特許第5949445号(P5949445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大真空の特許一覧

<>
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000002
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000003
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000004
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000005
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000006
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000007
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000008
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000009
  • 特許5949445-圧電フィルタ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949445
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】圧電フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/56 20060101AFI20160623BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20160623BHJP
   H01L 41/18 20060101ALI20160623BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   H03H9/56 D
   H03H9/10
   H01L41/18 101A
   H01L41/08 L
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-236254(P2012-236254)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-86983(P2014-86983A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩
【審査官】 ▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/005699(WO,A1)
【文献】 実開平03−002741(JP,U)
【文献】 特開2002−185287(JP,A)
【文献】 特開2001−308682(JP,A)
【文献】 特開2005−094410(JP,A)
【文献】 特開2003−017978(JP,A)
【文献】 特開2005−303825(JP,A)
【文献】 特開2004−200956(JP,A)
【文献】 特開2000−295073(JP,A)
【文献】 特開2000−138561(JP,A)
【文献】 特開平09−083290(JP,A)
【文献】 特開平06−045868(JP,A)
【文献】 特開平05−102785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/56
H01L 41/09
H01L 41/18
H03H 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の圧電板の一方の面に複数の分割電極を、また、他方の面に前記複数の分割電極に共通して対向する共通電極を備え、前記圧電板の外周縁上にある4つの角部のうちの3つの角部に前記各電極を引き出す引出電極が形成され、これら引出電極が引き出された前記3つの角部に導電性接着剤が塗布されている圧電フィルタであって、
前記圧電板の一方の辺方向中央を通る中心線と他方の辺方向中央を通る中心線とが交差する箇所を当該圧電板の中心部とし、前記圧電板の中心部に対して、前記共通電極の中心部が、前記一方の辺方向に沿ってずれると共に、前記他方の辺方向に沿ってずれることによって、前記圧電板の導電性接着剤が塗布されていない残りの1つの角部の方向に偏心していることを特徴とする圧電フィルタ。
【請求項2】
矩形状の圧電板の一方の面に複数の矩形状の分割電極を、また、他方の面に前記複数の分割電極に共通して対向する矩形状の共通電極を備え、前記圧電板の外周縁上にある4つの角部のうちの3つの角部に前記各電極を引き出す引出電極が形成され、これら引出電極が引き出された前記3つの角部に導電性接着剤が塗布されている圧電フィルタであって、
少なくとも前記3つの角部に対向する前記分割電極および共通電極の外周縁上の角部が面取りないし切り欠かれ、前記面取りないし切り欠きにより電極面積が減少した分割電極または共通電極が、前記減少した電極面積分に応じて、前記圧電板の一方の辺方向または他方の辺方向に伸長させられて、前記面取りないし切り欠き前よりも横長または縦長の電極となっている、ことを特徴とする圧電フィルタ。
【請求項3】
矩形状の圧電板の一方の面に複数の矩形状の分割電極を、また、他方の面に前記複数の分割電極に共通して対向する矩形状の共通電極を備え、前記圧電板の外周縁上にある4つの角部のうちの3つの角部に前記各電極を引き出す引出電極が形成され、これら引出電極が引き出された前記3つの角部に導電性接着剤が塗布されている圧電フィルタであって、
前記圧電板の一方の辺方向中央を通る中心線と他方の辺方向中央を通る中心線とが交差する箇所を当該圧電板の中心部とし、前記圧電板の中心部に対して、前記共通電極の中心部が、前記一方の辺方向に沿ってずれると共に、前記他方の辺方向に沿ってずれることによって、前記圧電板の導電性接着剤が塗布されていない残りの1つの角部の方向に偏心していると共に、
少なくとも前記3つの角部に対向する前記分割電極および共通電極の外周縁上の角部が面取りないし切り欠かれ、前記面取りないし切り欠きにより電極面積が減少した分割電極または共通電極が、前記減少した電極面積分に応じて、前記圧電板の一方の辺方向または他方の辺方向に伸長させられて、前記面取りないし切り欠き前よりも横長または縦長の電極となっている、ことを特徴とする圧電フィルタ。
【請求項4】
前記圧電板の2枚が縦続接続されて4ポールタイプとなっている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電フィルタ。
【請求項5】
前記両圧電板のうちの一方の圧電板の対向する2つの分割電極を共に該対向方向に対して横長形状とし、他方の圧電板の対向する2つの分割電極を共に該対向方向に対して縦長形状とした、ことを特徴とする請求項4に記載の圧電フィルタ。
【請求項6】
前記圧電板に、2つの圧電フィルタ形成領域を形成し、各圧電フィルタ形成領域には、2つの分割電極と共通電極とからなる2ポールタイプの圧電フィルタを形成して、両圧電フィルタ形成領域全体で4ポールタイプとなっており、且つ、前記各圧電フィルタ形成領域の4つの角部のうち、導電性接着剤が塗布される3つの角部に前記各電極からの引出電極が形成されており、前記各圧電フィルタ形成領域の中心部に対して当該各圧電フィルタ形成領域内の共通電極の中心部が、導電性接着剤が塗布されない1つの角部の方向に偏心している、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電フィルタ。
【請求項7】
前記各圧電フィルタ形成領域それぞれにおいて、少なくとも前記3つの角部に対向する前記分割電極および引出電極の角部が面取りないし切り欠かれている、ことを特徴とする請求項6に記載の圧電フィルタ。
【請求項8】
前記圧電板が、平板、逆メサ型、またはメサ型のATカット水晶板である、ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の圧電フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電板の厚みすべり振動等を利用した圧電フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電フィルタは、通信機器等の分野で広く用いられているフィルタである。圧電フィルタには、水晶板等からなる圧電板の一方の面に入出力用として該一方の面上で所定間隔を隔てて対向する2つの分割電極を、また、他方の面に前記一対の分割電極に該圧電板を間にして共通に対向する1つの共通電極を形成したものがある。
【0003】
かかる圧電フィルタにおいては、両分割電極による振動相互の音響結合を利用し、圧電板に発生する対称モードの共振周波数fsと非対称モードの共振周波数faとを重畳し合わせて、中心部周波数がほぼfa、通過帯域幅がほぼ2×(fa−fs)となる、所謂多重モードフィルタを実現する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
こうした圧電フィルタは、パッケージ内の接着パッド上に搭載され、分割電極や共通電極といった振動電極を、引出電極により圧電板の角部にまで引き出したうえで、導電性接着剤で接着パッドに接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3507206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような圧電フィルタにおいては、低周波帯用とする場合、振動電極の面積を拡大することが行われるが、電極面積を拡大すると、引出電極に塗布される導電性接着剤と振動電極とが距離的に近づく。
【0007】
しかし、このように導電性接着剤と振動電極との距離が近づくと、導電性接着剤の塗布の位置や状態が僅かに変化しただけでも、その挿入損失に悪影響を及ぼすようになる。そのため、振動電極の面積を拡大して導電性接着剤と振動電極とが距離的に近づく際は、導電性接着剤を高精度に塗布して導電性接着剤を正確に塗布することが必要となる。
【0008】
また、圧電板において引出電極の数は、分割電極2つ分と共通電極1つ分の都合3つあるために、導電性接着剤を高精度に塗布する箇所は3箇所となるが、これら圧電板の角部3箇所の全てに自動塗布機械であるディスペンサーにより導電性接着剤を高精度に塗布することは難しく、塗布後の圧電フィルタの不良品率が高く、歩留まりは低かった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、振動電極の面積を拡大して低周波帯用とする際に、圧電板の角部3箇所に導電性接着剤を塗布した場合の良品率を向上させ、歩留まりが高い圧電フィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記目的を達成するため、鋭意研究を重ね、導電性接着剤の塗布対象である圧電板の角部3箇所のうち、高精度に導電性接着剤の塗布が要求される箇所を多くても1箇所に低減し得た構造として、高歩留まりで製造することを可能とした圧電フィルタを完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明第1にかかる圧電フィルタは、矩形状の圧電板の一方の面に複数の分割電極を、また、他方の面に前記複数の分割電極に共通して対向する共通電極を備え、前記圧電板の外周縁上にある4つの角部のうちの3つの角部に前記各電極を引き出す引出電極が形成され、これら引出電極が引き出された前記3つの角部に導電性接着剤が塗布されている圧電フィルタであって、前記圧電板の一方の辺方向中央を通る中心線と他方の辺方向中央を通る中心線とが交差する箇所を当該圧電板の中心部とし、前記圧電板の中心部に対して、前記共通電極の中心部が、前記一方の辺方向に沿ってずれると共に、前記他方の辺方向に沿ってずれることによって、前記圧電板の導電性接着剤が塗布されていない残りの1つの角部の方向に偏心している、ことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記共通電極の中心部とは、当該共通電極の形状を、平面視矩形形状ないしは平面視「H」形状とした、上下左右に対称な形状を有した電極とすると、共通電極の上下方向の対称軸と左右方向の対称軸とが交差する箇所となり、これは幾何学上の重心となる。
【0013】
なお、幾何学重心とは、共通電極の平面形状における重心である。
【0014】
パッケージに収納される圧電板の数は、1枚でも、また、2枚以上の複数枚でもよい。
【0015】
前記分割電極の数は、2つ以上であれば、特に限定されない。
【0016】
前記圧電板の数が1枚で、その圧電板に形成される分割電極の数が2つの場合は、当該圧電フィルタは2ポールタイプであり、分割電極の数が3つの場合は、当該圧電フィルタは、3ポールタイプとなる。また、圧電板の数が2枚であり、それぞれの圧電板に2の分割電極が形成され、各圧電板同士が縦続接続される場合は、4ポールタイプとなる。本発明は、これらいずれのタイプも含む。
【0017】
前記共通電極の形状は、特に限定されないが、好ましくは、平面視矩形形状である。共通電極の形状は、分割電極の形状に合わせた平面視「H」形状であってもよい。また、「H」形状に対してパーシャル調整により電極が追加されて平面視矩形形状となった電極形状、あるいはパーシャル調整電極を含まず、当初から平面視矩形形状も含む。
【0018】
導電性接着剤は、特に限定されず、導電性を有する接着剤であればよい。導電性接着剤は、ディスペンサー等の塗布機械やその他により塗布される。導電性接着剤は、所定温度以上に加熱すると、熱硬化し、この熱硬化により引出電極を接着パッドに接合できるものが好ましい。
【0019】
本発明第1によれば、圧電板の中心部に対して前記共通電極の中心部が、導電性接着剤が塗布されない残りの角部の方向に偏心しているので、3つの塗布箇所のうち、前記残りの角部からみて前記偏心方向とは反対方向に位置する2つの塗布箇所においては、分割電極および共通電極からの距離が遠くなり、その結果、当該2つの塗布箇所では導電性接着剤の塗布精度が低くても振動の影響を軽減できる。
【0020】
これにより、従来のように導電性接着剤塗布箇所の3箇所全てにおいて、導電性接着剤の塗布を高精度に行う必要があった圧電フィルタとは異なり、本発明では、多くても1箇所での塗布を高精度に行うだけで済むこととなり、低周波用として高い歩留まりで製造が可能な圧電フィルタを提供できる。
【0021】
本発明第2にかかる圧電フィルタは、矩形状の圧電板の一方の面に複数の矩形状の分割電極を、また、他方の面に前記複数の分割電極に共通して対向する矩形状の共通電極を備え、前記圧電板の外周縁上にある4つの角部のうちの3つの角部に前記各電極を引き出す引出電極が形成され、これら引出電極が引き出された前記3つの角部に導電性接着剤が塗布されている圧電フィルタであって、少なくとも前記3つの角部に対向する前記分割電極および共通電極の外周縁上の角部が面取りないし切り欠かれ、前記面取りないし切り欠きにより電極面積が減少した分割電極または共通電極が、前記減少した電極面積分に応じて、前記圧電板の一方の辺方向または他方の辺方向に伸長させられて、前記面取りないし切り欠き前よりも横長または縦長の電極となっていることを特徴とする。
【0022】
本発明第2によれば、圧電板の4つの角部のうちの3つの角部それぞれにまで引き出した前記引出電極を接着パッド上に導電性接着剤で接合した場合、前記3つの角部に対向する前記分割電極および引出電極の角部が面取りないし切り欠かれているので、前記圧電板の3つの角部における塗布箇所から前記分割電極や共通電極までの距離が遠くなる。その結果、これら3つの角部の引出電極に導電性接着剤を塗布する精度が従来よりも低く済むので、低周波帯用として電極面積を大きくして高い歩留まりの圧電フィルタを提供できる。
【0023】
また、前記面取りないし切り欠きにより、電極面積が減少した分割電極または共通電極においては、当該減少した電極面積分、前記圧電板の一方の辺方向または他方の辺方向に伸長させられて、より横長またはより縦長の電極としたので、電極面積が減少しない分、低周波帯用に適した圧電フィルタを提供することができる。
【0024】
本発明第3の圧電フィルタは、矩形状の圧電板の一方の面に複数の矩形状の分割電極を、また、他方の面に前記複数の分割電極に共通して対向する矩形状の共通電極を備え、前記圧電板の外周縁上にある4つの角部のうちの3つの角部に前記各電極を引き出す引出電極が形成され、これら引出電極が引き出された前記3つの角部に導電性接着剤が塗布されている圧電フィルタであって、前記圧電板の一方の辺方向中央を通る中心線と他方の辺方向中央を通る中心線とが交差する箇所を当該圧電板の中心部とし、前記圧電板の中心部に対して、前記共通電極の中心部が、前記一方の辺方向に沿ってずれると共に、前記他方の辺方向に沿ってずれることによって、前記圧電板の導電性接着剤が塗布されていない残りの1つの角部の方向に偏心していると共に、少なくとも前記3つの角部に対向する前記分割電極および共通電極の外周縁上の角部が面取りないし切り欠かれ、前記面取りないし切り欠きにより電極面積が減少した分割電極または共通電極が、前記減少した電極面積分に応じて、前記圧電板の一方の辺方向または他方の辺方向に伸長させられて、前記面取りないし切り欠き前よりも横長または縦長の電極となっていることを特徴とする。
【0025】
本発明第3では、本発明第1、第2の効果を併せ持つ。
【0026】
本発明第1〜第3において、好ましい実施態様は、前記に記載の圧電フィルタに用いる圧電板を2枚縦続接続して4ポールタイプとする。
【0027】
この実施態様では、さらに前記両圧電板のうちの一方の圧電板の対向する2つの分割電極を共に該対向方向に対して横長形状とし、他方の圧電板の対向する2つの分割電極を共に該対向方向に対して縦長形状とする。
【0028】
本発明第1において、好ましい実施態様は、前記圧電板に、2つの圧電フィルタ形成領域を形成し、各圧電フィルタ形成領域には、2つの分割電極と共通電極とからなる2ポールタイプの圧電フィルタを形成して、両圧電フィルタ形成領域全体で4ポールタイプとなっており、且つ、前記各圧電フィルタ形成領域の4つの角部のうち、導電性接着剤が塗布される3つの角部に前記各電極からの引出電極が形成されており、前記各圧電フィルタ形成領域の中心部に対して当該各圧電フィルタ形成領域内の共通電極の中心部が、導電性接着剤が塗布されない1つの角部の方向に位置的に偏心している。
【0029】
この実施態様でさらに好ましくは、前記各圧電フィルタ形成領域それぞれにおいて、少なくとも前記3つの角部に対向する前記分割電極および引出電極の角部が面取りないし切り欠かれている。
【0030】
本発明第1〜第3において、好ましい実施態様は、前記圧電板が、平板、逆メサ型、またはメサ型のATカット水晶板である。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、圧電板に形成される電極面積を大きくして低周波用とする場合、圧電板の4つの角部のうち、導電性接着剤が塗布される3つの角部に各電極からの引出電極が形成され、且つ、圧電板の中心部に対して共通電極の幾何学重心である中心部を圧電板の導電性接着剤が塗布されない残りの角部の方向に偏心させたことで、導電性接着剤の塗布を高精度に行う必要がある塗布箇所を従来の3箇所から1箇所に低減させることができ、該偏心させていない圧電フィルタと比較して挿入損失が規格レベル以上となって良品となる割合が高くなり、結果として低周波帯用としの設計が容易で且つ歩留まりが高い低周波帯用の圧電フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る圧電フィルタの概略平面図である。
図2図1の圧電フィルタの2枚の圧電板の拡大平面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る圧電フィルタの概略平面図である。
図4】本発明のさらに他の実施形態に係る圧電フィルタの概略平面図である。
図5】本発明のさらに他の実施形態に係る圧電フィルタの概略平面図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る圧電フィルタの概略平面図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る圧電フィルタの概略平面図である。
図8】特性試験に用いる圧電フィルタの共通電極のサイズを示す図である。
図9】従来と本発明の圧電フィルタの歩留まりを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る圧電フィルタを説明する。この圧電フィルタの圧電材料はATカットされた水晶であるが、これに限定されず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなど他の圧電材料にも適用できる。
【0034】
図1を参照して、実施形態の圧電フィルタを説明する。図1(a)は、圧電フィルタの概略平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
【0035】
圧電フィルタ1は、2ポールタイプの圧電板2,3を縦続接続してなり、これら圧電板2,3を、パッケージ4に収納して構成される。パッケージ4の開口は図示略の蓋体により気密封止される。
【0036】
なお、圧電板2,3は、例えば、電気軸をX軸とし、機械軸であるY軸から35.15°ずれた新たなY´軸とし、さらに光学軸であるZ´軸から35.15°ずれた新たなZ´軸として各結晶軸に沿って形成された直方体形状をなし、例えば平面視略矩形状のATカットの水晶板からなる。
【0037】
パッケージ4は、底部4aと、その底部4a四周に立設した周部4bとで凹部4cを備え、この底部4aの内底面の適宜箇所に複数の接着パッド5が形成され、各接着パッド5上それぞれに導電性接着材6が下塗りされて、圧電フィルタ1を構成する2つの圧電板2、3が搭載される。
【0038】
この下塗りにより各圧電板2、3の裏面側の分割電極7a,7b;8a,8bそれぞれの引出電極7c,7d;8c,8dは接着パッド5に接合される。また、圧電板2,3の表面側の共通電極9a,9bそれぞれの引出電極9c,9dは導電性接着剤10により上塗りされて接着パッド5に接合される。共通電極9a,9bが分割電極7a,7b;8a,8bの形状に対応して平面視「H」形状となっているのは、スプリアス規格を満足させるためである。
【0039】
そして、4ポールタイプとして、圧電板2の分割電極7aは入力側分割電極となり、分割電極7bは出力側分割電極となる。また、圧電板2の出力側分割電極7bは、圧電板3の入力側分割電極8cに、パッケージ4内部を通る配線を介して接続されている。圧電板3の分割電極8cは入力側分割電極となり、分割電極8dは出力側分割電極となる。
【0040】
これにより、圧電フィルタ1は、2ポールタイプの圧電板2,3を2組縦続接続し、圧電板2,3それぞれの分割電極7a,7b;8a,8bによる振動相互の音響結合を利用し、圧電板2,3に発生する対称モードの共振周波数fsと非対称モードの共振周波数faとが重畳し合って、中心部周波数略fa、通過帯域幅略2×(fa−fs)となる4ポールタイプの圧電フィルタを実現する。
【0041】
これら圧電板2,3における電極の配置について図2を参照して説明する。図2は、パッケージの図示を略する。図2に示す圧電板2,3は図1のそれと同様の関係にある。
【0042】
圧電板2,3は、平面視矩形形状であるので、圧電板のX軸方向の辺(長辺)中央を通る中心線L1とZ´軸方向の辺(短辺)中央を通る中心線L2との交点は、圧電板2,3それぞれの中心部O1,O2となる。
【0043】
平面視矩形である圧電板2は、外周縁上に略直角となる4つの角部A1〜D1を有し、そのうち、引出電極7c,7d;9cが引き出されて導電性接着剤6,10が塗布される角部をA1,B1,C1とし、導電性接着剤6,10が塗布されない角部をD1としている。
【0044】
同様に、平面視矩形である圧電板3は、4つの角部A2〜D2を有し、そのうち、引出電極8c,8d;9dが引き出されて導電性接着剤6,10が塗布される角部をA2,B2,C2とし、導電性接着剤6,10が塗布されない角部をD2としている。
【0045】
そして、圧電板2,3それぞれにおいて、共通電極9a,9bの中心部O1´,O2´は、圧電板2,3の中心部O1,O2に対して、X軸方向にX1、Z´軸方向にZ´1だけ、導電性接着剤が塗布されない角部D1,D2の方向に位置的に偏心している。この場合、共通電極9a,9bの中心部O1´,O2´はいずれも幾何学重心である。
【0046】
また、このX軸方向およびZ´軸方向の偏心の距離は実験により種々に設定できる。本発明における偏心の距離の設定と、これに基づく歩留まり等の実証については後述する。分割電極7a,7b;8a,8bは、共通電極9a,9bに対応して形成されている。
【0047】
共通電極9a,9bの中心部O1´,O2´の偏心により、圧電板2,3の角部B1,C1;B2,C2それぞれの導電性接着剤10,6の2箇所の塗布位置は分割電極7b,8bや共通電極9a,9bから、距離的により離間することになるので、分割電極7b,8bや共通電極9a,9bに対する圧電板2,3の角部B1,C1;B2,C2における導電性接着剤10,6の塗布の影響は軽減される。
【0048】
一方、圧電板2,3の角部A1,A2の導電性接着剤6の塗布位置は、共通電極9a,9bの中心部O1´,O2´の偏心により、分割電極7a,8aや共通電極9a,9bから距離的により離間したとは必ずしもいえないので、圧電板2,3の角部A1,A2では、導電性接着剤6の塗布を留意して行うことが必要となる。
【0049】
したがって、従来では、圧電板2,3の中心部O1,O2と、共通電極9a,9bの中心部O1´,O2´と、が一致するように、これら共通電極9a,9bが蒸着等により圧電板2,3上に形成されていたため、圧電板2,3の角部A1〜C1;A2〜C2それぞれの3箇所の全てにおいて導電性接着剤の塗布を高精度に行う必要があり、当該圧電フィルタの歩留まりが非常に低いものであった。
【0050】
これに対して、本実施形態では、圧電板2,3の角部A1〜C1;A2〜C2それぞれの3箇所のうち、角部B1,C1;B2,C2の2箇所においては、導電性接着剤10,6の塗布位置から電極までの距離が長くなる結果、フィルタ特性に対する塗布の影響が低減され、従来と比較して、不良品となる圧電フィルタが大幅に減少し、圧電フィルタの歩留まりが格段に向上する。
【0051】
なお、圧電板2,3の中心部O1,O2に対する、共通電極9a,9bの中心部O1´,O2´の偏心の程度は、実験により適宜に設定することができる。
【0052】
また、共通電極9a,9bは、スプリアス規格を満たすために平面視「H」形状であるが、共通電極9a,9bの平面視形状は特に限定されるものではない。また、図2の共通電極9a,9bには、パーシャル調整前であり、そのため、共通電極9a,9bと同等の材質の薄膜が蒸着されて周波数調整される電極は図示されていない。しかし、この共通電極9a,9bは、パーシャル調整用の電極を含めて、その中心部O1´,O2´を設定してもよい。
【0053】
図3を参照して本発明の他の実施形態に係る圧電フィルタを説明する。図3において、図1と対応する部分には同一の符号を付している。
【0054】
圧電フィルタ11は、圧電板2,3を備える。これら圧電板2,3は図1と同様、パッケージ4に収納され、接着パッド5に搭載される。
【0055】
そして、この実施形態では、圧電板2,3それぞれの角部A1〜D1;A2〜D2に対向する分割電極7a,7b;8a,8b、および共通電極9a,9bそれぞれの角部を面取したことを特徴とする。
【0056】
これら圧電板2,3それぞれの共通電極9a,9bの面取箇所をM1〜M4、分割電極7a,7b;8a,8bの面取箇所をN1〜N4とする。
【0057】
分割電極7a,7b;8a,8b、共通電極9a,9bそれぞれの角部を面取すると、分割電極7a,7b;8a,8b、共通電極9a,9bは圧電板2,3の角部A1,B1,C1;A2,B2,C2に塗布される導電性接着剤6,10の塗布位置から距離的に離れることになる。これにより、前記共通電極9a,9bおよび分割電極7a,7b;8a,8bの角部に対する面取により、圧電フィルタ11のフィルタ特性への前記導電性接着剤6,10の塗布の影響を大きく低減することができる。
【0058】
したがって、図3の圧電フィルタ11においては、各圧電板2,3それぞれの共通電極9a,9bの中心部が、圧電板2,3の中心部に対して当該圧電板2,3の角部D1,D2方向に偏心していることに加えて、共通電極9a,9b、分割電極7a,7b;8a,8bの面取りにより、電板2,3の角部A1,B1,C1;A2,B2,C2の3箇所全てにおいて、導電性接着剤10,6の塗布によるフィルタ特性に対する塗布の影響が低減され、従来と比較して、不良品となる圧電フィルタが大幅に減少し、圧電フィルタの歩留まりが格段に向上する。
【0059】
図4を参照して本発明のさらに他の実施形態にかかる圧電フィルタ12を説明する。図3の圧電フィルタ11は分割電極7a,7b;8a,8bと共通電極9a,9bの角部を面取したため、電極面積が減少している。図4の圧電フィルタ12においては、前記面取により電極面積が減少しないように、一方の圧電板2では電極をX軸方向(図中、縦方向)に延伸し、他方の圧電板3では電極をZ´軸方向(図中、横方向)に延伸している。面取以前の電極面積と面取後の電極面積とが同一になるようにしている。
【0060】
なお、図4の圧電フィルタ12においても、各圧電板2,3それぞれの共通電極9a,9bの中心部は、圧電板2,3の中心部に対して当該圧電板2,3の角部D1,D2方向に偏心している。そして、さらに、図4の圧電フィルタ12では、分割電極7a,7b;8a,8bおよび共通電極9a,9bのいずれも角部が面取され、且つ、面取以前の電極面積と面取後の電極面積とが同一になるように、圧電板2では電極形状がX軸方向に縦長、圧電板3では電極形状がZ´軸方向に横長となる組合せとしている。
【0061】
図5を参照して本発明のさらに他の実施形態にかかる圧電フィルタを説明する。図5の圧電フィルタ13は矩形状の1枚の圧電板(圧電ウエハ)14からなり、この圧電板14は、共に均等面積の圧電フィルタ形成領域R1,R2を2つ有し、一方の圧電フィルタ形成領域R1には、分割電極7a,7bと共通電極9aとからなる2ポールタイプの圧電フィルタ13aを形成し、他方の圧電フィルタ形成領域R2には、分割電極7c,7dと共通電極9bとからなる2ポールタイプ圧電フィルタ13bを形成し、これら圧電フィルタ形成領域R1,R2それぞれの圧電フィルタ13a,13bにより全体で4ポールタイプの圧電フィルタ13となっている。
【0062】
この圧電フィルタ13においても、圧電フィルタ13a,13bは、それぞれの圧電フィルタ形成領域R1,R2内において、共通電極9a,9bそれぞれの中心部O1´,O2´は、圧電フィルタ形成領域R1,R2それぞれの中心部O1.O2に対して当該圧電フィルタ形成領域R1,R2の導電性接着剤を塗布しない角部方向に偏心している。
【0063】
図6を参照して本発明のさらに他の実施形態にかかる圧電フィルタを説明する。この圧電フィルタ15は、図1では、分割電極7a,7b;8a,8bに対応して平面視「H」形状の共通電極9a,9bをそれぞれ有する圧電板2,3からなる圧電フィルタ1に対して、パーシャル調整のための電極15a,15bを形成したものである。電極15a,15bは、図解の都合で、ハッチングで示している。
【0064】
圧電フィルタ15では、図1の圧電フィルタ1の共通電極9a,9bとは異なって、パーシャル調整電極15a,15bが形成されているが、圧電板2,3それぞれの中心部O1,O2に対して、共通電極9a,9bの中心部O1´,O2´の偏心は、図1の場合と同様である。
【0065】
なお、実施形態では、圧電板2,3は、平板であったが、図7(a)(b)の圧電板16に示すように、中央部分を薄肉部(振動領域)16aとし、この薄肉部16aの周囲に振動領域を補強する厚肉部16bを形成した逆メサ型の圧電板であってもよい。なお、図7では図1図6と対応する部分には同一の符号を付している。図7に示す圧電板16においては、分割電極7a,7bおよび共通電極9aは、圧電板16の角部に対向する角部は面取されている。また、圧電板2,3は、図示を略するが、メサ型構造のものであってもよい。
【0066】
図7の圧電板16においては、パッケージに収納した状態の図示を略しているが、パッケージサイズを同一にして電極面積を大きくして低周波用とするため、圧電板16全体の中心部に対して、共通電極9a全体の中心部を圧電板16の4つの角部のうち、導電性接着剤6,10が塗布される3つの角部を除いた角部の方向に偏心させる。そして、前記面取により減少した電極面積分、圧電板16の一方の辺方向または他方の辺方向に分割電極7a,7b、共通電極9aを伸長して、横長またはより縦長の電極とするとよい。
【実施例】
【0067】
図8に実施例に用いる共通電極の平面視形状およびサイズを示す。実施例の圧電フィルタは、パッケージ内に2つの圧電板をZ´軸方向に並置するものであり、図8(a)は前記2つの圧電板のうちの一方の圧電板上の共通電極の形状および寸法を示し、図8(b)は他方の圧電板上の共通電極の形状および寸法を示している。圧電板そのものの図示は略している。従来の圧電フィルタは図示を略するが、圧電板中心部と共通電極中心部とが一致するのに対して、本発明の圧電フィルタは、圧電板中心部O1,O2に対して共通電極中心部O1´,O2´がX軸方向で0.1mm、Z´軸方向で0.1mmずれている。なお、図8の各共通電極の形状および寸法は図示してある通りであり、その詳細な説明は略する。
【0068】
図9(a)は、横軸を挿入損失[dB]、縦軸をサンプル数100%に対して当該挿入損失を有するサンプル数の割合[%]として、従来品のサンプル数200〜300個に対する挿入損失の分布を棒グラフで表す図である。この棒グラフに示すように、従来の圧電フィルタでは、規格ライン3.3dB近傍より挿入損失が大きいものを不良品、挿入損失が小さいものを良品とすると、不良品の数が極めて多く、歩留まりが非常に悪い。
【0069】
図9(b)は、本発明品のサンプル数200〜300個に対する挿入損失の分布を示す棒グラフであり、本発明品では、規格ラインを超えた不良品は無く、全てが規格ライン以下の良品であった。そのため、本発明品では歩留まりが従来品より格段に向上している。
【0070】
図9(c)は、本発明のさらに別のサンプル数200〜300個に対する挿入損失の分布を示す棒グラフであり、本発明品も、規格ラインを超えた不良品は無く、全てが規格ライン以下の良品であった。したがって、このサンプルに対しても本発明品では歩留まりが従来品より格段に向上している。
【0071】
このように、本発明では、電極面積を大きくして低周波帯用の圧電フィルタとする場合、挿入損失(ロス)に関して、図9から明らかであるように、圧電板の中心部に対して、共通電極の中心部を導電性接着剤が塗布されない角部の方向に偏心させなかった従来品と比較して、歩留まりが格段に向上した。
【符号の説明】
【0072】
1 圧電フィルタ
2,3 圧電板
7a,7b;8a,8b 分割電極
9a,9b 共通電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9