材質として、サファイアや、Si、SiC等を用いることができる。また、基板110として、主面に凹凸形状を形成したものを用いてもよい。
【0024】
n型層120と、発光層130と、p型層140とは、III 族窒化物系化合物半導体から成る半導体層である。n型層120は、基板110の主面上に形成されている。n型層120は、基板110の側から、n型コンタクト層と、n型ESD層と、n型SL層の順で形成されている。また、
図2には図示されていないが、基板110とn型層120との間にバッファ層を設けてもよい。発光層130は、n型層120の上に形成されている。発光層130は、MQW層である。もしくは、SQW層であってもよい。p型層140は、発光層130の上に形成されている。p型層140は、p型クラッド層と、p型コンタクト層とを、発光層130の側からこの順序で形成した層である。これらは、あくまで例示であり、これ以外の構成であってもよい。
【0025】
透明導電性金属酸化物膜150は、p型層140のp型コンタクト層の上面の全面にわたって形成されている。透明導電性金属酸化物膜150の材質は、例えば、ITOである。もしくはIZOでもよい。または、In
2 O
3 に他の金属を添加したものであってもよい。そして、透明導電性金属酸化物膜150は、単一層の膜であるとともに、低酸素濃度領域L1および高酸素濃度領域H1を有している。低酸素濃度領域L1は、絶縁層160およびコンタクト部171の下に配置されている。高酸素濃度領域H1は、低酸素濃度領域L1以外の領域である。これらの詳細については後述する。
【0026】
絶縁層160は、透明導電性金属酸化物膜150の一部を覆うためのものである。絶縁層160を設けることにより、透明導電性金属酸化物膜150と絶縁層160との間で光が反射しやすい。つまり、絶縁層160は、配線電極170による光の吸収を抑制し、発光効率を向上させる役割を果たす。そのため、配線電極170に沿って形成されている。また、コンタクト部171を透明導電性金属酸化物膜150に接触させるために、孔161が設けられている。つまり、孔161の内部に、コンタクト部171が配置されている。また、絶縁層160は、低酸素濃度領域L1および高酸素濃度領域H1を形成するためのマスク層の役割を果たすものでもある。絶縁層160の材質として、SiO
2 やTiO
2 が挙げられる。
【0027】
配線電極170は、絶縁層160の上に形成されている。また、配線電極170は、コンタクト部171と、配線部172と、を有している。コンタクト部171は、透明導電性金属酸化物膜150における低酸素濃度領域L1にコンタクトする配線電極である。コンタクト部171は、絶縁層160に離散して複数形成された孔161を充填している。そして、その孔161の底部で、コンタクト部171は、透明導電性金属酸化物膜150に接触している。配線部172は、コンタクト部171同士と、pパッド電極P1とを電気的に接続するためのものである。配線電極170として、p型層140の側から、Cr、Ti、Auを順に積層したものが挙げられる。もちろん、電極の構成をこれ以外としてもよい。ただし、最下層の金属はSiO
2 やTiCと密着性のよい材料が好ましい。配線電極190についても同様である。
【0028】
コンタクト部171と配線部172とで、異なる材質を用いてもよい。その場合、コンタクト部171の最下層の金属は、透明導電性金属酸化物膜150とオーミックコンタクトをとれる材料が好ましい。配線部172の最下層の金属は、SiO
2 と密着性のよい材料が好ましい。また、コンタクト部191の最下層の金属は、n型層120とオーミックコンタクトをとれる材料が好ましい。配線部192の最下層の金属は、SiO
2 と密着性のよい材料が好ましい。
【0029】
絶縁膜180は、半導体層等を保護するためのものである。そのため、絶縁膜180は、半導体層等の上面、すなわち、透明導電性金属酸化物膜150と、絶縁層160と、配線電極170、190と、を覆っている。絶縁膜180の材質として、SiO
2 やTiO
2 が挙げられる。
【0030】
2.低酸素濃度領域および高酸素濃度領域
発光素子100の透明導電性金属酸化物膜150は、
図2に示すように、低酸素濃度領域L1および高酸素濃度領域H1を有する。つまり、単一の膜の内部で、酸素濃度の高い領域と、酸素濃度の低い領域とがある。
【0031】
低酸素濃度領域L1は、後述する酸素雰囲気中での熱処理を受けていない領域である。高酸素濃度領域H1は、後述する酸素雰囲気中での熱処理を受けた領域である。そのため、高酸素濃度領域H1における酸素濃度は、低酸素濃度領域L1における酸素濃度より高い。
【0032】
図2に示すように、低酸素濃度領域L1は、絶縁層160およびコンタクト部171の下に位置している。そして、コンタクト部171は、低酸素濃度領域L1にコンタクトしている。低酸素濃度領域L1の領域幅W0の内部に、絶縁層160および配線電極170が形成されている。一方、高酸素濃度領域H1は、低酸素濃度領域L1以外を占める領域である。つまり、高酸素濃度領域H1の上には、絶縁層160および配線電極170が形成されていない。
【0033】
低酸素濃度領域L1および高酸素濃度領域H1の性質を表1に示す。表1では、ITOを用いた結果である。低酸素濃度領域L1と高酸素濃度領域H1とを比較すると、次のことがいえる。
【0034】
低酸素濃度領域L1では、高酸素濃度領域H1に比べて、p型コンタクト層に対する接触抵抗が比較的高く、シート抵抗が比較的低い。つまり、
図3(
図1のBB断面)に示すように、低酸素濃度領域L1では、電流は、基板110の主面に垂直な向き(矢印D1の向き)に流れにくく、基板110の主面に
平行な向き(矢印D2の向き)に流れやすい。
【0035】
これに対して、高酸素濃度領域H1では、低酸素濃度領域L1に比べて、p型コンタクト層に対する接触抵抗が比較的低く、シート抵抗が比較的高い。そのため、
図3に示すように、高酸素濃度領域H1では、電流は、基板110の主面に垂直な向き(矢印D3の向き)に流れやすく、基板110の主面に平行な向き(矢印D4の向き)に流れにくい。
【0036】
前述のように、高酸素濃度領域H1のシート抵抗は比較的高いが、p型コンタクト層のシート抵抗に比べれば、高酸素濃度領域H1のシート抵抗は十分に低い。したがって、
図3の矢印DXに示すように、電流は、透明導電性金属酸化物膜150の内部で拡散しつつ、p型層140に向けて流れる。このように、透明導電性金属酸化物膜150において、電極形成領域では、p型コンタクト層に向かう電流成分密度は小さく、平面内方向に流れる。そして、電極形成領域外において、平面内方向に拡散するとともにp型コンタクト層方向に分流して、発光層に向かう電流密度が、電極形成領域に比べて増加する。つまり、発光素子100では、発光面内に電流が拡散しやすく、その発光効率はよい。ここで、電極形成領域とは、パッド電極や配線電極等の電極が半導体発光素子において平面的に占める領域のことである。つまり、電極の平面形状を基板の主面方向に射影した領域のことをいう。
【0037】
表1では、低酸素濃度領域L1のキャリア濃度は、6.3×10
20(1/cm
3 )である。また、表1では、高酸素濃度領域H1のキャリア濃度は、3.0×10
20(1/cm
3 )である。このように、低酸素濃度領域L1のキャリア濃度が高酸素濃度領域H1のキャリア濃度よりも高い。これは、酸素欠損が多いほど、キャリア濃度が高くなるからである。つまり、透明導電性金属酸化物膜150を酸化することにより、そのキャリア濃度は低くなる。また、低酸素濃度領域L1と高酸素濃度領域H1とで、移動度の差はほとんどない。
【0038】
[表1]
ITO
接触抵抗 シート抵抗 キャリア濃度 移動度
(Ω・cm
2 ) (Ω/□) (1/cm
3 ) (cm
2 /V・s)
L1 3.2×10
-3 14.1 6.3×10
20 43.0
H1 1.0×10
-3 32.2 3.0×10
20 45.0
【0039】
また、IZOについての同様の結果を表2に示す。
【0040】
[表2]
IZO
接触抵抗 シート抵抗 キャリア濃度 移動度
(Ω・cm
2 ) (Ω/□) (1/cm
3 ) (cm
2 /V・s)
L1 − 43.6 3.4×10
20 59.8
H1 − 45.1 3.1×10
20 62.6
【0041】
3.半導体発光素子の製造方法
本実施形態の半導体発光素子の製造方法は、次の(工程A)から(工程I)までの工程を有する方法である。
(工程A)半導体層形成工程
(工程B)透明導電性金属酸化物膜形成工程
(工程C)第1の熱処理工程(低酸素濃度領域形成工程)
(工程D)n型層露出工程
(工程E)絶縁層形成工程
(工程F)第2の熱処理工程(高酸素濃度領域形成工程)
(工程G)穿孔工程
(工程H)電極形成工程
(工程I)絶縁膜形成工程
そして、これらの各工程をこの順序で実施する。
【0042】
3−1.(工程A)半導体層形成工程
基板110に、有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いて半導体層を形成する。まず、基板110の主面上に、バッファ層を形成する。次に、バッファ層の上にn型層120を形成する。そして、n型層120の上に発光層130を形成する。次に、発光層130の上にp型層
140を形成する。基板110に各半導体層を形成したものを
図4に示す。
【0043】
3−2.(工程B)透明導電性金属酸化物膜形成工程
次に、
図5に示すように、p型層140の上に透明導電性金属酸化物膜150をスパッタリングにより形成する。ここで、nパッド電極N1を形成する予定の個所を除いて、p型層140の上に透明導電性金属酸化物膜150を形成する。前述のとおり、透明導電性金属酸化物膜150の材質として、In
2 O
3 に他の金属を添加したものを用いる。ITOまたはIZOなどが挙げられる。パターンを形成するために、リフトオフ、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれかの方法を用いればよい。この段階では、まだ透明導電性金属酸化物膜150は十分な透明性を得ていない。
【0044】
3−3.(工程C)第1の熱処理工程(低酸素濃度領域形成工程)
続いて、第1の熱処理工程を行う。この熱処理を、酸素を含まない雰囲気下で行う。例えば、窒素雰囲気下で行う。圧力条件として、10Pa以下の場合や、大気圧下の場合が挙げられる。熱処理温度は、例えば、700℃である。熱処理時間は、例えば、300秒以下である。ただし、これらの熱処理条件の例に限らない。これらの条件は、透明導電性金属酸化物膜150の材質等により異なる条件を設定すればよい。この熱処理により、透明導電性金属酸化物膜150は、透明性を得る。
【0045】
この熱処理を窒素雰囲気下で行うこととしたが、不活性な気体であれば他の気体を用いてもよい。ただし、酸素を含まないものとする。この段階での透明導電性金属酸化物膜150の酸素濃度は、低酸素濃度領域L1と同程度である。そして、接触抵抗等についても、表1に示した低酸素濃度領域L1と同程度である。
【0046】
3−4.(工程D)n型層露出工程
次に、
図6に示すように、半導体層の一部を抉り、n型層120の一部を露出させる。その露出箇所121は、露出部N1の箇所である。そのために、フォトリソグラフィの後、ドライエッチングを行えばよい。
【0047】
3−5.(工程E)絶縁層形成工程
次に、
図7に示すように、透明導電性金属酸化物膜150の一部の上に絶縁層160を形成する。絶縁層160を形成する領域は、電極形成領域である。つまり、この後に形成する配線電極170の位置である。絶縁層160を形成するために、CVD法を用いればよい。ここで、絶縁層160は、後述する第2の熱処理工程で、透明導電性金属酸化物膜150の覆われている箇所の酸化を防止するためのマスク層である。つまり、この工程は、マスク層形成工程でもある。
【0048】
3−6.(工程F)第2の熱処理工程(高酸素濃度領域形成工程)
次に、マスク層を形成した透明導電性金属酸化物膜150に、酸素を含む雰囲気中で熱処理を行う。例えば、25PaのO
2 雰囲気で行う。熱処理温度は、550℃である。この熱処理により、透明導電性金属酸化物膜150のうち露出している箇所が酸化する。透明導電性金属酸化物膜150の材質は、ITOやIZOなどの酸化物である。ここでいう酸化とは、酸素欠損の箇所に酸素が結合することを意味している。つまり、前述したように、キャリア濃度が減少することを意味している。
【0049】
そして、透明導電性金属酸化物膜150における絶縁層160に覆われていない箇所は、この酸化により、高酸素濃度領域H1となる。一方、透明導電性金属酸化物膜150における絶縁層160に覆われている箇所は、低酸素濃度領域L1のままである。絶縁層160がマスク層に類似する役割を果たし、低酸素濃度領域L1に酸素が結合するおそれがないからである。
【0050】
3−7.(工程G)穿孔工程
次に、
図8に示すように、絶縁層160に穿孔する。この穿孔は、エッチング等により形成すればよい。これにより、孔161が形成される。孔161は、コンタクト部171を形成するためのものである。
【0051】
3−8.(工程H)電極形成工程
次に、
図9に示すように、電極を形成する。ここでは、配線電極170、190を形成することとすればよい。その際、これらを同一工程で同時に形成することとしてもよい。
【0052】
3−9.(工程I)絶縁膜形成工程
そして、電極を形成した後に、絶縁膜180を形成する。その際、配線電極170や半導体層等の側面をも覆うように、絶縁膜180を形成する。このとき、露出部P1、N1を除いて絶縁膜180を形成することとしてもよいし、絶縁膜で覆った後に、絶縁膜のうち露出箇所を除去することにより、露出部P1、N1を形成することとしてもよい。以上により、
図2に示す発光素子100が製造された。なお、上記の工程の順序については適宜入れ換えてもよい。また、ここで記載した工程以外の工程を付け加えてももちろん構わない。
【0053】
なお、このように製造された発光素子100には、透明導電性金属酸化物膜150の上に絶縁層160の少なくとも一部が残留している。
【0054】
4.変形例
4−1.透明導電性金属酸化物膜の材質
本実施形態では、透明導電性金属酸化物膜150の材質をITOもしくはIZOであるとした。しかし、In
2 O
3 に他の金属を添加した化合物を用いてもよい。その場合であっても、酸素を含む雰囲気中で熱処理を施すことにより、透明導電性金属酸化物膜150の領域内に、高酸素濃度領域H1および低酸素濃度領域L1を形成することができるからである。
【0055】
4−2.絶縁膜の粗面化
また、絶縁膜180を粗面化することとしてもよい。光取り出し効率が向上するからである。
【0056】
4−3.反射率
反射率を向上させるため、絶縁層160を誘電体多層膜としてもよい。また、絶縁層160の上下ににAlやAg等の金属層を形成することとしてもよい。反射率を高めるためである。
【0057】
4−4.コンタクト電極
本実施形態では、コンタクト部171と配線部172とが、一体のものであるとした。しかし、これらは別体であってもよい。その場合、
図10に示すように、発光素子200には、別体のコンタクト部271と、配線部272とがある。
【0058】
5.まとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態の発光素子100は、半導体層にオーミックコンタクトする透明導電性金属酸化物膜150を有するものである。透明導電性金属酸化物膜150は、低酸素濃度領域L1と、低酸素濃度領域L1よりも酸素濃度の高い高酸素濃度領域H1と、を有している。電極から注入される電流は、低酸素濃度領域L1で、横方向(発光面内方向)に拡散し、高酸素濃度領域H1で、縦方向(発光面に垂直な方向)に流れやすい。そのため、透明導電性金属酸化物膜150で発光面内に十分に拡散した電流が、半導体層を流れることとなる。そのため、発光素子100の発光効率はよい。
【0059】
また、本実施形態の発光素子100の製造方法は、特許文献1のように、2回にわたって透明導電性金属酸化物膜を形成する必要性はない。そのため、生産性はよい。また、発光素子100では、低酸素濃度領域L1と高酸素濃度領域H1とが、単一の透明導電性金属酸化物膜150を占める。したがって、発光素子100には、特許文献1に記載の2つの透明導電性金属酸化物膜を接合する半導体発光素子のように、接合面での接触抵抗による抵抗の上昇がない。
【0060】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。本実施形態では、半導体層を形成するにあたって、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いた。しかし、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)などの気相成長法や、分子線エピタキシー法(MBE)等、その他の方法を用いてもよい。
【0061】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態では、半導体発光素子における絶縁層の幅と配線電極170の幅との関係が、第1の実施形態と異なっている。したがって、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0062】
1.半導体発光素子
本実施形態に係る発光素子300の電極付近を
図11に示す。
図11に示すように、発光素子300において、絶縁層360の幅W1は、配線電極170の幅W2よりも広い。
【0063】
発光素子300においても、透明導電性金属酸化物膜150は、低酸素濃度領域L2および高酸素濃度領域H2を有する。低酸素濃度領域L2は、絶縁層360に覆われている領域である。高酸素濃度領域H2は、絶縁層360に覆われていない領域である。そのため、高酸素濃度領域H2の表面は、露出している。低酸素濃度領域L2および高酸素濃度領域H2における酸素濃度は、低酸素濃度領域L1および高酸素濃度領域H1における酸素濃度とほとんど同じである。
【0064】
このように、絶縁層360の幅W1は、低酸素濃度領域L2の領域幅W0と同じである。しかし、配線電極170の幅W2は、低酸素濃度領域L2の領域幅W0よりも狭い。
【0065】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態では、半導体発光素子の製造方法が第1の実施形態と異なっている。したがって、異なる点を中心に説明する。重複する点については記載を省略する。
【0066】
1.半導体発光素子の製造方法
本実施形態では、絶縁層のみならず、配線電極も、酸化処理のマスクとして用いる点に特徴がある。
【0067】
本実施形態の半導体発光素子の製造方法は、次の(工程A)から(工程I)までの工程を有する方法である。ただし、第1の実施形態とは、その実施する順序が異なっている。
(工程A)半導体層形成工程
(工程B)透明導電性金属酸化物膜形成工程
(工程C)第1の熱処理工程(低酸素濃度領域形成工程)
(工程D)n型層露出工程
(工程E)絶縁層形成工程
(工程G)穿孔工程
(工程H)電極形成工程
(工程F)第2の熱処理工程(高酸素濃度領域形成工程)
(工程I)絶縁膜形成工程
そして、これらの工程をこの順序で実施する。つまり、第1の実施形態と、その工程を実施する順序が異なる。本実施形態の製造方法は、(工程E)絶縁層形成工程までの工程については、第1の実施形態の製造方法と同様である。したがって、それ以降の工程について説明する。
【0068】
1−1.(工程G)穿孔工程
透明導電性金属酸化物膜150の上に絶縁層160を形成した後に、絶縁層160に孔161を空ける。この孔161は、配線電極170のコンタクト部171を、透明導電性金属酸化物膜150の上に形成するためのものである。また、配線電極190の形成箇所にも、同様に孔を空けるとよい。
【0069】
1−2.(工程H)電極形成工程
次に、配線電極170、190を形成する。これらの形成を同一工程で同時に行うことができる。この段階で、透明導電性金属酸化物膜150において低酸素濃度領域となる領域には、絶縁層160および配線電極170が形成されている。絶縁層160および配線電極170は、透明導電性金属酸化物膜150の酸化処理のマスクの役割を果たすものである。
【0070】
1−3.(工程F)第2の熱処理工程(高酸素濃度領域形成工程)
次に、酸素を含む雰囲気下で熱処理を行う。この熱処理工程については、第1の実施形態のときと同様にして行うことができる。この後、(工程I)絶縁膜形成工程で絶縁膜を形成することにより、発光素子100を製造することができる。
【0071】
なお、このように製造された発光素子には、透明導電性金属酸化物膜150の上に絶縁層160および配線電極170の少なくとも一部が残留している。
【0072】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について説明する。本実施形態では、半導体発光素子の製造方法が第1の実施形態と異なっている。その結果、半導体発光素子における低酸素濃度領域および高酸素濃度領域の範囲も、第1の実施形態と異なっている。
【0073】
1.半導体発光素子
本実施形態に係る発光素子400の電極付近を
図12に示す。
図12では、低酸素濃度領域L3の幅W3は、絶縁層460の幅W1よりも狭い。逆に、低酸素濃度領域L3の幅を、絶縁層460の幅W1よりも広いこととしてもよい。これは、後述するように、絶縁層460をマスク層としないで、別のマスクを形成して熱処理工程を行うからである。
【0074】
2.半導体発光素子の製造方法
本実施形態の半導体発光素子の製造方法は、次の(工程A)から(工程I)までの工程を有する方法である。
(工程A)半導体層形成工程
(工程B)透明導電性金属酸化物膜形成工程
(工程C)第1の熱処理工程(低酸素濃度領域形成工程)
(工程D)n型層露出工程
(工程J)マスク層形成工程
(工程F)第2の熱処理工程(高酸素濃度領域形成工程)
(工程K)マスク層除去工程
(工程E)絶縁層形成工程
(工程G)穿孔工程
(工程H)電極形成工程
(工程I)絶縁膜形成工程
そして、これらの工程をこの順序で実施する。第1の実施形態の工程に、(工程J)および(工程K)が加わっている。本実施形態の製造方法は、(工程D)n型層露出工程までは、第1の実施形態の製造方法と同様である。
【0075】
2−1.(工程J)マスク層形成工程
次に、
図13に示すように、透明導電性金属酸化物膜150の上にマスク層480を形成する。このマスク層480の材質は、例えば、SiO
2 を用いることができる。透明導電性金属酸化物膜150の
酸化を防止するためのマスクであるため、透明導電性金属酸化物膜150を十分に覆うことができ、酸素を透明導電性金属酸化物膜150に透過させることなく、後で除去することのできる材質のものであれば、種々の材質を用いることができる。
【0076】
2−2.(工程F)第2の熱処理工程(高酸素濃度領域形成工程
次に、酸素を含む雰囲気下で熱処理を行う。この熱処理工程の条件は、第1の実施形態と同じでよい。これにより、マスク層480に覆われていない領域は、酸素濃度が高くなり、高酸素濃度領域H3となる。マスク層480に覆われている領域は、酸素濃度が低いままであり、低酸素濃度領域L3となる。
【0077】
2−3.(工程K)マスク層除去工程
次に、マスク層480を除去する。そのために、フォトリソグラフィやエッチング等を用いることができる。
【0078】
続いて、(工程E)絶縁層形成工程を実施する。(工程G)穿孔工程以降の工程については、第1の実施形態の工程と同様である。つまり、マスク層480を除去した後に、絶縁層460を形成し、その後に、配線電極を形成する。
【0079】
3.製造された半導体発光素子
この低酸素濃度領域L3の領域幅W3は、絶縁層460の覆う幅W1と必ずしも一致しない。低酸素濃度領域L3の領域幅W3は、マスク層480の形成領域の幅と同じである。